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とびひ(伝染性膿痂疹)とは?子どもと大人の症状の違いや原因、治し方

とびひ(伝染性膿痂疹)とは?子どもと大人の症状の違いや原因、治し方

とびひ(伝染性膿痂疹/でんせんせいのうかしん)は、傷から細菌が感染することで火事の飛び火のように症状が広がる皮膚感染症です。放置や間違った対処によって感染範囲が広がったり、症状が強く現れたりする可能性があります。この記事では、とびひの原因や、子どもと大人で症状の違いはあるのか、治療法や周りの人にうつさないためのポイントなどについて解説します。

とびひ(伝染性膿痂疹)とは

とびひは、溶血性連鎖球菌(溶連菌)やブドウ球菌によって引き起こされる皮膚の感染症です。症状が急激に広がることから、この名前が付けられました。主に高温多湿の6月から夏場にかけて、乳幼児や小児に多く見られます。かゆみによって患部をかきむしると症状が広がるため注意が必要です。皮膚を清潔に保ち、かゆみを抑える対策を講じることが重要です。

とびひの症状

とびひには、分厚いかさぶたができる痂皮性膿痂疹(かひせいのうかしん)と、水ぶくれ(水疱)ができる水疱性膿痂疹(すいほうせいのうかしん)の2つのタイプがあります。保育園や幼稚園で集団発生することが多く、夏季にみられるのは水疱性膿痂疹です。一方、痂皮性膿痂疹は季節に左右されず、子どもよりも大人に多く見られます。それぞれの症状について見ていきましょう。

水疱性膿痂疹

水疱性膿痂疹の初期症状は、かゆみや赤みを伴う水ぶくれで、かき壊すとただれます。また、鼻周囲にも現れることがあります。水ぶくれの内容物には大量の細菌が含まれているため、つぶすと周りにうつるリスクが高まります。刺激を受けることでかゆみが増すことも考えられるため、つぶさないように注意しましょう。

痂皮性膿痂疹

痂皮性膿痂疹は、肌が赤くなり、膿が含まれる水ぶくれができます(膿疱)。水ぶくれを壊すと厚いかさぶたやただれが生じます。また、リンパ節腫脹、のどの痛み、発熱も見られます。

とびひの原因

とびひの主な原因は、あせもや虫刺され、湿疹などを引っ掻いて肌が傷つき、その傷口から細菌感染が起こることです。特に、アトピー性皮膚炎や乾燥肌の方は肌の防御機能が低下しているため、感染リスクが高くなります。

痂皮性膿痂疹の原因菌は溶血性連鎖球菌、水疱性膿痂疹の原因菌は黄色ブドウ球菌です。これらの菌は健康な人でも口や鼻、皮膚に存在するため、傷ができると誰もがとびひになる可能性があります。

とびひになったときの対応方法

とびひになってしまったら、周りの人にうつさないようにすることが大切です。その上で、タオルや食器など、体に触れるものの共有を避けます。また、手を十分に洗い、爪を短く切って、うっかり人の肌を傷つけないようにしてください。感染者は可能な限り最後に入浴し、使用した用具や浴槽を洗浄しましょう。

とびひの治療法

軽症の場合は、抗菌薬の軟膏を1日1~2回塗布することを4~5日間続けることで改善が期待できます。改善しない場合は抗菌薬に対する耐性がある可能性を考慮し、別の抗菌薬の使用を検討します。また、症状が悪化したり広がったりする場合は、抗菌薬の内服治療も必要になる可能性があります。アトピー性皮膚炎の人はとびひの影響でかゆみが強くなるため、抗アレルギー剤の併用が必要となる場合があります。

とびひの対策・日常の注意点

日頃からスキンケアや保湿を心がけ、皮膚の防御機能を維持しましょう。また、とびひの流行期には、皮膚や手指を清潔に保ち、爪を短く整えて、感染を防ぐことが大切です。傷ができた場合はガーゼで保護しましょう。

また、むやみに手で傷に触れたり、鼻の穴を触ったりしないよう注意が必要です。年齢によっては子どもが自分で手を十分に洗えないこともあり、衛生管理が不十分になりがちです。保護者がこまめにチェックして、なるべく予防しましょう。

とびひになったときの登園・登校の扱い

とびひは、法的には学校感染症第3種に該当し、基本的には医師の診断と適切な治療、病変部の保護が行われていれば登園・登校が許可されます。ただし、病変が広範囲に及ぶ場合やほかの児童への感染リスクが高い場合は、一時的に登園を控えることが望ましいでしょう。

* * *

とびひは症状が急速に現れ、周りの人にうつる可能性がある疾患です。訪問看護の現場では、普段から利用者さんの皮膚の状態を観察し、清潔に保つことが大切です。とびひの症状が現れた場合には、今回解説した内容を参考にして、適切に対応をしましょう。

編集・執筆:加藤 良大
監修:吉岡 容子

医師 吉岡 容子
医療法人容紘会 高梨医院 院長
東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。
麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。院長として勤務しています。


【参考】
〇日本皮膚科学会「幼稚園・保育園、学校は行ってもいいですか?」
https://www.dermatol.or.jp/qa/qa13/q18.html
2024/6/28閲覧
〇日本小児皮膚科学会「お役立ちQ&A」
http://jspd.umin.jp/qa/02_tobihi.html
2024/6/28閲覧

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