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幸せホルモンを増やす方法とは セロトニン・オキシトシン・ドーパミンなど

幸せホルモンを増やす方法 セロトニン・オキシトシン・ドーパミン

最近メディアやニュースでも取り上げられる「幸せホルモン」。幸せホルモンが正常に働くことにより、心と体のバランスを安定させ、幸せを感じやすくするといわれています。

本記事では、幸せホルモンの意味や種類、高齢者に不足しがちなセロトニンの分泌を活性化させる方法について解説します。幸せホルモンは誤解されやすい部分もあるため、利用者さんに正しい情報を提供できるようにしておきましょう。

幸せホルモンとは

一般的にいわれている幸せホルモンとは、セロトニンやオキシトシンといった神経伝達物質のことを指します。適切な量が分泌されることによって、心身の安定や幸福感などがもたらされるため、幸せホルモンと呼ばれています。

幸せホルモンの種類

幸せホルモンと呼ばれているのは、主に次の4つです。

セロトニン

セロトニンは脳内の神経伝達物質の1つで、主に大脳基底核や延髄の縫線核、視床下部などに存在しています。セロトニンには、快感や喜びに関係するドーパミンや不安や恐怖に影響するノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌をコントロールし、脳内の興奮を鎮めて精神を安定させる働きがあります。セロトニンの分泌が低下すると、疲労感やイライラ、不安や恐怖などの慢性的ストレスを感じやすくなり、うつ症状や不眠、パニック症などが現れることがあります。セロトニンが十分に分泌されている状態を保つことで、これらの精神症状を抑えることが可能です。

オキシトシン

オキシトシンは、脳の視床下部から分泌される神経伝達物質の1つです。妊娠・出産時に多く分泌されるホルモンとして知られていますが、信頼感や共感性を高めるだけでなく、不安や恐怖の緩和にも関与しています。人との抱擁・手をつなぐなどのスキンシップや親しい人との会話によって老若男女問わず、脳内で分泌されることが分かっています。

ドーパミン

ドーパミンは、快楽を感じる脳内報酬系を活性化させる神経伝達物質です。アルコールや麻薬など依存性があるものの多くはドーパミンの分泌を活性化させることで快楽をもたらすといわれています。

エンドルフィン

エンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれ、気分の高揚や幸福感、鎮痛作用などをもたらす神経伝達物質で、α(アルファ)とβ(ベータ)、γ(ガンマ)に分類されます。なかでもβ-エンドルフィンは、痛みを抑えるモルヒネの数倍から数十倍の鎮痛作用があるといわれています。

幸せホルモンは高齢者にも効果はある?

幸せホルモンといえば、身体活動が活発な若年層や中年層に注目されることが多いものですが、高齢者にも効果が期待できます。セロトニンやドーパミン、エンドルフィンなどは、どれも年齢を問わず分泌されており、精神の安定や幸福感などに関与しています。

高齢者は外出機会の減少により日光を浴びることが少なくなったり、閉経により女性ホルモンが減少したりすることで、セロトニンが不足しがちです。その結果、ストレスを感じやすくなり、イライラや恐怖など、さまざまなネガティブな感情がわき起こるようになります。

さらに、意欲や集中力が低下するため、外出しなくなったり趣味を楽しめなくなったりすることもあるでしょう。結果的にうつや認知症にもつながる可能性があるため、高齢者こそ幸せホルモンの分泌が活性化されるような行動を心がけることが大切です。

高齢者に不足しがちなセロトニン

幸せホルモンのなかでも高齢者に不足しがちなセロトニンは、生活習慣の工夫によって分泌を促すことができます。高齢者でもできるセロトニンの分泌を活性化させる方法を3つ紹介します。

外出

外出の際に日光を浴びることで、セロトニンの分泌量が増えます。また、友人や家族と外出する場合は、コミュニケーションによってオキシトシンの分泌も促されるため、なるべく複数人で外出すると良いでしょう。公園を散歩する、友人とランチに出かける、地域のイベントに参加するなど、さまざまな方法を取り入れましょう。

適度な運動

適度な運動もセロトニンの分泌を促します。ウォーキング、ストレッチなどの適度な運動は、体力や筋力の維持にもつながるため、高齢者こそ習慣づけたいところでしょう。

アミノ酸を十分にとる

セロトニンの材料となる必須アミノ酸であるトリプトファンを多く含む食品を摂取することが大切です。たとえば、チーズやヨーグルトなどの乳製品、大豆製品、魚介類や肉、卵などがあります。高齢者はタンパク質の摂取不足な傾向があることから、より意識的にこれらの食品を取り入れることが大切です。ただし、タンパク質を多く摂りすぎると、結果的に塩分や脂質の過剰摂取につながりやすいため、野菜や果物などとのバランスも考慮して日々の献立を決めましょう。

* * *

年齢にかかわらず、外出や運動、栄養のバランスを考えた食事などを日常生活に取り入れることで、幸せホルモンの分泌を促しましょう。心身の健康を維持し、豊かな人生を送るためにも幸せホルモンについて知っておくことが大切です。訪問看護の際に幸せホルモンについて質問された際は、正しい知識をもってアドバイスしましょう。

 

編集・執筆:加藤 良大
監修:豊田 早苗

医師 豊田 早苗
とよだクリニック院長
鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。
2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。

【参考】
〇H H Loh, L F Tseng, E Wei, and C H Li:beta-endorphin is a potent analgesic agent. 1976 Aug; 73(8): 2895–2898.
〇厚生労働省.e-ヘルスネット「セロトニン(せろとにん)」
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html
2024/8/8閲覧

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