2022年3月1日
「訪問看護」関連はこう変わる! /令和4年度診療報酬改定・速報解説 後編
令和4年度診療報酬改定の具体的な内容が示されました。このシリーズでは、訪問看護関連の改定項目のうち、主に訪問看護ステーションの運営や収益に関わる重要な部分にフォーカスして、速報でお届けします。(2022年2月14日現在)
【目次】■専門性の高い看護師の訪問看護を推進―「訪問看護管理療養費」の新設【Ⅰ-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保⑭】
■同行訪問する専門性の高い看護師に特定行為研修修了看護師が追加-「専門性の高い看護師」の「褥瘡ケアにかかる専門の研修」に「特定行為研修」を追加【Ⅰ-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保⑬】
■訪問看護における医師の「特定行為の手順書」に加算―「訪問看護指示料」の新設【Ⅰ-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保⑮】
■看取りニーズに応え退院日のターミナルの見直し―訪問看護ターミナルケア療養費の算定要件が緩和【Ⅰ-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保⑯】
■ICT活用による医師との看取り連携―「遠隔死亡診断補助加算」の新設【Ⅰ-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保㉔】
■医療的ニーズの高い利用者への複数名訪問看護の拡大-「複数名訪問看護加算」の要件の見直し【Ⅰ-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保⑰】
■訪問看護ステーションの看護師による、退院日の長時間退院支援指導を評価-「退院支援指導加算」の新設【Ⅰ-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保⑱】
■難病等の利用者への複数回訪問看護における事務手続きの簡素化-「難病等複数回訪問加算」等における同一建物内利用者の評価区分の見直し【Ⅰ-6 質の高い在宅医療・訪問看護の確保⑲】
※【】内は、個別改定項目について.中医協 総-1 4.2.9,https://www.mhlw.go.jp/content/12404000/000905284.pdfの項目を表示
専門性の高い看護師の訪問看護を推進―「訪問看護管理療養費」の新設
訪問看護ステーションに配置されている専門の研修を受けた『専門性の高い看護師』が訪問看護を行い、利用者の病態に応じた高度なケアおよび計画的な管理を実施した場合の評価として、「訪問看護管理療養費」が新設され、月1回に限り専門管理加算として所定額に2500円が加算されます。在宅患者訪問看護・指導料および同一建物居住者訪問看護・指導料においても同様です。専門の研修とは、「緩和ケア、褥瘡ケアもしくは人工肛門ケアおよび人工膀胱ケアに係る専門の研修」ならびに「特定行為に係る看護師の研修制度」です。これまでの日本看護協会認定「専門看護師」「認定看護師」に「特定行為研修修了看護師」が追加されました。国は特定行為研修の推進を強力に進めており、今回の改定では、精神科リエゾンチーム加算、栄養サポートチーム加算、褥瘡ハイリスク患者ケア加算、呼吸ケアチーム加算の要件として履修が必要とされる研修の種類に特定行為研修が追加されました。
同行訪問する専門性の高い看護師に特定行為研修修了看護師が追加-「専門性の高い看護師」の「褥瘡ケアにかかる専門の研修」に「特定行為研修」を追加
専門性の高い看護師による同行訪問を評価する「訪問看護基本療養費(Ⅰ)(Ⅱ)」の算定要件として、訪問看護ステーションの看護師は「専門の研修」を受講することが必須とされています。この研修のうち「褥瘡に係る専門の研修」として、特定行為研修のうち「創傷管理関連の研修」が追加されました。ここでも、特定行為研修修了者にインセンティブを与えるような動きが加速しています。なお、「在宅患者訪問看護・指導料」の3、および「同一建物居住者訪問看護・指導料」の3についても同様です。
訪問看護における医師の「特定行為の手順書」に加算―「訪問看護指示料」の新設
