リンゴ病(伝染性紅斑)の症状・感染経路は?大人の感染にも注意
頬がリンゴのように赤くなるリンゴ病(伝染性紅斑)。主に子どもがかかる病気ですが、大人もかかる場合があります。また、妊娠中にかかると流産につながるおそれもあるため、より一層の注意が必要です。
本記事では、リンゴ病の症状や潜伏期間、感染経路から、大人の感染や出社・登園・登校への影響まで詳しく解説します。リンゴ病の症状について確認し、利用者さんやそのご家族のケアに役立てましょう。
リンゴ病とは
リンゴ病とは、ヒトパルボウイルスB19の感染によって起きる病気で、正式名称を「伝染性紅斑」といいます。その名のとおり、両側の頬がリンゴのように赤くなるのが主な症状で、4~5歳の子どもを中心に4~5年周期で流行を繰り返しています。
リンゴ病の症状
リンゴ病は、10〜20日の潜伏期間を経て、頬に赤い発疹が現れます。赤いところとそうではないところの境目は明瞭です。また、顔だけではなく、手足にも「レース状」や「網目状」と表現される発疹が現れます。多くは顔と手足のみですが、中にはお腹や胸、背中に現れる人もいます。発疹の持続期間は1週間前後ですが、一度消えた発疹が短期間で再び現れる場合もあります。
リンゴ病の原因
リンゴ病の原因は、パルボウイルス科パルボウイルス亜科エリスロウイルス属のヒトパルボウイルスB19の感染です。正式名称はエリスロウイルスB19ですが、一般的にはヒトパルボウイルスB19と呼ばれています。リンゴ病は1年中かかる可能性がありますが、春から秋にかけて多くみられます。
リンゴ病は大人もかかる?
リンゴ病は大人もかかる可能性がありますが、一度感染すると終生免疫を得られるため、子どものころにリンゴ病にかかったことがある大人は、通常は感染しません。
大人のリンゴ病では、頭痛や関節炎に伴う関節痛が生じ、1~2日ほど歩くことが難しくなる場合がありますが、多くの場合は合併症や後遺症もなく回復します。
大人のリンゴ病で注意すべきは、妊娠中の感染です。特に、妊娠前半期にヒトパルボウイルスB19に感染すると、胎児水腫や流産につながるおそれがあります。妊娠後半期にも感染する可能性があるため、妊娠中は時期を問わず感染予防を意識することが大切です。ただし、母親がリンゴ病を発症し、新生児に感染が確認された場合でも、妊娠・分娩の経過や出生後の発育が正常であることが多いとされています。妊娠中にリンゴ病に罹患した場合、医師の指示に従い、胎児の状態を注意深く確認していくことが大切です。
また、溶血性貧血の人がヒトパルボウイルスB19に感染すると、重症の貧血発作や関節炎、関節リウマチ、血球貪食症候群、血小板減少症などが起きる可能性があります。こちらにも注意しておきましょう。
リンゴ病の感染経路
リンゴ病の感染経路は、ウイルスを含むくしゃみや咳などによる飛沫感染です。頬の赤い発疹が現れたころには感染力はほとんどなく、ウイルスが多く排出されるのは、まだリンゴ病の症状が現れる前。感染を防ぐ有効な対策はありません。ほかの感染症と同じく、くしゃみや咳を人に向けてしないこと、手洗いやうがいを徹底するなど、基本的な感染対策を行いましょう。
リンゴ病の治療法
リンゴ病には、特効薬が存在しません。ウイルス感染症は一部のウイルスにのみ抗ウイルス薬が存在しており、ヒトパルボウイルスB19に対して有効な薬は登場していないのが現状です。
そのため、リンゴ病の発熱や関節痛に対しては解熱鎮痛剤、かゆみに対してはかゆみ止めといった対症療法を行います。また、感染が発覚した時点で何かをすれば発症を防げたり、早く改善したりといった方法もありません。
リンゴ病の出社・登園・通学への影響
リンゴ病にかかった人の出社や登園、通学に対する制限については、明確に設けられていません。学校保健法においては第3種の感染症の「その他の感染症」に該当します。これは、医師や学校医などが「感染のおそれがない」と認めるまでは出席停止とするものです。
リンゴ病は、頬に赤い発疹が現れた段階で診断を受けることが多く、その時点では感染力はほとんどありません。そのため、発熱や他の症状、合併症などがなければ登園や通学は認められると考えられます。
ただし、感染症への対応方針は学校や会社によって異なるため、リンゴ病に感染した旨を伝えて指示を仰ぐことが大切です。
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リンゴ病は主に子どもがかかる病気で、一度かかると終生免疫を得られます。大人がかかっても重症化することも通常はありません。ただし、妊娠中にかかると胎児への影響が懸念されるため、基本的な感染症対策を行い感染のリスクをなるべく抑えることが大切です。また、症状が現れたころには感染力は失われていることから、軽症であれば問題なく登校や出社ができます。
ぜひ今回の内容を利用者さんのアセスメントやご家族への情報提供などに役立ててください。
編集・執筆:加藤 良大 監修:吉岡 容子 医療法人容紘会高梨医院 院長 東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。 麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。院長として勤務しています。 |
【参考】
〇国立感染症研究所「伝染性紅斑とは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/443-5th-disease.html
2024/12/3閲覧