記事一覧

特集
2021年6月22日
2021年6月22日

訪問看護あるある座談会 vol.4 インシデント編

医療現場では付き物のインシデント。皆さんも大なり小なり一度は経験したことがあるのではないでしょうか。「ああ、やっちゃったな」と落ち込んでしまうこともありますよね。今回も3人の訪問看護師さんにお集まりいただき、インシデントをテーマに訪問看護の「あるある」についてぶっちゃけトークをしてもらいました。 気遣い合える環境が生む安心感、ステーション内でインシデントを共有するメリット あい:訪問看護は楽しいです。病院経験があると「できる」って思われるところがあって、半年くらいでもう一人前の扱いでしたね。 みほ:不安はあっても、訪問スケジュール的に1人で行くしかない!ってこともありますよね。 あい:そうですね。お休みの関係とか。 ゆり:不安を感じながら訪問する時に、私はミスをしちゃったことがあって。気管カニューレの利用者さんの移乗をした時に、カニューレが抜けかかっちゃって急いで入れ直したことがあったんです。すぐに対応が取れたけど、若手の子だったらどうしようってパニックになっちゃうんじゃないかなと。 あい:うん、頭ではわかっていても、ためらっちゃうかもしれません。 ゆり:大人の気管カニューレを入れたのは、実はその時が初めてで。経験年数を重ねていても初めてのことってあるし、緊張もする。インシデントやヒヤリハットが起きても、きちんとみんなで共有するのが大事だと思う。ステーションの信用問題にも関わるからね。 みほ:ヘルパーさんとかご家族のかたが見ていることもありますもんね。 ゆり:うん。落ち込んでステーション帰ってきてね。そしたら若いスタッフたちが「誰でもあり得る状況だったし、もし私がそのインシデントを起こしていたらすごく怒られていたと思う。おかげで移乗のときここに気を付けないといけないって気付けました。ありがとうございました。」って感謝されたの。大丈夫だった?とか声を掛けてくれる環境のほうが、報告しやすいし、救われるよね。 みほ:皆さん優しいですね! あい:こういうインシデントがあったんだ、って共有してもらえると、想像できて心構えができるので、安心感がありますね。在宅に慣れないうちは尚更。 ステーションの糧になる、インシデントの振り返り みほ:ステーションに「インシデント振り返りシート」ってありますか? あい:元々はなかったですね。私が同行した訪問でインシデントが起きた時に、書いて全体に共有したのが初めてでした。 みほ:すごい。自分からレポートを書いて出したんですか? あい:そうなんです。新人さんと同行訪問中のインシデントで。内服薬をお薬カレンダーにセットするときに2人で入れたんです。そのとき、たまたま新人さんが担当したところが複雑なセット方法で、そこにセットミスがあったんです。後日利用者さんから「内服セットが間違っているよ」って電話がきて発覚しました。ステーション設立して初めて、インシデントレポートを使ってカンファレンスをしましたね。 みほ:大事ですよね。こういう機会がないと、振り返る機会ってなかなかないですから。同行訪問中のインシデント、あるあるだなって思いました。 ゆり:同行訪問っていつもと違うことしちゃうよね。 みほ:そうそう、緊張なのか普段しないミスをやっちゃいますね…。 あい:そうなんですよ…。1人が内服セットして、もう1人がダブルチェックする方が良かったなって思うんですけど、同行の緊張もあってか、普段と違う判断をしてしまいました。 ゆり:時間が迫って焦ることもあるよね。 あい:まさにその日もほかのケアが延びて、2人でやった方が早いねって流れになったんです。新人さんもそれなりに看護師経験があったので「一緒にやろう」ってなって起きたミスでしたね。利用者さんもストレートに言う方だったので、新人さんも落ち込んじゃって。嫌な体験させちゃったなって反省して、しっかり振り返ろうってなったんです。 ゆり:あいさん、いい先輩。インシデントはいつやってもショックですよね。細心の注意を払っても、環境要因とかヒューマンエラーで起きる時は起きちゃう。だからこそ、起きたら共有して対応策を考えていかないと、看護の質もステーションの質も上がらないと思う。インシデントってクレームに直結するから。ステーション立ち上げを手伝った時に、インシデントマニュアルとクレーム報告対応書は準備しましたね。インシデントはステーションの糧になるから、レポートで溜めていったほうがいいと思う。 みほ:今まで溜まったレポートを見ると、こんなところに危険があるんだって気付けるので、教育にも繋がっている気がします。口頭の報告と振り返りだけで終わっちゃうと、もったいない気がしますね。 ゆり:振り返りシート書くの、めんどくさいって思うんだけど、書いて振り返りをしたからこそ安全にケアができる、利用者さんの生活も保持されると思うと、書いた方がいいですよね。 ** NsPaceではインシデント・アクシデント報告書など各種ツールのサンプルをご用意しております。各事業所様で編集してご利用ください。【ツール一覧を見る】 記事編集:NsPace

特集
2021年4月27日
2021年4月27日

介護施設での看取りをさらに推進、ACPの取り組み促す

2021年度の介護報酬改定では、介護施設や在宅での看取りの対応がさらに強化されました。報酬を手厚くする条件として、アドバンス・ケア・プランニング(ACP)の考え方を取り入れた「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」に沿った取り組みが盛り込まれました。 繰り返し、話し合い、記録に残し共有する ACPでは介護職もチームの一員 ACPでは、人の意思は心身の状態の変化に応じて変化するものと考えます。ですから、一度決めたら終わりではなく、医療・ケアの方針や、どのような生き方を望むかを日頃からよく話し合い、それを記録し関係者で共有していくというものです。 前のバージョンのガイドラインは、2006年に富山県射水市で起きた医師による人工呼吸器の取り外し事件が起こり、尊厳死のルール化の議論が活発になったのを受けて策定されたものです。病院で医療を停止する手続きが前提だったのに対し、新しいガイドラインは在宅医療・介護の現場で活用することが前提で、地域包括ケアの時代に対応できるよう2018年3月に策定され、さっそく、前回改定で、訪問看護ステーションには取り入れられました。ACPでは、医療の専門職だけでなく、介護職も情報を共有すべき医療・ケアチームの中に含まれると考えられています。 介護施設の看取り加算、45日前から算定可能に 特別養護老人ホームは、生活の場での看取りに先駆けて取り組んできた施設も多くありました。厚労省の調査では、8割の施設で人生の最終段階における医療・ケアについて、本人・家族に対して説明して意思確認または推定を行っていると回答しましたが、ACPが求める「繰り返しの話し合い」を行っているのは43%にとどまっていました。今回、報酬アップとともに取り組みを促すようにしています。 手厚くなったのは、看取り介護加算です。特養では死亡日30日前から算定できましたが、回復の見込みがないと医師が判断して施設で看取り対応を開始しているのは30日よりも前のことが多く、15日前倒しして、45日前から加算が取れるようになりました。1日75単位、15日分で1080単位の上乗せになります。 看取りに関する協議の場に、医療職ではない生活相談員の参加も明記されました。老健、介護医療院、介護付きホーム(特定施設入居者介護の指定を受けた有料老人ホーム等)、認知症グループホームも同様の扱いです。ガイドラインへの取り組みで先行する訪問看護ステーションへ研修の依頼も増えるかもしれません。 認知症グループホームは、軽度の認知症高齢者が家庭に近い環境で穏やかに過ごすことができるように制度化されたものですが、近年、医療ニーズのある人や看取りの対応も増えてきています。認知症の方は環境の変化に弱いので、本人のQOLの問題や医療機関での対応の難しさから考えても自然な流れとなっています。 認知症グループホームでは、看取り介護加算を算定するためには、医療連携体制加算を算定し、看護師を24時間体制で確保することが条件となっています。小規模で自前での人材確保が難しいために、地域の医療機関や訪問看護ステーションとの連携での人材確保や24時間対応が認められています。 改定では、医療ニーズのある人の受け入れを促進するために、より高い区分の医療連携体制加算を算定できるよう、要件となる医療的ケアが必要な人の状態像を拡大しています。褥瘡や気管切開など7項目が追加されました。近年、介護保険制度の中では、地域の他の事業所の助けをかりる「専門職シェア」ができる項目が増えてきていますが、認知症グループホームの医療連携はその先駆けです。 在宅でも看取り間に合わなかった場合も、準備したケアマネの報酬算定が可能に 在宅サービスに目を向けます。がん末期でご自宅での看取りを覚悟し、退院の準備をしていた方が、急変して間に合わないことも現実にはあります。その場合は、ケアマネジャーには「サービスの利用実績がなかった」という通常のルールが適用され、相談に出かけてサービスの調整をした分はタダ働きとなってしまっていました。今回の改定では、利用者が退院前に死亡した場合などは、通常のルールの適用外とし、報酬を算定できるように見直されました。(※1) 訪問介護では、看取り期の対応評価として「2時間ルール」の運用の弾力化をおこなっています。「2時間ルール」とは、訪問詰め込み防止のために、訪問の間隔が2時間未満の場合に合算した時間で算定し、報酬額を低く抑えるルールです。医師が回復の見込みがないと判断した場合も運用が弾力化され、それぞれの時間で報酬が算定できるようになります。サービス付き高齢者住宅や住宅型有料老人ホームなど、在宅サービスを利用してホスピスケアを行っているような施設で、役立ちそうです。すでにさまざまな手を打っているため、細かい内容の改定項目が多いのが今回の改定の特徴です。 介護での看取りは新たな生活文化 制度上、病院でない看取りの選択肢は着実に増えています。しかし、まだまだ日本人にとっては、ハードルの高い選択肢と言えるでしょう。「本人の覚悟があれば、今でも十分在宅で安らかに死ぬことができる」とあるベテランの訪問看護師は話していました。しかし、本人が納得していても、死に目に合えなかったことで苦しむ家族もいて、本人だけの問題ではありません。一人で立派に往生しても、周りから「孤独死」と言われたら浮かばれません。 看取りは、生活文化そのものです。もちろん、収入が増えるからといって、入院させずに施設を死に場所に選ぶことを強要することは許されません。関係者の揺れる気持ちに寄り添い、いつも話し合う。介護での看取りを増やしていくには、新しい文化としてACPが根付いていくことが必要でしょう。 【参考】 ※1  厚生労働省 令和3年度介護報酬改定における 改定事項について https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000768899.pdf ** 介護・福祉ジャーナリスト 川名佐貴子 介護保険の専門新聞、ケアマネ向け月刊紙の編集長を長年務め、2019年12月末に独立。フリーで活動中。介護保険制度の創設前から、介護福祉分野の幅広く取材してきた。

