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コラム
2021年6月1日
2021年6月1日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 利益についての方針編~

第8弾は「利益についての方針」についてお伝えします。 医療・介護職の潜在意識に「利益・儲け=悪」があるとすれば、それは「利益」の本当の意味・機能について学んでないからだと、ソフィアメディ創業者の水谷氏は事あるごとに管理者や幹部に伝え続けていました。当然、経営方針書の大事な一項目としても記載をしています。 医療・介護だからといって利益を求めてはいけない存在ではなく、社会一般の企業同様、良質なお客様サービスの事業を永続的に続けるために、利益を生み続けなければならない。そして、利益が無くて一番不幸になるのはお客様だと明言しておりました。 利益についての方針 利益には3つの機能があります ◆事業経営の健全性と有効性を判断する物差し ◆危機を回避する(事業、商品やサービスの陳腐化を防ぎ生産性を高める) ◆成長と発展のために必要な資金調達ができる 方針 1.利益があってこそ、我社が存続し発展し繁栄します。 2.利益があってこそ、正しいサービスができます。 3.利益があってこそ、生活が安定し向上します。 4.利益があってこそ、社会に貢献できます。 5.利益があってこそ、競争相手と戦うことができます。 6.利益があってこそ、感謝の心が芽生えます。(衣食足りて礼節を知る) 7.利益があってこそ、自信をもってお客様第一主義に徹することができます。 8.利益はどれだけ、お客様に喜んでいただいたかの結果です。 9.利益より大切なのは、信用です。 10.不正にまつわる利益は、すべてを失います。 11.恒産なければ、因って恒心なし (=経済的潤いが無ければ、人心は乱れるということ) ◆利益確保をコストカットにだけ執着するのは、普通の経営者が罹るコスト病である。必ずサービスの質は落ちるし、一番大切なものは「コスト」になってしまい、お客様サービスにかかる経費など真っ先に削られて、お客様を怒らせたり、信頼を失くしたりするものである。大切なのはコストではなく、収益である。  シンプルな内容ですが、水谷氏の長い業界経験・実業家魂が凝縮されたものと思います。 「9.利益より大切なのは、信用です」ですが、利益は大事と言いつつも、優先順位を明確にしているのも特徴の一つです。 コストカットについて 方針の末文にあるコストカットの話ですが、「もっとコストをかけろ。お客様から、ここまでやってくれるのか、と思わせてはじめて物事のスタートだ。」と、私が営業課長時代には厳しく指導されたのを思い出します。お金の無駄遣いはしないが、コスト削減作業に費やす時間があれば、社外に出て新規収益事業や営業企画につながるニーズを拾って来るようによく指導されました。 具体的に例を挙げると、 ・毎月のお客様向けのお便り発行(在宅療養のための耳より情報中心) ・健康測定会(骨密度/体組成/血管年齢測定、看護師による相談) ・ケアマネ向け介護情報セミナー ・地域感謝祭(地域振興目的での健康測定会、軽食コーナー、子供用遊戯コーナーなど) ・行政委託の介護予防事業教室(医療専門職による教室 年間100本程) ・お客様の自作美術/工芸品などの展示会 ・お客様参加型の家族会&遺族会(デイサービスの車両を借りて送迎付き) ・バスに乗っての日帰り旅行(都内近郊観光地、クルーザー貸切り、近隣県の温泉宿など) などです。 物品購入などの経費はあまりかからなくても、ほぼすべてにおいて多くの人員投入をしていますので、実際の人件費についてはかなりの額の持ち出しでした。 要はコストをコストと見るか? 投資と見るか?という観点です。ぜひみなさまにおいても利益を沢山あげ、未来への投資にお金を遣っていただければと思います。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【略歴】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務

コラム
2021年5月25日
2021年5月25日

医師のいない場で医療的判断を行うスキルと在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力)

