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コラム
2022年2月8日
2022年2月8日

看護師の皆さん!ALSに対するイメージで勝手に壁を作っていませんか?

ALSを発症して6年、40歳の現役医師である梶浦さんによるコラム連載です。難病患者とあまりかかわったことのない看護師さんに特にお伝えしたい、ALS患者の願いです。 ALSに対するイメージで、壁を作っていませんか? 看護師の皆さんはALS患者に対してどんなイメージを持っているでしょうか。 ALS患者とあまり接したことがない看護師さんの多くは、「コミュニケーションのとれないやっかいな患者」「何を考えているのかわからない」「どう接すればよいのかわからない」そんなイメージを持っているのではないでしょうか。 入院は「どaway」 私は2021年2月に気管切開と声門閉鎖手術を行いました。コロナの影響でヘルパーさんの付き添いが認められず、一人きりの入院でした。 ふだんは、私の性格や行動パターンを理解して、会話もスムーズにできる家族やヘルパーさんや看護師さんたちに囲まれて、楽しく快適に暮らしています。まさに「home」です。しかし、一人きりの入院となると、私のことをまったく知らない人たちに囲まれての生活です。まさに「どaway」。 主治医を信頼していたので手術に対する不安は全然ありませんでしたが、一人きりになることが、不安で不安でしかたありませんでした。 皆さんも、自分に置き換えて想像してみてください。体が動かせず、通訳もいない状態で、言葉の通じない病院に一人きりで入院する感じです。想像しただけも恐ろしい……。 文字盤も説明書も手作りボードも使われず…… なので、いろいろ対策をしていきました。もちろん初対面で文字盤を使い、コミュニケーションをとることは難しいとよくわかっていたので、文字盤の使いかたを書いた説明書と、いろいろな種類の文字盤を持参しました。それでも使えないときのために、あらかじめ、「頭を置き直して」「足を曲げて」「iPadをセットして」「痛い」「苦しい」など、伝えたくなるであろうことを書いたボードも持参しました。 実際に持参したボード ですが、それすらほとんど使ってもらえませんでした。声も出せず、目以外ほとんど動かせない自分と、積極的にコミュニケーションをとってくれようとした看護篩さんは、ほとんどいませんでした。ある程度想像していたものの、ここまでとは思いませんでした。 誰か一人でもコミュニケーションをとろうとしてくれたら 入院中にこんなことがありました。 手術後ICUにいたとき、体勢を整えた際に枕が高すぎて首が前屈し、気切部のカニューレが圧迫されていました。このときから、部屋にいた看護師さんに苦しい合図を出していましたが、目を合わせてもらえず、合図は届きません。看護師さんが離れ、何とか足元のナースコールを押そうとしてもがいていたら、体がずり下がり、首の前屈が強くなりました。徐々に気切部のカニューレが閉塞し、呼吸ができなくなっていきました。 SpO2が下がりアラームが鳴って、看護師さんたちが集まって来たときには、すでにSpO2は80%台。私は必死で「首」「首」と心で叫びながら目で合図を送り続けていましたが、誰にも届きません。 SpO2が70%台まで下がり、苦しすぎて気を失いかけたとき、ようやく首が前屈しておりカニューレが閉塞していることに気がついてくれて、首の位置を直してもらい、なんとか立ち直りました。 誰か一人でも私とコミュニケーションをとろうとしてくれていれば、こんなことにならなかったのに……。 下手でもいいんです なぜコミュニケーションをとろうとしてくれないのだろうか? 看護をしたい気持ちがないからだろうか? 違います。看護師の皆さんからは、看護をしたい気持ちは伝わってきます。 ただ、「話し掛けてもコミュニケーションをとれるのだろうか」「話し掛けてもコミュニケーションがとれないなら、なるべくかかわらないほうがよいのでは」 そんなふうに考え、未知のものに触れる不安で、一歩を踏み出す勇気が出ないのだと思います。 私のような難病患者は、はじめから上手にコミュニケーションをとれるなんて、思っていません。たどたどしくてもいい、下手でもいい、ただ勇気を出して話し掛けてくれさえすれば、こちらはコミュニケーションをとれる方法を準備して、待っています。 なので、ALSなどの難病患者とあまりかかわったことのない看護師の皆さんには、この記事を読んで、一歩前に踏み出す勇気を持ってもらえたら嬉しいです。 コラム執筆者:医師 梶浦智嗣 記事編集:株式会社メディカ出版

特集
2022年2月8日
2022年2月8日

胃瘻患者さんの家族から「口から食べられませんか?」と相談された場合【訪問看護のアセスメント】

高齢患者さんの症状や訴えから異常を見逃さないために必要な、フィジカルアセスメントの視点をお伝えする連載です。第3回は、胃瘻造設の患者さんで、ご家族から「元気になってきたから、もう口から食べられるのではないでしょうか?」と相談されました。さて訪問看護師はどのようにアセスメントをしますか? 事例 85歳男性で、入院前にはADLが自立していました。肺炎で入院し嚥下の状態が不安定だったため、胃瘻を作り経管栄養となりました。肺炎が完治したため自宅に戻りました。現在は座位が安定して取れるようになり、短距離の歩行もできるようになりました。家族から、「元気になってきたので、もう口から食べられるのではないでしょうか?」と相談されました。 全身状態の改善に伴い、嚥下機能が改善した可能性のある患者さんです。食事開始は医師の指示によりますが、経口摂取の可能性がどれだけあるのかをアセスメントし、報告することで言語聴覚士(ST)や医師の判断を促すことができます。呼吸状態を確認し、問題がないようなら嚥下に関するアセスメントを行ない、他職種と結果を共有し、ケアプランを考えましょう。 ここに注目! ●筋力が戻れば経口摂取の再開が可能ではないか?●嚥下の機能改善についてアセスメントする必要がある。 主観的情報の収集(本人・家族に確認すべきこと) ▪ 食事摂取の意欲、空腹感はあるか▪ 呼吸器症状(痰の量、咳嗽・むせの有無、痰の喀出ができるか、など) 客観的情報の収集 今回の事例は、神経麻痺の可能性は低いと考えられますが、念のために口腔と嚥下の状態をアセスメントします。 口唇を閉じることができるか 「パ」の音を発音してもらって確認します。口唇を閉じないと、正しく「パ」を発声することができません。 または、頬を膨らませてもらい、息漏れがないかを観察することでも確認できます。 口蓋垂の偏位 「あー」と声を出してもらい、口蓋垂の偏位がないかを確認します。舌咽神経・迷走神経に麻痺がある場合、健側に偏位します。 舌の偏位 舌の動きが悪くなると、食塊を奥に運ぶことができませんので、舌の動きを確認します。舌を前にいっぱいに出してもらい、偏位がないか、上下左右に動かしてもらい、スムーズに動くかを確認します。 舌の動きは舌下神経がつかさどっています。麻痺がある場合は、麻痺側に偏位し、動きも鈍くなります。 これらの症状がすべてみられなければ、経口摂取できる可能性が高まります。 歯の状態 歯牙の状態、入れ歯が合うかどうかを確認します。しばらく経口摂取していなかったため、入れ歯が合わなくなっている可能性があります。 舌の表面 舌の表面を視診し、清潔に保たれているか確認します。舌苔があったり、凹凸がなくてつるりとしていたりすると、味覚を感じにくくなり、食欲不振につながります。せっかく食事を始めても、味わう楽しみが得られません。 嚥下のアセスメント 唾液を飲み込んでもらい、喉頭隆起の動きがスムーズか、むせがないかを確認します。麻痺がある場合は、麻痺側の運動が遅れるので、うねるような動きがみられます。 嚥下の評価テストには、空嚥下を30秒以内に3回以上できるかを確認する反復唾液嚥下テスト(repetitive saliva swallowing test;RSST)や、水を飲みこませてむせや呼吸の状態を確認する水飲みテスト(modified water swallow test;MWST)などがあります。医師に相談して許可が得られれば行なってみましょう。 報告のポイント ▪患者・家族ともに経口摂取の意欲があること▪呼吸の状態▪嚥下にかかわる神経障害の有無、嚥下評価テストの結果 執筆 角濱春美(かどはま・はるみ) 青森県立保健大学健康科学部看護学科健康科学研究科対人ケアマネジメント領域教授 記事編集:株式会社メディカ出版

