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受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年5月29日
2024年5月29日

受賞作品漫画「幸せとは<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、川上 加奈子さん(よつば訪問看護リハビリステーション/神奈川県)の審査員特別賞エピソード「幸せとは」をもとにした漫画の後編をお届けします。 「幸せとは」前回までのあらすじ嚥下機能の低下に伴い、肺炎を繰り返していた利用者のともみさん。長男の圭介さんと次男の裕介さんは、医師から胃ろうの造設と施設の検討を提案されましたが、ともみさんの「うちに帰りたい」という言葉を受けて悩んでいました。長男の圭介さんから電話で相談を受けた川上さんは…。 >>前編はこちら受賞作品漫画「幸せとは<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 幸せとは<後編> 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:川上 加奈子(かわかみ かなこ) よつば訪問看護リハビリステーション(神奈川県)ともみさんの「だってずっと幸せだから」の言葉を聞いた瞬間に、「やられた!胸が突き抜かれた!」と思いながら、「みんなの訪問看護アワード」が頭をよぎり、この感動をエピソードにして、また銀座に行かなければ!と思っていました(笑)。願いが叶って審査員特別賞に選んでいただいたとわかった時には、一番にともみさんと息子さんたちに報告しました。圭介さんは「本当にあのエピソードが受賞したんですか!すごいなぁ。ねえ!あなた(ともみさん)の話が選ばれたんだってさ」とおっしゃり、皆さん喜んでくださいました。最近はケーキもつぶして食べられるようになってきていたため、表彰式の翌日にはケーキを3種類持っていき、「喧嘩しないで食べてね」とご報告に行きました。その後訪問に行った際には、「全部のケーキを少しずつ食べさせてもらったの。チョコレートは苦かった。チーズケーキは久しぶりに食べておいしかったけど、やっぱりショートケーキが好き。でも一番あんこが好き」と素敵な笑顔を見せてくださいました。 >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年5月28日
2024年5月28日

受賞作品漫画「幸せとは<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、川上 加奈子さん(よつば訪問看護リハビリステーション/神奈川県)の審査員特別賞エピソード「幸せとは」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 ※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。 幸せとは<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「幸せとは<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:川上 加奈子(かわかみ かなこ) よつば訪問看護リハビリステーション(神奈川県) [no_toc]

新卒採用の意義&スタッフとのコミュニケーションで心がけていること
新卒採用の意義&スタッフとのコミュニケーションで心がけていること
インタビュー
2024年5月28日
2024年5月28日

新卒採用の意義&スタッフとのコミュニケーションで心がけていること

新卒訪問看護師を積極的に受け入れている「医療法人ハートフリーやすらぎ」。常務理事で統括管理責任者の大橋 奈美さんに、新卒採用をすることの意義や経営・運営面で気を付けていることなどを伺いました。 大橋 奈美(おおはし なみ)さん医療法人ハートフリーやすらぎ 常務理事、統括管理責任者。看護学校卒業後、総合病院等に勤務。2004年に医療法人ハートフリーやすらぎに入職。自身も現役の訪問看護師。日本訪問看護認定看護師協議会 代表理事。医療法人ハートフリーやすらぎ:https://www.heartfree.or.jp/ デイサービスや診療所で経験値を積む意義 ─医療法人ハートフリーやすらぎでは、新卒採用を積極的に行われています。新卒で入職した方は訪問看護・デイサービス・診療所など複数の事業所を経験されるそうですが、その意図を教えてください。訪問看護の場合はご家族の目もありますし、新卒をはじめ入職したばかりのスタッフにとって安心・安全にケアできる場所ではないと思います。ですから、デイサービスで吸引、沐浴、浣腸などの場数を踏むことや、診療所で医師の診療を間近でみること、採血などの経験を積むことが、とにかく大事なんです。経験を積んで熟練すれば、訪問先でも「いつものようにやればいい」と、安心してケアができるようになる。それが大きなメリットのひとつですね。 また、ただでさえ若い方はまだボキャブラリーも限られていますし、やらなければならないケアがたくさんあるなかで、利用者さんやご家族と上手に喋るのは難しいです。でも、デイサービスで働くことで話術に長けてきて、訪問先でご家族とお話しできることも増えてきます。利用者さんのことがわかってくるので、「おうちではこんな顔するんですね。デイサービスのときは…」と話題を広げることや、浣腸して「この後大体3分ぐらいで出ますよね」とお伝えする、といったことができるようになります。 看護師側のメリットだけではなく、利用者さんやご家族にとってのメリットもあります。やっぱり馴染みのある「いつもの看護師」だとご家族・利用者さんにとっても安心感があり、いつもデイサービスで顔を合わせている看護師が通学支援や訪問看護に来ると、喜ばれますね。 ─デイサービスでは、ご家族にお子様の様子を写真付きで毎日ご報告されているとのこと。こうした対応も丁寧にされているんですね。 ええ、毎日送っています。「こんなふうにお風呂に入れています」とか「一緒に寝ています」といった写真を見るだけで、「自分の子が一人にされていない」と安心できますし、充実した時間を過ごせていることが伝わると思います。保護者の皆さまも「写真が全部かわいい」って喜んでくださいます。 また、入職したばかりのスタッフがいても、写真を通じてきちんと優しく丁寧にケアしていることが伝われば、ご家族に安心いただけますよね。訪問看護でご自宅にお邪魔するときにも、「知らない人」ではなくなります。「新しいスタッフをよろしくお願いします」という意味合いも込めて送っているんです。 ─先輩看護師が若手看護師に訪問看護の同行を頼むケースもあると伺いました。 うちではよくありますね。例えば訪問先のお子さんが大藪くん担当だと、先輩看護師が「大藪くんにも来てほしい」と言います。新卒かどうかなんて関係なく、大藪くんは「その子について一番詳しく知っている看護師」だからです。 「その子にとって快適か」はデイサービスで担当している看護師のほうがよく把握していますし、ちょっとした変化に気づくことができます。経験や技術は先輩のほうが上でも、その子特有の傾向や好みはわかりませんし、先輩といえども個別のケースすべてに対応できるわけではなく、不安なものは不安なんです。大藪くんはデイサービスでサチュレーション(酸素飽和度)が下がる急変にも立ち会ったことがあり、身構えることなく冷静に対応でき、先輩のフォローができます。 こういった様子をみていると、「入社してもらってよかったな」と思いますね。新卒スタッフたちの成長は本当に早くて、私たちが教えてもらうことも多くあります。 >>関連記事・ハートフリーやすらぎ 大藪さんのインタビューはこちら言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護・ハートフリーやすらぎ 石川さんのインタビューはこちら自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護 「その子を一番知る看護師」に任せる ─大藪さんも石川さんも、インタビュー時に「信頼されて任されることが嬉しい」とおっしゃっていました。 それはよかったです。入職当初は大藪くんも石川さんも当然ぎこちなかったのですが、今では「みんなと歌って、リズムをとって楽しそうでしたよ」「お風呂が気持ちよくて『もう一回』と言うので、もう一回入りましたよ」といったことをデイサービス後に自然にご家族にお伝えしています。こういった他愛のない会話が、ご家族にとってはすごく嬉しいものですし、そういった様子をみていて、安心して任せられると思っています。 私も、「したいことができない環境」にいた時期があったので、できるだけ利用者さんをよく知る看護師たちに判断を任せたいという思いがあるんです。 ―差支えない範囲で、「したいことができなかった」ご経験について教えてください。 病棟時代、末期がんの患者さんたちの大部屋を担当していたことがあるのですが、患者さんのご希望もあって、みんなで楽しく合唱したことがあるんです。そうしたら、次の日に患者さんが別の看護師に「昨日の看護師さんを呼んで」とおっしゃいました。その看護師は面白くなかったようで、師長に「歌を歌うのが看護なんですか」と言い、私は師長から「歌手じゃないねんから、やめなさい」と注意されました。 たった3分の歌を、余命いくばくもない方々と合唱することは、してはいけないことでしょうか。私はそうは思いません。あの時間は、その人の生きる力、輝く力を引き出した時間だったんじゃないかと思っています。私は、そのときの患者さんに、ベストだと思う手段を使って寄り添うことが大切だと思うんです。 新卒スタッフは「見て学ぶ存在」と認識する ─新卒採用について、経営的な観点でどうお考えかについても教えてください。 新卒スタッフの初年度の給与(約400万円)はマイナスで計上していて、元から採算ラインには乗せていません。訪問看護のほうで利益が出ていますし、あくまで新卒スタッフは「働くなかで見て学んでいく存在」として捉えているんです。1~2年経てば活躍してくれますし、3年経てば病院に負けない立派な看護師になりますから、1年目がゼロでもまったく問題ありません。 新卒スタッフは、ここにいてくれるだけでいい。利用者さんの体を支えてくれるだけでもありがたいです。「だって新卒だもん。できるわけがないやん。できちゃったらうちらはどうすんのよ」っていう考えですね。最初から採算だけを考えると、なかなか新卒採用に手を出せないかもしれません。 また、例えば診療所に通院されている地域のご高齢の患者さんたちは、新卒で入った看護師の成長の「役に立ちたい」とおっしゃってくださり、採血に失敗しても「この子にやらせてあげて」と私に手を出させないくらいです(笑)。本当にありがたいことですね。その看護師が成長してその方のところに訪問看護で伺うと、「立派になったね」と言ってくださったり、看護師のほうも当時の思い出を語れたりするわけです。こうした地域での素晴らしい関係性がつくれているということも、大きなメリットだと思っています。 安心感と自信をもたらす雰囲気づくりが大切 ─皆さん本当に生き生きと働いていらっしゃる様子が伝わってきますが、職場の雰囲気をよくするために意識されていることはありますか? そうですね、雰囲気づくりは一番意識していますし、努力している部分です。だからみんな明るいですよね。みんなに「ここにいていい」と思える安全な場を提供したいと常日頃から思っています。 ただ、私が安全な場を作っているつもりでも、みんなが本当に安全な場だと感じられなければ意味がありません。なので、「ありがとう」を意識的にたくさん伝えることで、「ここにいていいんだよ」というメッセージや、相手の存在を認めるメッセージを出すようにしています。 ─ハートフリーやすらぎにはプリセプター制度がありませんが、それも雰囲気づくりとつながっているのでしょうか。 そうですね。決まった教育係などいなくても、その都度聞きやすい人に聞けばいいですし、聞きにくい人には聞かなくていいと思うんです。「合う人」というのは人によって違うわけですから。 私自身、病院のプリセプター制度で合わない方と組むことになり、我慢をしていた時期がありました。「すべてプリセプターを通す」ことで生まれる非効率さや不合理さもあって、例えば質問をして1週間待ってOKと言われたことが、後で別の指導者からNGだと言われることもあったんです。そんなやり方がいいとは、どうしても思えない。だからここではプリセプター制度を採用していません。 その上で、所長や管理職、先輩方にお願いしてるのは、何か聞かれたときに「前も言ったやろ」「3回目やで」などとは絶対に言わないでほしいということです。繰り返し聞くことで叱られるのなら、もう聞かないでおこうと思うようになって当然です。その結果、医療ミスが発生する…といった悪循環を、病院でも見てきました。確認されたことに対しては「偉いやんか。さすがやな」といった言葉で迎える。理由を聞く際は「なんで?」と攻撃的に聞くのではなく、優しく事実を確認する。そういう文化が定着するようお願いしています。 ─意識して文化を醸成されているんですね。 そうですね。あとは、新卒スタッフに対して「プロセスを言語化する」ことも意識していて、近くに新卒スタッフがいるときは、「今何をしているのか」「どうしてこうしているのか」というのをしっかり声に出して伝えるようにしているんです。みんな丁寧にやってくれていますね。 新卒スタッフは「いっぱしの看護師」ではなく、「みんなで教育する人」であり、逆に「私から教わってくれてありがとう」「覚えてくれてありがとう」と感謝する姿勢が大事だと思っています。この「ありがとうの文化」を作っていけば、「ここにいていいんだ」と思ってもらえると信じています。 ―ありがとうございました! ※本記事は、2024年2月時点の情報をもとに構成しています。 執筆:倉持 鎮子取材・編集:NsPace 編集部

訪問看護師のためのリハビリ知識 実践ノウハウ編
訪問看護師のためのリハビリ知識 実践ノウハウ編
特集 会員限定
2024年5月28日
2024年5月28日

訪問看護師のためのリハビリ知識 実践ノウハウ編【セミナーレポート後編】

2024年2月3日に開催した、NsPace(ナースペース)オンラインセミナー「訪問看護師向けのリハビリセミナー ~実践的な知識を身につけよう!~」。京都大学大学院の教授で医学博士の青山朋樹先生を講師に迎え、訪問看護の現場で活きるリハビリテーションの知識を教えてもらいました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、訪問看護で実践できる具体的なリハビリテーション(以下、リハビリ)と、訪問看護師自身の負担軽減にもつながるボディメカニクスのポイントについてご紹介します。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら訪問看護師のためのリハビリ知識 基礎&環境調整編【セミナーレポート前編】 【講師】青山 朋樹先生医学博士/京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 先端理学療法学講座 教授整形外科医として長らく病院で臨床経験を積んだ後、2009年から京都大学大学院で学生の指導、研究にあたる。専門は再生医学、リハビリテーション医学。近年はリハビリテーションのDX化に取り組んでいる。 円背の方におすすめのストレッチ 特に高齢者の方に多く見られる円背は、股関節や膝関節の屈曲にもつながり、「お年寄りっぽい姿勢」の原因になります。改善のためには、背中だけではなく、股関節や膝関節も一緒に伸ばすストレッチがおすすめです。 円背のある高齢者の方は体のバランスが不安定なので、こちらの左の画像のように、まず壁にしっかりと手をついてもらってください。そして可能な範囲でつま先立ちになり、3秒かけて背中を伸ばします。その後、同じく3秒かけてかかとを戻しましょう。 続いて、右の画像のようなストレッチも行います。先ほどと同じように壁に手をついたら、足を前後にずらし、背中と太もも、膝の裏を左右10秒ずつ伸ばします。 このストレッチを行うと、背中が丸まっているせいで硬くなっていた胸筋が伸びて、とても気持ちがよいはずです。訪問看護師のみなさんも、日々の処置で前かがみの姿勢をとることが多いと思いますので、ぜひ利用者さんと一緒にストレッチをやってみてください。 なお、このストレッチは、腰椎圧迫骨折後の方でも骨が固まっていれば実践可能です。転倒にはくれぐれも注意しながら行ってください。また、骨はすでに完治しているにもかかわらずストレッチができない場合は、ぜひ理学療法士や作業療法士に意見を聞いてもらえたらと思います。 呼吸困難感がある方向けのトレーニング 呼吸困難感は、PaO2低下やPaCO2上昇による化学受容器への刺激や肺や胸郭の広がりが悪い場合に生じます。 一方、慢性呼吸不全の利用者さんは、呼吸不全、困難になることへの恐怖心が強いことがほとんどです。そのため、「リハビリのためにどんどん動きましょう」と提案しても承諾してもらえないケースが多いと思います。「動くことで苦しくなるんじゃないか」と警戒してしまうんですね。 そんな利用者さんには、運動強度があまり高くないストレッチを提案してみてください。まずは無理のない範囲から始めて、自信をもってもらうのがよいと思います。 上の写真は、胸郭周辺を柔らかく動かせるようにするストレッチです。これらを継続することで、だんだんと胸郭を大きく広げられるようになり、胸郭が動かないことによって生じる呼吸困難感の解消につながります。写真のストレッチすべてを行う必要はないので、利用者さんの様子や意向を確認しながら、できそうなものをピックアップしてチャレンジしてください。また、先ほどご紹介した円背の方向けのストレッチも有効です。 ストレッチを習慣化してどんどん自信がわいてきたら、長距離を歩いたり、少し速度を上げて歩いたりといった「持久力を強化するトレーニング」へ徐々に移行してもらえたらと思います。 認知・運動機能の同時刺激トレーニング フレイル予防のためにも、ぜひ取り入れていただきたい運動。しかし運動習慣がなく、体を動かすことに抵抗がある方は少なくありません。 そんな利用者さんにトレーニングをすすめるときに重要なのは、「体を動かさないと寝たきりになってしまうよ」といった恐怖訴求をしないこと、そして「運動」や「筋トレ」といった言葉を使わないことです。ゲームのような感覚で楽しめるトレーニングを用意し、「気づいたら体を動かしていた」という状況をつくることが望ましいでしょう。 具体的には、認知機能と運動機能の両方を同時に刺激できるトレーニングがおすすめです。例えば、イスに座ってできるだけ早く足踏みをしながら、5秒間でお題に答えてもらいます。お題は「【あ】から始まる言葉」や「日本の県庁所在地」など、一人ひとりに合わせて難易度を調整してください。このようなトレーニングのメニューは、ほかにもたくさんあります。 チャンネル名:京都市左京区地域介護予防推進センター「おうちでもアタマとカラダを同時に刺激! ~ステッププラス シート編~」 YouTubeに動画をアップしているので、ぜひ「ステッププラス」と検索してご参照ください。 看護師のボディメカニクスについて 看護師のみなさんにとっては、自身の体の負担を軽減し腰痛や膝痛を予防する、もしくは大きな体格の利用者さんを介助するためのボディメカニクスも気になるポイントではないでしょうか。 ボディメカニクスの細かな手法については各種文献をご覧いただければと思いますが、重要なポイントは、体の軸をつくって下半身を安定させることです。しっかりと足を開き、膝を曲げ、腰を落とす。そして、脇をきちんと締める。これを徹底すると、自然と体の軸が安定します。 この軸がブレると、バランスが不安定になり、特定の筋肉に負荷をかけすぎてしまいます。さらに、不安定な状態で介助を行うと、利用者の方が恐怖心を抱き、体に余計な力を入れてしまいます。そうすると、介助する側の負担もより大きくなるため注意が必要です。 * * * 訪問看護師のみなさんとリハビリ職が連携したり、看護の中でストレッチやトレーニングに取り組んでもらったりすれば、訪問リハビリの可能性はもっと広がると考えています。かつては「ADLをこれ以上低下させないこと」が目標になっていましたが、これからの時代は、むしろ身体機能を回復するために訪問リハビリが行われるようになるのではないでしょうか。利用者さんのより健やかな生活を目指して、訪問看護師のみなさんも、ぜひリハビリに対するアンテナを高く張ってもらえたらと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など
2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など
特集
2024年5月28日
2024年5月28日

2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など

医療、介護に加え、トリプル改定のもう1つの対象が障害福祉サービスです。訪問看護の場合、障害福祉での報酬は発生しませんが、診療・介護報酬による障害福祉サービス利用者への訪問看護の提供は可能です。そうしたケースでの障害福祉サービス側との連携のしくみに注目します。 障害福祉サービス利用者も訪問看護は利用可能 障害福祉サービスを利用しつつ、居宅や共同生活援助(以下、グループホーム)で生活している人は、診療報酬による訪問看護の利用が可能です。また、障害福祉サービスの利用者が65歳以上になって介護保険の利用が優先されると、介護報酬で訪問看護を利用するケースも想定されます。 その場合、利用者にかかわる障害福祉、医療、介護など多様な機関による情報連携が重要になります。今回のトリプル改定では、こうした情報連携に関するしくみが新設・見直しされました。連携機関の1つとなる訪問看護事業所としては、障害福祉サービス事業所等からの情報提供の求めに応じる際の連携環境がどのように変わっていくか注意が必要です。 相談支援事業所の多機関連携加算 注目したいのは、相談支援事業所が手がける計画相談支援および障害児相談支援の「医療・保育・教育機関等連携加算」です。相談支援事業所とは、障害福祉サービスの利用意向がある人から、さまざまな相談を受けたり、具体的なサービス計画(以下、サービス利用等計画)の立案およびサービス調整を行う機関です。 そのサービス利用等計画を作成する際に、当事者が利用する医療や保育、教育機関などの職員と面談した上で、必要な情報提供を受けた場合に算定されるのが上記の加算です。対象となる障害当事者1人につき、月1回を限度として算定されます。 相談支援事業所と訪問看護事業所の連携が明記 同加算の訪問看護に関係する見直し点は、第一に算定の留意事項(通知改正)で、相談支援事業所の連携対象に「訪問看護事業所」が明記されたことです。これにより、相談支援専門員から面談(テレビ電話等の活用含む)を通じて、訪問看護提供時の利用者の心身の状態に関する情報提供依頼が増える可能性があります。 また、訪問看護事業者からの情報提供だけでなく、訪問看護側で利用者へのサービス提供に際して必要な情報が生じた場合、担当の相談支援専門員に情報提供を求めることができます。その求めに相談支援専門員が応じた場合の加算区分が新設されました。 医療・保育・教育機関等連携加算のしくみ 「精神障害者支援体制加算」と訪問看護の関係 指定相談支援事業所の報酬で、訪問看護との連携体制が要件となるものが、「精神障害者支援体制加算」です。 これは、精神障害者支援にかかる一定の研修を修了した相談支援専門員を配置している事業所を評価するものです。一定の研修とは、地域生活支援事業による精神障害者の障害特性およびこれに応じた支援技法等に関する研修、またはそれに準じた研修で都道府県知事が認める研修課程を指します。 今改定では、この加算が2区分となり、上乗せとなる新要件を満たした場合に、高単位の区分が算定できることになりました。その新要件とは、以下の内容です。 精神障害者支援体制加算の新区分(Ⅰ)の上乗せ要件重点的な支援を要する精神疾患の患者(前1年以内に以下の機関への通院・利用をしていること)を支援する以下の機関に所属する保健師、看護師、精神保健福祉士と連携する体制が構築されていること1. 診療報酬の療養生活継続支援加算を算定する病院等2. 障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律施行規則第57条第3項に規定する訪問看護ステーション等(精神科重症患者支援管理連携加算の届出があること) なお、この場合の「連携する体制」 とは、 研修を修了した相談支援専門員病院や訪問看護ステーションの保健師、看護師、または精神保健福祉士 が1年に1回以上面談または会議を行い、精神障害者に対する支援に関して検討を行っていることを指します。 つまり、訪問看護事業者としては、加算対象となる相談支援事業所からの依頼を受けて合同検討会を開催することになります。 横断的な改定ポイントが地域生活移行支援 今回の障害福祉サービスの報酬改定では、横断的なポイントとして、利用者の意向に沿った地域生活移行支援の強化が上げられます。 例えば、地域生活支援拠点等に位置づけられている障害者支援施設において、当事者の地域移行に向けた動機付け支援として、グループホーム見学や食事体験、地域活動への参加などを行った場合の評価が設けられました。これを「地域移行促進加算(動機付け支援を強化した区分はⅡ)」といいます。 また、グループホームから居宅生活への移行を望む当事者に対し、退居から一人暮らしに向けた計画作成と支援を行った場合を評価するという方針で、「自立生活支援加算」も見直されました。 障害者の地域生活移行の際、連携対象に注意 このように、本人の意向に沿って、施設から居住系サービス、さらには居宅への移行が進むと、主に医療保険で対応する訪問看護の利用ケースも増えてくることになります。 もちろん、それまでと生活環境が大きく変わることになるので、当事者が新しい暮らしになじむためには、移行前後での手厚い支援が欠かせません。例えば、グループホームでは、グループホームから居宅生活に移行した人への継続的な支援を評価する加算「退居後共同生活援助サービス費」が新設されました。これは、グループホーム側が退居後の利用者の居宅を週1回以上訪問し、本人の心身の状況や環境、そのほか日常生活全般の把握を行った場合に算定できます。 移行支援では、退居後に利用する障害福祉サービス事業者や医療機関、訪問看護事業者との連絡調整も必要となります。訪問看護事業者としても、こうした「居宅生活への移行支援」に関連して、利用者が以前生活していたグループホームの担当者との連携機会が生じることも頭に入れておきたいものです。 ※本記事は、2024年4月30日時点の情報をもとに記載しています。 執筆:田中 元介護福祉ジャーナリスト 編集:株式会社照林社 【参考】○厚生労働省(2024).「令和6年度障害福祉サービス等報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000202214_00009.html2024/4/30閲覧

訪問看護師のためのリハビリ知識 基礎&環境調整編
訪問看護師のためのリハビリ知識 基礎&環境調整編
特集 会員限定
2024年5月21日
2024年5月21日

訪問看護師のためのリハビリ知識 基礎&環境調整編【セミナーレポート前編】

2024年2月3日に開催した、NsPace(ナースペース)オンラインセミナー「訪問看護師向けのリハビリセミナー ~実践的な知識を身につけよう!~」。京都大学大学院の教授で医学博士の青山朋樹先生を講師に迎え、訪問看護の現場で活きるリハビリテーションの知識を教えてもらいました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、リハビリテーションを行うにあたって必要な考え方や、病院から在宅に移行する際の環境調整のポイントなどをまとめます。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】青山 朋樹先生医学博士/京都大学大学院 医学研究科 人間健康科学系専攻 先端理学療法学講座 教授整形外科医として長らく病院で臨床経験を積んだ後、2009年から京都大学大学院で学生の指導、研究にあたる。専門は再生医学、リハビリテーション医学。近年はリハビリテーションのDX化に取り組んでいる。 訪問看護とリハビリ職の連携の必要性 リハビリテーション(以下、リハビリ)と聞くと、多くの方々が筋力や可動域の評価をイメージするかと思います。もちろんそうした評価も行いますが、実は訪問リハビリでは多くの時間を「リスクアセスメント」に費やしています。 リハビリでは筋力の強化や可動域の改善に向けて体を動かすため、どうしても呼吸・循環器にさまざまな影響を与えます。血圧が上がったり、脈が速くなったり、息切れが強くなったりといった変化が生じる可能性もあるでしょう。そうした場合にはリハビリを一旦中止し、必要に応じて主治医に報告の上、何らかの手立てを検討する必要があります。 ただし、時間は限られているので、リスクアセスメントに多くの時間を費やすと、リハビリ時間が削られてしまいます。そのため事前に訪問看護でアセスメントしていただいた結果をリハビリ職と共有してほしいと考えています。 がん終末期の方は特に注意が必要 がんに罹患している方、特に骨転移が見られる方の場合は、リハビリに臨むにあたって注意が必要です。骨転移の状態を把握できずにリハビリを行えば、過度な負荷により骨痛の出現や悪化、骨折を引き起こす危険性があります。もちろんリハビリ職でもアセスメントは行いますが、ぜひ訪問看護師のみなさんからも情報を共有してもらえるとありがたいです。 訪問リハビリテーションの考え方 リハビリテーション計画 リハビリの計画は、筋力や可動域の状態に基づいて立てると考えられがちですが、実はADLの評価によって決められることが多いのです。いわゆる「課題志向型」で、特定の課題、例えばトイレ動作をするためのアセスメントを行い、できないことを把握した上でリハビリの計画を立てます。 つまり「この部位の筋力が強ければ大丈夫」といった評価はしておらず、むしろADLの課題からさかのぼって「動作ができないのはこの部位の筋力が影響しているのだろう。では、筋力を強化するリハビリを行いましょう」と考えます。出発点は、一つひとつの関節可動域や筋力の状態ではなくADLです。 するADL、できるADL、しているADL リハビリの計画や実践においては、まず「するADL、できるADL、しているADL」を正しく把握することがポイントになります。それぞれの言葉の意味は、以下のとおりです。 【するADL】利用者さん本人が、生きがいを得るためにやりたい、自立したいと思うADL。できるADL、しているADLの上位の概念にあたります。【できるADL】身体計測に基づいて予想されるADL。例えば、「筋肉や可動域の状態がこれくらいであればつたい歩きしかできないだろう、車いすを使うべきかもしれない」といった評価のことです。【しているADL】実際に行っているADL。筋肉や可動域などの身体的な要素だけではなく、環境因子も影響します。 「できるADL」と「しているADL」の2つには、ギャップが生じることが多々あります。「体の状態を考えればこれくらいできるのではないか」という予想に対して実際にしているADLが届いていないケースでは、リハビリでその差を縮めることを目指します。また、「できるADL」と「しているADL」のどちらにおいても、目指す方向は「するADL」です。 環境調整を検討する際のポイント 病院でのリハビリを経て在宅に移行する際は、環境調整を検討することも多いでしょう。そのときに大切なのが、もともとの生活空間がどのような状態か、利用者さんが自宅で何をしたいか、そのやる気を阻害する因子があるかを検討すること。これらよく考えずに環境調整を行うと、不十分であったり、利用者さんの意向とは違う結果になってしまったりする可能性があります。 ここで、環境調整を行ったものの、あまり有効ではなかった具体例をひとつご紹介します。私の友人で、在宅看取りを支援する診療所の医師が経験したAさんのケースです。 AさんのADLと環境調整の判断Aさんは頸部骨折で入院され、リハビリに取り組んでいた。しかし、自立歩行や段差の昇り降りは難しいと判断され、手すりの設置や段差の解消といった住宅改修の環境調整を行った。自宅に戻ってからのAさんのADL後日医師が自宅に戻ったAさんの元へ訪問診療に伺うと、なんと畑仕事を行っていた。畑で種をまいたり、野菜を収穫したりといった動作が可能で、結果的に住宅改修は必要なかった。 病院のリハビリ室の環境と、実際の生活環境のギャップを考慮できていなかったことが、このような結果につながったと考えられます。例えば階段ひとつとっても段差の高さが異なり、慣れている環境であればスムーズに動作ができる可能性があるんです。また、本人の「やりたい」という気持ちも影響しているでしょう。リハビリではできなくても、大好きな畑仕事のためなら、体を動かせたのです。 >>後編はこちら訪問看護師のためのリハビリ知識 実践ノウハウ編【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護
自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護
インタビュー
2024年5月21日
2024年5月21日

自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護

1年の病棟勤務を経て、「医療法人ハートフリーやすらぎ」の訪問看護ステーションやデイサービスで働く石川さん。デイサービスと訪問看護、両方に携わることができる職場に大きな魅力を感じているとのこと。前回の大藪さんに引き続き、子どもたちとの触れ合いの中で感じていることや、心がけていることなどを伺いました。 >>前回の記事はこちら言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護 石川 紗也佳(いしかわ さやか)さん看護師。1年消化器外科病棟で働いた後、2023年4月に医療法人ハートフリーやすらぎに入職。日々、個別性の高い重症心身障がいを持つ子どもたちとの関わり方を模索。週の半分程度をデイサービスで、もう半分を訪問看護で働いている。医療法人ハートフリーやすらぎ: https://www.heartfree.or.jp/ いつか海外で働くことも見据えて看護師に ─まずは、看護師になった理由や訪問看護の道を志した理由を教えてください。 はい。理由は色々あるのですが、私はもともと海外に住んでいたこともあり、「海外でも通用する職に就きたい」という思いがあります。また、私の母は看護師で、保育園に勤めていたほか、海外でも色々な場面で頼られる姿をみてきました。さまざまな場所で働ける看護師という仕事に憧れて、自然とこの道を志すようになったんです。 いつか海外で医療に携わりたいと考えたとき、場合によっては物資が不足している中で医療行為を行うケースもあると思います。あくまで個人的な考えですが、これは訪問看護に近いものがあるのではないかと。限られたリソースで工夫しながら、患者さんの想いに寄り添いながらケアをする。そういったお仕事をしたくて、訪問看護の道を志しました。 訪問看護利用者さんと石川さん ─ハートフリーやすらぎに入職した経緯も教えてください。 私は大学生のとき、発達障がいについて学んでいたということと、昔から子どもが好きこともあり、放課後等デイサービスでアルバイトをしました。時には「クソババァ」と言われたこともありましたが(笑)、子どもたちは本当にかわいくて、虜になりました。「いつか看護師として放課後等デイサービスで働きたい」という気持ちを持つようになったんです。 石川さん作成資料 最初は病棟で経験を積みたいという思いもあったので、大学卒業後は1年ほど病棟で働きました。その後、放課後等デイサービスと訪問看護、両方の仕事ができる「ハートフリーやすらぎ」の存在を知り、私にとっては夢のような職場だと思って応募したんです。 ─入職当時のハートフリーやすらぎの印象はいかがでしたか? まず、子どもの数に対して、スタッフの数がとても多いことに驚きました。一人ひとりの利用者さんに丁寧に接することができる環境が用意されていたんです。重症心身障がい児の看護は、吸引のしかた一つをとってもその子によってやり方が違うんですが、不慣れな私に「この子はこれ以上やると吐くから気を付けて」など、それぞれの特徴を掴めるように説明してもらいました。「手厚い」とはこういうことなんだ、と納得したのを覚えています。 言葉以外の意思表示を感じ取る ─訪問看護とデイサービスを両方やっているなかで、違いを感じることはありますか? はい、意識するポイントも含めてかなり違うと思います。訪問看護は利用者さんのご自宅で、限られた時間の中でのケアになるので、「訪問中に完結させなければならない」というプレッシャーが常にあります。ただ、利用者さん一人ひとりと丁寧に向き合えるというメリットは大きいです。 デイサービスの場合は、長時間利用者さんと一緒にいることができます。その一方で、訪問看護と比較すると一人ひとりの利用者さんに集中しづらい面もあります。だからこそ、手厚く対応しようという意識を働かせながらケアをしています。 ─病棟から大きく仕事内容が変わる中で、不安になることはありませんでしたか? そうですね。言葉での意思表示がない子どもたちのケアをするということ自体が、「どう関わればいいのだろう」と最初は不安でいっぱいでした。ただ、実際に触れ合うと「意思表示がない」なんてことは絶対にないということがわかるんです。みんな、手足の動き、首の動き、目の動き、表情筋などを使って、感情や思いを表現してくれます。子どもによって表現方法が違うだけで、「この子の場合はこの方法で教えてくれる」ということがわかってきました。それがわかってからは、子どもたちとの関わりがとても楽しくなっていったんです。 利用者さんの病状が急変することに対しても不安でしたが、HOTやバッグバルブマスクの使用方法、緊急時の流れなどについて先輩と話し合いながら確認・シミュレーションをし、いつ何が起きても対応できるよう準備しています。私は現状大きな急変に立ち会ったことがありませんが、てんかん発作や咳き込みなどの対応はしており、少しずつ経験を積んでいます。過剰に構えず、冷静に対応していきたいです。 また、ハートフリーやすらぎでは大橋さん(※)や先輩方がいつも質問に丁寧に答えてくれますし、困ったことがあれば一緒に考えてくれます。利用者さんやご家族との関わり方についても、具体的なアドバイスや「さっきの対応はよかった」といったフィードバックをもらえるんです。正すべきことは当然指摘を受けますが、優しくて愛があふれていて、全然つらい気持ちにならないんです。こちらの発言も否定せず受け止めてくれて、「やってみたら」と応援してくれます。思ったことを気後れせずに伝えられますし、安心して仕事ができています。 ※大橋奈美さん:医療法人ハートフリーやすらぎ常務理事、統括管理責任者 積極的に遊びを仕掛ける ─石川さんが担当されている利用者さんについて教えてください。 はい。こちらのNくんは現在8歳の男の子で、脳性麻痺、てんかん、慢性肺疾患、肺高血圧症があり、医療的ケアとしては胃ろうの処置が必要です。電車や自動車などの乗り物が大好きで、よく笑う姿がとても可愛らしいです。反応してもらえるのが嬉しくって、たくさん遊びを仕掛けています。 ─遊ぶ際に心掛けていることはありますか? 以前、風船で一緒に遊ぼうとしたときにはあまり興味がなさそうにしていました。そのことを作業療法士に相談すると、「この子たちは生まれたときから自分の意思に関係なく、いろいろな医療処置をされてきた。誰かに何かを『させられる』ことに対する抵抗が大きい」と教えてもらったんです。それ以降はNくんにとって「させられる」のではなく、自分から「したい」になるよう、心掛けています。まずは私自身が遊びを全力で楽しむようにして、それを見て興味をもって、「一緒に遊びたいな」と少しずつ遊びに参加してくれたらいいなといつも思っています。 ─どんな遊びをするか、発達段階に応じた目安などはあるのでしょうか。 重症心身障がい児は発達の遅延を伴っているケースも多いので、そのときどきで柔軟に対応し、その子独自の対応方法を探るのがいいのではないかと思っています。Nくんに関わらず、ここにいる子どもたちはすごく個別性が高いため、実践重視のほうが合っているように思います。考えてみれば、私自身も子ども時代に型にはまった遊び方はしていなかったなと思うので、ダメ元でもいろいろなアプローチをしたいと思っているんです。例えばこの前は、訪問看護の利用者さんで肌に筆が触れる感覚が好きな子がいたので、デイサービスの子とも筆で遊んでみました。 新しい遊びのアイデアを提案すると、まわりの皆さんからも「ええやん!やってみたら」って信頼して見守ってもらえるので、本当にやる気が出ます。 ─最後に、今後の目標を教えてください。 いまよりも子どもたちの想いを汲み取れるようになりたいと思っています。言葉はなくとも、足の動き、手の動き、ちょっとした表情の変化から私が気づいてキャッチできる情報はどんどんキャッチして、より深く理解していきたいです。 それから、大橋さんや先輩方のひとことで利用者さんやご家族が安心している様子を見ると、「自分もこういうふうになりたい」と思います。私もいつか言葉一つで大きな安心をもたらす存在になりたいです。 ─ありがとうございました! * * * 次回は「ハートフリーやすらぎ」常務理事の大橋奈美さんに、新卒採用をすることの意義や経営・運営面で気を付けていることなどについて、お話を伺います。>>次回記事はこちら新卒採用の意義&スタッフとのコミュニケーションで心がけていること ※本記事は、2024年2月時点の情報をもとに構成しています。 執筆:倉持 鎮子取材・編集:NsPace編集部

2024年度介護報酬改定 ポイント解説/BCP・高齢者虐待防止措置の減算規定
2024年度介護報酬改定 ポイント解説/BCP・高齢者虐待防止措置の減算規定
特集
2024年5月21日
2024年5月21日

2024年度介護報酬改定 ポイント解説/BCP・高齢者虐待防止措置の減算規定

2024年度介護報酬改定では、多くのサービスにまたがる義務化措置や加算の見直しが行われています。また、報酬の適正化という観点からの改定も行われました。今回は、そうしたテーマについて取り上げます。 BCPが未策定の場合の減算規定 まずは、2021年度に基準上の規定が設けられ、3年の経過措置をもって完全義務化された業務継続計画(以下、BCP)策定等の取り組みと高齢者虐待防止の推進です。いずれも2024年度からの完全義務化に伴い、未実施の場合の減算規定も設けられました。 1つめのBCP策定に関する完全義務化の内容を整理すると以下のようになります。 1. 感染症および自然災害の発生時を想定したBCPの策定2. 1に従い必要な措置(備蓄品の管理や担当者の使命など)を講ずること3. 従事者に対して、1にかかる研修を実施すること※4. 従事者に対して、1にかかる訓練(シミュレーション)を実施すること※ ※3および4に関しては、訪問看護の場合で年1回以上 上記のうち、1、2が未実施の場合の減算が設けられました。これを「業務継続計画未策定減算」といい、未策定の状況が解消されるまで所定単位数から1%が減算されます(施設・居住系については3%)。感染症および自然災害のBCP、いずれか1つでも未策定の場合で減算適用となるので注意しましょう。ただし、訪問看護を含む訪問系サービスについては、感染症対策の強化に関する義務化から日が浅いため減算規定の適用は2025年3月末まで猶予されます。 なお、減算になる期間は「1、2を満たさない状況が発生した翌月(状況の発生が月の初日であればその月)」からスタートし、「1、2を満たさない状況が解消された月」までです。 高齢者虐待防止措置の未実施も減算 高齢者虐待防止の推進において、2024年度から完全義務化となる項目は以下のとおりです。 1. 虐待の防止のための対策を検討する委員会(オンライン開催可能)を定期的に開催すること2. 1の結果について、従事者に周知徹底を図ること3. 虐待の防止のための指針を整備すること4. 従事者に対し、虐待の防止のための研修を年1回以上実施すること5. 1~4の措置を適切に実施するための担当者を置くこと この1~5のいずれかでも実施されていない状況が生じた場合、速やかに都道府県*1に「改善計画」を提出しなければなりません。その上で、「改善計画」に則った取り組みを行い、「実施されていない状況」が生じて*2から3ヵ月後に、改善状況をやはり都道府県に報告して「改善」が認められることが必要です。 上記の「実施されていない状況が生じた月の翌月」から「最終的に都道府県に改善が認められた月」までの間は、減算が適用されます。これを「高齢者虐待防止措置未実施減算」といい、月あたり所定単位数から1%の減算が行われます。 *1 看護小規模多機能型居宅介護の場合、市町村(指定権者)に改善計画を提出する。 *2 運営指導等で未実施が発見された場合、その発見月の翌月からとなる。 身体的拘束等の適正化が運営基準に 先の高齢者虐待防止の取り組みは、利用者の尊厳確保に関して不可欠なテーマです。同様のテーマから定められた規定がもう1つあります。それが「身体的拘束等の適正化」です。診療報酬改定でも規定されていますが、改めて取り上げましょう。 >>診療報酬改定の「身体的拘束等の適正化」についてはこちら2024年度診療報酬改定のポイント解説/医療DX、既存加算の適正化 具体的には、以下の規定が運営基準に設けられました。 1. 利用者または他の利用者等の生命・身体を保護するための「緊急やむを得ない場合」を除き、身体的拘束その他利用者の行動を制限する行為(以下、身体的拘束)を行ってはならない。2. 身体的拘束等を行う場合には、その態様および時間、その際の利用者の心身の状況ならびに緊急やむを得ない理由を記録しなければならない。 いずれも施設系、居住系、短期入所系、小規模多機能系ではすでに設けられている規定ですが、2024年度からは訪問系や通所系、居宅介護支援でも定められました。 1の規定にある「緊急やむを得ない場合」とは、 切迫性(利用者等の生命・身体への危険が切迫していること)非代替性(他に方法がないこと)一時性(一時的であること) の3つの要件を満たすことです。各要件の確認については、組織としての手続きを慎重に踏む必要があります。現場の一従事者の判断だけに任せてはいけません。 特別地域加算等の地域の範囲見直し 訪問系、通所系、小規模多機能系など複数のサービスにまたがる加算上の見直しとしては、特別地域加算、中山間地域等の小規模事業所加算、中山間地域に居住する者へのサービス提供加算があります。いずれも、訪問時の移動に過剰な時間が費やされがちな地域で、その人件費・燃料費等のコストを考慮した加算です。 具体的な対象地域を示します。 いずれの対象地域にも含まれている「過疎地域」。この場合の「過疎地域」とは、「過疎地域の持続的発展の支援に関する特別措置法」の第2条第1項に規定された地域です。一方で、同法では「みなし過疎地域」に関する公示もあり、今改定ではこの「みなし」とされていた地域も含めることになりました。 PT等による訪問にかかる厳しい減算 最後に、利用者ニーズに合わせた訪問看護の適切な提供を図るための改定を取り上げます。具体的には、理学療法士・作業療法士・言語聴覚士(以下、PT等)によるサービス提供への評価です。 近年、訪問看護ステーションにおけるPT等の従事者割合が増えており、PT等の訪問による単位数も増加傾向にあります。 こうした状況を受け、リハビリ系サービスとの役割分担の観点から、2021年度改定ではPT等による訪問での基本報酬が引き下げられました。それでも、例えばPT等による訪問回数が看護職員による訪問を上回っているといったケースも指摘されていました。 そこで、2024年度からは、PT等による訪問についての減算も設けられました。減算の対象はPT等による訪問で、要件は以下のとおりです。 1. 事業所における前年度(前年4月から当該年3月まで)のPT等による訪問回数が、看護職員による訪問回数を超えていること2. 1に適合しない場合であっても、前6ヵ月間において、緊急時訪問看護加算、特別管理加算、看護体制強化加算をいずれも算定していないこと【上記を満たす場合】1回につき8単位を所定単位数から減算(なお、1について、2023年度の実績に応じ、2024年度は同年6月1日から2025年3月末までの減算となる) 上記は介護予防訪問看護でも同様です。 なお、2021年度改定では、介護予防訪問看護の適正化の観点からサービス提供が12ヵ月超の場合に5単位の減算が適用されています。このケースについて、上記のPT等による過大訪問の減算が適用されている場合、減算幅は「5単位」⇒「15単位」となります。かなり厳しい減算となる点に注意が必要です。 次回は、トリプル改定のうちの障害福祉サービスの中から、訪問看護に関係のある内容を取り上げます。>>次回の記事はこちら2024年度障害福祉報酬改定 ポイント解説/相談支援における連携への対応など ※本記事は、2024年4月23日時点の情報をもとに記載しています。 執筆:田中 元介護福祉ジャーナリスト 編集:株式会社照林社 【参考】○厚生労働省(2024).「令和6年度介護報酬改定について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_38790.html2024/4/23閲覧○厚生労働省(2024).「令和6年度介護報酬改定に関するQ&A(Vol.1)(令和6年3月15日)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001230308.pdf 2024/4/23閲覧

