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「虚血性心疾患」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
「虚血性心疾患」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
特集
2023年11月28日
2023年11月28日

【在宅医が解説】「虚血性心疾患」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回は虚血性心疾患について、訪問看護師に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 この記事で学ぶポイント 冠危険因子が多ければ虚血性心疾患を念頭に置く虚血性心疾患の症状は労作で出現する一過性の臓性痛だが、非典型的症状を伴うことや、無症候性のこともある症状の不安定化/安静でも軽快しない疼痛/バイタル異常 ─ があれば緊急性が高い 虚血性心疾患とは 虚血性心疾患とは、冠動脈疾患とも呼ばれ、心臓を養っている血管(冠動脈)が何らかの原因で狭窄または閉塞することで、心臓が虚血にさらされ機能や形態が障害される疾患です。虚血による症状があれば狭心症と呼び、虚血が長引き心筋が壊死すると心筋梗塞と呼びます。狭心症から心筋梗塞に移行しつつある、または心筋梗塞を発症した状態は生命の危機であり、緊急対応を必要とします。 虚血性心疾患のリスク 虚血性心疾患の原因となる疾患や状態は「冠危険因子」といわれます(表1)。 胸痛の鑑別 救急部門へ搬送される胸痛患者のうち、約半分は非心原性とされています(表2)1、2)。 消化管疾患では一般に食事・飲水・食後姿勢など経口摂取に関連した症状変化を認めます。ほかにも呼吸器疾患、皮膚骨格疾患、心因性など多くの領域が原因となることがあります。これらのすべてを診断する必要はなく、まずは緊急性を要する虚血性心疾患の判断をつけることが先決です。 虚血性心疾患を疑う症状とその特徴 虚血性心疾患の症状には下記のような特徴があり、胸痛を鑑別する手がかりとなります。 虚血性心疾患の疼痛は内臓痛の特徴を持つ 典型的な症状は、労作時の胸部圧迫感・絞扼感です。皮膚表面などに分布する痛覚神経とは異なり、心臓に分布する痛覚神経は脱髄性で細いため、疼痛の局在や性状が鈍くなります。つまり、痛みの部位を特定することが難しく、「前胸部を中心とした胸の辺り」と表現されます。また疼痛もぼんやりとした「圧迫感」「絞扼感」を感じることになります。 内臓由来の疼痛は一般にこのような特徴を持ち、けがなどで感じる体性痛(部位が明らかで鋭い痛み)と明確に区別されます。 労作で症状が増強し、安静で軽快する 虚血性心疾患では、労作により心筋虚血が生じ、症状が出現します。狭心症では安静により数分で虚血が解除され、胸部症状も軽快します。20~30分の安静でも症状が軽快しない場合は梗塞に至っている可能性が高く、緊急の対応が必要となります。 非典型的症状にも注意が必要 狭心症は非典型的な症状を伴うことがあり、angina equivalent(狭心症相当症状)と呼ばれます。放散痛としての左肩の痛みは有名ですが、それ以外にも心窩部・喉元・下顎・奥歯の痛みや、単なる胸焼けや嘔気として出現することもあります。虚血性心疾患のリスクを持つ患者さんでは、これらの心臓とは一見無関係と思われる症状にも注意が必要です。 無症候性心筋虚血(自覚症状がない)にも要注意 進行した糖尿病患者では心臓自律神経が障害され、これらの症状を自覚しないことがあります。心臓自律神経機能は心電図のRR間隔の呼吸性変動で判断します。感覚障害などの神経障害を伴う進行期糖尿病の患者さんは、このタイプの虚血も要注意です。 虚血性心疾患のその他の特徴 状態が不安定だと緊急性が増す 冠動脈の器質狭窄の有無にかかわらず、最近2ヵ月間以内に発症し、症状の頻度や程度が増強しつつある場合は不安定狭心症と呼ばれます。この状態は心筋梗塞に移行するリスクが高く、原則として緊急の対応となります。 ST上昇がなくても心筋梗塞を生じていることがある 心筋梗塞には心電図でのST上昇を伴わないものがあり、NSTEMI(ノンステミ/non-ST elevation myocardial infarction)と呼ばれます。救急部門に胸痛で搬送される患者はNSTEMIがより多く、予後もより不良と報告されています。 器質狭窄がなくても狭心症をきたしうる 明らかな冠動脈狭窄がなくても、冠動脈が攣縮することで狭窄や閉塞をきたすこともあります。心臓表面を走る比較的太い冠動脈で血管攣縮が生じると冠攣縮性狭心症と呼ばれますが、より遠位の動脈で同様の現象が生じると冠微小血管障害と呼ばれます。 訪問看護でのポイント 患者さんに虚血性心疾患の診断がついている場合は、症状の早期把握と緊急性の判断が重要です。虚血性心疾患と診断されていない場合は、疾患リスクが高ければ上記症状の有無に注意を払う必要があります。 この人は虚血性心疾患を発症しそうか? 表1のようなリスクが多ければ多いほど、虚血性心疾患を発症するリスクが高まります。特に複数の生活習慣病の管理が不十分な場合は要注意ですので、疑わしい症状が出現しないか注意を払う必要があります。 狭心症を疑う症状があるか? 虚血性心疾患を疑う臓性痛、労作や安静による症状の変化、非典型的症状の有無を確認しましょう。無症候性心筋虚血は訪問のみでは判断困難ですが、疑うことが重要です。体調がいつもと異なる場面などで想起できれば、対応の幅が広がるかもしれません。 緊急性があるか? 虚血性心疾患を疑う症状がある場合、症状の不安定化、安静でも軽快しない胸痛、バイタル異常などは緊急事態と考えられます。医療機関への早急な相談と救急搬送をご検討ください。 虚血性心疾患は原則として命にかかわる疾患ですので、確実な診断や悪化の判断にこだわるよりも、疑ったら相談する姿勢が重要です。その際にこれらの手がかりが皆様の参考になれば嬉しく思います。 執筆:岡田 将千葉大学大学院医学研究院循環器内科学四街道まごころクリニック 編集:株式会社メディカ出版 【参考文献】1)高西弘美.「胸が痛いんです」『エマージェンシー・ケア』30(1),2017,29-39.2)日本循環器学会ほか.『急性冠症候群ガイドライン(2018 年改訂版)』17-21.