特集
2021年4月21日
2021年4月21日

訪問看護あるある座談会 vol.3 服装・持ち物編

前回のインタビューでも少し出てきた、訪問看護の冬の寒さ対策。それ以外にも、雨の日の服装や訪問看護バッグなど制服以外についても悩む訪問看護師さんも多いのではないでしょうか。前回に続き、3人の訪問看護師さんにお集まりいただき、服装・持ち物をテーマに訪問看護の「あるある」についてぶっちゃけトークをしてもらいました。 冬の雨が辛い!訪問看護の冬の服装どうしてる? ゆり:何が言いたいって、雨で一番つらいのって冬の雨だと思うんですけど、どう思います? りさ:本当にそう!手袋選びからですよね。毛糸の手袋とかは使えない…。 ゆり:ワークマンの手袋知ってます?内側にフリース素材入ってて暖かいんです。内側がもこもこのブーツもワークマンにあるんですよ。 みほ:うちのステーションでもワークマン流行ってて。あったかグッズが安く買えていいですよねー。 りさ:ワークマン人気ですよね。横浜のほうにワークマン女子のお店がありますね。 ゆり:まさに訪問看護師こそワークマン女子になるべきですよ! みほ・りさ:笑 ゆり:バイクで訪問してるときは防水防風のジャケット着てたけど、リーズナブルでしたよ。訪問看護師にはワークマンかファストファッションブランドがおすすめ! みほ:きっとみんなお世話になってるはず! りさ:暖かい靴下も欲しいですよねー。 ゆり:たしかそれもワークマンに売ってると思う。作業員さんが着るようなやつ。ほら、私たちも外出る仕事だからぴったりじゃない!? みほ:確かに! 悩める訪問看護バッグ。経費で落ちるのはどこまで? りさ:訪問カバンも良いのがあるといいですよね。 みほ:迷いますよね。訪問カバン。 ゆり:既製品で売ってる訪問バッグって小さいし、ポケットが多いのはいいけど、どのポケットに何入れたかわからなくなるんですよね。 りさ:そうなんですよね。小物がどこ入れたか分からなくなりますよね。 ゆり:小物整理は100円ショップのメッシュポーチを何個か持つようにしてて、マスク、処置材、不織布とか入れてますね。 りさ:私も同じようなポーチ使ってます!はさみとか手袋とか入れてます。 ゆり:こういうメッシュポーチ使いやすいですよね。あと、認知症の利用者さんなどにメモを残すのに、A4のメモも100円ショップで買って。 みほ:A4メモとふせんはマストですね。ヘルパーさんにもメモ書いたりしますし。 ゆり:経費で落ちるといいんですけど、結局自分で買っちゃってるんですよね。 みほ:私も自腹で買ってます…。細かいので経費で落とすのも面倒になっちゃうというか。 ゆり:事務所にあるものもあるけど、それ以外は割と持ち出し多いよね。訪問看護師。 りさ:たしかに。意外とそうですね。 みほ:ちなみに、アウターとか訪問バッグって経費で落ちますか?アウターが意外と高いから経費で落としてもらえないか交渉したんですが、ダメだったことがあって。バッグは補助出るんですけど、他のところはどうなんだろうと思って。 ゆり:うちはアウターは出ない。バッグは貸し出しがあるけど、直行直帰の人は自分で買うルールになってる。カッパも経費出ない。 りさ:カッパ、意外と高くないですか? ゆり:ちょっと高いよね。バイクの時は上下のカッパ着てたけど、今は自転車だからカゴまで覆えるポンチョを着てる。雨が強い時はその上にもう1枚ポンチョを重ねて、長靴履いてしのいでる。 みほ:なるほど!うちはカッパは支給があるんですけど、ボロボロになっちゃったので結局買いましたね。 りさ:うちはカッパはわりとしっかりしたやつを支給してもらいました。制服代として年間2万円まで支給するから自由に買っていいよっていうスタイルで、それを使ってスクラブとかヒートテックを買っていますけど、結局お金が回らないからアウターは自費ですね。 みほ:でも支給でるのはいいですね。 ゆり:税理士さんに聞いたことがあるんだけど、制度的に経費で落ちる物もあるはずなんですよ。お金関連のところ、看護師は疎いと思います。 みほ:たしかに。善意で持ち出しばかりするんじゃなくて、会社に負担してもらえる部分もあることを看護師側も知っておくことが大事ですね。 ゆり:これは必ずかかるから経費に計上してもらいたいとか。でもなかなか難しいですね。 りさ:お金の話は疎い自覚あるし、詳しい友達の方が少ないですね。その辺りをもっと知れるといいです。 ゆり:税理士さんとかから話聞けるといいよね。 ** NsPace編集部より本記事掲載にあたり、NsPace編集部がワークマン様に掲載許可をいただきました。ありがとうございました。 記事編集:NsPace

特集
2021年4月20日
2021年4月20日

【訪問看護ステーション】重度者対応は拡充、前途多難なリハビリ型

4月からの介護報酬が改定。その中から、訪問看護ステーションに関連の深い項目を紹介します。ステーションからの訪問のうち、「看護」は拡充ですが、理学療法士などリハビリ専門職の派遣を中心に行なっている事業所には厳しい改定内容となりました。 リハビリ職の訪問、要支援者1日3回の報酬は5割減 令和3年度の介護報酬改定は、0.7%のプラス改定でした。コロナ禍での対応として半年間基本報酬の引き上げが行われ、全体が上げの基調の中にあって、マイナスが際立ったのが重点化対象とされた訪問看護ステーションのリハビリ専門職の訪問に対する報酬です、 介護給付(訪看Ⅰ5)では297単位が293単位、予防給付(予訪看Ⅰ5)の287単位が283単位でともにマイナス4単位。1日2回を超える(3回以上)の訪問の場合は1割減ですが、予防給付では、5割減と大幅減額。計算すると、20分2,830円、40分5,660円、60分になると4,250円になります。 「ちょっと触って、たくさん回れば儲かる。そんなビジネスモデルを吹聴する儲け主義の経営者がいたのも事実。ただ、真面目にやっているところも一律にカットされるのは残念」リハビリ職でもある介護経営者は話していた。リハビリ中心の事業所では軽度者の割合も多く、経営に与える影響は大きいと考えられます。 消えた「看護職が6割以上」、看護強化体制加算の要件で復活 訪問看護ステーションからのリハビリ職派遣は、2012年度に20分単位のリハビリ体系に改訂されるまでは報酬も訪問看護と同じでした。もともとは「おまけ」の位置付けで、今のように数が増えることは想定していなかったと言えます。無視できないほどの量になり、地域包括ケアシステムの構築が目指される中で、訪問看護ステーションの役割や、訪問リハビリとの関係は本来どうあるべきかという議論になっていきました。 2018年度の介護報酬改定では、訪問看護ステーションは看護が中心であることを明確にする見直しが行われました。看護師が定期的に評価を行い訪問看護計画書や訪問看護報告書を理学療法士等と連携し作成することや、リハビリ職が中心でも看護師の代わりの訪問であることを利用者に説明して同意を得ることが算定要件となるとともに、予防の報酬の引き下げが行われ差がつけられました。 そして迎えた今回の改定は前回改定の方向性をより強化する内容です。厚労省は、昨年、11月、ステーションの設置要件を「看護職の割合を6割以上」とし、リハビリ型を事実上排除することを提案しました。これに対し、日本理学療法士協会など職能3団体は猛反対。「規制強化により、8万人が介護サービスを利用できなくなり、5千人のリハ職が失職する」と訴えて署名活動を展開し、政治に働きかけて規制案を撤回させた経緯があります。 しかし、「看護職が6割以上」の要件は、看護体制強化加算の要件として取り入れられました。報酬額は看護体制強化加算(Ⅰ)が月600単位から550単位に、看護体制強化加算(Ⅱ)が月300単位から200単位に下がったものの、クリアするのが厳しい特別管理加算を算定している利用者の割合が「30%」から「20%」に引き下げられたことで算定しやすくなりました。また、退院当日に訪問ができる対象者も拡大され、医師が必要と認めれば訪問できるようになり、中重度者の在宅療養を支える訪問看護の役割は強化されました。「看護職が6割以上」は医療保険の機能強化型の算定要件にすでに導入されており、いわば厚労省の推奨事業モデルです。 中重度者対応の強化が経営面でも重要に 「需要があるからといって漫然とリハビリ職を増やしていたところもやっていけなくなるでしょう。経営的にも看取りや医療ニーズの高い中重度者の対応を増やしていく必要がある」と別の経営者はこの先を予測しています。看護職割合での参入規制は、今回は撤回されましたが、先送りになっただけというのが関係者の共通の見方となっています。 医療機関や老人保険施設での訪問リハビリの報酬は、要支援者・要介護者ともに307単位に引き上げとなり、訪問看護からの訪問と報酬上の評価は初めて逆転しました。訪問看護からのリハビリ職の訪問について、「通所リハビリだけでは屋内のADLが自立できない場合」限定という規定が追加され、運用上の扱いは訪問リハビリと同じになりました。介護予防・重度化防止に力を入れる厚労省は、近年、介護保険の中でのリハビリ職の役割を強化してきていますが、医療機関での通所リハビリテーションや、訪問リハビリを伸ばしていく考えです。 リハビリステーションの必要性指摘する意見も 医療機関での訪問リハビリは、原則事業所の医師の診察を受けることが必要で、事業所数そのものが少ない中で、利用しづらいという問題があります。かかりつけ医師の指示書一枚で済む訪問看護ステーションのほうが、利用者にとって利便性は高く、需要を増やしたと考えられます。職能団体はリハビリ専門のステーションの設置を可能とすることを求めて活動を続けており、介護報酬を議論する介護給付費分科会では、自治体代表の委員から強く支持する意見もありました。職域や専門性からのあるべき論だけでなく、利用者の目線からも検証していいってほしい問題と思われます。 ** 介護・福祉ジャーナリスト 川名佐貴子 介護保険の専門新聞、ケアマネ向け月刊紙の編集長を長年務めた。現在、フリーで活動中。介護保険制度の創設前から、介護福祉分野の幅広く取材してきた。