特集
2022年2月8日
2022年2月8日

認知症のある患者さんに接するときの7か条(後編)

患者さんの言動の背景には何があるのか? 訪問看護師はどうかかわるとよいのか? 認知症を持つ人の行動・心理症状(BPSD)をふまえた対応法を解説します。第2回は、「認知症のある患者さんと接するときの7か条」の、後編です。 4条 わかりやすい短い文章で話しましょう 短く区切って話しましょう 認知症の人は、一度に多くの話をすると理解できずに混乱してしまうことがあります。わかりやすい言葉で簡潔に伝えましょう。 たとえば、「リハビリの後、トイレに行って食事にしましょう」と、複数のことを一度に話しても、わかりにくく、伝わりにくいです。「トイレに行きましょう」「ご飯を食べましょう」と、短く区切って具体的に話すと伝わりやすくなります。 認知症の人は理解力が低下しているので、早口で話されると聞き取りにくいことがあります。聞き取りやすいように、声が聞こえるように近づいたり、ゆっくりとしたスピードで話すことなどしてみましょう。 その人に合った手段を探しましょう 高齢者では視力や聴力が低下していることもあります。言葉だけでなくジェスチャーや絵を活用するのもよいです。難聴がある場合は補聴器をつけることや、「トイレ」の絵や文字などを使うことなども一つの方法です。非言語コミュニケーションをうまく活用するなど、その人に合ったコミュニケーション手段を探すことが大切です。 相手にわかりやすいよう配慮することで、より良いコミュニケーションにつながります。 5条 低めの落ち着いた声でゆっくり話しましょう 認知症の人は、認知機能低下や加齢に伴う聴力の低下によって、急な変化への対応が難しいことがあります。急がせる・慌てさせる言葉や態度は、相手のペースを乱し、パニックに陥らせてしまいます。 話をするときは、声のトーンを落とし、ゆっくり落ち着いた雰囲気で話すことが大切です。低めの声でゆっくり話すことは聞き取りやすくもなります。一緒に話をして楽しい、安心できると感じるようなコミュニケーションをとりましょう。 コミュニケーションがうまく図れない原因が、認知症による影響のほか、睡眠不足や脱水傾向などが原因のこともあります。認知症以外の健康管理や、認知症以外でコミュニケーションを阻害する要因にも注意を払い、対応することも大切です。 6条 自尊心を傷つける言葉を使わないようにしましょう 認知症の人は、記憶の障害、見当識の障害、判断力の障害から、現在の状況とは違った言動を示すことがあります。認知症の人とコミュニケーションをとるときは、本人の在る世界を理解し、尊重することです。理解しがたい言動にも、何かしら意味があります。その気持ちを理解し、寄り添い、不安や不快なものは取り除くようにしましょう。 また、認知症の人は「話をしてもわからない」「どうせ忘れてしまう」と思われがちです。しかし、最近のことは忘れても古い記憶は残っていることが多いです。認知症が進み、記憶力が低下しても、感情も豊かで羞恥心やプライドは変わりません。その点をよく理解したうえで本人に話しかける必要があります。否定や強制的な説得など、自尊心を傷つける態度は避けましょう。 7条 相手の気持ちに寄り添いましょう 認知症の人は、話すのに時間がかかる、何か伝えたいことがあってもそれをなかなか言葉に出すことができないことがあります。そのときは、言葉が出てくるまでゆっくり静かに待ちましょう。 また、待っている間、表情や動きを見ながら、どんなことを伝えたいか想像しながら待ってみましょう。何らかの反応を感じられるかも知れません。 そして、認知症の人と話をするときは、相づちをうちながら傾聴し、相手の気持ちに寄り添いましょう。徘徊や妄想などの症状がある場合は、意味がわからない言動であっても、その人なりの理由があることが多いものです。否定や説得ではなく本人の気持ちに寄り添い、その言動の理由を見つけるよう努めましょう。 相手を受け入れ理解するには、その人を知ろうとする姿勢が大切です。感情を理解し、寄り添うことで、お互いに信頼関係が生じスムーズな会話につながります。 執筆浅野均(あさの・ひとし)つくば国際大学医療保健学部看護学科 教授 監修堀内ふき(ほりうち・ふき)佐久大学 学長 記事編集:株式会社メディカ出版 【参考】〇一般社団法人日本認知症ケア学会.『認知症ケアの実際Ⅱ:各論.改訂5版』東京,ワールドプランニング,2018,113-6.〇一般社団法人日本認知症ケア学会.『認知症ケアの実際Ⅰ:総論.改訂4版』東京,ワールドプランニング,2016,39-45.〇鷲見幸彦監著.『一般病棟で役立つ!はじめての認知症看護』東京,エクスナレッジ,2014,66-7.〇鈴木みずえ監修.『認知症の人の気持ちがよくわかる聞き方・話し方』東京,池田書店,2018,34-47.〇飯干紀代子.『看護にいかす認知症の人とのコミュニケーション』東京,中央法規出版,2019,50-84.〇井藤英喜監.『認知症の人の「想い」からつくるケア:在宅ケア・介護施設・療養型病院編』東京,インターメディカ,2017,32-47.〇井藤英喜監.『認知症の人の「想い」からつくるケア:急性期病院編』東京,インターメディカ,2017,22-9.〇鈴木みずえ監.『3ステップ式パーソン・センタード・ケアでよくわかる認知症看護のきほん』東京,池田書店,2019,37-44.