訪問看護ステーションにおいて特定行為研修を修了した看護師が、訪問看護時に「特定行為」を行う際には、医師による「特定行為の実施に係る手順書」が必要となります。そのため、「訪問看護指示料」が新設されます。 訪問看護において専門の管理を必要とする特定行為は、「気管カニューレの交換」「胃ろうカテーテル若しくは腸ろうカテーテル又は胃ろうボタンの交換」「膀胱ろうカテーテルの交換」「褥瘡または慢性創傷の治療における血流のない壊死組織の除去」「創傷に対する陰圧閉鎖療法「持続点滴中の高カロリー輸液の投与量の調整」「脱水症状に対する輸液による補正」です。
看取りニーズに応え退院日のターミナルの見直し―訪問看護ターミナルケア療養費の算定要件が緩和
「訪問看護ターミナルケア療養費」の算定にあたっては、利用者の死亡日とその前14日以内に2回以上の指定訪問看護を実施しなければなりません。訪問看護基本療養費または精神科訪問看護基本療養費の算定を2回以上しなければならないのですが、退院日の訪問は訪問看護基本療養費の算定ができませんでした。そのため、利用者が退院日かその翌日に亡くなった場合は、「訪問看護ターミナルケア療養費」は算定できませんでした。しかし、ターミナル期の利用者は退院直後に死亡することも多いため、退院日に訪問看護師がケアを行うことが多いのです。そこで今回、指定訪問看護に「退院支援指導加算の算定に係る療養上必要な指導を含む」として、退院日の退院支援指導を含めることとなりました。
ICT活用による医師との看取り連携―「遠隔死亡診断補助加算」の新設
訪問看護ステーションに配置されている「情報通信機器を用いた在宅での看取りにかかる研修」を受けた看護師が、医師がICTを活用して死亡診断等を行う場合にその補助を行ったとき、「遠隔死亡診断補助加算」として、1,500円が所定額に加算されます。
医療的ニーズの高い利用者への複数名訪問看護の拡大-「複数名訪問看護加算」の要件の見直し
「複数名訪問看護加算」は、複数名で訪問看護を行う必要がある利用者に対して、同時に複数の看護師等による訪問看護を行った場合に算定できる加算です。「複数の看護師等」が同時に訪問を行う場合と「看護師等と看護補助者」が訪問する場合で、回数制限も算定額も違います。看護補助者が同行する場合は、週3日までと制限無しがあり、制限無しには1日2回も1日3回以上もあります。1日に複数回の訪問を行った場合(医療的ニーズの高い利用者の場合)は算定額が高いため、看護補助者との同行訪問が増えました。このときは、「看護職員が看護補助者と同時に指定訪問看護を行う場合に限る。」とされていました。そこで今回、看護師等が同行する場合も算定可能と変更されました。看護師等が複数で同時訪問する場合も評価されれば、医療的ニーズの高い利用者のメリットになるでしょう。 在宅患者訪問看護・指導料の注7および同一建物居住者訪問看護・指導料の注4に規定する複数名訪問看護・指導加算も同様です。
訪問看護ステーションの看護師による、退院日の長時間退院支援指導を評価-「退院支援指導加算」の新設
「退院支援指導加算」は、退院時に訪問看護ステーションの看護師等が、退院する医療機関以外の場で、退院時に療養上必要な指導を行った場合に算定されるものです。退院日の翌日以降初日の指定訪問看護実施日に1回だけ訪問看護管理療養費に加算されるというものです。今回は、退院日に看護師等が長時間にわたる退院支援指導を行った場合の評価を新設し、退院支援指導加算として8,400円加算されます。実際に、長時間の訪問を要する医療的ニーズの高い利用者に対して、訪問看護ステーションの看護師が退院日に長時間(90分以上)の訪問をしているという結果も示されています。
難病等の利用者への複数回訪問看護における事務手続きの簡素化-「難病等複数回訪問加算」等における同一建物内利用者の評価区分の見直し
「難病等複数回訪問加算」とは、難病等の利用者に対して必要に応じて1日に2回または3回以上の指定訪問看護を行った場合に算定できる加算で、回数によって算定額が変わります。これは同一建物居住者に対しては複数回・複数名の訪問看護に対して減算になるようになっています。今回の改定では、同一建物内の利用者の人数に応じた評価区分の加算について、同じ金額の評価区分を統合することになりました。これは事務手続きの簡素化のためです。
記事編集:株式会社照林社