2024年7月23日
アロマテラピー 代表的な精油&訪問看護での活用法【セミナーレポート後編】
NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「アロマテラピーの基礎知識&活用術~毎日に癒しを~」を2024年4月19日に開催しました。講師として登壇してくださったのは、アロマアドバイザーの資格をもつ訪問看護師の有賀莉奈さん。訪問看護の現場を知る有賀さんに、アロマテラピー(アロマセラピー)の基本的な楽しみ方や注意点、訪問看護での活用方法などを教えていただきました。
今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、アロマテラピーの具体的な実践方法をまとめます。
※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。
>>前編はこちらアロマテラピー 基礎知識&医療現場での注意点【セミナーレポート前編】
【講師】有賀 莉奈さん訪問看護師/アロマアドバイザー(ナード・アロマテラピー協会)看護師として諏訪赤十字病院で8年間勤務した後、出産・育児に専念する期間を経て、yui訪問看護ステーションにて臨床現場に復帰。アロマテラピーを深く学ぼうと考えたきっかけは、自身の母親が闘病中に「アロマの力」に救われた場面を目の当たりにしたこと。現在は看護業務の傍らメディカルアロマセラピストとして、利用者さんの心身を支えるケアに取り組んでいる。
代表的な精油とその特徴
精油にはさまざまな種類がありますが、その中でも初心者の方が使いやすい、手に入れやすいものを以下にまとめました。
ラベンダー・アングスティフォリア アロマテラピーの万能薬と言われている。精神的・肉体的にリラックスさせてくれ、ストレス・不眠症の助けになる(使用方法・量を守れば注意事項・禁忌なし)オレンジ・スイート柑橘系のオレンジの香り。気分を軽くさせてくれ、リフレッシュさせてくれる(使用方法・量を守れば注意事項・禁忌なし)ゼラニウム・エジプトバラに似た甘い香り。お肌のケア・リラクゼーションによく使われ、鎮静作用がある成分を多く含んでいる(使用方法・量を守れば注意事項・禁忌なし)マジョラム爽やかでスパイシーな香り。副交感神経を刺激する作用があり、リラックスさせてくれる。精神神経系の不調を感じた時に助けになる(使用方法・量を守れば注意事項・禁忌なし)ユーカリ・ラディアタツーンとした、少し湿布に似た香り。ユーカリの中でも最も刺激が少ない。風邪や呼吸器系の疾患、花粉症の予防や回復の助けになる(使用方法・量を守れば注意・禁忌なし)レモングラス強いレモンの香り。ストレス解消や痛みの軽減に役立ってくれる。冷え性やむくみの改善の助けにも(注意:50%に希釈して使用する)イランイラン高級な香水の香料に使われることも多い。海外では緩和ケアに使用されることもあり、痛みの緩和や入眠の助けになる(使用方法・量を守れば注意事項・禁忌なし)
なお、精油は複数の種類を混ぜることで相乗効果が期待できます。気分や体調に合わせて、ぜひ以下の「おすすめレシピ」を試してみてください。
簡単にできる 自分のためのアロマケア
看護師のみなさんの中には、日々忙しい生活を送り、ストレスを抱えている方もいらっしゃることでしょう。そこで、ご自身の生活にもアロマをとり入れてみてはいかがでしょうか。以下に、手軽に実践できる方法をご紹介します。
日々のストレス緩和に ・精油を瓶ごと持ち歩く・アロマペンダントを使用する・ハンカチに精油を垂らすリラックスタイムに・アロマディフューザーを使用する・アロマバス(湯船に精油を入れる。バスオイル20mlに対して精油15~20滴)・アロマストーンや布・ティッシュに精油を数滴垂らす・アロマトリートメント(植物オイル5mlに対して精油1~2滴を混ぜてケアに使用 ※濃度1~2%)体調管理に・除菌スプレー(無水エタノール18ml、精製水2ml、精油12~20滴 ※濃度3~5%)・加湿機能付きのアロマディフューザーを使用する
医療現場での活用方法