特集
2021年4月14日
2021年4月14日

訪問看護あるある座談会 vol.2 感染対策編

訪問看護のお悩みあるあるの中に、感染対策があるのではないでしょうか。病院では清潔・不潔をはっきり分けられる反面、在宅では病院ほど明確に清潔・不潔を区別することへの難しさもあります。前回に続き、3人の訪問看護師さんにお集まりいただき、感染症対策をテーマに訪問看護の「あるある」についてぶっちゃけトークをしてもらいました。 コロナ感染対策の悩み。手袋NG!?訪問看護の入浴介助 りさ:悩みあるあるは感染対策です。 ゆり:あるよね。エプロンしないとか「これも素手でやっちゃうの?」みたいな。 りさ:在宅の利用者さんは手袋すると嫌がるんだよって言われたことがあったんです。それで手袋付けずに入浴介助してるお家もあります。 ゆり:その家の清潔の具合によるかもしれないけど、自分の感染リスクもあるし、他の家に菌を持っていっちゃうリスクもあるよね。お風呂場で「こんなの裸足で入るのよ!」って入っていく看護師もいるけど。笑 りさ:えっ、むしろ裸足以外で入浴介助してるんですか? ゆり:うちでは長靴持っていったり、家によっては買ってもらったりしてます。ステーションごとに感染対策って違うんじゃないかな。 みほ:うちのステーションではご自宅で使ってるバスシューズを借りることもありますね。 りさ:へー、そうなんですね。イヤイヤ裸足で入ってました…。 ゆり:他のステーションではこうしているらしいから、感染対策の見直しをするのはどうですかって提案してみるのはどう?今はコロナもあるし。 りさ:そうですね。素手でストマを洗うのとか、粘膜だから抵抗あって悩んでたんです。 ゆり:だって便とか触れるからね。 りさ:信頼関係を大事にしすぎて、手袋をつけて嫌われるんじゃないかって思っている先輩もいて…。 ゆり:でも自分は守らないといけないもんね。最近は新型コロナで自宅に消毒液置いてくれてる家も多くなったし、看護師は働きやすきなったんじゃないかな。 みほ:そうですね。新型コロナを理由に何かと感染対策できるようになったのは、よかったのかもしれないですね。「新型コロナなので」って説明して、今まで抵抗あったお宅でもエプロンとか手袋を付けさせてもらえたり。 りさ:マスクもしてもらいやすくなりましたね。 みほ:今までそのまま咳されてましたからね…。 ゆり:唾飛んだよ!みたいな。気になってコンビニのトイレで顔洗ったこともありました。笑 みほ:帰り際に洗面所で手洗いできなかった時、コンビニのトイレとか公園で手洗ったりしますね。 ゆり:公園の子供たちに混ざって手洗いますよね。訪問先で「さようなら〜」って挨拶してそのまま手洗うタイミング逃しちゃったり。手指消毒で済ませるときもありますけどね。 看護師、膀胱炎になりがち。訪問看護のトイレ問題 ゆり:最近はコロナでトイレ使えなかったですよね。 みほ:めっちゃ不便でした。 ゆり:ですよね!私、膀胱炎になりました。 りさ:えー!わかります!私もなりかけましたもん。 みほ:ひえー。今年じゃないけど私も前なりました。 ゆり:病棟でもそうでしたけど、トイレ我慢しちゃうじゃないですか。在宅だとトイレにいつでも行ける環境じゃないので、尚更。 りさ:私も水飲むの控えちゃってました。去年の夏に突然38度くらいの熱が出て「コロナか!?」って思ったんですけど、実は脱水で。 ゆり:わかるー。私もおなかの調子が悪くて腸炎かと思ったら高熱出て。OS1を一気飲みしたらおいしくて。こんな美味しい飲み物だったかなっていう。笑 手足の痺れもあって、今思うと重度の熱中症でしたね。 みほ:やばいやばい。 ゆり:夏、高齢の方ってなかなか熱中症に気づかないじゃないですか。クーラー付けてないのも怖いですよね…。 りさ:クーラー自体無いおうちもありますね。必死でアイスノン当てたりしてました。 ゆり:看護師側も夏と冬は辛いですよね。冬は着込んで自転車乗るので、利用者さんの家に着く頃にじんわり汗かいてて。訪問中もケアして汗かいて、外出ると寒くて。風邪引きそうになっちゃいます。 みほ:分厚いダウンだけだと利用者さんの家出てすぐ着るには暑いこともあって。フリースの上に薄手のダウンの重ねてますね。 ゆり:うん、上着は重ねて調節できないと体調崩しますね。朝に子どもを保育園送るのが重労働で、出勤する頃には冬でも汗だくで。笑 着る物失敗すると、夏みたいに汗かきますね。 ー③に続きますー 記事編集:NsPace

