安心感をどう作るか① ミーティング、カンファレンスなどのオンライン化
最初の発生から2年が過ぎても、いまだ終息の見えない新型コロナ。感染防止対策だけではなく、目には見えないスタッフの不安やメンタルヘルスへの対応もステーションの管理者には要求されます。ベテラン管理者のみなさんに、今必要とされるスタッフマネジメントについて語っていただきます。第2回は前回に続き、東久留米白十字訪問看護ステーション所長の中島朋子さんです。
お話
中島朋子
東久留米白十字訪問看護ステーション 所長
目次
カンファレンスをオンライン化
新型コロナウイルス感染症への対応で、オンライン化への取り組みは、一気に速度を上げました。結論から言ってしまえば、「やって良かった、デメリットはまったく感じない」と断言できると思います。
従来どおりの頻度でミニカンファレンス
利用者情報の共有は、訪問看護業務の生命線といってもよいでしょう。従来から、出勤者全員が参加する、毎朝30分のミニカンファレンスを開いていましたが、コロナ禍になっても休止したり、縮小したりすることは、まったく頭にありませんでした。
そこで、いち早くZoomを活用したオンライン会議を開始。3密を避けるために事務所のレイアウト変更を行ってからは、三部屋に分かれ、壁に向くようにデスクを配置。スタッフそれぞれは、背中合わせになるような形でパソコンの画面に向かいます。
また、事業所内のスタッフ密度を減らすため、自宅が近い人は自宅から会議に参加します。自宅参加のスタッフは、会議終了後に事務所に立ち寄り、訪問看護バッグをピックアップする方式に切り替えました。
余談ですが、壁向きのデスク配置は、業務が集中してできるという観点から、コロナ禍以前から検討していたレイアウトです。結果的に、コロナ禍で早期に実現できることになりました。
夕方の申し送りは、アラームが合図
17時30分、事務所内にアラームが響きます。夜勤者に引き継ぐための申し送りもZoomで行います。アラームを合図に、参加者は各自のデスクから会議に参加します。また、直帰したスタッフは自宅から参加します。
直帰するのは、主に、発熱のある利用者を訪問したスタッフです。発熱者への訪問は1日の最後とし、訪問後は直帰して、ただちに自宅で入浴することにしています。これは感染症対策の一環ですが、オンライン会議なので、自宅からの参加が可能となるのです。
そのほか、オンラインによる研修や外部機関との会議も、積極的に参加したり、活用したりしています。Zoomなどのオンライン会議システムは、コロナ禍が終わっても、欠かすことはできないでしょう。
在宅勤務を可能にするクラウド活用
感染状況に応じて、事務職を中心に在宅勤務を進めました。それを可能にしたのが、クラウドの活用です。
計画書、報告書、各種フォーマット、利用者情報、記録、サービス内容実績など、必要な人が、必要な時に、どこからでもアクセスすることができます。業務効率化のために、コロナ禍以前からシステム構築を行っていましたが、一気に実用レベルに仕上がりました。
訪問中に瞬時に共有
訪問看護の主戦場は、利用者の自宅です。訪問中に、タブレット端末(iPadなど)からクラウドにアクセスできることは、コロナ禍でなくても、極めてメリットが大きいと考えます。加えて、メッセージ交換アプリを利用し、ケアチームなどのグループ内で利用者情報を共有するといった方法もごく普通に行われるようになりした。
もはやICTは、訪問看護業務になくてはならないものになっています。
ICTに詳しいスタッフの力
2021年3月に採用した事務職員がICTに詳しく、ICT化の相談に乗ってくれたり、使い方を教えてくれたりなど、職場内でのICT普及に大きな力になってくれたことも報告しておきます。
どちらかというと、情報機器に弱いナースが多いなかで、「情報機器に明るいスタッフ」の存在は、必要不可欠なのかもしれません。
「助成金」を貪欲に狙う
こうした一連のオンラインやICTなどの推進には、ある程度の費用がかかります。法人トップの決断は言うまでもありませんが、私は、助成金を貪欲に狙ってきました。都、市、その他、注意深く通達などをチェックしたり、アンテナを張っておいたりすると、さまざまな助成金をキャッチすることができます。
申請手続きなど若干面倒ですが、予算に限りがあるなかでの助成金の魅力は、それを超えるものがあります。
たとえば、iPadを夜間当番に配布できたのも助成金によるものです。
一般企業向けの助成金も活用する
訪問看護ステーションや在宅医療関連だけではなく、一般企業向けの助成金を活用することもできます。
就業規則の改定やICT化に向けたコンサルテーションを受ける費用は、中小企業向けの市の助成金制度で賄いました。
スプレッドシートを利用した、私たち事業所自慢のシフト表も、そのコンサルテーションの結果生まれました。無理なく、効率よく、柔軟な勤務を実現するシフト表により、感染予防に必要な健康的な働きかたが可能です。
―第3回に続く
記事編集:株式会社メディカ出版