2022年9月27日
【セミナーレポート】vol.3 具体的なBCP策定手順 後編/BCP策定へのSTEP~いのちと暮らしを守る、継続可能な業務計画を考える~
2022年6月24日(金)に実施したNsPace(ナースペース)オンラインセミナー「BCP策定へのSTEP~いのちと暮らしを守る、継続可能な業務計画を考える~」では、WyL株式会社 代表取締役で現役看護師の岩本大希さんを講師に迎え、2024年から義務化される訪問看護ステーションのBCP策定について考えました。セミナーレポート最終回となる今回は、その中で紹介された全8STEPのBCPの策定手順のうち、STEP4〜8(BCP発動~地域連携、運用訓練まで)をまとめます。※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。
【講師】岩本 大希さんWyL株式会社 代表取締役/ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長/看護師・保健師・在宅看護専門看護師2016年4月にWyL株式会社を創立し、直営で2店舗、関連会社でフランチャイズ4店舗を運営(2020年12月現在)。訪問看護現場におけるBCPの重要性にいち早く着目し、2021年には厚生労働省が推進する研究事業(厚生労働科学特別研究事業)「在宅医療の事業継続計画(BCP)策定に係る研究」に参画。
目次▶ 【STEP 4】業務の評価と分析 ・業務の洗い出しと評価 ・優先業務のリスクの分析▶ 【STEP 5】エスカレーションの整理▶ 【STEP 6】計画のまとめと運用ルールの確認▶ 【STEP 7】「連携型BCP」「地域包括BCP」の策定▶ 【STEP 8】演習、トレーニングの実施
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▶ 【STEP 4】業務の評価と分析
STEP4では、既存の業務の整理を行います。以下の2つの段階を踏んで見直していきましょう。
業務の洗い出しと評価
まずは平時の業務を洗い出してリスト化し、それぞれ以下の3つの優先度に分類していきましょう。
①優先業務:災害時にも継続する必要がある業務②縮小業務:優先度は中程度。縮小または変更することが可能な業務③一時休止業務:優先度が低く、一時的に休止が可能な業務
例えば地震が起こった際はどうなるでしょうか? 看護がないと生活できない利用者さんはたくさんいるので、頻度を減らす可能性こそありますが、おそらく訪問は行かなければならないですよね。しかし、他の機関との連携や調整は縮小してもいいのではないか。同行訪問してのOJTや座学の教育は状況が落ち着くまで休止することにしよう。そういった形で、業務の優先順位を決めていきます。
優先業務のリスクの分析
継続しなければならない優先業務が明確になったら、その業務のリスク分析をしていきましょう。具体的には、どんな要因(ボトルネック)で業務を続けられなくなるのか、継続が困難になった際の代替手段はあるのかを考えます。これもSTEP2でご紹介したシナリオの想定と同じように、「ヒト」「モノ」「カネ」「ライフライン」「情報」という5つの観点で整理をしていきます。
このように業務の評価と分析をきちんと行うことで、事業継続の可能性を確実に高める計画を立てられます。
▶ 【STEP 5】エスカレーションの整理
続くSTEP5では、「エスカレーション」という考え方に基づいて、特定の条件下でどんな対応をしていくかをまとめます。エスカレーションとは、端的にいうと危険度に応じて適切な対応をとること。危険度は被害のレベルとほぼ同じ意味と考えてもらえるとわかりやすいかと思います。被害をこうむる立場の視点で危険度を4つの段階に分類し、それぞれのステージで起こすべきアクションを決めて、シートにまとめていきましょう。各ステージの大まかなイメージは以下のとおりです。
ステージ1:災害対応マニュアルなどを活用し、リスク発生から一週間ほどで業務を復旧できるレベル。 ステージ2:業務復旧に時間がかかり、一部の業務を縮小あるいは休止し、優先度の高い業務だけに絞って続けていくレベル。BCPを発動する段階。 ステージ3:事業所単位では業務の復旧ができないレベル。近隣の訪問看護ステーションに人員を融通してもらったり、一部の利用者さんの訪問を任せたり、連携型BCPを発動してサバイブしていく段階。 ステージ4:すべての業務を中断し、避難しなければならないレベル。場合によっては事業所をクローズすることも。東日本大震災などはこのステージ4にあたる。
▶ 【STEP 6】計画のまとめと運用ルールの確認
STEP1〜5までの検討内容をひとつの文書にまとめます。シートや冊子など、形式は各事業所で使いやすい形を自由に選んでください。このSTEP6までのアクションで、事業所単位でのBCP策定は完了となります。しかし、BCPはつくることがゴールではなく、完成後はきちんと運用し、リスク発生時に確実に対応できる状態を維持することが必要です。そのためには、定期的に内容を見直す担当者は誰か、発動者は誰か、改めて整理しましょう。また、完成した文書がスタッフ一人ひとりに行き渡るようにする方法も考え、実践してくださいね。
▶ 【STEP 7】「連携型BCP」「地域包括BCP」の策定
事業所のBCPが完成したら、自分の事業所だけでは対応できない事態になった場合の協力体制の検討、つまり「連携型BCP」や「地域包括BCP」づくりにも取り組んでみましょう。このとき、近隣の訪問看護ステーションに協力依頼をした際の診療報酬の請求ルールについても考え、協定や事前契約を結んでおくと安心です。
▶ 【STEP 8】演習、トレーニングの実施
演習を行ってBCPで決めた行動をとれるか確認したり、方針や自分がやるべきことを覚えるトレーニングをしたりすることも重要なステップです。実際に動く中で、足りないことを発見できる可能性もあるでしょう。よりよい計画にアップデートするためにも、ぜひ時間をつくって取り組んでください。
記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア