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2024年度介護報酬改定 ポイント解説/BCP・高齢者虐待防止措置の減算規定

2024年度介護報酬改定 ポイント解説/BCP・高齢者虐待防止措置の減算規定

2024年度介護報酬改定では、多くのサービスにまたがる義務化措置や加算の見直しが行われています。また、報酬の適正化という観点からの改定も行われました。今回は、そうしたテーマについて取り上げます。

BCPが未策定の場合の減算規定

まずは、2021年度に基準上の規定が設けられ、3年の経過措置をもって完全義務化された業務継続計画(以下、BCP)策定等の取り組みと高齢者虐待防止の推進です。いずれも2024年度からの完全義務化に伴い、未実施の場合の減算規定も設けられました。

1つめのBCP策定に関する完全義務化の内容を整理すると以下のようになります。

1. 感染症および自然災害の発生時を想定したBCPの策定
2. 1に従い必要な措置(備蓄品の管理や担当者の使命など)を講ずること
3. 従事者に対して、1にかかる研修を実施すること
4. 従事者に対して、1にかかる訓練(シミュレーション)を実施すること

※3および4に関しては、訪問看護の場合で年1回以上

上記のうち、1、2が未実施の場合の減算が設けられました。これを「業務継続計画未策定減算」といい、未策定の状況が解消されるまで所定単位数から1%が減算されます(施設・居住系については3%)。感染症および自然災害のBCP、いずれか1つでも未策定の場合で減算適用となるので注意しましょう。ただし、訪問看護を含む訪問系サービスについては、感染症対策の強化に関する義務化から日が浅いため減算規定の適用は2025年3月末まで猶予されます。

なお、減算になる期間は「1、2を満たさない状況が発生した翌月(状況の発生が月の初日であればその月)」からスタートし、「1、2を満たさない状況が解消された月」までです。

高齢者虐待防止措置の未実施も減算

高齢者虐待防止の推進において、2024年度から完全義務化となる項目は以下のとおりです。

1. 虐待の防止のための対策を検討する委員会(オンライン開催可能)を定期的に開催すること
2. 1の結果について、従事者に周知徹底を図ること
3. 虐待の防止のための指針を整備すること
4. 従事者に対し、虐待の防止のための研修を年1回以上実施すること
5. 1~4の措置を適切に実施するための担当者を置くこと

この1~5のいずれかでも実施されていない状況が生じた場合、速やかに都道府県*1に「改善計画」を提出しなければなりません。その上で、「改善計画」に則った取り組みを行い、「実施されていない状況」が生じて*2から3ヵ月後に、改善状況をやはり都道府県に報告して「改善」が認められることが必要です。

上記の「実施されていない状況が生じた月の翌月」から「最終的に都道府県に改善が認められた月」までの間は、減算が適用されます。これを「高齢者虐待防止措置未実施減算」といい、月あたり所定単位数から1%の減算が行われます。

*1 看護小規模多機能型居宅介護の場合、市町村(指定権者)に改善計画を提出する。
*2 運営指導等で未実施が発見された場合、その発見月の翌月からとなる。

身体的拘束等の適正化が運営基準に

先の高齢者虐待防止の取り組みは、利用者の尊厳確保に関して不可欠なテーマです。同様のテーマから定められた規定がもう1つあります。それが「身体的拘束等の適正化」です。診療報酬改定でも規定されていますが、改めて取り上げましょう。

>>診療報酬改定の「身体的拘束等の適正化」についてはこちら
2024年度診療報酬改定のポイント解説/医療DX、既存加算の適正化

具体的には、以下の規定が運営基準に設けられました。

1. 利用者または他の利用者等の生命・身体を保護するための「緊急やむを得ない場合」を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下、身体的拘束)を行ってはならない。
2. 身体的拘束等を行う場合には、その態様および時間、その際の利用者の心身の状況ならびに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。

いずれも施設系、居住系、短期入所系、小規模多機能系ではすでに設けられている規定ですが、2024年度からは訪問系や通所系、居宅介護支援でも定められました。

1の規定にある「緊急やむを得ない場合」とは、

  • 切迫性(利用者等の生命・身体への危険が切迫していること)
  • 非代替性(他に方法がないこと)
  • 一時性(一時的であること)

の3つの要件を満たすことです。各要件の確認については、組織としての手続きを慎重に踏む必要があります。現場の一従事者の判断だけに任せてはいけません。

特別地域加算等の地域の範囲見直し

訪問系、通所系、小規模多機能系など複数のサービスにまたがる加算上の見直しとしては、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算があります。いずれも、訪問時の移動に過剰な時間が費やされがちな地域で、その人件費・燃料費等のコストを考慮した加算です。

具体的な対象地域を示します。

診療報酬改定 特別地域加算等の地域の範囲見直し

いずれの対象地域にも含まれている「過疎地域」。この場合の「過疎地域」とは、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」の第2条第1項に規定された地域です。一方で、同法では「みなし過疎地域」に関する公示もあり、今改定ではこの「みなし」とされていた地域も含めることになりました。

PT等による訪問にかかる厳しい減算

最後に、利用者ニーズに合わせた訪問看護の適切な提供を図るための改定を取り上げます。具体的には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、PT等)によるサービス提供への評価です。

近年、訪問看護ステーションにおけるPT等の従事者割合が増えており、PT等の訪問による単位数も増加傾向にあります。

こうした状況を受け、リハビリ系サービスとの役割分担の観点から、2021年度改定ではPT等による訪問での基本報酬が引き下げられました。それでも、例えばPT等による訪問回数が看護職員による訪問を上回っているといったケースも指摘されていました。

そこで、2024年度からは、PT等による訪問についての減算も設けられました。減算の対象はPT等による訪問で、要件は以下のとおりです。

1. 事業所における前年度(前年4月から当該年3月まで)のPT等による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること
2. 1に適合しない場合であっても、前6ヵ月間において、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算をいずれも算定していないこと
【上記を満たす場合】
1回につき8単位を所定単位数から減算
(なお、1について、2023年度の実績に応じ、2024年度は同年6月1日から2025年3月末までの減算となる)

上記は介護予防訪問看護でも同様です。

なお、2021年度改定では、介護予防訪問看護の適正化の観点からサービス提供が12ヵ月超の場合に5単位の減算が適用されています。このケースについて、上記のPT等による過大訪問の減算が適用されている場合、減算幅は「5単位」⇒「15単位」となります。かなり厳しい減算となる点に注意が必要です。

次回は、トリプル改定のうちの障害福祉サービスの中から、訪問看護に関係のある内容を取り上げます。
>>次回の記事はこちら
2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など

※本記事は、2024年4月23日時点の情報をもとに記載しています。

執筆:田中 元
介護福祉ジャーナリスト
 
編集:株式会社照林社

【参考】
○厚生労働省(2024).「令和6年度介護報酬改定について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html
2024/4/23閲覧
○厚生労働省(2024).「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」
https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230308.pdf
2024/4/23閲覧

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