第3回ではマネジメントスキルなどについてお話をさせていただきました。今回は、医師のいない場で医療的判断を行うスキルや在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力)についての考え方をお話したいと思います。 訪問看護師に必要な8つのスキル・知識 ①本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル ②本人・家族の平時の生活を想像するスキル ③他職種とコミュニケーションを取るスキル ④マネジメントスキル ⑤医師のいない場で医療的判断を行うスキル ⑥在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力) ⑦医療制度・介護制度などに関しての知識 ⑧礼節・礼儀などを実践できる素養 訪問先での不安感 病院や外来診療所に勤務されている看護師さんは、医師がいない場で医療的判断を行うことに心的ハードルを感じられることが多いと思います。私自身、いくつかの病院で在宅医療部の立ち上げの支援をさせていただきましたが、その際に在宅医療部に配属となる看護師さんを決めるステップの時に、かなり時間を要することがありました。やはり在宅医療という未知の分野に入ることに対しての不安感や、自身のスキルに対して不安に思うことなどが影響していると考えています。 また、実際に配属の看護師さんが決まっても、訪問看護師ではなく同行看護師として業務を開始することが多いです。少し複雑ですが、同行看護師は訪問診療の際に医師に同行する看護師であり、一人で患家には訪問しません(在宅患者訪問看護指導料など、医療機関からの訪問看護に関する算定は発生しないモデル)。そういった同行看護師さんに伺うと、一人で患家に訪問することに対してのハードルとしては、 1.何かあった時にひとりで対応できるか不安である。 2.患家で医療的判断を本人・家族から求められたとしても、それは医師の仕事だと思うので困る。 と、おおよそ上記2点に集約されました。 1.何かあった時にひとりで対応できるか不安 「慣れ」の話になるかもしれないですが、病棟勤務や外来勤務といった基本的に医師が傍にいる状況、もしくは院内PHSなどで緊急時に医師にすぐに連絡がつく環境での勤務経験が長いことに起因すると思われます。 しかし、詳しく話を伺うと、病院勤務であれ、外来勤務であれ、何かあった時にひとりで対応した経験がある看護師さんは非常に多いことがわかりました。よく考えれば、これは医療有資格者として普通のこととも言えますが、訪問看護というもののイメージ沸かず、これまでと違った環境での業務が、その不安を助長させている可能性を示唆しています。 2.医療的判断を本人・家族から求められたとしても、それは医師の仕事だと思うので困る 1の不安感に繋がる部分もあると思いますが、医療の方針などをご本人やご家族に説明するのは医師、という考えを強く持たれていることが要因と考えられます。医療的判断における看取り方針の確認や、薬剤の使用判断などについての判断は、通常医師が行いますが、より療養に近いレベルでの判断は、病院でも実際は看護師さんが実施しています。例えばバイタルのチェック回数やタイミング、食事介助方法、発熱患者さんへの水分摂取促進などがそれにあたります。これらももちろん医療的判断ですが、そのすべてに対して医師の指示があるわけではありません。 つまり、訪問先で求められる医療的判断の階層レベルの不明瞭さにより、こういった考えに至るものと思われます。とはいえ、こういった不安や考えを持たれていることは事実であり、現に訪問看護師として働かれている方も、このような気持ちをもって働かれている方もいらっしゃると聞きます。これらの訪問先での不安などを解決するために必要な考え方やスキルをお話したいと思います。 医師のいない場で医療的判断を行うスキル 医療的判断を行うスキルについて、ここではどういった症状に対して、どういった医療的判断を行えばよいか、といった具体的な疾患・症候別の話ではなく、どういった考え方に基づいて、訪問看護師として医療的判断を行うかをお話します。 その考え方は基本的に、訪問看護師さんが訪問先で医療的判断を行う範囲を決める作業と、急変時の対処方法を確認する作業の整理となります。具体的には、これまで何度もお話していることではありますが、まずはご本人やご家族への方針確認の際に望んでいること、やってほしくないことを吸い上げることから始まり、そこに本人の病態やADLなどに合わせて、医師から医療的・日常療養的包括的指示を受けます。これにより、訪問看護師が実施できる枠組みが決まり、この枠組みの中で訪問看護師として医療的判断を実践することになります。 この時に、医師からの包括的指示のみでは、訪問看護業務が本人や家族の意向に沿うものかどうかがわからなくなるため、必ずこの意向確認が必要となります。また、急変時の家族不在時の連絡方法や搬送基準なども、本人・家族や主治医とともに決定されていれば、医師がいない場での医療的判断について、訪問看護師として困ることや不安に感じることは大幅に減ることと思います。 前述の「何かあった時にひとりで対応できるか不安」や「患家で医療的判断を本人・家族から求められたとしても、それは医師の仕事だと思うので困る」といった思いについては、この枠組みが決まっていない、もしくは枠組みが見えていないことに起因すると思われ、訪問看護師として何をどこまで行ってよいのか、またどこまで判断してよいのかが不明瞭になっている事が非常に多いことが要因と思われます。 まとめると、医師のいない場で医療的判断を行うスキルというのは、本人や家族の意向と医師から包括的指示の確認+緊急時の対応方法の確認、これらを確認するスキルと言えます。ただし、日常業務が忙しい中で、利用者さん全員の具体的な意向や、搬送基準などの吸い上げが難しい場合もあると思います。その際は、独居の方、重症度が高い方、看取り目的で在宅療養を開始した方をまずは優先し、実施してみてください。 いずれにせよ、やはり重要になるのは第1回目に述べた「本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル」となります。 在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力) 「看護は芸術である」というナイチンゲールの言葉があります。おそらくこれにはさまざまな意味合いがあると思いますが、ここでは、利用者さんの疾患やADLに対しての療養環境を、どういった考え方のもと、みなさんが持っている看護技術を用いて整えていくか、という視点でお話したいと思います。 以前、「本人・家族の平時の生活を想像するスキル」の回で「探偵力」という単語を使い、利用者さんの日常の療養生活を想像するためのスキルについてお話しましたが、今回は療養環境を整えるための「工夫力」についてです。 療養環境の整備には、ご本人やご家族の思いを吸い上げた上で、それを達成するため、またはそれに少しでも近づけるために、看護師さんならではの視点・感覚が必要となりますが、この環境整備のためのスキルを工夫力と捉えています。重要なことは、「おそらく○○だろう」といった自身の主観をもとにした判断でアプローチしないことです。 たとえば、分かりやすい例としては、排尿行動による転倒に対しての療養生活の整備です。転倒を減らすには、ポータブルトイレの設置による動線管理や、オムツの使用、膀胱留置カテーテル挿入といった動線自体をゼロにする方法があります。この方法により転倒は減ると思われますが、ポータブルトイレの設置が「転倒は危ないから」といった判断材料のみであった場合、前述した「ご本人・家族の思いを吸い上げ、それを達成できるか」の検討が無いことになり、主に介護者視点でのリスク管理的な療養環境の整備となってしまいます。ご存じのように、排泄は本人の自尊と強く関係するため、排泄方法の変更の際は、まずご本人がどうしたいか?家族としてはどうあって欲しいか?といった意向を確認してから、トイレまでの動線確認およびその改善、移動をサポートする方法の提案、夜間のみのポータブルトイレ利用といった看護師さんだからこそ気付く工夫力を発揮していただきたいです。 ただし、認知症の方などの場合、転倒リスクを低下させることが優先になることもあります。ここで注意していただきたいのは、認知症の方はこれまでの行動が刷り込まれていることが多く、排泄方法をトイレからポータブルトイレに変更する場合、ポータブルトイレが排泄する場であると認識するのが難しいことがあるということです。そのため、例えばご本人にインプットされているトイレまでの動線上にポータブルトイレを置き(場合により、動線を塞ぐ形で)、少しずつそれが排泄する場であると認識できるように誘導する、といった工夫もあると思います。他に褥瘡の処置などでも、ご本人の状況や意向で、どの程度まで改善を目指すのかを確認し、それに対して工夫力を生かす、といったことも同様の考え方です。 ここでは非常にわかりやすい例として、排泄による転倒に対しての療養環境の整備を挙げさせていただきましたが、さまざまな療養下にある利用者さんの意向に沿う形で、みなさんの「工夫力」を発揮し、ご本人・ご家族と一緒に「看護は芸術」として、その療養環境を作り上げていってください。 本コラム第4回目として、医師のいない場で医療的判断を行うスキルと在宅療養患者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキルついて述べさせていただきました。次回は、医療制度・介護制度などに関しての知識ついてお話したいと思います。 医療法人プラタナス松原アーバンクリニック訪問診療医 / 社会医学系専門医・医療政策学修士・中小企業診断士 久富護 東京慈恵会医科大学医学部卒業、同附属病院勤務後、埼玉県市中病院にて従事。その後、2014年医療法人社団プラタナス松原アーバンクリニック入職(訪問診療)、2020年より医療法人寛正会水海道さくら病院 地域包括ケア部長兼務。現在に至る。

コラム
2021年5月18日
2021年5月18日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 新事業・事業構造の変革編~

第7弾は「新事業・事業構造の変革」についてお伝えします。まずは唐突ですが、中国唐の時代の詩人(白楽天)の詩の一節を紹介します。  「野火焼不尽 春風吹又生」 和訳すると、「野火がどんなに激しく燃えても、草を焼き尽くすことはできない。根さえしっかりとはっておけば、春風とともに、また新しい生命の芽を吹きだし、やがて緑の草原となえる」という意味合いになります。これは禅の教えでよく用いますが、経営者の中でもたいへん貴重な教えとして重宝されています。 環境が激変する昨今ですが、将来に向けてしっかりとした根を張ったブレない経営をする、ということを肝に銘じた上で本題に入りたいと思います。 新事業・事業構造の変革についての方針 ソフィアメディ創業者の水谷氏は、スタッフの実際の訪問現場、営業の活動現場で起こることをとにかく細かく丁寧に把握した上で、次々と対応・対策を打ち出し、お客様サービスの向上のためにストイックに改善・改変を繰り返していました。ただ、その間もひと時として新事業・事業構造の変革、将来への投資を怠ることもありませんでした。そのもととなる思想が前述の詩であり、以下の経営方針で示した内容でした。一部にはなりますが紹介します。 ①会社は永続性のものである。何がどうあっても生き残らなければならない。いつでも将来の収益を確保するため、常に新事業を考え開発しなければならない。また、将来を予測して事業構造を変革しなければならない。慣れた仕事を手放したくない、変えたくないのが人情であるが、現状維持は変化に比べてリスクが大きい。環境が変化していく、将来の変革が予測される中、旧態依然を死守するのは自滅行為である。 ※経営にとっての不変の真理は「変化すること」と水谷氏は明言します。変化が無くなった時、それは衰退だと認識してください。 ②訪問看護サービスの実績データ統計を駆使して、必要なスキル、症例への対策等を明確にする。さらに症例・病状・時系列な成果等サービスのメニュー化を確立して、病院窓口、居宅介護支援、地域関係者、ご本人・ご家族にも、当事業所を選択する理由を明確にしていく。 ※前回までのコラム「営業編」に通じる内容ですが、情勢・制度を知り、データを駆使しつつ、地域ニーズに寄り添ったサービスメニューを作り、存在意義を明確にすることが大事だと指導されました。 ③経営は学問でも学歴でもない、成功や失敗の経験学である。本物の経営者の鉄則である。 ※これも水谷氏の口癖の一つです。途中で辞めるから失敗になる、失敗をしながらも成功するまで続ければいい。耳にタコができるくらい指導されたのを覚えています。多くの著名経営者が「失敗から学ぶ」という主旨の名言・格言を残していますが、王道経営・健全経営を謳う水谷氏においても同様でした。王道経営・健全経営≠保守的、旧態依然(決してイコールではありません)、だということをぜひご認識の上、未来への投資にチャレンジしてください。 いかがでしょうか?前回コラムで「着眼大局着手小局」とお伝えしましたが、今回は「大局」の基本となる考え方について紹介しました。あとはこれらをどう具体的に示し、具現化するかが最重要です。 机上の空論、絵にかいた餅、どこかの首長の演説…計画を立案したらスピード感のある実践実務が無いと、このように言われてしまいそうです。(私はよく言われていました…苦笑) 次回も引き続き、水谷氏の著書(※1)には書かれていない内容を中心に、私の実体験も交えてお伝えしていきたいと思います。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【 略歴 】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務   【参考】 ※1 水谷和美著「訪問看護の社長業」

コラム
2021年4月20日
2021年4月20日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 営業編②~

第6弾は前回に引き続き、営業に関する方針を列記します。「営業」という言葉やその活動に違和感を訴える医療職が多いのは事実ですが、「営業」をしなければ健全で永続的な経営が成立しないのもまた事実です。経営者・幹部の皆さんは建前ではなく、真に地域や社員に利益を還元する為にも、是非「営業」を実践してください。 営業方針 ①お客様・ご紹介先への訪問によって、お客様や市場の要求の本質、変化を知ることができます。さらに、ライバル(競合事業所)の動向も具体的に情報が入ります。相手の手の内が解れば、打つ手は無限です。ただし地域には不正・不当を行う競合事業所が存在し、(医療介護業界においても一般社会と同様です) 他社の模倣ばかりを行なったり、横取りも平気で行います。これらとは毅然と対峙し、営業力・経営力で凌駕(りょうが)(=上回ること)します。 ②安定とは現在のお客様をよく守ること、成長とは新しいお客様が追加されることです。どんな事業でも売上増の原則は、単価×数量です。訪問看護の制度上、単価は一緒なので、数量を獲得する為の追及が重要です。その為の営業方針であり、営業戦略・戦術なわけですが、ソフィアメディ(株)創業経営者の水谷氏は「1年前と同じお客様数しかいない経営者に敬意を持ちません。成長が止まっており不遇を味わうのは社員だ。」と経営幹部に指導していました。 ③決めたエリアの市場占有率(シェア)が大きいか?小さいか?が優良・限界企業の定義です。一定地域内で市場占有率がどの位置にあるかということに、常に留意しなければなりません。 そして質の高い経営とは、全て単位あたりの数値(※1)で他社と比較して有利を得ていることです。 ※1:事業所あたりの売上・利益、1人あたりの労働生産性、社員の給与、社内教育の投資額、お客様や社員の満足度等々、全てにおいて1番を目指すことが質の高い経営だと、水谷氏は説きます。その大前提が地域内でシェアが1番大きいことなのです。 ④営業戦術を実施する際、例えば営業のツール1つを作成して地域へ案内するだけでも、シリーズ化、ストーリー型、派生型等があり、唐突な内容ではなく脈略のある手の打ち方、機微を読むセンスが肝心です。とくに「感動を与える」と、その内容を人に喋りたくなり、口コミでお客様が増えていきます。感動する「コト」を実践し続ける企画力が、営業コミュニケーションの一つのコツです。 ⑤定期訪問営業の信頼性の上に立った提案、企画はよく通ります。不定期で洗練されていない、欲しいときだけの自分都合の営業は、不快感を与えます。ご都合主義の営業にならないよう計画を立て、実践してください。また、年数回でかまいませんが、社長・幹部・管理者・専門職の同行営業も実施すると営業効果は抜群に上がります。節目節目で時間を作って、こちらも計画的に実践することが大切です。 一方、地域の競合事業所において、非医療職の総合職が定期訪問をしている場合は要注意です!彼らは、医療介護業界の慣例・常識にとらわれず、成果を上げる為の知恵を駆使してきます。裏に参謀・軍師の存在がありますので、戦略・戦術のレベルを上げる必要があります。戦略・戦術のレベルを上げるのは一朝一夕では成せませんが、まずはそういった競合他社がいないかアンテナを張る、その上で前述のとおり相手の手の内を研究し、一つ一つ課題をクリアしていってください。 ちなみに、専門職がたまに営業をしている組織は放置しても問題ありません。仲良くしてください。 ⑥紹介成果は、訪問回数の二乗に比例します。これはランチェスター戦略の基本ですが、期待以上の効果を発揮します。 営業訪問した際、ご不在時でも必ず置き名刺にコメントを書いてください。また、名刺を工夫する、時流/自社ニュースを提供する、時節の挨拶関連、はがきのお礼は必須です。すべて接触頻度を上げる為の知恵ですが、ただ実践すれば良いということではなく、感性(センス・先読み)と人間性(気が利く、誠実)が最高の差別化になります。 ⑦メーリングリストやライングループ、クラウドのプラットフォーム等は、毎日の共通認識手段です。競合情報・必要な指示・評価・労いは、遠慮なく書込むこと。社長は営業現場を大事に考え、毎日確認するのが必須です。 ⑧基本である訪問営業と併せて、SNS・ICTの駆使、メディアの活用、双方向性のある媒体営業の活用が医療介護業界の課題です。これを制する事業者が次世代の医療介護業界を牽引していくものと見ています。 ⑨営業がわからない・嫌い、売り方が下手な者は、経営幹部として通用しません。 大きな会社になると分業化が加速しますが、商売の基本は、まず営業です。利益・成果は外部・お客様からのみ得られます。この原理原則がわからず、社内仕事や仕組み作り、コストカットにばかり没頭する幹部は良くない、というのが水谷氏のもっぱらの口癖でした。 いかがでしたでしょうか。ソフィアメディ(株)創業経営者の水谷氏は、創業から一貫して営業現場に拘り続け、社長を退くまで第一線で指示をし続けて参りました。定期的に営業マンと泥臭く同行営業、月2回の営業会議には全て参加、どんなに多忙でも営業報告には全て目を通して細かく指導する。おそらく最も身近で見続けてきた私からしても、その営業姿勢はまさに「営業の鬼」でした。(水谷氏本人も、よくそう申しておりました。) 従業員やお客様が少なかろうが多かろうが、営業現場を知らずに健全経営ができるわけがない、という経験に基づいた思想ですが、それが業界オピニオンリーダーたる所以であります。 「着眼大局着手小局」。よく水谷氏より指導された言葉ですが、経営と営業活動の関係性に当てはめるとたいへんわかりやすく、具体的に行動しやすいかと思います。是非貴社事業所でも実践してみてください。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【 略歴 】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務  【 参考 】 水谷和美著「訪問看護の社長業」

コラム
2021年4月13日
2021年4月13日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 営業編①~

 第5弾は、いよいよ営業に関する方針を列記します。戦略や戦術が幾ら立派でもお客様を獲得する営業が稚拙であれば、経営は絵に描いた餅に過ぎなくなります。 ※訪問看護サービスを利用する対象者には敬意を表して「お客様」と言います。よく使われる利用者という呼称は行政的であり、お客様に対して失礼にあたると考えています。 作り上手の売り下手では、将来会社を潰します 水谷氏は医療介護業界にも通じる考え方としてよくこの慣用句を用い、サービス業・商売の基本である「売る」という行為・プロセスを、他の何よりも大事にします。 ①能率とコストと品質管理がなどは経営の一部である。経営の大局はサービスや商品を買って頂く「顧客の創造」であり、繰り返しの仕組み作りである。新規のお客様をいかに獲得し、そしてリピーターになってもらうかに物量をかけるべきと説きます。 ②訪問・店頭・配置・展示・媒体と(通信)という営業・販売方法があるが、英知を結集して独自性を高め、訪問と媒体販売を最強にしてお客様を括ります。 ※他社との差別化に徹底的に拘り物量(ヒト・モノ・カネ)をかけるのはもちろん、現代においては、いかに媒体とくに情報(広告・紙・WEB・口コミ他)を扱うかが肝であると考えます。 ③競合より圧倒的な経営姿勢・事業構造の強み、サービスのバリエーションと取組み姿勢に違いなど徹底的に発信します。お客様、地域、応募者から最も多く、そして最初に選択される組織を目指します。 ④訪問看護の購買行動モデルは以下が基本フローである。 1.集客=見込みの確保(ローラー営業を含めて、沢山集める) 2.見込み客のフォロー(買いたい、頼みたいお客様を育てる) 3.販売(現実のご紹介を頂く) 4.顧客化(メンテナンスを継続して再紹介・ファン化する。目的は我社のことをお客様から消されない。コミュニケーション力=接触回数と感動の勝負) ※当然この流れの中に、「検索」「比較」「評価」「共有」といった要素も入ってくる。 ⑤イベントがどれだけ新規顧客の開拓や売上増に効果があったか論を待たない。相手先の創立記念日、春夏秋冬の行事、お祭り、年36回の旬、専門技術の理解、実施指導、町内会の巻き込みなど、知恵と工夫には際限がない。行動するかどうかです。机上で妄想したり計算したりする暇があったら、実践現場での「お客様の生の声・評価」を得よ、というのが水谷の営業実践術です。 ⑥「気づき、気配り」名人であり、フットワークの良い「ハイ、喜んで」の姿勢が、営業マンの好感度を高めます。お客様やケアマネジャー、病院関係者、在宅系事業者は営業マン・社員の感じ良さで商品、サービスを買っています。対面ビジネスの基本であり、営業の真理です。これはWEB等が進化した今も、根底の考え方は同じです。 いかがでしたでしょうか? 水谷の営業戦略・戦術のごく一部ですが、たいへんシンプルな基本姿勢かと思います。良いサービスを提供する為にも「会社を潰さない」、それには、やったかやって無いか、獲るか獲られたかの実績こそが、まず営業の原点。サービス業・商売の基本であります。この点をおろそかにしているから、毎年700件以上もの訪問看護事業所が無くなっているのです。 ー次回(近日公開)に続きますー ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【 略歴 】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務 【 参考 】 水谷和美著「訪問看護の社長業」

コラム
2021年4月6日
2021年4月6日

訪問看護の社長業 ~創業経営者 水谷氏から学んだこと 育成編~

教育・研修の意義、大切さは前回整理した解説でご理解頂けたかと思います。今回はさらに「社員の人間育成」を意識した内容も掲載し、解説したいと思います。 自信と誇りがもて、成長と自己実現ができる人生への誘導 1.環境の変化に強く協調性の高い人物を育成について かぼちゃ作りの名人 まず種を撒いて目が出るのを待ちます。その芽に対して小石や瓦を上からばら撒きます。それでも伸びてきた茎に対して、今度は手で引っ張ります。少し根っこが切れるぐらいに引っ張ります。これでできたかぼちゃは、甘くてホクホクした美味しい味を出します。 この「かぼちゃ作りの名人」の内容は、捉え方は様々でしょうが、人の育成にも通じる(自然界の)本質的な原理だとして、水谷はよく上記の例文を使用します。 2.プラス思考の人間育成を目指すには 仕事(人生)の成果を計算式で表す 仕事(人生)の成果=考え方(-100~100点)× 熱意(1~100点)× 能力(1~100点) ・人は能力があっても熱意があっても考え方が間違っているために、十分な成果を出せないことが沢山あります。能力があっても「考え方がマイナス」では、掛け算をしても答えはマイナスになってしまいます。 ・考え方が間違っている人、マイナス思考の人は、自分だけでなく、自分を取り巻く社内の同僚にも悪影響を及ぼします。こういう人は自分の利益のためだけの熱意は高得点ですので、全体のマイナス(損害)は相当に大きくなってしまいます。 ・今は能力があろうとなかろうと、強い熱意とプラス思考で行動し続ければ、人生の何処かで必ず良い成果を生み出します。 3. 存在価値の高い生き方を目指す お客様や同僚や会社から「あなたがいるから」と頼りにされ可愛がられて、強く必要とされる存在価値の高い生き方を目指します。上記1.2を意識した人格形成を実践し続けることによって、自然と「自己重要感※1」が充足されていきます。それに伴って、自信が満ち、人生の自立度(経済、立場、名誉)も向上していきます。 ※1 所説ありますが、人の存在の根底にある「自己肯定感」=どんな自分であっても存在すること自体に価値があると感じる感覚。「有能感」=知識・技術、地位や名誉や立場、など能力がある自分をすごいと感じる感覚。この両者を合わせたものが「自己重要感」であるとされています。 いかがでしたでしょうか? 水谷が時折実施していた経営者・管理職・管理者向け研修「人間学」の中の一項目でもありますが、訪問看護事業の経営や運営をうまくやるには、目先の運営技術だけではなく、人間育成も重要だということが少しはお分かり頂けたと思います。ご紹介した内容の実践が基礎(最初の一手)にあることによって、地域評判が高まり、収益も安定し、教育に投資→技術向上、さらに地域評判が高まる、というスパイラルが生まれると言っても過言ではありません。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【 略歴 】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務   【 参考 】 水谷和美著「訪問看護の社長業」

