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低温やけど(低温熱傷)とは?初期症状や対処法について解説

低温やけど(低温熱傷)とは?初期症状や対処法について解説

コンロの火やパネルヒーターのほかにも、さまざまな原因でやけど(熱傷)を負う可能性があります。冬に高齢者がよく使う湯たんぽをはじめ、ホットカーペットやカイロでも低温やけどを負うことがあります。低温やけどは通常のやけどと同じく命に関わることもあるため、基礎知識を確認しておくことが大切です。

本記事では、低温やけどの特徴や初期症状、対処法などについて詳しく解説します。利用者さんに質問されたときだけではなく、冬の低温やけどの注意喚起として訪問看護師からアドバイスする際にも役立ててください。

低温やけどとは

低温やけどは、40~50℃程度のものに長時間皮膚が触れることで生じるやけどです。心地よいと感じている温度でも発生してしまう可能性があるため注意が必要です。

また、50℃程度でも3分の圧迫によって低温やけどが生じる可能性があります。このように、単に温度と時間だけで低温やけどが起きるリスクを判断することは困難です。低温やけどの原因となりやすい湯たんぽやホットカーペットなどの使用に注意しましょう。

低温やけどの原因・メカニズム

皮膚が熱を受けてから、少しずつ深部へと熱が達して細胞の損傷が起こります。皮膚の損傷が深部になるにつれて痛みを感じにくくなるため、気づいたときには重症になるケースも少なくありません。湯たんぽやホットカーペットでやけどをする可能性があることを知らない人は、赤みや多少のひりひりとした痛みがあっても放置してしまいがちです。在宅療養されている方の中には自分で症状を訴えることができない方もいるため、全身の皮膚の状態を観察することが大切です。

特に以下に該当する場合は低温やけどのリスクが高いため注意が必要です。

  • 皮膚が脆弱な高齢者や皮膚が薄い小児
  • 寝返りができない乳児
  • 知覚や運動機能に障害がある方
  • 糖尿病や動脈硬化によって手足の血行障害がある方
  • 意識レベルや認知機能が低下している方

低温やけどの初期症状や見た目

低温やけどの症状は、赤みやひりひりとした痛みです。1日程度放置すると、水疱(みずぶくれ)が生じることもあります。受傷当初にやけどの深さを見極めるのは困難なため、皮膚に赤みや違和感が生じた段階で、なるべく早く医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。

低温やけどに対する正しい対処法・注意点

低温やけどが起きた場合は、応急処置をした上で医療機関を受診しましょう。

低温やけどの可能性がある場合、すぐに患部を流水で20分程度冷やします。熱が皮膚の深部に与えるダメージをなるべく早く抑えることが重要です。冷やすことで痛みも緩和されます。なお、保冷剤は冷たすぎるため、凍傷や水疱が破れるリスクを踏まえ、使用しないことが大切です。

また、衣類が被っているところに低温やけどが起きた場合は、無理に衣類を脱がずにそのまま流水で冷やしましょう。無理に衣類を脱ぐと皮膚が引っ張られて剥がれる恐れがあります。水疱がある場合は、なるべく手指で触れないようにして、破かないよう注意が必要です。

手指のやけどの場合、後から腫れてくることを想定し、あらかじめ指輪は外しておく必要があります。腫れると指輪を外すときに患部に触れて、痛みや炎症が増すことが懸念されます。

低温やけどは皮膚の深部まで損傷がおよぶⅢ度熱傷と分類されるケースが多いとされています。数週間後に皮膚の変色や知覚鈍麻、黒色壊死を引き起こすこともあるため、小範囲の場合でも早急に医療機関への受診が必要となります。水疱が生じるⅡ度熱傷では、市販薬によって改善することもありますが、細菌感染を伴うと色素沈着やケロイド状の傷が残る可能性があるため、こちらも医師の診察を受けることが大切です。

一方、赤みや痛みのみが生じるⅠ度熱傷では、必ずしも医療機関を受診すべきとはいえませんが、やけどの状態を正確に判断することは難しいため、なるべく受診した方がよいでしょう。特に、顔や手、関節などに起きたやけどは、範囲が小さかったとしても治療を受ける必要性が高いとされています。

*やけどの深度は、熱による損傷が皮膚のどの深さまで達しているかで分類されます。「Ⅰ度熱傷」とは表皮のみの熱傷、「Ⅱ度熱傷」とは真皮までの熱傷、「Ⅲ度熱傷」とは皮下組織まで損傷がおよんだ熱傷のことです。

低温やけどの原因となりやすい環境・機器

低温やけどの原因となりやすい環境と使用機器について理解しておくことで、トラブル防止につながります。それぞれ、低温やけどになりやすい理由とあわせて詳しく見ていきましょう。

湯たんぽ

国民生活センターに、湯たんぽによる低温やけどの相談が寄せられています。金属製の湯たんぽをタオルで三重に巻いて足の下に置き、そのまま就寝したところ、くるぶしに痛みが起きてやけどに気づいたそうです。

湯たんぽは種類を問わず、低温やけどになるリスクがあります。タオルで包んでいたとしても、心地よいと感じる程度の温度で低温やけどになるため、あくまでも布団の中を暖めるために使用し、就寝時はとりだすと安心です。使い方や注意事項については、各メーカーの取扱説明書も確認しましょう。

カイロ

国民生活センターに、腰にカイロを貼って電気毛布を使用して就寝したところ、翌朝にカイロを貼っていた箇所に皮膚の深いところにまでおよぶやけどが起きていたとの相談が寄せられています。貼るタイプのカイロと電気毛布を組み合わせると、貼ったところが熱くなりすぎるため注意が必要です。

ホットカーペット

ホットカーペットの上で寝ると、皮膚が触れているところに低温やけどが起きる恐れがあります。

消費者庁によると、薄手の服を1枚着た子どもをホットカーペットの上で寝かせていたところ、3時間程度が経ったころに背中が赤くなったとの相談が寄せられたとのことです。これは子どものケースですが、大人、高齢者でも同じようにやけどをする可能性があります。

* * *

低温やけどは、一般的なやけどよりも軽症なイメージを持つ方もいますが、損傷が深く専門的治療が必要となる場合があります。違いは、やけどを負うまでにかかる時間です。そのため、コンロの火やパネルヒーターなどだけではなく、湯たんぽやホットカーペットなどの使用にも十分に注意しましょう。

編集・執筆:加藤 良大
監修:吉岡 容子

医師 吉岡 容子
医療法人容紘会高梨医院 院長

東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。
麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。
院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。院長として勤務しています。

【参考】
〇国民生活センター「重症になることも 湯たんぽによる低温やけどに注意」
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen328.html
2024/11/19閲覧
〇国民生活センター「低温やけどにご用心 見た目より重症の場合も」
https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen241.html
2024/11/19閲覧
〇消費者庁「Vol.476 電気カーペットや湯たんぽによる低温やけどに注意!」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20191107/
2024/11/19閲覧
〇日本形成外科学会「やけど(熱傷)」
https://jsprs.or.jp/general/disease/kega_kizuato/yakedo/yakedo.html
2024/11/19閲覧

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