コミュニケーションに関する記事

想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】
想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

想いに寄り添うエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護をしていると、利用者さんやご家族のたくさんの想いと向き合います。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、利用者さんやそのご家族の想いに胸が迫るエピソードを5つご紹介します。 「最期まで、妻・母・娘として生きたN子さん。」 末期のがんに罹りながら家族とともに懸命に生き、最期の場面でも家族を想う姿に胸が打たれるエピソードです。 63歳のN子さんは肺がん末期で骨転移等もあった。12月初めの退院前カンファレンスでは、クリスマスは迎えられてもお正月は厳しい、と告げられていた。自宅に戻る際も頸部・体幹のコルセットは外せず、不本意ではあるが夜間はおむつ内で排泄するよう指導されていた。しかし、63歳という年齢、夫にも気兼ねがありコッソリと夜間もポータブルトイレに座っておられた。クリスマスが過ぎお正月が過ぎ、期待と不安を抱え桜の季節を迎えた。担当ケアマネから、近所の川沿いにある桜並木の下でお花見をさせてあげたい!と声が上がり、ご主人・ヘルパー・看護師・ケアマネとともに小春日和の中、ゆっくりと桜の下を車いすで散歩することができた。その後、「最後になるかも知れないけれど、家族のために料理がしたい。お風呂に入りたい」とご本人から希望があり、短期間であったが調理や入浴をすることができた。秋が過ぎ骨盤に転移した腫瘍が急激に大きくなり、みるみる体調は悪化傾向になっていったが、お酒の好きな夫の健康を気遣い、高齢のご両親より先に逝くことを詫び、夏に生まれた孫の成長を楽しみに、初冬、最期まで弱音を吐かず笑顔の素敵な母の姿を残して旅立たれた。 2023年1月投稿 「涙あり、笑いあり、そんなお看取り。」 故人との別れに悲しみもある中、家族総出でのお見送りの準備に愛情が感じられるエピソードです。 最期が近いAさん。お正月というのもあって娘様家族が来ている。同じ空間にベッドで寝ているAさん。とても穏やかな時間が流れていた。Aさんは声掛けに「はい」と吐息で答えてくれる。何か言いたげだが言葉にならない。(今日中かな…)そう思いながら明日も訪問することを伝え退室。その日の夜、ご家族から「息が止まりました」と連絡が入った。私は車で向かう。到着すると家族に見守られながら眠っているAさん。娘様は涙を流している。湯灌の予定だったが、それが高いことを知り、急遽フルエンゼルケアをさせていただくことに。お孫さんも含め全員で行った。みんなで役割分担しながらあーでもない、こーでもないと言いながら娘様を中心に。そこには涙は無くて笑顔が溢れていた。うるさすぎて奥様に怒られるほどだった。最後に奥様に口紅を塗ってもらったが、グロスだったのかな?「女装したみたいになったね」と笑い合う。ご家族に囲まれて幸せだなぁ。 2023年2月投稿 「患者の最期の願いを叶えた自宅での看取り」 最期に願いを叶えられた利用者さんの心からの感謝が胸に響くエピソードです。 私は訪問看護ステーションに配属された新人訪問看護師。肺癌の診断で自宅療養中のA氏から訪問看護利用の依頼があった。呼吸苦はあるが園芸の話をする、好きなサイダーを飲む等病状は安定していた。1ヵ月後、病状は増悪し「30年かけ作った庭をもう一度見たい。ほかに思い残すことはない。」と言葉が聞かれるようになった。自宅前に本人が作った庭があった。願いを叶えるためケアマネ、家族と協力しスロープと車椅子を準備した。当日本人から「体調が悪い、庭へ行くのは諦める。」と電話があった。短時間で行えるようがんばるので庭を見ましょうと励まし私、ケアマネ、家族で本人を庭へ移動した。涙を浮かべ「庭を見られて良かった。ありがとう。」と言葉が聞かれた。翌日、肺から出血し麻薬投与が開始され家族に見守られながら永眠された。後日訪問時、香典返しの挨拶状に庭を見た日のことが記載されており庭を見た後「幸せな人生だった。」と話していたことが分かった。 2023年2月投稿 「思い出の一場面」 ひとりでも自宅にいたいと思う利用者さんの気持ちが伝わってくるエピソードです。 24時間緊急対応の当番は電話が鳴るとビクビクする。何年やっていても緊張する。そんな中、Aさんからの緊急電話はなんだかホッとしてしまう。よく緊急電話をかけてくるAさん。尿カテトラブルが多く、呼ばれるのは大抵尿漏れ。夕飯時に呼ばれることが多く、またかぁ、という気持ちになるけれど、「こんな時間に悪いねぇ。」と申し訳なさそうに言うAさんの顔を見ると、そんな嫌な気分は吹き飛んでしまう。ある時、いつも通り夜に呼ばれて処置をしていると犬の遠吠えが聞こえてきた。そこから、かつてラブラドールを飼っていたと話し出すAさん。奥さんも子どももいて、よくラブラドールを家の庭で走らせていたという。「家の周りぐるぐる回るんだけど、曲がり損ねて転んじゃって。妻と大笑いしたよ。13年間、楽しませてもらったよ。」と嬉しそうに話すAさん。楽しい話なのになんだか切なくなり泣きそうになってきた。広い家に一人暮らしのAさん。話を聞いていて、楽しかったころの情景がパッと頭の中に浮かんできた。思い出たくさんの家で、少しでも長く過ごせるようお手伝いしていきたいと切に思った出来事だった。 2023年2月投稿 「優しく切ないけれど、温かい話」 相手を想うからこその奥様の配慮と、その優しさに気付きながらも配慮したご主人。どんな時でもお互いを想い合う夫婦に胸が温かくなるエピソードです。 ALSの60代男性。点滴加療の入院中に、可愛がっていた小鳥が突然死んでしまいました。奥さんと子どもは「とても可愛がっていたので、悲しんで気落ちすると病状も進行してしまう」と心配しました。そこで退院までに同じ種類の小鳥を手配して取り繕うことにしました。皆ハラハラしましたが、ご主人は亡くなるまで特に変わりなく小鳥に接していたので安心していました。初盆参りの時に奥さんは「小鳥が変わっていたことに本当は気が付いていたと思います」「主人にもっと優しく接することができたら良かったのに」と涙を流されていました。それから1年と経たないうちに、奥さんから私を看取って欲しいと驚きの連絡がありました。末期の肺がんでした。3ヵ月後、気丈で美しい最期を子どもさんとともに看取らせていただきました。命の儚さについて、改めて考えさせられた小鳥とご主人、そして奥さん。きっとどこかで再会しているはずだとスタッフ一同、信じています。 2023年2月投稿 利用者さんとそのご家族の想いを支える 今回は、投稿者の皆さんが利用者さんを大切にする姿勢が垣間見えるお話ばかりでした。訪問看護では、利用者さんやそのご家族の立場、背景、想いなどをくみ取って理解し、それぞれにあった支援をしていくことが求められます。正解がわからず模索するケースも多い中で、勇気づけられるエピソードですね。 編集: 合同会社ヘルメース イラスト: 藤井 昌子  ■「みんなの訪問看護アワード」エピソード募集中!(~2025/1/24)今回で3回目となるNsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」では、2025年1月24日(金)17:00まで「つたえたい訪問看護の話」を募集中です! 訪問看護にかかわる方であれば、誰もが共有したいエピソードがひとつはあると思います。皆さまのエピソードをお待ちしています!

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ コミュニケーション、栄養、口腔ケアetc.

