大人も要注意!手足口病の症状・原因・治療法を解説
手や足、口腔内などに発疹が現れた場合、手足口病が疑われます。手足口病は、子どもの病気のイメージが強いものの大人も罹患する場合があります。しかも、子どもと比べて症状が強く現れる傾向があるため、抵抗力が低い高齢者と関わることが多い訪問看護師は特に注意が必要です。
本記事では、手足口病の症状や原因、治療法、大人が罹患した場合の症状などについて詳しく解説します。
目次
手足口病とは
手足口病(HFMD:hand, foot and mouth disease)は、口腔粘膜や手足などに水疱性の発疹が現れる感染症です。日本では1967年頃に存在が明らかになりました。必ずしも発熱するとは限らないことから感染に気づかずに周囲の子どもと接触し、感染を拡げてしまうケースもあります。
手足口病の症状
手足口病は、3~5日の潜伏期間を経て口腔粘膜や手のひら、足底、足背といった四肢の末端部分に2~3mm程度の水疱が現れます。ただし、肘や膝、臀部などに現れる場合もあるなど個人差があります。口腔粘膜は時間が経つと小さな潰瘍が形成されることもあるため、必要に応じて観察することが大切です。
発熱は1/3程度にみられますが、38℃以下の軽度であることがほとんどです。症状が改善するまでにかかる期間は3~7日程度で、水疱はかさぶたが形成されません。主症状は重篤なものではないものの、まれに髄膜炎や脳炎、小脳失調症などの合併症を引き起こすことがあるため注意が必要です。また、治療後1~2ヵ月頃に手足の爪が剥がれる爪変形・爪甲脱落症が起きる場合があることが報告されています。
大人の手足口病の症状
大人が手足口病に罹患した場合、子どもと比べて発疹の痛みが強く現れる傾向があります。足裏にひどく現れた場合は、痛みで歩けなくなることも懸念されます。そのほか、インフルエンザの発症前のような全身倦怠感や関節痛、筋肉痛、悪寒などが現れることもあります。
手足口病の原因と感染経路
手足口病は、ウイルスによって引き起こされる感染症で、小児(特に乳幼児)に多くみられます。手足口病の原因となるウイルスや、どのように感染が広がるかについて見ていきましょう。
原因となるウイルス
手足口病の原因となるウイルスには、主にコクサッキーウイルスA6(CA6)、CA16、CA10、エンテロウイルス71(EV71)とエンテロウイルスがあります。
ウイルスが体内に入ると手や足、口の周りに水疱(すいほう)ができ、発熱などの症状を引き起こします。特にエンテロウイルス71型は、中枢神経系の合併症を引き起こしやすい上に、典型的な症状がみられないうちに重症化する場合もあります。
いずれのウイルスによる手足口病も夏季に流行しやすく、特に子どもたちが集まる保育園・幼稚園で感染が広がりやすいです。
手足口病の感染経路は?
手足口病の主な感染経路は飛沫感染、接触感染、糞口感染です。
■飛沫感染
飛沫感染は、感染者の咳やくしゃみに含まれるウイルスが空気中を飛散し、ほかの人の鼻や口腔粘膜に接触することで伝播します。
■接触感染
接触感染は、ウイルスや細菌などに直接触れた手で鼻や口を触ることで起こります。汚染された手すりやドアノブ、タオルなどを介した間接的な接触でも感染するため、最も多い感染経路です。水疱にもウイルスが含まれているため、やぶれた水疱に触れたものを口にして感染することもあります。
■糞口感染
糞口感染は、ウイルスが含まれる排泄物に触れ、手洗いが不十分なために主に手指を介して体内にウイルスが入ることで起こります。感染力が最も強いのは、発症して最初の1週間ですが、症状が消えた後も3~4週間は便中にウイルスが排泄されるため注意が必要です。
手足口病の検査方法・診断
医療機関では、水疱の性状と分布をはじめとする臨床症状のみで診断されることが一般的です。また、季節や流行状況なども診断材料の1つになります。確定診断には、咽頭拭い液や水疱内容物、便などの検体を用いたウイルス分離かウイルス検出が必要です。
手足口病の治療法
手足口病の原因となるウイルスに有効な抗ウイルス薬は存在しません。また、ウイルスには抗生剤の投与も効果がありません。発熱や水疱のほかに治療が必要な症状が現れることは少ないため、対症療法すら不要な場合もあります。まれに発疹にかゆみを伴うため、必要に応じて抗ヒスタミンの外用薬を使用します。なお、通常は炎症を抑えることを目的に副腎皮質ステロイド外用薬を使用することはありません。
口腔粘膜に生じた水疱に対しても、柔らかくて薄味の食べ物が推奨されている程度であり、特別な治療法がなく、基本的には経過観察します。
食欲不振がある場合は脱水が懸念されるため、水分を少量ずつ頻回に摂取するよう心がけましょう。また、口の中が痛いときは、冷たいゼリーやプリン、ヨーグルト、りんごのすりおろし、薄味のスープやお粥などが適しています。
高熱、吐き気や嘔吐、頭痛、2日以上の発熱などの症状がある場合は髄膜炎や脳炎への進展が懸念されるため、早急に医療機関を受診することが重要です。
手足口病で出勤・登校(園)停止になる?
