[2]訪問看護師に求められるメールのマナー
訪問看護師の方に知ってほしいマナーについての連載です。今回はビジネスマナーの基本でもある、仕事上のメールのやりとりにおけるマナーのポイントをご紹介します。
目次
「会ってやりとりするような気持ち」が、その場の判断を助ける
訪問看護師のAさんは、早急に謝罪メールを送信する必要が生じました。メールを急いで書かなければならないのに、どのような文面にしたらよいのか、特に出だしの挨拶に非常に悩み、切羽詰ってしまいました。
とにかく、いち早く謝罪をしなければと思い、まずは電話で謝罪したそうです。その相手は、メールでのやりとりを希望している方でしたが、電話に出られない状況ならば出ないだろう、出られないようならメールを書こう、と考えて。
果たして、電話で謝罪すると相手から「わかりました」という返答がありました。まずは急いで電話してよかった、と考えたAさんでしたが、その後、相手からAさんの上司に抗議のメールがあったそうです。メールではなく電話で謝罪したことについて。
Aさんは、上司から、相手がメールを希望しているうえに、メールのほうが記録としても残るためメールを送るべきだった、電話をする前に上司に相談するべきだった、と注意を受けました。
Aさんのように、メールの出だしの挨拶などで悩んでしまったり、メールを書くのが毎回非常に面倒だと思う方などにお伝えしたいコツは、「会ってやりとりするような気持ちでメールを書く」ということです。
ここで、対面の場合にはどのようにするか考えてみましょう。流れは次のとおりになると思います。
①会ったらまず挨拶する
②用件を伝える(または、何かを話し合う)
③挨拶をして辞する
この流れは基本の流れと言えます。つまり、「直接会う」、「メール」、「FAX」、「電話」のいずれの方法においても、この①~③の流れは相手と仕事上のやりとりをする際の鉄板ともいえる流れですね。
Aさんのような急ぎの事態になった場合、もし直接会ったなら、時候の挨拶や日頃お世話なっている感謝の言葉などは省略し、ごく手短に挨拶を済ませるはずです。そして、用件(謝罪の内容)を伝え、また改めて説明と謝罪に伺うことを伝えて、辞する挨拶をするのだと思います。
メール文もそれと同じで、「お世話になっております」で①を済ませ、「さっそくですが、」などの前置きをして②を書き、「取り急ぎ、ご報告にて。失礼いたします」といった文言を③とします。
会っていれば、帰りの挨拶をせずに帰ることはないでしょう。ですから、会っている気持ちでいれば、うっかり挨拶が抜けてしまうといったことは回避できます。つまり、「会ってやりとりするような気持ち」は、マナー不足を避けてくれるのです。
メールの件名を必ず書く
ここからは、メール文の構成に沿って、メール作成のポイントを解説していきます(図1)。
私の場合、件名がないと迷惑メールの可能性もあるため基本的にはメールを開きません。しかし、メールアドレスから想像して、仕事関係のメールかもしれない、と考えて開くと、本文を書きあげて、件名を書くのを忘れて送信してしまったのかな、と思われるメールが届くことがあります。
いろいろな方からメールが届く中、件名がないとメールを整理しづらく、やりとりもしづらいため、マナー不足です。件名は、メールの内容にタイトルをつける感覚で短めに書きます。
前述のAさんの謝罪メールであれば、「お詫び 〇〇訪問看護ステーション A」(※「A」は名前)といった件名がいいでしょう。
図1 メール文の構成
宛名(受信者の名前)の記入
メールを受け取った相手に、自分宛のメールであることを認識してもらうため非常に大事です。電話では間違い電話だとすぐにわかりますが、メールでは宛名がないと誤送信の疑いが出てきます。
「事業所名+部署名+氏名」、あるいは「事業所名+氏名」でもよいので明記します。氏名は苗字だけでなく、名前も書くのが基本マナーです。苗字と名前の間は半角1文字分空けることを推奨します。
また、相手からメールを受け取っていれば、そこに記された相手の苗字と名前の空き具合と同じにします。例えば、「森林太郎」という名前の場合、「森林太郎」、「森 林太郎」(全角1文字分の空き)、「森 林太郎」(半角1文字分の空き)など、ご本人の記載方法はいろいろですので。
挨拶の一行目に神経を使う
宛先を記入したら改行し挨拶文を書きますね。
考え方次第ではありますが、仕事上のメールのやりとりでは時候の挨拶を入れることを基本としなくてもよいと考えます。それよりも、挨拶の一行目に神経を使うことがおすすめです。その一行が現実に即していないと、通り一遍のうわべだけの挨拶である印象をもたらします。
