かぶれ?褥瘡?臀部が広範囲に赤くなっている場合のアセスメント
高齢患者さんの症状や訴えから異常を見逃さないために必要な、フィジカルアセスメントの視点をお伝えする連載です。第6回は、3日間下痢便が続き、臀部が広範囲に赤くなっている患者さんです。さて訪問看護師はどのようなアセスメントをしますか?
事例
98歳女性。 おむつで排泄しています。ここ3日間下痢便が続き、まったくベッドから出ない生活になってしまいました。臀部が広範囲に赤くなっているようです。 あなたはどう考えますか? |
アセスメントの方向性
臀部の発赤がみられる事例です。
皮膚のびらんの原因は、下痢便であることは確かだと思われます。発赤が紅斑化していれば、末梢血管がすでに損傷を受けていると判断されます。
ベッドから出ない生活、皮膚の浸軟、下痢による栄養状態の悪化・脱水から、褥瘡を生じている可能性も高いです。
どちらも、早期に適切な皮膚ケアを行うことで悪化を防ぐ必要があります。
ここに注目!
●下痢便による、びらんの可能性がある。 ●皮膚のびらんだけでなく、褥瘡を生じている可能性がある。 |
主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと)
・皮膚トラブルについて(時期、範囲、経過、疼痛・瘙痒感などの随伴症状)
・下痢の原因・頻度と経過
・おむつ交換の回数と、陰部・臀部の皮膚の清潔ケアの方法と頻度
客観的情報の収集
かぶれ
かぶれとは、化学的刺激への接触により皮膚炎を生じた状態です。紅斑や丘疹から始まり、びらんとなります。
便によるかぶれであれば、肛門部を中心に、下痢で汚染される範囲にみられます。真菌感染等を併発することもあるため、難治性の場合は速やかに報告する必要があります。
皮膚の清潔度
肛門部・臀部・陰部の清潔度合いを観察してください。きれいにできておらず便が残っていると、便による化学的刺激が除去されていないため、皮膚症状は改善しません。
また、きれいにしようとこすることによって、その摩擦により皮膚トラブルが悪化することもよくあります。清潔度とともに、どのようなケアを家庭で行っているかを確認するとよいでしょう。
褥瘡
褥瘡の好発部である、体圧が集中する仙骨部の皮膚を観察します。周囲のかぶれとの違いを観察し、赤みが強い場合は、紅斑化している可能性が高いので、一時的な発赤なのか、紅斑化した初期の褥瘡かを、判別することが重要です。
紅斑化した初期の褥瘡では、出血や滲出液がみられないため、視診した際には単に「赤くなっている」という印象しかありません。褥瘡好発部位に発赤を発見した場合は、それが紅斑化していないかを必ず確認してください。
紅斑化している場合は、押しても白くならず赤いまま、または、赤みが戻るスピードが速くなります1)。これは、毛細血管に障害があって血流が妨げられているサインです。Ⅰ度の褥瘡になっていると考えられる状態です。これを見逃さず、早めの対処をしましょう。早期発見は早期治癒への近道です。
さらに、水疱があり、滲出液が出ている場合はⅡ度と判定されます。早めに褥瘡・皮膚ケアの専門家に状況を伝えて、相談してください。
報告のポイント
・皮膚トラブルの部位、範囲、湿疹の種類、分布の特徴、随伴症状
・褥瘡の有無とリスク
・下痢の原因と経過
執筆 角濱春美(かどはま・はるみ) 青森県立保健大学 健康科学部看護学科 健康科学研究科対人ケアマネジメント領域 教授 記事編集:株式会社メディカ出版 |
【参考】
1)日本褥瘡学会学術教育委員会ガイドライン改訂委員会.褥瘡予防・管理ガイドライン.第3版.
http://www.jspu.org/jpn/info/pdf/guideline3.pdf