特集
2022年2月8日
2022年2月8日

第8回 労災保険・健康診断・メンタルヘルス対策/[その2]「これって通勤災害?」認められるケース・認められないケースとその理由

前回の記事では、労働者が仕事中に災害(事故)に遭った場合に「業務災害」として労災保険による補償を受けることができることについて解説しました。しかし、労災保険が適用されるのは、仕事中の事故(業務災害)だけではありません。実は、通勤中の事故(通勤災害)も労災保険の対象になります。今回は、どういう場合が通勤災害として認められるのかを学んだ後、「帰宅の際、夕食の買い出しをしている途中に事故に遭った」というイレギュラーな事例を通じて、応用的な理解を深めていきたいと思います。 私のステーションのあるスタッフは、就業時間の後に、別の病院で夜勤として兼業で働いています。ある日、そのスタッフは、ステーションから病院への移動中に、駅のホームで足を滑らせて転倒して肩を骨折してしまいました。これは副業先に向かう途中の事故なので、労災の対象にはならないですよね?いいえ、通勤災害として労災の対象になります。 通勤災害が労災の対象になる理由 まず、「どうして通勤災害が労災の対象になるのか」を考えてみましょう。 それは、労働者が企業に労働力を提供してあげるためには、自宅から職場まで通勤をしなくてはならないからです。当たり前といえば当たり前ですね。ポイントは、労働者は自分のために通勤しているのではなく、「企業のために通勤をしてあげている」ということです。 労働者は、通勤する際、自宅から駅まで歩いている際に交通事故に遭うかもしれませんし、雨に濡れた駅の階段で足を滑らせて転倒してしまうかもしれません。つまり、労働者は、「通勤」という行為に伴って何らかの事故に遭うリスクを抱えているわけです。これは、企業に労働を提供しなくてよいのであれば、そもそも抱える必要がなかったリスクです。 そのため、そのようなリスクが現実化して事故が起きてしまった際に、企業のために通勤しようとしてくれた労働者を保護するために労災保険があるというわけです。 通勤災害は3パターンだけ 通勤災害として認められるのは、次の3パターンだけです(労災保険法7条2項)。 ① 住居と就業場所との間の往復② 就業場所から他の就業場所への移動③ ①の往復に先行または後続する住居間の移動 文字にするとわかりにくいので、次の図をご覧ください。 図1 通勤災害として認められる3つのパターン ①は、最もオーソドックスなパターンで、自宅から職場までの往復経路のことです。 ②は、副業をしている場合が典型です。ある労働者が、訪問看護ステーションで働いた後、夕方から別の病院で夜勤をしようとして、訪問看護ステーションから病院に移動する際に事故に遭ったとしたら、それは労災の対象になるということです。なお、兼業禁止なのに黙って副業をしていたとしても、労災上は保護されます。ただし、この場合は、副業先に行こうとして事故に遭っているわけですから、副業先の労災保険を使用します。 ③は、単身赴任している場合が典型です。ある労働者が、大阪に妻子を残して東京に単身赴任しているとします。金曜日の夕方に仕事を終えたら、一度東京の家に戻って身支度をして、そのまま大阪の妻子のもとに帰り、土日を大阪で過ごそうと思っていたとしましょう。その際、東京の家から大阪の家に向かう途中で交通事故に遭った場合も、通勤災害として扱います。 ・通勤災害が認められるのは次の3パターンのみです。しっかりと押さえておきましょう。 ① 住居と就業場所との間の往復 ② 就業場所から他の就業場所への移動 ③ ①の往復に先行または後続する住居間の移動 あるスタッフの話です。彼女は、就業後、電車に乗って地元の駅につき、駅から自宅に向かって歩いていましたが、途中で経路を少し外れて、近所のスーパーに寄って夕食の買い物をしました。しかし、スーパーを出て自宅に向かおうとしたところ、スーパーの駐車場で、自転車にぶつかり骨折してしまいました。これは通勤災害として認められますか?いいえ。いわゆる寄り道であり、かつ、元の経路に戻っていないので、認められません。 通勤とプライベートな用事 通勤災害とは、「企業のために通勤してあげている労働者」を保護するための制度です。 よって、例えば、職場からの帰宅途中に友人と映画を見に行って、その帰り道に事故に遭ったとしたら、それはもはや通勤災害ではありません(図2)。純粋なプライベート上の事故です。 また、通勤災害といえるためには通勤経路は「合理的な経路」でなくてはなりません。朝の通勤中に、散歩を兼ねてまったく関係のない経路を何倍も遠回りして歩いている時に事故に遭ったとしたら、それは「通勤中の事故」とは呼べないでしょう。それは「散歩中の事故」というべきです。 図2 通勤災害が認められるケース・認められないケース① 職場から映画館、映画館から自宅に向かう経路は通勤経路とはならず、途中で事故に遭ったとしても通勤災害には該当しない。 通勤と夕食の買い物 では質問のケースのように、帰宅の際、駅から自宅に向かって歩いている途中に、夕食の材料を買うために経路を少しだけ外れて近所のスーパーに寄った場合はどうでしょうか? この点、通勤の途中に通勤経路を外れて寄り道をした場合は、原則として、寄り道をしている最中だけでなく、その後の経路も含めてすべて「通勤」として認められなくなってしまいます(労災保険法7条3項本文)。かなり厳しいルールですね。 ただし、「日常生活上必要な行為」として認められている①日用品の購入またはそれに準ずる行為(クリーニング店への立ち寄りなど)、②職業訓練、③選挙の投票、④医療機関への受診、⑤親族の介護のために寄り道をした場合は、寄り道が終わって元の通勤経路に戻った後は「通勤」として扱われます(労災保険法7条3項ただし書、労災保険法施行規則8条)。あくまで「元の通勤経路に戻った後」を通勤として認めているのであり、寄り道をしている最中は通勤として認められないことに注意してください(図3)。 図3 通勤災害と認められるケース・認められないケース② 職場からの帰り道に、日用品を購入するためにスーパーに立ち寄る場合は、寄り道が終わって元の通勤経路に戻った後は通勤経路となるため、戻った後で事故に遭った場合は通勤災害には該当する。 ご質問のケースについて ご質問のケースは夕食の買い物ということですから、①日用品の購入にあたるでしょう。そのため、買い物をするために寄り道をしても、スーパーで買い物を済ませて元の通勤経路に戻ってきた後は「通勤」として認められますから、その後に事故に遭えば通勤災害として認められます。 しかし、ご質問ケースでは、スーパーで買い物を済ませた後に、スーパーの駐車場で事故に遭っているようですので、「元の通勤経路に戻ってきた」とはいえないでしょう。よって、寄り道中の事故ということになり、通勤災害としては認められないことになります。 ・通勤途中に通勤経路を外れて寄り道をした場合は、原則として、寄り道をしている最中だけでなく、その後の経路も含めてすべて「通勤」として認められません。・ただし、「日常生活上必要な行為」のために寄り道した場合は、寄り道が終わって元の通勤経路に戻った後は「通勤」として扱われます。 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。所属する法律事務所のホームページはこちらhttps://mulaw.jp/ 記事編集:株式会社照林社