ここでもまた「会ってやりとりするような気持ち」が大事になります。初めて会った方に「お世話になっております」と言うのは少しずれていますね。<まだ、お世話していませんけど>と相手は内心思うかもしれません。もちろん、「いつも」をつけるのもおかしいです。しかし、メールだと「お世話になっております」がパターンになってしまい、初めての方からのメールの出だしに書いてあることもあります。
これからお世話になることがわかっている相手であれば「お世話になっております」ではなく、「これから」という前置きを省略した形として「お世話になります」であれば状況にあった挨拶になるでしょう。
たとえ相手の顔はわからなくても、想像で顔をイメージして挨拶文を書きます。それが血の通った一行になります。以下にいろいろなシチュエーションに応じた挨拶文の例をご紹介します。
【初めてメールを送信する場合】 「突然のご連絡失礼いたします」 「はじめまして」 「はじめてご連絡を差し上げます」 【初めてメールを受け取った相手に返信メールを送信する場合】 「はじめまして。ご連絡いただきありがとうございます」 「お世話になります」 【すでにやりとりをしている相手とメールを送受信する場合】 「お世話になっております」 「いつもお世話になっております」 「平素より大変お世話になっております」 「お世話になっております。いつもありがとうございます」 【上司や同僚とのメールを送受信する場合】 「お忙しいところ、失礼いたします」 「お疲れ様です」 ※「ご苦労様」は目上の人に対しては使用しない 「おはようございます」 【久しぶりにメールを送信する場合】 「ご無沙汰しております」 ※「お久しぶりです」は、ややくだけた印象を与えるので、使用する場合は関係性を配慮します。 「長らくご無沙汰してしまい申し訳ございません」 【続けてメールを送信する場合】 「度々失礼いたします」 「前送メールに追加でご連絡です」 あるいは、件名に「追伸」と追加します。 【電話で話した後にメール送信する場合】 「さきほどはお電話をありがとうございました。追加でお伝えしたいことがあります」 「さきほどお電話させていただきました件に、追加でご連絡です」 |
名乗りのタイミング
挨拶文の後、名乗ります。「事業所名+氏名」、「部署+氏名」、「氏名のみ」、など適宜判断します。苗字のみならず名前も必ず記入します。看護師であることを示したほうがよい場合は、氏名の前に「看護師」と入れます。
件名に名前を記入している場合や、1つの用件で何度もメールのやりとりをしている場合などは、挨拶の後に何度も名乗るのは相手にわずらわしい思いをさせるため、省略してもよいでしょう。
用件を伝えるときは「箇条書き」を活用しよう
挨拶文の後、「以下についてご検討のほど、何とぞよろしくお願いします。」といった文を記入し、用件を箇条書きにすると、書きやすく、相手にも伝わりやすいです。「以下について」を「下記について」に変えて、「記」と題をつけて箇条書きにするのもよいでしょう。
返信などの対応についての希望も忘れずに
用件の前に、「以下、ご報告です。」と入れるか、用件の末尾に「以上、〇〇日ごろまでにご検討をお願いします。」など、いつまでにどのようなアクションを求めているのかについても必ず記入します。
同じテーマのやりとりは、返信を繰り返して過去分をすぐ確認できるように
やりとりの経緯がすぐにそのメールで確認できるように、やりとりの途中でメールを新規作成して送信しないことがおすすめです。その際、こちらの住所や電話番号、URLなどの情報は、1回目のやりとりのときだけ文末に記入し、それ以降は名前のみにします。
入力ミス、変換ミスにご注意!
この記事を作成するために、訪問看護師の方や日頃仕事でメールをやりとりする方たち数名にお話をうかがったところ、この点を指摘する方が予想以上に多数でした。
送信前に必ずメールを読み返し、誤入力や誤変換がないかチェックします。相手の名前や会社名に誤りがないかは重要なポイントです。送信前の再チェックを習慣づけるとよいでしょう。入力ミスや変換ミスは誰にでもあることですが、私も含め、注意しなければなりませんね。
ー第3回へ続く
執筆 小林 光恵 看護師、作家 ●プロフィール 看護師、編集者を経験後、1991年より執筆業を中心に活躍。2001年に「エンゼルメイク研究会」を発足し、代表を務める。2015年より「ケアリング美容研究会(旧名・看護に美容ケアをいかす会)」代表。漫画「おたんこナース」、ドラマ「ナースマン」の原案著者。 記事編集:株式会社照林社 |