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訪問看護のBCP
訪問看護のBCP
特集
2022年11月15日
2022年11月15日

[7]連携の観点から事業所のリソース不足の解消方法を考えてみよう

この連載では「訪問看護BCP研究会」の発起人のお一人、日本赤十字看護大学の石田千絵先生に訪問看護事業所ならではのBCPについて解説していただきます。今回は、自事業所のリソース(資源)をまかなう上で必要となる、地域における多職種・多機関との連携や平常時からの関わり・つながりに関する重要性について考えていきます。 【ここがポイント】・自事業所だけではリソース不足が解消できないものについては、外部リソースの観点から対応を検討するとよいです。・平常時の関わりやつながりは、大規模な災害や健康危機が起こった際に効果的な活動につながることがわかっていますので、平常時から他の訪問看護事業所や多職種・多機関と連携することが大切です。 地域・他組織との連携 まずは、全国訪問看護事業協会の「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」の「Ⅱ 訪問看護ステーションの事業継続計画(BCP) 考え方と記載例」にある「4.地域・他組織との連携」の内容に沿って体制の構築・整備について見ていきましょう。 「4.地域・他組織との連携」は、「1)地域の連携体制の構築」と「2)受援体制の整備」の2項から構成されています。詳細は次のとおりです。 1)地域の連携体制の構築(1)地域多職種連携のネットワークの役割の確認とネットワークづくり(2)訪問看護部会・職能団体等の役割の確認とネットワークづくり(3)利用者をめぐる関係者の役割の確認とネットワークづくり(4)緊急時にネットワークを生かした対応2)受援体制の整備(1)事前準備(2)利用者情報の整理・職員情報の整理(3)地域への災害支援 地域の連携体制の構築 「1)地域の連携体制の構築」では、連携関係機関や行政機関などの役割を確認し、平常時から協力関係を構築すると記載されています。 具体的には、自治体・地域包括支援センターの保健師や福祉職、主任ケアマネジャー・ケアマネジャー、社会福祉士、ヘルパー、在宅酸素や腹膜透析に関わる業者、民生委員・児童委員や自治会役員などの地域の人々との連携があれば、それぞれの情報と連携内容を整理しておきます。また、訪問看護ステーション協議会や全国訪問看護事業協会などとの情報や連携内容、日頃から助け合える訪問看護事業所についても情報と連携内容を記しておきます。 自事業所だけではリソース不足が解消できないものについては、外部リソースという観点で対応を検討します。多職種や他の訪問看護事業所との協働を検討したり、新たなしくみを平常時から構築しておくとよいでしょう。 受援体制の整備 自事業所のリソース不足の中でもスタッフや物資が不足する場合、「受援」も検討していきます。特にスタッフの「受援」の場合、支援を受け入れるための手順や体制を定めた受援計画が必要です。同じ看護職でも訪問看護の経験がなければ任せることは難しいものですし、たとえベテランの訪問看護師であっても、すべての利用者や家族のもとに事前の情報提供をせずに依頼することはできません。 どのような対象の訪問であれば外部委託できるのか、そのためにどのような情報やモノを準備しておけばよいのか、誰が支援者をマネジメントするのかなどを検討します。「受援」のためにも「ヒト」「モノ」「情報」などが必要となりますが、被災時にこれらのしくみをつくることはできません。そのため「Ⅱ 訪問看護ステーションの事業継続計画(BCP) 考え方と記載例」のひな形では、具体的な準備として利用者情報や職員情報を整理し、記しておくことが推奨されています。 地域への災害支援 「地域への災害支援」は、「4.地域・他組織との連携」において「受援体制の整備」の中に含まれていますが、「受援」の逆です。どのように地域へ支援を行うことが可能かをまとめておきます。 避難所支援、福祉避難所支援、他の訪問看護事業所への支援、地域住民への支援など、緊急時の派遣が可能か否か、可能であればどの範囲で支援をしていくかといったことについて、平常時から他(多)機関との話し合いを経て、検討したことを記しておくとよいでしょう。 自然災害と感染症BCPの違い この連載の第1回から第6回まで自然災害におけるBCPを策定してきましたが、リソースを中心に策定しておくと新型コロナウイルス感染症におけるBCPでも同様の考え方で概ね策定できるようになります。 ただし、利用者への対応や時間的経過の違いで内容が変わってきますので、違いを理解してBCPに活かすとよいでしょう。 例えば、感染症では感染症(疑い)の利用者へのサービス継続や対応で、特別な「リソース:モノ」が必要になったり、「リソース:ヒト」の配置でスタッフの選抜や心理的負担が増えることなどが挙げられます。また、大規模自然災害とパンデミックを引き起こす感染症とでは、図1のような時間的経過に伴う業務量の変化に違いがあります。 自然災害では災害サイクルに応じた変化の見通しが立ちますが、パンデミックですと収束した後にまた大きく感染者が増えるなど、見通しが立ちにくく、「支援」と「受援」が長期的な視点で必要になるという特徴もあります。そして、地域によっては、自然災害以上に保健所や医師会との協働も必要になる場合があります。 図1 災害と新型コロナウイルス感染症の発生後業務量の時間的経過に伴う変化 厚生労働省老健局.「介護施設・事業所における新型コロナウイルス感染症発生時の業務継続ガイドライン」,2020,p.6より引用(一部抜粋).https://www.mhlw.go.jp/content/000922077.pdf2022/8/25閲覧 自然災害が発生した場合、インフラ停止などによる通常業務の休止や、避難誘導・安否確認などによる災害時業務の発生のため、通常の業務量は急減する。一方、パンデミックを引き起こす感染症では、通常業務は縮小し、流行の程度によって変動することが想定される。 地域特性をふまえた地域連携 大規模自然災害でも地域の保健所が主に対応しますし、訪問看護事業所が平常時の活動を続けることで地域医療が守られてきた実績はありますが、国や自治体を主とする災害時保健医療福祉体制の中に訪問看護事業所の役割は明記されていません。一方、新型コロナウイルス感染症では、地域によっては保健所の役割の一部を医師会や訪問看護事業所が担うようなしくみがつくられ、協働が大規模に行われている自治体もあります。 訪問看護事業所のある地域ごとにしくみが異なるため、「4.地域・他組織との連携」については、大規模自然災害と感染症を分けて、自治体や医師会との連携を記しておくとよいでしょう。 平常時からの関わり・つながりが災害・感染症発生時に活かされた例 他の訪問看護事業所や多職種・多機関との連携で、平常時から顔の見える関わりや助け合うしくみを構築していたことにより、大規模自然災害や新型コロナウイルス感染症においても、大変有意義な協働や「受援」「支援」体制が整い、機能した例をご紹介します。 熊本県訪問看護ステーション協議会では、ペアステーションをつくり熊本地震の初動における安否確認や相互支援のしくみを動かしました。そのほか、市の保健師と協働し、訪問看護師が利用者宅へ食料を届けたり、平常時に実習を受け入れている看護系大学の学生から片づけのボランティアの支援を受けたりといった活動をしました1)。平常時から連携している多機関との協働で、この連載の第6回で述べたような増やす対策や活用する対策を行いリソース不足に対応したのです。 また、都内の例2)では、もともと新宿区内の訪問看護事業所でつくられていた「新宿区訪問看護ステーション協議会」というネットワークを活用し、情報の交換や事業所間の「支援」「受援」が行われていました。新型コロナウイルス感染症が流行し始めた当初から、既存のつながりを活かして、増やす対策と活用する対策が行われたのです。さらに、医療体制がひっ迫し重症リスクの高い陽性者が自宅療養を余儀なくされた際、保健所や区の医師会と協働し、健康観察のための電話対応や訪問を行うなど、平常時の関わり・つながりを活かして地域医療に貢献しました。 このように、平常時の関わりやつながりは大規模な災害やパンデミックなどによる健康危機が起こった際に効果的な活動につながることがわかっています。平常時から他の訪問看護事業所や多職種・多機関と連携することは大切です。関係機関で集まり、地域単位でBCPについて検討してみることをおすすめします。 執筆 石田 千絵日本赤十字看護大学看護学部地域看護学 教授●プロフィール1989年聖路加看護大学(現 聖路加国際大学)卒業後、聖路加国際病院他で勤務。1995年阪神淡路大震災および地下鉄サリン事件を契機に、地域×災害に関わる教育や研究を始めた。災害の備えは「平時に自分らしく生き、かつ、社会的によい関係性を保つこと」がモットー。看護学博士。 「訪問看護BCP研究会」とは、2016年にケアプロ株式会社、日本赤十字看護大学、東京大学他の仲間による訪問看護×BCPに特化した研究会。毎月1~2回程度で研究や研修などを行っている。▼訪問看護BCP研究会のホームページはこちら ※記録様式のダウンロードも可能です。 記事編集:株式会社照林社 【引用文献】1)石田千絵著.「複数の危機対応を可能にした県内事業所の体制整備」,BCP研究会編著.『訪問看護事業所のBCP』,東京,日本看護協会出版会,2022,p.113-122. 2)井口理著.「外部リソースの調達を可能にした他機関との連携」,BCP研究会編著.『訪問看護事業所のBCP』,東京,日本看護協会出版会,2022,p.123-124.

安心感をどう作るか⑦ 人が辞めない事業所の雰囲気づくり
安心感をどう作るか⑦ 人が辞めない事業所の雰囲気づくり
特集
2022年11月15日
2022年11月15日

安心感をどう作るか⑦ 人が辞めない事業所の雰囲気づくり

最初の発生から2年が過ぎても、いまだ終息の見えない新型コロナ。感染防止対策だけではなく、目には見えないスタッフの不安やメンタルヘルスへの対応もステーションの管理者には要求されます。ベテラン管理者のみなさんに、今必要とされるスタッフマネジメントについて語っていただきます。今回は、医療法人ハートフリーやすらぎの大橋奈美さんです。 お話大橋奈美医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事・統括管理責任者(訪問看護認定看護師) 職員を最優先に 私たちの医療法人には、24時間支援診療所、訪問看護ステーション(機能強化型Ⅰ)、居宅介護支援事業所、ナーシングデイがあります。そのなかで、私は、職員の安心と幸せを最優先にした姿勢を貫いています。極端な言いかたを許してもらえば、「利用者さんよりも職員を大切にする」という姿勢です。 大切にされている職員だからこそ、利用者さんやご家族を大切にすることができます。 退職率は低いが、若い職員も多い 常勤看護師は、現在21名です。コロナ禍での看護師の退職の増加が話題になりましたが、辞める人が少ないのが私たちのステーションの特徴です。一方で、看護師の平均年齢は30代前半と比較的若いのも特徴です。毎年新人の応募者が殺到し、採用試験は3次まで行っています。 なぜ、職員が辞めずに新人の応募も多いのか、思い当たる理由を九つ挙げていきます。 ①事業所内で雑談が多い 当ステーションで飛び交う話は、仕事の話よりも雑談のほうが多いかもしれません。ほかのステーションの管理者さんと話をすると、雑談が少ないところほど、辞める人が多い傾向がある感じがします。たとえば、トイレで一緒になった職員にはこんな声を掛けます。 「その髪、あの女優さんみたいで、かわいいなあ」「言いすぎでしょう?」「ははは、褒めすぎたわ」 そんな雑談の積み重ねが、「悩み相談」をしやすい柔らかな雰囲気を生み出します。 ②利用者宅でも柔らかな雰囲気を継続 冗談が飛び交う柔らかな雰囲気は、訪問の際、利用者さんにも伝わります。たとえば、新人と先輩が一緒に訪問したとします。 「わしもなあ、どの道その道、あの世に行く道や。この子にわしの血管に打たしてやって、この子が点滴を上手になるのがわしの役割や」 利用者さんも新人を育ててくれるのです。 ③「ありがとう」と何度も言う 職員に対し、感謝の気持ちを一日に100回以上伝えていると思います。ステーションが運営できるのは、職員の働きがあるからです。その感謝の気持ちを「あいうえお」の言葉で表します。すなわち、「ありがとう、いいね、うれしかったわ、ええやん、おおきに」です。 ④褒めるだけの職員面接 年に2回、人事考課の面接があります。そこでは、その職員がやって来たことを具体的に褒め、注意に類することは一切言いません。 注意に関しては、当ステーションの管理職や先輩たちが、現場でそのつど行います。 「褒める」ことは、「認める」ことでもあります。管理職を私が認めれば、管理職は自然に部下を認めます。 ⑤自分で目標を考えてもらう 人事考課の面接で私が心がけていることは、自分で目標を立ててもらうことです。 「自分の弱みは何だと思う?」「ターミナルケアで、家族にいろいろ言われると、何もできなくなることです」「どないしたらええのやろ?」「何かをしようとするよりも先に、家族の話にもっと耳を傾けるように努力します」 自分の考えた目標だからこそ責任を持てるのだと思います。次のような言い方に比べてモチベーションがあがるのは確実です。 「あんたってなあ、ターミナルケアで、家族に高圧的に言われたら、何もできへんよなあ」 ⑥好き嫌いを認める 利用者さんだって、合う看護師と合わない看護師がいるように、看護師だって、相性の悪い利用者さんがいます。私は、それを認めています。苦手や弱みを克服するよりも、得意や強みを伸ばすほうが、のびのびと働けます。 ⑦毅然とした姿勢を示す瞬間も 職員に感謝する一方で、毅然と姿勢を示す瞬間もあります。「ニコニコ笑顔」が当ステーションの文化であり、苦虫をつぶしたような顔をしている職員には、「どんなことが家であったのか知らんけど、そんな表情ゆるさへん」などと、すぐに注意を飛ばします。 ⑧一人では何もできないと自覚する 本音で語り合え、思いを共有できる仲間を一人確保するところからステーションづくりを始めました。その後、何があっても揺るがない仲間が、三人、四人と増えていきました。 ⑨できる方法を考える できない言い訳よりも、できる方法を考えるよう徹底しています。たとえば、新型コロナに感染した利用者さん宅に「訪問したい」という職員がいました。こちらが、「行くな」と止めても、「助けたい」と職員は言います。これ以上止めたら、モチベーションが下がります。そこで私は、次のように言いました。 「よっしゃ、わかった、行きたいんやな。じゃあ、安全に訪問できる方法を考えようや」 * 利用者さんを助けたいと申し出る職員たちを、私は誇りに思っています。そんな職員を守り、大切にするのが私たち管理者の役目です。 ー第9回に続く 記事編集:株式会社メディカ出版