コラム
2021年3月30日
2021年3月30日

訪問看護の社長業 ~創業経営者 水谷氏から学んだこと 教育編~

前回までの2回は人事部門の大切なポイントを紹介しましたが、今回は教育・研修部門の考え方、重要性について「社長業」の視点でお話します。  コラム執筆者:一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー/理事長  上原良夫 教育・研修の基本的な考え方 まず大前提の考え方としては、製造業で言うところの「物を仕入れたあとの製品⇒商品への加工作業に値するのが、教育・研修部門」となります。このように教育・研修部門をとらえれば、少しわかりやすいかもしれません。「物を加工する」という工程を、訪問看護業に置き換えればいいわけです。 また、基本方針として「年間メニューの多様化と業界一番の品質作り」を掲げます。 そして細かな方針や定義を列記して、やはり朝礼で読み上げることで、方針を内部に認識、普及・浸透させていきます。 以下、列記したものはその概要です。 ①中核となる医療専門職は3~5年を基準とするが、教育・研修の質・量に自信がもてるところから段階的に3年未満の方や新卒を受け容れていく。もちろん新卒とは報酬に差を設けていく。 ②教育・研修の目的は、志を高くもつ、利他の心を高める。原理原則を守る、人間性(思いやり、熱意、誠意、素直な心)を高める、お客様を幸せにする、自分の幸せも追求する、ことをバックアップすることを根本に置いている。 ③訪問看護未経験でも研修期間内で一定のスキルを習得して実務者に仕上げる。但し、管理者評価が低い場合や周りに評判が低い場合は、専門性不足?常識不足?在宅不向き?メンタルヘルス問題?か、その状況に応じて、再教育、雇用契約変更の調整をする。 ④同行訪問と座学指導も交えて実践に導く。初任者~従事者~中堅~管理者候補~管理者用研修とメニューもフォローも充実させて、現在の安定と将来の成長が実感できるようにする。 ⑤臨床経験スキルは基本的に通用するが、1年間は経営方針書の遵守と先輩指導のもと事例の積み上げである。2年目から各自に見合う量と質を安定させる。3年目でやり方・応用に自信が付き自分流が確立します。1年目は真似て型を守り、2年目は自分のやり方に改善、改良を加える。3年目に現業の確立と新たな領域を開発する、守破離の思想である。 ⑥外部への研修希望は予めの申請を必要とする。1人1回1万円程度は認める。但し1人当たりの参加回数、総額に一定の上限を設けて管理する。 ⑦全職種資格別の専門的は症例検討会、リーダー研修、フォローアップ研修、マネジメント研修等を、会社の成長に応じて段階的に実施する。 ⑧訪問看護ハンドブックを作成して、医療専門職、総合職、事務職で毎年担当を変えてブラッシュアップを継続する。 在宅の小規模事業所では、定期研修の実施や勉強会プログラム貧弱なところが多々あると認識しています。ノウハウや手間が必要で予算もかかりますが、教育体制次第では外部からの技術的信頼を得ることが難しいのはもちろん、向上心の高い内部スタッフにおいても、自己研鑽の場が少ないことというのが不安材料になったり、退職理由に結びつくことさえあります。もちろん採用時においてもこの点が充足しているか、教育研修方針があり機能しているか、といった点が志望動機にもなりますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【略歴】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務   【 参考 】 水谷和美著「訪問看護の社長業」

コラム
2021年3月23日
2021年3月23日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 採用編~

前回のコラムで、人事部門の大事なポイントを紹介しましたが、引き続き今回は採用面で影響を受けた内容をまとめてみました。ご参考にして頂ければと思います。 コラム執筆者:一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー/理事長  上原良夫 採用で重視するポイント 求職者の能力のなかで、特に重視するのがコミュニケーション能力です。 ①相手の言っていることが理解できる。 ②相手の感情が理解できる。 ③会話のテンポと展開によどみがない。 ④自分が話をしているときに、相手の考えを掴んでいる。 ⑤運の良い人生を語れる。 採用は即決の場合もありますが、基本的に1週間程度の余裕をもって返答をしています。雇用契約は採用前に必ず交わし、配置、報酬、休暇、研修、OJT計画など入社後のトラブルを回避し、メンタルヘルス問題に関する混乱も、可能な限り入社前に対処します。 売上・利益への影響が大きいのは、予期しない退職が出る場合の交替人事であり、特に紹介会社社を使う場合です。可能な限り2か月以上前に把握して、お客様や社内外に迷惑のかからないよう雇用契約の遵守を毅然と促します。 評価、契約更新は社長、上長者が行い意思の疎通を良好にすること、そして社内を見渡して問題を抱えるスタッフの把握にも腐心すると、無駄な出費を減らすことができます。 採用時の優先順位は専門性の高さと経験度数を重視しながらも、心根が良く、気配りができ、人間関係を大事にできる人柄を重視します。 年俸制社員と回数制社員(訪問回数により給与が変動する歩合制)は、50:50のバランスが一番生産性が高く質が担保できると思います。しかし年俸制社員比率が高くても質と労働生産性の保証にはならないため、経営方針書を説明して綿密なコントロールを大事にします。 人材を人財などと呼んで表面的に人事を見栄え良くする組織もありますが、社員の本質は、給料と休みが平均以上に高く、教育研修投資を怠らない会社でロイヤリティを発揮する。そして自信と誇りを持てる、明るい将来が描かれているか、が大事です。 以下は、採用時の判断基準をまとめたものです。 以上、医療・介護業界の現場を知り尽くしたソフィアメディ(株)創業経営者水谷氏による、人事部門の重要ポイントでした。実践実学より築き上げた哲学が散りばめられていると思います。ご参考になれば幸いです。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【略歴】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務 【 参考 】 水谷和美著「訪問看護の社長業」

コラム
2021年3月16日
2021年3月16日

訪問看護師にビジネスマインドを持ってもらうには?

「看護師が一件一件の訪問に時間をかけ過ぎていて、トータルの訪問件数が増えず、売上が伸びない…」 「ステーション管理者が、労務管理やコンプライアンス遵守の感覚を持っていない…」 「人材採用やスタッフ教育を、もっと現場でしっかりやって欲しい…」 訪問看護事業を「ビジネス」として運営する事業者は、訪問看護師やステーション管理者などの専門職に対して、上記のような悩みや要望を持っている場合が多いようです。特に昨今は、訪問看護業界に民間事業者の参入が増えていることもあり、医療現場の経験がない「ビジネスマン」と、ビジネスの経験がない専門職が、お互いにカルチャーショックを受けるケースが増えています。事業者が日頃慣れ親しんでいるビジネス用語を使って現場業務の改善をリクエストしても、専門職がその意味や意図を十分に理解できず、一方的に指示を出す事業者に対して「現場のことをわかっていない!」と反発心を覚えるケースもあるでしょう。 本稿では、事業者を主な読者と想定して、訪問看護師にビジネスマインドを持ってもらうための、専門職とのコミュニケーションにおける工夫と心構えについて考察します。 コラム執筆者: 株式会社メディヴァ/コンサルタント 内野宗治   「奉仕の精神」と「ビジネス」は共存可能という現実を伝える 多くの事業者が「専門職はビジネスマインドに乏しい」と感じる背景には、専門職が経営やビジネスについて学ぶ機会を持つことが少ないという現実があります。 例えば看護学校や病院では、看護技術や「患者のための奉仕の精神」は学ぶものの、医療機関の経営やマネジメントについてはほとんど学びません。また、医療は公的な社会資本であり、多くの民間ビジネスのように純粋な市場原理で動いている世界ではないことも、看護師に限らず医療職が自身の仕事を「ビジネス」として捉えにくい一因でしょう。人によっては「奉仕の精神」と「ビジネス(≒お金儲け)」は相反するものだという認識を持っていて、事業者が利潤を追求することを快く思わないかもしれません。   こうした背景を踏まえると、専門職に対していきなり「ビジネスマインドを持て!」と言うのではなく、まずは「奉仕の精神」と「ビジネス」が共存可能であり、むしろビジネスとして成立してこそ継続的に「奉仕の精神」を発揮することができる、という現実を伝えていくことが重要でしょう。その上で、「ビジネスマインドを持つ」とは具体的にどういうことなのかを説明する必要があります。 課題の羅列ではなく、まずはポジティブなフィードバックを 事業者が「専門職はビジネスマインドに乏しい」と感じる事例として、例えば訪問看護師の中には「利用者さんのために」という気持ちが強い故に、一人の利用者への訪問に規定以上の時間を費やしてしまう人がいることが挙げられます。これは専門職としてのプロ意識、情熱の表れであるとも言える一方、訪問一件あたりにかける時間が増えると必然的にトータルの訪問件数が減ってしまうため、目先の売上は減少してしまいます。 もちろん、たとえ訪問件数が増えても、訪問時間が短くなったことによって一人一人の利用者に対するケアの質が下がってしまい、その結果として利用者が減少してしまうようでは本末転倒です。あくまでも「一人一人の利用者に質の良いケアを提供する」ことを前提に、時折「自分がしている仕事はどれくらいお金を生んでいて、どれくらいコストがかかっているのか」と考えて欲しい、というのが、多くの事業者にとっての望みではないでしょうか。効率化やコストカットばかり考えても、それが良いケアの提供に繋がる可能性は低いでしょう。 具体的なアプローチ方法として、まずは経営に関する情報やデータを必要に応じて専門職と共有し、職種の垣根を越えて対話する機会を設けてみるのはいかがでしょうか。その際、「訪問件数が少ない」「コストがかかり過ぎている」といった課題を羅列するのではなく、まずは「あなたがこれだけ売上を出してくれて、助かっている」といったポジティブなフィードバックを行い、その上で「もっと良くするにはどうすれば良いか」を話し合うことで、建設的な対話に発展する可能性が高まります。 専門職と非専門職の間で「翻訳」するスタッフがいることが理想 専門職と非専門職の間で、上記のような対話をスムーズに行うことができるに越したことはありませんが、実際にはなかなか難しく、上手くいかない場合もあるでしょう。そのような場合の解決策のひとつとして、両者の橋渡しを担う「翻訳者」とも言うべき人材を確保することが挙げられます。 経営的に成功している事業所には、現場の看護師と経営サイドの中間に立って、両者の意見や要望を「翻訳」して伝えるスタッフがいる場合があります。例えば「売上を伸ばす」「営業する」といったビジネスレベルの表現を「良いケアを実施して、地域で評価され、より多くの利用者に依頼される」「地域で顔の見える関係性を構築して、チームケアの質を向上させる」といった現場レベルの表現に言い換えることによって、専門職にとって受け入れやすい言葉になります。 小規模の事業所だと、そのような人材を探して採用することは現実的に難しいかもしれませんが、その場合は今いるスタッフの中から適任者を探して、実務を通じて「翻訳」技術を学んでもらうことが望ましいでしょう。また、たとえ「翻訳」できるスタッフがいるとしても、事業者自身が専門職の考えや現場の苦労を理解する努力をし、専門職とのコミュニケーションを図る必要があることは言うまでもありません。「訪問看護師にビジネスマインドを持ってもらう」には、まず事業者が「専門職マインドを持つ」ことが、実は一番の近道なのではないでしょうか。 株式会社メディヴァ コンサルタント 内野宗治 東京都出身。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。IT系コンサルティング会社勤務、ニュースサイト編集者、スポーツライター、通信社記者(マレーシア支局)等を経て現職。メディヴァでは、ヘルスケア関連企業の新規ビジネス開発や先進医療の普及・実用化に向けた戦略策定支援、自治体の地域医療拡充サポート、中央省庁の調査案件等に携わる。

