年末年始【訪問看護のシフト調整】ベテラン管理者に聞くシフト調整の基本
1年のなかで、最も訪問看護のシフト管理に気をつかう年末年始。悩ましい問題だけど誰にも相談できない……という方も多いのではないでしょうか。今回はベテランの管理者さん2名に年末年始の訪問看護におけるシフト調整の基本についてうかがいました。
目次 ▶ 「年末年始のシフト調整に協力的な看護師」に甘えてはいけない ▶ 常勤看護師4名、平均年齢35歳のステーションのケース ▶ 常勤看護師20名、平均年齢25歳のステーションのケース ▶ これが年末年始、訪問看護シフト調整の大基本! 日頃からの意識統一が大事 |
プロフィール/
E戸さん(シフト管理歴10年目)
病棟や複数の訪問看護ステーションでの勤務を経て2018年に起業。訪問看護ステーション経営者として看護師の教育を行いながら、自身も訪問看護師として活躍。管理者として勤務していた時期を含め、今年でシフト管理歴10年目のベテラン看護師さん。
S山さん(シフト管理歴4年目)
急性期病棟で看護師として活躍したのち訪問看護へ。新規訪問看護ステーションの立ち上げから携わり、シフト管理歴は今年で4年目。看護師3名体制から始まり、現在は合計20名のシフトを管理している。20代看護師の育成にも尽力。
目次
「年末年始のシフト調整に協力的な看護師」に甘えてはいけない
S山:
僕は、こういう看護師が年末年始のシフト調整に協力的でありがたいなと感じています。
【シフト調整に協力的な看護師】 ・独身で土日休みを希望していない看護師 ・家族に医療関係者がいる看護師 ・利用者目線が高い看護師 |
E戸:
僕のところも同じです。協力を得やすい看護師はいますが、だからこそ、その方だけに負担がいかないようにするのが重要ですよね。
S山:
少しずらした時期で有給を取得してもらったり、年末年始に出勤してもらう場合は『年末年始ならでは』の少し楽しい勤務をしてもらったり、という配慮も必要だと思っています。
E戸:
協力的だからといって、毎年同じ方ばかりにお願いするのも避けたい。僕を含め、休んだ方は忘れてしまうけど、出勤した方は絶対に覚えていますから(笑)。特定の看護師がシフトの不満をためこんでしまうことがないよう、手当や休暇の部分でしっかりサポートします。
E戸さんの訪問看護のシフト調整テクニック
常勤看護師4名、平均年齢35歳のステーションのケース
E戸:
僕なりの年末年始の訪問看護におけるシフト調整テクニックをご紹介します。配偶者や子どもがいる看護師も在籍していますが、全員がオンコール対応できる体制を作っています。
【シフト管理を行っている訪問看護ステーションの基本情報】 ・24時間365日対応 ・看護師の人数:4人(常勤)+1人(非常勤) ・所属看護師の年齢:31歳~48歳(平均年齢:35歳) ・固定給制度 【年末年始のシフト調整難易度】 いつもとても苦労する 【年末年始手当】 5,000円/1件あたり ※12月31日~1月3日の期間 【ここがポイント】 Point1 年末年始の勤務記録を見える化 2019年、2020年、2021年……と、それぞれ年末年始に勤務した看護師を記録し、全員がひと目でわかるようにする。勤務記録をもとに訪問看護のシフト調整を行い、毎年同じ人が年末年始勤務を担当することがないようにしている。 Point2 全員でホワイトボードに出勤可能日を書き出す 年末年始のシフトを決めるときは、全員参加でホワイトボードを活用。過去の年末年始の出勤履歴を見返しながら、自分が出勤できる日を自主的に書き込んでもらう。 Point3 大晦日と正月は訪問数を減らせるよう事前に調整 年末年始の看護負担が大きくならないよう、利用者さんとも事前に連携。大晦日と正月は訪問数を減らせるように早めに調整を行う。 |
S山さんの訪問看護のシフト調整テクニック
常勤看護師20名、平均年齢25歳のステーションのケース
S山:
次は僕の年末年始の訪問看護におけるシフト調整テクニックをご紹介します。うちは20代の独身看護師が多く在籍していて、年末年始はどうしても休みたい! という方も少ないので、比較的シフト調整はスムーズだと思います。
【シフト管理を行っている訪問看護ステーションの基本情報】 ・24時間365日対応 ・看護師の人数:20人(常勤/4拠点合計) ※訪問看護ステーション4拠点分のシフトをまとめて管理 ステーション間での看護師の行き来も頻繁にある ・所属看護師の年齢:22歳~35歳(平均年齢:25歳) ・固定給制度 【年末年始手当】 1,000円/1件あたり ※12月31日~1月3日の期間 【年末年始のシフト調整難易度】 普段と変わらない 【ここがポイント】 Point1 11月初旬から看護師に年末年始休みの希望表を提出してもらう 早め早めの調整が重要。全員に希望表を提出してもらい、11月初旬から調整を始めることで、不平等感のない訪問看護シフトに近づけていく。 Point2 11月初旬から利用者にも希望を確認する 利用者の方の要望に応じて必要な看護師の数を設定。できるだけ多くの看護師が休みをとれるための根回しも欠かさない。 Point3 看護師に出勤をお願いするときのポイントは『平等性』と『特別感』 本人の希望通りのシフトを組むことが難しく年末年始の出勤をお願いするときは、『平等性』という視点から「なぜあなたに頼むのか」を伝える。そのとき「○○さんだからお願いしたい」と特別感を出して依頼すると承諾してもらいやすい。 |
これが年末年始、シフト調整の大基本! 日頃からの意識統一が大事
E戸:
年末年始やゴールデンウイークなどの訪問看護におけるシフト調整はたしかに難しいですが、大前提として大事なのはこれだと思っています。
重要Point 利用者さんと看護師を固定化しないためのルール決め |
E戸:
1人の利用者さんを1人の固定の看護師が看る体制をつくってしまうと、ゴールデンウイークや年末年始に看護師が休みにくくなりますから。だからそれを防ぐために、利用者の方との契約段階から「看護師の指名はできない」ことを伝えて理解してもらっています。
S山:
そうですよね。利用者さんの気持ちをくんでどうにかしたい気持ちもあるんですけど、看護師を守らないといけない立場だからバランスが難しい。それに、担当制にすると自己犠牲でがんばりすぎる看護師が出てきてしまうんですよね。
E戸:
看護師側も「私じゃなきゃこの利用者さんは看られない」なんて考えるようになってしまう人も、少なくないですからね。でもそれだと健全な関係を保てなくなることも多い。だから利用者さんに対してもだし、看護師に対しても『みんなで看る』ことを徹底するのが重要ですね。
記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア