第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月9日開催】
春の足音を感じる2024年3月9日(土)、銀座 伊東屋 「HandShake Lounge」(東京都中央区)で「第2回 みんなの訪問看護アワード」の表彰式を開催しました。訪問看護に携わる皆さまの日々の努力を世の中に認知してもらうことを目的に2023年度から始まった本イベント。表彰式では、全国各地からお越しいただいた受賞者の方々や審査員の先生方、協賛企業の皆さまとともに、表彰、特別トークセッション、懇親会などで盛り上がりました。表彰式当日の様子や、参加者の皆さまの感想をまとめたレポートをお届けします。
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つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞
つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞
受賞者の皆さまへのトロフィー・記念品授与
まずは受賞者の皆さまへの表彰が執り行われました。入賞12名、協賛企業賞5名、審査員特別賞3名、ホープ賞1名、大賞1名の順にお一方ずつ審査員の先生方からトロフィーと記念品が授与されました。
栄えある大賞には、岡川修士さん(大阪府)が投稿されたエピソード「役割を求めて」が選ばれました。
岡川さんの受賞コメントを一部ご紹介します。
「まずは、『パーキンソン病と闘う患者さんの励みになるなら』と、本名とご自身の病名をエピソードに使ってもいいと承諾してくださった同僚の加東さんにお礼を伝えたいです。私が所属する訪問看護ステーションは6人と小規模で、まだ開設して2年も経っていません。日々一緒に奮闘する仲間たちに受賞を報告すると、みんな私以上に喜んでくれました。当社は『ものがたりケア』をモットーにしています。私たちがケアに当たる利用者さんには、それぞれ今に至るまでの『ものがたり』があり、過去からつながる人生の一部なのだと念頭に置きながら、丁寧に接することを大切にしています。そんな私たちのケアがひとつのエピソードとして受賞したので、弊社代表もとても喜んでくれました。大賞をいただけて素直にうれしい気持ちでいっぱいです。ありがとうございました」
岡川さんの「役割について」を大賞作品に選出した理由について、特別審査員の高橋洋子さんからのコメントもご紹介します。
「パーキンソン病で今までできたことができなくなるという悲嘆の中、利用者さんは自分の存在や役割について悩まれます。そんな利用者さんに対して何かしたいという岡川さんの真摯な姿勢が文章から伝わってきました。利用者さんができる役割を思いつき、それを後押しする社長さんや訪問看護ステーションの風土にも感銘を受けました。体が自由に動かなくなっても自分らしく生きたいと思われる利用者さんを、訪問看護のスタッフが支えていく。それが我々の目指すべき姿であることを教えてくださったエピソードだと思い、選出させていただきました」
会場では、制作中の漫画の下書きも披露されました。大賞の「役割を求めて」の漫画化をしていただく看護師・漫画家の広田奈都美さんからのコメントも一部ご紹介します。
「このエピソードを読んだとき、何か哲学を教わっているような感覚になりました。漫画を描くにあたって岡川さんからお話を伺った際、『ものがたり』というキーワードが出てきて『なるほど』と共感しました。この利用者さんのものがたりすべてを描くことはできませんが、ものがたりの中の『一瞬』を精一杯、描かせていただきたいと思います」
エピソード・訪問看護に関するトークセッション
例えば作業療法士の白﨑さんは、引きこもりがちな利用者さんの「外出する目的」をつくるため、ご本人が「お花好き」という点に着目。雑木林をひまわり畑にし、「お花の世話をする」という目的をつくり出そうとしたことが、今回の投稿エピソードにつながったと紹介。利用者さんの状態や気持ちに寄り添いながら、「自分たちに何ができるか」と真摯に考え、日々チャレンジし、奮闘されている様子が3人のお話から伝わってきたトークセッションでした。
すぐに打ち解けて話が尽きなかった懇親会
式典が終了した後は、軽食や飲み物を楽しみながら審査員の先生方、受賞者のみなさん、協賛企業のみなさんとの懇親会を開催。リラックスした雰囲気の中、同じ職種だからこそ話せる日々の悩みを相談する姿も。初対面の方々がほとんどの中、すぐに打ち解けて、記念撮影を楽しまれている姿も多く見られました。笑いが絶えずいつまでも話が尽きない中、みなさんお別れが名残惜しそうでした。
審査員の先生方・受賞者の皆さまのご感想
最後に、「みんなの訪問看護アワード」や表彰式について、特別審査員の先生や受賞者の皆さまに伺った感想をご紹介します。
高砂 裕子さん (一般社団法人全国訪問看護事業協会 副会長) こうしたイベントを開催することで、訪問看護の現場で頑張っているみなさんの声を世の中に届ける機会になるだけでなく、これから訪問看護師として働く方々にも、現場のイメージができて役立つ内容だと思います。全国各地から集まって意見交換をし、元気になってそれぞれの地域に戻る、という仕組みをつくっていただいたことはとても素晴らしいことだと思います。このイベントが今後も継続できるように、運営企業や協賛企業の皆さまのご支援をいただければ幸いです。 |
高橋 洋子さん (公益財団法日本訪問看護財団 事業部課長) 審査員としてみなさんのエピソードを読ませていただき、利用者さん一人ひとりに素晴らしい人生ドラマがあり、そうした人たちを支えている訪問看護師は本当に素敵な仕事だと感じました。普段は一人で利用者さんのお宅をまわり、孤独でハードな仕事だと思います。でもこうしたイベントがあれば、ほかの訪問看護師さんの話を聞いて共感し、悩んでいるのは自分だけではなく全国に同じように頑張っている仲間がいるんだと思えます。現場に戻って働くための心の糧になるでしょう。そうした意味でも、素晴らしいイベントだと感じました。 |
山本 則子さん (東京大学大学院医学系研究科 教授) トークセッションが大変興味深く、投稿エピソードの背景にはどのようなお考えがあったのか、本来であれば全員のお話を掘り下げて伺いたいと感じたくらいです。なかなか表に出てこない訪問看護のエピソードが、「みんなの訪問看護アワード」によって日の目を見ることができるのは、とても意味のあることだと思います。利用者さんの背景も価値観も異なるので、十人十色のエピソードがあり、それが在宅ケアの特徴なのだと改めて感じました。 |
長嶺 由衣子さん (東京医科歯科大学国際健康推進医学 非常勤講師) このイベントは訪問看護の世界で働く人々のネットワークを生むことはもちろん、訪問看護に携わるみなさんの感性を育てる場でもあると改めて思いました。エピソードを書くという場があることで、自身の仕事を振り返り、感じ、気づく機会になります。ぜひこのイベントを継続していただきたいです。今回はリハビリ職が利用者さんのやりがいにアプローチをして受賞したケースも複数あり、訪問看護が地域ではたす機能の可能性について思考する会になりました。ぜひ多職種が連携して訪問看護を盛り上げていただきたいと思います。 |
大石 佳能子さん (医療法人社団プラタナス/株式会社メディヴァ 代表取締役) 訪問看護という忙しい仕事の中で、日々の経験を振り返って文章にすることはなかなかないと思います。こうしたきっかけがあれば言語化して振り返る機会となり、「自分はこんなことを大切にしていたんだ」という気づきを得られるはずです。報告書には書かれていない利用者さんやご家族、そして訪問看護師の心の軌跡のようなエピソードを所属先の仲間に共有すれば、普段から何を大切にして働いているのかといった価値観をみんなが知る機会となり、その訪問看護ステーションの強みになっていくのではないかと思います。 |
大日向 莉子さん (協賛企業賞受賞者/東京都/写真左) 妹に誘われたのがきっかけで今回応募するに至りました。まさか姉妹で受賞できるとは思わず、本当に光栄です。私のエピソードはみなさんのように特別な、素敵なイベントを切り取ったものではなく、お看取りを経験する人なら誰もが抱えるジレンマなのではないかなと思っています。今回賞をいただいたことで、私の抱えるジレンマや感情が肯定されたように感じ、それが一番嬉しかったです。今回みなさんの素晴らしい看護のお話を聞き、多くの学びがありましたしもっと知りたいと思いました。このような場がこれからも増えますように。 大日向 麻子さん (入賞者/東京都/写真右) 受賞して会場に訪れ、みなさんのお話を伺えたことが何よりもうれしかったです。トークセッションでは、利用者さんやご家族が納得して看護やケアの方法を選択し、前に進めるかどうかを尊重する考え方もあると知り、感銘を受けました。また、私は看護の限界を決める必要はなく、アイデア次第で可能性が広がっていくと思っています。エピソードが入賞したことでそうした訪問看護の魅力を伝えられる機会を与えていただきました。ありがとうございます。 |
小林 奈美さん (協賛企業賞受賞者/広島県) 「みんなの訪問看護アワード」の存在は、SNSで交流をしていた第1回の受賞者の方に教えていただいたんです。その方から「来年もあるから、一緒に受賞して銀座で会いましょう!」と言ってもらい、エピソードを投稿しました。その言葉通り、今日初めて対面でお会いすることができて、とてもうれしかったです。漫画家の広田奈都美先生にもお会いでき、広島から参加した甲斐がありました。 |
表彰式にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。大賞作品の漫画は、2023年4月下旬にNsPace上で公開予定です。審査員特別賞・ホープ賞の漫画化や、表彰式のトークセッションのレポート記事の制作も予定しています。ぜひご覧ください。
取材・執筆:高島三幸
編集:NsPace編集部