訪問看護では、認知症の利用者さん・ご家族との関わりも多いですよね。NsPaceでは、これまで認知症に関連する多くの記事やセミナーをお届けしてきました。今回は、知りたい情報にアプローチしやすいように、記事をピックアップしてご紹介。気になる記事からチェックしていただき、日々の看護に役立てていただけたら嬉しいです。 「認知症」疾患の知識を深める! 認知症という病気がもたらす事象の原因や理由を理解することで、対応が変わり、できることが増えます。利用者さん・ご家族への貢献度が上がることはもちろんのこと、日々の看護の喜びも増えるはず。ケアする側のこころの状態が相手に大きく影響するので、好循環が生まれます。 【在宅医が解説】「認知症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 認知症の鑑別、認知症以外の可能性や治る認知症を見逃さない、悪化させないなどの視点で、わかりやすく解説いただいています。 また、鑑別に役立つ「せん妄アセスメントシート」を以下記事にてご紹介しています。ぜひご活用ください。>>せん妄への対応【精神症状の緩和ケア】 「高齢者のうつ病の特長」などについて解説されている以下の記事もおすすめです。>>【在宅医が解説】「うつ病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 【セミナーレポート】看護師が意識したい7つのポイント -在宅で行う認知症看護-   講師の福岡裕行さん(認知症看護認定看護師)の優しい言葉と関わりが心に染みる記事です。ポイントがわかりやすく紹介されていて、「すぐにやってみよう!」と楽しみになる内容です。後編では、「認知症患者を支えることは、その家族の心を癒すこと」という言葉が印象的。Q&Aセッションも学びが深まる内容です。あわせてお読みください。>>セミナーレポート後編【セミナーレポート】ご家族とのかかわり方 -在宅で行う認知症看護- 高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】 高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生にご登壇いただいたセミナーのレポート記事です。認知症の方に対しての具体的な食事支援や認知症予防につながる食事について学ぶことができます。 事例を通じてケアを磨く! 認知症のある方やそのご家族へのケアは多種多様。事例を通じて、引き出しを増やしていきましょう。 認知症のある患者さんに接するときの7か条(前編)   シリーズ「認知症患者とのコミュニケーション(全12回)」の第1弾の記事です。シリーズ第1回~2回では認知症患者さんと接するときのポイントを、第3回~12回では、「言葉による返事がない」「物盗られ妄想がある」など、ケースごとにケアのポイントを解説いただいています。実践に生かせる内容なので、興味のあるテーマから学んでみてください! >>認知症のある患者さんとのコミュニケーションシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/dementia-patient-communication/ 自己流の介護を続ける家族への関わり【家族看護 事例】 認知症のある利用者さんのご家族は、複雑な心情や多くのストレスにさらされているからこそ、訪問看護師との関係性が難しくなってしまうこともありますよね。本記事では、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を用いた事例解説を通じて、訪問看護ならではの家族看護について学ぶことができます。 認知症と義歯の関係 認知症があると口腔ケアに難色を示されることや意思の疎通が難しい状況で効果的なケアが行えないこともありますよね。咀嚼機能が回復した事例を通して、工夫のしかたを学べる記事です。 高齢者の頭の体操10選 脳トレに期待できる効果や方法について解説 脳トレや「脳トレ+運動」で、認知機能の向上、身体機能の向上が期待できます。具体的な方法と効果についてご紹介しています。利用者さんが楽しめるケアのヒントになれば幸いです。 「上手く伝えられない」に対応する! 認知症では、辛さや症状を上手く表現できないからこそ、看護師が異常を察知し、適切に評価できることが求められます。場合によっては表現通りの意味とは限らない訴えや拒否をいかに捉えられるかが重要です。利用者さんの価値観をおもんぱかるために、見識を拡げていきましょう! 悪性消化管閉塞への対応【がん身体症状の緩和ケア】 認知症の終末期は、症状マネジメントに苦慮しますよね。事例をとおして、悪性消化管閉塞について学びつつ、認知症の在宅看取りについてイメージを持てる記事です。 大学教授が解説!大量嘔吐でイレウスが疑われる場合のアセスメント 「イレウスの既往のあり、認知症が進み、自分からは訴えられない方が大量に嘔吐…。あなたはどう考えますか?」という事例とおして、フィジカルアセスメントについて学べる記事です。なお、このフィジカルアセスメントシリーズは全12回です。ほかにも『認知症のある患者さんが「転んだけど大丈夫」と話している場合』など、認知症の方の事例解説がありますので、あわせてご覧ください。 >>訪問看護のフィジカルアセスメントシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/physical-assessment/ もしかしてネグレクト? 訪問看護師は虐待疑いにどう対応すべきか 虐待が疑われる場合、どのように行動すればよいか。状況に合わせた慎重な対応が求められ、特に認知症が疑われる場合は、判断が難しくなることもあります。このようなセンシティブな状況では、多角的な視点で考え、細心の注意を払った言動が求められます。本記事は、弁護士の外岡潤先生に解説いただいた、法律・制度を踏まえた事例解説記事です。訪問看護に発生する義務は何か?という点も含めて確認しておきましょう。 * * * 認知症のある方は、今後もますます増加すると予測されています。地域を支える訪問看護師のサポートへの期待もさらに高まっていくでしょう。認知症のある方が幸せに生きられる社会になるヒントは、日々のケアの蓄積の中から見出されていくようにも感じます。NsPaceでは、今後も日々の学びの機会を通して、訪問看護に携わる皆さまの力になる企画を提供していきます。 執筆・編集: NsPace編集部 ■「みんなの訪問看護アワード」エピソード募集中!(~2025/1/24)今回で3回目となるNsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」では、2025年1月24日(金)17:00まで「つたえたい訪問看護の話」を募集中です! 訪問看護にかかわる方であれば、誰もが共有したいエピソードがひとつはあると思います。皆さまのエピソードをお待ちしています!

人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】
人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】
特集
2024年12月17日
2024年12月17日

人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】

2024年11月17日(日)の日本在宅看護学会 第14回学術集会では、NsPaceの運営元である帝人株式会社が共催し、ランチョンセミナー「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」を実施しました。座長に山本 則子氏、演者(ファシリテーション)に長嶺 由衣子氏をお迎えし、「第2回 みんなの訪問看護アワード」の受賞者のお二人とともにトークセッションで盛り上がりました。当日の内容をダイジェストでお届けします。 座長:山本 則子氏 東京白十字病院、虎の門病院に勤務した後、東大大学院医学系研究科修士課程修了。米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)nurse practitioner programを修了。現在、東京大学大学院医学系研究科 教授。公益社団法人 日本看護協会 副会長。   演者:長嶺 由衣子氏沖縄県 粟国島で離島医療に取り組んだ後、東京や英国で地域医療、公衆衛生、社会疫学を学ぶ。東京科学大学(旧:東京医科歯科大学) 公衆衛生学 非常勤講師。厚生労働省 老健局老人保健課 課長補佐。訪問診療医。新田 光里氏第2回 みんなの訪問看護アワード 審査員特別賞受賞。@(あっと)訪問看護ステーション 訪問看護師。幼い頃体が弱かったことをきっかけに看護師を志す。救急救命士の資格を習得して病院の救急部門で働いた後、在宅看護の重要性を感じて訪問看護の道へ。日高 志州氏第2回 みんなの訪問看護アワード 入賞。ひだかK&F訪問看護ステーション 訪問看護師。病院の救命センターで働き、救急看護認定看護師資格取得。慢性疾患の急性増悪や終末期の患者さんを看護する中で在宅看護の重要性を感じ、訪問看護師へ。 ※プロフィール情報は、2024年11月時点。※本文中敬称略。 訪問看護の魅力・やりがいとは? 山本: 今回は、「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」をメインテーマに、訪問看護の現場で活躍されているお二人のお話を伺います。訪問看護は、利用者さんの生活や価値観に深く触れるケアが求められる分野です。具体的なエピソードも交えながら、その魅力や課題についてざっくばらんにお話ししていきたいと思います。では、長嶺先生お願いします。 長嶺: ありがとうございます。最初のテーマはこちらです。訪問看護師の新田さん、日高さんの考える訪問看護の魅力について教えてください。 新田: はい。訪問看護は毎日新しい経験の連続で飽きることがありませんし、多様な利用者さんと深く関わることができる点が魅力だと感じています。私は元々病院の救急部門で働いていたのですが、訪問看護は「利用者さんに関わりたい」と思ったら、どこまでも深く看護ができる仕事だと思っています。 日高: 私も以前は救急の仕事をしていたのですが、訪問看護は救急の経験を活かしやすい点も魅力だと思っています。ちょっとした変化を早期に察知し、医師に繋いで状態の悪化を防ぐことができると、やりがいを感じます。 また、多様な働き方ができる点も魅力です。副業や起業をしながら訪問看護をされている方もいますよね。 長嶺: ありがとうございます。 たまたまですが、救急経験のある人が集まりましたね。実は、私が沖縄で離島医療をしていた際、日高さんと一緒に働いていたことがあるんです!日高さんがフライトナースをされていて、ドクターヘリで飛んできてくださいました。まさか訪問看護師さんとしてお会いすると思いませんでしたね(笑)。 では、座長の山本先生も、訪問看護の魅力に関するお考えをお聞かせください。 山本: そうですね。審査員として「みんなの訪問看護アワード」のエピソードを読んでいても、改めて訪問看護には「究極の個別性」があると感じます。利用者さんがどんな生き方をしてきて、残された時間をどんな風に過ごしたいと思っているのか。ご本人が必ずしも意識していないようなところまで入り込み、希望される生き方や想いを実現するところまで入っていくのが訪問看護です。「訪問看護師はここまでできるのか」と驚くことがとても多く、そこが魅力だと思います。 長嶺: ありがとうございます。私が行っている訪問診療にも通じるものがありますね。 病院では「点」でしか患者さんと関われないように感じますが、訪問診療では地域の方々やご家族との関わりもあって「面」になり、だんだんと「立体」になっていくようなイメージを持っています。訪問看護・訪問診療ともに、そういった点は魅力ですよね。 エピソード1:「100年ぶりに入浴したU子さん」 長嶺: ここからは新田さん、日高さんが「第2回 みんなの訪問看護アワード」で受賞されたエピソードをもとに、お話を伺っていきたいと思います。まず、こちらが新田さんのエピソードです。事業所の所長さんの言葉をきっかけに心持ちの変化があったと思いますが、その点はいかがでしょうか。 「100年ぶりに入浴したU子さん」(投稿者:新田 光里) ・関連記事受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 新田: はい。それまでは「入浴・内服管理の依頼を達成しなければ」という問題解決思考で考えていたのですが、所長の言葉を機に、「ケアの達成度合いは一旦置いておこう」「まずはU子さんと信頼関係を築こう」と思ったんです。 そこからは、私が訪問看護師だと理解していただくために、仏壇の横に私の写真を飾る、なんてこともしました(笑)。 久しぶりに入浴され、「う~ん、気持ちいい!100年ぶり!」とおっしゃったU子さんの笑顔は、私にとって忘れられない瞬間です。 日高: このエピソード、とても感動しました。利用者さんの心を開くまでのプロセスが本当に丁寧で、新田さんの根気と工夫が伝わってきます。 長嶺: 日高さん、涙ぐんでいますもんね…!これは、医療従事者の成長過程の「あるある」ではないかと思います。医療者自身が「主語」になるのではなく、患者さん・利用者さん等の相手を主語にしたときに、「そうか、ご本人にとっては〇〇のほうがいいんだ」といった気付きがあると思うんです。 U子さんはすでにお亡くなりになっているそうですが、今回のテーマである「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」という点については、いかがでしょうか。 新田: はい。実はU子さんはその後ずっとお風呂に入れたわけではなく、私が子どもの発熱で急遽担当が変わった日を境に、また入れなくなってしまい…。認知症の利用者さんをケアする難しさを感じました。 でも、訪問看護師が中心になって、状況にあわせてケアプランの変更を相談し、寝たきりになっても、歯がなくても最期まで好きな桃のゼリーを召し上がるなど、多職種で協力しながらケアを行いました。U子さんの「家で逝きたい」という願いを支えられたのではないかと思っています。 長嶺: ありがとうございます。 利用者さんと深く関われていると、自然と願いに沿ったケアができる、そんなお話を伺えたように思います。山本先生、いかがでしょうか。 山本: はい。エピソードについては、地道に関係性を築いていき、1年経ってからおもむろに発した一言がヒットしたという部分に「技」を感じましたし、とても感動しました。 また、担当が変わって入浴できなくなったとのことでしたが、これは認知症のある利用者さんだったから、ということだけが理由ではなく、おそらくU子さんがお風呂に入るにあたって新田さんが実践した上手なアプローチ方法、ノウハウがあったんだと思うんです。今後、そういったノウハウを言語化して共有できれば、担当が変わってもうまくいくかもしれません。 新田: ありがとうございます! エピソード2:「最期の友人」 長嶺:続いては、日高さんのエピソードです。この利用者さんは最終的に施設に入ることになったそうですが、当時の心境や経緯について教えてください。 「最期の友人」(投稿者:日高 志州) 日高: この利用者さんは、ご家族とは疎遠になっている一人暮らしの方でした。退院後もお酒を飲んだり、スナックに行ったり…という生活を続けていたのですが、次第に体が動かなくなり、楽しみが減っていってしまったんです。訪問看護やヘルパーの支援があっても、一人の時間をすべて埋めることはできず、ご本人が心細く感じるようになって、施設入所を選択されたという経緯です。私は、在宅看取りのみが最善の選択とは限らないと考えているので、この利用者さんにとって一番いい選択は何か、たくさん話し合って検討しました。 長嶺: ともすると、感情移入をして「在宅でずっと看たい」という気持ちになることもあると思いますが、「ご本人にとって何が一番いいのか」を最優先にして、ディスカッションしてこられたんだなということがよくわかりました。 利用者さんが笑顔で施設に行かれた描写が印象的でしたが、「最期までこの方が豊かに生きる」ということに対してのヒントを教えてください。 日高: この利用者さんは、深刻な場面もおちゃらけた様子で切り抜けるような性格の方で、真面目に問いかけても冗談で返されることが多かったんです。なので、こちらも冗談で応じながら親しくなり、徐々に価値観や想いを引き出せるよう努めました。深刻になりすぎず、「その方の世界」に寄り添うアプローチが、結果的によかったのではないかと感じています。 山本: この方は、ご家族とも疎遠ということなので、元々は「一人でよい」と考えていたのですよね。しかし、晩年に日高さんに対して「最期の友人」とおっしゃったことから、心のどこかで友人や仲間を求めていたのではないかと感じました。その想いを最期に実現させた日高さんの存在は非常に大きく、「最期まで豊かに生きる」ことを支えたことが感動的です。 長嶺: 本当ですね。私は医師なので「先生」と付けられると距離を感じることもありますが、看護師さんも一定の距離を取られがちなところを、「友人」と表現されたところはすごいと思います。 利用者さんやご家族の意思を尊重するために大切なこと 長嶺: ここからは、利用者さんやご家族の意思を尊重するために大切なことは何か?について、ディスカッションしたいと思います。新田さんいかがですか? 新田: 難しいテーマですが、「その方がどのように生きてこられたか」「どんな最期を迎えたいのか」を理解することを大切にしています。利用者さんがお話できる場合は極力丁寧に耳を傾け、生活歴やサマリーから背景を想像する…ということを訪問のたびに行っています。 日高: 私も同じです。時間が許すなら、できるだけ「どんな最期を迎えたいですか?」などと直球で質問することはせず、雑談から自然にご本人の価値観を引き出すよう心がけています。 長嶺: 確かに、直球で聞かれて明確な答えが返ってくることは少ないですよね。 私自身が当事者だったとしても、看取るご家族をはじめ「残される人たち」のことを考えると即答できませんし、一人では決められません。 山本: そうですね。多くの人はご自身の最期について明確な希望をもっていませんし、誰しも死ぬのは初めてなので、イメージもできません。だからこそ、看護師が選択肢を伝えることで、利用者さんのやりたいこと、できることが広がりますよね。例えば、「もうお風呂には入れない」「散歩ができない」と考えている方に、「できる」とお伝えできるケースもあります。これも大切なことではないでしょうか。 また、洗髪や足浴等をする際、目線は必ずしも合っていなくても、体をタッチしていますよね。そんなときに、何気なく利用者さんから出る言葉が重要なような気がしているんです。それを聞き出すことができるのは、看護の強みだと思いますね。 長嶺: 確かに、具体的な提案を通じて意思決定を支えることは重要ですね。また、「触れ合いながら引き出す」アプローチは、なかなか医師には難しく、看護師さんならではのアプローチだと感じます。日高さん、いかがですか。 日高: はい。訪問回数が多い分、看護師は怒り、悲しみ、苦しみなどを打ち明けられることが多いと思いますし、山本先生がおっしゃるように、リラクゼーションやタッチングをしながらお話を聞くと、最初はとてもいらだっていた方の感情がスーッとおさまったり、急に昔の話をしてくださったりする経験をしたことがあります。これは本当に看護師だからこそだと思いますし、私もそういうケアを大切にしたいと思っています。 山本: そうですよね。 また、私は「尊厳を保つ」ことがとても大事だと思っており、看護だからこそできることがたくさんあると思っているんです。清潔を保つこと、症状をマネジメントすることは、ケアや医療として大事であると同時に「尊厳を守る」ことでもあるんです。 「尊厳を保てないぐらいだったら、私を生かしてくれるな」というような発言を利用者さんから聞くことがあるくらい、人の尊厳は大事だと言えますし、人生の最終段階で本当に自分でできることがなくなったり、症状が強くなったりしたときに、看護の強みが発揮されると思っています。私たちはそういった仕事ができることを誇りに思ってよいと思うんです。 長嶺: ありがとうございます。 本当に在宅医療の現場は自分が持っているものをすべて総動員しないといけない場ですし、皆さんもそこにやりがいや魅力を感じていると感じました。 さて、早いもので終わりが近づいてまいりました。皆さん、素敵なセッションをありがとうございました。 こういった学術集会では学術的な発表はもちろん大切ですが、全国から同じ現場を共有できる方々が集まる場なので、今回のように感情面を共有することも非常に大切だと感じました。訪問看護の魅力を伝えるためには、皆さんが「なぜ訪問看護をしているのか」、その根底にある想いや教育課程では教わらなかった人と関わる上での工夫を共有できる場も大切だと思います。最後に、皆さんのご感想もお聞かせください。 日高: 山本先生、長嶺先生とディスカッションさせていただける大変貴重な場でした。ありがとうございます。 全国で働く訪問看護師の皆さんは、それぞれ素敵なエピソードを持っていると思うので、ぜひ皆さんのエピソードも伺いたいと思いました。 新田: ありがとうございました。こういった学術集会の場に来ると、訪問看護業界を牽引する方々がビジョンを描き、課題解決のために動いてくださっていることを実感します。また、ディスカッションを通じて、改めて自分にできることを日々一生懸命実践していきたいと思いました。 山本: 私も、改めて訪問看護の持つ力の強さを感じました。訪問看護の魅力が、一般の方々も含めて多くの人に伝わればよいなと思います。 * * * 本ランチョンセミナーは、立ち見が出るほど盛況で、参加者の皆さまは熱心に耳を傾けていました。会場にお越しくださった方々、ありがとうございました。 受賞者の皆さまをご招待する「みんなの訪問看護アワード」の表彰式では、このように訪問看護の未来について意見交換するトークセッションや懇親会の場も提供しています。 皆さまのご応募をお待ちしております!>>みんなの訪問看護アワード特設ページはこちらみんなの訪問看護アワード2025 執筆・編集: NsPace編集部 ■「みんなの訪問看護アワード」エピソード募集中!(~2025/1/24)今回で3回目となるNsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」では、2025年1月24日(金)17:00まで「つたえたい訪問看護の話」を募集中です! 訪問看護にかかわる方であれば、誰もが共有したいエピソードがひとつはあると思います。皆さまのエピソードをお待ちしています!

在宅TPPV療法中の看護 観察ポイントや呼吸ケア、栄養管理、外出支援
在宅TPPV療法中の看護 観察ポイントや呼吸ケア、栄養管理、外出支援
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2024年11月26日
2024年11月26日

在宅TPPV療法中の看護 観察ポイントや呼吸ケア、栄養管理、外出支援

呼吸ケアにより生命の安全が確保できると、日常生活は安定していきます。その先にある、その人らしい生活や自己実現に、療養者さんやご家族が目を向けられるよう、在宅での支援を模索し続けることが大切です。今回は在宅でのTPPV(気管切開下陽圧換気)療法の看護のポイントやコツについて解説します。 安全・快適に過ごすための観察ポイント ベッド周りや物品配置などの環境調整 退院当初は、療養者さんの生活の場を考慮してベッドの位置、周辺環境を調整します。よく使用する吸引用具や気管カニューレ、蘇生バッグ(バッグバルブマスク)などはベッドサイドに誰もがわかるように整理しておきます。移動が簡単にできるようカートにまとめて整理されている方もいます(図1)。 図1 ベッドサイドのカートの例 家族の手技や健康状態 退院当初は手技獲得のための支援を行いますが、慣れてくると徐々にご家族のやりやすい方法に変化していきます。ご家族のちょっとした言動や療養者さんの訴えから、「吸引圧が40cmH2Oを超えていた」「吸引時間がやけに長い」「経管栄養注入時間が異様に短い」等に気づくこともあるでしょう。ご家族を否定せず、なぜその方法に変化したのか背景を把握しつつ安全な支援方法に修正していきます。 医療依存度の高い療養者さんの支援は介護負担が大きくなるため、ご家族の健康状態や疲労にも目を向けて観察します。 医療機器の管理状況 安全対策のため、次の点を確認します。 呼吸器回路をはじめとしたチューブ類がギャッジアップ時にベッド柵に挟まったり引っ張られたりしてないか固定方法は安全か吸引器・呼吸器などのコンセントの差し込みプラグがゆるんでないか電源ランプがついているか など 特に呼吸器や吸引器を移動する頻度が多い方は、気付かないうちにコンセントの接続がゆるみ、内部バッテリーに切り替わり、突然電源が切れるといったことが起こり得ます。ヘルパーさんやご家族とヒヤリハットを共有し、事故防止につなげましょう。トラブル発生時の対応や連絡先をすぐ分かるところに掲示する工夫も大切です。 療養者の表情や言動、全身状態、呼吸状態 療養者さんの表情や言動、バイタルサイン、視診、触診、聴診、痰の性状や胸郭の動き、浮腫の有無などの全身状態、呼吸状態を観察します。圧管理であれば、モニター表示を見て、最高気道内圧(peak inspiratory pressure:PIP)、1回換気量(Vt)や分時換気量(Mv)、呼吸数等の実測値を確認します(図2)。発熱や何か苦しさを感じる時には呼吸数の変化やVt・呼吸パターンの変化が生じますが、普段の実測値を把握しておくことで変化に気づけます。 図2 呼吸器のモニター表示の例 圧管理では赤枠で囲んだ項目の実測値を確認する。モニター画面の緑色のバーは気道にかかる圧力をリアルタイムで表示している。青色のラインはPIPを示し、現在の圧力は12.9hPaで吸気中であることを示す 例えば、呼吸器回路のわずかな振動や音、触診による胸骨周囲でのラトリング(胸壁の振動)、Vtのわずかな減少、療養者さんの表情で痰吸引のタイミングが分かることもあります。 また、痰がつまってくるとPIPの上昇やVtの低下が見られることもあります。胸郭や肺が徐々に固くなることでも少しずつPIPが上昇しVtが低下します。呼吸数が上昇しMvを維持しますが、それも徐々に低下していきます。 このような長期的な変化は呼吸器のログデータからも把握できますが、その兆候が分かれば早めに対応策を検討できます。グラフィック波形では気道の状態や呼吸器との同調など今の呼吸状態を推測できます。 人工呼吸療法は、換気量の維持と酸素化の改善により安楽な呼吸を支援するものです。ただ、長期療養により人工呼吸器関連肺損傷(ventilator-induced lung injury:VILI)などの弊害も出てきます。呼吸器を使用しているのに苦しい状態を作り出さないよう呼吸の変化を観察し、異常を早期に発見し対処できるように取り組みます。 呼吸ケア:唾液処理、排痰支援、痰の硬さ調整 気道クリアランスケアにおいて重要なのは唾液処理と排痰支援、痰の硬さの調整です。 唾液を吸引する低圧持続吸引器(図3)や痰吸引器(図4)を活用し、唾液や痰の垂れ込みをできる限り予防します。 図3 低圧持続吸引器 図4 痰吸引器 商品の例:アモレSU1(画像提供:トクソー技研株式会社) 排痰補助装置の使用により、痰の喀出を助け、深呼吸代わりにしっかり肺を膨らますケアにつなげます。神経難病患者では、肺や胸郭の柔軟性を維持するために呼吸のリハビリテーション機器(図5)を活用している方もいます。看護師が訪問した時に積極的に身体を動かし、さらに訪問リハビリテーションによる呼吸リハや身体リハにも積極的に活用します。 図5 呼吸のリハビリテーション機器と実際のリハビリテーションの場面 機器の例:LICトレーナー(R)声をかけて人工呼吸器を外し蘇生バッグで加圧する。圧は医師の指示のもと、40cmH2Oまでかけて息止めを3~5秒実施。その後、呼気ラインを解除し、息を吐いてから呼吸器を装着し、呼吸を整える。1日数回実施している*写真は療養者さんご本人・ご家族の同意を得て掲載しています。 これらの専門性を活かしたケアのほかに、ベッド上で側臥位にしたり、ギャッジアップで身体を動かしたりします。また、車椅子移乗をはじめとした離床は痰を動かし胸郭を広げるケアにつながると考え、生活の中に取り入れるよう提案しています。 痰が硬い場合は、加湿の調整や水分量・薬剤調整を検討します。 できるだけカフ圧計を使用してカフ圧を管理し、合併症を防ぐことも大切です。 長期人工呼吸管理が必要なALS(筋萎縮性側索硬化症)の療養者さんの中には、胸郭の柔軟性低下によりPIP上昇やカフリークといった対応困難な症状を生じる方がいます1)。積極的な呼吸ケアがこれらの症状緩和の一助となり、VILIのリスクを少しでも予防することができるのではと考えケアを継続しています。 栄養管理:過剰な栄養の回避、摂取カロリーの減量 在宅でのTPPVによる人工呼吸管理は、主に慢性期の支援になります。ALSにおいては発症初期〜進行期は体重減少が独立した予後予測因子となりますが、人工呼吸管理期は過剰な栄養の回避、摂取カロリーの減量が必要です2)。TPPV療法の導入後、そのままの栄養量で在宅療養を継続していると、体重が急激に増えていく場合があります。定期的な採血や体重測定などにより、栄養状態を評価し、栄養量を訪問診療医や管理栄養士と相談していくことが必要です。 入浴支援:他職種や関係機関との協働が大切 在宅では、入浴支援は訪問入浴を活用します。入浴スタッフが3名で訪問し、持参した浴槽で入浴をサポートします(図6)。入浴に訪問看護師が同席するわけではありませんが、その時間帯にご家族が休息を希望される場合や、呼吸や全身状態が不安定な状況により入浴スタッフが不安を感じる場合は同席しています。 入浴は療養者さんにとって楽しみの1つですが、特に終末期が近くなると体調が安定せず入浴できる機会が減ってしまいます。療養者さんやご家族の意向を汲み取り、少しでも安楽への支援の1つとなるよう関係機関と恊働しています。 図6 入浴時の様子 呼吸器につないだ状態で入浴の介助を行う。入浴中にご本人の訴えが分かるように文字盤をそばに置くようにしている(写真では机の上にある)*写真は療養者さんご本人・ご家族の同意を得て掲載しています。 外出時の支援:移動方法や物品、人手を確認 外出はご家族やヘルパーさんと行うことが多く、持参物品、機器類の管理、呼吸トラブル時の対応などを想定し指導を行います。 療養者さんが初めて外出する場合、車椅子移乗動作を支援します。ほかに、室内廊下のクランクに車椅子が通るのか、階段の昇降方法など部屋から道路までの動線を確認します。公共交通機関を使用する場合は乗車場所の確認や支援依頼のための事前連絡などが必要となります。 持参物品も人工呼吸器、吸引器などの医療機器類が多くを占めます。呼吸器のバッテリー耐用時間を確認し、外出時間により予備の外部バッテリーの準備、それ以上の時間を要する場合は携帯型の蓄電池を準備します。 また、外出先や外出時間によって支援者の人数がどの程度必要か、ご家族やヘルパーさんと相談します。 コミュニケーションの実際 まずは安全のために誰かを呼べる手段を確立します。手足が動けばスイッチやボタンを設置します。身体を動かせない療養者さんの場合、視線入力装置やピエゾセンサーを活用します。中には呼吸器のアラームを鳴らしてコール代わりにする方もいます。 近年は、さまざまなコミュニケーション手段が増えましたが、ケア中は処置をしながらコミュニケーションをとることが多く、原始的な透明文字盤や口文字盤を活用します。ただ、ALSの療養者さんの場合、病状が進行すると眼球の動きを捉えづらくなります。療養者さんがよく希望されることをまとめた文字盤に切り替えますが(図7)、それも難しくなると「はい」「いいえ」で微かに反応のある方で意思確認を行います。表情や呼吸数、Vt、脈拍などの変化から普段と違う「何か」を読み取ります。 コミュニケーション手段を活用できない療養者さんの意思を汲み取るため、それまでの関係性から、「この場面ではこれを希望することが多かった」「このような反応を示していた」など、推測することも多くなります。療養者さんと支援者の信頼関係の構築により成り立つコミュニケーションがとても大切になると感じています。 図7 文字盤の例 療養者さんがよく希望することをまとめてオリジナルの文字盤を作成している 執筆:温盛 由紀子あい訪問看護ステーション平尾 所長監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長編集:株式会社照林社 【引用文献】1)芝崎伸彦,小西かおる,宮川哲夫.「長期人工呼吸、合併症とその対応(ALSの気管拡張に着目して)」.日本難病看護学会誌 2021;25(3):226-229.2)清水俊夫.「筋萎縮性側索硬化症の代謝異常と栄養療法」.神経治療 2022;39(1):22-26. 【参考文献】〇山本美保.「TPPV管理中の呼吸状態のアセスメントとケア」.みんなの呼吸器Respica 2022;20(6):795-801.〇本間武蔵.「支援経験での気づき」.難病と在宅ケア 2021;26(12):32-36.

みんなの訪問看護アワードとは? エピソード・漫画・表彰式などまとめて紹介
みんなの訪問看護アワードとは? エピソード・漫画・表彰式などまとめて紹介
特集
2024年11月19日
2024年11月19日

みんなの訪問看護アワードとは? エピソード・漫画・表彰式などまとめて紹介

2024年10月から募集を開始した「第3回 みんなの訪問看護アワード」。訪問看護に携わる皆さまからエピソードを募集し、厳正な審査を経て表彰や記事化を行うNsPaceの特別イベントです。今回は、「みんなの訪問看護アワード」の魅力がわかる記事をピックアップしてご紹介します! みんなの訪問看護アワードってどんなイベント? 私たちNsPace編集部は、これまで取材やイベント、アンケート等を通じて訪問看護師の皆さまから訪問看護の魅力を数多く伺ってきました。訪問看護の現場では、日々さまざまなドラマが生まれているはず。しかし、一人で利用者宅に訪れることが多い特性上、そのドラマが日の目を見ることは少ない現状があります。また、忙しい日々の中で皆さま自身が発信することもなかなか難しいでしょう。 そこで、NsPaceが皆さまから「つたえたい訪問看護の話」(エピソード)を募集し、コンテンツ化して発信。訪問看護のリアルな魅力を広めていきます。 特別審査員の先生方とともに厳正な審査を行い、入賞した方には旅行券・ギフトカードやトロフィーを贈呈するほか、都内で行われる表彰式にもご招待します! 本イベントは過去にも2回実施しており、受賞者の方々から喜びの声をいただいているほか、SNSや受賞者様の所属事業所の運営メディア、雑誌、新聞等でもシェア・紹介され、大きな反響を生んでいます。 上位入賞作品の一部は漫画化! 第1回、第2回「みんなの訪問看護アワード」で入賞したエピソードは、以下の記事からご覧いただけます。 第1回つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!【みんなの訪問看護アワード】第2回つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 そして、大賞をはじめとした上位入賞作品は一部漫画化!『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』など多数の雑誌で活躍するさじろう先生や、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』著者の広田奈都美先生に丁寧に描き起こしていただきました。 漫画化されたエピソードの投稿者の方々からは、「友人や家族から『訪問看護って素敵な仕事だね』と言ってもらえた」「利用者さんやご家族、同僚のみんなが喜んでくれた」といったお声をいただいています。ここでは、過去の大賞作品の漫画をご紹介します。 第1回「みんなの訪問看護アワード」大賞作品 「七夕の奇跡」第1回の大賞を受賞したのは、公益社団法人山梨県看護協会ますほ訪問看護ステーション(山梨県)の石井啓子さんです。認知症がある利用者さん宅を訪問していた石井さん。七夕の日、ふと思い立って利用者さんに「短冊にお願いを書いてみませんか?」と促すと、「奇跡」のような出来事が…? 第2回「みんなの訪問看護アワード」大賞作品 「役割を求めて」第2回で大賞を受賞したのは、訪問看護ステーションかすたねっと(大阪府)の岡川修士さん。パーキンソン病の利用者さんから「まだ働きたい。欲しいのはお金じゃなく、役割なの」というお話を聞いた岡川さんや事業所の皆さんがとった行動とは…? そのほかにも、訪問看護師の皆さまの日々の様子や試行錯誤の過程、訪問看護の魅力が伝わる漫画を多数公開しています。 表彰式では新たなつながりも 都内で行われる表彰式では、表彰、特別トークセッション、懇親会などでおおいに盛り上がります。 漫画「みんなの訪問看護アワード」ご紹介/広田奈都美先生広田奈都美先生が第1回の表彰式の模様をレポートしてくださった漫画もあります。看護師でもある広田先生の視点から表彰式の魅力が紹介されていますので、ぜひお読みください。 第2回 みんなの訪問看護アワード表彰式イベントレポート【3月9日開催】 第2回みんなの訪問看護アワード 投稿のきっかけは? 特別トークセッション 前編(会員限定)写真付きで表彰式当日の様子や審査員の先生方、参加者の皆さまの感想をまとめたイベントレポート記事や、当日行われた訪問看護にまつわるトークセッションの内容をまとめた記事はこちらです。 表彰式には全国から受賞者の皆さまが集まり、特別審査員の先生方や訪問看護に携わる方々同士のネットワークも生まれています。初対面の方々がほとんどの中、すぐに打ち解けて、会話や記念撮影を楽しむ姿も多く見られました。同じ職種だからこそ話せる日々の悩みを相談したり、都道府県ごとに異なる事情を共有して盛り上がったり。 審査員の先生方からも、こうしたイベントがあることで「エピソードを書いて言語化することで気づきがある」「意見交換した内容を地域に持ち帰ることができる」「現場に戻って働くための心の糧になる」などのご感想をいただいています。 * * * 第3回 みんなの訪問看護アワードのエピソード応募締め切りは2025年1月24日(金)17:00まで!特設ページよりぜひご応募ください。皆さまのエピソードをお待ちしています!

訪問看護のエンゼルケア 学べる情報まとめ
訪問看護のエンゼルケア 学べる情報まとめ
特集
2024年11月12日
2024年11月12日

訪問看護のエンゼルケア 学べる情報まとめ エンゼルメイク、ご遺体の変化etc.

訪問看護師は、ご本人やご家族と深い関係性を築きながら看護を展開し、病気や障がいがあってもその人らしく生き、その人らしく人生を全うできるようにサポートをする、とてもやりがいのある仕事です。 人生の最期をご自宅で迎えられた際に行うエンゼルケアは、ご家族のグリーフケアにつながる大切なケアのひとつでしょう。エンゼルケア(死後ケア)の流れはわかっていても、なかなか自信がもてない訪問看護師の方も多いのではないでしょうか。今回は、過去に掲載したエンゼルケアにまつわる記事をご紹介。自信を持ってエンゼルケアを行うための助けとなれば幸いです。 エンゼルケアをするときの姿勢やメイクの知識 漫画「おたんこナース」、ドラマ「ナースマン」の原案者である小林光恵さんにご執筆いただいた「訪問看護師のエンゼルケア」シリーズ。エンゼルケアについて知っておきたい知識について、全8回に渡って解説いただいています。 [1]エンゼルケアの基本姿勢をキーワード化して共有しよう まずはエンゼルケアの基本姿勢について。エンゼルケアの目的は何か。どういったスタンスで看護をすればいいのかをまず理解したいところです。本記事では、事例も交えながらエンゼルケアの基本姿勢について解説いただいています。 [2]一方的に進めない! エンゼルケアでもコミュニケーションが重要 エンゼルケアを行う上でのご家族とのコミュニケーションについても、具体的な例をもとに紹介されています。よかれと思って行ったケアが、実はご家族のつらい記憶につながることもあるとのこと。ご家族の要望に対して、どのように応えていけばいいのか、回答例も含めてポイントが紹介されています。 [5]身だしなみの整え――看取りの手段としてのエンゼルメイク 悲嘆の苦痛を乗り越える過程を見守り、支えるグリーフケア。ご家族が「あのときこうしていたら」と後悔の念を抱いたとき、エンゼルケアが助けになる事例が紹介されています。限られた訪問の中で何ができるか、という観点でもおすすめの方法が紹介されているので、ぜひ参考にしてみてください。 [7]ここだけは押さえたい お顔のエンゼルメイク3つのポイント お顔のエンゼルメイクをする際に印象を左右するポイントは、「乾燥対策」「血色」「眉の形」とのこと。エンゼルメイクをする際に注意すべき点が、イラストとともにわかりやすくまとめられています。そのほかにも、エンゼルケアをする際の「ならわし」への対応や冷却などについても解説されています。ぜひシリーズをとおしてお読みください。 >>訪問看護のエンゼルケアシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/angel-care/ 納棺師の視点から学ぶエンゼルケア 納棺師の大垣麻里さんを講師にお迎えしたセミナーでは、訪問看護師があまり目にすることのない死後24時間以降のご遺体の変化や、トラブル対処法などについて解説いただきました。その際のレポート記事がこちらです。 納棺師解説/死後24時間以降のご遺体変化と対処法【セミナーレポート前編】(会員限定) エンゼルケアを行う上で「ご遺体の変化」を学ぶことはとても大切。「死後硬直は何時間後から?」「黄疸変化は?」など、さまざまな時間変化の流れを意識して、ご家族が望むケアをしていきましょう。 お顔に死斑が出ないようにするための方法や、ご家族が希望されるお洋服をご本人に着せる際の硬直の解き方、腐敗対策や止血の方法など、現場での実践方法が紹介されています。 納棺師解説/ご遺体への最新詰め物事情【セミナーレポート後編】(会員限定)後編では、COVID-19が故人とのお別れに与えた影響や、体液漏れを防ぐための詰め物・尿や便の対応の必要性や具体的な処置方法など、気になるポイントを解説いただいています。 エンゼルケアにまわるQ&Aや資料 NsPaceでは、訪問看護に役立つ「お役立ちツール」もご用意しています。エンゼルケアに関するツールもあるので、ぜひご活用ください。>>お役立ちツール(会員限定)https://www.ns-pace.com/tools/#6 お役立ちツール「死後24時間以降のご遺体変化&最新詰め物事情」-Q&A一覧.pdf納棺師の大垣麻里さんより、現場の看護師さんからセミナー時にいただいたご質問に一つひとつ丁寧に回答していただきました。悩みごとの解説につながるQ&Aが見つかるかもしれません。「特別先行公開! 死後24時間以降のご遺体変化&最新詰め物事情 セミナーQ&A」(会員限定)とあわせて、ぜひご確認ください。 お役立ちツールエンゼルメイクの手順例.pdfエンゼルメイクの手順について、15ページにわたってイラスト付きで解説されています。お顔のメイクに加えて、シャンプー、手浴・足浴・着衣、迷いやすい個別の対応事例についても解説。印刷して手元に置いておきたい資料です。 * * * エンゼルケアは、正解がわからず、迷いながら行うことも多いでしょう。また、亡くなった方のご家族の悲しみは言うまでもありませんが、看護師にとっても利用者さんとの別れは悲しい出来事です。エンゼルケアを通じて看護師自身のグリーフケアにつながることもあるはず。今回ご紹介した記事やお役立ちツールが、少しでもお役に立てば幸いです。 執筆・編集: NsPace編集部

心に残る利用者さんのエピソード【つたえたい訪問看護の話】
心に残る利用者さんのエピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年11月5日
2024年11月5日

心に残る利用者さんのエピソード【つたえたい訪問看護の話】

訪問看護をしていると、いろいろな利用者さんとの出会いと別れがあります。「みんなの訪問看護アワード2023」に投稿されたエピソードから、いつまでも私の胸に残る思い出深いエピソードを5つご紹介します。 「ミラクルな1日」 利用者さんにとって、心の中に溜めていた周囲への感謝や喜びが溢れでた1日だったのかもしれません。 27歳訪問看護師3年目、看護師になって7年目。看護学生時代の担任の先生が訪問看護ステーションを始められ、一緒に働いている。いろんな利用者さんに出会ってきた。その中でも印象深い利用者さんがいる。誤嚥性肺炎で余命1ヵ月と言われ、在宅へ帰ってきた。物腰柔らかな奥様としっかり者の娘様が手厚く介護されていた。在宅で療養中も誤嚥性肺炎を何度も起こし、そのたびに補液や抗生剤を使用し回復されていた。自営で仕事一筋で過ごされ、とっても頑固。家族やスタッフにも感謝の言葉はあまりなく、いつも「悪態」をついて怒鳴っていた。段々と具合が悪くなっていき、ある日とてもミラクルなことが起きた。目がキラキラと輝き、家族やスタッフにたくさんのありがとうを言い、嬉しそうにたくさん笑っていた。余命1ヵ月と言われながらも7ヵ月頑張って過ごされ、その日の夜に家族に見守られ亡くなられた。「ミラクルな1日でした」と言った家族の顔と、ご本人の輝いた瞳が忘れられない。 2023年1月投稿 「訪問看護の中の密かな楽しみ」 お互いを想う気持ちや二人で物語を楽しむ一時が伝わってくるエピソードです。 もう亡くなってしまったけれど、忘れられない人がいます。私より一回りほど年上の女性。難病で声を失った彼女は日中いつも一人で、帰るときは決まって寂しそうでした。楽しめることはないかと、訪問の終わりの僅かな時間に、彼女の好きな本を読むことにしました。1ヵ月かけて好きな作者を知り、ご家族に手持ちの本を幾つか用意していただき、半年以上かけて一冊読み終えました。週2回の訪問なので前回の話を忘れていたりして、行きつ戻りつでした。私は彼女に楽しんで欲しくて、時々リアクションを入れたり感想を述べたり。彼女はいつも笑って応えてくださいました。読み切った後本を選んだ理由を尋ねると、私が好きそうだったからと。楽しんでもらうつもりが、楽しませてもらっていました。10年以上も前の話ですが、彼女の笑顔は今も鮮明に覚えています。サービス提供者も沢山のものをいただいていることを深く心に刻むことができた大切な思い出です。 2023年2月投稿 「笑顔がみられますように」 コミュニケーションを工夫していった結果、利用者さんからの意思表示が生まれ、最後には意思疎通ができたのかもしれません。不満話に笑顔を見せる利用者さんが印象的です。 50代、くも膜下出血の後遺症から遷延性意識障害になったYさん。ご主人が日中お仕事に行かれるお昼間に排泄援助と胃ろうから栄養剤を注入するため、週3回訪問を担当。意思表示もなくコミュ二ケーションもとれません。そこで、快の刺激でコミュニケーションがとれないかなあと考えました。足裏には全身のツボがあることから、注入食の前に足裏とふくらはぎのマッサージをしました。数ヵ月たったころに、何となく目が合うような感じがありました。その日は何の気なく、私の主人の不満をYさんのご主人と重ね合わせて話しかけました。すると口をいがめて声をあげて笑うんです。一瞬、え!とびっくりしました。笑うのは、なぜかご主人の不満話なんですが、通じるものなんだと思いました。残念ながら再びシャント不全を起こしてしまい入院されましたがしばらくは笑顔を見せてもらえて私の訪問看護の中では忘れることがない出来事です。 2023年2月投稿 「認知症のおばあさんが放った言葉」 人の言葉には考え方や捉え方を変容させる力があることを認識するエピソードです。 理学療法士として訪問していた認知症のおばあさんとのお話です。その方は認知症で記憶力が低下しており、有料老人ホームに入居されていました。約2年間一緒にリハビリをしてきましたが、私の顔と名前を覚えられていないご様子でした。ですが、私のユニフォーム姿を見て「リハビリの人」という認識はできていたと思います。とても明るく、お話し好きでもあり、ときには私が悩み相談をしていることもありました。そんな中、自分の転機により退職することとなり、最後の日にお別れの挨拶をすると悲しそうな顔をされていました。ですが、「私は何でもすぐに忘れてしまうから悲しいのもきっと今だけ。そう思うともの忘れも悪くないなあ。」と返ってきました。この返答には大変驚き、身体がビビッとなったのを覚えています。この出来事以降、「認知症の方」に対する考え方や関わり方が私の中で大きく変わったように思います。これからも私の忘れられない一場面です。 2023年2月投稿 「訪問看護だからこそ」 利用者さんを看護師が観察するように、利用者さんも看護師をしっかりと見ています。だからこそ利用者さんから発せられた言葉だったのだと思うエピソードです。 病棟勤務から訪問看護に異動した私にとってSさんは病棟時代から関わっていた患者さんだった。訪問看護に異動してすぐにSさんの初回訪問から携わった。異動して不慣れな私の成長を見守っててくれていた。ある日Sさんが「やっと前の◯◯さんに戻ってきたね、病棟のころにいた時と近くなってきた」と言った。肩に力が入っていた私を心配していた、と言ってくれた。思わず涙してしまった時、Sさんから「◯◯さんの良さは訪問看護だからこそ伸びるんだと思う。時間に、患者に追われ過ぎてた◯◯さんよりずっと今の方が楽しそうだよ。自信を持って続けたらいいと思うよ」と笑って言ってくれた。元々准看護師だった私が、正看護師合格とともにずっとやりたかった訪問看護に異動願いを出し、念願叶って訪問看護師になれたものの一つも看護師としての自信がなかった私にとって、Sさんの言霊がとても胸に響いた。悲しいことにSさんは昨年逝去してしまったが、これからも続くであろう訪問看護人生で絶対にSさんのことは忘れない。訪問看護ならではの利用者さんとの一対一の関わりを大事に、ずっとやりたかった訪問看護を続けていきたい。 2023年2月投稿 思い出は糧となる 人との出会いは、自分にとって一生の宝物になることも。自分を変えるきっかけや学びになるような出会いを積み重ねながら、思い出とともに今日もまた訪問看護に携わっていくのでしょう。改めて自分の中にあるたくさんの人とのつながりを思い返す、そんなエピソードでしたね。 編集: 合同会社ヘルメースイラスト: 藤井 昌子

スピリチュアルペインを和らげる個別のケア【スピリチュアルケア】
スピリチュアルペインを和らげる個別のケア【スピリチュアルケア】
特集
2024年10月29日
2024年10月29日

スピリチュアルペインを和らげる個別のケア【スピリチュアルケア】

「スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア【スピリチュアルケア】」で解説した「基盤となるケア」に続き、今回はもう1つのケア「個別のケア」について解説します。患者さんのスピリチュアルペインの訴えに焦点をあて、スピリチュアルケアの実践を学んでいきましょう。 ケア提供者の基盤となる「気遣う」姿勢 看護師がスピリチュアルケアを実践するには、前回も述べたように、普段から「全般的なケア」である基盤となるケアを念頭において、まずは患者さんとのよりよい関係性を構築することが重要です。看護師は傾聴や共感、沈黙、ともにいることといった基本的コミュニケーションを用いて、患者さんが直面している苦しい現実や、そのために生じる否定的な感情を表出できるように援助していくことが大切です。 ケア提供者である看護師は、専門職としての知識や技術、倫理観を備えていることを前提として、以下の5つの姿勢で患者さんを「気遣う」ことが望まれます。 積極的な傾聴ができる共感的な感性を磨く自己の価値観や倫理観から自由である自己の弱さや限界を認めるチームの一員としてかかわる 患者さんのスピリチュアルなニーズに気づき、スピリチュアルペインをケアしていくためには、患者さんに関心を寄せて、そこに「居合わせること(presence)」1)が重要です。看護師は、患者さんと居合わせることにより、いつもとは違う感情が表現されていることや、行為や行動が違っていることに気づけるのです。 「事例で検討 スピリチュアルペインのアセスメント【スピリチュアルケア】」で示したがんの終末期にあるAさん(男性、60代、膀胱がん)の事例で表出されたスピリチュアルペインをもとに、個別のケアとして、「負担感/申し訳なさ」(関係性のスピリチュアルペイン)に関するケアの工夫と、「自分のことができないつらさ」(自律性のスピリチュアルペイン)に関するケアの工夫について、そのポイントを以下に挙げます2)。 「負担感/申し訳なさ」に関するケアの工夫 「負担感/申し訳なさ」に関するケアの工夫には6つのポイントがあります。順に説明します。 1 患者さんの価値観を理解する●患者さんがどんな価値観をもっているかを知る●患者さんの価値観を否定することなく、気持ちを理解しようとしていることを伝える2 負担感/申し訳なさについて患者さんとご家族が気持ちを伝え合えるようにコーディネートする●患者さんの負担感/申し訳なさを感じている気持ちを聴く●ご家族は実際にどう感じているのか、ご家族の気持ちを聴く●ご家族が負担とは感じていないことや、本人・家族相互の気持ちを自然体で伝え合えるようコーディネートする、または橋渡しする3 患者さんの負担感/申し訳なさが減るケアを工夫する●患者さんが負担だと感じることは何か、なぜそれを負担と感じているかを知る●日常生活で負担を感じさせない工夫をする●「してあげる」ケアを避ける●患者さんのがんばりを支える●喪失を最小化する●今までの人生の価値を振り返る4 新たな視点を提示する●患者さんの価値観を尊重しつつ、新たな視点を提示してみる●新たな視点を提示する言葉は、患者さんの負担にもなりうることをケア提供者が知っておく5 ご家族の負担を和らげる●ご家族に対する十分な情緒的サポート、ねぎらいを行う●ご家族が介護と生活を両立できるためのサポートを行う●ソーシャルワーカーと連携し、適切な社会資源を紹介する6 患者さんのコーピングを支持する●患者さんの行っているコーピングを理解し、支持する文献3)をもとに作成 「自分のことができないつらさ」に関するケアの工夫 「自分のことができないつらさ-自分で自分のことが思うようにできないつらさ」に関するケアの工夫には3つのポイントがあります。 1 喪失を最小限にする●患者さんが自分でできるようサポートする●患者さんが自分の力を最大限活かせるための環境を整備する●リハビリテーションの導入を相談する●補助具(コルセット、ステッキ、歩行器、車いす、電動車いすなど)の使用を相談する●患者さんの希望に沿った症状緩和を行う2 コントロール観を最大限にする●何を、いつ、どこで、どんな方法で行うかを患者さんが選択できるように配慮する●達成が難しいようなことでも否定せず、患者さんが挑戦することを支持する3 患者さんのコーピングを支持する●患者さんのコーピングを理解し、支持する文献4)をもとに作成 ケア提供者に求められる態度・考え方とは スピリチュアルケアにおけるケア提供者の基本的な態度や考え方を調査した研究結果5)から、スピリチュアルケア提供者の「心構え」として次のことが示されています。「患者さんの可能性を信頼し、人生へ敬意を払う」<人間への信頼と敬意><傾聴がケアとなることの自覚>、「心・苦悩・人生に意識を向ける」<スピリチュアリティの探求>、「問題解決的関わりや過度な期待によって巻き込まれることへの自戒」<医療者本位への自戒>です。 また、患者さんのスピリチュアルな側面のニーズを満たすためには、「誠実さ、謙虚さ、ケアリングを意識して患者さんに向き合う姿勢」が必要とされています。ケアリング(caring)の概念は明確化されていませんが、共感や気づかい、思いやりなど、ケア提供者の心情や態度を表すものとされています。 患者さんにケアリングを行うとは、患者さんを精神的に成長しうる存在として捉え、共感や気遣い、思いやりを基盤としながら、一方的に患者さんを支援するという態度では成り立ちません。患者さんの成長や自己実現のために(実現を助けるために)、患者さん・ご家族とともにケアを行っていくことが大切です。 一方、スピリチュアルな苦悩の中にある患者さんとの関わりは容易なものとは言い難いでしょう。自分自身がどのような意識の志向性をもった人間で、今自分が何を感じ、どのような感情を抱いているのか、時に自己を見つめ直す機会をもつことはとても重要です。自然や、文化、芸術などに触れ、自分自身へのケアも意識的に取り入れることも大切なことです。 看護師として、一人の人間としてケアにあたる スピリチュアルペインは、本来、終末期の患者さんに限らず有限の生を生きるわれわれ誰もが直面せざるをえない苦しみです。その内容は非常に個人的であり、人格的なものです。したがって、スピリチュアルケアは、その人をあるがままに受けとめ、その人が「どのように生きるか、どのように生きてきたか」という、生きることそのものを支えるケアであるといえるでしょう。 鷲田 清一氏6)は、「自分の言葉がわかってもらえたかどうかよりも、その言葉が受けとめられたかどうかのほうがはるかに大きな意味をもっている。揺れている、無防備な自分をそのまま認めて肯定してくれる他者がそばにいてくれること自体が、私たちを支えてくれるのだと思う」と述べています。 人間存在そのものへの問いかけや、スピリチュアルな側面での苦悩をもつ人への関わりは、一方的な解釈や答えを与えることでも、励ますことでもありません。苦しみを、悲しみあるいは怒りとして、個々に表出するその人を、ありのままに、それでよいのだと受け入れることから始まるのだと思います。そして、その人の背景にある苦しみに(喜びにも)、寄り添いたいとの思いで、ともにあり続けることが大切であり、そのようなケアの担い手でありたいと願っています。 執筆:前滝 栄子京都大学医学部附属病院 緩和ケアセンターがん看護専門看護師 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)Tamura K, Kikui W, Watanabe M (2006) Caring for the spiritual pain of patients with advanced cancer: a phenomenological approach to the lived experience. Palliative and Supportive care4, 1-10.2)田村恵子,森田達也,河正子編.看護に活かすスピリチュアルケアの手引き.第2版,青海社,2017,p. 58-65.3)同上,p.59-60.4)同上,p.62.5)同上,p. 129-131. 6)鷲田清一.そこにいる力、聴くことの力.ターミナルケア,2000,10(3).p.199-204.

退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス
退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス
特集 会員限定
2024年10月22日
2024年10月22日

退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス【セミナーレポート後編】

2024年7月12日のNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナーのテーマは、在宅緩和ケアと病院との連携。講師には、訪問看護と病院の地域連携部門の両方を経験した廣田芳和さん(楓の風在宅療養支援株式会社)をお招きしました。 セミナーレポートの後編では、退院支援・退院調整の具体的なプロセスを中心にまとめます。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本【セミナーレポート前編】 【講師】廣田 芳和さん楓の風在宅療養支援株式会社 スーパーバイザー/元 緩和ケア認定看護師(~2024年6月)神奈川県内の病院で約13年にわたって勤務した後、「在宅療養支援ステーション楓の風」に入職し、管理者も経験。その後は前職の病院に戻り、地域連携部門に約3年間勤め、再び訪問看護の現場に戻って現在に至る。 退院支援・退院調整のプロセス 退院支援・退院調整は3段階に分けられ、以下のような内容を実施します。 第1段階:外来入院が決定してから入院後3日以内入院前の生活状況を調査するとともに、入院理由・目的・治療計画などをふまえて退院時の状態像を把握。また、退院支援の必要性を医療者と患者さん、ご家族で共有。第2段階:入院3日目から退院までアセスメントを継続し、チームで情報の共有や支援策の検討を実施。また、患者さんとご家族が疾患について理解、受容するための支援や、退院後の生活イメージの構築も行う。第3段階:必要になった時点から退院まで退院を可能にする制度・社会資源の調整や、退院前カンファレンスを実施。 段階ごとの詳細やポイントも見ていきましょう。 第1段階の内容とポイント 入院前面談 多くの病院では、患者さんの情報を把握し、患者さんに情報を提供するための面談を入院前に行います。主な面談の内容は以下のとおりです。 ・身体・社会・精神的な情報の把握 ・現在利用している介護サービスの把握・褥瘡や栄養状態の評価・服薬中の薬の把握・退院困難な要因の有無の評価・入院中に行われる治療・検査や入院生活についての説明 退院困難要因の把握 早期にスクリーニングを実施し、入院理由や目的、治療計画などをふまえ、退院困難要因の有無を予測します。なお、ほとんどの患者さんが何らかの項目に当てはまるのが実状です。 退院支援の必要性の共有 患者さんとご家族の病状への理解度を確認。退院後の見通しの説明も行います。 第2段階の内容とポイント 継続的にアセスメントし、チームで支援 多くの場合、スクリーニングに基づいたカンファレンスを実施し、情報を整理しながら具体的な支援方法を決めていきます。 退院後の生活イメージを相談・構築 患者さんやご家族の不安を一つひとつ明確にし、在宅に戻る自信がもてるように支援します。不安を払拭するには以下3つの点を意識し、医療・看護を在宅モードに変換することが必要です。 (1)今後の変化を予測し、必要な処置や治療に関する準備・調整をしておく(2)自己管理がどの程度可能か、サポート体制はどのくらい整っているかを把握する(3)生活の場に合わせて可能な限りシンプルに管理できる方法を考える なお、ご家族の介護力をふまえて訪問看護の利用が決まっていれば、この段階で退院指導に訪問看護師も携われると、「在宅での現実的な方法」をより見つけやすくなるはずです。これは、退院前カンファレンスの意義にも通じると思います。 また、入院に伴うADLの低下を最小限にするよう調整すること、家族が不安な思いを表出できるようにすること、食事や排泄、入浴などのアセスメントと支援を行っていくことが重要です。 患者さんとご家族の疾患理解・受容への支援 第2段階では、患者さんとご家族が疾患について理解し、受け入れるための支援も行います。例を挙げながら見ていきましょう。 入院時の患者さんの情報 肝臓がんを患い、外来で化学療法を続けていたが、緊急入院1ヵ月前から食事量が減り、体重も5kg減少体力が低下しており、トイレに行くのがやっとの状態腹部の痛みあり 検査の結果 がんは腹膜にも転移し、腹水が溜まっていた末期状態と診断医療用麻薬が使用され、痛みは改善傾向 検査結果をふまえ、医師から病状と新たな治療選択肢がないことが説明され、「残された時間の過ごし方(病院、ホスピス、家のどこで最期を迎えるか)を考えてほしい」と伝えられました。本人とご家族はもちろんショックを受けて動揺しますが、この先の選択にはあまり多くの時間はかけられません。 この場合、病棟や退院支援部門の看護師は以下のような関わりをします。 ・時間の許す限り不安な気持ちに寄り添う・返答できる質問には真摯な態度で丁寧に答える・利用者さんとご家族の希望を伺う・転帰先をイメージできるよう、ホスピスやそれに類似する施設、もしくは在宅での生活についてそれぞれわかりやすく説明する 特に、不安から「在宅療養は不可能」と判断してしまうご家族が非常に多いです。適切なサービスを利用すれば選択できることを、きちんと説明しなければなりません。 また、以前は病棟看護師が在宅療養は困難と判断してしまうケースもありましたが、最近では在宅緩和ケアの知識をもった退院支援部門の看護師やソーシャルワーカーに対応を任せる病院が増加しています。そのため、説明不足が原因で在宅を選べなくなる事例は減ってきています。 第3段階の内容とポイント 第3段階で行う退院前カンファレンスには、3つの目的があります。 (1)包括的なケアのための情報の共有(2)患者・家族が安心して退院できる環境づくり(3)安定した退院後の療養生活の確保 本来は、地域ケアが必要な全ケースで退院前カンファレンスを行うのが理想的でしょう。しかし、人員が潤沢ではない現状では難しいため、必要性が明確なケースに絞って行われています。 退院前カンファレンスでは、以下のような点を確認します。 ・住環境や家族との関係を含めた利用者さんの基本情報・病名や予後告知の状況、それに対する本人とご家族の理解度・本人とご家族の意向 ・転帰先(在宅or施設)・住環境の改修(手すりの設置や車イスの導入)の必要性・訪問看護指示書をはじめとした書類の内容・薬の処方(退院時処方の量や訪問診療との調整)・退院時の移送方法 そのほか、医療管理の状況や課題を地域ケアチームへ引き継いだり、訪問看護の頻度や内容、その費用を説明したりもします。必要に応じて、ヘルパーやデイサービス、訪問リハビリの活用検討も行います。 * * * 在宅緩和ケアに移行するにあたっての流れや課題を見てきましたが、やはり重要なのは訪問看護と病院の連携です。互いを「同じ地域の一員であり、同じ志をもつ者」と認識し、協力することが、よりよいサービスにつながるはず。ぜひ歩み寄る意識をもっていただけたら幸いです。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス「在宅ケア移行の為のヒント」https://www.utsunomiyahiroko-office.com/zaitaku.html2024/08/26閲覧

在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本
在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本
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2024年10月15日
2024年10月15日

在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本【セミナーレポート前編】

2024年7月12日に開催したNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「【事例で解説】在宅緩和ケアの課題&病院との連携」。在宅における緩和ケアの課題や退院支援・退院調整の具体的な工夫などを、訪問看護と病院の地域連携部門の両方を経験した廣田芳和さん(楓の風在宅療養支援株式会社)に教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、在宅緩和ケアの課題の概要と、その解消に向けて訪問看護師に求められることなどをまとめました。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】廣田 芳和さん楓の風在宅療養支援株式会社 スーパーバイザー/元 緩和ケア認定看護師(~2024年6月)神奈川県内の病院で約13年にわたって勤務した後、「在宅療養支援ステーション楓の風」に入職し、管理者も経験。その後は前職の病院に戻り、地域連携部門に約3年間勤め、再び訪問看護の現場に戻って現在に至る。 在宅緩和ケアの課題 在宅緩和ケアの難しさは、利用者さんによってアプローチの内容やタイミング、求められることが異なる点にあります。 例えば、がんの利用者さんは非がんの方に比べて「訪問看護開始から死亡までの期間」が短く1)、スピーディーな対応が求められます。一方で、非がんの慢性疾患を抱える利用者さんは予後予測が難しく、死にゆく過程は多様。治療の必要性も最後まで残されており、「終末期」の定義づけが難しいため、緩和ケアが必要になる時期はさまざまです。また、非がん疾患の高齢者の意思決定支援2)では、本人がどう生きたいかを明確にして、その実現を支えることが求められます。 このように、在宅緩和ケアに取り組むにあたっては、医療機関との情報共有が重要になります。そこで必要になるのが、退院支援・退院調整。特に慢性疾患の利用者さんのケースでは、退院支援・退院調整がケアの質を左右するといっても過言ではありません。 退院支援・退院調整とは 退院支援・退院調整とは、それぞれ以下の内容を指します(具体的な内容やポイントは後編でご紹介します)。 退院支援患者さんが自身の病気や障害について理解し、退院後も必要な医療・看護を受けながらどこでどのように生活を送るか、自己決定するための支援。退院調整退院支援で明らかになった想いや願いを実現するために、ご家族の意向をふまえて、「環境・人・物」を社会保障制度や社会資源につないでいく過程。 退院支援・退院調整は、患者さんの「こう生きていきたい」という想いに基づき、人生の再構築をサポートすることといえるでしょう。 少子高齢化が進み、医療費が増加している今、在院日数の削減は全病院の共通の課題。その解消のカギとなるのが、より効率的な退院支援・退院調整です。その重要性はますます認識されており、病院で専門の部門や担当者が設けられたり、関連する診療報酬が追加されたりする動きもあります。 病院との連携に関する今後の課題 在宅緩和ケアへの移行に伴う「訪問看護ステーションと病院との連携」においては、さまざまな課題があります。 多くの病院で看護師が不足する今、一人ひとりの退院後を見据えて退院支援部門につなげたり、訪問看護への依頼を考えたりする時間が十分にとれないことは珍しくありません。また、連携に関する教育が行き届いていないケースもあると思います。 そのために訪問看護師のみなさんにお願いしたいのが、病院関係者への積極的な働きかけです。連携の基本は、相手を知り、理解すること。患者さんが入院している間に退院前カンファレンスをはじめとした話し合いの機会をもち、在宅緩和ケアについて一緒に考えることができれば、連携体制はよい方向に変わるはずです。そんな双方の歩み寄りが、今後の在宅緩和ケアにおける連携で最も重要になると思います。 >>後編はこちら退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】1)厚生労働省.「訪問看護について」(平成23年11月11日)P.30https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uo3f-att/2r9852000001uo71.pdf2024/08/26閲覧2)藤田愛.『「最期の場所」を決める 最終的な意思決定支援とは』.訪問看護と介護,医学書院.2015,20(2)

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