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希望が叶ったエピソード【つたえたい訪問看護の話】

希望が叶ったエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護では利用者さんの希望に沿い目標を設定していきますが、実現するまでにたくさんの課題が待ち受けていることも。今回は、「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、利用者さんとともに課題を克服し、希望を実現できたエピソードを4つご紹介します。

「時間をかけても良い。カニューレも胃瘻も要らないようになりたい」

希望の実現に向け、発声練習を行い努力し続けた利用者さんの姿と、それを支援し続けた訪問看護師の姿が目に浮かぶようです。

心筋梗塞で心肺停止から復帰後、呼吸管理のための気管カニューレ、嚥下機能低下による胃瘻造設の状態が安定したため自宅へ退院。
スピーチカニューレでの発声練習を行いながらの生活。肺炎を2回起こしたがその後は肺炎となることはなくなった。エンジョイゼリーでの嚥下訓練を行い、お正月には好きだったお酒を少しずつ飲めるようになる。すり下ろしたリンゴやヨーグルトなどを摂れるようになる。このころには呼吸の状態が安定しほぼ丸一日スピーチカニューレで過ごすことができるようになる。
ある日、咳き込んだ時にカニューレが抜けてしまいそれがきっかけでカニューレ抜去、気管孔も自然に閉鎖する。
それから2年。食事も水分も経口摂取できるようになり胃瘻も抜去となった。
カニューレも胃瘻も時間がかかってもいいから抜けるといいと希望していた事が4年かけて実現する事ができた。

2023年1月投稿

「気分に左右されず淡々と」

行動療法により結果を得たひとつの事例です。卒業に至る9年の間、たくさん話し合い向き合ってきた二人の様子が想像できます。

長い鬱病で自分を追い詰め、精神科病院入院中の自殺企図により後遺症が残った30代女性。「精神科訪問看護って何をしてくれるんですか」。病院から退院し、初めての一人暮らしをするにあたり、主治医からのすすめで渋々訪問看護を受け入れた。
生きる気力を失い、退院時に決めた日中活動も休むことが多かった。自分の感情がわからず、何を聞いても「わからない」を繰り返すため、私は思わず「感情が死んでいるね」と言ってしまったが、それにも無反応な状態であった。
しかし今は一般企業で常勤勤務している。転機は、金銭面での不安から。頼りにしていた両親が相次いで亡くなったのだ。就労支援事業所通所から始めたが、最初は休みがちだった。理由は「やる気が起きない」から。やる気は必要ない、とにかく行くこと、続けることと話すと徐々に継続できるようになり就職につながった。訪問看護を開始して9年、最近になって卒業したいと話あり、嬉しい終了となった。

2023年2月投稿

「嬉しいお別れ」

元気に回復をして訪問看護卒業という喜ばしいエピソードです。

珍しい染色体異常の女の子。突然死のリスク、今後の情報が乏しい中ではあったが状態も落ち着き、生後約1年の入院を経て退院となった。
退院前カンファレンスでは、不安故に質問攻めの母、何を聞いて良いか分からず手を膝に置く父、必死にメモをとる祖母。身体の状態に加え心身の成長発達と支援が多岐に渡るため、関係者はひとクラスの人数になる程。私にとっては初めての小児の受け持ち児でもあり、不安な表情を見せまいと思いつつも何ができるだろうかと戸惑いながらのスタートだった。
あれから約1年。2歳になった彼女の体調は安定し家族で旅行へ、なんと保育園に通えるようにもなった。お友達と公園でお砂場遊びやブランコをして満面の笑みを見せているらしい。そして、ついに訪問看護は卒業となった。

2023年2月投稿

訪問看護を卒業したブランコに乗る少女

「まだやってないからわからないよねえ」

まさに「為せば成る」の事例ではないでしょうか。周囲から「難しい」といわれても、やってみようという前向きな姿勢の利用者さんと、実現に向け支援に尽力する投稿者さんの姿が印象的です。

公務員への復職を目指す脳卒中患者のAさん、リハビリ病院を退院する際に「失語症があり電話は難しい。外は歩けないので通勤には車いすが必要」と告げられた。右片麻痺と高次脳機能障害があり、退院直後は外で歩くのは50mが限界。なのに、通勤はバスと歩きで1時間。周りが難色を示す中、穏やかな性格の本人が優しく「まだやってみてないからわからないよねえ」と。
その一言に、支援者が諦めてはいけないと思い、訪問看護(リハ)では、脳卒中でもできている事例の動画をかき集めて真似をして練習を重ねた。人事部の職員や産業医と話し合いを重ね、復職に向けたスケジュールを調整し、まずは「会社の同僚と食事に行けるように」など、笑いや息抜き、繋がりを大切にしながら努力を重ねた。結果、資料作成や研修など、もともと行っていた仕事を再開する形で復職。「やってみたからできたのかもねえ」と。次は同僚とスキー旅行に行く方法を、動画サイトで検索していた。

2023年2月投稿

訪問看護でリハビリ

できることの積み重ねが実を結ぶ

人生の中では疾患や不慮の事故により、「今までできていたこと」ができなくなることもあります。それにより、悲しみや不安に駆られる利用者さんは多いでしょう。今回のエピソードは、できることを少しずつ重ねていくことで希望や目標を実現できたお話ばかり。目標を諦めず行動していくことの重要性を改めて実感しますね。

編集: 合同会社ヘルメース 
イラスト: 藤井 昌子


第2回「みんなの訪問看護アワード」エピソードの募集は終了いたしました。たくさんのご応募ありがとうございました。
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第2回「みんなの訪問看護アワード つたえたい訪問看護の話」 特設ページ

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