特集

オンライン診療の現状と訪問看護師として知っておきたいこと

オンライン診療の現状

新型コロナウイルス感染症が蔓延した後、よく耳にするようになった「オンライン診療」という言葉。ニュースでも取り上げられ、今ではオンライン診療用のアプリケーションも登場してきています。さまざまなデバイスを通じて展開されているオンライン診療について、その現状を見るとともに、訪問看護師として知っておきたいことをご紹介しましょう。

オンライン診療の定義や種類

そもそもオンライン診療とはどういったものを指すのでしょうか。2018年3月に厚生労働省が発表した「オンライン診療の適切な実施に関する指針」を参考に、関連する言葉を見てみましょう。

遠隔医療

情報通信機器を活用した健康増進や医療に関する行為のこと。オンライン診療を含む総称的な言葉として位置づけられています。

オンライン診療

遠隔医療のうち、医師と患者間において情報通信機器を通して診察および診断を行い、診断結果の伝達や処方等の診療行為をリアルタイムで行うこと。さまざまな企業がオンライン診療のためのアプリケーションを開発し、医療機関と患者を結びつけるサービスを提供しています。

オンライン受診勧奨

遠隔医療のうち、医師と患者間において情報通信機器を通じ、心身の状態の情報収集を行うことで、疑われる疾患を判断し適切な診療科への受診をリアルタイムで推奨すること。一般用医薬品を用いた自宅療養や経過観察など非受診の勧奨を行うこともあります。ただし、診療ではないため治療方針を伝達することや処方等を行うことはできず、あくまで受診相談という位置づけとなります。現実的にはこの受診推奨のみ行う医療サービスは少なく、オンライン診療における診療前の問診あるいは診療前相談に相当しますが、医療機関によっては具体的な診療科へ受診相談を受け付けているケースも見られます。

遠隔健康医療相談

遠隔医療のうち、医師または医師以外の者と相談者間において、情報通信機器を通じて得られた情報により、一般的な医学的情報や助言の提供、一般的な受診勧奨を行うこと。

遠隔医療

上記4つ以外にも、ICTを活用して医療機関または医師間で患者の医療情報の共有が行われることや、ICTによる業務支援システムを用いることも広義の遠隔医療に含まれます。また、オンライン診療や健康医療相談のサービスとは別に、処方薬の配送や血圧等の生体情報の遠隔モニタリングサービス等、遠隔医療を支援・拡充するサービスも展開されています。

オンライン診療の普及について

特定状況下のみ認められていた遠隔診療

オンライン診療は今でこそ普及しつつありますが、2020年頃まではあまり一般的ではありませんでした。その理由のひとつとして、厚生労働省は「診療とは医師と患者が直接対面して行われることが基本であり、遠隔診療はあくまで対面診療を補完するもの」と位置づけ、特定の条件下でしか利用を認めていなかったことが挙げられます。離島やへき地など医師不足の地域での利用や、相当期間にわたって診療し病状が安定している慢性期疾患の患者から要請があった場合などの条件下だけでは、インフラの整備コストをかけてまで導入する医療機関は少なかったのでしょう。医療の質を確保しつつ、医師法第20条で定められる「無診察治療等の禁止」に抵触しないよう、遠隔医療については慎重に審議をされてきました。その審議を一気に加速させたきっかけが、新型コロナウイルス感染症の蔓延といえます。

きっかけは2020年のオンライン診療時限的緩和

2020年に入り厚生労働省は感染拡大防止策として電話や情報通信機器等を用いた診療について特例措置を出し、同年4月にはオンライン診療の要件や初診対面原則の時限的緩和が行われました。これを皮切りに、オンライン診療に対応できる医療機関側が増加するとともに、医療機関と患者を結ぶシステム構築に一般企業も参入してきたことで、現行のように普及し始めたといえるでしょう。実際に厚生労働省や総務省のデータを参考にすると、2019年7月時点でオンライン診療での算定を届け出た医療機関は約1,300施設と全体の1%程度でしたが、2020年4月以降は増加し約16,000施設と全体の15%程度まで増加しています。

オンライン診療の要件緩和は新型コロナウイルス感染症の感染対策として時限的な措置でしたが、その後厚生労働省より初診からのオンライン診療を恒久化する意向があり、2022年度の診療報酬改定でオンライン診療に係る新たな施設基準が設けられました。同時に、訪問診療における在宅時医学総合管理料にオンライン診療が組み込まれ、在宅医療でも情報通信機器を用いた場合の評価や基準が整備されました。

オンライン診療の課題と可能性

情報通信機器を用いた診療を行うには医療機関側も診療体制やインフラの整備など果たすべきことが多く、すべての医療機関で導入できるとは限らない点、またオンライン診療では対応が困難な疾患や病状等がある点を鑑みると、全般的に普及するというのは難しいかもしれません。しかし、内科や産婦人科、美容皮膚科など特定的な診療科を中心として活用する場面は今後増えてくると予測されます。

また、このオンライン診療は保険診療の枠内での話ですが、保険外診療(自費診療)として医療相談や健康増進等医療の周辺分野にも情報通信機器を用いたサービスが展開され始めています。会員登録し、毎月定額を支払っていれば医師にいつでも電話やチャットで健康相談ができるサービスはその一例です。今後情報通信機器やその技術の発展とともにさらに多様なサービスが展開されていく可能性が考えられます。

訪問看護師として知っておきたいこと

新型コロナウイルスがきっかけとなり、ここ数年で情報通信機器を用いた医療については制度や診療報酬等の整備が加速度的に進んできている中、訪問看護師にとっては今後どのようなことを気に留めておくと良いのでしょうか?

厚生労働省が通知している「オンライン診療の適切な実施に関する指針」では、患者が看護師といる場合のオンライン診療(「D to P with N」)について定めています。訪問看護師にも関係してくるため、オンライン診療に関わる遵守事項や提供体制等については最低限把握するとともに、オンライン診療を行うために使用する情報通信機器やアプリケーション等の基本操作ができる必要があるでしょう。

今後も外来・在宅医療ともに情報通信機器を用いる場面が増える可能性が十分に考えられます。まずは医療者として現状を把握するとともに、診療報酬の動向や遠隔医療に関わるサービス等も逐次確認していくことで、利用者へ適切に情報提供ができるように準備をしておくことが望まれるでしょう。

【参考】
○厚生労働省「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2023年3月一部改訂)
https://www.mhlw.go.jp/content/001126064.pdf
2023/3/3閲覧
○総務省「情報通信白書(令和3年版):コロナ禍における公的分野のデジタル活用」
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r03/pdf/n2200000.pdf
2023/3/3閲覧

編集・執筆: 合同会社ヘルメース

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