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ケースメソッドで考える管理業務
ケースメソッドで考える管理業務
特集
2023年5月2日
2023年5月2日

CASE4 クレームを受けるスタッフをどうするのか_その2:桐山さんが抱えている問題は何か

管理者として課題に直面したとき、自分以外の管理者がどう判断するかを知りたくなることはありませんか? この連載は、参加者どうしで考えをシェアしあう研修手法である、ケースメソッド注1セミナーの形式に沿って、訪問看護管理者が直面する課題を考えていきます。第11回は、このクレームをスタッフナースの成長支援の機会ととらえ、管理者として支援を行うために、まずは「桐山さんが抱えている問題」を考えます。 はじめに 前回(「その1:まずすべきことは何か」参照)は、利用者からのクレームがあったときの初動対応について、それぞれの考えを出しあいました。続く今回は、前回のCさんの発言を受け、桐山さんが抱えている問題に注目することで、どんな支援ができるかのヒントを明らかにしていきます。 議論の題材となっているケースと設問は以下のとおりです。 ケースと設問 CASE4 クレームを受けるスタッフをどうするのか 入職3ヵ月になるスタッフナースの桐山さんから、「利用者のJさんから『桐山さんには訪問に来ないでほしい』と言われた」と報告を受けた。 桐山さんは病院で3年、いくつかの介護施設で6年、他社訪問看護で1年の経験のある看護師。とても真面目な性格で、職場で冗談を言うこともなく、むしろ冗談を間に受けてしまう様子がある。何かを伝えると一語一句漏らさずに細かな字でメモをとるが、肝心なときにそのメモがどこにあるのかわからずミスをしてしまうのだ。 当ステーションは、管理者と桐山さんを除くと20歳代の看護師が2人。入職時期は2人のほうが早いが、年齢的にも看護師としての経験年数も桐山さんのほうが上である。ほかのスタッフと軽く雑談をすることも桐山さんには難しいようだ。そして他スタッフからは「桐山さんとは一緒に働きづらい」と相談を受けている。管理者として、どうすればよいだろうか? 設問もしあなたがケースに登場する管理者であれば、桐山さんやほかのスタッフに対してどのような働きかけをすべきだと考えますか。ご自身の経験から考えたアイデアをみなさんにシェアしてください。 桐山さんが抱えている問題は何か 講師桐山さんはこのステーションで力を発揮しているとは言い切れないと思います。その原因はなんでしょうか。どんな問題を桐山さんは抱えていると考えますか。 Aさん注2入職3ヵ月とあるので、まだこのステーションには慣れていないと思います。しかも、すでにいるほかのスタッフよりも看護師経験は長く、即戦力というプレッシャーもあって、ほかのスタッフにSOSを出すのも難しいのではないでしょうか。 Bさん経歴をみてみると、以前働いていた訪問看護ステーションの経験が、今の仕事に悪影響を及ぼしているのかもしれません。ステーションごとに記録のしかたのような基本的なところでもいろいろ違いがあるでしょうし、そのほかにも暗黙の前提とかもよくありますよね。ステーションからどんな働きを期待されているかも、明確にされていなくてわからないですよね。 Cさん仕事をしていて疑問に思ったことを誰に聞いていいのかわからない可能性はありそうです。本人の性格もあるかもしれませんが、ほかのスタッフに気軽に聞ける状況ではなさそうです。 Dさん桐山さんの看護技術が劣っているとは思いませんが、もしかすると、クレームがあった利用者のケアには必要な知識やスキルが不足していたのかもしれませんね。 「桐山さんが抱えている問題は何か」の小括 桐山さんが抱えている問題はいくつもあることがみえてきました。ではこの問題についての理解をより深めるために、問題の前提となっている状況と、その状況をふまえた上で生じる課題についてみていきましょう。 桐山さんが置かれている状況の特徴 桐山さんを「中途採用で新しくステーションに入職した人」ととらえると、桐山さんが困難な状況に陥りやすい特徴が二つみえてきます。 1つ目は、即戦力とみられることから周囲のサポートが低くなり、それに伴い、社会的なプレッシャーにさらされることです。 2つ目は、前職で獲得した業務のやりかたや信念といったもののうち、新しい職場では通用しないものを捨て去る必要があることです。 桐山さんが抱えている課題 議論のなかで、桐山さんが抱えている課題が4つ出てきました。 ・ 今の職場だと通用しないことを捨て去る必要がある(学習棄却課題)・ 職場からどのような役割を期待されているのかわからない(役割学習課題)・誰に質問してよいかわからない(人脈学習課題)・必要なスキルが不足している(スキル課題) 次回は、このような状況や課題を理解し、管理者として桐山さんに対してどのような支援ができるのかについて考えていきます。 >>次回「その3:管理者としてどのような支援ができるか」はこちら 注1ケースメソッドとは、架空事例(ケース)について、参加者それぞれの考えをシェアしあうことで、学びを得ていく授業形式です。ケースの教材には、訪問看護管理者が問題に直面している状況が、物語風に構成されています。参加者は、ケースの教材を予習し、自分がこのケースの主人公ならどうするかを事前に考えた状態で、授業に参加します。ケースメソッドの授業では、講師のリードのもと、参加者どうしでアイデアをシェアしながら議論をすることによって学びます。これは講義形式のセミナーとはずいぶん違ったものです。参加者の発言が何よりもセミナーを豊かにする鍵となります。 注2発言者はA・B・C・Dとしていますが、常に同一の人物ではありません。別人であっても便宜上そのように表記しています。 執筆鶴ケ谷理子合同会社manabico代表慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。看護師、保健師、MBA。大学病院(精神科)、訪問看護、事業会社での人事を経験後、株式会社やさしい手看護部長として訪問看護事業の拡大に寄与。看護師250人超の面談を実施し、看護師採用・看護師研修などのしくみづくりをする。看護師が働きやすい職場環境作りの支援を目指し合同会社manabicoを立ち上げる。【合同会社manabico HP】https://manabico.com 記事編集:株式会社メディカ出版 【参考】〇中原淳.『経営学習論』東京,東京大学出版会,2012,155-184.

脳卒中 再発予防
脳卒中 再発予防
特集 会員限定
2023年4月25日
2023年4月25日

訪問看護師に知ってほしい!脳卒中再発予防策 後遺症「痙縮」【セミナーレポート後編】

2023年1月19日に開催したNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「訪問看護師に知ってほしい!脳卒中再発予防策」。近畿大学医学部 脳神経外科講師の内山卓也先生、近畿大学病院 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の林真由美さんを講師としてお迎えし、脳卒中を発症した利用者さんの看護にあたる上で役立つ疾患の情報や、どんなケアが求められるかなどを教えてもらいました。 本記事では、前後編に分けてセミナーの一部をご紹介。後編では、内山先生による「痙縮の特徴や治療法」についての講演内容をお伝えします。 >>前編はこちら訪問看護師に知ってほしい!脳卒中再発予防策 基礎知識【セミナーレポート前編】>>Q&A特別先行公開はこちら先行公開!訪問看護師に知ってほしい脳卒中再発予防策 セミナーQ&A ※約70分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】内山 卓也先生近畿大学医学部 脳神経外科講師日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、日本脳卒中学会脳卒中専門医。不随意運動症に対する脳深部電気刺激術、疼痛に対する脊髄硬膜外刺激療法、痙縮に対するバクロフェン髄腔内投与療法やボツリヌス療法について診療・研究を行っている。林 真由美さん近畿大学病院看護部 SCU主任脳卒中リハビリテーション看護認定看護師、脳卒中療法相談士。脳卒中患者の重篤化予防やリハビリテーション、生活再構築のための機能回復支援など、幅広いサポートに携わる。 脳卒中の後遺症「痙縮(けいしゅく)」とは みなさんは、「痙縮」をご存知でしょうか? 痙縮は「痙性麻痺」ともいわれ、簡単にいうと「硬い麻痺」、麻痺した筋肉が極度に緊張してしまう状態のことをいいます。内反尖足や、手を握り込んでしまって指が開かなくなる症状は、よくみる症状のひとつです。 この痙縮は、脳卒中を発症した患者さんの約25%に後遺症として現れ、またそのうち70%程度が疼痛を合併することがわかっています。 脳卒中になり、手足が思うように動かせなくなった。そして、その手足の筋肉が徐々に硬くなって、痛みやつっぱりといった症状が出てきた。そんな痙縮に悩む患者さんに対してできる治療についてお話ししていきます。 痙縮は当事者だけでなく介護者の負担も増やす 治療法についてご説明する前に、痙縮という症状がどのような問題につながるかを確認しておきましょう。まず、痙縮が起きて関節の可動域が制限されると、ADLが低下し、リハビリも滞ってしまいます。さらに、先ほどご説明した痛みや、睡眠障害の原因になることもあります。つまり、痙縮は患者さんにとって大きな苦痛とストレスを与える症状なのです。また、介護をする方の負担が非常に重くなるという問題もあります。 ボツリヌス療法、ITB療法の概要 そんな厄介な痙縮に対し、私たち脳神経外科医は、さまざまな方法で治療を行っています。その中でも今回は、代表的な治療方法である「ボツリヌス療法」と「ITB療法(バクロフェン髄注療法)」についてご紹介します。 ・ボツリヌス療法硬くなった筋肉にA型ボツリヌス毒素を注射し、緊張を和らげる治療法。外来で治療ができます。 ・ITB療法(バクロフェン髄注療法)脊髄の周りにある髄液にバクロフェンという薬を注入し、筋肉の緊張を和らげる治療法です。もう少し具体的に説明すると、バクロフェンを専用のポンプに入れ、ポンプを腹部の皮下に埋め込み、ポンプから髄液に薬を注入していきます。ITB療法は、両足や両手、体幹など、痙縮の範囲が広い症例で選択されることが多いです。 このように、痙縮には治療法があります。訪問看護の現場で痙縮に悩む利用者さんに出会ったら、かかりつけの医師や脳卒中相談窓口にぜひ相談していただき、そこから、上記のような治療を提供している施設につないでもらってください。 * ボツリヌス療法やITB療法により少しでも体の状態が改善すると、介護の負担が軽減し、患者さんの生活の質が向上する可能性があります。ぜひ訪問看護師のみなさんにも痙縮の症状や治療への理解をより深めていただき、積極的に患者さんや他職種への情報提供をお願いできればと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

緩和ケア がん疼痛
緩和ケア がん疼痛
特集
2023年4月25日
2023年4月25日

がん疼痛の種類を知ろう【がん身体症状の緩和ケア】

最近は多くの病院からがん末期の患者さんがご自宅に退院されます。中には強い痛みやオピオイド(医療用麻薬)の副作用に悩む患者さんがいらっしゃいます。そのような患者さんにどのように寄り添い、症状を緩和していくか。この連載では、ときに基礎的な話も織り込みながら、がんの疼痛緩和について解説を進めていくことにしましょう。 がん疼痛がコントロールできていないAさん Aさん49歳。膵臓がんの方です。がんが発見されたときには、すでに肝臓全体に転移していました。妻と子ども2人(小学生と高校生)と生活していましたが、入院して、抗がん剤治療を行うことになりました。 しかし、抗がん剤の効果はあまりありませんでした。2種類目の抗がん剤を使用しても、病変はむしろ拡大し、がん性腹膜炎も発症。医師からこれ以上の治療は意味がないと退院をすすめられました。 Aさんは自宅療養を選択し、ご自宅に帰られました。歩いて外出するのは困難であったため、訪問看護と訪問診療を導入し、介護保険を申請。ケアマネジャーも紹介されました。 Aさんが退院時に処方された薬剤は図1のとおりです。 図1 退院時に処方された薬剤 Aさんの痛みや状態をアセスメントする Aさんの退院時、まず訪問看護師であるあなたが訪問しました。Aさんが実際にどのような痛みを感じているのか、詳しく伺うことにしました。Aさんに、痛みの部位や痛みの経過、痛みの強さやパターン、性状について確認してみると、自宅に帰る数日前から、心窩部から背部のじわじわした痛みに悩まされるようになったとのこと。入院中はそれほど痛くなかったものの、退院してから1日中じくじくと痛むようになったそうです。場所はだいたい同じ位置です。また、時々強い背中の痛みが生じ、ベッドに横になることしかできなくなってしまうとの訴えもありました。 食欲もあまりなく、好物のステーキも2口程度しか食べられません。便秘に対する薬を服用していますが、この5日ほど排便がありません。腹部も張っているので常に苦しい感じがあるとのことでした。 このようなケースをどう考え、解決し、看護していくか。一緒に考えてみましょう。 痛みの原因を探る がん疼痛は「侵害受容性疼痛」と「神経障害性疼痛」に分けられます。まずは、Aさんの痛みがどのような痛みなのか、痛みの種類を整理しましょう。痛みの種類が分かれば、治療法の検討に役立ちます。 侵害受容性疼痛 侵害受容性疼痛とは、体の組織の損傷による痛みです。組織には痛みを感じる侵害受容器があり、それが刺激されることによって痛みが生じます。切り傷、骨折、擦り傷などの痛みも含まれます。がんの場合は、がんが内臓に浸潤したり、転移して臓器が傷ついたりすることで痛みが生じます。 障害受容性疼痛は、「体性痛」と「内臓痛」に分けられます。 ■体性痛体性痛は、比較的太い神経線維で伝えられる痛みです。そのため、骨や皮膚、筋肉、結合組織といった「体性組織」への刺激が原因となることが多いです。腹腔内臓器でも、被膜や腹膜まで達した炎症で生じる場合はこの痛みとなることがあります。例えば、虫垂炎や腹膜炎の痛みです。太い線維で伝えられる痛みなので、局在がはっきりしていること、体動時に悪化することが特徴です。痛みが体動で悪化する際のレスキューがポイントになります。 ■内臓痛内臓痛は、比較的細い線維で伝えられる痛みです。局在がはっきりせず、鈍い痛みとして感じられます。例えば、膵臓がんの痛みも上腹部全体、背部(胃の裏側辺り)の痛みとして感じ、その局在は比較的広くなります。 神経障害性疼痛 神経障害性疼痛は、神経そのものが障害されたり、刺激されたりすることによって起こる疼痛です。しびれや異常感覚を伴うことがあります。代表的な神経障害性疼痛の異常感覚は、痛む部分を少しだけ刺激することによって強い痛みを誘発する「アロディニア」という現象です。 * がん疼痛は、体性痛、内臓痛、神経障害性疼痛の3種の痛みが時には混合して疼痛として感じられることがあります。例えば、膵臓がんでは、膵被膜に浸潤する痛みや腹膜に転移して生じる痛みは体性痛、膵臓がんによって膵液の流出が妨げられ、膵内圧が高まった痛みは内臓痛にあたります。さらに、膵臓がんは腹腔神経叢へ浸潤することもありますので、浸潤した痛みは神経障害性疼痛に分類されます。このとき、強い腹痛や背部痛が出現します。オピオイド(医療用麻薬)ではコントロールしにくくなり、腹腔神経叢ブロックが必要になることがあります。 Aさんの痛みの特徴を理解する Aさんの痛みの訴えをもとに、痛みの種類を考えてみましょう。 まず、Aさんの痛みは、じわじわした境界不明瞭な痛みです。何となくこのあたりが痛い、言われてみれば心窩部や背中が痛い、というものです。これは内臓痛の成分が強いと思われます。また、時々起こる強い背部痛は、痛い場所がはっきりしているので、内臓痛に加えて、体性痛を合併している可能性が高く、侵害受容性疼痛とも判断でき、神経障害性疼痛の可能性も否定できません。先述のとおり、膵臓がんの場合、腹腔神経叢に浸潤し、神経障害性疼痛を起こしやすいことが知られています。 Aさんの痛みの特徴を理解したら、次はその痛みをどのように緩和していくのかを考えていきましょう。この続きは、次回、お伝えします。 >>次回はこちらがん疼痛マネジメントの原則-WHOがん疼痛治療ガイドラインとは【がん身体症状の緩和ケア】 執筆 鈴木 央鈴木内科医院 院長 ●プロフィール1987年 昭和大学医学部卒業1999年 鈴木内科医院 副院長2015年 鈴木内科医院 院長 鈴木内科医院前院長 鈴木荘一が日本に紹介したホスピス・ケアの概念を引き継ぎ、在宅ケアを行っている。 編集:株式会社照林社 【参考】 〇日本緩和医療学会 ガイドライン統括委員会編 『がん疼痛の薬物療法に関するガイドライン(2020年版)』 東京,金原出版株式会社,2020.

「七夕の奇跡」【つたえたい訪問看護の話】
「七夕の奇跡」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2023年4月18日
2023年4月18日

大賞エピソード漫画化!「七夕の奇跡」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。大賞を受賞したのは、公益社団法人山梨県看護協会ますほ訪問看護ステーション(山梨県)の 石井啓子さんの投稿エピソード、「七夕の奇跡」です。 今回は、大賞エピソードを『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』著者の広田奈都美先生に、全10ページの漫画にしていただきました。ぜひご覧ください! >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!【みんなの訪問看護アワード】 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師/訪問看護ステーション管理者。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)投稿者: 石井 啓子(いしい けいこ) 公益社団法人山梨県看護協会 ますほ訪問看護ステーション(山梨県)ますほ訪問看護ステーションで訪問看護師として勤務し約22年…。大変だったこと、辛い思い出もたくさんありますが、それをかき消すほどの胸がグッと熱くなるようなほっこりするエピソード、患者さん・ご家族のありがたい言葉がたくさん頭をよぎります。今回私の書いたエピソードを大賞に選んでくださり、恥ずかしいような、うれしいような、複雑な気持ちですが、私がこのような喜びを得ることができたのは、今まで巡り合ってきたたくさんの患者さん・ご家族のおかげだと感じます。エピソードを漫画化してくださることにより、訪問看護という仕事のやりがい・魅力をこれから訪問看護師を志す人に少しでも伝えることができたらとてもうれしく思います。今後も訪問看護師として、一人ひとりの患者さん・ご家族との出会いを大切に、日々真摯に頑張っていきたいと思います。ありがとうございました。 [no_toc]

