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インフルエンザの症状・出席停止期間・2023~2024年冬の流行予測

インフルエンザ症状&予防

インフルエンザは毎年異なる型が流行する上に、流行時期が変動する場合もあります。訪問看護師は感染症に対する抵抗力が低い高齢者や小児と関わるケースも多く、毎年インフルエンザの状況や予測などはチェックしておきたいところです。

本記事では、インフルエンザの症状や原因、出席停止期間、2023~2024年の流行予測などについて詳しく解説します。

インフルエンザとは

そもそもインフルエンザ(influenza)は、インフルエンザウイルスの感染によって発症する気道感染症です。インフルエンザが周期的に流行することから、16世紀のイタリアの占星家が星や寒気の影響(influence)と考えたことが語源とされています。

インフルエンザの症状

インフルエンザウイルスに感染後、1~3日間程度の潜伏期間を経て、次の症状が現れます。

・38℃以上の高熱
・頭痛
・全身倦怠感
・筋肉痛
・関節痛

上記の症状は突然現れることが特徴です。これらに続いて咳や鼻汁などの症状が現れ、個人差はありますが1週間程度で軽快します。ただし、循環器や呼吸器、腎臓の慢性疾患を持つ方、免疫機能が低下している方、糖尿病をはじめとする代謝疾患を持つ方は二次的な細菌感染症のリスクが高いとされています。

また、小児の場合は発熱による熱性痙攣、中耳炎、気管支喘息を伴うことがあります。

インフルエンザの原因

インフルエンザの原因は、A型・B型・C型のいずれかのインフルエンザウイルスの感染です。毎年、大規模な流行の原因となるのはA型とB型で、それぞれ複数の型に分類されています。

2023年時点において近年流行しているのは、以下の4種類です。

・A(H1N1)亜型
・A(H3N2)亜型(香港型)
・B型(山形系統)
・B型(ビクトリア系統)

流行するインフルエンザウイルスの型や系統は、年度や国、地域などで異なります。

季節性と新型の違い

インフルエンザは、「季節性」と「新型」の大きく2つに分類できます。

一度ウイルスや細菌に感染すると免疫機能によって再感染のリスクは低下しますが、季節性インフルエンザはA型のインフルエンザウイルスの抗原性が毎年わずかに変化するため、再感染の可能性が通常のウイルスと比べて高いとされています。

また、新型インフルエンザは、季節性のものとは抗原性が大きく異なるインフルエンザウイルスによるものです。過去に感染しておらず免疫を獲得していないため、多くの方が感染します。

インフルエンザが流行する時期

季節性インフルエンザには流行性がありますが、新型インフルエンザにはありません。季節性インフルエンザは例年12月〜3月にかけて流行します。なお、2020年以降は新型コロナウイルスの流行やそれに伴う公衆衛生に関する意識の高まりの影響で、インフルエンザの流行時期や罹患者数に大きな変化がみられます。

2023~2024年におけるインフルエンザの特徴

2023年春には、例年とは異なる季節外れのインフルエンザが流行しました。そのため、冬から2024年にかけても、例年とは異なる時期に流行する可能性があります。流行が予測されているインフルエンザの型については、厚生労働省が毎年認定するワクチン製造株が参考になります。以下の4株がワクチン製造株として認定されました。

・A(H1N1)亜型
・A(H3N2)亜型(香港型)
・B型(山形系統)
・B型(ビクトリア系統)

実際に流行する型と異なるケースもありますが、現状では近年流行した型と同様と予測されています。

インフルエンザの出席停止期間

学校保健安全法施行規則第19条第2項に基づき、インフルエンザを発症した後5日を経過し、かつ解熱した後2日を経過するまでは、出席停止となります。なお、幼児の場合は、解熱後3日までは出席できません。

企業については明確な規定がありませんが、従業員が安全で健康に働けるように配慮する「安全配慮義務」に基づき、独自にルールを定めている場合があります。一例では、学校保健安全法で定められた出席停止期間と同じ基準を定めています。

インフルエンザの検査方法・診断

インフルエンザの症状が現れている場合、医療機関では迅速診断キットを用いて検査することが一般的です。鼻腔の奥の粘膜を綿棒で採取し、迅速診断キットに検体を垂らし、30分程度で結果が出ます。

鼻をかんで鼻汁を採取する方法もありますが、綿棒を使った方法と比べて採取できるウイルス量が少ないとの報告があります。

インフルエンザの治療法

インフルエンザの治療には、抗インフルエンザ薬を使用します。症状が現れてからの時間や病状によって効果が異なり、全患者に必須な治療ではありません。発症から48時間以内に抗インフルエンザ薬を服用すると、発熱の持続期間が1〜2日程度短くなります。48時間以上経過してから服用しても、十分な効果は期待できません。

また、必要に応じてインフルエンザに伴う発熱や咳、淡、倦怠感などを和らげる薬を使用します。

インフルエンザに伴う異常行動について

以前は抗インフルエンザ薬が原因で異常行動が起きることが強く疑われていました。しかし、抗インフルエンザ薬の服用の有無、種類に関係なく異常行動が起きていることから、関係性は不明とされています。

<異常行動の例>
・ 突然、部屋から出ようとする
・ 窓を開けて飛び降りようとする
・ 話しかけても反応がない
・ 泣きながら部屋の中を動き回る
・ 理解できない発言をする

異常行動による事故を防ぐために、発熱から2日間は次のような転落防止策を講じることが重要です。

・玄関と窓をすべて施錠する(なるべく補助鍵を使用する)
・窓がなくベランダに面していない部屋で療養させる
・1階で療養させる

中でも就学以降の小児・未成年者の男性に起きることが多いと報告されていますが、年齢や性別に関係なく対策を講じることが大切です。

インフルエンザのワクチン

インフルエンザのワクチンは13歳以上で年に1回接種が原則です。添付文書には年に1回または2回と記載されていますが、研究によりインフルエンザワクチン0.5mLの1回接種で2回接種と同程度にまで抗体価が上昇したことから、1回接種となっています。ただし、医師の判断で2回接種を行う場合もあります。

13歳未満の場合は、年に2回接種が原則です。1回目の接種後、2~4週間間隔をあけて2回目を接種します。ワクチン接種から効果が現れるまでの期間には個人差がありますが、通常は約2週間かかります。効果の持続期間は約5ヵ月とされています。

1回接種の場合、11月下旬~12月初旬に接種すると流行前にインフルエンザ予防効果を得やすいでしょう。2回接種の場合は、1回目を10月下旬~11月初旬に、2回目を11月下旬から12月初旬に接種することが推奨されます。受験を控えている場合は、早めの接種を検討しましょう。

ワクチンの副反応は接種した部位の赤みや腫れ、痛みなどで、通常は2~3日で消失します。そのほか、発熱や頭痛、倦怠感、悪寒などもみられることがあります。

まれにみられるのはアレルギー反応による赤み、かゆみ、蕁麻疹などです。重篤な副作用として以下が報告されていますが、因果関係は明らかではありません。

・ギランバレー症候群
・急性脳症
・急性散在性脳脊髄炎
・痙攣
・肝機能障害
・喘息発作
・紫斑

インフルエンザの予防法

インフルエンザの予防法は、一般的な感染症と同じです。

・帰宅時の手洗いうがい
・栄養バランスのとれた食事
・十分な睡眠
・こまめな換気
・適切な湿度

また、インフルエンザが流行している時期は、繁華街への外出は控えましょう。

* * *

インフルエンザは、毎年流行しているものの2020年以降には流行時期に変化が生じています。また、その年度によって流行する型が異なるため、最新情報を随時チェックしておくことが大切です。今回、解説した内容を参考に、インフルエンザに適切に対処しましょう。

編集・執筆:加藤 良大
監修:久手堅 司

せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士
久手堅 司
「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。
著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。

【参考】

〇NIID 国立感染症研究所「インフルエンザとは」
https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html
2023/6/25閲覧
〇厚生労働省「インフルエンザQ&A」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
2023/6/25閲覧
〇厚生労働省「令和4年度インフルエンザQ&A(令和4年10月14日版)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2022.html
2023/6/25閲覧
〇東京都感染症情報センター「2023~2024年シーズンインフルエンザHAワクチン製造株(2023年4月28日)」
https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/flu/flu/vaccine2023/
2023/6/25閲覧
〇熊本県「今冬のインフルエンザ総合対策に取り組みましょう(2020年8月1日)」
https://www.pref.kumamoto.jp/soshiki/30/153141.html
2023/6/25閲覧
〇静岡県「『インフルエンザの出席停止期間』の考え方」
https://www.city.shizuoka.lg.jp/000834248.pdf
2023/6/25閲覧
〇厚生労働省「抗インフルエンザウイルス薬の安全性について(2017年12月)」
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11120000-Iyakushokuhinkyoku/0000189771.pdf
2023/6/25閲覧
〇厚生労働省「新型インフルエンザ予防接種後の症状について」
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou04/inful_04.html
2023/6/25閲覧

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