医療現場で利用者さんにアロマテラピーを行うにあたっては、安全性の確保が大前提となります。コストや手間も考慮すると、禁忌や注意事項がない精油を何種類かそろえ、その中で組み合わせていくのがよいでしょう。
具体的な楽しみ方として、簡単に実践できる「芳香浴」「手浴・足浴」「アロマトリートメント」をご紹介します。
芳香浴
精油の香りを部屋に拡散させて楽しむ方法。専用のストーンやディフューザーを使わなくても、ティッシュや布に垂らすだけで十分です。そんな芳香浴のメリットは、同じ空間にいる方と一緒に香りを楽しめるところ。利用者さんだけでなく、日々の介護でストレスを感じているご家族にも喜ばれます。
手浴・足浴
乳化剤と精油を混ぜたものを垂らしたお湯で、手浴・足浴を行います。清拭に使うお湯に垂らす方法もありますが、その際も必ず乳化剤と混ぜて使用してください。
また、清拭のお湯に精油を混ぜるのは、エンゼルケアにも適しています。故人の好きな香り、日頃から使っていた香りを最後のご準備で使えば、ご家族が香りを嗅ぎながら故人との思い出を振り返ったり、心を落ち着かせたりする手助けになるでしょう。
アロマトリートメント
植物オイルに精油を混ぜて、それを塗布しながらアロマトリートメントを行います。肩こりやむくみなどの不調の緩和・改善を目指すものですが、長い時間行うと疲労感が出る場合もあるため、5~10分で十分でしょう。また、姿勢も無理がないように配慮してください。
訪問看護でのアロマテラピーのコスト&説明
アロマテラピーを実践する際にかかるコストとしては、まず精油の費用が挙げられます。精油は多くが1本あたり5~10mlの容量で販売されており、値段は2,000円~10,000円を超えるものまでさまざま。希少な植物から抽出された精油ほど値段は高くなります。ただし、一度に使うのは数滴で、一滴あたりの値段は数十円であることがほとんどです。
精油のほかには、ホホバオイルをはじめとした「キャリアオイル」や、精油を湯に浮かべる際に使う乳化剤などの費用もかかります。
時間としては、手浴・足浴、アロマトリートメントを行った場合で5~10分程度です。特にアロマトリートメントは体に負担をかける可能性があるため、体調不良者や病態の変動を起こしやすい方が多い医療現場では、短めの時間で行うことをおすすめします。
訪問看護でのアロマテラピー導入の流れ
私が所属する訪問看護ステーションでは、まず訪問看護の契約時に、内容や注意事項、料金などを記載したパンフレットを配布します。それを読んで興味をもたれた方には、さらに詳しくご説明。そして、主治医の許可を得てお試しケアを実施します。その際、利用者さんには、アロマテラピーはあくまでリラクゼーションや症状の緩和を目指して行うことをしっかりと説明します。
アロマの施術は訪問看護の時間内に行いますが、治療ではないため、訪問看護指示書には記載されていません。当ステーションの場合、現状では施術料は請求せず、材料費のみいただいています。
施術の内容は、「芳香浴」「手浴・足浴」「オイルトリートメント」から利用者さんに選んでいただきます。当ステーションで採用している精油や植物オイルは以下のとおりです。
使用する精油ラベンダー・アングスティフォリア、マジョラム、オレンジ・スイート、ゼラニウム・エジプト、ラヴィンツァラをそろえています。症状や使用箇所などを考慮し、この中からいくつかを組み合わせて使います。使用する植物オイルオイルトリートメントには「ホホバオイル」を使っています。肌に優しく、敏感肌の方を含め、あらゆる肌質の方に使えるといわれているためです。
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今回はアロマテラピーの基本をご紹介しましたが、お伝えしきれていない魅力がまだまだあります。心地よいアロマの香りは利用者さんの心をほぐし、ストレスを緩和する手助けをしてくれます。これをきっかけにアロマテラピーについて興味を持っていただき、ご自身のケアや日常の看護に取り入れるきっかけとなれば嬉しく思います。
執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア