特集
不思議&驚きエピソード【つたえたい訪問看護の話】
公開日:2023年9月26日
更新日:2024年1月31日
仕事をしていると、感情的には嫌でも割り切ってやらないといけないことが出てきたり、時に自分の考えが及ばない場面や不思議な場面に遭遇したりすることもあります。「みんなの訪問看護アワード2023」に寄せられた投稿から、理解がしがたい不思議な出来事やぎょっとする驚きの体験エピソードを4つご紹介します。
「虫の知らせ」
不思議な出来事の中にも、故人への想いが感じられるエピソードです。
これは90代の男性療養者A氏の話である。 A氏は呼吸不全状態であり、主に入浴介助のために訪問していた。A氏は非常に知的で厳しい方であった。ケアではA氏のルールがあった。状態の悪化に伴いA氏は入院となり、その後病院で亡くなった。 しばらくして、奥さんは「遊びに来てください」と手紙をくださった。快晴の日、私は訪問してお線香をあげさせていただいた。そしてふと窓をみるとブロック塀の上にカマキリがいた。カマキリはじっと私と奥さんのほうをみている。カマキリの凛々しい目つきはA氏の姿を思い出させた。何よりどうやってここまで来たのか、非常に不思議で奥さんも驚いた。 「虫の知らせ」という言葉がある。これは親しい人の死を予感する意味で使われることが多い。しかし死の予感だけでなく、虫が故人の魂としてやってくるとも言われる。A氏の魂がカマキリとなり来てくれたのだなと思い、私は「ありがとうございました」とカマキリに挨拶をした。 |
2023年1月投稿
「初めての訪問看護の現場での緊急事態」
緊急事態に遭遇しても対応できるのは自分一人ということも。冷静に対応できる平常心の大切さを感じるエピソードです。
初めて訪問看護に異動になり、引継ぎのために2名で訪問。前日に退院したばかりの60代男性宅に訪問したが、声をかけても出てこられずうめき声のようなものが聞こえる。近所に住む男性の兄に助けを求め、玄関の鍵を開けてもらい室内へ。男性は下半身裸のまま倒れ失禁している状態。 初めての対面だったが何とかしなくてはと思い、助け起こし状況を確認した。どうやら就寝前薬を2回分誤って服用したようで、意識はあるが体が動かせない状態になっていたようだった。病院に連絡をして再度入院となった。訪問看護が何かも分かっていない時であり、もし1名で訪問していたらどうなっていただろうかと考えるとひやっとした出来事だった。 |
2023年2月投稿
「夏の日の出来事」
不思議な電話は利用者さんからの心のメッセージだったのでしょうか。
晴れた夏の正午一本の電話があった。「もしもし?」何度言っても無言。 「お名前言えますか?」と何度か問うと電話の向こうで「ううう…」と長い唸り声が聞こえた。 「大丈夫ですか?お名前言えますか?」「うう…」と言った後電話が切れた。 急いで携帯番号を確認すると、入院中の利用者様からだ。 事務の私は看護師に伝え、折り返し電話を掛けてもらうが繋がらなかった。 二日後、その利用者様のご主人が利用料を支払いに来られた。 「奥様のご容態はその後どうですか?」と聞くと、先週亡くなりましたと。珍しくどこからも情報が来なかった為、私達は亡くなられた事を知らなかったのです。 奥様の携帯から電話が掛かってきた事を伝えると、ご主人は電話をかけていないとの事。 あの電話は一体… 看護師たちに厳しかったご主人が帰り際に「私もいつか宜しくお願いします」と言った姿が印象的で何だか奥様の温かい言葉の様にも聞こえました。今でもふと思い出す夏の日の出来事です。 |
2023年2月投稿
「黒光りする同居人」
訪問看護をしていると自宅の環境に驚愕することも。まさにこの出来事はその一例と言えるでしょう。ちょっと衝撃的なエピソードです。
Sさんはアルツハイマー型認知症の利用者で身寄りがなく、1人暮らしです。近隣住民とのトラブルが頻発するため介入しました。訪問すると、カサカサッと黒い影が横切りました。もしやと思い、目を凝らすと廊下・リビング・水回り、家中にゴキブリがうごめいており、「キャッ」と悲鳴を上げました。いつ行っても、ゴキブリがお出迎えしてくれます。私はゴキブリが気になりケアをおえるとすぐに家を出ていく日々が続きました。 カンファレンスで、Sさんの不衛生な自宅環境の改善が必要と考え、殺虫剤でゴキブリを退治した後、自宅の片づけをしようと判断しました。そして決行日、くん煙タイプの殺虫剤を使用した後、扉を開けると、仰向けになったゴキブリが散乱しており声も出ず扉を閉めました。今でもあの光景は忘れません。 その後、悲鳴を上げることを我慢し、片付けを行い自宅環境が改善し、Sさんの家でゴキブリを見ることはありません。今では耐性がつき、動じなくなりました。 |
2023年2月投稿
どんな出来事も冷静に受け止める平常心
今回は人の死にまつわる不思議な出来事やリアルにぎょっとしたエピソードをご紹介しました。稀有なエピソードを聞くと一見他人事のように感じるかもしれませんが、こうした出来事は自分自身にもふいに訪れることがあります。予期せぬ出来事や想像を超える出来事があったとしても、混乱せず冷静に受け止めること、また平常心を保ち対応することが大切だと教訓になりますね。
編集: 合同会社ヘルメース
イラスト: 藤井 昌子