気象病とは?気圧変化による体調不良の原因・対策を解説
気象病とは?気圧変化による体調不良の原因・対策を解説
特集
2024年5月21日
2024年5月21日

【梅雨に注意】気象病とは?気圧変化による体調不良の原因・対策を解説

梅雨の季節には、「気象病」と呼ばれる体調不良が起こりやすくなります。気圧変動が激しい日に頭痛や肩こり、めまい、倦怠感などが起きた場合は、気象病を疑いましょう。原因不明の体調不良として見過ごしてしまうのではなく、セルフケアや医療機関への受診をすることで、生活の質を改善できる可能性があります。 この記事では、気象病の症状やメカニズム、セルフケア、対策などについて詳しく解説します。 気象病とは 気温・湿度・気圧の変化によって体の不調を引き起こす気象病。日本では3~7日に1回程度の頻度で雨が降る上に、梅雨の40~50日ほどはさらに天気が崩れる日が増えます。気象病の症状の強さには個人差があり、我慢できるものから薬で対処しなければ起き上がることすらままならないものまでさまざまです。中には気象病が日々の生活や仕事などに大きな影響を及ぼしている方もいます 。 気象病のメカニズム 気象病は、天候の変化が自律神経に影響を与えることで症状が出ます。自律神経は心身の活動を高め、痛みにも関連する「交感神経」と、心身の休息やリラックスする際に働く「副交感神経」で成り立っているため、このバランスが崩れると心身の不調につながるのです。また耳の中にある内耳には気圧を感知するセンサーがあり、気圧の変化を敏感に察知し前庭神経が過剰に興奮することで、自律神経のバランスが乱れ症状が現れるとも考えられています。心疾患・低血圧・リウマチ・喘息など基礎疾患がある場合や、もともと頭痛や関節痛がある方は気象の変化によって症状が悪化することもあるため注意が必要です。 天候の変化には、気圧だけではなく気温と湿度も関係しています。例えば、梅雨の時期は雨の日と晴れの日で気圧と気温、湿度のいずれも変化します。また、夏から秋のような季節の変わり目には朝晩の寒暖差が大きくなり、気象病の症状が現れる場合があります。現れる症状と症状の強さは人それぞれですが、気圧と気温、湿度のどれが変化したかによって症状は異なる傾向にあります。 一般的な症状の現れ方としては、気圧の変化では倦怠感や眠気、めまい、頭痛。気温の変化では肩こりや頭痛、気分の浮き沈み。湿度の変化ではこれらの症状に加えて関節痛が悪化するとされています。 >>関連記事自律神経について詳しく解説しています。自律神経の不調の原因とセルフケアについて 気象病の予防法 気象病を予防するためには、自律神経のバランスを整えることが重要です。自律神経のバランスを保つために、ストレスを溜め込まないように心がけましょう。また、次のような習慣を心がけることで、気象病の症状が現れにくくなります。 朝に日光を浴びる 朝に日光を浴びることは、身体の生活リズムを整えるために重要です。太陽光は体内時計をリセットし、睡眠を促すメラトニンというホルモンの生成を促進します。その結果、夜の睡眠の質が高まり、日中も活動的に動けるようになります。例えば、朝起きたらカーテンを開け、自然光を浴びながら朝食をとることを習慣にするのもよいでしょう。 1日3食 規則正しい食生活を心がける 1日3食の規則正しい食生活を心がけることが重要です。特に朝食は、寝ている間に下がった体温を上げ、身体を目覚めさせる役割を果たします。また、朝食をとることで腸の活動が活発化し、自律神経を活性化させるホルモンが生成されます。 運動を習慣づける ストレスを受けたときには、通常交感神経が優位になります。身体を動かすことで、交感神経から副交感神経に切り替えやすくなります。運動習慣がない方は、簡単なストレッチからはじめて少しずつ強度が高い運動に切り替えていくとよいでしょう。 寝る前のスマホ操作を避ける スマホやテレビ、パソコンのモニターなどから放出されるブルーライトは、交感神経を刺激することで寝つきを悪くしたり、睡眠の質を低下させたりします。就寝の1時間30分前からスマホの画面やテレビなどは見ないようにしましょう。 胃腸の状態を整える 近年、「胃脳相関」「脳腸相関」が注目されています。胃腸の状態が悪いと、脳・自律神経へも悪影響とされています。胃腸の状態を安定させるために、ヨーグルトをはじめとした発酵食品を定期的にとることをおすすめしています。免疫系にもプラスの働きがあるため、感染症なども引き起こしにくくなります。 気象病のセルフケア 気象病の症状を軽減できる可能性がある簡単なセルフケア方法をご紹介します。 耳マッサージ 耳を軽くつまんだ状態で上下左右に引っ張ってそれぞれ5秒キープします。耳を折り曲げた状態を5秒キープします。耳に手のひらを当て、円を描くように後ろ向きに5回まわします。 これを朝・昼・晩の1日3回行いましょう。内耳周辺の血行が促されることで、気象病の症状が和らぐ可能性があります。 タオル体操 首にタオルをかけて、両端を握ります。前方の斜め上に向かってゆっくりと引っ張ります。目線を上げて首の力を抜き、タオルにゆだねた状態で10秒かけてゆっくりと呼吸します。タオルに首をゆだねたまま顎を10回上下させます。 首から耳にかけての血流が促され、自律神経の乱れを整えることが期待できます。これも1日3回を目安に行いましょう。 痛み日記をつける 痛み日記をつけることは、気象病の症状と天気の関係を把握する上で役立ちます。天気や気圧の変化、痛みの強さや発生時期などを記録しましょう。1ヵ月ほど続けると、身体のリズムと天候の関係が見えてきて、適切なタイミングでセルフケアができるようになります。 気象病の治療法 気象病の症状が強い場合、医療機関では次のような薬が処方されます。 漢方薬 第一選択薬として、漢方薬を使用することが多いとされています。漢方薬には身体を温めたり、血行を促進したりする作用があり、気象病の症状緩和に役立つことがあります。 抗めまい薬 めまいや吐き気などの症状に対しては、乗り物酔い止めの薬が使用されますが、それでも改善されない場合には抗めまい薬(内耳循環障害改善薬)が選択されます。 鎮痛剤 頭痛や肩こり、腰痛、関節痛などの症状を軽減するために、一般的な鎮痛剤を使用することがあります。 * * * 気象病は天気が悪いことが影響して体調が悪くなるため、原因がわかりづらく、周りの人にはなまけているように見えるかもしれません。しかし、現れる症状には個人差があり、人によっては生活に支障をきたす可能性があります。利用者さんやその家族が、天気が悪いときにだけ原因不明の体調不良が起きる場合は、気象病である可能性も検討してみましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長  医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇奈良県医師会「「気象病」って何? ―天気で痛みが出てくる―」https://nara.med.or.jp/for_residents/6421/2024/5/10閲覧

言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護
言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護
インタビュー
2024年5月14日
2024年5月14日