大人が手足口病に感染した場合、出勤停止の義務はありませんが、子どもより発疹の痛みが強く現れることが多く、特に足裏にひどい症状が現れた場合は、痛みで歩行困難になることもあります。また、感染力は子どもと同様にあるため、周囲に感染させるリスクがあります。また、前述のとおり便の中にはウイルスが3~4週間排出され続けるため、症状が消えた後も適切な手洗いや衛生対策が重要です。
学校保健法においても、手足口病は登校・登園の禁止の対象ではありません。症状が改善した後もウイルスが長期間にわたり排出されることから、症状が強い時期のみ登校・登園を禁止しても、流行を防ぐ目的を果たせないためです。個々の症状や状態に応じて判断することになっているため、登校・登園が可能な状態かどうか医師に相談するとよいでしょう。
手足口病の予防法
手足口病は無症状でウイルスを排出するケースもあるため、流行期に患者との接触を避けるだけでは感染を完全に防ぐことは困難です。次のような感染対策を徹底して感染を予防しましょう。
こまめな手洗い・消毒
手足口病の予防には、こまめな手洗いと消毒が効果的です。ウイルスは手や物の表面に付着し、その手で触れた食べ物を口にすることでも感染するため、外出後や食事前に手を洗うことは感染予防につながります。
個人用品の共有を避ける
タオルや食器などの個人用品を共有しないことも予防法の1つです。感染者の咳やくしゃみなどの飛沫や水疱の内容物が付着したものをほかの人が使用すると、感染する可能性があります。
排泄物を適切に処理する
手足口病のウイルスは便に多く含まれるため、排泄物の処理は特に注意が必要です。トイレ使用後は必ず手を洗い、トイレの清掃もこまめに行いましょう。また、おむつの処理にも手袋を使用し、汚れたおむつを密閉してから捨てることが大切です。
人ごみを避け、マスクを着用する
手足口病が流行している時期には、人ごみを避けて感染リスクを減らしましょう。ウイルスは飛沫感染によって広がるため、混雑した場所に行く場合にはマスクの着用が効果的です。マスクは自分が感染しないためだけでなく、他者への感染拡大を防ぐためにも重要な対策となります。
免疫力を落とさないようにする
手足口病の予防には、免疫力を高めることも重要です。免疫力を維持するために、十分な睡眠を取り、栄養バランスの良い食事を心がけましょう。不規則な生活や過労は免疫力を低下させる原因となるため、規則正しい生活を続けることが大切です。
監修 久手堅医師より 東京都感染症情報センターの報告によると、2024年第39週時点での手足口病の定点医療機関当たり患者数は9人に達しており、2020年からの5年間で最も多い数字です。全国平均でも7人前後と高い水準を維持しています。 当院でも成人の手足口病患者がみられるようになっていますが、お子さんが感染していないケースもあり、感染経路の特定が難しい状況です。引き続き、基本的な感染対策を行い感染予防に努めましょう。 |
編集・執筆:加藤 良大 監修:久手堅 司 せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士。 「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。 著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 |
【参考】
〇厚生労働省「手足口病とは」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou19/hfmd.html
2024/10/18閲覧
〇NIID国立感染症研究所「手足口病とは」(2014年10月17日)
https://www.niid.go.jp/niid/ja/encycropedia/392-encyclopedia/441-hfmd.html
2024/10/18閲覧
〇東京都感染症情報センター. 手足口病の流行状況.「定点医療機関当たり患者報告数」
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/handfootmouth/handfootmouth/
2024/11/1閲覧