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訪問看護のマナーは? 訪問前・訪問中・訪問後のタイミング別に解説

訪問看護のマナーは? 訪問前・訪問中・訪問後のタイミング別に解説

訪問看護で利用者さんやご家族と良好な信頼関係を築くためには、訪問時のマナーが重要です。訪問前、訪問中、訪問後のそれぞれの段階で意識すべきポイントを押さえることで、より安心感を与えるケアを行うことができます。本記事では、訪問看護におけるマナーを解説します。訪問看護先で適切な対応を取るために、ぜひ参考にしてください。

【訪問前】訪問看護における訪問のマナー

利用者さんのご自宅へ訪問する前に、以下の内容をチェックしましょう。

身だしなみに注意する

訪問看護では第一印象が利用者さんとの信頼関係に直結するため、清潔感を意識した身だしなみが大切です。以下のポイントに注意しましょう。

  • 清潔なユニフォームを着用する
  • 髪を整える(髪色は自然な色味にして、長い髪はまとめる)
  • 華美なアクセサリーは身に着けない
  • 派手なメイクは避け、ナチュラルな印象を心がける
  • 爪を短く清潔に整える
  • ひげは剃る
  • 香水や強い香りのハンドクリームは使用しない
  • 体臭や汗、食後の口臭など、においに気を配る
  • 靴下や服に埃やペットの毛などが付いていないか確認する

なお、訪問先によっては靴下が汚れる場合があるため、予備の清潔な靴下を常に用意し、必要に応じて履き替えましょう。利用者さんやご家族に不快感を与えず、安心していただけます。

駐輪・駐車のマナーを守る

訪問看護の際は、駐輪・駐車のマナーを守ることが大切です。マナー違反をすると、利用者さんや近隣住民とのトラブルにつながる可能性もあり、大変な迷惑をおかけしてしまいます。新規契約時に駐車場所は確認すると思いますが、利用者さんごとの決めごとをしっかり確認して駐輪・駐車し、周囲の迷惑にならないよう配慮しましょう。当然のことながら、「自転車は車道が原則」「夜間はライトを点灯」といったルールも守りましょう。

参考記事:
訪問看護師が知っておきたい自転車の交通ルールは?道路交通法改正も解説

トイレは事前に済ませておく

ビジネスシーンにおいても、原則として訪問先でトイレをお借りするのはマナー違反。また、訪問看護の訪問先では、プライバシー保護や感染予防の観点からも、訪問前にトイレを済ませておくことが原則です。基本的には訪問看護事業所内のトイレを利用しましょう。ただし、「1日中訪問に出ている」「事務所に戻ると道順として明らかに非効率」など、訪問看護事業所に立ち寄れない場合もあるため、訪問する道順に公共のトイレ等があるか事前に確認しておくと安心です。

それでも、体調によってはどうしても我慢できない場合があるかもしれません。その際は、「本来は借りることは望ましくない」ことを認識した上で利用者さんに丁寧にお願いし、トイレをお借りするようにしましょう。

訪問時間の厳守

訪問看護の信頼性を保つために、約束した訪問時間を厳守することが重要です。万が一訪問先への到着が遅れたり予定変更が発生したりする場合は、速やかに利用者さんやご家族へ連絡し、理由を伝えた上で、訪問時間を再調整しましょう。

【訪問中】訪問看護における訪問のマナー

訪問中は、以下のマナーを守りましょう。

インターフォン対応と玄関でのマナー

訪問看護中のインターフォン対応や玄関でのマナーは、利用者さんが抱く印象に大きく影響します。インターフォンを押す前に、姿勢を正し、顔全体からバストアップまでが画面上に収まるよう距離を調整します。インターフォンを押した後は、まずカメラに目線を合わせ、続いて軽くお辞儀をして挨拶をしましょう。

また、基本的に、玄関に入る前にコートは脱いでおきます。玄関に入る際、靴は脱いだ後、丁寧に揃え直し、利用者さんやご家族に、清潔感や礼儀正しさを感じてもらえるよう心がけてください。

傘やレインコートの取り扱い

雨の日には傘やレインコートを使用しますが、これらの扱いにも注意が必要です。

傘は、訪問先に傘立てがあれば利用しましょう。傘立てがなく、判断に迷った場合は、傘袋に入れて玄関先に置くと気遣いのある振る舞いになります。玄関の外側の邪魔にならない場所に傘を立てかけることも失礼には当たりませんが、マンションの内廊下など、住居形態によっては水滴が廊下に滴ってあまり良い印象を与えない場合があります。状況に合わせた十分な配慮が必要です。

なお、折り畳み傘に関しては、オフィスビルなどのビジネスシーンでは屋内へ持ち込むケースもありますが、訪問看護の場合、長傘と同様にベルトでとめて玄関の傘立てに置くのがよいでしょう。傘についている水滴を落としてからベルトをとめ、できるだけ訪問先の玄関を濡らさないように注意します。

レインコートは、同じくできるだけ水滴を落としてから、ビニール性の袋や防水性のある風呂敷に収納することをおすすめします。特に防水性のある風呂敷は、多用途に活用できるため、持ち歩くと便利です。また、冬場に持ち込むことが多い上着やマフラー、手袋などを風呂敷に包むことで荷物をコンパクトにまとめることもできます。

荷物の取り扱い

マナーや衛生上の観点から、訪問時に持参する荷物は、テーブルや椅子の上に置かないようにしましょう。部屋の中で邪魔にならないところに置くという配慮も大切です。

雨の日や汚れがある場合は、前述の防水性の風呂敷やシートの上、または玄関に置かせていただき、清潔を保つよう心がけます。

室内での基本マナー

住居内の扉・ふすま等を開ける際には、利用者さんやご家族のプライバシーに配慮し、ノックをして「失礼します」と声をかけてから開けるようにしましょう。すでに扉が開いている場合や、ノックをする場所がない状況でも、部屋に入る際には必ず「失礼します」と声をかけてから足を踏み入れます。状況に応じて「周囲からの視線を遮るためにカーテンを閉める」「ケアに必要な部屋以外には立ち入らない」といった配慮も必要です。

ケアを行う際には「失礼します」「カーテンを閉めますね」「今からお身体を拭いていきますね」などと声をかけ、利用者さんが安心してケアを受けられるよう心がけましょう。

訪問中に緊急の電話対応が必要になった場合は、必ず一言断りを入れた上で、利用者さんやご家族に迷惑をかけない適切な場所を選んで対応するよう心がけてください。

食べ物やお礼の品物への対応

お茶やお菓子などの食べ物やお礼の品物については、原則として感謝の気持ちを伝えた上でお断りすることが基本です。訪問看護サービスを受ける立場(お客様)である利用者さんやご家族から、おもてなしを受ける行為は適切ではありません。

また、訪問時間内にお茶やお菓子をいただくことによって、本来のケアに充てるべき時間が削られたり、次の訪問先のスケジュールに遅延が生じたりする可能性もあります。お礼の品物においては、ご家族のご負担になってしまうことも。そのため、「お茶やお菓子はいただけません/お礼の品物は受け取れません」といった事業所の方針を決めておき、初回訪問時や契約時にきちんと説明することが大切です。

おもてなしに対してお断りする際は、「お気持ちだけで十分です」と丁寧にお伝えし、相手に失礼のない対応を心がけましょう。

清掃と衛生マナー

訪問先で手を洗う際は、洗面台や鏡面に水しぶきが残らないよう、タオルやティッシュで丁寧に拭き取りましょう。このような小さな配慮が利用者さんやご家族に好印象を与え、プロフェッショナルとしての意識を示すことができます。

言葉遣いとコミュニケーション

利用者さんやご家族と接する際には、基本的に敬語を使用し、丁寧な態度でコミュニケーションを取ります。ただし、利用者さんの状態や関係性によっては、あえてカジュアルな口調を用いる場合もあります。親しみやすい雰囲気を大切にする場合でも、利用者さんへの敬意は決して忘れず、状況に応じて適切な言葉遣いを選びましょう。また、専門用語や難しい言葉は避け、相手にわかりやすい表現を心がけることが大切です。

記録とデジタル機器の利用

記録作業でパソコンやタブレットを使用する際は、「記録を行いますね」と一言声をかけて、利用者さんやご家族にデバイスを使用する意図を伝えます。また、記録用の写真撮影が必要な場合は、事前に「記録のために写真を撮らせていただきます」と説明し、許可を得ることが大切です。

当然ながら、個人情報保護の観点から個人のスマートフォンは使用せず、業務用のデジタル機器を用いましょう。

【訪問後】訪問看護における訪問のマナー

ケアが終了したら、利用者さんやご家族への挨拶を丁寧に行い、感謝の気持ちを伝えます。退室時には玄関のドアを静かに閉め、上着やレインコートは外に出てから着用しましょう。また、玄関外や廊下での会話は避けることが重要です。

使用後のユニフォームやタオルなど、汚れがひどいものは個別に洗浄してから洗濯機へ入れるなど、衛生管理を徹底します。また、訪問中に「後で連絡する」と約束した内容については、必ず期日内に対応し、万が一対応が間に合わない場合でも、利用者さんへ事前に連絡を入れましょう。

* * *

訪問看護では、細かなマナーを守ることで利用者さんやご家族と信頼関係を築きやすくなります。訪問前の準備から訪問中の対応、訪問後のケアまで、清潔感や礼儀、配慮を徹底しましょう。この記事でご紹介したポイントを実践し、より質の高い訪問看護を目指してください。

編集・執筆:加藤 良大
監修:大川 ユカ子 
大川 ユカ子(監修)
一般社団法人 スマートマナークリエイト 代表理事
学習院大学卒業後、全日本空輸株式会社(ANA)客室乗務員として国際線チーフパーサーや政財界のVIPフライト、ファーストクラスパーサーを担当する。のちに一般社団法人スマートマナークリエイトを設立。代表理事として医療接遇、企業研修、接客指導、幼児マナー教育を中心に活動を続ける。セミナー受講者数のべ12,000人以上。
〈メディア〉
挨拶の達人 記事監修/日本テレビ「news every」出演/ビズアップ総研「場の空気の読み方」DVD出演/気持ちよく引き受けてもらう「頼みかた」DVD出演/フラワーラジオ定期出演/雑誌「ネイルUP!」(マナー特集)/小学館 美レンジャー/美容業界季刊誌「ガモウニュース」連載/書籍「おもてなしの教科書」/電報のマナー(冊子) ほか多数

ホームページURL
https://smartmannercreate.com/

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