「だから」がわかると腑に落ちる精神看護 Q&A編
「だから」がわかると腑に落ちる精神看護 Q&A編
特集 会員限定
2022年11月8日
2022年11月8日

先行公開! 「だから」がわかると腑に落ちる精神看護 Q&A編【セミナーレポート】

2022年9月30日(金)、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー 『「だから」がわかると腑に落ちる精神看護』を開催いたしました。株式会社N・フィールドの中村 創さんを講師に迎え、精神看護について解説いただきました。 本記事では、セミナー時に皆さまからいただいた質問へのご回答を、セミナーレポートに先んじて公開いたします。当日、時間の都合により回答し切れなかった質問にも回答いただきました。セミナーに参加いただいた方も参加できなかった方も、ぜひご覧ください。 【講師】中村 創さん 株式会社 N・フィールド/事業管理本部 広報部 部長 精神看護専門看護師 怒りを前にしたときは、「利用者さんは自分を守ろうとしている」と考えてみて <Q1>攻撃的な言動のある利用者さんについて、生活背景に「寂しさ」があるというお話がありました。しかし、その背景は周囲からは見えないため、怖さだけが際立ちます。どのような点に気を付けて接すると、隠れた寂しさなどに気付くことができますか? 確かに「攻撃性」「怒り」「他害的な言動」は怖さが際立ってしまい、「寂しさの可能性」まで気が回りません。ここで考えたいことは、「ポジティブな感情を抱いているときに怒りを表出することはあるだろうか?」ということです。多くの方が「それはない」と考えることと思います。 「攻撃的言動」「怒り」の目的は以下の(1)~(4)であるというお話を講演の中でさせていただきました。 (1)権利擁護(2)支配(3)主導権争い(4)正義感の発揮 臨床で遭遇する怒りの目的の多くは、(1)~(3)である印象があります。それぞれ、「自身の窮地を脱するため」「相手を思い通りにするため」「自身が有利になるため」と置き換えて考えたとき、どうしてそうする必要があるのでしょうか。「窮地にいると感じているから」「相手を支配しないと自分が怖いから」「常に自分が不利だと感じているから」という答えに行きつくでしょう。利用者さんは、不安や恐怖、脅威や自尊感情の欠落を怒りで払拭しようとしている状態なのだと推察できるわけです。 いずれにせよ、利用者さんが「自身を守るため」の攻撃性であるということは共通すると考えられます。怒りを前にしたとき、「何かから自分を守ろうとしてのものなのかもしれない」と考えてみると、看護師側も少し落ち着ける場合があります。そのように、自分の感情と思考に気を付けてみることをおすすめします。 ちなみに、「この場を何とかしなければ」と思えば思うほど何とかならないことが多いでしょう。できれば「この場を何とかしなければ」という思考自体を「何とか」していただくと(これもまた難しいのですが…)、少し冷静になれる場合があります。怒りに対して怒りで返したり、焦ったりすることは状況を悪化させることが大半です。まずは一息つける工夫を検討することをおすすめします。 重要なのは関係性構築。精神科受診を促す前に、困りごとを共有しよう <Q2> がんのため、介護保険で訪問看護している利用者さんがいます。「壁から音が聞こえる」などの幻聴があり精神科の受診歴がありますが、「治らなかった」とすぐに受診をやめてしまい、その後受診していません。再受診を促したいのですが、どのようにアプローチすればよいでしょうか? 熱心に訪問すればするほど、「受診すれば状況は変わるのに!」と思うでしょう。私も「なんとか受診を」と挑戦してはうまくいかない…ということが往々にしてありました。その都度「どうすればよかったのか」と考えてきました。そして、私の経験則から出せた結論は、「受診を促す前に、困りごとを共有する」ということです。 以前、母娘二人暮らしで、お母様が介護保険で訪問看護を利用されており、言動の辻褄が合わない未受診の娘さんがいらっしゃるご家庭を訪問していたことがあります。相当前から、「親戚に家具を盗まれた」とおっしゃるなど言動に辻褄が合わない内容が増え、親戚や地域から孤立していた娘さんでした。 訪問中は、娘さんがスタッフに「親戚が物を盗むのでどうしたらいいですか?」などとお話をし続けるため、お母様のお話がほとんど聞けないという状況。対処に行き詰まりを感じたステーションからご相談を受け、私も訪問に入らせていただきました。私が徹底したことは、「娘さんとの会話に時間を使う」ということ。複数名で訪問に入り、お母様のお話はもう一人の訪問スタッフがしっかりと聞くことにしました。 娘さんと話していくうちに、身体的な不調やお金のこと、お母様との関係、書類に関する不明点など、困りごとに関する話題も増えてきました。解決できる困りごとは一緒に対応していったところ、だんだんと信用していただけるようになりました。 あるとき娘さんから、「もう少し訪問時間が増えるといいんですけど」と要望をいただきました。そこで、「私たちは精神科医から指示書を書いてもらって訪問をしています。先日お疲れで眠れないと伺いましたが、そういう相談を含め精神科を受診していただけると、私たちはさらに時間をかけられます。可能でしょうか」と伺うと、「わかりました」と案外スッと承諾いただけました。 この経験から、私は「この人が言うのであれば受診もいいかな」と思っていただけるような関係の構築が重要ということを実感しました。これは受診に限らず、さまざまな生活範囲の拡大を促す場合にも言えることと考えています。「困っていることを確認して対応する」→「お互いが困りごとを解消できた実感を持つ」という流れを繰り返すことで、こちらの提案を受けていただきやすくなるということです。受診も提案の一つと捉えて臨んでいます。 利用者さんの主体性を伸ばすためには、「今ある主体性に気づく」ことから始めよう <Q3> 洗濯機を回せない利用者さんに対し、洗濯機にデコレーションをして解決に至ったエピソード、すごいと思いました。利用者さんの主体性を伸ばすアイデアの思考法や、考えるプロセスなどはあるでしょうか? お褒めにあずかり光栄です。「デコレーションをする」というアイデアは、ステーションで働く作業療法士の発案でした。「何とかしよう!」ではなく、「さらに良くするには?」という視点の変更がポイントになったと思います。 精神疾患に罹患した利用者さんは、ご自身が「自己決定」「主体性の発揮」から離れようとする場面が多いように感じられます。これは、自己決定を否定されてきた不全体験や、自身で決定をする前に周囲に決定されてきてしまった生活習慣などが影響していると考えられます。 自己決定ができずに生活していく過程で、自分の思考そのものが分からなくなったという方もいらっしゃいます。「あなたはどうしたいですか?」の問いに、「わからないです」と回答される方は案外多いと感じます。 私の経験則ですが、例えば入院が長かった方は病院で指示される、自身の言葉よりも周囲の言葉が優先されるという経験が長かったこともあり自身の判断に自信が持てない方が多いです。入院に限らず、幼少からの家庭環境の影響で自信を失った方もいらっしゃいます。 そういった方々の主体性を伸ばしていくには、現在ある自主性に私たちが気づくことから始めることが重要だと思っています。 そして、その気づいた自主性と行動に対して最大限労うことで、患者さんが「自主性とはこういうことなのか」と振り返ることができると、最終的に主体性を伸ばす支援になるでしょう。生活することは決断の連続ですから、まずは私たちがその決断の場面に気づくことから始めることが重要と考えています。 暴力に対しては、事業所としての方向性確認&安全確保の枠組み設定を優先 <Q4> 統合失調症、暴力行為のある方の訪問をしています。複数名でいくと恐怖を与えてしまうようで、単独訪問しています。しかし、毎回どこかしらを殴られてしまいます。訪問を止めることはできず、正しい対処法がわかりません。 大変な思いをしながら訪問をされているとのこと、ストレスも相当なものではないかと思います。 CVPPP(包括的暴力防止プログラム)やKYT(危険予知トレーニング)など、対応策・予防策はさまざまありますが、念頭に置いていただきたいのは、「ご自分が被害者にならない=患者さんを加害者にしない」ということです。 私がこれまでお会いした暴力被害に遭遇したことのある看護師さんは、その場を「何とかしよう」と考える、根が真面目な方が多いように思います。報告書などを読むと、不測の事態というよりも、徐々に緊張感が高まっていくなかで諫めようと尽力した結果、被害に遭ってしまったという経過を辿ったケースが多いことに気が付きます。「玄関に入って1分で被害に遭う」というよりは、徐々に段階を経ることが多いようです。 日本臨床救急医学会は、暴言・暴力の予兆として・時間を気にし始める・落ち着きがなくなる・語気が粗くなる・早口になる・急に言葉が少なくなる・目つきが変わる(鋭くなる)という兆候を上げています。 日本臨床救急医学会は、予兆を感じ取ったら積極的に傾聴する姿勢を示し、「自分の主張を理解してもらえる」と相手に感じてもらうように働きかけることをすすめています。できない要求まで理解して飲むということではなく、あくまで相手の背景を理解しようとする姿勢が大切です。 利用者さんの背景が詳細に分からないため、疑問にお答えできていないかもしれませんが、まずは「聴く」という姿勢を持つこと、予兆が出た場合も聴き続けること。「これ以上は無理」と思う2歩手前で引くということが大事だと思います。できれば、ご本人が落ち着いてお話ができるときに「これ以上は留まれない」という線を一緒に設定できるとよいでしょう。 また、「殴ることでコミュニケーションが成立する」という誤った学習は、将来ご本人の不利になります。そういったコミュニケーションをしているうちは引き、「また来ます」と言う。落ち着いて話ができたときは、「本当にうれしい」とご本人にお伝えすることも大切でしょう。しかし、これは本当に難しい対応で、なによりストレスフルです。事業所としての方向性と、対象となる方との安全を確保できる枠組みの設定を優先的にされることが重要だと考えます。 短時間の施設見学&リモート講義で精神科実習を行っている学校も <Q5> コロナ禍で精神科実習ができていません。学内実習で代替できることはないでしょうか? この大変な世情のなか、実習含めカリキュラムを組み立てるご苦労は相当なものと推察いたします。私がご依頼をいただく専門学校や大学では、「短時間の施設見学」+「現場のスタッフが講義」という形式をとっていました。私も現場のスタッフとして講義をしており、リモートと対面、どちらも対応しております。そのような事例があるということをお伝えさせていただきます。 うつ病の利用者さんには焦って安易な手段をとらず、回復を「一緒に待つ」姿勢で <Q6> うつ病の利用者さんとの接し方を教えてください。 うつ病で私が心がけていることは大きく「自殺防止」と「自然体でいること」の二つです。 質問者様がどのような場面でうつ病の方との関係性にお困りなのか、想像の域を出ませんが、これまでお会いしてきたうつ病と診断された方からは、「普通でいてくれた方がありがたい」という声が多く聞かれました。うつ病を発症する方は、「他者が気を遣っている」という感覚を必要以上に取り込んでしまう傾向にあるようです。「自分が迷惑をかけている」という意識が強くなるのだそうです。妙に明るい口調では疲れるようですし、かといって相手のトーンに合わせて自分が普段しないような落としすぎたトーンで接すると、それこそ「気を遣われている」と感じるようです。 まずは、あくまで自然体であることをおすすめします。その上で、無理に相手を動かそうとしないということを私は心がけています。 不思議なもので、それまで仕事一筋であった方が療養期間中にピアノを始めたり、同じような経緯の方がそれまで観たことのない映画にはまったり、空手を始めてみたり、という具合に回復の過程において、新しいものに興味を抱く方が一定数いらっしゃいました。共通しているのは、「活動とセット」ということでした。私は「興味の引き出しがどのくらいあるか」ということを、回復の目安にしています。 また、近年言われているうつ病の脳内炎症モデルを知ると、「抑うつはむしろ回復過程」と私は励まされる気持ちになります。なれなれしい自然体を嫌う患者さんも多いので、あくまでご自身の良識の範囲で関わっていくことがコツです。また、私は「うつ病は休息を身体が欲している」という状態であるということを念頭に入れ、回復を一緒に待つことを心がけています。間違っても「こうすれば改善する」といった安易な手段を取らず、忍耐をもってお話を伺うことが重要と考えています。 恋愛感情をもたれたら、「これ以上接近するといい関係を保てない」と伝えることも大切 <Q7> 3年以上担当していた統合失調症の男性に恋愛感情を持たれてしまいました。担当を外れても私にこだわってしまい、1ヵ月ほどで別の訪問看護事業所にお願いすることになりました。距離感を意識していたはずですが、難しいなと感じました。このようなご経験はありますか? 恋愛感情を持たれたとき、「自分の接し方に問題があったのではないか」と感じてしまう方もいらっしゃるでしょう。私も恋愛感情を持たれたことはあります。そのときも、「自分が最初にきちんと線引きをしていなかったからだ」と行動を戒めようしましたが、距離をとりすぎて、かえってよそよそしくなってしまいました。この辺りの線引きはとても難しいと思いますが、考えてみれば人間関係はそういった微妙なバランス感覚の上に成立していることが多いでしょう。 ところが精神科の臨床では、うまい距離感を保ち関係を維持する体験が少なく、「相手との距離感をとることが苦手」という方が一定数いらっしゃいます。そういう方の人間関係は、「大好きか大嫌いか」の二択に限定されてしまっています。生育環境において安定した人間関係を構築できなかった代償とも言えるでしょう。成育歴は、そういう観点から非常に大事であると思っています。 被虐待児にそういう傾向が顕著であることは有名でしょう。しかし、療育環境に問題がなさそうと思えても、塾や習い事をいくつも掛け持ちし、対等な人間関係を育まずに成長してきた患者さんがいらっしゃいました。 「看護とは対人関係のプロセスである」と知ってからの私は、「自身を媒体としてどういった関係が心地よいかを患者さんと一緒に考えることが看護師の役割の一つ」と認識を改めるようになりました。以来、「あなたとは良好な支援関係を崩したくない。これ以上接近してしまうと、いい関係を保つことは難しくなる」とはっきりお伝えするようにしています。また、「あなたが望むほど緊密ではないけれど、私はあなたとの関係は切らない」ということを、言葉でも態度でも表現するよう心掛けています。 もちろん、そうお伝えした上で「それならもういい」と言われたこともなかったわけではありませんが、案外その後も支援を継続できる方もいらっしゃいます。細くても切れない、支える糸の一本であるという気持ちで臨まれてはいかがでしょう。 ** 中村さんの豊富な経験に基づくご回答をお届けしました。明日からの精神訪問看護に生かせるヒントが、たくさん見つかったのではないでしょうか。 オンラインセミナー 『「だから」がわかると腑に落ちる精神看護』の講義内容をダイジェストにしたレポート記事も公開しております。ぜひそちらもご覧ください。 【参考】〇岩井俊憲,宮本秀明,永藤かおる『アンガーマネジメント―怒りの感情をコントロールしよう』https://hrd.php.co.jp/hr-strategy/hrm/post-578.php(2015.1.13)2022/10/31閲覧〇Adler.A 著,岸見一郎 翻訳.『人生の意味の心理学(上)-アドラー・セレクション』p.49,アルテ,2010.〇Williams.E,Barlow.R 著.壁屋康洋,下里誠二,黒田治 翻訳.『軽装版 アンガーコントロールトレーニング』.p.34,星和書店,2012.〇衛藤暢明 著.日本臨床救急医学会 監修.『救急医療における精神症状評価と初期診療 PEECガイドブック』.p.77,へるす出版,2012. 記事編集:NsPace(ナースペース)

[6]リソースリスクの想定とリスクへの対策・対応を考えてみよう
[6]リソースリスクの想定とリスクへの対策・対応を考えてみよう
特集
2022年11月8日
2022年11月8日

[6]リソースリスクの想定とリスクへの対策・対応を考えてみよう

この連載では「訪問看護BCP研究会」の発起人のお一人、日本赤十字看護大学の石田千絵先生に訪問看護事業所ならではのBCPについて解説していただきます。今回は、優先業務・重要業務の継続に必要なリソース(資源)に対する被災時のリスクを検討し、さらにリスクへの対策・対応を考えていきます。 【ここがポイント】・優先業務・重要業務に必要なリソースごとにリソースリスクを想定します。・リソースリスクへの対策・対応では、 ①減らさない対応・対策(「防護」「備蓄・予備」) ②活用する対策・対応(「代替・節約」「業務トリアージ」) ③増やす対策・対応(「調達」「修理・回復」) を考えます。・事業継続計画サマリを作成し、重要な情報を一覧で見えるようにします。 訪問看護事業所のリソースリスクの想定 この連載の第5回で抽出した「優先業務・重要業務に必要なリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)」(図1A)に対するリスク(以下、リソースリスクとします)を想定します。リソースリスクとは、被災時に損失や不足するリソースのことです。大震災や台風被害などを想定した時に、リソースにどのような損失や不足が生じる可能性があるのか、原因や状況を想像して、書き出してみましょう。 リソースのヒトとモノについて、引き続き訪問看護BCP研究会メンバーのケアプロ株式会社の例で見ていきましょう1)。ケアプロ株式会社では次のようにリソースリスクを想定しています。 【リソース:ヒト】●公共交通機関を利用しているスタッフが出勤できない●要配慮者(乳幼児、介護が必要な高齢者など)を持つスタッフが出勤できない●スタッフの死亡や障害により出勤ができない●専門的なスキルを持つスタッフが出勤できない など 【リソース:モノ】●自転車や自動車の損失、代替移動手段が確保できない●医療資器材の破損や汚染●医療資器材の入手困難(需要過多、確保ルートの途絶)●請求方法(ICT/記録用紙など)が確保できない●労務関連の管理シートが確保できない など みなさんも、このようなリスクを図1のBの部分にリソースごとに記していきます。 図1 優先業務・重要業務に必要なリソースを考えるワークシート 【ワークシートの記載例はこちら】 ところで、みなさんの中には、優先業務・重要業務に必要なリソースは十分に抽出できなかったものの、「被災時を想定したとたんに、いろいろなリスクをたくさん挙げることができた」という人が意外といらっしゃるのではないでしょうか。その場合は、順番は逆になりますが、先にリスクをすべて書きだしてください。その後、リスクに関連するリソースを書き出すとよいです。そうすることで、より具体的なBCPの策定につながります。 利用者のリソースリスクの想定 リソースリスクを検討するタイミングで、利用者における被災時のリソースリスクも想定しておきましょう。なお、「リソース:ヒト」と利用者・家族の関係については、前回第5回で説明しましたので、そちらも参照してください。  「訪問看護サービス(医療処置関連など)」の利用者には、生命の維持に関わる重大なリスクが想定されます。例えば、次のようなリスクです。●電力などの停止で医療機器が使用できなくなる●痰の吸引などで使用する衛生資材がなくなる など それだけでなく、生活に関わる重要なリスクも考えられます。●スタッフ不足で訪問介護サービスを受けられなくなる●適切な形態の食事が不足し、飢餓状態になる など これらのリスクはすべて、リソース(モノ、ヒト)が不足するリスクであると言い変えられます。 また、特定地域のハザード状況を確認したり、自宅の倒壊・半倒壊リスク、道路の寸断や高層マンションのエレベーターが止まることで陸の孤島のような状態になるリスクを想定したりと、利用者ごとに被災時の状況をイメージしておくとよいでしょう。そして、それぞれのリソースリスクへの対策・対応を検討します。 リソースリスクへの対策・対応の考え方 リソースリスクへの対策・対応には3つの考え方があります。それは、①減らさない対応・対策(「防護」「備蓄・予備」)、②活用する対策・対応(「代替・節約」「業務トリアージ」)、③増やす対策・対応(「調達」「修理・回復」)です(図2)。 図2 リソースリスクへの対策・対応の考え方 先ほどケアプロ株式会社が想定するリソースのモノのリスクとして挙げた「自転車や自動車の損失、代替移動手段が確保できない」に対しては、ケアプロ株式会社では災害直後に①減らさない対応・対策として「予備バッテリーの確保・使用」をとり、②活用する対策・対応として「他の自転車、車やバイク、徒歩などの代替」を挙げています。東日本大震災で、通常自動車で訪問業務をしていた事業所が、急いで自転車を購入した事例もありますが、これは③増やす対策・対応といえます。 リソースリスク×時間軸×対応 では、ここからリソースリスクへの対策・対応を具体的に検討していきます。ここでもワークシートを使って進めていきます(図3)。 まず、図1のBに集約したリソースリスクを、図3のAの部分に時系列ごとに振り分けながら転記してください。 図3 リソースリスクへの対策・対応のワークシート 【ワークシートの記載例はこちら】 次に、リソースリスク×時系列ごとに、①減らさない対応・対策、②活用する対策・対応、③増やす対策・対応でどのような対策・対応が可能か検討し、図3のBの部分に具体策を記載します。 具体策を記載するとき、無理に空白を埋める必要はありませんが、1つ以上の対策を検討しておくとよいでしょう。 事業継続計画サマリの作成 図3の時間軸を横に書き換えたものが図4の事業継続計画サマリです。「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」でいうと「Ⅱ 訪問看護ステーションの事業継続計画(BCP) 考え方と記載例」の「2.平常時の対応」と「3.緊急時(~復旧における事業継続にむけた対応)」の内容を見える化したものになります。 ここまで優先業務・重要業務を選定し、必要なリソースを想定し、リソースリスクとそれに対する対策・対応を検討してきました。それらをこの1つのサマリにまとめることができます。 BCPのひな形をもとに具体的に対策を検討したとしても、従来の災害対策マニュアルと同様、被災時に見直すことは難しいものです。この事業継続計画サマリを、BCPひな形の表紙においておくだけで、全体の対策・対応を把握できますし、管理者やスタッフが持ち歩くことで、どのような場所で被災しても、実際に役立てることができるようになります。ぜひ、事業継続計画サマリまで落とし込むようにしておきましょう。 図4 事業継続計画サマリ 【ワークシートの記載例はこちら】 * お疲れさまでした。リソースリスクへの対策・対応および平常時の対策をまとめることができれば、事業所内でのBCPについては、これでいったん作成終了となります。見やすい形に整え全体を見直して、BCPサマリとして転記しておきましょう。BCPサマリにしておくことで、もしもの際には、活動の流れを一目で確認することができるので、実践に役立ちます。次回の第7回では、事業所のリソースで対応しきれない場合や地域医療を守る視点で多職種・多機関連携や地域との連携を考えていきます。「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」でいうと、「Ⅱ 訪問看護ステーションの事業継続計画(BCP) 考え方と記載例」の「4.地域・他組織との連携」の内容にあたります。ぜひご覧ください。 執筆 石田 千絵日本赤十字看護大学看護学部地域看護学 教授●プロフィール1989年聖路加看護大学(現 聖路加国際大学)卒業後、聖路加国際病院他で勤務。1995年阪神淡路大震災および地下鉄サリン事件を契機に、地域×災害に関わる教育や研究を始めた。災害の備えは「平時に自分らしく生き、かつ、社会的によい関係性を保つこと」がモットー。看護学博士。 「訪問看護BCP研究会」とは、2016年にケアプロ株式会社、日本赤十字看護大学、東京大学他の仲間による訪問看護×BCPに特化した研究会。毎月1~2回程度で研究や研修などを行っている。▼訪問看護BCP研究会のホームページはこちら ※記録様式のダウンロードも可能です。 記事編集:株式会社照林社 【引用文献】1)金坂宇将・岡田理沙著.「都市型大規模ステーションにおけるリソース中心の作成手順に沿ったBCP-ケアプロ訪問看護ステーション東京-」,BCP研究会編著.『訪問看護事業所のBCP』,東京,日本看護協会出版会,2022,p.66-81.

ケースメソッドで考える悩ましい管理者業務への処方箋
ケースメソッドで考える悩ましい管理者業務への処方箋
特集
2022年11月8日
2022年11月8日

CASE2利用者からのハラスメントへの対応_その1:何を考える必要があるか

管理者として課題に直面したとき、自分以外の管理者がどう判断するかを知りたくなることはありませんか? この連載は、参加者どうしで考えをシェアしあう研修手法である、ケースメソッド注1セミナーの形式に沿って、訪問看護管理者が直面する課題を考えていきます。第4回は、カスタマーハラスメントへの対応時にどんな検討が必要かを考えていきます。 はじめに 今回から3回にわたり、利用者からのハラスメントの事例をテーマに考えます。 みなさんのなかにも、ハラスメントへの対応に悩まれたり、苦い経験をしたりしている人が少なからずいると思います。また痛ましい事件のことを思い浮かべた人もいらっしゃるでしょう。そのことを思い出して、苦しくなったり、嫌な気持ちになったりするかもしれません。 しかし、今後そのようなカスタマーハラスメントの場面に遭遇したとき、管理者としてよりよいアクションをとれるように、学ぶことに価値があると考えています。みなさんも、「自分だったらどうするだろう」と考えながら読んでいただければと思います。 ケースと設問 CASE2 スタッフから、利用者によるハラスメントの相談を受けたとき スタッフナース田中さんから「利用者Hさんの訪問を外してほしい」と相談を受けた。利用者Hさんには脳梗塞後麻痺と心不全があり、入浴介助を行なっていた。Hさんはニコニコと穏やかな性格だったが、介助時に「裸になって一緒に入ろう」などとセクハラ発言をされるのが不快という理由だった。Hさんは一人暮らしで、以前利用していた訪問看護ステーションでも同様の言動がみられ、さらに、キーパーソンの娘が「厳格で真面目な父がそんなことをするはずがない」と主張し、その訪問看護ステーションでトラブルになっていた。そんな経緯での当ステーションへの依頼だったため、依頼を受けることにはスタッフナースたちから反対の声が大きかった。よく依頼をくれるケアマネジャーからの依頼で、しかも直近は当ステーションの売上が低迷しているために、依頼を受けることにしたのだ。管理者としてどう対応したらよいだろうか? 設問もしあなたがこの管理者であれば、Hさんのような利用者への対応はどのようにすべきだと考えますか。ご自身の経験から考えたアイデアをみなさんにシェアしてください。 田中さんからの相談を受けたとき、配慮すべきことは何か 講師今回は、ハラスメントの言動がある利用者のケースです。みなさんがこの管理者であれば、どのような対応をしていきますか? Aさん注2田中さんから「Hさんの訪問は外してほしい」と言われているので、田中さんの心理的なケアがいちばんに必要だと思います。そしてその後の対応策となると難しいですね。田中さん以外のスタッフに訪問に行ってもらっても、同じことが起こると予想されます。 Bさん田中さんに「我慢してHさんに訪問してよ」と言ったら、それこそ管理者のパワハラです。Hさんには脳梗塞の既往歴があり、セクハラ発言は高次脳機能障害によるものかもしれません。主治医にも相談が必要です。 Cさん主治医に相談もですけど、まずはHさんにセクハラ発言についての事実を確認します。そして、ケアマネや主治医らとHさんへのケアの方針を相談します。 Dさん今までの発言にまだ出てきていませんが、娘さんとコンタクトをとる必要があります。あとはステーション内でHさんについての情報共有をするミーティングが必要だと思います。 「田中さんからの相談を受けたとき、配慮すべきことは何か」の小括 利用者によるハラスメントの相談を受けたケースを題材に、まず、管理者として何を考えなければならないかを話しあいました。 ●田中さんへの心理的なケアがいちばんに必要。訪問に行くスタッフを替えるだけじゃダメ。●既往歴を考えると、Hさんの言動に影響している可能性があるので、主治医に相談する。●事実確認の上で、主治医だけではなくケアマネも含めて、今後のケア方針を相談する。●キーパーソンとコンタクトをとる必要がある。●ステーション内でミーティングし、情報共有する。 田中さんへのケアと、事実確認、そして問題解決に向けて多くの人たちと協力して事を進めていかなくてはならないことが見えてきました。 次回は、「問題の解決に向けて管理者としてどのような行動をすべきなのか」を考えていきます。 ー第5回に続く 注1ケースメソッドとは、架空事例(ケース)について、参加者それぞれの考えをシェアしあうことで、学びを得ていく授業形式です。ケースの教材には、訪問看護管理者が問題に直面している状況が、物語風に構成されています。参加者は、ケースの教材を予習し、自分がこのケースの主人公ならどうするかを事前に考えた状態で、授業に参加します。ケースメソッドの授業では、講師のリードのもと、参加者どうしでアイデアをシェアしながら議論をすることによって学びます。参加者の発言が何よりも学びを豊かにする鍵となります。 注2 発言者はA・B・C・Dとしていますが、常に同一の人物ではありません。別人であっても便宜上そのように表記しています。 執筆鶴ケ谷理子合同会社manabico代表慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。看護師、保健師、MBA。大学病院(精神科)、訪問看護、事業会社での人事を経験後、株式会社やさしい手看護部長として訪問看護事業の拡大に寄与。看護師250人超の面談を実施し、看護師採用・看護師研修などのしくみづくりをする。看護師が働きやすい職場環境作りの支援を目指し合同会社manabicoを立ち上げる。【合同会社manabico HP】https://manabico.com 記事編集:株式会社メディカ出版

優先業務・重要業務の継続に必要なリソースについて考えてみよう
優先業務・重要業務の継続に必要なリソースについて考えてみよう
特集
2022年11月1日
2022年11月1日

[5]優先業務・重要業務の継続に必要なリソースについて考えてみよう

この連載では「訪問看護BCP研究会」の発起人のお一人、日本赤十字看護大学の石田千絵先生に訪問看護事業所ならではのBCPについて解説していただきます。今回は、被災後の優先業務・重要業務の継続に必要なリソース(資源)について具体的に考えていきます。 【ここがポイント】・優先業務・重要業務を継続するために必要なリソースをヒト、モノ、カネ、情報に分けて検討し、すべてを『見える化』することが大切です。・利用者・家族は「リソース:ヒト」として考えません。 今回の第5回、そして次回の第6回は、リソース中心のBCPのキモともいえる回です。全国訪問看護事業協会の「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」では「Ⅱ 訪問看護ステーションの事業継続計画(BCP)考え方と記載例」の「2.平常時の対応」と「3.緊急時(~復旧における事業継続にむけた対応)」の内容にあたります(図1)。 図1 「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)」の目次(「Ⅱ 訪問看護ステーションの事業継続計画(BCP) 考え方と記載例」の項目を抜粋) 全国訪問看護事業協会.「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)―訪問看護ステーション向け―」,2020,p.2-3.より引用.https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/r2-1-3.docx2022/8/25閲覧 第5回では、被災後に優先業務・重要業務を継続させるために必要なリソースは何かを考えていきます。 もし、今回から読み始めた方がいらっしゃいましたら、この連載の第3回のリソースに注目したBCP策定の考え方と、第4回の優先業務・重要業務の選定を確認してから読み進めてください。いっそう理解が深まると思います。 「優先業務・重要業務」の実際 ここからは、あらためて訪問看護BCP研究会メンバーのケアプロ株式会社の例1)を参考にして進めたいと思います。 ケアプロ株式会社では、平常時の訪問看護業務を「訪問看護サービス(医療処置関連など)」「訪問看護サービス(健康生活状況観察)」「訪問看護サービス(内服管理など)」「訪問看護サービス(リハビリテーション)」「サービス担当者会議・退院カンファレンスなど他職種カンファレンス」の5つに分けてBCPを策定しています。 このうち「訪問看護サービス(医療処置関連など)」は72時間以内に「縮小」「中断」することができない、すなわち「継続」すべき業務であることから「優先業務・重要業務」としています。 COVID-19によるパンデミックの初期には、感染予防の観点から全国の医院などで受診を控える高齢者が多く見受けられました。そして、訪問看護の現場でも利用者や家族がサービス提供者からの感染リスクを恐れ、数ヵ月程度、訪問サービスを断わる事例が都内で起こりました。BCP研究会メンバーによりますと、その多くはリハビリテーションを主目的とした利用者・家族だったようです。 この現象をリソース(資源:ヒト、モノ、カネ、情報)で解釈すると、パンデミック初期に顧客が減ることは、リソース(カネ)に問題が生じたことになります。言い換えると、限られたスタッフ(リソース:ヒト)を、リハビリテーションを主目的とする利用者に優先的に配置する必要がないということを意味しています。 そのため、ケアプロ株式会社でも「訪問看護サービス(リハビリテーション)」業務は、72時間以内は「中断」し、1ヵ月以内・1ヵ月以降も「縮小」する業務としています。 優先業務・重要業務に必要なリソース(ヒト、モノ、カネ、情報)の検討 優先業務・重要業務を継続する上で必要なリソースは、図2のワークシートを使って検討するとよいでしょう。第4回で洗い出した優先業務・重要業務を図2のAの部分に記載します。そして、優先業務・重要業務ごとに基本的に必要なリソースをヒト、モノ、カネ、情報に分けて記載します。 例えば「訪問看護サービス(医療処置関連など)」の業務継続に必要なリソースであれば、「ヒト:対応可能なスタッフ3割程度」「モノ:移動手段としての自転車、持参する衛生材料、スタッフの生活のための備蓄や休憩場所」「情報:利用者情報や連携情報」といった具合です。優先業務・重要業務がどのようなリソースによって成り立つのかという観点から考えるとよいです。 さて、第4回で行った優先業務・重要業務の選定では、誰もが「訪問看護業務」を優先業務・重要業務に選ばれたと思います。このほかに、どのような利用者の訪問看護を「優先業務・重要業務」と選定されましたか? ケアプロ株式会社では、そのほかの優先業務・重要業務として「訪問看護記録の作成」「労務管理(出退勤状況、休暇状況、残業状況などの勤怠管理)」などを挙げており、それらに必要なリソースとして「ヒト:メンタルサポートができるスキルを持つ人材」「ヒト:労務管理担当者」「モノ:勤怠管理・残業管理シート」「情報:スタッフ情報」などを挙げています。 これらをすべて挙げた後、ヒト、モノ、カネ、情報をリソースごとで取りまとめると、優先業務・重要業務の継続に必要なリソースすべてを『見える化』することができます。 図2 優先業務・重要業務に必要なリソースを考えるワークシート 【ワークシートの記載例はこちら】 「リソース:ヒト」と利用者・家族の関係 BCP策定でわかりにくいのは「リソース:ヒト」の範囲です。訪問看護ステーションのBCPにおいて、利用者や家族はどのように捉えるとよいのでしょうか? このことは、モノづくりをしている中小企業のBCPにおける「リソース:ヒト」を例に考えると少しイメージが付きやすくなるかもしれません。モノづくりの会社でモノを購入してくださる顧客と同様に、利用者は訪問看護サービスを購入してくださる顧客といえます。一方で、モノづくりの重要な対象はモノの素材などですが、利用者もサービス提供にかかわる重要な対象です。 つまり、訪問看護ステーションにおけるBCPを考える際には、利用者は「顧客」であるとともに「重要な業務の対象」でもあることを認識する必要があるのです。そのため、利用者・家族への平常時の教育などの重要性も検討することになりますが、利用者や家族は「リソース:ヒト」には含まれません(あえて入れるとすると、BCPの視点では「リソース:カネ」に含まれます)。ここではひとまずこのことを押さえておいてください。 具体的には、「リソース:ヒト」に関する災害時のリスクを考え、平常時の備えについて十分に検討することが大切です。平常時の備えが十分であれば、利用者や家族の幸せを守ることができ、限りある「リソース:ヒト」の活動の範囲を絞って有効に活用でき、事業継続も可能になるからです。 次回の第6回では、リソースや利用者の災害時のリスクを想定し、それらにどのような対策・対応を講じていくとよいかを検討していきたいと思います。 執筆 石田 千絵日本赤十字看護大学看護学部地域看護学 教授●プロフィール1989年聖路加看護大学(現 聖路加国際大学)卒業後、聖路加国際病院他で勤務。1995年阪神淡路大震災および地下鉄サリン事件を契機に、地域×災害に関わる教育や研究を始めた。災害の備えは「平時に自分らしく生き、かつ、社会的によい関係性を保つこと」がモットー。看護学博士。 「訪問看護BCP研究会」とは、2016年にケアプロ株式会社、日本赤十字看護大学、東京大学他の仲間による訪問看護×BCPに特化した研究会。毎月1~2回程度で研究や研修などを行っている。▼訪問看護BCP研究会のホームページはこちら ※記録様式のダウンロードも可能です。 記事編集:株式会社照林社 【引用文献】1)金坂宇将・岡田理沙著.「都市型大規模ステーションにおけるリソース中心の作成手順に沿ったBCP-ケアプロ訪問看護ステーション東京-」,BCP研究会編著.『訪問看護事業所のBCP』,東京,日本看護協会出版会,2022,p.66-81.

感染予防対策とコストのバランスをどう考えるか
感染予防対策とコストのバランスをどう考えるか
特集
2022年11月1日
2022年11月1日

安心感をどう作るか⑥ 感染予防対策とコストのバランスをどう考えるか

最初の発生から2年が過ぎても、いまだ終息の見えない新型コロナ。感染防止対策だけではなく、目には見えないスタッフの不安やメンタルヘルスへの対応もステーションの管理者には要求されます。ベテラン管理者のみなさんに、今必要とされるスタッフマネジメントについて語っていただきます。今回は、岐阜県看護協会立訪問看護ステーション高山の野崎加世子さんによるお話の最終回です。 お話野崎加世子岐阜県看護協会立訪問看護ステーション高山 管理者 「事業継続」という責任 コストを考えるときに、いつも頭に浮かぶのは、一人の利用者さんの言葉です。 その方は、ある訪問看護ステーションを利用していたのですが、そこが閉鎖されてしまい、私たちが引き継ぎました。利用者さんは「昨日まで来ていた看護師さんは、どうして来られなくなったの?」と嘆き、「自分が死ぬまで、あの看護師さんに来てもらおうと思っていたのに……」と暗い表情で続けます。 そんな利用者さんの嘆きを聞くにつれ、閉鎖の理由がなんであれ、事業の継続は私たちの重い責任だと、あらためて襟を正しました。 コロナ禍は終わりがみえず、PPE(個人防護具)の購入費など、感染予防対策のコストがかさんでいます。加えて、ロシアのウクライナ侵攻の影響や円安の進行により、燃料費、光熱費、衛生資材、事務機器・用品などの相次ぐ値上げにより、確実にコスト負担が増えています。 削れるもの、削れないもの 支出抑制を考えるとき、「何もかもコスト削減」では、現場の士気は低下してしまいます。管理サイドの意思決定に不満を抱くスタッフも増えるでしょう。 訪問看護ステーションの「ハート」を示す意味でも、コストを削れるものと削れないものとに分けることが重要です。 削れないものは、コロナ禍においては、感染予防対策が該当します。私たちのステーションでは、基本的にN95マスクをつけて訪問します。使い捨てエプロンを使用することも多く、それらの費用負担はとても大きいのが現状です。しかし、利用者さんとスタッフの安全・安心のためには出費を惜しみません。「何としても、利用者さんもスタッフも守る」。それが、ステーションのハートです。 コスト削減のプロが示す「見えるデータ」 一方、削れるものについては、コスト削減のプロフェッショナルである事務スタッフが大きな力を発揮してくれます。 私たち看護師は、「だって利用者さんのために必要だから、しかたがない」と考えがちです。そんな私たちに向けて、事務スタッフは冷静に、データを提示してくれます。 たとえば、「2年前に比べてガソリン代が○%増えていますよ」とデータを「見える化」してくれるのです。そんな形で示されたら、対策をとらないわけにはいきません。 たとえば、ガソリン代 私たちの訪問エリアは広大で、山間僻地もあります。片道50km(往復100km)の利用者さん宅にも訪問します。ガソリン代が1割増えただけでも、出費はばかになりません。私たちのステーションは規模が大きく、ガソリン代の増加分は、パート社員1人分の人件費に匹敵しました。 そこで、訪問の順序を見直すなど、移動距離が短くなるように知恵を出し合いました。並行して、市にもガソリン代の補助を根気強く要請しました。その際には事務スタッフが作ってくれたデータが抜群の説得力をもちました。結果として、片道20km以上の訪問には、補助金が出るようになりました。 ケチケチ作戦とスケールメリットの創出 ガソリン代だけではありません。小まめな消灯、裏紙使用、洗濯物を一定量ためてから洗濯機を回すなど、あらゆる場面でケチケチ作戦を行いました。 仕入れコストにも着目しました。サテライトを含めて、事業所単位で行っていた仕入れを一本化し、スケールメリットを狙いました。私たちのステーションが比較的大規模といっても、病院のスケールにはかないません。そこで、事業所をまとめることで、仕入れの単位を大きくしました。その結果、自動車保険や火災保険にも、このスケールメリットを生かすことができました。 経営規模の小さい訪問看護ステーションならば、地域でまとまって共同仕入れを行う方法も十分に検討に値すると思います。 「その気」になってもらうための、あの手この手 コスト削減で重要なのは、スタッフに「その気」になってもらうことでしょう。そのためには、事務スタッフを含めて、それぞれの専門性に最大限の敬意を払うことです。それに加えて、管理職が上から目線をやめることではないでしょうか。 「いろんな物が値上がりして大変だよね」と家計の話題からもっていったり、職員が相談に来たときは、仕事の手をとめて、しっかり向かい合って聴いたりするなど、スタッフと同じ目線に立つことが大切だと考えています。特に年に2回行う個人面談では、スタッフの話を聴くことに全力を傾けます。 コスト削減よりもケアの質に目が向くのは、看護師として素晴らしいことだと思います。だからこそ、何としても事業が継続できるように、あの手この手でコスト削減を行っています。 * 次回は、医療法人ハートフリーやすらぎの常任理事・統括管理責任者(訪問看護認定看護師)、大橋奈美さんにお話しいただきます。 記事編集:株式会社メディカ出版

特集 会員限定
2022年10月25日
2022年10月25日

【セミナーレポート】vol.3 上手な活用のポイント/訪問看護ステーションにおけるICT導入のメリットとは

2022年7月22日(金)、NsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「訪問看護ステーションにおけるICT導入のメリットとは」を開催。田中公孝先生を講師に迎え、医療・介護領域におけるICTの必要性や活用方法などを教えていただきました。セミナーレポート最終回となる今回は、ICTをより有効活用するために意識したいポイントをご紹介します。 【講師】田中 公孝 先生杉並PARK在宅クリニック 院長日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医/難病指定医2017年より東京都三鷹市で訪問クリニックの立ち上げに携わるかたわら、医療・介護分野におけるICTの普及活動に従事。市や医師会のICT事業にも参加する。2021年春には杉並PARK在宅クリニックを開業し、区内の医療現場でのICTによる多職種連携を牽引している。 目次▶ 【ポイント1】職種ならではの言葉を理解しようとする意識をもつ ・多職種連携を成功させるには『三方よし』の精神が必要▶ 【ポイント2】災害時にこそ、多職種でICTの積極的な活用を▶ 【ポイント3】ICTでの連絡頻度は、患者さんの状態によって判断 ・ICTでの連絡で訪問看護に期待されること▶ 【ポイント4】ICTを有効活用できるかどうかは関係性が左右する --> ▶︎ 【ポイント1】職種ならではの言葉を理解しようとする意識をもつ 多職種がICTを利用する体制を構築できると、『その職種ならではの言葉』を理解しやすくなります。たとえば、看護師さんからはよく「随伴症状」という言葉を聞きますが、介護職の方には伝わりづらいかもしれません。そんなふうにどの職種にもよく使われる専門用語があって、これがICT上で文字のコミュニケーションを重ねることで、徐々に理解できるようになる。すると、職種間の連携のハードルがどんどん下がっていきます。 また、ICTでこまめにやりとりをすることで、他職種の人の考え方やクセへの理解も深まるでしょう。個人的には、「文字化されることでお互いを理解しやすくなる構造」は、多職種連携を推進するための重要なポイントだと考えています。 多職種連携を成功させるには『三方よし』の精神が必要 近江商人の有名な理念に『三方よし』というものがあります。売り手と買い手だけでなく、世間にもいい影響を与える商売をしようという、私も大好きな考え方です。 この精神は、多職種連携にも通じるものです。具体的には、みなさんが売り手としてサービスを提供するとき、買い手である患者さんやご家族を満足させるだけでなく、他職種の人たちのことも意識してほしいという思いがあります。薬剤師やリハビリ職、ヘルパーなど、ケアに携わる全員がいいと思える形をつくることが、多職種連携を成功させるためには必要なんです。もちろん、ケアは常に利用者さん本意であるべきですが、職種間できちんと目線を合わせることも同じくらい重要なポイントだと思います。そしてそのためには、ICTを活用するなどして、ほかの職種が大事にしていることや背景を理解することが有効でしょう。 ▶︎ 【ポイント2】災害時にこそ、多職種でICTの積極的な活用を ICTを活用するなら、ぜひ災害時の備えになることも意識しておきたいですね。まず、電話以外に情報の入手・発信ができる手段があるという点だけでも大きな価値があります。そして、ICTを多職種で活用することで、お互いにほかの職種がもっている情報を入手できます。災害時は情報が勝負になるので、幅広い情報をタイムリーに入手できることはとても有益です。また、最近はBCPも業界で注目のテーマとなっていますが、その観点でもICTは活躍してくれます。利用者さんの情報を共有することで、より確実に、効率的に安否確認ができるでしょう。 ▶︎ 【ポイント3】ICTでの連絡頻度は、患者さんの状態によって判断 「ICTでの連絡はどれくらいの頻度でするのがいいですか?」という質問をよくいただきますが、そこは患者さんの状態に応じて判断するといいでしょう。病状が不安定な方や、介入してからまだ日が浅い方の場合は、比較的まめに情報を共有するべきです。一方で、生活が落ち着いている方の場合は、たまにでいいと思います。 頻回共有が必要なケースとしては、やはり終末期が挙げられます。お看取りの直前は、強い疼痛や不眠などが頻繁に見られる事例があり、その際はレスキュー、眠剤の使用も多くなりがち。少なくとも終末期の患者さんにはICTでやりとりができる訪問看護ステーションと連携できるとありがたいと思っています。すでに東京都では、医師に合わせてICTを導入している訪問看護ステーションが増えている状況なので、この動きがさまざまな地域にもぜひ広がってほしいですね。 ICTでの連絡で訪問看護に期待されること 訪問看護師のみなさんにまずお願いしたいこととしては、ご家族の発言や不安、臨時対応についての情報共有です。こちらは先にお伝えした連絡頻度の目安にかかわらず、ぜひ連絡してください。 また、ほかの職種より高頻度で訪問されている訪問看護師さんだからこそできる提案も積極的にしてほしいですね。例えば末期がんの患者さんなら、麻薬のベースアップや排便コントロールなど。それから、今後は独居の高齢者の見守りも増えていくと思うので、そうした情報も多職種に連携していただくことを期待しています。 ▶︎ 【ポイント4】ICTを有効活用できるかどうかは関係性が左右する ICTを効果的に活用するためには、メンバーの関係性が重要になります。「こんなこと聞いていいのかな」と思わない・思わせない関係がないと、ICTを導入したものの、情報がまったく共有されないという結果になってしまいます。つまり、『ICTが入るとチームの連携がよくなる』のではなく『日々コミュニケーションがとれている関係の中で、ICTがよりよく活きる』と考えるべきなんです。 また、ICTを導入した後も、それだけに頼ることはおすすめしません。ずっと文字だけでやりとりをしていると、どうしてもニュアンスがずれるなどの課題が生まれてしまいます。電話や対面でのコミュニケーションもしっかりとりながら、ICTを併用してもらえるといいと思います。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

特集
2022年10月25日
2022年10月25日

[4]訪問看護における優先業務・重要業務について考えてみよう

この連載では「訪問看護BCP研究会」の発起人のお一人、日本赤十字看護大学の石田千絵先生に訪問看護事業所ならではのBCPについて解説していただきます。今回は、BCP策定において悩むことの多い、優先業務・重要業務の選定について具体的に教えていただきます。 【ここがポイント】・優先業務・重要業務は、手順を踏んで検討することで選定が可能です。・その手順とは、平常業務をリストアップし、業務トリアージ(被災時の「継続」「縮小」「中断」)を行います。そして、業務トリアージで「継続」となった業務を優先業務・重要業務と考えます。 第4回は「優先業務・重要業務の選定」を中心に学んでいきたいと思います。全国訪問看護事業協会が作成した「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」の「1.総論」にある「優先業務の選定」の部分です。 ひな形の例では、「優先業務は、訪問看護ステーションの存続に関わる最も重要性・緊急性の高い事業のことで、訪問看護ステーションの場合は、訪問看護業務になる。訪問看護業務の再開の判断基準の検討、訪問看護利用者の中で優先する順位の検討、目標復旧時間を検討しておく」1)と記されています。 このひな形の例は、2021年度末に、私が所属しているBCP研究会メンバーが作成したものですが、現在はもっと具体的、かつわかりやすく示せるようになりました。当時は、訪問看護事業所の業務を「訪問看護業務」とだけ記載していましたが、そのほかにも重要な業務があります。現在は、ワークシートを使って、平常業務や業務の内容、リソースの把握、対応を検討することで、すべての業務から継続すべき業務(優先業務・重要業務)を選定する方法をBCP研究会では提案できるようになりました。では、その方法を以下でご紹介いたします。 優先業務・重要業務の選定の手順 ①平常業務をリストアップする まず、表1のワークシートを用いて平常業務をリストアップしましょう。このワークシートにはBCP研究会メンバーのケアプロ株式会社の例を示していますので、参考になさるとよいと思います。 具体的には「訪問看護業務」「記録業務」「請求業務」「スタッフ管理業務」「労務関連業務」「会議・委員会等業務」「物品管理業務」「地域活動業務」「経理管理業務」「その他」とあります。業務名や種類は自由に変更させてよいので、自施設の平常業務を『見える化』します。 ②業務内容を記載する 次に、それぞれの業務の具体的な内容を記します。例えば、「訪問看護業務」であれば、医療ニーズの高い療養者への訪問看護や内服管理を目的とした利用者への訪問看護といった具合です。よくわからない場合は、平時に行っている具体的な業務を表に当てはめてみてください。必要時、後で見直しましょう。 ③業務トリアージを行う そして、ハザードリスクの高い災害などを想定し、発災後にこれらの業務を継続するか(継続)、縮小して継続するか(縮小)、中断するか(中断)という業務の振り分け(業務トリアージ)をします。その際、「72時間以内」「72時間~1ヵ月以内」「1ヵ月以降」の時間軸で検討し、表に「継続」「縮小」「中断」の文字を記載してください。 トリアージとはフランス語で「振り分ける」という意味です。BCP研究会では、業務の振り分けを「業務トリアージ」と呼んでいます。業務トリアージでは、発災後の大変な状況でも継続し続けないとならない業務か、縮小しながらも継続しなければならない業務なのか、一旦中断をしてもよい業務なのかを振り分けます。 発災後に振り分けることは困難ですし、事前に振り分けておくと、安心して優先業務・重要業務を後回しにせずに対応することができるようになります。また、縮小した業務や中断した業務について、3日、1週間、10日間、1ヵ月、2ヵ月といった時間軸のどこで再スタートするかなど、決めていく必要があります。これらは、「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」の「2.平常時」「3.緊急~復旧における事業継続にむけた対応」に係る内容になってきますので、この連載の第5回以降で説明をしていきたいと思います。 ④優先業務・重要業務の選定 ③で「継続」と選定した業務を、「優先業務・重要業務」と考えます。 表1 優先業務・重要業務の選定(ワークシート) 復旧目標の考え方 この連載の第2回で復旧目標を1ヵ月単位で考えることを推奨していますと説明したように、大規模な自然災害を想定していても、被災状況を完全に想定することは困難です。また、リソースの中でも「カネ」や「ヒト」に関する問題が1ヵ月単位で変化することがわかっていることから、今回用いている表でも、1ヵ月を目途に作成しています。みなさんの復旧目標の考え方によって、時間軸を変えてもよいと思います。 * 前回から実践的な内容となってきましたので、自施設に照らし合わせて作成をしながら読み進めてはいかがでしょうか? この連載が終了するころには、BCP策定を一度終えることができるだけでなく、研修や見直し(BCM)についても検討できるようになっているかもしれません。 執筆 石田 千絵日本赤十字看護大学看護学部地域看護学 教授 ●プロフィール1989年聖路加看護大学(現 聖路加国際大学)卒業後、聖路加国際病院他で勤務。1995年阪神淡路大震災および地下鉄サリン事件を契機に、地域×災害に関わる教育や研究を始めた。災害の備えは「平時に自分らしく生き、かつ、社会的によい関係性を保つこと」がモットー。看護学博士。 「訪問看護BCP研究会」とは、2016年にケアプロ株式会社、日本赤十字看護大学、東京大学他の仲間による訪問看護×BCPに特化した研究会。毎月1~2回程度で研究や研修などを行っている。▼訪問看護BCP研究会のホームページはこちら ※記録様式のダウンロードも可能です。 記事編集:株式会社照林社 【引用文献】 1)全国訪問看護事業協会.「自然災害発生時における業務継続計画(BCP)-訪問看護ステーション向け-」,2020,p.12.

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2022年10月18日
2022年10月18日

【セミナーレポート】vol.2 ICT活用の成功事例/訪問看護ステーションにおけるICT導入のメリットとは

2022年7月22日(金)、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「訪問看護ステーションにおけるICT導入のメリットとは」を開催。田中公孝先生を講師に迎え、医療・介護領域におけるICTの必要性や活用方法などを教えていただきました。全3回に分けてお届けしているセミナーレポートのうち、第2回となる今回は、田中先生が実際に見てきたICT活用の事例と分析をご紹介します。 【講師】田中 公孝 先生杉並PARK在宅クリニック 院長日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医/難病指定医2017年より東京都三鷹市で訪問クリニックの立ち上げに携わるかたわら、医療・介護分野におけるICTの普及活動に従事。市や医師会のICT事業にも参加する。2021年春には杉並PARK在宅クリニックを開業し、区内の医療現場でのICTによる多職種連携を牽引している。 目次▶ 【事例1】時間外対応の細かな内容把握が可能に ・緊急連絡にICTは基本的にNG。チーム内でルール確認を▶ 【事例2】終末期の情報共有における負担を軽減▶ 【事例3】独居見守りにおける、多職種での情報交換が迅速に▶ 【事例4】地域とのつながりが明らかになり、より行き届いたケアを実現 --> ▶︎ 【事例1】時間外対応の細かな内容把握が可能に 訪問看護ステーションで22時過ぎに患者さんから電話相談を受けた。相談内容について、看護師による回答を含めた詳細と、その後は患者さんからとくに連絡がなかった旨を、看護師がICTで報告。医師は翌日の朝に内容を確認。時間外対応の情報を無理なく報告することが可能になり、医師もこれまで把握できなかった情報を得られるようになった。 この事例からわかるのは、ICTを活用すれば、夜間や土日などの時間外対応の情報を関係者が無理なく把握できるということです。勤務時間外の患者さんの状況について、担当者以外はなかなか把握しにくい状態にありますよね。もちろん、緊急性が高いケースでは、電話で情報共有がされているでしょう。しかし、「電話をかけるほどではない」と判断された情報は、ほかの事業所に伝達されないケースも多いのではないでしょうか。ICTは、電話と違って受け手が無理のないタイミングで情報を確認できるため、緊急性が低い内容も報告しやすくなります。そうして多くの情報が入ってくることで、患者さんの状態の理解や今後の予測がしやすくなるのです。 緊急連絡にICTは基本的にNG。チーム内でルール確認を ただし、緊急対応にICTが適さないことは、チーム全員が理解しておく必要があります。「土日に書き込んだ情報を相手が見るのは、週明け月曜日になる可能性がある」という前提で使わないと、トラブルを招きかねません。ICTを導入する際は、最初にチーム内で『目線合わせ』をきちんと行うことが重要です。 ▶︎ 【事例2】終末期の情報共有における負担を軽減 終末期の患者さんのケアを行う際、訪問看護師が容態(意識レベルや排尿量、血圧、脈拍、SpO2など)やご家族の様子をICTにて都度報告。看取りの際は、医師が死亡診断と死亡時刻、およびその場の状況などをICTに報告。関係者の疲弊を防ぎながらスムーズなお看取りにつながった。 一日でダイナミックに状態が変わることも多い、つまり連絡頻度が極めて高くなる終末期の情報共有は、ICTが最も活躍するといっても過言ではない場面です。すべての報告を電話で行っていると、関係者はかなり疲弊してしまいますからね。電話で細かなニュアンスの確認をする機会はもちろん必要ですが、とくにお看取りが近いタイミングの報告には、ぜひともICTを活用したいところです。私の場合は、終末期の患者さんのケアには、ほぼすべてのケースで訪問看護師さんにICTを使っていただいています。私もお看取りの際には、ICTで死亡診断と死亡時刻などを必ず報告します。これをやっておくと、ターミナルケア加算の算定にも便利です。 ▶︎ 【事例3】独居見守りにおける、多職種での情報交換が迅速に 独居の方への訪問時、軽度の症状や日々のケアの中で気になったことなど、細かなことをICTで共有。服薬管理がうまくいっていないなどの課題を報告することで、多職種で迅速に改善方法を模索することも可能に。 こちらは、ICTの可能性を別の角度からお伝えするための事例です。独居の方のケアでは、職種間の連携が課題になるケースが多く見られます。たとえば服薬管理なら、看護師さんは「患者さんがうまく服薬できていないので、もっと工夫してほしい」と望んでいるものの、薬剤師側は「訪問回数などの兼ね合いで責任をもちきれない」と考えるなどといった具合ですね。 このような状況では、まず関係者全員が情報をこまめに把握できる状態をつくることが望まれます。ご自宅に連絡帳を置いて情報共有する方法もありますが、連絡帳を確認するには、現場に行かなければならないため、課題をタイムリーに認識することが難しい。場合によっては、一週間以上経って情報が伝わることもあるでしょう。しかしICTなら、訪問しなくても情報をキャッチすることが可能。質の高いケアを目指しやすくなるでしょう。 ▶︎ 【事例4】地域とのつながりが明らかになり、より行き届いたケアを実現 医師が訪問時、同じタイミングで地域の民生委員の方が訪問。患者さんがその方から生活のサポートを受けていることを把握。また、民生委員の方から「ゴミ出しがうまくできていない」「新聞を複数契約してしまっている」などといった情報を入手し、併せてICTで関係者に共有。情報を受け、ケアマネージャーが積極的に介入するようになった。 この事例から伝えたいのは、幅広い情報を共有しやすくなるというICTのメリットに加えて、『実は私たち専門職が見えている範囲は狭いかもしれない』ということです。みなさんの中には、患者さんだけでなく、そのご家族まで見ている方も多いでしょう。しかし、患者さんが独居や二人暮らしの場合は、地域の方々が深く関わっていることもある。そんなケースでは、家族以外との関係にも目を向けられるのがベストです。まさにこの事例では、民生委員さんとの連携が生まれ、日常生活の困りごとを専門職間で共有できたことで、よりケアの質が高まりました。 すべてのケースにおいて地域の方との関係を意識する必要はありませんが、「地域包括支援センターからケアマネージャーさんにサポートが切り替わると、地域とのつながりが途切れてしまうケースもある」という話は耳にするので、紹介しました。これから独居高齢者を支えていくためには、地域資源の存在を意識することがより必要になっていくのではないでしょうか。 次回は、「vol.3 ICTの上手な活用のために知っておきたいポイント」についてお伝えします。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

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