インタビュー

ともに悩んで孤独な管理者を支える「ステーション支援」の取り組み

孤独な管理者を支える ステーション支援1

訪問看護ステーション数は年々増加し、ニーズの多様化に伴い管理者業務も多岐に渡っています。訪問看護の実務から運営まで、一人で何役もこなす管理者の負担は計り知れません。ソフィアメディでは、そんな管理者を組織でサポートする「ステーション支援グループ」を2020年に設立しました。グループ設立のきっかけや具体的な業務内容について、CQOの篠田耕造さんと、ステーション支援グループリーダーの村山忍さんにお話しいただきます。

ソフィアメディ株式会社
「英知を尽くして『生きる』を看る。」を使命として、首都圏を中心に全国約90ヵ所で訪問看護ステーションを運営。訪問看護や訪問リハビリテーションなど、在宅医療に特化したサービスを提供している。

篠田耕造さん/最高品質責任者CQO(Chief Quality Officer)
公立総合病院、専門病院、地域包括ケアを行う法人で、教育体制や業務プロセス・品質管理に携わりながら、MBA(経営管理学修士)・認定看護管理者を取得。日本看護協会教育委員・学会企画、岐阜県看護協会副会長等を歴任。JNAラダー・教育システム、管理者研修、医療経営セミナー講師などを行う。2022年よりソフィアメディCQOに就任。
 
村山忍さん/ステーション支援グループリーダー
看護師経験25年。ソフィアメディに入社し15年目。総合病院や個人病院に勤務後、訪問看護に携わる。ソフィアメディ2号店の管理者や、新規立ち上げ事業所の管理者を経験した後、ステーション支援グループ リーダーへ。全国を飛び回り管理者をサポートしている。
 
※文中敬称略

管理者と一緒に悩みながらサポート

―ステーション支援グループ設立の経緯や、具体的な活動内容について教えてください。

村山忍さん

村山: ステーション支援グループは、管理者やスタッフからの「ステーションをサポートする体制が欲しい」という声から生まれました。私も管理者になったばかりのころ、新規の利用者様への対応や看護師としての対応はできても人事労務の対応ではわからないことが多く、その都度本部に相談していたので、このニーズはとてもよくわかります。

ステーション支援グループが行っている活動は、簡単に言うと「管理者のサポート」ですね。基本的には新任管理者や新規開設事業所のサポートの割合が高いです。事業所に行ってサポートすることもあれば、オンラインでサポートすることもありますね。

具体的には、新人ナースの同行訪問を含む業務サポート、管理業務のレクチャー、業務マニュアルの整備などを行っています。例えば、人手が足りない事業所に新人ナースを配属するケースが多いですが、人手が足りない事業所は管理者もフルで訪問にまわっていることが多く、新人ナースの育成にかけられるパワーが足りません。そういったところに私も入っていって、一緒に新人ナースを育成していきます。

ステーション支援の業務
ソフィアメディ株式会社「2022年 BEACON OF HOPE」より

篠田:まとめると上の5つが主な業務内容ですが、随時検討・改善を行っています。例えば、「03. 欠員時の業務代行」の活動は現状減っていますね。今はまだ試行しながら実装している段階ですが、病棟でよく行っているような、人員数や稼働率をモニターして稼働率が高いところに人員を充当するしくみを導入したんです。

「上から言う」のではなく一緒に悩む

―「ステーション支援グループ」は、ソフィアメディの中ではどういった立ち位置になるのでしょうか。人員構成についても教えてください。

篠田:ステーション支援グループは、クオリティマネジメント本部という部署に属していて、地域横断の「横軸」としてのサポートを行っています。「縦軸」として、訪問看護事業本部のエリアプロデューサーという存在もいます。地域連携や経営的なサポートについてはエリアプロデューサーが行っていて、我々はスタッフと同じ目線に立ちながらしっかり「お客様第一主義」というソフィアメディの行動指針を保証していく。QC(品質管理)からQA(品質保証)まで行っているイメージですね。

ステーション支援グループのメンバーは、延べ人数で8名です。私も含めて管理者経験者は5名で、専業は村山のみ。村山には全国の事業所を飛び回ってもらっていますが、他のメンバーは管理者やクオリティマネジメント本部の「教育研修グループ」「ウェルビーイング推進グループ」などと兼務しています。兼務者が多いのである程度ビジーにはなりますが、例えば教育研修グループの担当者がステーション支援に関わることで、教育・研修内容のブラッシュアップに繋がる。また、アップデートした教育システムが浸透しやすくなるといった相乗効果もありますね。

―ステーション支援グループとして活動されている中で、どんなことを心がけていますか?

村山: 管理者の率直な気持ちを引き出せるよう、ざっくばらんに会話することを心がけています。例えば、何らかの事情でお客様のご希望に沿った支援が叶わないときや、運営がうまくいかないとき、人間関係のトラブルが起こったときなど、管理者には精神的に大きな負荷がかかります。私もその気持ちがよくわかるので、経験談を交えながら、同じ目線で一緒に悩み、考えてサポートしています。また、新人ナースの同行訪問では、ソフィアメディが大事にしている使命を伝えることも心がけています。

篠田: そうですね。本当に「一緒に悩み、考えること」ことは大切だと思っており、管理者のメンター的な役割として、村山や私、バックオフィスのメンバーが具体的な対応を一緒に検討しています。ソフィアメディの使命は「英知を尽くして『生きる』を看る」です。これを実現するには、高いところから指導をするような姿勢では伝わりません。何が起きて何に困っているのか、それを解決するためにはどうすればいいのか、一丸となって考える。それにより、我々の価値を発揮できると思っています。ステーション支援グループには管理者経験者が多いので、当事者意識をもちつつ、予測的に対応できるところが強みです。

また、管理者になったからこそ味わえるマネジメントの醍醐味ややりがいというものがあります。少しずつでも「自分にもやれた!」という達成感を得られると、「スタッフの育成を頑張ろう」「もう少し地域に根付いた活動をしよう」と、モチベーションアップに繋がっていくんですね。そうした達成感を味わえるようにサポートしています。一つひとつ積み上げながら成長していけば、非常に強い基盤を作れると思っています。

篠田耕造さん

村山: 達成感は、本当に大事だと思います。私が管理者と関わるときも、どんな小さなことでも良い点を認め、伝えるようにしています。小さなことでも認められ、ほめられることを積み重ねていくと、「これでいいんだ」というお墨付きをもらった感じになるようです。

即実践できる知識を伝え、育成期間を短縮

―管理者の人材育成プランに関して教えてください。

篠田: 人材育成はとかく時間がかかるものですが、管理者の育成期間をできるだけ短くするように努めています。訪問看護では高い調整能力が求められますが、説明するだけではそういったスキルは習得しづらいのが現実です。ですので、連携や調整方法、スケジュール管理に至るまで、日常的にある小さな疑問・悩み事を聞き、即実践できる知識を伝えています。これを繰り返すことで、管理者としての自立促進を高めていくんです。

また、現在3段階のマネジメントラダーを作成・考案しています。初めて管理者に着任するメンバーから地域をまとめるマネジャーまで、領域を分けてサポートする体制を目指しているんです。管理者未経験者が圧倒的に増えてきているので、そういったメンバーに対しては村山を中心に開設前からリードしています。

具体的には、全国訪問看護事業協会が作成した訪問看護のガイドライン(※)をベースとして、そこに弊社が必要だと考える項目を追加して使用しています。運営上の指標が145項目あり、それに関連するマニュアルも作っているんです。開設前後に関わらず、この指標を活用して「どこまでできて何が課題か」「何が不安なのか」を確認する流れになっています。はじめが肝心ですし、管理者も不安と緊張の連続だと思うので、開設から約1年間は手厚くサポートするようにしています。

※訪問看護ステーションにおける事業所自己評価のガイドライン

ありがとうございました。次回は、ステーション支援グループが誕生したことによる変化や、スタッフの反応について伺います。

>>後編はこちら
孤独な管理者を支える「ステーション支援」の取り組み 成果&スタッフの反応は?

※本記事は、2023年2月の取材時点の情報をもとに構成しています。

執筆・編集:NsPace編集部

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