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公費54の請求方法

前回、難病患者が利用できるいくつかの制度について、概要をご紹介しました。今回は、そのうち難病法に基づく助成制度(公費54)での注意点や請求上のポイントをお伝えします。

概要

「難病の患者に対する医療等に関する法律」(難病法)にもとづく、医療費負担軽減の制度です。法別番号から、「公費54(ご・よん)」と呼ばれます。

助成内容

認定を受けた指定難病に対する医療費(訪問看護費、薬剤費を含む)が対象です。月の自己負担が一定額を超えると、その月の月末まで、自己負担分は公費で支払われます。

対象

指定難病のある患者が公費54を利用するには、
①難病指定医による指定難病の診断を受ける
②診断書と必要書類を都道府県に提出し、申請する
③都道府県による審査が行われ、認定がおりると医療受給者証が発行される
といった流れの手続きが必要です。
指定医療機関で特定医療(認定を受けた指定難病に起因する傷病への医療)を提供された際に、医療受給者証を提示し、医療費助成を受けることができます。

受給者証の確認

医療受給者証はこのようなものです。

通常のレセプトと同様、公費への請求も、正しい医療受給者証情報でなければ、実施したケアの医療費が支払われないことになります。被保険者証類とあわせて、確認のタイミングと確認方法を事業所で統一し、確認漏れがないようにしましょう。
(1) 有効期間
医療受給者証の有効期間外に提供した医療は、公費の対象とはなりません
期限は1年で、更新するには新たに診断書作成が必要なので、難病指定医または協力難病指定医(更新の診断書のみ作成可能)の診断を受け、更新の申請をする必要があります。
なお現在は、新型コロナウイルス感染症拡大防止対応として、有効期限延長の特別措置がとられています。有効期間終了が令和2年3月1日~令和3年2月28日と記載の医療受給者証は、原則1年間有効期限を延長して取り扱うことができます。(※1)
(2)自己負担上限額
自己負担上限額に達するまでは、自己負担分(主保険の負担割合に応じて1割または2割)を患者に請求します。
(3)指定難病名
指定難病の病名を確認します。公費への請求時に、提供したケアが起因する傷病に対するものであることを確認します。
(4)指定医療機関名
自治体によっては、特定医療を提供するには、この欄に医療機関名の記載が必要な場合があります。
(5)適用区分、公費負担者番号、受給者番号、氏名、住所
被保険者証と同様に、レセプト記載と合致していなければ、医療費の支払いが保留されレセプトが返ってきます。カルテなどと一致しているかを1字ずつ突き合わせて確認します。
・文字の突き合わせのコツ
すでにカルテなどに入力されている文字情報があると、人の目ではどうしても思い込みがあり、相違を見過ごしてしまう可能性があります。意味を読むことをせず、記号だと思って1字ずつ見ていくことで、見落としリスクが低くなります。
文字の並びを逆から見て確認する方法もあります。たとえば「1234567」なら、後ろから1字ずつ、1文字目の「7」と「7」は合っているか、「6」と「6」は合っているか、……と確認します。
2人以上で確認できる場合は、1人目は頭から「1234567」、2人目は後ろから「7654321」と確認します。このように、見る人を2人にするだけではなく、チェック方式を変えて2回チェックすることが、本来のダブルチェックです。

請求

医療保険の場合を例に説明します。公費54は介護保険での訪問看護も対象であり、介護レセプトでも考えかたは同様です。
● 主保険が国保・後期高齢者医療なら国保連合へ、社保なら支払基金へ請求します。レセプトは公費併用レセプトになります。
● 公費負担者番号・受給者番号の欄に、医療受給者証に記載の番号が記載されていることを確認します。
● 主保険と54の併用の場合、「2併」を選択します。他にも公費がある場合は「3併」になります。
● 特記事項欄に、適用区分を記載します。
● 主保険へ請求する分は通常と同様に記載し、公費へ請求分を、右列の「公費分金額」へ記載します。
● 特定医療とそれ以外の医療が1枚のレセプトで混在するなど、公費適用有無の区別が必要な場合は、公費適用の項目に下線を引きます(レセプト記載内容から公費適用有無が明らかなら省略しても構いません)。
特定医療(認定された指定難病に対して、指定医療機関が提供する医療)以外にかかった医療費は、助成の対象となりません 。通常と同様に、負担割合に応じた自己負担と、主保険への請求になります。

市町村の助成との併用

難病を対象にした自治体独自の助成も数多くあり、次のようなタイプに分けられます。
(1)対象拡大
【例】国の指定難病以外に、自治体が独自に定めた疾病に対し、自治体による助成が行われる
(2)助成額の拡大
【例】国の制度により発生する自己負担分を、一部自治体が補助し、患者自己負担をさらに軽減する
自治体独自の助成が利用できる場合は、対象や助成範囲を理解しておきましょう。
請求の際に重要なことは、国の公費が利用できる場合は、自治体の公費は国公費の後に使うことです。
たとえば、公費54と自治体の公費を併用する場合は、
主保険→公費54→自治体の公費の順で請求します。

①    主保険…1割負担
②    公費54…自己負担額1万円
③    自治体の公費…1回の自己負担額上限が500円
の3つを併用する場合を考えてみましょう。
 4月1日に訪問し、かかった費用が7000円だったとします。4月1日分の請求は、
(1)主保険への請求
この患者は1割負担なので、9割の6300円を主保険に請求します。
(2)公費54への請求
公費54の対象になるのは主保険負担分を差し引いた700円ですが、今月はまだ患者自己負担額が上限1万円に達していません。ですから、公費54への請求はありません。
(3)自治体公費への請求
自治体公費には、1回の自己負担500円を超えた額を請求します。
4月1日分は、500円との差額200円を自治体公費に請求し、患者には500円支払ってもらいます。
上記は1回の支払いの場合の考えかたですが、実際は、訪問看護では月まとめ請求が多いと思います。 月まとめ請求での考えかたについては、次回の記事でお伝えします。
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監修:あおぞら診療所院長 川越正平
【略歴】
東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医院。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。
記事編集:株式会社メディカ出版
 【参考】
※1 厚生労働省 令和2年4月30日事務連絡「新型コロナウイルス感染症の影響を踏まえた公費負担医療等の取扱いについて」
https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/000626936.pdf
・難病の患者に対する医療等に関する法律(平成26年法律第50号)
・厚生労働省 保医発0327第1号 令和2年3月27日「「診療報酬請求書等の記載要領等について」等の一部改正について」
・厚生労働省健康局難病対策課 令和元年6月「特定医療費に係る自己負担上限額管理票等の記載方法について(指定医療機関用)」

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