特集

水痘(水ぼうそう)の症状・対処・予防法 帯状疱疹との関係も解説

水痘(水ぼうそう)の症状・対処・予防法 帯状疱疹との関係も解説

水痘(水ぼうそう)は子どもの病気とされていますが、大人もかかる可能性があります。大人がかかると重症化しやすいことに注意が必要です。また、過去に水痘にかかった人は、加齢とともに免疫力が低下すると、帯状疱疹を発症する恐れがあります。この記事では、多くの子どもがかかる水痘の症状や対処方法などを解説します。訪問看護の利用者さんはもちろん、ご自身やご家族の健康管理のためにも、水痘について確認しておきましょう。

水痘(水ぼうそう)について

水痘の症状や原因、感染経路、重症化リスクについてみていきましょう。

症状

水痘帯状疱疹ウイルスに感染後、2週間程度の潜伏期間を経て発疹が現れます。通常、子どもの場合は発疹が最初に現れる症状ですが、大人の場合は発疹が現れる前に発熱と全身倦怠感を伴うことがあります。

発疹は頭皮、体幹、四肢の順で現れ、かゆみを伴います。短時間で紅斑、丘疹、水疱、痂皮へと変化し、数日かけて発疹が現れるため、各段階の発疹が混在することが通常です。また、気道や鼻咽頭、膣などの粘膜にも発疹が現れる場合があります。倦怠感やかゆみ、発熱などが2〜3日続く軽症であることが一般的です。

原因

水痘は、水痘帯状疱疹ウイルスに感染することで引き起こされます。水痘帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルス科のα亜科に属するウイルスで、初めて感染する際は知覚神経節に潜伏感染します。水痘の症状が落ち着いた後も体からウイルスが完全に消失したわけではなく、疲労や加齢などで免疫が低下した際に再び増殖し、帯状疱疹として症状が現れます。

感染経路

水痘帯状疱疹ウイルスは世界中に分布しており、家庭内で起きたものについては90%以上が感染するとされています。感染者の水疱内容物や気道分泌物が主な感染源で、空気感染、飛沫感染、接触感染により広がります。発疹が現れる1〜2日前から出現後4〜5日、または痂皮化するまでは人にうつる可能性があります。そのため、水痘に気づいたときにはすでに周りの人にうつしている可能性があるので、その後の経過を慎重に見ることが重要です。

重症化リスク

水痘の重症化とは、子どもの場合は熱性けいれんや気管支炎、肺炎などの合併症が起きることを指します。大人の場合も合併症が見られることがありますが、水痘そのものが重症化するリスクが高いとされています。大人の水痘が子どもより重症化する理由として、細胞性免疫が強いため感染細胞の障害が著しいこと、成人の発熱性疾患の中では頻度が少ないため診断が遅れる場合があることなどが考えられます。合併症としては、肺炎や脳炎、心膜炎、細菌の二次感染による敗血症などが報告されており、特に免疫機能が低下している場合は、重症化しやすく生命の危険を伴うことも。十分な注意が必要です。

水痘のワクチン接種

水痘のワクチンは、1回の接種で重症化をほぼ100%予防でき、2回の接種によって発症そのものを高確率で予防できるといわれています。予防接種の時期は、1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日までです。1回目の接種は生後12ヵ月から生後15ヵ月まで、2回目の接種は3ヵ月以上の期間を空けて行います。

大人でもワクチン接種は可能で、過去に接種した回数を考慮して接種回数を決定します。なお、終生免疫と考えられてきた水痘も、再感染があることが知られるようになってきました。再感染は健常者でもまれに生じますが、特に免疫が低下した高齢者において報告が散見されているため注意が必要です。帯状疱疹患者の重要な感染源と考えられているため、50歳以上対象の水痘ワクチン投与が推奨されています。

水痘にかかった際の登園は?

水痘は第二種伝染病に該当し、飛沫感染する可能性が高い感染症です。保育園や幼稚園で感染が広がりやすいため、水痘にかかった児童はすべての発疹が痂皮化するまで出席停止となります。一部の保育園や幼稚園では、水痘にかかった児童の登園再開に際して、医師の許可証が必要な場合があります。

水痘と帯状疱疹との関連性

水痘と帯状疱疹は、どちらも水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。子どものころに水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると、水痘を発症するか無症状で経過します。その後、ウイルスは脊髄の近くの神経節に潜伏し、加齢や疲労などで免疫力が低下した際に再活性し、帯状疱疹を引き起こします。

帯状疱疹の予防には、水痘ワクチンの接種が有効です。前述の通り、過去に水痘を発症した人はすでに免疫を獲得しているものの、加齢とともに免疫力が弱まるためワクチン接種を受けたほうがよいとされています。

帯状疱疹の初期症状は、痛みや不快感などです。ピリピリ、ジンジン、ズキズキ、焼けるような痛みなどと形容されます。初期の痛みは通常、帯状の神経に沿って現れます。また、発熱やリンパ節の腫れといった一般的な風邪症状が現れることもあります。

帯状疱疹は上肢から胸背部にかけて現れることが多いものの、顔面や目の周りに発生することも少なくありません。帯状疱疹にかかった際に注意すべきは、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。帯状疱疹が治癒した後も持続的な神経痛が残り、日常生活に支障をきたすことがあります。

* * *

水痘は、全身に発疹が現れて紅斑、丘疹、水疱、痂皮へと短期間で変化します。大人がかかると重症化しやすいため、少しでも感染を疑う症状が見られた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。今回、解説した内容をご自身やご家族の体調管理、利用者さんのアセスメントにぜひ役立ててください。

 

編集・執筆:加藤 良大
監修:豊田 早苗

医師 豊田 早苗
とよだクリニック院長
鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。
2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。

【参考】
〇厚生労働省「水痘」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/varicella/
2024/9/10閲覧
〇NIID 国立感染症研究所「水痘とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/418-varicella-intro.html
2024/9/10閲覧

この記事を閲覧した方にオススメ

× 会員登録する(無料) ログインはこちら