コラム

訪問看護師に必要なスキル・知識のまとめ

前回は医療制度・介護制度、礼節・礼儀などについてお話ししました。
第6回は、本コラム連載の最終回として訪問看護師に必要なスキル・知識の総括についてお話ししたいと思います。

訪問看護師に必要なスキル・知識のまとめ

今回を含めて、これまで全6回にわたり訪問看護師に必要なスキルを私なりにまとめさせていただきました。最後にこれらをもう一度、訪問看護の実際の業務フローに落とし込み、可視化したいと思います。
下図は、訪問看護業務フローと8つのスキル・知識の関係図です。見方としては、図・左下の「患者・利用者」から始まり、反時計回りで、患者・利用者→アセスメント→必要な看護の提供となります。
【訪問看護の業務フローにおける各スキルの位置づけ】

➀患者・利用者の意向・状態変化

ここでは、「本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル」、「本人・家族の平時の生活を想像するスキル」が必要なスキルとなります。特に本人の思いの吸い上げは、最も重要であり、看護方針の基盤となるだけでなく、さまざまな判断の軸となります。
また本人のリアルな状態変化をしっかり見極め、看護に反映させるため、平時の本人の状態を想像するスキルが必要となります。詳しくは、下記をご参照ください。
第1回 思いを吸い上げるスキル・想像するスキル

②アセスメントと他職種との連携

次にご本人の意向などをもとにアセスメントを実施し、さまざまな看護プランを立てることになりますが、ここでは「マネジメントスキル(チームマネジメント)」、「コミュニケーションスキル」、が必要となります。
アセスメントをもとにし、設定された目標に対してどういった職種にどのように動いてもらうかを考え、さらに円滑に動いてもらうために、マネジメントスキルが必要となります。その際に、在宅現場においては、ひとつの職種で利用者さんの療養を支えることは難しいため、医師を含めた他職種とのコミュニケーションスキルが非常に重要となります。
コミュニケーションを取る時には、相手の職種・役割・所属組織の方針などを考慮にいれた俯瞰力を持って臨むことで、より円滑な連携が生まれ、マネジメントも良質なものとなります。また、特に医師に対しては、SBARを改めて実践することで、より良好な関係性を目指していただければと思います。詳しくは下記をご参照ください。
第2回 医師・他職種とのコミュニケーションスキル
第3回 コミュニケーションスキル(訪問看護指示書)とマネジメントスキル

③在宅現場での必要な看護の提供

最後に在宅現場での必要な看護の提供段階となりますが、ここではより良い看護を提供するために「医師のいない場で医療的判断を行うスキル」、「在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力)」、「医療制度・介護制度などに関しての知識」、「礼節・礼儀などを実践できる素養」が必要となります。
まず医師がいない場で、訪問看護師が医療的判断を行うことはさまざまな不安があると思いますが、その不安は何をどこまで実践してよいか明確になっていないことが原因であることが多いです。そのため、ご本人の意向を知り、かつ医師からの包括的指示をもらうことで、その不安は払拭することが可能となります。
次に在宅療養中の利用者さんに起こりやすい疾患などに対しての看護スキルについては、「看護は芸術である」という観点のもと、それぞれの利用者さんに対して、みなさんが持っている看護技術を生かして、彩られた療養環境を作り出してみてください。
制度面については、訪問看護は医療保険と介護保険の2つの制度で成り立っており、さらに疾患などにより訪問回数なども決まっています。そのため、制度を知らないと看護プランを立てられないことがあるので、しっかりと理解することが重要です。
礼節・礼儀については前回コラムのとおりです。
これらのスキル・知識をもって、在宅現場でより良い訪問看護を実践していただきたいと思います。詳しくは下記をご参照ください。
第4回 医師のいない場で医療的判断を行うスキルと在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力)
第5回 医療制度・介護制度などに関しての知識と礼節・礼儀などを実践できる素養
本コラム最終回として、訪問看護師に必要なスキル・知識の総括についてお話しさせていただきました。
これまで8つのスキル・知識をまとめてきましたが、豊富な訪問看護経験がある方にとって、本連載の内容は当たり前のことも多かったと思います。一方で、連載を通じて、さまざまな気付きをもらえた、という非常にありがたいご意見もいただきました。
患者・利用者さんのQOLの向上のために、今回の8つのスキル・知識が少しでもみなさんのお役に立てば幸いです。
おわりに、本連載を読んでいただいた方、また本連載に関わっていただいた関係者の方々に感謝を申し上げます。
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医療法人プラタナス 松原アーバンクリニック 訪問診療医 / 社会医学系専門医・医療政策学修士・中小企業診断士
久富護
東京慈恵会医科大学医学部卒業、同附属病院勤務後、埼玉県市中病院にて従事。その後、2014年医療法人社団プラタナス松原アーバンクリニック入職(訪問診療)、2020年より医療法人寛正会水海道さくら病院 地域包括ケア部長兼務。現在に至る。

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