脳卒中再発予防セミナー
脳卒中再発予防セミナー
特集 会員限定
2023年4月18日
2023年4月18日

訪問看護師に知ってほしい!脳卒中再発予防策 基礎知識【セミナーレポート前編】

2023年1月19日に開催した、NsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「訪問看護師に知ってほしい!脳卒中再発予防策」。近畿大学医学部から脳神経外科講師の内山卓也先生と、近畿大学病院 脳卒中リハビリテーション看護認定看護師の林真由美さんを講師としてお迎えし、脳卒中を発症した利用者さんの看護にあたる上で役立つ疾患の情報や、どんなケアが求められるかなどを教えてもらいました。 本記事では、前後編に分けてセミナーの一部をご紹介。前編では、林さんによる「脳卒中の基礎知識」や「訪問看護師のみなさんにぜひ実践してほしいサポート」についての講演をまとめます。 >>Q&A特別先行公開はこちら先行公開!訪問看護師に知ってほしい脳卒中再発予防策 セミナーQ&A ※約70分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】内山 卓也先生近畿大学医学部 脳神経外科講師日本脳神経外科学会脳神経外科専門医、日本脳卒中学会脳卒中専門医。不随意運動症に対する脳深部電気刺激術、疼痛に対する脊髄硬膜外刺激療法、痙縮に対するバクロフェン髄腔内投与療法やボツリヌス療法について診療・研究を行っている。林 真由美さん近畿大学病院 看護部 SCU主任脳卒中リハビリテーション看護認定看護師、脳卒中療法相談士。脳卒中患者の重篤化予防やリハビリテーション、生活再構築のための機能回復支援など、幅広いサポートに携わる。 脳卒中の特徴 脳卒中とは、頭の血管が破れる「脳出血」や「くも膜下出血」、血管が詰まる「脳梗塞」の3つの総称です。年間で約20万人以上が発症し、10年間で約半数の方が再発するため、決して珍しくない病気といえるでしょう。 そんな脳卒中の特徴は、発症すると、麻痺や失語、神経脱落症状などの後遺症が残るケースが多く、ADLの低下につながりやすいことです。重い後遺症に悩まされ、在宅でリハビリを続けなければならない方は少なくありません。また、再発するたびに重症化し、要介護5の認定を受ける要因の中で最も大きな割合を占めるともいわれています。その一方で、近年は急性期の治療が進歩し、退院して自宅に戻られる方も増えました。このように、脳卒中を発症された方のその後は実にさまざまです。 なお、脳神経細胞は一度壊死すると元には戻らないため、発症した場合はとにかく迅速に対応することが重要です。具体的には、8時間以内であれば脳の蘇生が可能とされています。 脳卒中予防の基本 日本脳卒中学会が発表している「脳卒中治療ガイドライン2021」では、脳卒中の発症を招く代表的な危険因子として、以下を挙げています。 ・高血圧(最大の危険因子といわれています)・糖尿病・脂質異常症・飲酒・喫煙・心疾患・肥満 これらの因子が関係し、体の中で動脈硬化をはじめとした不調が徐々に起こって、ある日突然に発症するケースがとても多いです。つまり、脳卒中は生活習慣の影響をとても受けやすい病気ということ。普段から血圧のコントロールや内服管理、食生活の見直し、運動を心がけることが予防の基本です。 症状出現時の対応 脳卒中を発症すると、顔の半分が垂れる、顔面麻痺が起きる、手足が動かしにくくなる、喋りにくくなるといった症状が見られます。これらのどれかひとつでも確認できた際は、60〜70%の確立で脳卒中を疑いましょう。 症状が現れたり消えたりしているうちは、まずは速やかにかかりつけの医師に相談してください。症状が30分以上続くときは、救急車要請の対象となります。 また、症状が最初に出たときの時間を覚えておくこともポイント。その後の治療選択にあたって重要な情報となります。 利用者さんに事前に伝えておくべきこと 先に触れたとおり、脳卒中の症状が出現したら、速やかに治療を受けることが重要です。しかし実際は、すぐに病院に来られない方が多くいます。例えば一人暮らしだったり、失語の症状が出て連絡しようにもできずにいたり、といったケースです。また、「誰に自分の危険を知らせたらいいかわからなかった」とおっしゃる方も少なくありません。そのため利用者さんには、「発症した際にどこにどのような方法で連絡すべきか」を案内しておくことが大切です。 情報提供のコツ 私が患者さんに情報を提供する上では、その方の「言葉」を大切にしています。例えば、入院患者さんの多くは「二度と入院したくない」とおっしゃいます。これは、今現在のことしか見えておらず、今後についてはまだ考えられていないサイン。この段階では、疾患や今後の生活についての基礎的な情報をお伝えします。 患者さんが「なぜ発症したのだろう」とおっしゃるときは、過去を振り返って原因を探っている段階と考えられるでしょう。こんなときは、今までの生活習慣についてヒアリングし、その方に必要な工夫についてお話しするようにしています。 また、「生活をこう変えてみよう」とおっしゃる方、つまり行動を起こそうとしている方に対しては、継続できる目標設定になっているかを確認するようにしています。 ACPを提案する重要性 脳卒中を発症して入院される患者さんの中には、意識障害が起きたり、認知機能が低下したりする方が多くいらっしゃいます。そして、その中で幸いにも状態が回復した方の多くは「今まで自身の生き方や最後の迎え方について考えたことがなかった」とおっしゃいます。 そこで、脳卒中を経験した利用者さんにみなさんからぜひ提案してほしいのが、5年後、10年後の生活をイメージするACP(アドバンスケアプランニング)です。 「今までどおり趣味を楽しみたい」「孫の顔を見たい」といった希望についてはもちろん、・もし再発した場合、延命措置や人工呼吸器の装着を選択するか・胸骨圧迫(心臓マッサージ)を実施するか・家族は保険や貯金について把握しているかという点を含めて、将来のことを身近な方と話すきっかけを提供してみましょう。それにより、利用者さんの今後の生活はよりよいものになるはずです。 脳卒中相談窓口の取り組み 2022年の5月から、一次脳卒中センターに「脳卒中相談窓口」が設置されています。循環器病対策推進計画の一環として始まった取り組みで、窓口では当事者への治療や再発予防に関する情報提供や生活の支援などはもちろん、訪問看護師やヘルパー、ケアマネジャーからの相談も受け付けています。当事者を支える専門職の職種連携を図ることも、脳卒中相談窓口が掲げる目的のひとつなので、ぜひ有効に活用してもらえたらと思います。 看護外来に寄せられる相談内容 看護外来に日々寄せられる相談の一部をご紹介します。まず、生活に関する相談としては、以下のような内容が挙げられます。 ・家族関係がうまくいっておらず、血圧が上がってしまう・家族から運動を止められる・経済的な問題で薬の継続に不安がある・多忙で自炊ができず、減塩が難しい 以下は、問診やトリアージが必要な相談にあたるでしょう。 ・血尿が止まらない・めまいがする・3日ぐらい食事がとれず、起き上がれない また、地域社会との連携や調整が必要な相談も多く寄せられます。 ・高次脳機能障害が残り、仕事に行くのが怖くなった。職場の人とうまくやっていけない・周りに頼れる人がいない・病気になったことを知られたくない 当事者が独力で生活習慣を改善し、維持していくのは難しいこと。訪問看護師のみなさんには、症状出現時だけでなく、ぜひ日々の暮らしについてもアドバイスやサポートをお願いします。また、利用者さんが大事にしている生き方や価値観を知り、ぜひ病院側にも情報提供をしていただきたいです。 >>後編はこちら訪問看護師に知ってほしい!脳卒中再発予防策 後遺症「痙縮」【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

ポータブルエコーの基礎知識
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2023年4月18日
2023年4月18日

手軽で便利…でも難しい? 訪問看護師が知っておきたいポータブルエコーの基礎知識

新たなアセスメントツールとして訪問看護でも採用され始め、最近話題のポータブルエコー。使ってみたいと思っても、基礎教育を受けていない看護師にとっては、難解な専門用語を前に、敷居が高いと感じる人も多いのではないでしょうか。東葛クリニック病院でエコー回診を担い、その技術と判断方法を看護師にも指導している臨床検査技師・佐野由美先生に、エコーのしくみと使うために必要な基礎知識を教えていただきました。 音の反射信号を画像化するエコー エコーは、人の耳には聞こえないほどの高い音(超音波)をプローブから出して臓器にあて、跳ね返ってくる信号をプローブが受信し、画像化します。患者にとって無侵襲で、レントゲンのように被曝がなく無害であるため繰り返し検査することができます。 また、レントゲンは撮影後すぐに見ることができませんが、エコーならばリアルタイムで見ることができます。エコーで見ることができるのは、実質の臓器(中身の詰まっている臓器:肝臓、腎臓、膵臓、脾臓など)。尿や血液も見られますが、空気、骨に対しては不向きです。難点は、エコー画像の判断が実施者の技量に大きく左右されるところです。 エコーは深さ・部位ごとに3つのプローブがある プローブは3種類あり、見る深さや部位によってプローブを替える必要があります(図1)。お腹のやや深い部分、例えば膀胱を見る場合は、周波数の低いコンベックス型プローブを使います。コンベックス型プローブは先端が丸くなっており、広い範囲を観察することができます。 褥瘡エコーは表皮に近いところですので、体表に近い部分(乳腺や甲状腺、血管など)を見る周波数の高いリニア型プローブを選択します。薄く小型のセクタ型プローブは心臓に特化したもので、肋骨の間から心臓を見ることができます。 図1:「プローブの種類と使い分け」(提供:佐野由美氏) プローブの持ち方・走査方法 まず、プローブにゼリーを塗り、親指と人差し指、中指でプローブを握り、薬指は肌に添えて固定します(図2)。 図2:「プローブの持ち方 良い例 悪い例」(提供:佐野由美氏) 握りしめたり、持つ位置が上になりすぎたりしないようにしましょう。初心者は、固定が不十分で、強く握りしめすぎるあまり、細やかな動きができなくなりがちです。 横断像は、体軸に対して垂直にプローブを置き、縦断像は、体軸に並行にプローブを置いて描出します。この時、プローブマークの位置が重要です(図3)。 図3:「プローブマークについて」(提供:佐野由美氏) プローブマークとは、プローブの横についている突起のことです。このマークを横断像では患者の左側に、縦断像では患者の足側に向けてプローブを持つことが基本です。横断像ではプローブを当てた部分で切った断面を下からみた画像、縦断像ではプローブを当てた部分を切った断面を右から見た画像がそれぞれ描出されます(図4、図5)。 図4:横断像 (提供:佐野由美氏) 図5:縦断像 (提供:佐野由美氏) そこで重要となるのが、人体の解剖についての知識です。「この断面だから、この臓器がこんな形で見られるはず」とイメージできるようにしておく必要があります。私がエコーを教える時は、実際の解剖図を照らし合わせながら、画像を見ています。 走査方法は2つあり、プローブの角度を変えずに平⾏にスライドさせる平行走査と、プローブ設置面を支点とし傾けながら扇状に動かす扇動走査があります(図6)。 図6:平行走査と扇動走査 (提供:佐野由美氏) エコー画像 調整・判断の知識 エコーを扱う際には、画像の調整(ゲイン、フォーカス、ダイナミックレンジなど)の知識が最低限必要になってきます。特に、ポータブルエコーでは、全体の明るさを調整するゲインの知識が重要です(図7、図8)。 図7:画像の調整(提供:佐野由美氏) 図8:明るさの調整 ゲイン (提供:佐野由美氏) また、画像の判断で最低限覚えてほしいのはエコーレベルです。エコーレベルには、真っ黒の無エコーから、真っ白の高エコーまであり、そのエコーレベルで画像を判断していきます。戻ってきたエコーの力が大きい(硬いもの)ほど、白で描出され、小さい(柔らかいもの)ほど、黒で描出されます。しかし、空気やガスは例外で、白く見えます。 図9:エコーレベル (提供:佐野由美氏) 膀胱は見えやすい方ですが、尿の貯留具合などで左右され、個人差があります。健診で来られる方々はきれいに見えることが多いですが、高齢者は便秘気味でガスが多く、見えにくくなりがちです。 そのほか、エコーには、アーチファクト(画像ノイズ)という、実際には存在しないのに映し出される虚像がつきものです。理解していないと誤診につながる場合や、画像判断の手がかりにできる場合もあり、知っておく必要があります(図10)。 【多重反射】強い反射面が体表面付近で並行に向き合っている場合、反射面の実像の後方に砂を敷いたような画像に見えることがある。 【サイドローブ】エコーはプローブからまっすぐ垂直の方向に放射されるメインローブによって画像が抽出されますが、斜めの方向に放射されるサイドローブによって実像とは異なる画像が抽出されてしまうことがある。 【音響陰影】エコーを強く反射または吸収する物質の後方は、エコーが減弱あるいは消失した領域となる。これを音響陰影という。 【後方エコー増強】音響陰影とは逆に周囲に比べて白く描出されます。画面上にある嚢胞の後方が輝度が高くみえている。 【鏡面現象】鏡に映りこんでいるものが、鏡の向こう側にもあるのと同様に、エコーでもその現象が起こることを鏡面現象という。エコーを強く反射する平面があると、鏡の役割を果たして起こる。 図10:アーチファクトの一例 (提供:佐野由美氏) ポータブルエコー 技術習得と機器選びがカギ エコーは、臨床検査技師でもまだまだ未熟な領域が多くあり、使う人の技術がカギを握ります。研修やアフターケアで質問を受け付ける教育機関があり、看護師は超音波検査士という資格の対象職種となっています。管理者は、ある程度一人が習熟してから次を育てる、というように長いスパンで教育プランを作成する必要があるでしょう。 また、ポータブルエコーは以前より低価格になったとはいえ、最低でも数十万円以上と、決して安くはありません。でも、安いものはどうしても画質が劣ります。画質が悪いエコーでは分かりにくいため、途中で諦めてしまったり、継続使用ができなくなったりするケースがあります。個人的には、初心者の方は、低価格のものより画像がきれいな機器を選んでほしいと思います。 取材協力佐野由美氏(臨床検査技師)編集:メディバンクス株式会社 【引用・参考】(1)田中宏治. 『ナースのためのポケットエコー実践ガイド』 医歯薬出版株式会社, 2020.(2)『超音波検査技術テキスト』 一般社団法人日本超音波検査学会, 2012.(3)真田弘美・藪中幸一・野村岳志(編集). 『役立つ!使える!看護のエコー』 照林社, 2019.

高齢者虐待
高齢者虐待
特集
2023年4月18日
2023年4月18日

もしかしてネグレクト? 訪問看護師は虐待疑いにどう対応すべきか

この連載では、訪問看護師のみなさんが現場で遭遇しそうなケースをもとに、利用者さんからの相談内容に関連する法律や制度についてわかりやすく解説します。法律に苦手意識がある方でも自信をもって対応できるよう、役立つ知識をお届けします。今回のテーマは利用者さんが虐待を受けているのではないかと思われる状況での対応についてご説明します。 事例 夫と二人暮らしのご利用者Gさん(80代女性、要介護度3)。息子夫婦が近所に、娘夫婦が遠方に住んでいます。 がんばって在宅生活を続けてきましたが、最近夫が外出先で転倒・骨折してしまい、一気に在宅生活の継続が困難になってしまいました。結局、介護施設を探すことになり、当面の間は近所に住む長男の妻が食事を定期的に運ぶようになりました。 ただ、長男の妻はあまり義父母の介護には関わりたくないらしく、介護サービスの契約の立ち合いや施設探しには積極的に協力してくれないようです。 ある日、訪問看護師のHさんは、Gさんからこのような相談を受けました。 「別居の娘が食事を運んでくるけれど、最近食べ物がどれも腐っているの。変な味がするから捨てていて…。そのせいで食べるものがないのよ。」 「『別居の娘』さん? 近所に住んでいる長男の妻では?」と違和感を持ったHさんがもう少し詳しく話を聞いてみると、どうやらGさんは長男の妻と自分の娘を間違えているようです。「認知症が始まってしまったのかも」と思いましたが、実際に長男の妻が差し入れたタッパーを開けさせてもらうと、腐ったような酸っぱい臭いがします。 「この煮物は、確かに悪くなっているようですね。お腹を壊すといけないから食べないほうがよいでしょう。何日前のものですか?」とGさんに尋ねると、「今朝、娘が持ってきた」と答えます。臭いの原因を長男の妻に尋ねたのかと聞くと、「関係がよくないから黙って置いていくのよ。もうずっと顔も合わせていないわ」とのこと。Gさんの体調には大きな変化はなく、ほかに変わった様子はありません。このような状況で、訪問看護師のHさんは、どのような対応をとることが望ましいでしょうか。今回はいつもと趣向を変えて、クイズ形式でみなさんに質問します。以下の3つの選択肢の中から適切な対応を選んでください。A:自分は訪問看護師として関わっているに過ぎないので、Gさんの体調に問題がなければ何もしなくてよい。B:虐待(ネグレクト)に当たる可能性があるので、直ちに行政へ通報する。C:担当のケアマネジャーに報告し、問題意識を伝える。いかがでしょうか。 本シリーズをここまでお読みいただいた読者は、Aを選ぶことはないかと思いますので、BとCのどちらかを選ぶことになるでしょう。「わざと腐ったものを出したのだから、虐待では?」と思った人や、逆に「この程度のことで虐待にはならないでしょう。Gさんは認知症で何か誤解しているのかもしれないし」と思った人もいるかもしれません。 Bでも間違いとはいい切れないのですが、ここでの正解はCとしたいと思います。これからその理由を解説します。今回は、「虐待」について適切に対応できるよう基礎知識を確認していきましょう。 まず押さえる虐待防止法と虐待の5つの定義 高齢者虐待防止法(正式名称:高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律)という法律があります。これは、自らの身を守り、SOSの声を上げることができない高齢者を虐待から守るための法律です。 当たり前ですが、まずは「こういう法律があるのだ」ということを押さえてください。ほかにも障害者虐待防止法、児童虐待防止法があり、「虐待」は法律で明確に定められており、「法律を踏まえて対応する必要がある」と理解することが重要なポイントです。 高齢者虐待防止法では、虐待を5つに分類し、それぞれ以下のとおり定義しています。この法律を理解するためには、この定義の理解が非常に重要です。 身体的虐待 高齢者の身体に外傷が生じ、または生じるおそれのある暴行を加えること 心理的虐待 高齢者に対する著しい暴言または著しく拒絶的な対応、そのほかの高齢者に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと 性的虐待 高齢者にわいせつな行為をすること、または高齢者にわいせつな行為をさせること ネグレクト 高齢者を衰弱させるような著しい減食、または長時間の放置、養護を著しく怠ること 経済的虐待 高齢者の財産を不当に処分すること、そのほか高齢者から不当に財産上の利益を得ること 訪問看護師にも通報義務がある 高齢者虐待防止法は「虐待を受けたと思われる利用者を発見した場合は、速やかにその事実を市町村に通報しなければならない」と定めています。この義務は、訪問看護をする看護師にも当然課せられています。 通報を受けた市町村や地域包括支援センターは、調査を行い、虐待を認定した場合、行政権限で利用者を措置処分により隔離することができます。緊急ショートステイや特別養護老人ホームへの入所を速やかに行うことで利用者を虐待者から引き離すのです。 「どの虐待に当たるか?」から出発する 先ほど「法律を踏まえて対応する」と書きました。現場の訪問看護師が具体的にすべきことは、虐待ではないかと思われたときに5つの虐待のどれに当てはまるかを考えることから始めます。 今回のGさんの事例では、「高齢者を衰弱させるような著しい減食、または長時間の放置、養護を著しく怠ること」、すなわちネグレクトが成立する可能性があります。そして、法律では「虐待を受けたと思われる利用者を発見した場合」に通報すべきとしているわけですから、ネグレクトの可能性がある以上通報をしなければならない、つまりBを選択する考えも十分成り立ちます。 しかし、現段階で直ちに通報することは時期尚早のような気もします。なぜなら、虐待容疑をかけられている長男の妻からは聞き取りをしていないからです。「なぜ、差し入れた食べ物が腐っていたのか」と聞けば、夏場で腐りやすかったり、Gさんが冷蔵庫に入れなかったりしたことが原因だったと分かるかもしれません。 一方、高齢者の権利擁護の観点からは、「そんな悠長なことをしていては、いつエスカレートするかわからない。腐っていたことは事実であり、認知症であれば食べてしまう危険もある。緊急性は高いのだから、行政に速やかに通報すべきだ」といった意見も考えられるところです。 もちろん暴力を受けていることが明らかであれば悩まず通報すればよいのですが、虐待の内容によっては突き詰めて考えていくと、結局何をすればよいかがわからなくなるという難しいケースが実は多いといえます。この点、虐待防止法は具体的にどこまで調査をした上で通報に踏み切るべき、ということまで定めてはいません。そのため、現場ではケースごとに判断せざるを得ないのです。 他職種と連携し必要な対応を検討する こうしたことを踏まえた上で、今回は正解をCとしました。その主な理由は、暴力や暴言といった緊急性を認めがたく、Gさんには認知症の疑いがあり何らかの誤解が生じている可能性が考えられるからです。 そもそも、日々の食事については宅配弁当といった別の方法も考えられ、身内に頼らなければならないものでもありません。また、長男の妻に介護負担がかかっていることが推測されます。ケアマネジャーに、そもそもこの状況を把握しているかをさっそく確認し、情報共有することが無難でしょう。訪問看護師が自分で直接長男の妻にヒアリングすることもできますが、その後どのようなケアプランを組み立てるかはケアマネジャーの管轄です。連携先としては、ケアマネジャーが適任といえます。 虐待の疑いありとして、直ちに市町村や地域包括支援センターに通報することも間違いではありませんが、ケアマネジャーに報告したとしても、利用者の安全確認や事実確認、情報収集などが行われることになります。ですから、まずはケアマネジャーに託す選択肢も十分考えられるのです。 もし、ケアマネジャーがまったく対処せず、状況が改善しないようであれば、そのときは迷わず通報をすればよいでしょう。 さて、最後に今回の回答例を示しますが、これはあくまで一例です。利用者さん本人に「あなたは虐待されている可能性があります」と言うこともできますが、現実的とはいいがたいです。どのような対応がベストか、ぜひ職場のみなさんで話し合ってみてください。 回答例 「食べ物がないと困りますね。ただ、息子さんの奥様もわざと腐ったものを出しているわけではないかもしれませんので、さっそく担当のケアマネジャーにこのことを伝えてみますね。」 執筆 外岡 潤介護・福祉系 弁護士法人おかげさま 代表弁護士 ●プロフィール弁護士、ホームヘルパー2級介護・福祉の業界におけるトラブル解決の専門家。介護・福祉の世界をこよなく愛し、現場の調和の空気を護ることを使命とする。著書に『介護トラブル相談必携』(民事法研究会)他多数。 YouTubeにて「介護弁護士外岡潤の介護トラブル解決チャンネル」を配信中。https://www.youtube.com/user/sotooka編集:株式会社照林社

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2023年4月11日
2023年4月11日

遺族訪問時の請求書って…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

遺族訪問時の請求書のお渡しって、切ない 遺族訪問は、とっても大切で緊張する場面。せっかく良い雰囲気になった後に請求書を渡すのって、ちょっと切ないにゃ… 遺族ケアの集大成である遺族訪問。ご遺族と故人との思い出も振り返ります。当たり前のことですが、そんな状況下でもご請求書を渡さなくてはいけません。ちょっと気まずいな…切ないな…と思っているかたも多いのではないでしょうか。訪問看護師さんからは、「せっかく良い雰囲気になっているのに、請求書を渡すとその雰囲気が壊れてしまう気がする」という声も聞かれました。 ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

みんなの訪問看護アワード2023 表彰式
みんなの訪問看護アワード2023 表彰式
特集
2023年4月4日
2023年4月4日

みんなの訪問看護アワード2023 表彰式イベントレポート【3月24日開催】

2023年3月24日(金)に、銀座 伊東屋 HandShake Lounge(東京都中央区)にて開催した「みんなの訪問看護アワード2023」表彰式。全国からエピソード投稿者をはじめとしたゲストの皆さまにお越しいただき、表彰、特別トークセッション、懇親会などで盛り上がりました。ここでは、表彰式当日の様子や参加された方々の感想などを、豊富な写真とともにお伝えします。 >>「みんなの訪問看護アワード」全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!【みんなの訪問看護アワード】 受賞者の皆さまへのトロフィー・記念品授与 まずは受賞者への表彰。入賞、審査員特別賞、大賞の順にお一方ずつ審査員の先生方からトロフィー・記念品が授与されました。 入賞エピソード「爪切りを通して」投稿者の古橋 笑生さん(左)と、特別審査員の長嶺由衣子さん(右) 特別審査員の佐藤 美穂子さん(左)と、大賞エピソード「七夕の奇跡」投稿者の石井 啓子さん(右) 大賞エピソード投稿者 石井 啓子さん(山梨県)の受賞コメントを一部ご紹介します。「今回の受賞について、所属しているますほ訪問看護ステーションのみんなや、エピソードに登場する利用者さんの娘さんも一緒になって喜んでくれました。エピソードの漫画化も楽しみにしてくれています。エピソードを通して、訪問看護という仕事のやりがいや魅力が少しでも伝わったらうれしく思います。これからも、日々真摯に一人ひとりの利用者さん・ご家族に向き合っていきたいと思います。」 石井さんの「七夕の奇跡」を大賞作品に選出した理由について、特別審査員の佐藤 美穂子さんからのコメントもご紹介します。「七夕の日に『短冊に願い事を書いてみては』と思いつかれたことがまず素晴らしいと思いました。そして、利用者さんの持てる力を引き出すように『願い事を書いてみますか?』と語り掛け、実際に『喜代子さん ありがとう』という文字になったこと。これは本当に奇跡だと思います。私たちは、グリーフケア(悲嘆へのケア)を遺族に対するケアととらえがちですが、実は看取りのプロセスが大切です。ご本人が『ちょっとした今』を残すことによって、悲嘆を乗り越えられる。そうした体験を記したこのエピソードは、本当に素晴らしいと思います。私たち訪問看護師がたくさんの看取りに立ち会っていくなかで、こうしたエピソードを知ることはとても大切だと考え、審査員一同で、『皆さまに一番つたえたい話』として選出させていただきました。」 エピソード・訪問看護に関するトークセッション 左から特別審査員の長嶺由衣子さん、受賞者の村田 実稔さん(東京都)、長尾 弥生さん(岐阜県)、梁井 史子さん(北海道) 表彰後は、特別審査員の長嶺由衣子さんと、受賞者3名による特別トークセッション。エピソード投稿のきっかけや訪問看護師になった経緯、訪問看護の魅力を伝えるためにどうすれば良いかなど、幅広いテーマについてディスカッションされました。 「実は、ステーションのみんなには内緒で投稿しました。大賞を狙えると思っていたのですが、もっとすごいエピソードがありました」(村田さん)という裏話で会場に笑顔がこぼれる場面も 働くエリアも訪問看護師になった背景も異なる3名ですが、訪問看護の利用者さんの日常や想いに寄り添える点には、共通して魅力を感じているようです。 また、審査員特別賞(「そうだ、訪看がある」)を受賞した梁井 史子さん(北海道)は、現在もリンパ浮腫とつきあい、抗がん剤と鎮痛剤を飲みながら訪問看護師を続けているとのこと。利用者の立場になり、改めて訪問看護が「人生・環境を支えてくれるありがたい存在」だと感じたエピソードや「一日でも長く訪問看護師を続けたい」という想いを語ってくださいました。 訪問看護の魅力を伝える方法については、登壇者以外の皆さまからも「訪問看護師を主役としたドラマが放送されたら良いのでは」「訪問看護の魅力を伝えたくて、思い切って漫画・エッセイを出版社に持ち込んだところ、連載できた」「根強く『5年神話』(病棟で5年経験を積まないと訪問看護師をなることは難しいという考え)が残っているが、新卒訪問看護師もしっかり活躍している。看護学校の先生にも『大丈夫』と伝えていく必要がある」といったコメントがあり、活発な意見交換がなされました。 初対面でも意気投合。盛り上がった懇親会 参加した訪問看護師さんからは「訪問看護が好きな人ばかりで、前向きな気持ちになれた」という声も 式典の終了後は、審査員の先生方、エピソード投稿者の皆さま、協賛企業の皆さまなど、幅広い方々がご参加されての懇親会も開催。初対面の方々が多いはずが、あっという間に意気投合する様子が見られました。普段は違う都道府県で訪問看護師として働く皆さん。担当エリアの広さや訪問時間・利用者さんの傾向の違いなど、地域差の話題で盛り上がっていました。 また、当日は会場内に「質問BOX」を設置。質問が寄せられた方には、懇談会中に回答いただきました。 質問に回答する受賞者の佐藤 理恵さん(神奈川県) 大賞作品の漫画を描いていただく広田 奈都美さん(漫画家/看護師)にも、懇親会中に漫画制作に関するお話を伺いました。 大賞受賞者の石井 啓子さんと、漫画家の広田 奈都美さん 「『七夕の奇跡』の取材では、石井さんから利用者さんのかわいらしいエピソードをたくさん伺いました。そんなかわいらしさが伝わる漫画にしたいと思っています」といったコメントをいただきました。 また、特別に制作中の「七夕の奇跡」の漫画下書きも一部お披露目されました。 審査員の先生方・受賞者の皆さまのご感想 最後に、「みんなの訪問看護アワード」や表彰式について、特別審査員の先生や受賞者の皆さまに伺った感想をご紹介します。 佐藤 美穂子さん(公益財団法人日本訪問看護財団 常務理事)訪問看護の現場の皆さんの声を聞ける場を設けていただいたことに感謝しています。あまり自分のことを語らない奥ゆかしい訪問看護師さんも多いなか、今回のイベントは自分のことを語る良いきっかけになったのではないでしょうか。地域共生社会の実現が求められていますが、訪問看護は自身のライフステージに関わらず、看護師の資格を活かして地域に役立てるお仕事です。この表彰式で訪問看護師さんたちのお話を聞いていると、受け手・支え手に関係なく人生をともにしていくための道筋も見えてきて、とてもうれしく思っています。 高砂 裕子さん(一般社団法人全国訪問看護事業協会 副会長)訪問看護は、日々の季節の移ろいを感じることができるほか、利用者さんやそのご家族との距離が近い魅力ある仕事です。「みんなの訪問看護アワード」は、そうした魅力や日々の訪問看護の実践について多くの方に知っていただく、とても素晴らしい機会です。受賞エピソードが多くの方に読まれることで、在宅で療養されている方に訪問看護の存在を知っていただくことや、「訪問看護師になりたい」と思う仲間が増えることを期待しています。そして、こうした取り組みが継続されることを願っています。 長嶺 由衣子さん(東京医科歯科大学国際健康推進医学 非常勤講師)当初このイベントのお話を聞いたとき、素直に素晴らしい取り組みだと思いました。表彰式では、受賞者の方々からも「受賞が励みになった」「自分たちのやっていることに自信が持てた」という声が聞かれました。こうしたアプローチや応援は大事だと思います。皆さん本当は、お話ししたいエピソードがたくさんありますよね。それを言語化することで仕事の振り返りになり、表彰されるとより自信になる。そして、「訪問看護の魅力を伝える伝道師」として動こうという意識も生まれる。色々な意味で波及効果がある取り組みだと思います。 大石 佳能子さん(医療法人社団プラタナス/株式会社メディヴァ 代表取締役)初開催ながら数多くのエピソードが投稿され、表彰式にも多くの方が集まって、素晴らしい成果が出ていると思います。また、表彰式には全国の中でも想いや技術がトップレベルの方々が集まりました。同じような部分で悩み、乗り越えようと頑張っている皆さんなので、初対面でも結束するのが早いですね。訪問看護というニッチな分野だからこその連帯感もあるように思います。全国に訪問看護師の知り合いがいる、離れていても仲間がいる。そのように業界を支え合っていけるネットワークや連帯感が生まれる予感がしました。 高倉 陽子さん(入賞者/神奈川県)受賞のご連絡をいただいたときは、スタッフや所長をはじめとして、その場にいた全員が絶叫しました(笑)。エピソードの投稿内容も事前にみんなに相談していたので、周囲の支えがあったからこそとれた賞だと思っています。今後、エピソードを色々な方々に知っていただけることがうれしいですし、とても楽しみです。 服部 景子さん(入賞者/北海道)全国各地で一生懸命勤務されている訪問看護師の皆さんと表彰式の場で出会い、お話しできたことをとても光栄に思っています。また皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。エピソードの漫画化も、心待ちにしています。 表彰式にご参加いただいた皆さまの集合写真 表彰式にご参加いただいた皆さま、本当にありがとうございました。大賞作品の漫画は、2023年4月下旬に公開予定。そのほかの受賞作品についても、順次漫画を制作予定です。ぜひご覧ください。 取材・執筆・編集: NsPace編集部

