インタビュー

精神科訪問看護師は利用者を孤立させない

精神科訪問看護に特化するN・フィールド。今回は精神科訪問看護で求められていることについて、取締役の郷田泰宏さん、看護師の中村創さん、精神保健福祉士の谷所敦史さんに語っていただきました。(以下敬称略

お話
郷田泰宏
 株式会社N・フィールド 取締役
中村創
 株式会社N・フィールド 精神看護専門看護師
谷所敦史
 株式会社N・フィールド 精神保健福祉士


精神病床でも在院期間が年々短縮化

[郷田]
精神疾患も含め、病気の治療は基本的には病院で行われるものです。しかし入院治療をみると、医療費適正化政策によって入院期間は年々短縮化が進められています。

2010年には18.2日だった一般病床の平均在院(入院)日数は2019年には16.0日に。精神病床においても、2010年に301.0日だった在院期間が2019年には265.8日に短縮されています。

一般診療科も精神科も、病院での治療が終わったら、リハビリテーションなども含めたフォローは在宅で。今、日本の医療はそうした方針で動いているのです。

治療継続と孤立防止

[郷田]
そこで、私たち精神科訪問看護が担うのは、治療の継続です。

精神疾患は、病院での治療が終わればそれで完治というものではありません。慢性疾患に近い側面があり、病院で集中的な治療を受けた後の継続的な治療において、当社のような訪問看護の役割があると考えています。

一方で、精神科訪問看護では、利用者さんを「疾患や障がいのある人」としてみるだけでなく、「地域で暮らす生活者」としてみる視点も必要です。

社会資源と結びつけることで終わらずに

[郷田]
精神の疾患や障がいを持つ人は、いろいろな症状の影響で、どうしても孤立しがちです。そこを、私たち訪問看護師が、デイサービスや就労移行支援事業所など、地域の社会資源との間に入って調整する、孤立させないようにする。

疾患や障がいがある人も、自分たちの居場所を求めています。そういう人々に、居場所や役割を提供していくこと。そして、単に社会資源と結びつけるだけでなく、利用者さんが今どういう状態にあるかという情報提供をすることも、訪問看護師の大事な役割だと考えています。

何かあったときに、利用者さんがすぐに相談できる存在として、私たち訪問看護師がいる。

訪問看護師は、在宅医療の一つのパーツにすぎません。利用者さんを中心に、地域のサポート資源全体で支えていく。そのために、私たち精神科訪問看護を上手に使ってもらえればと考えています。

生活を自分で成り立たせるサポート

[中村]
当社の利用者さんは、約4割が統合失調症系の疾患のある人です。次いで、依存症系、うつなどの感情障害系、パーソナリティ障害系の人が多い傾向にあります。実際に訪問すると、案外、自分で生活できている人が多い印象です。そこで私たちが果たす役割は、生活をご自分で成り立たせることへのサポートだと考えています。

実際に在宅で利用者さんを支援していると、精神科訪問看護に対する医師からの要望は、主に二つあります。一つは、利用者さんが在宅で安定して生活できているかどうかの確認。もう一つは内服状況の確認です。

精神疾患のある人は、ある程度生活ができていても、ちょっとしたことでつまずき、そこから生活がガタガタと崩れてしまうことがあります。私たちはそうならないよう、対処法を一緒に考えたり、部分的に手をお貸ししたりするわけですが、かといってできないことを肩代わりしてもいけない。この調整が、実はいちばん難しいと考えています。

看護師とは異なる側面からの支援

[谷所]
当社では、看護師だけでなく、ソーシャルワーカーや作業療法士も参画し、多職種チームで利用者さんをサポートしています。私はソーシャルワーカーとして、看護師とは異なる側面から、在宅生活を円滑に送れるよう支援しています。

利用者さんには、偏食や過食がある、生活リズムが一定しない、金銭管理ができないなど、生活障害を抱える人も多くいらっしゃいます。経済的支援や地域サービスによる支援が必要でも、それをご自分で見つけるのが苦手な人もいらっしゃいます。そうした人と、支援制度や支援機関などの社会資源とをつないでいくのが、私たちソーシャルワーカーの役割です。

最近は、外来患者のソーシャルワーク担当制を採用していない病院が少なからずあり、そうした病院から「外来患者の障害年金の申請を手伝ってほしい」といった依頼が来ることもあります。

病院と連携して、病院では手が回らないところを請け負い、調整しながら利用者さんの生活を支えていく。地域でそうした役割を担うことも増えてきました。

医療だけでは支えきれない部分を、ソーシャルワーカーがカバーしていく。さらには、ゴミの出しかたや洗濯機の使いかたがわからないなど、小さいようで本人にとっては大きな悩みに、作業療法士が対応し生活の底上げを図っていく。

各職種が強みを生かし、多角的な支援を行うことによって、精神疾患のある人の在宅生活を支えているのです。

記事編集:株式会社メディカ出版

【参考】
1)厚生労働省.「平均在院日数」『平成22年(2010)医療施設(動態)調査・病院報告の概況』2010,22.
2)厚生労働省.「平均在院日数」『令和元年(2019)医療施設(動態)調査・病院報告の概況』2019,21.

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