言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護

大阪府住吉区の「医療法人ハートフリーやすらぎ」に新卒から入職した大藪 涯さんは、訪問看護、デイサービスで働く看護師です。新卒で訪問看護師になった理由や、重症心身障がいのある利用者さんやご家族と接する中で感じていることなどを伺いました。 大藪 涯(おおやぶ がい)さん  看護師。2022年4月に新卒で医療法人ハートフリーやすらぎに入職。大学の在宅分野の教授の教えに影響を受け、訪問看護師を目指す。現在は週2日ナーシングデイに勤め、その他の日は訪問看護を担当。1年目は診療所にも出向き、バイタルサインや採血などの経験を積む。 医療法人ハートフリーやすらぎ:https://www.heartfree.or.jp/ その人の生き方や生活を大事にしたい ─まずは、大藪さんが看護師を目指した理由や、訪問看護師に興味を持ったきっかけを教えてください。 医療に興味をもったきっかけのひとつは、幼いころに筋ジストロフィーという難病を患った弟さんがいる友人に出会ったことです。その友人は弟さんのことを明るく話していて、それが私には大きな衝撃でした。当時の自分は医療の知識もなく、難病は「とにかく大変なもの」というイメージがあったので、友人の受け止め方にいままでの印象を覆すものがあったというか。「病気との向き合い方」に興味を持ったことがきっかけで、看護師の仕事に興味を持つようになりました。 訪問看護師になろうと思ったのは、在宅分野の教授のお話がきっかけです。例えば、入院中は患者さんの喫煙や飲酒は原則避けることになりますが、訪問看護では利用者さんがしたいことと健康状態を照らし合わせ、どこまでOKなのか看護師の視点からアドバイスできる。一律でその行為を禁止するのではなく、その人に合わせて基準や看護のしかたを変えるのだ、という内容でした。 私は、健康を守ることはもちろんのことですが、その人の生き方や生活を大事にしながら関わりたいという想いがあったので、訪問看護に興味を持つようになったんです。 デイサービスで働く大藪さん ─就職活動をしていたときのことや、ハートフリーやすらぎに入職した経緯などを教えてください。 はい。そもそも訪問看護ステーションの新卒採用枠は少ないですし、大学の同学年の中でも訪問看護ステーションへの就職を目指していたのは私一人という状況でした。でも、さきほどお話しした教授が新卒で訪問看護師になることを応援してくれたんです。教授や学校の先輩にも相談している中で、ハートフリーやすらぎが新卒の採用に積極的だと知り、応募したという経緯です。 就職前に同行訪問をさせてもらったのですが、利用者さんが「訪問看護師さんたちにとてもよくしてもらっていて、自分の最期はこの方々にお任せしたいと思っている」とお話しされていたんです。それだけ信頼を得られる関係を築けていることに驚きました。また、職員同士の仲もよくて、和気あいあいとした雰囲気でした。プライベートなことも気軽に相談できるような関係性を見て、すごく安心したのを覚えています。 少しずつ確実にみえてきた利用者さんの表情 ─利用者さんとの関わりを通じて感じたことを教えてください。 はい、こちらの写真のSちゃんは15歳の女の子で、生後4ヵ月のころ、後天的に低酸素脳症を発症しました。その後、慢性呼吸器不全、てんかん、痙性四肢麻痺を発症し、現在は人工呼吸器を24時間装着しています。吸引や胃ろうからの注入が必要です。 私はまず、Sちゃんのデイサービスのケアから関わらせてもらいました。Sちゃんは比較的必要なケアが多い利用者さんで、吸引、入浴介助、浣腸、胃瘻からの注入、人工呼吸器の管理も行います。最初は個別のケアの方法を覚えるだけでも精一杯で、ほかの看護師が「Sちゃん、今日はご機嫌だね」とか、「しんどそうだね」と言っているのを聞いて、なぜ気持ちがわかるのか不思議だったんです。 ですが、Sちゃんにはきちんと表情がありますし、伝えようとしていることもありました。それを私が読み取れていないだけだったんです。言葉はなくとも、手を握ってくれたり、舌を動かしたり。口元や目元にも変化があります。長く一緒にいることで、私にもSちゃんの気持ちがわかるようになりました。 大切なのは、「どんなことを感じているんだろう」と、関心を持って探ること。そしてそれは、ケアの微妙な加減にも繋がると思います。デイサービスの場合、比較的長い時間お預かりできるので、毎日少しずつ、より確実に理解できることが増えていく感覚がありました。 ─半年ほど経ってから、Sちゃんの訪問看護もご担当されたと伺っています。どのようなことを感じましたか? デイサービスでさまざまな子どもたちと触れ合った経験が、訪問看護にも活かせると感じましたし、デイサービスにはデイサービスの、訪問看護には訪問看護の学びがあると思いました。 訪問看護でご自宅に伺って感じたのは、ご家族がSちゃんを良い意味で特別視していなくて、「日常」の中にSちゃんの存在があるということですね。妹さんや弟さんのお友達が遊びに来ているときも、「おかえり、看護師さんも一緒なんだね」というくらいの受け止め方なんです。Sちゃんも妹さんも弟さんも、それぞれ大切な存在で、障がいの有無で区別されていないというか。 Sちゃんはすごくお洒落に興味があるので、お洋服やアクセサリーをご家族が買ったり、自分で選んだりもするんですよ。アミューズメントパークにみんなで行ったときのこととか、ご家族からお出かけの話を伺うこともあります。先ほどの私の友人の話にも繋がりますが、疾患があっても、本人とご家族にとっての「したい生活」が叶うこと、安心して生活ができることがとても大事なのだと感じます。 ─自宅だからこそ見える部分があるのですね。一方で、重症心身障がいを持つ方へのサポートについて、課題に感じる部分はありますか? はい。医療的ケアが必要以上に「難しいもの」と捉えられてしまっているのではと感じることがあります。医療的ケアが身近でない方は、少し利用者さんの体調が変わっただけで、とても戸惑ってしまうんです。知らずして「関わるのが怖い」となってしまいがちなのは、難しいところだなと感じています。例えば、Sちゃんの場合は妹さんも吸引をはじめとした医療的なケアをしていますし、彼女のことを知っていれば「この変化は一時的なもの」と判断できるケースも多いです。 また、どうしても保護者に負担が偏っている現実があると思います。負担を軽減できる制度がもっとあればいいなと思うのですが、現状はまだまだ足りないのではないかと…。例えば、Sちゃんのご家庭の場合、体調不良でサービスの日程を変えるときなどは、相談員さんや介護タクシーなど、スケジュールの組み直しのための連絡と相談が必要になります。実にさまざまなところで報・連・相が必要とされる。それをお母さまがお一人でこなしているわけです。訪問看護も毎回同じ看護師というわけではないので、状況による判断などもSちゃんのお母さまに委ねるところが大きくなってしまう。家事やほかの子の育児もある上でのことですので、大変さが伝わってきます。18歳以上は放課後等デイサービスの対象でなくなり、生活介護に変わります。そのような将来のことについても考えなくてはなりません。 ー調整の負担が保護者にのしかかっている現実があるのですね。 「この人に任せたい」と思われる看護師に ─ハートフリーやすらぎに就職されてもうすぐ2年になりますが、改めて思うところはありますか? 就職したときよりも、さらに利用者さんとの関わりの深さを感じています。ハートフリーやすらぎに長く勤めている先輩看護師の中には、過去に看取りをさせていただいた方の息子さんや娘さんの訪問看護を依頼され、二世代に渡って訪問している人もいます。そういう人はそのご家庭の過去の歴史を含めて深く理解していることもあって利用者さんからの信頼も厚く、繋がりが強固です。私も、長きに渡る関係性を持てるように利用者さんと関わっていきたいなと思いますね。 それから、先輩たちに質問すると、とても丁寧に対応してもらえますし、一緒に答えを探してくれるんです。このステーションにはいわゆる「プリセプター」(後輩看護師を指導する先輩看護師)がいないので、教育担当者ひとりに責任を負わせることなく、新人を「全体で育てていこう」という精神が強いと思います。また、プレッシャーを与えない一方で「任せるよ!」という姿勢を見せてもらえるのがとても嬉しいです。自分の成長や存在、このステーションにおける自分の役割を実感することができています。 大藪さんと訪問看護利用者さん ─最後に今後の目標や、「なりたい看護師像」を教えてください。 利用者さんの病状のみならず、生活を深く知ることは、どんなケアをすべきか、看護師としてどう関わっていくべきか、ということに繋がると思います。ご家族の負担や希望なども伺いながら、ご家族と一緒にひとつのチームになってケアをしていきたいと思っています。第三者よりも、一歩ご家族に近い存在になりたいですね。 いずれは、利用者さんから「この人に看護を任せたい」と思ってもらえる存在、安心感を持って頼ってもらえる存在になりたいです。今後、さまざまな利用者さんと出会うと思います。成長・発達段階や、疾患・障がいなどによってもご相談いただく内容が変わってくるので、しっかり応じられる看護師になれるよう、これからいろいろと学んでいきたいと思います。 ─ありがとうございました! * * * 次回は「ハートフリーやすらぎ」で働く石川さんにデイサービスでの子どもたちとの触れ合い方や、職場の在り方などについて伺います。>>次回の記事はこちら(※近日公開)自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護 ※本記事は、2024年2月時点の情報をもとに構成しています。 執筆:倉持 鎮子取材・編集:NsPace編集部

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