管理業務への処方箋
管理業務への処方箋
特集
2023年4月4日
2023年4月4日

CASE4 クレームを受けるスタッフをどうするのか_その1:まずすべきことは何か

管理者として課題に直面したとき、自分以外の管理者がどう判断するかを知りたくなることはありませんか? この連載は、参加者どうしで考えをシェアしあう研修手法である、ケースメソッド注1セミナーの形式に沿って、訪問看護管理者が直面する課題を考えていきます。第10回は、クレームを受けたとの報告がスタッフからあったとき、管理者としてまず何をすべきかについて考えます。 はじめに 「利用者からのクレーム」は、ないに越したことはありません。しかし、クレームがあったときに、管理者として適切な対応ができるよう、事前に考えておくことは有用です。みなさんもセミナーに参加したつもりで、「自分だったらどうするだろう」と考えながらこの連載を読んでいただければと思います。 ケースと設問 CASE4 クレームを受けるスタッフをどうするのか 入職3ヵ月になるスタッフナースの桐山さんから、「利用者のJさんから『桐山さんには訪問に来ないでほしい』と言われた」と報告を受けた。 桐山さんは病院で3年、いくつかの介護施設で6年、他社訪問看護で1年の経験のある看護師。とても真面目な性格で、職場で冗談を言うこともなく、むしろ冗談を間に受けてしまう様子がある。何かを伝えると一語一句漏らさずに細かな字でメモをとるが、肝心なときにそのメモがどこにあるのかわからずミスをしてしまうのだ。 当ステーションは、管理者と桐山さんを除くと20歳代の看護師が2人。入職時期は2人のほうが早いが、年齢的にも看護師としての経験年数も桐山さんのほうが上である。ほかのスタッフと軽く雑談をすることも桐山さんには難しいようだ。そして他スタッフからは「桐山さんとは一緒に働きづらい」と相談を受けている。管理者として、どうすればよいだろうか? 設問もしあなたがケースに登場する管理者であれば、桐山さんやほかのスタッフに対してどのような働きかけをすべきだと考えますか。ご自身の経験から考えたアイデアをみなさんにシェアしてください。 管理者としてまずすべきことは何か 講師このケースで議論したいことは、CASEのタイトルにもあるようにクレームを受けるスタッフをどうするかです。まず管理者としてやるべきことは何でしょうか。 Aさん注2桐山さんとの面談が必要です。「訪問に来なくてもよい」と言われた状況を確認したいです。CASEに書かれた情報だけではわからないことが多いです。 Bさん桐山さんとの面談の後は、利用者や家族のところへ伺い、桐山さんからほかの看護師に変更してほしい理由を確認します。その内容から桐山さんと一緒に訪問内容を考えるなどして、解決できることかどうかを判断します。ルート組み替えの場合、誰に行ってもらえばいいか等も考えます。 Cさんルートの組み替えはほかのスタッフへの影響もありますし、桐山さんの今後も考えると、できることなら桐山さんに訪問を継続してもらいたいと私は思います。そのためにもまずは、桐山さんの利用者へのケアを同行訪問で確認したいです。そのときに、看護技術のチェックリストを用意しておいて、できるだけ主観的ではない指標で確認したいです。これができると桐山さんへのフィードバックもやりやすいです。 講師「クレームがあった」と報告を受けたときの、初動対応の案が出てきました。まずは事実確認が大事ですね。桐山さんと利用者、まずはこの二者からの事実確認が大切になります。そして看護技術についてチェックリストを使って確認するという意見も出ました。 クレームを発生させないために管理者ができることは何か 講師初動対応時にやるべきことがいくつか出ました。これとは別に、Cさんは桐山さんに訪問を継続してほしいという意見を持っていましたね。このことについてもう少し伺ってもいいですか。 Cさんクレームがあったときの初動対応としてはみなさんの発言のとおりだと思います。その上で、管理者は、ステーション全体としてクレームが生じないような取り組みもすべきだと思います。利用者から「訪問に来ないで」と桐山さんが言われたことは事実かもしれませんが、ケースの状況を考えてみると、クレームを受けた原因が桐山さんだけにあるとは思えません。桐山さんは入職して3ヵ月です。まだまだ支援が必要だと思います。 次回は、このクレームをスタッフナースの成長支援の機会ととらえ、管理者として支援を行うために、まずは「桐山さんが抱えている問題」について考えていきます。 >>次回「その2:桐山さんが抱えている問題は何か」はこちら 注1ケースメソッドとは、架空事例(ケース)について、参加者それぞれの考えをシェアしあうことで、学びを得ていく授業形式です。ケースの教材には、訪問看護管理者が問題に直面している状況が、物語風に構成されています。参加者は、ケースの教材を予習し、自分がこのケースの主人公ならどうするかを事前に考えた状態で、授業に参加します。ケースメソッドの授業では、講師のリードのもと、参加者どうしでアイデアをシェアしながら議論をすることによって学びます。これは講義形式のセミナーとはずいぶん違ったものです。参加者の発言が何よりもセミナーを豊かにする鍵となります。 注2発言者はA・B・C・Dとしていますが、常に同一の人物ではありません。別人であっても便宜上そのように表記しています。 執筆鶴ケ谷理子合同会社manabico代表慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。看護師、保健師、MBA。大学病院(精神科)、訪問看護、事業会社での人事を経験後、株式会社やさしい手看護部長として訪問看護事業の拡大に寄与。看護師250人超の面談を実施し、看護師採用・看護師研修などのしくみづくりをする。看護師が働きやすい職場環境作りの支援を目指し合同会社manabicoを立ち上げる。【合同会社manabico HP】https://manabico.com編集:株式会社メディカ出版

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