特集
2022年2月1日
2022年2月1日

\ユーザー調査/病棟看護師から訪問看護師への転職

病棟看護師から訪問看護師へ転職する際、不安があった方も多いのではないでしょうか。NsPace(ナースペース)では、35名の訪問看護師さんへアンケートを行い、訪問看護でのやりがいや、お困りごとなどエピソードを伺いました。 訪問看護師35名に聞いた!訪問看護師になる前の職場は? NsPace(ナースペース)ユーザーのリアルな実態を調査。(2021年11月、ナースペース調べ) 一般病院で経験を積んでから訪問看護に転職する方が多いようですね!最近では新卒で訪問看護を選択なさる方もいらっしゃるようです。新卒から訪問看護の道もこれからもっと増えていくといいですね。 訪問看護師歴は何年目? 訪問看護師1~2年目の方から10年目以上の方まで幅広い経験年数の方が働いており、どの世代でも活躍できる素敵な環境ですね。 訪問看護師になろう(転職しよう)と思ったきっかけは? 「在宅医療に興味があった」と回答した方が4割という結果になりました。また、「利用者さんとじっくり関わりたいと思った」との回答も多く寄せられました。訪問看護師は利用者さんと一対一で向き合うことができます。一人ひとりとじっくり向き合い、看護ができる点は、やりがいに繋がりますね。 訪問看護師になってみて、困ったことや難しいと感じていることは? 訪問看護の仕事は、病棟業務と異なる部分があり、それゆえ戸惑いを感じる方もいるようです。なかでも、訪問看護師特有の「夜間の拘束(オンコール対応)」について、慣れるまでは難しいと感じることが多いようですね。 困った時の対応方法は? 職場の方に相談する他、自己学習で努力している方が多いようです。連絡や情報共有を大事にし、観察力やコミュニケーション能力が向上したというお声もありました! 訪問看護師の働きがいは? 病棟で学んだ経験を活かし、利用者さんとじっくり向き合っている方が多いようです。最期を自宅で過ごしたいと希望される利用者様やそのご家族様の支援ができる喜びを感じるとのお声もありました。訪問看護の醍醐味ですね。 これから訪問看護師になる方へ 患者さんのご自宅に直接伺って、家族や多職種とかかわることができ、とても勉強になる仕事だと思います。大変なこともあるけれど「ありがとう」の一言でどんなことでも頑張れる気がする。そんな仕事です。 一人で訪問するからこそ、判断が難しい時、困った時は同僚や上司に相談します。だから、一人のように見えても実は一人じゃありません。今はスマホをフル活用して、瞬時に先生に画像を送り、指示を受けることもできます。ぜひとも訪問看護にチャレンジしてみて下さい。 在宅医療を支えるには、在宅医だけでは成り立ちません。多職種連携していく中心にあるのが、実は看護師だと感じてます。責任ある立場です。その分、看護師としてのやりがいや充実感があります。最新の機器や検査や治療はありませんが、『家で過ごせる』ということに想像以上の延命効果があるんです。それを側で見守り支援していくお仕事です。 病院ではきっと長時間向きあうことは考えられないかと思いますが、じっくりと一人のご利用者様と向き合うことができます。人との関りを持ちたいと思う方は楽しいと思える職種だと思います。 利用者様が病院と違い永年過ごした場所で過ごせることで良かったと思ってもらえることや一人に対し寄り添った看護ができることが訪問看護師ならではと思います。違う視点で見ることができ病院での学びを活かしながらその方にあった関わリ方ができると思います。また色々な方面からのケアを提供できると思います。 病院で勤務していたときは、診療補助業務を必死でやってきて、とにかく事故なく退院させることが重要でした。少し爪が伸びてるなと思っても爪切りができる余裕もなく過ごしてきました。訪問看護を始めてからは地域のことだったり、利用者さんの歩んできた人生だったり、ご家族のことだったり、死生観について考えさせられたりと…。私自身の人生が少し豊かになった気がします。不安もあるでしょうが、喜びの方が大きいです。 これから、今以上に、在宅で過ごす方が増える時代になると思います。病棟で、色々な経験をしてる方はもちろん、そうでない方も、人と人と、じっくり関わることができ、その方の日常の一部にお邪魔する、そんな素敵な職業だと思います。私は「自宅で自分らしく過ごす」方のお手伝いができる、この仕事が大好きです。ぜひ、これから訪問看護を志す方、一緒に頑張って行きましょう。 記事編集:NsPace

特集
2022年2月1日
2022年2月1日

ミトコンドリア病

ミトコンドリア病は、発症年齢も症状もさまざまで、とらえどころのない難病の一つです。細胞内のミトコンドリアの働きの低下が、原因であることがわかっています。 病態 ミトコンドリア病は、ミトコンドリアの働きの低下により起こる病気の総称です。 ミトコンドリアとは、全身の細胞に存在する器官で、ミトコンドリアによりエネルギーが産生されます。そのエネルギーが細胞の活動の源になるため、ミトコンドリアの働きが低下すると、細胞そのものの活動性も低下します。特に脳や心臓など、多くのエネルギーを必要とする臓器では、影響が大きくなります。 ミトコンドリア病の発症時期は幅広く、乳幼児期から成人までとさまざまです。原因は、先天的な遺伝子変異が主体です。 ミトコンドリア病に関係する遺伝子変異は、今わかっているだけで200種類程度に上り、病型や個人によってもそのパターンは多彩です。それらの遺伝子変異は、細胞の核にあるDNAの変異のほか、ミトコンドリア内にある別のDNA(ミトコンドリアDNA)の変異でもみられます。 核のDNA上の遺伝子変異は、親から子に伝わる可能性があります。一方、ミトコンドリアDNAは母親から子どもに伝わるので(母系遺伝)、ミトコンドリアDNA上の遺伝子に変異などがある場合は、母親から子に伝わる可能性があります。核DNA上での遺伝子変異と、ミトコンドリアDNA上の遺伝子変異は、いずれも突然変異で生じる場合もあります。 疫学 ミトコンドリア病の発症は、乳児から成人まであらゆる年齢の人でみられます。性別による発症差はありません。発症頻度は、イギリスやフィンランドで人口10万人あたり9~16人という報告もありますが、実はもっと多いのではないかともいわれています。 2019年度末時点でのミトコンドリア病での受給者証所持者数は1,500人程度です。10歳未満から75歳以上まで幅広い年齢層におよんでいます。 症状・予後 症状は中枢神経や筋肉、心臓、目や耳などの感覚器、肝臓、腎臓、内分泌系など多様な臓器・組織にみられ、症状も幅広いのが特徴です。表は、小児期に発症する代表的なミトコンドリア病の病型です。 表 ミトコンドリア病の病型例 病型特徴CPEO (慢性進行性外眼筋麻痺症候群)・主な症状は、眼瞼下垂、眼球運動障害・CPEOに、網膜色素変性と心伝導障害を合併するものをカーンズ・セイヤ症候群と呼ぶ・小児~成人期に発症MELAS(メラス)  ・脳卒中様症状を伴うミトコンドリア病(けいれん、意識障害、視野狭窄、視力障害、運動麻痺など)・小児~成人期に発症MERRF(マーフ)・ミオクローヌスてんかんや小脳症状を特徴とするミトコンドリア病・小児~成人期に発症リー脳症・精神運動発達遅滞、筋力低下、けいれんなど、脳と筋肉の症状・乳幼児~小児期に発症 治療・管理など 対症療法として、各症状への適切な治療・管理をすることが重要です。症状が生じている臓器の専門医と連携した対応が求められます。 ミトコンドリアの働き自体を回復させる原因療法の確立も目指されています。日本では、MELASによる脳卒中発作の抑制の目的で、2019年にタウリンが保険適用されました。 ミトコンドリア内でエネルギーを産生する過程に使われる各種ビタミンや栄養素を補給する意味で、ふだんからのバランスの良い食事が治療の基本とされています。 リハビリのポイント 症状に応じたリハビリが必要とされます。また、運動麻痺などに対して、装具や福祉用具などが必要になることもあります。 看護の観察ポイント 現れている症状に応じた観察が必要になります。 ミトコンドリア病では介護保険の対象にならない年齢層の患者も多いため、障害者総合支援法による支援などへの橋渡しも求められます。加えて、症状が複数の臓器に及ぶと、複数の診療科、医療機関にかかることもあるため、情報共有を意識してかかわることが大切です。 そのほか、介護する家族にかかる介護負担が大きくなりがちなので、レスパイトケアを提案することも必要です。 監修:あおぞら診療所院長 川越正平【略歴】東京医科歯科大学医学部卒業。虎の門病院内科レジデント前期・後期研修終了後、同院血液科医員。1999年、医師3名によるグループ診療の形態で、千葉県松戸市にあおぞら診療所を開設。現在、あおぞら診療所院長/日本在宅医療連合学会副代表理事。記事編集:株式会社メディカ出版 【参考】〇難病情報センター.『病気の解説(一般利用者向け)』『ミトコンドリア病(指定難病21)』https://www.nanbyou.or.jp/entry/194〇難病情報センター.『診断・治療指針(医療従事者向け)』『ミトコンドリア病(指定難病21)』https://www.nanbyou.or.jp/entry/335〇厚生労働省.難病・小児慢性特定疾病.『令和元年度衛生行政報告例』2021-03-01.

命に寄り添う口腔ケア
命に寄り添う口腔ケア
特集
2022年2月1日
2022年2月1日

認知症と義歯の関係

この連載では、実例をとおして、口腔ケアの効果や手法を紹介します。今回は、超高齢でも、認知症があっても、義歯の調整と口腔ケアで咀嚼機能が回復した事例を紹介します。 8020運動を知っていますか 1989年、厚生労働省と日本歯科医師会は、80歳で20本の歯を維持することを目指す「8020運動」を制定しました。当時、80歳の平均残存歯はわずか5本でした。28年が経過した2016年の調査では、「80~84歳の約半数が残存歯20本以上」を達成しました。 なぜ20本必要なのか。それは、単純に「タコやイカが食べられるから」だけではありません。20本以上歯があると、医療費の削減(残存歯数が0~4本に比べ総医療費は約17万円/年少ない)、自立歩行ができる、本人の健康感が大きい、などが報告されているのです。 しかし実際には、すでに「20本もありません、入れ歯なんです」といった人も多いのが現実です。今回は、義歯でも咀嚼できれば、全身への好影響につながることを、事例をもとに紹介します。 認知症で入れ歯を入れなくなった例 Bさん、96歳女性。要介護4、上下総義歯。難聴・認知症ほか既往あり。「3か月前から入れ歯を入れなくなり、『新しく作ったほうがいいのでは』と家族から相談がありました」と、ケアマネジャーから紹介あり。 初回の介入 歯科医師の診断で、早速、義歯の内側を調整しました。調整では、歯科用の特殊な樹脂を義歯の内面に裏打ちし、接着します。 口の周囲の筋肉のリハビリ後、まず上の義歯だけを装着すると、Bさんはすぐに義歯を取り出してしまいました。懲りずに、私は再び上義歯を装着すると同時に、片手でBさんが外そうとする手と握手し、バナナの薄切りをBさんの奥歯へと運びました(義歯は前歯で噛むと後ろから空気が入りこみ、外れやすくなるので、基本は奥歯で咀嚼します)。 そして耳元で「お好きなバナナですよ」と声掛けしました。すると、何とか義歯を外さずに噛めるようになりました。 その後、下の義歯も装着し、唾液に溶ける赤ちゃん用せんべいを渡すと、ご自分で奥歯に持っていこうとしました。 2か月後の変化 Bさんは、それまで食事は車いす上での全介助でした。数回の訪問診療後(初診から約2か月)には、食卓のいすに座り、箸を使って、自立した食事が可能になりました。 当初、家族は新しい義歯の作製を望まれていましたが、新しい義歯は、型取りから仕上げまで4~5段階を要します。認知症のあるBさんには苦痛になると考えられました。本事例では、旧義歯の調整と、舌や口唇の力をつける機能的ケア、前歯ではなく左右の奥歯でしっかり噛む咀嚼訓練を選択し、それらが回復のスピードアップにつながりました。 さらに、姿勢が起座位であるほうが噛みやすいのですが、起座位の時間が長くなると自立歩行や転倒予防にもつながります。義足や義手がそうであるように、道具(義歯)をうまく使いこなすには、根気強い丁寧なリハビリ職の対応とチーム医療が必須です。Bさんのケースでは、サービス担当者会議にはBさんが通うデイサービスの職員も出席し、デイ利用中の口腔リハビリや食事支援をしてもらいました。それらも早期自立への一助となったと考察します。 機能的ケアで発語が増えた例 Cさん、98歳女性。要介護3、認知症ほか既往あり。上が総義歯、下が部分義歯。義歯破損で訪問歯科を希望された。 下義歯の修理・調整のための訪問のたびに、衛生面の口腔ケアも必要でしたが、機能的ケアも取り入れていきました。 開口訓練、ストロー福笑い、呼吸訓練、パタカラ体操は、認知症でもでき、義歯でうまく噛めるようになる機能的ケアです。 ストロー福笑い パタカラ体操 介入して1年後の変化として、食事量の増加、食事時間の短縮、自分からの発語や歌が増え、しかも発語が明瞭になりました。 義歯を入れられなくなったケース これまでに経験した、高齢者で義歯が入れられなくなるケースと、解決法を紹介します。 ①認知症により義歯での噛みかたを忘れてしまう 認知症のために、義歯を異物としてとらえてしまうケースもあります。いずれも、段階的な咀嚼訓練を行うことで解決できました。 ②義歯を作製したときよりやせた やせたために義歯が合わなくなるケースはよく耳にされるかと思います。義歯が合わない、外れるなどのために、食事量が減少してやせるといった因果関係もあります。歯科医につなぎ、義歯の内面調整が必要です。 ③口腔乾燥 口腔乾燥があると、粘膜に義歯が密着しにくい状態です。義歯が不安定になり口内に傷ができやすくもなります。軽度であれば、保湿剤を義歯の内面に塗布することでも効果がみられます。唾液分泌を促す機能的ケアに、棒付き飴でのストレッチがあります。 棒付き飴を使った口唇・舌・ほおのストレッチ 棒を引き抜こうとすると、唇が飴をとらえて口が閉じる。味覚による唾液分泌と、飴の棒を引っ張ることにより口唇を閉じる訓練になる。(実施の判断時は、糖尿病のリスクがないことを確認。食前の実施がよい。) ①~③が複合的に生じることもあります。しっかり装着するためにも、市販の義歯安定剤を試していただくのもよいでしょう。 義歯のケア方法 義歯は主にプラスチックです。日ごろの洗浄や消毒を怠ると、プラスチック特有の極微細な気泡中に、口腔内細菌が繁殖します。低栄養や免疫力低下が引き金となり、カンジダ菌(日和見菌)による義歯性口内炎が発症することもあります。 義歯は、最低一日1回の手入れが必要です。歯磨剤は使用せず、流水下で義歯用ブラシ洗浄し、義歯洗浄剤に30分以上浸けます。 おわりに 認知症があっても、あきらめる必要はありません。入れ歯が合わず落ちる、すぐ外してしまうなどの場合は、ご家族にも相談の上、早期に訪問歯科へつないでもらうようケアマネジャーに伝えましょう。 次回は、2回の脳出血後に嚥下困難になった方を、介護負担の軽減へ導いた症例を紹介します。 執筆山田あつみ(日本摂食嚥下リハビリテーション学会認定士、歯科衛生士)記事編集:株式会社メディカ出版

特集
2022年2月1日
2022年2月1日

第8回 労災保険・健康診断・メンタルヘルス対策/[その1]いざというときのために知っておきたい! 労災保険の基礎知識

いざというときにスタッフをしっかりサポートできるよう、管理者として労災保険に関する知識を整理しておきましょう。また、日ごろから訪問看護ステーションならではの労災リスクに備え、ステーション内でスタッフとともにリスクを洗い出し、その予防策や対応方法を共有しておくことも大切です。 訪問中に利用者宅で転倒したスタッフがいます。「痛みが続くため、念のため医療機関を受診したい」との申し出がありました。どのような流れで労災保険の給付が受けられますか。業務中・通勤中のけがや病気には労災保険が適用されます。スタッフから業務中・通勤中に受傷したと報告を受けたときは、けがをした日時と状況、けがの状態や部位などを確認し、病院を受診してもらいます。受診の際は窓口で「労災です」と伝えるように指導しましょう。受診した病院が労災保険指定医療機関(労災病院)の場合は、その病院に「療養補償給付たる療養の給付請求書」を提出します。そうすれば、療養費を支払うことなく治療を受けることができます。そして、この請求書は病院を経由して労働基準監督署に提出されます。労災病院でない場合は、いったん療養費を立て替えて支払います。その後「療養補償給付たる療養の給付請求書」を、直接、労働基準監督署に提出すると、療養費が請求書に記載した口座に支払われます。 労災保険の制度 労災保険(労働者災害補償保険)とは業務や通勤が原因となって発生したけがや病気、障害、または死亡に対して、労働者やその遺族に必要な保険給付を行う制度です。常勤のスタッフだけでなく、パートやアルバイトなどの雇用形態、また国籍などを問わず、雇用関係にあるすべての労働者に適用されます。 保険給付を受けるためには被災したスタッフ、またはその遺族が所定の保険給付請求書を入手し、必要事項を記載して、被災したスタッフが所属するステーションの所在地を管轄する労働基準監督署長に提出しなければなりません。労災に該当するかどうかは、労働基準監督署が調査のうえ判断します。 保険給付請求書は労災の補償内容によって異なります。必要な書類は厚生労働省のサイトからダウンロードできますので、手続きの際に活用してください。 労災申請は原則として本人が行いますが、ステーションとして、スタッフの負担を軽減するためにスタッフに代わって書類を準備したり、記載可能な項目を記載し労働基準監督署に提出するなど、スタッフがスムーズに手続きを行えるようにサポートしましょう。 給付の種類 労災保険にはさまざまな給付制度がありますが、請求しない限り受けることができません。実際に被災した人から「どのような給付があるのか、受けられるのか職場で教えて欲しかった」との声も聞きますので、ステーションの管理者として図1に示すような給付の種類をしっかり理解しておきましょう。 図1 労災保険給付の主な種類 どのようなケースが労災になるのか? では、ここで訪問看護ステーションの業務において労災保険が適用されるケースを場所別に具体的に見ていきましょう。キーワードは「業務災害」と「通勤災害」です。 ●ステーション内での被災例えば、ステーション内で高い所にある物を取ろうとして転落したり、ステーションの建物の階段を踏み外して転倒したりなど、業務に従事して被災した場合は、特段の事情がない限り業務災害と認められます。 ●利用者宅での被災利用者宅で転倒し負傷した場合などは、業務災害と認められます。転倒以外の被災としては、例えば、針刺し事故や害虫によるけが、新型コロナウイルスなどの感染症に利用者や利用者家族から感染してしまうことなどが挙げられます。このような場合も業務災害として労災請求することができます。 ●通勤途中・移動途中での被災自宅とステーション、自宅と利用者宅への移動が通勤に該当します。ある利用者宅から別の利用者宅への移動は、業務の性質を有しますので、通勤ではなく業務に該当します。 通勤途中で被災し、通勤災害に対する補償を受ける場合は「合理的な経路」と「合理的な方法」により行うという要件を満たすことが必要です。移動の「中断」や「逸脱」があった場合には、通勤と認められないため注意が必要です。通勤災害については、次回の記事で詳しく説明しますので、ぜひご覧ください。 また、業務中や通勤途中の交通事故の場合は労災保険が使用できますが、加害者が加入する任意保険や自賠責保険の利用や調整など、ケースバイケースで判断する必要がありますので、労働基準監督署等とよく相談することをお勧めします。 労災や労災保険に関する相談 労災に関する相談、労災保険に関する手続き方法については、ステーションを管轄する労働基準監督署のほか、厚生労働省が設置する労災保険相談ダイヤルで相談することができます。 労災保険相談ダイヤル0570-006031(受付時間:月~金9:00~17:00) ステーションで管理する連絡先リストに「労災保険相談ダイヤル」の電話番号も加えておき、疑問があればすぐに相談できるように準備をしておいてもよいでしょう。 労災に備えよう 寒い地域では路面が凍結しやすいことによる転倒、湿度が高く暑い地域では熱中症など、ステーションが所在する地域の特性によって労災のリスク内容は異なります。いざというときに素早く対応できるように、普段からステーションのスタッフと以下のことを話し合っておきましょう。 ・業務に関連したリスクとその予防策、実際に被災したときの対応―利用者宅―利用者・利用者のご家族―関係機関や業者の施設―移動・通勤に関連したリスクとその予防策、実際に被災した時の対応 あらかじめ自分たちを取り巻く労災のリスクを明らかにすることによって、防災・減災につながります。また、リスクや予防方法を認識し、話し合いやマニュアルなどを通じて共有することで、スタッフが安心して働ける職場づくりにもつながりますので、ぜひ、カンファレンスの時間などを活用して労災に備えた対応をしていきましょう! ・保険給付を受けるためには、保険給付請求書を、ステーションの所在地を管轄する労働基準監督署の労災課に提出しなければなりません。・労災保険は常勤のスタッフだけでなく、パートやアルバイトなどの雇用形態や国籍などを問わず、雇用関係にあるすべての労働者に適用されます。・いざというときに備えて、日ごろから労災のリスクや予防策、労災が発生したときの対応などをスタッフと話し合っておきましょう。 加藤 明子 加藤看護師社労士事務所代表看護師・特定社会保険労務士・医療労務コンサルタント●プロフィール看護師として医療機関に在職中に社会保険労務士の資格を取得。社労士法人での勤務や、日本看護協会での勤務を経て、現在は、加藤看護師社労士事務所を設立し、労務管理のサポートや執筆・研修を行っている。▼加藤看護師社労士事務所https://www.kato-nsr.com/ 記事編集:株式会社照林社

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2022年1月25日
2022年1月25日

【セミナーレポート】看取りの作法 Q&Aセッション回答編

2021年11月12日(金)、NsPace(ナースペース)主催で行った「看取りの作法」についてのオンラインセミナーの内容を3回に分けてお伝えします。最終回の今回は、「QAセッション」の模様を一部ご紹介します。 【講師】田中 公孝先生杉並PARK在宅クリニック院長。家庭医療専門医。経歴:2009年滋賀医科大学医学部卒。家庭医療専門医。2017年東京都三鷹市で訪問クリニックの立ち上げに参画。2021年春東京都杉並区西荻窪で開業。医療介護ICTの普及啓発をミッションとして、区や医師会のICT推進事業にも関わる。 Q1 訪問看護師がエンゼルケアをする事例はある? 私が組んでいる訪問看護ステーションの場合は、エンゼルケアまで行う事例が多いです。看護師さんの方からご家族に「訪問看護師にエンゼルケアをしてほしい」と思わせるような促しをすることも多い印象ですね。看取りにはご家族との細かいコミュニケーションが必要なので、エンゼルケアまでを含めて一つのパッケージとして提供しているところもあります。一方で、そこまでエンゼルケアというものがピンとこないご家族や、お金もかかるので葬儀屋さんでいいですとおっしゃる場合は、葬儀屋さんが担当なさいます。 Q2 誤嚥リスクが高くても飲食したいと言われた場合の工夫は? すごく細かくしてとろみをつける方法があります。そのままの固形物ではなく、味を体感できるように工夫してみてください。飲み込まなくても、少量を口に含んで味を楽しんでもらうというのも一手です。 Q3 予後が1日2日だと感じたとき、看護師から告知を行うのはアリ? 看護師さんの方が頻繁に患者さんを訪問するので、ギリギリの場面で今すぐ伝えなくてはと感じるケースもあるかと思うのですが、まずは医師とコミュニケーションをとることをおすすめします。ひと手間かかって大変だと感じるかもしれませんが、訪問クリニックに連絡して「私からご家族にここまでお伝えしておきますね」というところの確認するのが良いかと思います。最近は、MCSやバイタルリンクなどを使うことで情報をファクトとして共有できるようになったので、訪問クリニックと目線を合わせて実行してみてください。 Q4 本人は入院したくない、家族は入院してほしいケースはどうしたらいい? 結構多いケースですね。この場合、まず「家族はどうして入院してほしいと思っているのか」について深堀りして話を聞きます。働いているから看きれないというのであれば、訪問サービスで固める方法をご提案することもあります。もう一つ、「ご本人はどうして入院したくないのか」についても探ります。家族には素直に本音が言えないこともあるので、私たちが翻訳家や伝言役としてご本人と家族とをつなぐことも少なくありません。ここは多職種介入のミソだと思います。家族の話をたくさん聞き、本人の話もたくさん聞いて、向き合って妥協点を探ることをおすすめします。 Q5 グリーフケアやデスカンファの最適なタイミングは? グリーフケア、デスカンファ、ともにご本人が亡くなってから1カ月後をひとつの目安にしています。ご家族は葬儀でバタバタしたり、銀行をはじめ必要な手続きも多かったりするので、そのあたりのことが落ち着いた1カ月後くらいが目安になります。デスカンファも2カ月空けてしまうと記憶が薄れていることが少なくないので、行うのであれば、1カ月くらいが良いと思います。 Q6 リハ職として、亡くなる1カ月以内ではどんな関わりができますか? できる関わりは多々ありますが、最も重視してほしいのはご本人への「傾聴」です。どんなことを今ご心配されているんですか? とか、先生や看護師さんからどんな話がありました? とか。聞く姿勢をもってくれる人に話をすると患者さんはちょっとすっきりするので、傾聴の関わりをおすすめします。そこで聞いたことを医師や看護師に共有してみるのはどうでしょうか。 Q7 キーパーソンと他の家族の関係性が良くないケースではどうしたら? キーパーソンは他の家族に説明しなくていいと言うが、他の家族は知りたいと言うようなケースでは、まずは、キーパーソンに目線を合わせます。他のご家族との関係性をちゃんと見つめながらキーパーソンに寄り添ってしっかりお話を聞いて、もし他の家族に説明をしない場合は〇〇というトラブルが考えられますが大丈夫ですか?というところまで伝えます。ここで妥協点を引き出せることが多いですね。医療者が家族の間に立ってコーディネートすることで円滑にコミュニケーションがとれるようになる、というのは、後々にも感謝されることじゃないかなと思います。 Q8 怒りを表出している患者さんにどう言葉がけしていますか? 私に対して患者さんが表出する怒りは「前医への批判」であることが少なくありません。そういうときは、私自身は前医を批判しないようにしながら「これからは私に言ってください」という方向に話を運びます。結構きついんですが、割り切って怒りに向き合っていますね。もう1回目の往診はこれだと。私の1回目の治療はこれだというふうに心がけをして、サンドバックになります。このとき、相槌も重要です。合いの手を入れるとさらに話してくださるので、どこで合いの手を入れるかも意識します。これはみなさん抱えている悩みだと思うので、看護師さんどうしでぜひいろんな人の経験を聞いてみてください。 Q9 訪問看護ステーションとの連絡・連携方法で工夫している点は? 医療ICTには、MCS、バイタルリンク、カナミックなどあるかと思うのですが、これらを事前にチームで共有します。相手が読んでいるかどうかはまた別の問題になりますが、タイムリーな共有が可能です。私自身は、末期のときはチーム全員でICTを導入します。文字だけではニュアンスが伝わりにくいこともあるので、内容に疑問をもったときや目線を合わせた方が良いと感じたときは、電話でもコミュニケーションをとるようにしています。 ▶ 編集部まとめ 在宅医療にかかわる医療者にとって大きな課題のひとつでありながら、自分なりの正解を見出すことが難しいと感じている方が多い「看取り」というテーマ。より良い「看取り」とはなにか? という課題に真正面から向き合い、多職種での連携を行いつつ患者さんとそのご家族に真摯に寄り添う田中先生のお話に、セミナー開催後、編集部には参加者の方からたくさんの声が寄せられました。代表的なコメントを一部ご紹介します。 〇セミナー後に参加者の方から寄せられたコメント「看取りの現場の実際の話をたくさん聞けて大変勉強になりました」「在宅専門の先生目線での意見が聞けて勉強になりました」「これで良かったのかと反省しながらまた次にと、すすんでいたので心が楽になりました」 次回セミナーレポートでは、2021年12月17日(金)、引き続き田中公孝先生を講師にお招きして開催した「看取りの作法~事例検討と質疑応答編~」をお届けします。公開まで楽しみにお待ちください。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

特集
2022年1月25日
2022年1月25日

第7回 防災対策、交通事故、個人情報保護、医療事故編/[その4]医療事故は、なぜ起こる? 事故を未然に防ぐためにできること

訪問看護サービスを提供するにあたって、最も重要なことは何でしょうか。それは、医療安全を確保することです。医療は、人の病を治す術となりますが、時に、人の健康を害し、命を奪ってしまうことすらあります。今回は、医療事故が起きる構造を理解し、それを防止するための方策を学びましょう。 以下の事例で、AさんとBさんはいくつのミスを犯しているでしょうか。とある医療機関で、看護師のAさんとBさんが、患者Cさんに投与する薬剤「X」を準備しようとしました。「X」は保管庫の棚に入っていましたが、同じ棚には「X’」というよく似た名前の薬剤が入っていました。Bさんは他の業務が忙しかったので、薬剤の準備はAさんが1人で行うことになりました。しかし、Aさんは急いでいたので、よく確認せず「X’」という薬剤を持ち出してしまいました。その後も、Bさんは忙しくてAさんに任せっきりでした。Aさんは、薬剤を投与する際も特に薬剤のラベルを注視せず、そのまま「X’」を投与してしまいました。 医療事故が起きる構造とは? 「ハインリッヒの法則」という言葉を聞いたことがあるかと思います。これは労働災害の分野で使われる言葉で、1つの重傷事故の裏には、29の軽傷事故と、300もの無傷事故(ヒヤリ・ハット)が隠れているという「1:29:300の法則」のことをいいます。 これと似た考え方として、医療事故を考える際にはスイスチーズ・モデルというものが使われます。「医療事故は複数のミスが連なってしまったときに起きる」ということを表しています。 上の事例で考えてみましょう。AさんとBさんのミスとしては次のものが挙げられます。 ①保管庫の同じ棚に「X」と「X’」というよく似た名前の薬剤を入れていたこと②薬剤を持ち出す際にAさんとBさんの2人で確認しなかったこと③薬剤を持ち出す際にAさんが間違った薬剤を持ち出しこと④Bさんは、投与する際もAさんに任せっきりで、自ら確認しなかったこと⑤Aさんは、投与する際にラベルを注視せず、間違いに気づくことができなかったこと → 誤投与(事故発生) このように、1つの事故であっても少なくとも5つものミスが隠れていたわけです。ポイントは、「①〜⑤までのどこか1つでもミスを防ぐことができていれば、最終的に事故は起きなかった」ということです。 スイスチーズ・モデルは、医療事故が起きるこの構造を端的に言い表しました。スイスチーズの「穴」を「1つ1つの小さなミス」ととらえて、それが連なってしまったときに事故が起きてしまう(矢印がすべての穴を貫通してしまう)ということです。 図 スイスチーズ・モデル 医療安全の基本的な考え方というのは、この穴(ミス)の発生をできるだけ未然に防ぎ、また仮に1つのミスが起きても、他でリカバリーできる体制をつくっておくことにあります。 システム・エラーとヒューマン・エラー 上の①「保管庫の同じ棚に「X」と「X’」というよく似た名前の薬剤を入れていた」というのは、構造上の欠陥であるためシステム・エラーと呼ばれます。対して、③のような人為的なミスをヒューマン・エラーと言います。 ヒューマン・エラーは人為的なミスであるため、完全になくすことができません。よって、「人はヒューマン・エラーをしてしまう」という前提に立って、それでもミスをリカバリーできる体制をつくっておくことが重要です。 代表的なヒューマン・エラー対策 ヒューマン・エラー対策は、古くから産業界において発展してきました。その代表例としては以下のようなものがあります。事故対策のヒントとして参考にしてください。 ①フールプルーフ、フェイルセーフフールプルーフとは、そもそも間違えることができないしくみにすることです。例として、「扉を閉めないとスイッチが入れられない電子レンジ」が挙げられます。 フェイルセーフとは、たとえミスをしても大事故にならないしくみにすることです。例として、「消し忘れたら自動的に消えるストーブ」が挙げられます。 ②5S(整理、整頓、清掃、清潔、しつけ)作業環境を整理・整頓・清掃して清潔にし、そのような状態を継続させること(しつけ)は、事故防止の基本中の基本であるとされています。 ③指差し呼称指差し「確認」ではありません。指差し「呼称」です。これは電車の車掌さんが行っていますね。 人の注意力というのは散漫ですので、「指を指す」ことによって自分自身を対象に集中させ、さらに、声に出して言う(呼称)ことによって、あえて2度集中させているわけです。 ④ダブル・チェック自分自身を客観視するというのはとても難しいことです。③の「指差し呼称」は、1人で自分自身を客観視しようとする取り組みといえますが、それにも限界があります。 やはり理想的なのは、自分以外の別の人から客観的にチェックしてもらうことです。ダブル・チェックとは、1つの物事を2人以上でチェックすることをいいます。 ⑤伝言ゲームを避ける皆さんは、幼い頃に伝言ゲームをやったことがあるかと思います。伝言ゲームでは、数名の人を挟むだけで当初のお題が大きく変わってしまうわけですが、これは「伝言」というものの恐ろしさを端的に教えてくれています。 例えば、訪問先において医師から電話で指示を受けた場合、指示された処置は、できるだけ電話を受けた本人が行うべきでしょう。「医師 → スタッフA → スタッフB」と伝言をすると、それだけミスが起きやすくなる(医師の指示がスタッフBに正確に届かない)可能性があることを自覚しておきましょう。 また、指示を受けたスタッフは、指示を受けている際にメモをとって復唱し(これは③指差し呼称の応用といえます)、さらに一緒にいるスタッフにダブル・チェックをしてもらうとよいでしょう。 ヒヤリ・ハットを共有しよう そして最後に、ステーション内で起きたヒヤリ・ハットをスタッフ全員で共有するようにしましょう。月に一度の定例会の際などに、どういうことでミスしそうになったか、スタッフみんなで話し合ってもらうのです。 重要なことは、報告をしたスタッフを決して責めないことです。それをすると誰もミスを報告できなくなります。場合によっては、匿名で報告をしてもらってもよいでしょう。 そして管理者は、そうして集まったヒヤリ・ハットを分析し、再発防止のための方策を考えるわけです。 医療安全を実現するためには不断の努力が求められます。以上の内容を参考に、ぜひ、ステーションに安全文化を根づかせる取り組みを始めてみてください。 ・訪問看護サービスを提供するにあたって最も重要なことは医療安全を確保することです。そして、医療安全を実現するためには不断の努力が求められます。・医療事故を起こさないためには、どういうことでミスしそうになったか、スタッフみんなで話し合い、ヒヤリ・ハットを共有しましょう。 前田 哲兵 弁護士(前田・鵜之沢法律事務所) ●プロフィール医療・介護分野の案件を多く手掛け、『業種別ビジネス契約書作成マニュアル』(共著)で、医療・ヘルスケア・介護分野を担当。現在、認定看護師教育課程(医療倫理)・認定看護管理者教育課程(人事労務管理)講師、朝日新聞「論座」執筆担当、板橋区いじめ問題専門委員会委員、登録政治資金監査人、日本プロ野球選手会公認選手代理人などを務める。所属する法律事務所のホームページはこちらhttps://mulaw.jp/記事編集:株式会社照林社

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