コラム
2021年3月16日
2021年3月16日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 経営編~

【第1回】ソフィアメディ(株)創業者水谷氏から学んだ「訪問看護の社長業」(※1)について語ります。  コラム執筆者:一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー/理事長  上原良夫 訪問看護業界の経営基本 現役の頃、私は教育・研修部長まで引き上げていただき、水谷氏から直接幾つもの教えを受けました。 訪問看護事業に限らず訪問診療や介護系事業では、人事部門、教育・研修部門、渉外・営業部門、会計部門の4部門に強いリーダーを配置することが肝心だ、とも教わりました。 訪問看護ステーションの経営サイクルとは 製造業では、モノを仕入れて、加工して製品にし、売れるように商品化して販売します。そしてお金を動かす会計機能が重要ですが、我々の業界では以下のように置き換えます。 モノを仕入れる=優れた人物採用活動の徹底。 加工して製品にする=教育・研修メニューと運営の徹底。 売れるように商品化して販売する=技術は当然、礼儀、礼節、マナー、エチケット、言葉使いなど躾て、地域関係者に宣伝、広報活動を徹底する。 会計機能=事務、請求、回収、分配を徹底。 サービス業の経営視点 今回は人事部門の要領について自分が教えをいただいた内容を披露したいと思います。根本には何処にも真似ができない経営方針書があり、社員には開示して、毎朝朝礼で朗読もしていました。 先ず人事部門の定義は、「人が中心、人で社質が決まります」とその思想が明確であり、初っ端なから腑に落ちる文言がありました。 次には以下のような具体的な方針と手段が明記されています。(ここで伝えたい内容に絞っているため、全てではありません。) ① 募集媒体・イベント・少人数勉強会・体験訪問・採用特典等沢山の智恵を駆使します。通用しない過去手法は捨て、直ぐに次案を創造すること。 ② 就業特典や手当、入社前後の優遇策、女性・子育てに関する時間や立場の優遇策、短時間でも生産性が上がり労使にメリットがある工夫、教育・研修の徹底した差別化対応などの施策をどんどん打っていきます。 ③ SNS、ICTの先行と、有能コンサルタントの活用、隠れた異業種の優良企業との交流も積極的に進めて、井の中の蛙状態にならない。さらなる独自性を強く意識した人事部構造を創ることが大事です。この点、先行投資を惜しみません。 ④ 大学、短大、専門学校、業界団体等に顔を売ること。ある程度の定期訪問と情報交換、ときには会食も交えて人間関係を深めることが大事です。学校の講座やセミナーも引き受けて、直接学生に訴えるような場面をつくることも重要です。 ⑤ NS・PT・OT・STは臨床経験5年以上の中途採用に拘らず、短期の経験でも人間性と専門性を修得してもらい、ロイヤリティの高い人物を採用していきます。 ⑥ 総合職は大学新卒採用を基本としながらも、キャリアが必要なケースは中途採用で年間計画人員を確保します。事務職・介護職は新卒配置と中途採用の両面で対応します。 ⑦ 募集要項・会社の取り組み紹介は、知性と感性の勝負である。正直な内容は当然であるが、文章力、色、見せ方を泥臭くスマートに演出するのが鉄則である。HPは毎週1回、フェイスブックはほぼ毎日の管理が原則です。 ⑧ 肝心要は面接対応力ですが、親身、親切、丁寧、優しい、素敵な笑顔、動画企画が良い、機転・気が利く、前後の連絡が良い、幹部の同席、判断が早いなど全て競合と比較されています。応募者の判断基準は、事前の評判や規模・実績・給料の評価が50%、担当者の人柄、感じの良さ、熱心さが50%です。 いかがでしたでしょうか。訪問看護事業者といえども、全てサービス業の視点で深く追求していたと思います。専門職の狭い了見はなく、英知が散りばめられていました。次回はこの続きと他の部門について、ソフィアメディ(株)創業者水谷氏から薫陶を受けたことを語ります。 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫  【略歴】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務   【参考】 ※1:水谷和美著「訪問看護の社長業」

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