嬉しかった瞬間エピソード
嬉しかった瞬間エピソード
特集
2023年11月28日
2023年11月28日

嬉しかった瞬間エピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護の現場では、訪問先の利用者さんやご家族と接するなかでさまざまなエピソードやドラマが生まれています。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、利用者さんやご家族から感謝や信頼を得ることができ、「嬉しい!」と感じたエピソードを5つご紹介します。 「その人の本当が見えた時」 利用者さんと距離を縮めることができた時の喜びは大きいものですよね。利用者さんからの信頼は何よりも大切な宝にもなることがわかるエピソードです。 訪問看護を始めて3ヵ月の時の利用者様の話。初めての担当者会議では、その方は厳格な方であった。自宅療養で看護師が来ることは理解され介入となったが、初回介入時は30分間相手にしてもらえず。その方の奥様は毎回、私達スタッフが帰るのを見送って下さる。「主人がいつも酷いことを言ってすいません。」と毎回頭を下げられる。私は訪問が終わると、どうしたら分かってもらえるのか涙がでて、先輩方に相談の日々であった。何が原因なのか考えた時に、まずは自分の関わり方を振り返った。そう思ったのも、自分自身で身に覚えがあるからだった。3ヵ月が経ったある日の訪問日から、表情が柔らかくなったのが分かった。体調のこと以外にも、プライベートな事まで話され、時には私の事にまで質問をされることも。そこで「やっと訪問看護師として認めてもらえた!」とすごく嬉しかったのを覚えている。そこで私は、病棟看護師と訪問看護師のケアが違う事に気づかされた。この利用者様のおかげで看護師としてだけではなく、人として成長できた。今ではご家族とともにお手紙もいただき、私は感謝でいっぱいだ。 2023年1月投稿 「実感を取り戻す看護」 利用者さんの心身を安らげることができた嬉しさと、看護の意味を改めて感じさせられるエピソードです。 複数の既往が増悪し、入院していた方が自宅退院を果たした。体調が悪くなってから入浴はできなかった様だが、元々は三度の飯より入浴を好まれる方で無類の長風呂好きだったそうだ。本人はかなり消耗しており、ソファに腰掛けているだけでも眉間には皺が寄り、肌は冷たく青ざめている。衣服からのぞく痩せ細った腕と紫斑が入院生活の壮絶さを物語る。大好きな入浴をさせてあげたかったが、本人にとってあまりにも負担が大きいため足湯を提案した。久々の暖かいお湯に足をくぐらせると「ああ」と声が漏れた。眉間からは皺が消え、常に全身に取り巻いていた強張りが自然とほぐれていくようだった。声は掠れた声で「いいですね」と静かに笑ってくれた。足湯を終えると血の巡りが戻り、青ざめた肌は薄いピンク色になった。熱と潤いを閉じ込めるように保湿クリームを塗り衣類を整える。「本当にありがとう」小さな声ではあったが、ぼくにしっかりと届いた。 2023年1月投稿 「家族の一員の様なお付き合い」 利用者さんやご家族からこうしたお誘いをいただけると、「人としても信頼されている」と嬉しく感じるとともに励みになるエピソードです。 訪問看護を行う中で、軽症な方から重症な方、在宅での看取りも考えなければならない方など、さまざまな方にお会いします。訪問の介入を長く行っていると、お客様やご家族様から「一緒に旅行に行きたいですね」、「食事に行けたらいいですね」と言っていただけることがあります。こういう風に、私たちと一緒に過ごしたいと思っていただけていることに、とても嬉しく思います。 2023年2月投稿 「本人・家族の希望を叶える~『あきらめない』チームの行動力~」 多職種で支援する在宅医療の強みを活かし、連携して利用者さんの希望を叶えることができた事例です。 余命数ヵ月の癌終末期にあるA氏が「ドライブしたい」と発した言葉から外出支援が行なえた事例です。A氏の家族は夫と高校生、中学生の子供2人でした。訪問看護師は今を逃すと外出支援ができなくなると考え、主治医に外出許可を得ました。しかし自宅は集合住宅の2階にあり、移動が困難な状況。ケアマネジャーに相談し福祉用具業者と階段スロープを設置し車いす移動を試みましたが急坂になってしまい断念。そこで訪問リハビリと相談し、介護用担架が提案され移動のシミュレーションを実施しました。外出当日は家族が担架での移動をし、スタッフは介助に回りました。2時間の外出にて桜を見たり、ドライブすることができました。「最高の先生とスタッフさんです」とベッドに戻った際には思わず全員で拍手をして喜びあいました。「A氏の希望を叶えたい。家族と良い時間を過ごしてほしい」というスタッフ間の共通した思いと行動力が実現に至ったと感じています。 2023年2月投稿 「多職種とともに」 病識がなかなか持てない利用者さんへ根気よく向き合い続けることで、多職種での支援にもつながりうまくいった事例です。 精神障害をもつ40代男性。病名に納得がいかず、病院を転々とし治療継続には繋がらなかった。就労意欲はあるが、数週間で辞めることを繰り返していた。精神科訪問看護導入後、定期的な治療含め生活面について一緒に確認、承認していったことで、1年程就労継続できたこともあった。しかし、強い責任感や不安、対人面でのストレス、金銭管理の乱れなどが影響し、就職しては辞めることを繰り返していた。仕事をしたい気持ちは強く、自分は精神障害者じゃないという思いがあったが、看護師が勧めた障害者職業センターへの相談を受け入れることとなった。センター職員とは情報共有を重ね、ジョブコーチによる仕事量・人間関係などの職場調整が入ったことで、「辞めたい」「新しい仕事を探しました」と言いながらも辞める前に相談してくれるようになってきている。違う職種の人たちと一緒に支援することで、自分の考えも人脈も幅が広がったと思う。 2023年2月投稿 利用者さんの望むケアを提供する喜び 利用者さんの生活空間に入っていく訪問看護では、多職種と協力しながら、利用者さんやご家族と信頼関係を築くことが大切です。しかし、信頼を得ることや利用者さんが望む支援を実現するのは簡単なことではありません。 「どうすれば信頼してもらえるのか?」「どうすればよりよい支援を実現できるのか?」 難しいからこそ、それらを達成できたときに喜びを分かち合えるのも訪問看護の醍醐味なのかもしれません。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子 

褥瘡の基礎知識 発生原因・予防的スキンケア
褥瘡の基礎知識 発生原因・予防的スキンケア
特集 会員限定
2023年11月21日
2023年11月21日

褥瘡の基礎知識 発生原因・予防的スキンケア・在宅療養生活でのポイント

褥瘡は、「身体に加わった外力は骨と皮膚表層の間にある軟部組織の血流を低下、あるいは停止させる。この状況が一定時間持続されると組織は不可逆的な阻血性障害に陥り、褥瘡となる」と定義されています。 高齢療養者の多くは、自分で体位変換が行えない、長期間の寝たきり状態、栄養状態が悪い、皮膚が脆弱、などの状況にあります。そのような状況で皮膚に圧迫や摩擦、ずれなどの刺激が繰り返されると、褥瘡になるリスクが高まるため日々のケアが重要です。そこで今回は、皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表の岡部美保さんに、褥瘡の予防的スキンケアを中心に解説いただきます。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 褥瘡の発生要因〜マイクロクライメット〜 褥瘡の発生要因 褥瘡の発生には、圧迫やずれ、摩擦、低栄養などが複合的に影響しています。褥瘡は、寝たきり状態や脊髄損傷などの知覚障害による、筋肉の廃用性萎縮で骨突出部位などに生じる創傷です。自力で体位変換が行える、姿勢を変えることができる療養者は、傷んだ組織も修復されていきます。一方、基礎疾患の進行や体調不良による食事摂取量の減少、ストレスなどによる食欲低下によって栄養状態が低下すると、傷んだ組織は修復されず、次第に悪化して褥瘡を発症します。 在宅療養者:低栄養在宅療養者:関節拘縮 また、トイレや車椅子などへの移乗動作や姿勢の崩れ、ベッドの背上げ・背下げによって生じる姿勢の崩れ、体位変換やおむつ交換などの際には、臀部や仙骨部・背部に「ずれ力」が働きます。適切な姿勢保持や体位変換が行われないと、組織には持続的に圧力も加わり組織障害が進行します。 褥瘡は、主に圧迫により生じる創傷ですが、ずれや栄養障害などの要因が複合的に加わることで発症につながります。 仙骨部にポケット形成を伴う褥瘡仙骨部に感染を伴う褥瘡 さらに、褥瘡の発生や治癒にはマイクロクライメットが影響しているといわれています。マイクロクライメットとは、「皮膚局所の温度・湿度」と定義されています。 褥瘡発生要因の新たな概念:マイクロクライメット管理 褥瘡の予防や治癒の促進には、温度の上昇を予防して湿度を透過させることが重要であるという、マイクロクライメット管理を良好に行うケアが注目されています。 皮膚局所は、体温が高くなると代謝が亢進し、酸素や栄養が消費されて不足しがちになります。その状態で外力を受けると組織耐久性が低下し、わずかなずれや摩擦で皮膚を損傷し、褥瘡を発症しやすくなってしまうのです。また、温度が高くなると汗をかきやすくなります。発汗により皮膚は湿潤状態になり、バリア機能や組織耐久性が低下。さらに通常よりも摩擦力が高くなることにより、わずかなずれや摩擦によって褥瘡の発生リスクは高くなります。 湿度が上昇する要因は、発汗に限りません。失禁による皮膚の湿潤もあります。おむつを使用している皮膚は、高温多湿な環境にあります。おむつ交換の間隔が長くなると、尿はアルカリ性に変化し皮膚への刺激が強まります。また、便に含まれる消化酵素も皮膚を損傷するリスクを高めます。皮膚を健康な状態に保ち、バリア機能を高めるためにも、温度と湿度の管理は重要です。 マイクロクライメット管理には、マイクロクライメット機能が付いたエアマットレスの使用や、吸湿性の高いシーツなどを用いた寝床環境の調整、透湿性に優れたおむつの使用、定期的なおむつ交換などをおすすめします。 【マイクロクライメット管理の主なポイント】 居室内の温度と湿度の調整寝具、寝衣による体温の調整おむつや尿取りパッドの透湿性、適切な使用体圧分散マットレスの通気機能、柔らかさシーツや皮膚に接触するクッションカバーなどの素材 褥瘡予防のためのスキンケア 褥瘡のスキンケアは、褥瘡発生や治癒遅延の要因となる、摩擦、ずれ、湿潤から皮膚を護るケアが必要です。特に、ドライスキンの療養者は、皮膚のなめらかさや柔らかさが失われるため、摩擦やずれなどの外部の刺激によって皮膚が損傷しやすくなります。皮膚の乾燥を防ぐスキンケアを行いましょう。 脆弱な皮膚は、外力を加えないケアが大切です。洗浄の際は力や摩擦を与えないように優しく洗浄しましょう。保湿の際も、保湿剤の塗布時に摩擦やずれが加わる可能性が高くなります。保湿剤はローションタイプのものを使用して、一度にたくさん塗布せず、少量を両手に薄くのばし、擦らず優しくなでるように塗布します。摩擦やずれの予防には、保湿剤や皮膚皮膜剤、撥水性保護クリームを用いた、保護が大切です。排泄物による汚染が予測される部位には、あらかじめ撥水性保護クリームを用いて、排泄物の付着から皮膚を保護します。骨突出部の皮膚は毎日観察し、強い圧迫やマッサージを避けましょう。 摩擦やずれは、頭側挙上時や車いすへの移乗時、体位変換時など、すべての生活場面で生じます。頭側挙上では角度調整や背抜きを行い、できる限り皮膚の表面を損傷しないように留意することが大切です。それには、皮膚の表面を保護すること(「保護のスキンケア」)と、皮膚に何かを貼付して皮膚を覆うケアをおすすめします。皮膚に貼付するものは、安全なもの、スキントラブルをおこさないもの、皮膚の観察がしやすいもの、皮膚を圧迫しないもの、取り扱いしやすいものなどを、療養者の状態や生活に応じて選択します。 褥瘡の予防的なスキンケアはすべての療養者を対象とし、外部からの刺激に負けない健康な皮膚を保つための「基本的なスキンケアの継続」が極めて重要です。 褥瘡予防のケア〜療養生活でのポイント〜 褥瘡を予防するためには、外力(圧迫やずれ力)の大きさを減少させること、外力の持続時間を短縮することが原則です。褥瘡ケアというと局所のケアに目が向きがちですが、褥瘡の予防・治癒促進・再発予防、すべての時期において外力の除去が重要です。 圧迫・ずれ・摩擦   療養者に対する移動の介助は、皮膚への圧迫やずれ・摩擦が生じることによる褥瘡発生はもちろん、介護者の腰痛の原因にもなります。「引きずらない」「擦らない」「本人の動きに合わせる」介助や、リフトを活用した移乗などを実施しましょう。一人で身体介助を行う場合も少なくありません。療養者の身体や安全を守るためにも、トランスファーグローブやトランスファーシートなどの福祉用具の使用を検討することも必要です。 おむつや着衣の交換時、シーツ交換の際は、摩擦が生じやすくなります。おむつ交換の際、尿取りパッドを引き抜くと、仙骨部や尾骨部の皮膚には強い摩擦とずれが生じるため要注意です。また、排尿後に長時間おむつを着用していると皮膚は浸軟します。さらに排泄物を多量に吸収したおむつは、膨潤し硬くなります。そのような状態で座位姿勢になった場合、仙骨部や尾骨部には圧迫が加わりますし、ぬれて蒸れたおむつで過ごすことは不快なため姿勢も崩れやすくなり、ずれと摩擦も生じることに。排尿後は速やかにおむつ交換を行うことが大切です。同時に、療養者の排尿パターンや排尿回数・量にあったおむつを選択しましょう。 体位変換とポジショニング 褥瘡の発生や悪化を予防するために、体位を変えることで骨突出部の皮膚・組織に加わる外力を少なくし、外力の加わる時間を短くする方法が体位変換です。ポジショニングは、体位変換の基本を踏まえつつ、身体各部の相対的な位置関係を整え、身体を安定させてより快適な姿勢の保持を行う方法です。局所への圧迫を減少させ安楽な仰臥位をとるためには身体のねじりやゆがみを取り、できるだけ広い面積で身体を支える「体圧の分散」が重要です。 日頃より、褥瘡好発部位や骨突出部、過去に褥瘡を発症した部位、得手体位により常時マットレスと接している部位の皮膚は、注意深い観察と定期的なアセスメントを行いましょう。発赤を認めた場合は速やかに体圧分散ケアの見直しを行う必要があります。 また、療養者に家族が行う体圧分散ケアは、介護者が療養者に言葉を交わしながら触れること(タッチング)で、かけがえのない家族のぬくもりを感じ合う場でもあります。療養者にやすらぎや安心感を与え、心身の疼痛や苦痛を緩和するなど、褥瘡悪化や予防の観点以外にも大きな効果があると考えます。 栄養  療養者の栄養ケアは、低栄養になってから始めるのではなく、「日頃から低栄養を予防する」という意識をもって支援しましょう。在宅で低栄養状態にある療養者は、自立している高齢者にも見られます。ひとり暮らしで調理が面倒になる、歯の喪失により噛めない、食の嗜好の変化や病状により摂取栄養素が偏っている、などの原因で低栄養が生じている場合も。療養者の食生活は、テーブルの上に置かれている食べ物、ゴミ箱の中、冷蔵庫の中からも知ることができます。療養者の嗜好や嚥下状態、経済性などを考慮した上で栄養補助食品を活用し、偏った栄養素を補う、不足したエネルギーを補充することも必要です。 皮膚科医、WOCナースとの協働 皮膚科医や皮膚・排泄ケア認定看護師(WOCナース)の知識と技術の提供・協働によって、専門的な褥瘡ケアの視点を補完していくことも重要です。専門性の高い他職種の協力を得ることが、在宅における褥瘡ケア看護の質の向上と療養者・家族のQOLの向上につながります。 執筆: 岡部 美保皮膚・排泄ケア認定看護師/在宅創傷スキンケアステーション代表1995年より訪問看護ステーションに勤務し、管理者も経験した後、2021年に在宅創傷スキンケアステーションを開業。在宅における看護水準向上を目指し、おもに褥瘡やストーマ、排泄に関する教育支援やコンサルティングに取り組んでいる。編集: NsPace編集部 【参考】〇岡部美保(編)『在宅療養者のスキンケア 健やかな皮膚を維持するために』日本看護協会出版会.2022.

訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
コラム
2023年11月21日
2023年11月21日

介護職員養成&通学支援【訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 東海北陸ブロック、松下 容子さんの活動記です。介護職員向けの喀痰吸引等研修や、三重県で2023年度より導入されている医療的ケア児の通学支援の取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:松下 容子看護学校を卒業後、総合病院に勤務し、2000年から訪問看護に従事。2011年 訪問看護認定看護師資格取得2012年 四日市社会保険病院 訪問看護ステーション管理者(現:四日市羽津医療センター)2021年~現在 みんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市 管理者 全国で1番の会員数を誇る東海北陸ブロック 私は、日本訪問看護認定看護師協議会の理事に就任して4年目になります。担当業務は総務で、主に総会・同時開催研修会と交流集会の計画、開催等に関わっています。研修会の講師や内容については、会員の皆様からのアンケート調査に基づき、皆様のご希望を反映できるよう、心がけています。 例えば、2023年6月の総会後の同時開催研修会は以下のような内容で実施しました。 第1講「認定更新申請の情報提供」5年目の訪問看護の認定更新を済まされた会員からの情報提供第2講「法律制度を活用したコミュニケーション向上術」看護師であり、社労士事務所代表の方によるご講演 次に、私が所属している東海北陸ブロックの活動状況を紹介します。当ブロックは静岡、愛知、岐阜、三重、福井、富山、石川の7県から構成され、会員数は101名となりました(2023年10月時点)。協議会全体での会議とは別に、ブロック内で年に2回の研修会と交流会、年に数回の役員会を開催しています。役員は、ブロック長をはじめ各地区代表の10名で構成されており、研修会をはじめとした企画・運営を取り仕切っています。9月末には、今年度最初の研修会として、「在宅ケアにおける倫理」をテーマに開催しました。 喀痰吸引等研修講師として10年目 個別で行っている講師活動についてもご紹介します。私はこれまでの10年間、毎年喀痰吸引等研修の講師を務めています。喀痰吸引等研修とは、「たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)」と「経管栄養(胃ろう、経鼻経管栄養)」を行える介護職員等を養成するための研修です。また、この介護職員を現地で指導するための指導者研修(看護師)もあり、いずれも研修内容は講義と演習で構成されています。そのほか、これまでに介護職員数名の実地研修の指導者としても関わらせていただきました。 喀痰吸引等研修会演習風景 今後もこの活動を通して介護職員の喀痰吸引等に関する手技の維持・拡大と喀痰吸引等提供の質確保に努め、介護職員を含めた多職種による協働体制の構築に尽力していきたいと思います。 県初、医ケア児の通学支援開始 医療的ケア児への支援活動についてもご紹介します。四日市市には特別支援学校があり、多くの医療的ケア(人工呼吸器や喀痰吸引、胃ろう管理等)を必要とする児童が通学をしています。しかし、ほとんどの児童はスクールバスへの乗車が困難な状況です。スクールバスに乗れない児童は家族送迎を余儀なくされ、家族の負担は非常に大きいものとなっています。例えば、母親による往復の送迎に1時間程度かかる場合、母親の仕事の時間が削られているケースはもちろん、就業を諦めざるを得ないケースもたびたび見かけられます。 三重県では、そんな家族の負担を軽減すべく、2023年度に「三重県医療的ケア児通学支援事業」が試行され、現在、当ステーションでは週に2回、朝の通学支援に協力させていただいています。業務内容は、指定された福祉タクシーに同乗し、運転手さんと協力して安全に児童を特別支援学校まで送り届けることです。道中、車内での児童の状態観察と喀痰吸引の必要があれば実施し、学校到着後に担任教員に母親からの伝達事項や車内での状態を引き継ぐという流れになっています。 まだ開始したばかりの事業であり、実際、受け入れのできる訪問看護ステーションも、まだまだ少ないのが現状です。障害があっても健常な児童と変わらず、平等に学習機会が確保され、必要な支援のもと、児童の成長、発達と家族へのサポートがますます促進されるよう、今後も微力ながら関わっていきたいと考えています。そして、誰もが豊かに暮らせる地域に発展することを心から願っています。 * * * この記事をお読みいただいている訪問看護師の皆様にも、ぜひ安心・安全の提供と、自分らしい生活・ありたい姿の実現を見据えながら、療養者様やご家族に寄り添っていただけたら幸いです。 ※本記事は、2023年10月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

高齢者の栄養ケアマネジメント~食支援・栄養指導~【セミナーレポート前編】
高齢者の栄養ケアマネジメント~食支援・栄養指導~【セミナーレポート前編】
特集 会員限定
2023年11月21日
2023年11月21日

高齢者の栄養ケアマネジメント~食支援・栄養指導~【セミナーレポート前編】

2023年8月25日、9月8日に開催したNsPace(ナースペース)オンラインセミナー「超高齢社会における栄養ケアマネジメント~通所施設や在宅における低栄養への挑戦~」。ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニーとの共催でお届けしました。登壇してくださったのは、高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生。訪問看護師が知っておきたい利用者さんの食事、栄養摂取に関する知識を紹介いただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、低栄養が高齢者に与える影響や栄養管理の考え方、ノウハウをまとめます。 ※約45分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】吉田 貞夫先生ちゅうざん病院 副院長/沖縄大学 客員教授、金城大学 客員教授高齢者医療、高齢者の栄養管理、認知症ケアなどを専門とする医師・医学博士。日本静脈経腸栄養学会 認定医、日本病態栄養学会 専門医、日本臨床栄養学会 指導医をはじめ、数多くの資格を取得。栄養経営実践協会の理事も務める。医師として患者の診療にあたるかたわら、全国で年間80件以上の講演も行っている。 サルコペニア、フレイルと低栄養の関係性 超高齢社会を迎えた今、低栄養と高齢者のサルコペニア、フレイルとの関係がますます注目されています。最初に、サルコペニアとフレイルについて簡単にご説明しましょう。 サルコペニア筋力が落ち、筋肉量も減少して、日常生活に必要なさまざまな身体機能が低下した状態のことをいいます。「筋力の低下」「骨格筋量の減少」「身体機能の低下」という3つの要素があると覚えてください。サルコペニアになると、転倒や骨折、ADL低下、肺炎のリスクが高まります。フレイル運動能力が低下した虚弱な状態。転倒や骨折、ひいては入院、死亡リスクも高まります。 低栄養は、こうしたサルコペニア、フレイルにつながる可能性があり、早期発見することが重要です。しかし、筋肉量を測らずに低栄養の判定をすると、検出率が半分ほどに減ってしまうことがわかっています。 近年、GLIM(低栄養診断国際基準)でも、サルコペニアの判定をする上で、骨格筋量の評価がより重要視されています。そこで、血液検査の値(血清クレアチニンとシスタチンC)を使って骨格筋量を計算し、サルコペニアや低栄養をもっと簡単に測定*できるよう研究開発しました。 ただ、専用の機械がない訪問看護の現場で筋肉量を測るのはなかなか難しいもの。そんなときは、人間の体の中で最も筋肉の割合が多い部位である「ふくらはぎ」の周囲長を測ってみてください。周囲長が減っている場合は、全身の筋肉量が減っていると判断できます。この方法は、サルコペニアの可能性の有無を判断する場面でも活用できます。 ふくらはぎ測定基準 男性        女性        ふくらはぎ周囲長(cm)<33 <32 ※BMIが25~30(kg/m2)の場合は測定値から3㎝を引く。BMIが30(kg/m2)以上の場合は測定値から7㎝を引く。*参照元:Assessment of sarcopenia and malnutrition using estimated GFR ratio (eGFRcys/eGFR) in hospitalised adult patients, Clinical Nutrition ESPENhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35331529/ 事例で考える栄養管理の方法 ここで具体的な事例を挙げて、栄養管理のアプローチについて考えてみましょう。60代後半の男性、Aさんの事例です。 モデルケース:Aさん脳梗塞を発症した60代後半の男性。現在の体重は52kg。リハビリテーションに取り組み、自宅に帰りたいと考えている。 Aさんに必要なエネルギー量 Aさんの1日に必要なエネルギー量は、1日安静にしていたとしても1,300kcalに上ります。リハビリテーションに取り組んだ場合はプラス250kcal、点滴で栄養を摂取していた期間に減ってしまった体重を戻そうとする場合はさらにプラス500kcalをとらなければなりません。つまり、1日あたり合計2,050kcalを摂取する必要があります。 Aさんが抱える栄養摂取の課題 しかし、Aさんはおかゆをはじめとした嚥下調整食を食べています。嚥下調整食は水分が多いため、その分容積が大きくなり、頑張って食べても1日に1,200kcalをとるのが限界です。このような低栄養の状態が続くと、サルコペニアが進行し、ADLは低下。嚥下機能もさらに悪化し、誤飲性肺炎を起こしたり、食事をとれなくなったりといったリスクも高まってしまいます。 Aさんへの栄養管理のアプローチ そこで、まずは2,050kcalから体重を戻す分のエネルギー量を引いた1,550kcalを最低でもとることを目指します。そのための方法としては、訓練をして食形態を上げること。食事の水分量が減れば、食べられる量が増えます。それから、ゼリーやドリンクなどの補助食品を使うのも効果的です。 食べる目的に応じて内容を変えて 栄養管理の内容は、その利用者さんの「食べる目的」をふまえて検討します。体調の改善を目指す方、現状を維持したい方、看取りフェーズに入っている方。食べる目的が異なれば、食事内容やリハビリテーションの実施の有無が変わってきます。 改善を目指す方先ほど挙げた事例のAさんのように、今より元気になりたい方は「摂取量>必要量」のバランスになるようエネルギーをとる必要があります。食形態を変えるリハビリテーションを継続し、栄養補助食品、MCT(中鎖脂肪酸)や粉末たんぱく質を併用しましょう。現状を維持したい方現在の体の状態をキープしたい方は、「摂取量≒必要量」になるようにエネルギーをとれれば問題ありません。ただし、体重が減少していないかこまめに観察してください。栄養補助食品を使うこともありますが、長く継続できるかどうか考えて提案しなければなりません。看取りフェーズの方エネルギー摂取の目標は「摂取量≒必要量」ですが、最も優先すべきは利用者さん、ご家族のご希望です。ニーズを見極め、また継続可能な栄養管理の方法を模索して提案します。 なお、栄養管理にぜひ活用してほしいのが、「中鎖脂肪酸」や上記でも触れている「栄養補助食品」です。 食欲改善効果が期待できる中鎖脂肪酸 中鎖脂肪酸は、近年人気が高まっているココナッツオイルの主成分で、低栄養の方にぜひ摂取してほしい成分です。理由は、食欲を亢進させる消化管ホルモン「グレリン」は中鎖脂肪酸と結合することで活性型になるため。つまり、中鎖脂肪酸をとれば、食欲を改善させられるかもしれません。 栄養補助食品を使う場合、1ヵ月は継続を 低栄養の方の栄養管理によく使われる栄養補助食品は、摂取期間に注意してください。「認知症患者の栄養に関するESPENガイドライン」によると、栄養補助食品の使用を開始したら、栄養状態に改善傾向が見られても1ヵ月間は続けたほうがよいとされています。「栄養状態が悪くなる前」の状態にまでしっかりと戻してから使用をストップしましょう。 ICTを活用した栄養指導 栄養指導は、管理栄養士が行うのが理想的です。しかし、管理栄養士が在籍していない訪問看護ステーションはまだまだ多く、専門家による栄養指導を受けられないケースは珍しくありません。そこで活躍するのが、「ICTを活用した遠隔栄養指導」です。私も、遠隔診療が始まる以前の2013年頃、沖縄県栄養士会が共同で「遠隔栄養指導のモデル事業」を実施しました。今後、全国で遠隔栄養指導のしくみがどんどん構築されていくことを願っています。 >>後編はこちら高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇Sadao Yoshida , Yuki Nakayama , Juri Nakayama , Nobumasa Chijiiwa & Takahiro Ogawa .(2022). Assessment of sarcopenia and malnutrition using estimated GFR ratio (eGFRcys/eGFR) in hospitalised adult patients. Clin Nutr ESPEN , 48:456-463. DOI: 10.1016/j.clnesp.2021.12.027〇Dorothee Volkert , Michael Chourdakis , Gerd Faxen-Irving , Thomas Frühwald , Francesco Landi , Merja H Suominen 6,…&Stéphane M Schneider. (2015). ESPEN guidelines on nutrition in dementia. Practice Guideline, Clin Nutr. 2015 Dec;34(6):1052-73. DOI: 10.1016/j.clnu.2015.09.004

マインドフルネス
マインドフルネス
特集
2023年11月21日
2023年11月21日

マインドフルネスとは?効果や方法・医療現場での活用について解説

ストレス軽減や感情のコントロールを目的とし、自己認識力を高めるといわれる「マインドフルネス」は、近年ビジネスパーソンに取り入れられるケースが増えてきました。医療現場でも注目されはじめているほか、訪問看護の利用者さんが興味を持たれている可能性もあるため、訪問看護師の方は知っておくとよいでしょう。この記事では、マインドフルネスの効果や方法、医療現場での活用などについて詳しく解説します。 マインドフルネスとは マインドフルネスとは、「今この瞬間」の感情や状況などを受け入れ、過去や未来にとらわれない姿勢を持つこと、ありのままの自分の思考を観察することです。 例えば、何らかのトラブルが起きたときに、「どうしよう」「叱られるかもしれない」「以前にもこのようなことがあった」など、未来や過去につながる思考になることがあります。そうなれば強いストレスを感じる上に、トラブルへの対処が遅れたりミスを重ねたりするでしょう。マインドフルネスを実践することで、トラブルの深刻化や複雑化を防ぐとともに、精神的なストレスを軽減できる可能性があります。 また、脳の活性化や集中力の向上など、さまざまな効果が期待できるともいわれています。 マインドフルネスが医療に応用されるまでの経緯 マインドフルネスはストレス管理やメンタルヘルスの向上に効果があるとされているため、当初は主に「ストレス緩和」に焦点を当て、看護師や医師が受ける職業上のストレス管理に活用されていました。 また、近年はマインドフルネスが不安や抑うつの症状緩和やがん患者のメンタルヘルスの改善などに役立つ可能性があることを示す論文が報告されるようになり、医療現場でも活用されるようになってきました。 マインドフルネスの医療の現場での活用例 マインドフルネスは、医療の現場で次のように活用されています。 医療従事者のストレスの軽減 医療機関では、医師、看護師、カウンセラー、セラピストなどの医療従事者向けにマインドフルネスのアドバイスが行われることもあります。マインドフルネス瞑想、ストレス管理のアドバイスなどにより、長時間勤務、患者とのエモーショナルな接触(悲しみ、怒り、不安など、激しい感情の動きを伴うコミュニケーション)、大きな責任感に由来するストレスの軽減が期待できます。 睡眠の質向上 ストレスが大きい状況下では睡眠の質が低下し、医療の安全性に悪影響を及ぼす可能性があります。マインドフルネスは不眠症の症状を軽減するのに役立つことがあるため、ストレスで睡眠不足になっている場合は試してみましょう。 患者の病気に伴う精神的不調のケア 患者は病気や治療に伴ってしばしばストレスや不安を感じます。マインドフルネスは、患者がリラックスし、精神的な安定を維持するのに役立ちます。例えば、うつ病による精神的な落ち込み、難治性の疾患に罹患した際の精神的なショックなどのケアが可能です。 マインドフルネス瞑想のやり方 マインドフルネス瞑想は次の流れで行います。 座った状態で目を閉じますゆっくりと息を吸って吐くことに集中します途中で雑念が浮かんできたら、それをあるがままに観察します呼吸に意識を戻します これを1日15~25分を毎日行いましょう。雑念に対する観察においては、過去を振り返ったり未来のことを考えたりしてはいけません。今、この瞬間の思いだけを観察します。 マインドフルネスの注意点 アメリカの国立衛生研究所によると、マインドフルネスはリスクが少ないと考えられていますが、一部の人は不安や抑うつなどが生じる可能性があります。6,000例以上を対象とした研究においては、約8%の被験者がネガティブな経験を報告しています(※)。マインドフルネスが自身に合わないと感じたときは速やかに中止しましょう。 ※厚生労働省『「統合医療」に係る 情報発信等推進事業』「瞑想とマインドフルネスについて知っておくべき8つのこと」より ほかに知っておきたい心身のリラックス方法 ストレスを軽減するための取り組みは、マインドフルネスだけではありません。ほかにも次のような方法があります。 呼吸法 ストレスを受けているときは普段よりも呼吸が早くなり、酸素を十分に取り込めなくなります。次の呼吸法で呼吸を整えましょう。 「1・2・3」と数えながら鼻からゆっくりと息を吸い込みます。このとき、おなかも一緒にふくらませましょう「4」で息を軽く止めます「5・6・7・8・9・10」と数えながら口から息をゆっくりと吐きます。このとき、おなかも一緒にへこませましょう 漸進性筋弛緩法(ぜんしんせいきんしかんほう) ストレスを感じると無意識に体に力が入ります。漸進性筋弛緩法は、次のように動作することで体の緊張をほぐす方法です。 顔や手、肩などに力を入れて5秒程度キープしますストンと力を抜いて10~20秒ほどキープします 力を抜いた瞬間、筋肉が緩んで、温かさを感じれば成功です。 * * * マインドフルネスを実践することで、そのときに起きたトラブルへの対処が可能になるほか、ストレスを軽減できる可能性もあります。また、疾患に伴う精神的苦痛の緩和にも期待できます。今回、解説した内容をご自身のストレス管理や利用者さんへのアドバイスにぜひ役立ててください。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。 【参考】〇国立精神・神経医療研究センター 精神保健研究所 行動医学研究部「こころの健康を保つために大切なことhttps://www.ncnp.go.jp/nimh/behavior/anxiety/selfcare.pdf(2023/9/28閲覧)〇大阪府こころの健康総合センター「三つ折りリーフレット メンタルヘルス 気軽にリラックス」(2015年3月発行)https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/13282/00000000/relax2015.pdf(2023/9/28閲覧)〇Elizabeth A. Hoge, MD1; Eric Bui, MD, PhD2; Mihriye Mete, PhD3; et al(November 9, 2022)「Mindfulness-Based Stress Reduction vs Escitalopram for the Treatment of Adults With Anxiety Disorders: A Randomized Clinical Trial」2023;80(1):13-21. doi:10.1001/jamapsychiatry.2022.3679https://jamanetwork.com/journals/jamapsychiatry/article-abstract/2798510(2023/10/6閲覧)〇NCCIH「8 Things to Know About Meditation and Mindfulness」https://www.nccih.nih.gov/health/tips/8-things-to-know-about-meditation-and-mindfulness(2023/9/28閲覧)〇一般社団法人マインドフルネス瞑想協会「マインドフルネスとは?」https://mindfulness-association.com/mindfulness/(2023/9/28閲覧)〇川崎市.川崎市健康福祉局精神保健福祉センター「『からだ』と『こころ』のリラックス」(2021年改訂)https://www.city.kawasaki.jp/350/cmsfiles/contents/0000117/117031/singatakoronachirasi(kadadatokokonorelax).pdf(2023/9/28閲覧)

訪問看護の夜間緊急対応/頭痛のケーススタディ
訪問看護の夜間緊急対応/頭痛のケーススタディ
特集 会員限定
2023年11月14日
2023年11月14日

訪問看護の夜間緊急対応/頭痛のケーススタディ【セミナーレポート後編】

2023年8月18日に開催したNsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「訪問看護の夜間緊急対応~頭が痛い!待てる?待てない?~」。訪問看護の現場で活躍する診療看護師の坂本未希さんを講師に迎え、頭痛を訴える利用者さんのトリアージに必要な知識を、ケーススタディを交えながら教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、緊急コールを受けた際に活用すべきツールの紹介と、ケーススタディの内容をまとめました。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら訪問看護の夜間緊急対応~頭痛の種類と特徴~【セミナーレポート前編】 【講師】坂本 未希さん看護師、保健師/ウィル訪問看護ステーション江戸川 所属宮城大学 看護学部看護学科を卒業後、長崎県の病院での勤務を経て、訪問看護に携わるべくウィル訪問看護ステーション江戸川に入職する。訪問看護師として勤務する傍ら、国際医療福祉大学大学院に進学し、2019年3月には修士課程を修了。診療看護師の資格を取得した。 緊急コールを受けた際に使える3つのツール 緊急コールを受けた際の対応には、3つの選択肢があります。緊急度の高い順に、・救急車を呼ぶ・看護師が訪問して状態確認やケアをする・利用者さんやそのご家族に電話で対応方法を説明するです。選択においては、以下のツールを使って検討してください。 緊急性を判断する「ABCDE」アプローチ 緊急性、重症度を判断するにあたり、最初に「気道」「呼吸」「循環」「意識」「体表」の5つから成る「ABCDE」を聞いていきましょう。 各項目を電話口で確認する際のコツは以下のとおりです。 A(airway):気道「会話や呼吸はできますか」「顔色はどうですか」「胸の動きはどうですか」など、わかりやすい言葉で質問しましょう。 B(breathing):呼吸「呼吸のリズムは早いですか、遅いですか」「肩を上げて苦しそうな呼吸をしていないですか」など、わかりやすい言葉で質問しましょう。 C(circulation):循環血圧や脈拍を測れない場合も、末梢が冷たくなっていないか、チアノーゼがないかなどを確認します。 D(dysfunction of CNS):意識声かけに対しての反応の有無だけでなく、普段と比べてどうかも判断のポイントになります。 E(exposure):体表冷や汗をかいているか、体熱感があるかなど、すぐに確認できる変化を聞いてみましょう。 現病歴を確認する「OPQRST2」 「ABCDE」で目立った問題がない場合は、より詳しく問診していきます。このときに意識してほしいのが、「時間軸」と「症状経過」です。時間の経過に伴って症状が悪化している場合は注意が必要になります。 この時間軸と症状経過に関する情報を漏れなく聞くためには、「痛みのOPQRST2」という現病歴をチェックするためのツールを使うのがおすすめです。 前編(「訪問看護の夜間緊急対応~頭痛の種類と特徴~」参照)で説明した「見逃せない頭痛=二次性頭痛」の判断材料として、頭痛の発症様式は極めて重要な情報になります。例えば、くも膜下出血はハンマーで叩かれたような頭痛が突然起こり、発症後すぐにピークを迎えて、以降ずっと痛みが続くのが一般的。このほかにも、突然発症の頭痛は緊急性が高いケースが多いので、見逃さないでください。 一方、一次性頭痛に分類される片頭痛や緊張性頭痛、群発性頭痛は、痛みに波があることが多いです。 既往歴を確認する「AMPLES(アンプルズ)」 現病歴と併せて、基礎情報も確認しておきましょう。その際に使えるツールが「AMPLES」です。 アレルギーや内服薬、既往歴、社会歴に加え、カルテには載っていない最終の食事や月経も大切な問診項目です。「AMPLES」は、通常の初回訪問時にしっかりと調べておくよう心がけてください。 「OPQRST2」と「AMPLES」を使って得た情報をふまえて、鑑別疾患や、今現れている症状がこれからどういう経過をたどるかを考えていきます。ただし、利用者さんやご家族がパニックに陥っている場合、電話の問診で必要な情報をすべて聞けない時があります。その際は、より丁寧なやりとりを心がけてください。判断に迷う場合は出動しましょう。 ケーススタディ ここからは、ご紹介した知識やツールを使ってケーススタディをしていきます。頭痛を訴える利用者さんのアセスメントと対応について考えてみましょう。 電話での問診、および訪問による状況の確認 利用者さんの妻から、上記のような緊急コールが入りました。まずはカルテの記載を見つつ、AMPLESを使って既往歴をチェックします。 糖尿病や脂質異常症があること、18時頃に最後の食事をとったことなどがわかりました。 続いて、OPQRST2で現病歴を聞いていきます。 夕食後に急に頭痛を訴えはじめたそうですが、「急に」がどれくらい急なのかがよくわかりませんでした。ただ、突然発症の頭痛は緊急性が高く、また辛い痛みで臥床しているとのことで、出動を決めます。 そして、看護師が現場で確認したABCDEは以下のとおりです。 いつもよりぼんやりしていて、意識レベルはJCSI-3に分類されます。また、汗をびっしょりかいており、熱感もありました。 さらに、訪問後に改めて現病歴を問診すると、数日前に感冒症状があったことが新たにわかります。電話での問診ではわからなかった痛みの場所は頭部全体で、随伴症状は39℃の発熱。脈拍は100で頻脈、血圧はやや低下。項部硬直が見られ、頭痛は徐々に強くなり、意識レベルは少しずつ下がる傾向にありました。 アセスメント 以上の情報をふまえ、私が最初に鑑別疾患に挙げるのは髄膜炎です。眼痛があったり、ペンライト法で陽性だったりすれば緑内障も挙げますが、今のところは認められないので除外します。 このように、アセスメントではまず二次性頭痛を除外できないかを考えましょう。そして、除外しきれなければ一次性頭痛については考えず、二次性頭痛として報告を上げます。 「SBAR(エスバー)」を用いた報告 報告する際は「SBAR」というツールを利用します。 このケースは頭痛が主訴なので、診療所や病院には「◯◯さんから緊急連絡があり、訪問しました。頭痛の利用者さんです」と最初に伝えます。続いて、背景=現病歴について。バイタルサインで特に気になる点があれば報告します。今回であれば、体温や血圧、項部硬直ですね。その上で、評価と提案は「髄膜炎の可能性があるので報告しました。緊急搬送を考えていますが、いかがでしょうか?」と伝えるとよいでしょう。 なお、確認した所見をすべて報告する必要はありません。重視すべき所見をピックアップして端的に伝えましょう。もし不足があれば医師から質問があるので、それに回答し、一緒にアセスメントしていけば大丈夫です。 * * * 夜間待機を担当する際、「うまく情報を拾えないかもしれない」「正しい判断ができなかったらどうしよう」といった不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。今回ご紹介したトリアージのノウハウが、みなさんの自信や安心につながることを願っています。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

【医師に聞く】地域医療と訪問看護2
【医師に聞く】地域医療と訪問看護2
インタビュー
2023年11月14日
2023年11月14日

【医師に聞く】地域医療と訪問看護~接遇の大切さと100点満点を目指さない理由~

20年以上にわたり神奈川県横浜市金沢区とかかわりを持ち、当地に田川内科医院を開業した田川暁大先生。地理的・医療的環境が異なるさまざまな地域でキャリアを積み、糖尿病、ぜんそく・COPDなどの分野で患者さんの在宅療養に心を傾けています。そんな田川先生に、地域医療や訪問看護への想いを語っていただきました。 田川内科医院 院長田川 暁大(たがわ あきひろ)先生1998年山形大学医学部卒業、2004年横浜市立大学大学院医学研究科博士課程修了。2016年より現職。医師としてのキャリアを神奈川県内各地のさまざまな医療機関で積み、呼吸器内科・糖尿病内科を中心に診療するクリニックを横浜市金沢区に開業。専門性を生かし、患者さんやご家族と一緒に考えながら実行可能で継続できる治療を推進している。コロナ禍においては自院でのワクチン接種や発熱患者の受け入れにも積極的にかかわる。日本内科学会認定医・総合内科専門医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本糖尿病学会専門医、日本糖尿病協会糖尿病認定医。 患者さん一人ひとりへの接遇を大事に —まずは、地域の患者さんとかかわる喜びや、心がけていることについて教えてください。 開業したのは2016年ですが、横浜市金沢区内の複数の病院で20年来医療に従事してきました。そのため、何年も前に別の病院で診察した患者さんが来院なさるケースがあります。新型コロナワクチン接種で当院を受診した方に、「実は20年前に別の病院で診ていただきました。あのときはありがとうございました」と言われたり、「ここはあのときの田川先生のクリニックなんじゃないかなと思って建物の前を通っていたんです」といった話もうかがったり。患者さんにそんなふうに言っていただけるのは嬉しいですね。 そもそも病院自体が「行きたい場所」ではなく、嫌な医師なら来院しませんから。「何かあればまたこの病院にかかりたい」と思っていただけるような適切な対応・接遇、何より信頼を得ることが大事だと、スタッフとも常々話しています。 田川内科医院の外観(左)と受付の様子(右) どの地域でも最新の標準治療を提供するために —地域医療について課題を感じることはありますか? 私のいる金沢区は非常に医療環境に恵まれており、呼吸器も糖尿病も、当院のように専門医が在籍しているクリニックが複数あります。加えて区内には横浜市立大学附属病院や横浜南共済病院、県立循環器呼吸器病センターといった基幹病院もあり、各診療科に専門医が複数いる環境です。 一方、高齢化や過疎化が懸念される地域ほど専門医が少ない傾向にあると感じています。そういった地域では各分野の知識が更新されづらくなり、標準治療の提供も難しくなってしまう可能性があります。 今後、より地域医療に求められるだろうと感じているのが、各科の医療水準の均衡化と考えます。専門医が少ない地域・いない地域でも最新の標準治療が提供できるように、非専門の先生と協力していく必要があります。もちろん、我々専門医の研鑚や積極的な発信が必要なのは言うまでもありません。 —訪問看護師に関しても同様のことが言えるでしょうか。 そうですね。みなさん本当に真摯に患者さんと向き合っておられますが、例えば糖尿病に関して「血糖値に応じてインスリンを何単位」といった、「かつては当たり前だったが今は違う」知識に基づいてお話されている訪問看護師さんもいらっしゃることは事実です。もちろん、「今は違うんですよ」とご説明をしますが、比較的情報が入ってきやすい大きな病院と異なり、お一人で訪問することが多い訪問看護ステーションでは、どうしても情報更新が難しいケースがあるのかなと感じます。 標準治療の提供のために、訪問看護師さんにも積極的に学んでいただければと思いますし、我々も必要に応じて情報提供を続けていきたいと思っています。 敬意をもって患者さんに接する大切さ —患者さんとの接し方や医師への連携について、アドバイスいただけないでしょうか。 忙しいとき、多くの医療者は自分が伝えたいことを一方的に話してしまいがちです。しかし本当に重視すべきは「患者さんに正しく意図が伝わる」こと。そのために私は丁寧な言葉を選ぶよう心掛けています。丁寧に話すだけで、早口ではなくなりますから。 また、医師・看護師に限らず医療従事者のなかには、患者さんに対して高圧的だったり、逆に子どもをあやすように接したりする人がいます。私はどちらも違うのではないかと思っています。おすすめしたいのは、敬意をもって患者さんに接すること。そうすると患者さんのちょっとした違いに気付いたり、貴重な情報を患者さんから引き出せたりするものです。 とくにご高齢の方は皆さん我慢強く、体調の変化をあまり訴えない傾向があります。しかしそこに病気のサインが隠れている可能性もあり、「おやっ」と感じることがあればぜひ医師と連携してほしいですね。 100点満点の生活改善は目指さない —先生は呼吸器と糖尿病がご専門で、生活習慣が症状に影響する疾患の患者さんを多く診ていらっしゃいます。安定した在宅療養を継続するために重要と考えていることを教えてください。 「100点満点を目指さない」ことでしょうか。85点くらいで十分ですね。年齢を重ねるほど、できないことが増えてくるので、ご本人・ご家族と医療者とで「落としどころ」をすり合わせて共有することが重要です。 具体例を挙げると、たとえば「医師に制限・禁止されている食べ物を食べてしまった」と患者さんに打ち明けられたとします。それが絶対にNGなものでなければ、どこまでなら減らせるか患者さん自身と相談します。このとき、私はまず患者さんの発言を受け入れるようにしています。そして患者さん自身が決めた目標を達成できるようがんばってもらい、結果が出たら一緒に達成を喜ぶんです。 そこで、「じゃあ次はもう少し制限しましょう」…とは言わず、「これを継続しましょう」と伝えます。「本当にそれでいいの?」と思うかもしれませんが、結果が出ると患者さんは楽しくなり、ご自分から量を制限するようになります。そうなったらしめたもので、患者さんの行動変容につながっていくんです。 訪問看護師さんが気軽に患者さんの情報を共有していただけたら、もっとアドバイスができると思いますし、どこが「これだけは守ってほしい点=85点」なのかを一緒に検討することもできるでしょう。患者さんと長く接している訪問看護師さんからの情報は医師にとって貴重な気づきになります。これからも、一緒に地域医療を支えていきましょう。 ※本記事は、2023年9月の取材時点の情報をもとに構成しています。 取材・執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

ノーリフティングケアのコスト&導入法
ノーリフティングケアのコスト&導入法
インタビュー
2023年11月14日
2023年11月14日

在宅の介護・医療に導入が難しい…は誤解? ノーリフティングケアのコスト&導入法

前編では、介護側の腰痛を防ぐ「ノーリフティングケア」の普及に努める理学療法士の下元 佳子さんに、リフトを導入するメリットについて伺いました。今回は、ノーリフティングケアの導入を悩んでいる要介護者やご家族への説明のしかたや、訪問看護ステーションの管理職がやるべきこと、そして、下元さんが考える今後の課題や展望などについて伺いました。 >>前編はこちら知っておきたいノーリフティングケア 看護師の腰痛予防や利用者の拘縮緩和も ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 〇プロフィール 下元 佳子(しももと よしこ)さん 理学療法士。17年間病院に勤務した後、合資会社オファーズを設立。訪問看護、訪問介護、子どもの通所介護の事業所を運営。「二次障害を引き起こさない福祉用具ケア」を普及させるため、一般社団法人ナチュラルハートフルケアネットワークを設立し、代表理事を務める。高知市内に拠点を置き、福祉用具の展示·相談、人材育成のための研修等を行っている。 ※文中敬称略 ノーリフティングケアの導入コストの考え方 ―「在宅介護ではノーリフティングケアは無理」と考える利用者やそのご家族もいるかと思います。そう思われている方には、どのように説明されているのでしょう。 下元: 私が携わる訪問看護ステーションでは、2割強の方がリフト利用者です。導入を職員が当たり前のように考えており、介護士や看護師がリフトを必要だと判断すれば、事業所のノーリフティングのリーダーである理学療法士に伝え、一緒に要介護者の自宅に訪問します。そこでメリットや使い方を説明した上で、リフト導入につなげる、といった連携ができています。 要介護者やそのご家族が、在宅での導入は難しいと思う理由はいろいろあります。1つは、「コストがかかる」と思われる点です。確かに福祉用具を購入すると導入時に一定料金がかかりますが、訪問介護をはじめとした人的ケアになると、回数を重ねるごとにお金がかかります。週3回、2人のヘルパーが訪問するよりも、リフトの導入と1人のヘルパーが訪問するほうがかかる費用は安いのです。 ただし、障害児者の場合は、地域によって負担金が異なります。行政から福祉用具の費用が支給される県もありますが、高知県はあまり条件がよくありません。例えば浴室と寝室用にリフトを購入すると、自費負担額が200万円ほどかかるケースも多くあります。でも、実際に導入したご家庭のお母さんに話を聞くと、「介護する自分の腰痛が酷くなって病院やマッサージに通うのなら、早く購入したほうがいい」とおっしゃっていて、お金の使い方は考え方次第だなと感じました。また、厚生労働省による生活福祉資金貸付制度もあり、こうした制度を活用すれば、ほぼ利子がかかることなくお金を借りることができます。 ―老々介護など、介護されるご家族には高齢者の方もいて、操作が難しそうと思う人もいるかと思いますが、どのように説明されていますか。 下元: 基本の使い方を覚えれば、力もいらず、テクニックやコツも要らないのがリフトのいい点です。上・下のボタンしかないので、テレビのリモコンよりも操作は簡単。「シートを体に装着するのが難しそう」とおっしゃる人には、「おむつ交換やお洋服の着替えよりはるかに簡単ですよ」とお伝えします。すると、無理だと思う理由がなくなって試してくださる。ご家族にも乗っていただくと「わ~、気持ちいい」とおっしゃって、導入につながりやすくなります。 話すだけではイメージが湧かないので、リフト利用者に許可をいただき、実際の利用風景の動画を撮影して、導入に悩む方に見せるようにもしています。その際、可能な限り、同年代や同じ疾患がある要介護者の動画を選んで見せるようにしています。そうすると、「これなら活用できるかも」と思ってもらいやすくなるんです。 「部屋のこの辺りにリフトがあると困る」「このくらいの姿勢しか取れないから、吊ることができないと思う」など、要介護者一人ひとり異なる事情に耳を傾け、一緒に解決していく姿勢が大事だと思います。「使えない」「無理そう」という壁は、本人や家族自身が作られているように思うので、その壁を取っ払っていくことが大切ですね。 なお、リフト以外の福祉用具についても、それとなく興味をもっていただけるように工夫しています。要介護者を動かしやすくなるベッドシートや、するっと滑ってラクに動かせる安価なグローブを使って動かす、といったことを、あえてご家族がいらっしゃる場で行うと、「それは何ですか?」とあちらから興味を持って聞いてくださる。「これなら簡単かも」と思ってもらえます。 独自の介護が子どもに悪影響を及ぼすことも ―医療的ケア児の場合には、ご高齢の利用者とはまたコミュニケーションの取り方が変わってくるように思います。アドバイスいただけますか。 下元: 医療的ケア児の保護者の中には、介護士や看護師に対し、「こんな風にやってください!」と強い口調でおっしゃる方もいらっしゃいます。お子さんを誰よりも長く介護されているので、「この向きで抱っこして、こうやってご飯を食べさせてほしい」など、自分流の介護方法を介護士などに求めていらっしゃるんですね。でも、専門家から見れば、「側弯や股関節の脱臼など課題や本人の今後を考えると、介護方法を変えた方が良いかな」と思うことも少なくありません。 でも、そのように頑なになられる理由は、「自分が頑張らなきゃ」という状況に追い込まれ、孤独感を抱えながら試行錯誤してこられたからですよね。この状況を解消するためには、もっと早い段階から専門職である我々が、正しい介護知識をお伝えすべきなのだと思っています。私自身、高知県内の支援学校はほぼすべて周り、「こうした抱っこのしかたは筋肉を緊張させるんですよ」などと知識を伝えています。 看護師や介護士は、プロとして親と一緒に子どもにとってベストな介護方法を考え、実践していくことが大事だと考えています。その方法の1つとして、「リフトの活用が子どもの安定した介護になる」という認識につながればいいと思いますね。 ―実際に導入された人は、どんな風に活用されているのでしょう。 下元: うちの施設でリフトを導入された方の介護者の最高齢は80代の女性で、杖を突いて歩かれる要介護1の方でした。98歳のお母様を102歳の寿命を全うされるまで在宅で介護。トイレ、浴室、居室もすべてリフトを設置し、入浴もトイレも介助できていました。ティルト・リクライニング車いすや介護用ベッド、玄関に昇降機を導入するなど、たくさんの福祉用具を積極的に活用され、介護ヘルパーは不要とおっしゃるほどで、介護保険が余っている状態だったのです。人的サービスから介護プランを組んで福祉用具を導入すると、介護保険料が足りなくなるケースがありますが、福祉用具の活用から介護の方法を考えるというのも1つの手だと思います。 ―リフト利用者やそのご家族の現状を伺いましたが、「在宅だから導入が難しい」と考えている訪問看護師さんも多いかと思います。下元先生の考えや取り組み、訪問看護師さんへのアドバイスをお願いいたします。 下元: リフトのような大きな福祉用具になると、訪問看護側に経験がないと、どのリフト会社を選べばいいのか分からないというところでつまずきます。導入までの意思決定は難しいと思うので、福祉用具の企業のリフトに関する知識がある人に相談し、アドバイスをもらうといいと思います。 また、リフトの導入実績がある福祉用具のレンタル会社を探して相談するのもいいでしょう。1ヵ月だけ利用して、合わなければやめることもできます。 管理者は腰痛予防の体制を整えることが大事 ―訪問看護ステーションの管理者がノーリフティングケアを導入しようと考えたとき、何から始めてどんな流れで進めばいいのか、アドバイスをいただけますでしょうか。 下元: いきなりリフトの導入に取り組むのではなく、管理者がまずやるべきことは、腰痛予防の体制を整備することです。リフトは介護の手段に過ぎません。目的は、介護する人たちの腰痛を防ぐこと。つまり「リスクマネジメント」が重要になります。 例えば、スタッフに「負担になっている業務をあげてほしい」と伝え、心身の負担になっていることを出してもらいます。「要介護者のAさんの移乗がとても厳しく、いつ一緒に倒れてしまうか分からない」「人工呼吸器を装着しているBさんの家はとても狭くて、吸引するときの姿勢がとてもつらい」など、出してもらった負担はすべてヒヤリハットになるので、それを一つひとつ解決する方法やしくみを考えます。現場の人たちだけで解決するのが難しいときは、ケアマネジャーに伝えて担当者会議の議題に挙げられるような組織の体制を整えることが大事です。 リスクマネジメントにつながる「教育」も大事になります。リフトやシート、グローブといったアイテムの使い方を教えるだけではなく、「今の時代は、要介護者を抱え上げてはいけない」ということを、スタッフがきちんと理解するまで教育する必要があります。 看護師や介護士という職業はその道のプロであり、お手本にならなければいけません。誰が見ても「この人たちがやっていることなら、マネしても健康を損なうことはない。大丈夫」と思っていただく必要がある。そのためにも、介護における体の使い方に関するトリセツのような教材をつくればいいと思います。うちの施設でも、新入社員が入ってきたら、つくった教材を使って2時間ほどかけてリーダーが説明します。それを受講してから現場へ入っていくルールになっています。 また、厚生労働省が出している腰痛予防の指針に、要介護者を持ち上げるための重量制限について記載されています。例えば、60kgの男性だったら抱えていいのは24kgまで。女性だったら14kgなので、要介護者が子どもであっても抱えてはいけない場合があります。 参考: 〇厚労省の職場における腰痛予防対策指針及び解説https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000034et4-att/2r98520000034mtc_1.pdf また、リフトもトランスファーボートも、使える対象者の基準があります。こうした基準に沿って管理者はルール化し、リスクマネジメントを心がけることが必須だと思います。 ―今後の課題や展望を教えてください。 下元: 年々、介護現場では人材不足が深刻になっています。特に高知県は高齢化率が全国で2番目に高く、人口は3番目に少なく、国が危機感を持っている2040年代の状態に片足を突っ込んでいる状況です。そうした人材不足の危機感もあって、先立ってノーリフティングケアを実行しています。施設には9割近く導入されましたが、訪問看護はまだ進んでおらず、広げていきたいと思っています。 いずれにしろ、高知県が先がけてやっていても、全国的にノーリフティングケアが当たり前になっていかない限りは、いつまでたっても保険衛生現場の状況は変わりません。ぜひ、ノーリフティングケアの必要性を知り、訪問看護の場でも広げていただきたいと思います。 ※本記事は、2023年8月時点の情報をもとに構成しています。 執筆: 高島 三幸取材・編集: NsPace編集部