特集
2021年4月7日
2021年4月7日

訪問看護あるある座談会 vol.1 ライフスタイル編

たくさんの訪問看護ステーションがありますが、利用者さんのお宅を回るという点では全国共通です。車や自転車での移動、病棟時代とは異なる生活スタイル、利用者さんごとに違う家のルール、ナースステーションとは違うステーションの雰囲気など、病院とはまた違った訪問看護ならではの環境があると思います。今回は、3人の訪問看護師さんにお集まりいただき、ライフスタイルをテーマに訪問看護「あるある」についてぶっちゃけトークをしてもらいました。 訪問看護師への転身で朝起きて夜眠れる生活に みほ:りささんは訪問看護に来て1年くらいと聞きました。ぶっちゃけどうですか? りさ:そうですね。夜勤はないので体調はめっちゃ良くなりました。 ゆり:わかる。ホルモンバランスの乱れも減るよね。 りさ:肌もちょっときれいになった気がします!あと、よく眠れるようになりました。病院時代は不眠症だったので。 ゆり:私も病院の時、夜勤明けは眠剤飲んで寝てたもん。目が冴えちゃって。 りさ:ちょっとでも光が入ると眠れなくて、遮光カーテン1級にしてました。眠れなくなると体調を崩して、負のスパイラルに入っちゃうんです。 ゆり:そう考えると、普通のサラリーマンみたいに朝起きて夜寝る生活ができるのが良いところだよね。 天気に左右される訪問看護の移動準備 りさ:天気予報を毎日チェックするようになりました。自転車移動なので。 ゆり:わかる。前のところではバイクだったけど、今のところは電動自転車。 みほ:うちも自転車メインなので、天気予報は絶対見ますね。 ゆり:天気予報アプリを3つ入れてて、雨雲レーダーで今どこに雨雲がいるか確認して、風向きを見て「そろそろ降りそう」とかやってます。笑 りさ・みほ:すごい!笑 みほ:ゆりさんみたいに天気に詳しい人、1ステーションに1人いるの、あるあるじゃないですか? りさ:いるいる!うちにも詳しいPTさんいます。カッパ持ってった方がいいよーって教えてくれます。 ゆり:私もよくそれ言う側です!笑 みほ:周りはすごくありがたいです。笑 ゆり:天気予報見るの、趣味みたいになってますね。雨が急に降ってきたら長靴の中までビショビショになっちゃうこともあるじゃないですか。それがイヤで。 みほ:ありますね…。替えの靴下とか持ち歩いてます。 ゆり:でも利用者さんち行って、帰りにその長靴履いたら結局ビショビショになっちゃうんだよね。笑 赤字から意識するようになった訪問看護ステーションの経営 りさ:経営視点を持てるようになりましたね。病院だと、全部病院が管理して給料も払ってくれるけど、訪問看護ステーションって病院と比べると小規模じゃないですか。だから「自分の働きがいくらになるのか」「自分の働きがどのくらいステーションに影響を及ぼしてるのか」って考えるようになりましたね。自分がサボったらボーナス減るなるのかな、なんて思ったり。笑 ゆり:大事ですよねー。看護をするために営業はしなきゃいけないし、訪問回らないと自分たちのお給料の維持ができないし。営業とかのことは考えたくないって看護師もいるけど、ちゃんと考えないと自分の生活が守れないんだよね。 みほ:りささんは、経営について考えるようになったきっかけがあったんですか? りさ:そうなんです。去年、ターミナルの方が1ヶ月で10件以上も出たことがあって。それからしばらく赤字だったんです。そこでみんなが危機意識を持つようになりましたね。今は黒字に戻ってきています。連日訪問の方とか、複数名訪問で行っている方もいたので、大変でした。 ゆり:うわー。きっと月あたり100万円くらいのお金の穴ができたよね。そういうときに「もう辞めよう」ってなっちゃう人がいるけど、みんなでなんとかしよう!ってなったのがすごいよね。 りさ:10年以上ここで訪問看護をやってる人が多いのもあるかもしれないですね。私は10年ぶりの新人で、すごく大事に育ててもらってます。笑 みほ:ちゃんとみんなで育ててくれるステーションに入って、本当によかったですね。 ゆり:ほんとありがたいです。娘より若いって言われます。 ー②に続きますー 記事編集:NsPace

特集
2021年2月16日
2021年2月16日

知っておきたい!病棟看護師が訪問看護師になるときのハードル

超高齢化社会を目前にし、2019年厚生労働省は訪問看護師の不足について実際の試算を発表しました。現在は5万人の訪問看護師が従事していますが、2025年には12万人が必要だと言われています。 しかし、訪問看護へ転向する際「看護経験が少ないと難しい」と多くの看護師が感じ、なかなか踏み出せないようです。 私は自身が訪問看護をスタートした時に感じた不安をベースに、訪問看護の楽しさとスムーズに仕事がスタートできる内容で勉強会と交流会を2018年11月より毎月開催してきました。実際に病棟看護師から訪問看護師へ転向した方のリアルな悩みや苦労に対してどのようなアプローチが有効か考えていきます。 未経験分野への挑戦 お話を伺った安原郁恵さんは、介護福祉士としてグループホームやデイサービスを10年ほど経験したのち、看護師の道へ進みました。 資格取得後は小児科病棟へ配属され、多忙な業務を必死で働き続けていく中、ふと介護福祉士時代の看取りを思い出しました。 一人ひとり患者とゆっくり向き合う時間や家族との関わりなど、看護の本質をじっくり追求できる看護をしたいと思うようになりました。その後、約3年働いた小児科病棟から訪問看護へ転向しました。「成人看護の経験がないことがとにかく不安でした」と安原さん。 看護師の経験は小児科のみ。病棟経験はあるものの、末梢静脈路確保、膀胱留置カテーテル交換、インスリン注射などの経験はありません。 訪問看護は介護保険を利用している方が6~7割程度を占めています。そのため、成人看護、老年看護が主体となっている訪問看護ステーションがほとんどです。 安原さんにとっては「未経験分野」への挑戦となりました。 少しずつスキルアップ 安原さんの訪問看護ステーションでは、見学同行(先輩のケアを見学する)、実施同行(先輩にケアに同行してもらう)というスタイルで全3回程度の同行をしています。 その後も「不安だったらもっと一緒に同行するよ」と先輩から声をかけてもらい、付き添ってくれることもありました。こうした手厚いサポートのおかげで、未経験ながらも安心して取り組むことができたそうです。 不安の大きい看護技術に対しては、手順を勉強して、動画で確認、イメージトレーニングを行いました。 自己学習した上で、見学同行で確認、実施同行で指導してもらうという学びを繰り返していくことで、出来ることが少しずつ増えていき、結果、自信につながったそうです。 はじめは誰もが「初心者」 訪問看護の対象者は、成人から老年期がメインです。小児科からのシフトは一見ハードルが高いと感じるかもしれません。しかし、病院でも一緒で、部署や病棟が変わればそこは「未経験分野」だったはずです。 新卒看護師の指導方法として、プリセプター制度があり、全国でも多くの病院に導入されていると言われています。 プリセプター制度の中心として欠かせないものに、実際に仕事をする中で業務上必要な知識・技術・技能を身につける OJT(On the job training)があります。 効果的な OJT の実施は、新卒看護師および先輩看護師がともに成長・ 発達できるとされています。 訪問看護においてもこれらのOJTを基本とした指導を受けることで、安原さんのように全くの未経験分野でも挑戦することができると考えられます。日本訪問看護財団(※1)や東京都福祉保健局(※2)でも「訪問看護師OJTガイドブック」を作成しています。 ここで、注意しなくてはならない点があります。 それは、訪問看護へ転向してくる看護師のほとんどは、臨床での十分な経験を積んできているだろうと思われているということです。 指導する側も「これだけの経験があればきっとこのくらいのことはできるだろう」「このような疾患の患者はきっとみたことがあるだろう」という思い込みで、任せてしまうことがあります。 また、臨床経験の長い看護師が訪問看護へ転向すると「いまさら知らない、経験がないとは言いにくい」という心理的ハードルがあります。原因として、年齢や経験年数が指導する側と指導される側でねじれが起きていることも考えられます。 そのため、経験や自信を可視化できるような技術・経験チェックシートを活用することがお互い納得のいく方法だと考えます。 看護師の経験年数に関係なく、訪問看護へ転向した際は「在宅領域では新人」と捉え、一定期間は新卒看護師と同じように精神的フォローを含めて関わる必要があります。どんなことでも相談できる体制を整えたり、研修制度を設けたりすることで安心して働くことができます。 また、新卒看護師の教育において、Off-JT(Off the Job Training)の集合研修との組み合わせは、スパイラル学習の効果があると言われています。 定期的なステーション内の集合研修、e-ラーニング導入、カンファレンスを活用した学習会などを行うことが訪問看護においても大切だと考えられます。 成功体験を共に積み重ねる 安原さんは、これまで1年間、訪問看護を続けてきました。 1人で訪問できる利用者を増やしていき、入職後4ヶ月目には24時間対応の携帯当番も担当させてもらえるようになったそうです。 もちろん初めての経験ですので、うまくいかないこともありました。担当した利用者の排便コントロールがうまくいかず、介護している家族に負担をかけてしまったという苦い経験をしました。 先輩からの助言を元に、内服の調整や観察にて試行錯誤を繰り返してきた結果、今では訪問時にトイレで排便をさせることができるようになったそうです。 何よりも、丁寧な関わりで家族の辛さに寄り添い、意図的なコミュニケーションの時間を持つことで信頼関係を築いていきました。 介護福祉士として生活を中心に携わっていた経験が介護者に寄り添う看護へとつながりました。その家族から「あなたでよかった」「長く続けてね」と言ってもらったことが、今までやってきて一番嬉しかったそうです。 このように利用者からフィードバックをいただくのはとても嬉しく、成功体験だといえます。 しかし利用者からの評価にとどまらず、先輩看護師からの評価をもらえることも必要で、スタッフの定着においても非常に大切だと言われています。 カンファレンスでは、訪問している看護師の関わりが、利用者にとってどのような良い状態につながっているのか言語化すると良いでしょう。訪問看護での成功体験の少ない看護師とって、自分の看護を先輩看護師に評価してもらう機会を自然に持つことができます。 また、複数の看護師が関わっている場合、新任看護師の対応に不備がないか確認し、フィードバックすることも有効だと思います。 まとめ 同行訪問でのOJTの効果的な指導を繰り返し、実際の訪問看護の中で成功体験を積み重ねることで未経験分野に対する漠然とした不安を払拭し、一人前の訪問看護師へと成長していきます。 そこには利用者からの感謝の言葉だけでなく、カンファレンスでの客観的な利用者のアウトカムの確認や先輩からの適切な評価が大切だと考えられます。     訪問看護師・ケアマネージャー マインヘルスケア株式会社代表取締役 西山 妙子 2001年 横浜赤十字看護専門学校卒業後、総合病院、大学病院手術室に勤務。結婚、子育てを経て訪問看護の道へ。2015年ケアマネージャー取得。病院の業務で疲弊しないでほしいと看護師の横のつながりや、新しい看護師のライフスタイルの提案を行うナースのためのオンラインサロン「ナースライフバランス 」を2017年10月より運営(現会員数約880名) 【参考】 ※1 日本訪問看護財団 訪問看護師OJTガイドブック ※2 東京都福祉保健局 訪問看護OJTマニュアル 【参考文献】 公益財団法人 日本訪問看護財団 令和2年度事業案内(2020) 訪問看護人材養成基礎カリキュラム(2016) 厚生労働省新人看護職員研修ガイドライン訂正版 小宮山陽子 、水澤千代子 、岡村典子 他(2017)看護研究交流センター 地域課題研究報告「プリセプター制度の現状と課題」

特集
2021年1月20日
2021年1月20日

コロナでどう変わる?介護報酬・診療報酬大予想

新型コロナウイルス感染症の流行という未曾有の事態が起き、収束の目処も立たず先が見えにくい状況になっています。 病院から足が遠のいてしまう患者も増えており、その影響もあり初診でのオンライン診療が特例的に許可されるなど、診療報酬にも影響が出ています。 また、今年2021年の春には介護報酬の改定が控えており、こちらも新型コロナウイルスの影響を受けた改定内容になりそうです。 今回のコロナ禍で、診療報酬と介護報酬はどう変わるのでしょうか。報酬改定についてのコラム記事について特集していきます。 介護報酬:感染症対策の義務化へ 今年4月、令和3年度の介護報酬改定が予定されています。厚生労働省の社会保障審議会では、今回の介護報酬改定の基本的な考え方として「感染症者災害への対応力強化が求められる中での改定」を冒頭に記載しています。 今回の改定で介護サービス全体に義務付けられる予定となっているのが、感染症対策の強化です。訪問系サービスでは「委員会の開催」、「指針の整備」、「研修の実施」、「訓練(シミュレーシ ョン)の実施」等の取り組みが義務付けられる予定です。 新型コロナウイルスの影響から、病院のように、どの訪問看護ステーションにも「感染対策委員会」のような委員会活動が取り入れられていくことになりそうです。 加えて、災害時でも安定的・継続的にサービスを提供できる体制を整えることも、介護サービス全体で義務化される予定です。近年台風や大雪等の被害が増えていますが、新型コロナウイルス感染症も、そのような災害の1つとも捉えられます。 ステーションの災害時の動きを見直す機会になりそうです。また、テレビ電話等を活用しての会議開催が認められるようになります。 従来の退院調整カンファレンスやサービス担当者会議は、談話室や自宅に多くの人が集まるため、いわゆる「密」になりやすい状況です。密を避けるためにも、オンライン会議の推進が今回の改定で明文化されることになりそうです。詳しくはこちらのコラムをご覧ください。   関連記事:令和3年介護報酬改定ピックアップ 【訪問看護ステーション】重度者対応は拡充、前途多難なリハビリ型 介護施設での看取りをさらに推進、ACPの取り組み促す 診療報酬:オンライン化が加速する傾向に 緊急事態宣言後の2020年4月10日、情報通信機器を用いた非対面の診療行為、いわゆるオンライン診療について、医師の判断により「初診から可能」とする時限措置を、厚生労働省が発表しました。 2020年9月に開始予定だったオンライン服薬指導についても、上記と同様に4月から始まり、半年ほど前倒してのスタートとなりました。これを機に、病院でも組織的なオンライン化が進んでいくと思われます。 では、オンライン化で訪問看護へはどのような影響はあるのでしょうか? 2020年の診療報酬改訂では「退院時共同支援料」について、オンラインでの退院調整カンファレンスにて、やむを得ない場合以外でも算定することが可能になりました。 新型コロナウイルス感染症の影響で、病棟への立入を厳しく制限している病院も多いため、オンラインでの退院調整カンファレンスがますます増えていくかもしれません。 また、オンライン診療における「D to P with N」モデルについても検討されています。 D(Doctor:医師)と、N(Nurse:看護師)といるP(Patient:患者)をスマートフォンやPC等で繋ぎ、オンラインで診察をするモデルのことです。 今後、訪問看護師には具体的にどんなことが求められるのでしょうか、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。 2020年、医療現場のオンライン化で訪問看護はどう変わる?徹底解説 新型コロナウイルス感染症の今後の状況によって、診療報酬と介護報酬の動向も流動的に変わっていくかもしれません。新型コロナで制度的に進んだ面もありますが、一刻も早い収束を願うばかりです。

