[4]教員との密な連携で、スタッフも学生も『やってよかった』と思える実習を!
この連載では、大変そう…と思われがちな訪問看護実習の受け入れについて意外とそうじゃないかも、と思ってもらえるようなあれこれをご紹介します。最終回の今回は、実習の実施にあたって順調に進める秘訣をご紹介します。
目次
実習中の連絡方法を事前に取り決めておくことが重要
実習でお世話になっている訪問看護ステーションは、小規模のステーションが多く、受け入れていただける学生の人数が限られています。そのため多くのステーションに学生を受け入れていただいているので、実習中教員は複数のステーションを巡回指導することになります。
このような状況なので、いざ実習が始まってしまうと、なかなか実習指導担当者や学生との連絡が取りづらく、すれ違いになってしまう場合があります。まったく連絡が取れないと、教員、実習指導担当者ともに不安になると思うので、私は、必ず実習が始まる前に時間調整し、情報共有を図る機会を設けていただけるように訪問看護ステーションにお願いをしています。
実習中は直接会えないことも多いので、電話やFAX、メールを活用しています。話し合う必要がある場合、Web会議を設定することもあります。なるべく連携不足を解消できるような手段を講じていくことが大切ではないかと思っています。
また、これまでの経験から、実習前のほうが実習指導担当者とも連絡が取りやすいので、実習が始まるまでの間に、効率よく、かつ十分な情報共有を行う取り組みを行っています。
具体的には、訪問看護ステーションの基本情報の確認、実習の目的・目標・実施方法の共有を行っています。具体的な内容を順に説明していきます。
訪問看護ステーションの基本情報の確認
実習先の情報を学生にも把握してもらうため、訪問看護ステーションの基本情報をシートに記載しまとめています。図1に実際に使用しているシートをお示しします。
図1 実習時に活用している訪問看護ステーションの基本情報シート
青字は記載例。訪問看護ステーションの名称、所在地・行き方、実習指導に関わるメンバーの名前と連絡先、特記事項、服装、持ち物なども記載しています。このシートを見れば基本的なことは何でもわかるようにしています。
実習の目的・目標・実施方法の共有
学校側で定めた実習の目的や目標を訪問看護ステーションの実習指導担当者と共有します。そして、実習目標に到達できる実習方法をステーションの特徴に合わせて検討します。
実習の実施方法を具体的に検討することで、実習指導に必要な情報が見えてきますので、よりスムーズに実習を進めることができます。また、学校のほうで実習指導に活用してもらえる内容をまとめたファイルを作成し、訪問看護ステーションにお渡ししています。このファイルについては次の項目で詳しくご紹介します。
訪問看護ステーションに『学校発の実習ファイル』を設置
実習指導担当者からある時、指導する学生さんについてもっと知りたいという要望を受けたことがありました。実習に出るまでにどういったことを学んできているのか、学習への取り組み姿勢など、実習指導に活かせる情報を共有してほしいと言われました。
そこで、私の学校では『学校発の実習ファイル』を作成し、実習期間中ステーション内に置かせてもらっています(図2)。ファイルには、教員の連絡網や学生の実習配置表(どの学生がどこの実習先に行っているかをまとめた表)、実習要綱、学生の評価方法をまとめた資料に加えて、学生が実習までに取り組んできた課題やレポートなどを綴じています。他に、学生のアレルギー情報を記載した資料も入れています。
こういった資料を通して、学生のことを少しでも知ってもらいたいと考えていますし、実習への考え方を伝えることができればと思っています。
図2 実習ファイル
このファイルには学生のアレルギー情報も記載しています。動物を飼っている利用者さんもいらっしゃるので、動物アレルギーの有無は事前にお伝えしています。なお、ファイルは実習終了後に回収します。
学校側はこんなことを知りたいと思っています
最後に、学校側から訪問看護ステーションの方へのお願いとして2つあります。
連絡の取りやすい時間帯を教えてください
実習指導担当者は、訪問看護業務のためステーション内にいらっしゃらない時間や申し送り、定例会議の時間帯があるかと思います。そういった時間を避けて、比較的連絡がつながりやすい日時を教えていただければ、タイミングのよいときにこちらからご連絡します。カンファレンスの日程調整や実習指導のお打ち合わせもスムーズに進むと思いますので、ぜひ学校側に遠慮なく『この時間なら空いているよ!』と声をかけていただけるとうれしいです。
訪問看護ステーションのスタッフの方からも実習に対するご意見を伺いたいです
我々教員は、管理者や実習指導担当者とお話しする機会は多いのですが、他の訪問看護師やリハビリテーションのスタッフとは、実習開始後の巡回指導のとき以外、交流する機会がほとんどありません。限られた時間しかお会いできませんが、実習指導に関して日ごろ感じていらっしゃることなどを気軽に話していただけると幸いです。教員の多くは、スタッフのみなさんとも交流を深め、指導に関する助言や考えに触れたいと思っているのではないでしょうか。
実習以外の交流も進めています!
私の大学ではちょうど実習が始まる前の時期に在宅看護の実際をテーマにした講義を実習先の訪問看護師の方にお願いしています。
学生にとっては現場の訪問看護師から直接話を聞ける機会であり、訪問看護師さんにとっては実習前に学生の雰囲気を感じてもらうよい機会になっています。また、実習が始まれば、講義で一度会っているので、共通の話題もあり、コミュニケーションを図りやすいそうです。
講義を引き受けてくださった「訪問看護ステーション彩」の管理者・上野朋子さんは、授業の資料準備は大変だけれど、準備の過程で日々実践している訪問看護の振り返りができ、学生に伝えたいことを整理するチャンスになっていると話してくれました。
「ニーズ訪問看護・リハビリステーション西大宮」の所長・金子孝奈さんは、大学での講義について、看護の実践や経験などを後輩に聞いてもらえることをうれしく思うと話してくれました。
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今回、この記事の執筆をきっかけに日ごろお世話になっている訪問看護ステーションの管理者や実習指導担当者に、訪問看護実習の受け入れについてじっくりとお話を伺うことができました。
みなさん、未来を担う訪問看護師の育成に少しでも貢献したいという気持ちで受け入れてくださっていることがわかり、学生を送り出す側として感謝の気持ちでいっぱいになりました。
この記事を通して訪問看護実習の受け入れについて、読者の皆様に少しでも関心を持っていただければ幸いです。
■取材協力者(登場順) 訪問看護ステーション彩~いろどり~ 管理者 上野 朋子さん https://tact-company.com/ ニーズ訪問看護・リハビリステーション 西大宮 所長 金子 孝奈さん https://www.needs-houmonkango.com/ 執筆 王 麗華 大東文化大学 スポーツ・健康科学部 看護学科 教授 ●プロフィール 1999年、国際医療福祉大学保健学部看護学科を卒業。看護師と保健師資格取得後、地域の病院と訪問看護ステーションでの勤務を経験。その後、国際医療福祉大学看護学科准教授などを経て、2018年より現職。 記事編集:株式会社照林社 |