コラム

訪問看護の社長業 ~創業経営者 水谷氏から学んだこと 教育編~

前回までの2回は人事部門の大切なポイントを紹介しましたが、今回は教育・研修部門の考え方、重要性について「社長業」の視点でお話します。
 コラム執筆者:一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー/理事長  上原良夫

教育・研修の基本的な考え方

まず大前提の考え方としては、製造業で言うところの「物を仕入れたあとの製品⇒商品への加工作業に値するのが、教育・研修部門」となります。このように教育・研修部門をとらえれば、少しわかりやすいかもしれません。「物を加工する」という工程を、訪問看護業に置き換えればいいわけです。
また、基本方針として「年間メニューの多様化と業界一番の品質作り」を掲げます。
そして細かな方針や定義を列記して、やはり朝礼で読み上げることで、方針を内部に認識、普及・浸透させていきます。
以下、列記したものはその概要です。
①中核となる医療専門職は3~5年を基準とするが、教育・研修の質・量に自信がもてるところから段階的に3年未満の方や新卒を受け容れていく。もちろん新卒とは報酬に差を設けていく。
②教育・研修の目的は、志を高くもつ、利他の心を高める。原理原則を守る、人間性(思いやり、熱意、誠意、素直な心)を高める、お客様を幸せにする、自分の幸せも追求する、ことをバックアップすることを根本に置いている。
③訪問看護未経験でも研修期間内で一定のスキルを習得して実務者に仕上げる。但し、管理者評価が低い場合や周りに評判が低い場合は、専門性不足?常識不足?在宅不向き?メンタルヘルス問題?か、その状況に応じて、再教育、雇用契約変更の調整をする。
④同行訪問と座学指導も交えて実践に導く。初任者~従事者~中堅~管理者候補~管理者用研修とメニューもフォローも充実させて、現在の安定と将来の成長が実感できるようにする。
⑤臨床経験スキルは基本的に通用するが、1年間は経営方針書の遵守と先輩指導のもと事例の積み上げである。2年目から各自に見合う量と質を安定させる。3年目でやり方・応用に自信が付き自分流が確立します。1年目は真似て型を守り、2年目は自分のやり方に改善、改良を加える。3年目に現業の確立と新たな領域を開発する、守破離の思想である。
⑥外部への研修希望は予めの申請を必要とする。1人1回1万円程度は認める。但し1人当たりの参加回数、総額に一定の上限を設けて管理する。
⑦全職種資格別の専門的は症例検討会、リーダー研修、フォローアップ研修、マネジメント研修等を、会社の成長に応じて段階的に実施する。
⑧訪問看護ハンドブックを作成して、医療専門職、総合職、事務職で毎年担当を変えてブラッシュアップを継続する。
在宅の小規模事業所では、定期研修の実施や勉強会プログラム貧弱なところが多々あると認識しています。ノウハウや手間が必要で予算もかかりますが、教育体制次第では外部からの技術的信頼を得ることが難しいのはもちろん、向上心の高い内部スタッフにおいても、自己研鑽の場が少ないことというのが不安材料になったり、退職理由に結びつくことさえあります。もちろん採用時においてもこの点が充足しているか、教育研修方針があり機能しているか、といった点が志望動機にもなりますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
**
一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫
【略歴】
2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。
2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務

この記事を閲覧した方にオススメ

× 会員登録する(無料) ログインはこちら