特集
2021年1月20日
2021年1月20日

地域に信頼される訪問看護ステーションになろう

病院から在宅へと療養の場が移り変わる中、地域包括ケアシステムの必要性が求められています。その一端を担っているのが、訪問看護ステーションです。そんな中、「もっと地域に貢献したいけど、どんなことをすればいいかわからない」という方もいるのではないでしょうか。この特集では、コミュニティカフェの運営や見守りネットワークを構築を通して地域で活躍するステーションにスポットライトを当ててご紹介します。   「見える事例検討会」で地域力の底上げに貢献 木のように伸びる地図が、カラフルに描かれたホワイトボード。「見え検マップ」と呼ばれるこの地図は、課題解決の糸口を見つけるのに役立ちます。冨田さんは、病床数が減り病院の受け皿が少なくなる中、在宅メインの生活を実現するためには多職種連携が必要と考え「見える事例検討会」を開始しました。「名刺交換したらネットワークが広がった気になることもあると思うんですが、名刺交換した人がどんな気持ちで利用者さんと関わっているか、知る機会はなかなかありません」野花ヘルスプロモート代表の冨田昌秀さんは語ります。「見える事例検討会」は医療面に偏りがちな医療者の視点に対し、ケアマネジャーなど他の職種は社会面や経済面など異なった切り口で事例を見てくれるため、お互いを補い合う関係性に気づくことができます。また、自分の事業所はこんな思いで訪問看護をしています、と地域の方々に知ってもらう場にもなり、交流だけでなく事業所のPRにも繋がります。それ以外にも、NOBANASIDE CAFEというカフェ運営、地域の見守りネットワーク「みま〜も」の活動など、幅広く活動しています。地域に出ていくことで、普段の訪問看護だけでは繋がれないような方と繋がることもでき、自然とファンが生まれるのです。詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。地域の強みを活かし合う「見える事例検討会」とは(野花ヘルスプロモート 冨田昌秀) 住民同士が支え合える環境づくりも、看護のひとつ ビュートゾルフ柏(千葉県柏市)では、地域住民を巻き込んでコミュニティカフェの運営をしています。カフェは住民がおしゃべりをしたり、ボランティアさんが昼食を作ってくれたり、ご近所さんや小学生が遊びに来たりなど、地域住民の居場所となっています。研究者でもある代表の吉江さんは、自治体とも協力した地域支援事業として通いの場の運営を始めました。「訪問看護ステーションという形で立ち上げたのですが、どうしても基本自宅にいて、外出しないという方が対象になってしまいます。元気に外を歩いている人とは仕事上でお会いする機会がないですよね。そこをなんとかしたいと思いました」と語ります。住民と看護師が持ちつ持たれつの関係をつくることを目指し、また、住民同士が支え合える環境づくりも看護のひとつと考えて運営をされています。開設にあたっては地縁のある柏市役所のOBさんから、ボランティアの核になってくれそうな人を紹介してもらい、運営の手伝いをしてもらっているそうです。住民の方との繋がりでネットワークを拡大することが、地域との接点を持つための鍵になるようです。詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。研究を飛び越えて、魅せる強み(ビュートゾルフ柏 吉江悟)   地域に出ることが看護師のモチベーションにも繋がる 「元気なころから訪問看護ステーションの看護師が関わっていれば、利用者さんとしても安心できるし、例えば看取りの時期も本人自身では思いを表出できなくなったとしても、その方の生き方を支えていけると思うんです」牧田総合病院(東京都大田区)の地域ささえあいセンター長の澤登久雄さんは言います。澤登さんは、前述の「みま〜も」の立ち上げに携わった第一人者です。今では大田区以外にも広がり、高齢者の見守りネットワークを各所で展開しつつあります。「みま〜も」にも看護師をはじめとした専門職が関わっており、地域の元気な高齢者と共に活動することでモチベーションの向上にも繋がっているそうです。地域の活動で出会った住民の方が、何かあった時に「この訪問看護ステーションを選びたい」と思ってもらえることも組織のメリットになります。地域で多職種や住民で集まる会が盛り上がりを見せている今、そういった会や地域の活動に参加することで、顔が見える関係になることができます。詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。地域に選ばれる訪問看護ステーションになる(牧田総合病院 地域支えあいセンター 澤登久雄) こうした関わりで地域からの信頼度もアップし、地域に根付いたステーションになっていくのではないでしょうか。保険サービス以外に地域での活動がしたい方のヒントになれば幸いです。

特集
2021年1月20日
2021年1月20日

採用のポイントと定着の秘訣

訪問看護業界の課題として、人材不足が挙げられます。 看護職員の既卒採用者の6人に1人は、再就職後、採用年度内に退職していると言われています。 せっかく採用したけれど、すぐ退職されてしまったという経験がある訪問看護ステーションも、少なくないのではないでしょうか。 採用面接の時点で見極めや、入職後の適切なフォロー体制が求められています。 ほかの訪問看護ステーションでは、採用の際にどんなポイントを見ており、スタッフ定着に対してどんな工夫を行っているのでしょうか?特集にまとめました。 人材紹介に頼らない採用戦略 セントケア ・グループでは全国に100ヵ所近い訪問看護ステーションを展開しています。 現在は人材紹介会社はできるだけ利用せず、ホームページ、各種SNS、社員紹介制度にて採用活動をされています。ターゲット層に応じた方法で情報発信をすることで、採用に結びついているようです。 「自社アピールを前面に出しすぎるのは良くないかと思っていたのですが、ダイレクトに伝えないとわからない部分もある」と訪問看護部門の統括部長、藤原さんは採用活動について語ります。 具体的な採用施策や、ご自身が入職に至った経緯を伺いました。詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 異業種参入 第一の壁:採用(セントケア・ホールディング株式会社 藤原祐子) 採用の時点で見極めを 精神科特化型の訪問看護ステーションみのりでは、組織の中でも自分の役割を見つけ、主体的に動ける人を採用しています。 手厚い福利厚生や、統括部長の小瀬古さんの執筆された本の影響もあり、求人への問い合わせは多いそうです。そのため、電話での一次面接、同行訪問、対面面接と、入職前にいくつか段階を設けてじっくりとマッチングをしています。 訪問看護ステーションとして入職者に求めていることをあらかじめ伝えることで、ミスマッチを少なくしています。みのりでは、どんな人を採用しているのでしょうか?厳しく、優しく、人と向き合う採用についてを伺いました。詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 向き合い、選ぶ採用(訪問看護ステーションみのり 進あすか、訪問看護ステーションみのり奈良 小瀬古信幸) ファンを獲得し多様な看護師を採用 東京都江戸川区を中心に全国に展開するWyL(ウィル)訪問看護ステーションでは、多様なバックグラウンドを持ったスタッフの採用をしています。 「『本当にすべてをこなせるジェネラリストって存在するのだろうか』と疑問に思います」と代表取締役の岩本さんは語ります。 多くの病棟を経験したとしても、全てができる看護師というのはほとんどおらず、経験や強みは人それぞれです。だからこそ、多様な経歴のスタッフを採用し、お互いの経験を活かしながらチームを強化していけるのです。 また「ウィル」というブランド形成やメディア露出などを綿密な設計の上で行い、ファンを獲得し、仲間を増やしているそうです。詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 なぜ、若手の看護師が集まり、定着するのか?(WyL訪問看護ステーション 岩本大希) どんなステーションにするため、どんな人材を求め、どんな採用戦略を取るのか。改めて考えると、ステーションの色がより浮き出てくるかもしれません。 転職者のリアルな声をもっと聞きいてみたいという方は、訪問看護に飛び込みたい看護師を応援するホームケアラインのホームページをぜひご覧ください。 参考:公益社団法人日本看護協会広報部 2020年3月30日ニュースリリース

あなたにオススメの記事

× 会員登録する(無料) ログインはこちら