訪問看護のやりがいエピソード
訪問看護のやりがいエピソード
特集
2023年11月14日
2023年11月14日

訪問看護のやりがいエピソード【つたえたい訪問看護の話】

仕事は生活するお金を稼ぐために必要な手段のひとつですが、人生のうちの多くの時間を占めます。充実感・自己肯定感を得るためにも、仕事のやりがいは大切です。今回は、「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、やりがいをテーマとしたエピソードを5つご紹介します。 「訪問看護を、私の一生の仕事に、後押ししてくれたO氏」 この人のために何ができるか?看護師を職業として選んだ理由や看護師としての初心を思い返すエピソードです。 「外の景色見てもらおうよ」「外に出て風を感じてもらおう」私たち、訪問看護を始めてまもないナース3人は、ALSで数年間寝たきり、人工呼吸器つけた70代のO氏を、外に連れ出す計画を立てました。呼吸維持のため、アンビューバッグ。万が一のため、足踏み式吸引機。移動の為のストレッチャーを、準備して、近くの神社へ。紅葉の綺麗な時期でした。数年ぶりに外に出たO氏は、後日パソコンの指先の操作で、「楽しかった」「気持ちよかった」と感想を述べてくれました。別日には、公園にも出かけました。またクリスマスには、3人で持ち寄った楽器でミニコンサートを、ベッドサイドで開催しました。もう亡くなってしまいましたが、その時撮った写真は、今でも私を初心に帰してくれます。これは、私の20年以上も前の大切な思い出です。今では、スタッフも10人以上の大きなステーションに成長しました。あの時の原動力は、今と違って時間にもゆとりがあったからうまれたのかも知れません。しかしながら、若いスタッフにあの情熱は確実に受け継がれていると感じています。嬉しいことに、この街にも、訪問看護が着実に根付いてきたようです。 2023年2月投稿 「『最期まで面倒見る』って言われたけれど…」 利用者さんの選んだ最期の過ごし方とその日常に、訪問看護として関われる喜びを感じるエピソードです。 100歳を超える女性が退院。主介護者は息子さん。脳梗塞での入院で、病院からは療養型をすすめられ「うちで最期まで面倒みますよ」と言われたが、息子さんは自宅退院を希望。経口摂取も難しく、年齢的にもいつ何があってもおかしくないといわれたものの、そろそろ3ヵ月が過ぎる。表情が穏やかになり、訪問入浴で笑顔もみられ、訪問リハで拘縮も緩和してくる。息子さんは看護師からのケアの指導に「我流だったけど、プロはやっぱり違う」と大満足。「お母さん、お家はいいねぇ。退院できて、年も越せて本当に良かったねぇ」と優しく語り掛ける息子さん。母は言葉では返事できないが、温かい笑顔で返す、そんな日々に訪問看護とリハで関わっている。 2023年2月投稿 「日常を支えること」 人の生は有限であり、何気ない日々の尊さと時間の大切さを実感させられるとともに、その生を支援できる訪問看護のやりがいを感じるエピソードです。 「誕生日おめでとう」「ありがとう」か細い声ではあるが、Aさんが笑みを浮かべ、そう返した。年の瀬に末期がんを宣告され、ひと月半が経つ。徐々に口数が減り表情が乏しくなり行く状況で、少し先の目標を掲げながら伴走を続けてきた。クリスマスを迎える。新年を迎える。そして、誕生日のお祝いをする。それは決して特別ではない当たり前の日常。私たちはそんな日々を積み重ねながら人生を歩んでいるのだと思う。しかし、高齢になり病気を患うと、それまで当たり前だった日常はそうではなくなってしまう。私が考える看護師の役割とは、その人にとって当たり前の日常を送れるよう手を差し伸べること。感情を表出したり、季節を感じたり。Aさんと接して、よりその大切さを感じた。今日もAさんの看護に向かう。いつものように挨拶を交わすとAさんの顔に笑みが浮かんだ。その傍らで誕生日プレゼントのガーベラが、色鮮やかに咲いていた。 2023年2月投稿 「生きる意欲を失いかけた方へ伴走する看護」 自分らしくできないならもう自分ではない…。病気は時に人の尊厳や生きる意欲をかき消してしまうこともあります。ただそうなってからも、病気に打ち勝つ努力をされた利用者さんやご家族と、それを支援し伴走し続けた投稿者さんには感動を覚えます。 妻のM様と二人暮らしの90歳代のE様。入浴前後には「行ってきます、行ってらっしゃい」「ただいま、おかえり」と声を掛け合ったりお二人のやり取りを見ているとお互いを大切にしていることがうかがえる素敵なご夫婦。E様は元国語教師、M様は父が大手デパートの役員で裕福な家庭のお嬢様。E様は末期膀胱がんで膀胱タンポナーデを繰り返し、膀胱留置カテーテルが挿入された。重度大動脈弁狭窄症による失神発作も頻回に認め介護を受けることが多くなり「死にたい」という発言も聞かれるようになった。訪問看護ではE様の意思決定に伴走し、E様はM様と自宅で暮らす選択をした。1日3回訪問をしてまずは身体的側面を整え、お二人の文化・社会的側面を意識した関わりを続けた結果、病状も以前より安定し入浴も再開。趣味の読書や晩酌もできるようになりE様らしさを取り戻した。現在もお二人は自宅で暮らし訪問看護はその暮らしに伴走している。 2023年2月投稿 「『看護はアート』と考えられた訪問看護」 訪問看護という仕事は、たくさんの色を重ね合わせて作り上げていくものなのかもしれません。そんな仕事へのやりがいや自己の成長を感じたエピソードです。 学生のころ、「看護はアート」とナイチンゲールが述べたと習った。病院で働いていたころはそう思えなかった。しかし訪問看護師として働き始め、その人らしさを守れるように、生活を多角的に看る看護を考え始めて、「看護はアート」であると理解できるようになった。認知症の独居の患者には、内服を確実にできる工夫を考えるほか、生活状況・火の元の管理や、訪問販売で不要な契約をしていないか等ケアマネと家族と連携して考えた。看取りのがん患者には医療提供はもちろん、ルート類でつまずかない室内配置を考えたり、本人や家族それぞれの思いを吐露できるよう介入したり、看取りの後悔をご家族が軽減できるようエンゼルケアを一緒に行ったり、自分なりに工夫した。訪問看護は患者と家族をつなぎ、介護・福祉を通して地域にも貢献できる仕事だ。ナイチンゲールの述べたことを理解するのに看護師になって何年もかかったが、訪問看護師になって成長できたと思う。 2023年1月投稿 なぜ訪問看護に携わるのか? 「なぜ今の仕事を選んだのですか?」「仕事のやりがいは?」 聞かれてはっきりと答えることができる人は実はそう多くないのかも知れません。今回それぞれのエピソードでやりがいや充実感も感じ取れますが、それは投稿者さんにとっての答えでしかありません。ではあなたが訪問看護をする理由は何ですか?エピソードを通じ、一度自分の中で振り返る機会になれば幸いです。 編集: 合同会社ヘルメースイラスト: 藤井 昌子

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