コラム

地域の出前講座で訪問看護を普及【訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック】

訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック

全国で活躍する訪問看護認定看護師の皆さまの活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会の九州ブロック、安部 美保さんの活動記です。安部さんは、訪問看護ステーション管理者で、大分県訪問看護ステーション協議会 副会長でもあります。大分県内の訪問看護ネットワークについてや、地域市民の方々向けの出前講座への取り組みなどをご紹介いただきます。

執筆:安部 美保
保健師・助産師学科を卒業後、地元の総合病院へ入職
1997年 病院併設の訪問看護ステーション開設と同時に管理者となる。
2012年 訪問看護認定看護師資格取得
2020年~ 日本訪問看護認定看護師協議会九州ブロック長
2022年~ 一般社団法人 大分県訪問看護ステーション協議会 副会長

月に1回の「おしゃべり会」開催

日本訪問看護認定看護師協議会九州ブロックの体制は、九州・沖縄の8県の会員で構成されています。会員数は、2023年11月現在で24名です。ブロック長1名と大分・福岡・佐賀・熊本・鹿児島からそれぞれ1名の委員が選出されており、研修会・交流会の企画運営などを中心に、ブロック活動を行っています。

2008年9月に西日本で初めて訪問看護認定看護師教育課程が大分県立看護科学大学看護研究交流センターに開設されました。そのため、九州やその近県に住む方は受講がしやすくなり、当時、九州内の訪問看護認定看護師も増加傾向にありました。しかし、2013年3月で大分の教育課程が閉講となったこと、経験豊かな訪問看護認定看護師が定年を迎え認定更新をしない方が増えてきたことなど、さまざまな要因が重なって、九州ブロックの会員数は、この5年間で10人程度減少しています。

年1回開催してきた研修会・交流会は、会員が開催地に集合し、顔を合わせて語り合うことのできる貴重な場となっていました。コロナ禍以降もリモート開催や対面・リモートのハイブリッド開催で継続してきましたが、会員数の減少と相まって、参加者が増えない状況がここ数年続いています。このように衰退していく状況を何とか打開したいという思いで、ブロック役員で話し合いを繰り返し行いました。

訪問看護認定看護師の研修会・交流会

アイデアを出し合った結果、今年の7月から月1回、会員なら誰でも自由に参加できるリモートでの会議、通称「おしゃべり会」を定期的に開催することになりました。おしゃべり会を地道に開催していくうちに、これまで会員であっても交流のなかった方々が参加され、顔見知りが増え、それぞれの貴重な活動の報告が聞けて、新たな交流が生まれています。

「おしゃべり会」の会話の中で、「今年度の研修会に、ぜひ聖路加国際大学大学院看護学研究科教授の山田雅子先生に講演をお願いしたいね」という話が出ました。お忙しい先生に九州に来てもらうのは難しいのではと思ったのですが、山田先生から快く講師を受けていただくことができました。今から、先生の講演会をみんな楽しみにしています。

協議会の機能充実。大分の訪看ネットワーク

続いて、私が管理者を勤めている「訪問看護ステーションくにさき」も所属している、一般社団法人大分県訪問看護ステーション協議会(以下、協議会)の活動についてもご紹介します。

以前、協議会は大分県医師会が事務局を執り行う任意団体でしたが、6年前に法人化し、一般社団法人となりました。法人化後は、大分県看護研修会館内の一室をお借りして、事務員を一人雇用して活動を始めました。現在の協議会加入訪問看護ステーション(以下、ステーション)は135ヵ所で、大分県内の約70%のステーションが入会しています。会長の強いリーダーシップにも支えられ、この6年間で運営もスムーズになり、協議会機能も充実してきています。その成果の一つとして、今年度、法人化して初めて大分県から「訪問看護就職ガイダンス・インターンシップ事業」を受託できました。行政からも信頼される法人へと成長した証と喜んでいます。

加入ステーションはビジネスチャットでつながっており、事務局や会員からのタイムリーな情報提供があり、情報伝達・情報共有がスムーズです。また、県内を2次医療圏単位で分けて11の支部を作り、支部から理事を任命。支部長も兼ねてもらいます。支部ごとで定期的な支部会・研修会など活動を行っており、顔の見える関係ができています。

このネットワークのお陰で、訪問看護の実務でも協力しやすくなったという声があがっているほか、BCP策定にも役立っており、支部単位で協力してBCPを作り上げているところもあります。今後もさらに会員同士が交流でき、協力し合える協議会に発展していくことを願っています。

出前講座で訪問看護を普及

私は生まれ育った地元で訪問看護を30年以上おこなっています。30年前は医療職でさえ「訪問看護って何?」という人が大半なほど知名度が低かったことを覚えています。それが今では、訪問看護師の地道な努力の成果もあり、医療・介護・保健にかかわる方で訪問看護を知らない人はいない状況になってきています。

ただ、一般市民の方々の訪問看護の認知度はまだまだ低いと感じています。このような中で、長年地元で訪問看護をさせてもらい、訪問看護認定看護師の資格まで取得することができた私の役割は、地域住民に訪問看護を普及させることだと考えています。そうすれば、必要な方が必要な時に訪問看護を利用することができるという思いがあります。

それを実現するため、地域への出前講座を8年ほど前からはじめました。地域サロン活動から依頼を受けて、訪問看護の普及啓発に力を入れています。「そんないい制度があるとは知らなかった。必要になったらお願いしたい」といった声も聴かれています。地道な活動ですが、今後も続けていきたいと思っています。

* * *

訪問看護は、今後ますます在宅の場で必要とされ、発展していく分野です。人が本来生活する場所である自宅での暮らしを支え、自分らしく生き抜こうとする方たちを一緒にサポートしていきましょう。訪問看護はやりがいのある仕事ですよ。

※本記事は、2023年11月時点の情報をもとに構成しています。

編集: NsPace編集部

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