コミュニケーションに関する記事

ニャースペース【訪問看護あるある】
ニャースペース【訪問看護あるある】
特集
2024年10月15日
2024年10月15日

連携先からのお褒めの言葉!ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

「任せると安心」と言われるとうれしい! かかりつけ医をはじめ、訪問看護では他の施設や職種の方と連携することが多いにゃ。 連携先の方に褒められると、励みになるにゃ! 訪問看護では、ケアマネジャーや医師をはじめ、ほかの職種や施設と連携する場面が多いもの。「『○○ステーションにお願いすると利用者さんもご家族も安心してくれるから、またぜひお願いしたい』と、新規のご紹介をいただいた時は、これまでのがんばりが報われたような気持ちになる」「退院前カンファレンスや担当者会議、報告書を届けに伺ったときなどに『安心して任せられます』などとお声がけいただくと、すごく嬉しい!」といった声をいただきました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

CPAP療法とは?知っておきたい適応や禁忌、治療継続につながる対応
CPAP療法とは?知っておきたい適応や禁忌、治療継続につながる対応
特集 会員限定
2024年10月8日
2024年10月8日

CPAP療法とは?知っておきたい適応や禁忌、治療継続につながる対応

睡眠時無呼吸症候群は、いびき・日中の眠気・倦怠感などの症状がみられる疾患で、在宅診療でも遭遇することがあります。上気道の狭窄が原因であることが多く、CPAP(持続陽圧呼吸)療法が行われています。今回はCPAP療法の適応・装置・メンテナンス法などを紹介します。 CPAP療法の適応疾患・基準 睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は、夜間の断続的な低酸素血症・高二酸化炭素血症・睡眠の分断などが原因で、いびきのほかに日中の眠気・倦怠感などを感じるようになる疾患です。2003年の新幹線オーバーラン報道がきっかけで、SASは世間一般にもよく知られるようになりました。 日本人を対象とした研究では、男性で約24%、女性で約10%に睡眠呼吸障害が報告されており1),2)、SASは有病率の高いcommon diseaseであると考えられています。心血管イベントや認知機能低下などのリスクも高くなることから、適切な治療が必要です。 SASは、上気道が閉塞してしまう「閉塞性睡眠時無呼吸」と、気道閉塞を伴わない「中枢性睡眠時無呼吸」に大きく分類されます。CPAP(continuous positive airway pressure)療法は、持続的に気道へ圧力をかけることで上気道の閉塞を解除し無呼吸を改善する治療法で、閉塞性睡眠時無呼吸に対して有効となります(図1)。 ただしCPAP療法はあくまで対症療法であり、根本的な原因治療ではないことを知っておかなければいけません。肥満であれば減量を試みる価値がありますし、扁桃肥大・アデノイドなど耳鼻科疾患があれば、その切除を検討することが必要です。 図1 CPAP療法のしくみ AHI20以上で在宅CPAP療法が適応に 在宅CPAP療法の使用基準は診療報酬上、以下に該当することとされています3)。 (1)無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index:AHI、1時間あたりの無呼吸および低呼吸数)が20以上であること(2)日中の傾眠・起床時の頭痛などの自覚症状が強く、日常生活に支障を来していること(3)睡眠ポリグラフィー上、頻回の睡眠時無呼吸が原因で、睡眠の分断化、深睡眠が著しく減少または欠如し、CPAP療法により改善する症例であることC107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料 ただし、睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)は、睡眠時にさまざまなセンサーを取り付ける煩雑な対応が必要で、入院で実施する必要があります。そのため、自宅で実施可能な施設外睡眠検査をはじめに行うことも多く、AHI の代わりに呼吸イベント指数(respiratory event index:REI)40以上の結果が得られ、かつ上記の(2)の症状を認めれば、CPAP療法の導入を行うことができます。 CPAP療法が使用できないケース CPAP療法は、嚢胞性肺疾患(巨大なブラがある、肺リンパ脈管筋腫症、Birt-Hogg-Dube症候群など)、気胸、病的な低血圧症、脱水症、脳脊髄液の漏れ・頭部外傷歴・頭蓋内気腫がある患者さんには使用できません。 またSASの症状があっても、AHIが5〜20の場合はCPAP療法の適応とはなりません。ただし、歯科で作製してもらった口腔内装置(マウスピース)を用いた治療は行うことができます。 CPAP療法の標準装備 CPAP装置は、メーカーによりデザインの違いはあるものの、そのしくみはほとんど同じです。CPAP装置に加え、加湿器(CPAP装置と一体型になっているものも多い)、チューブ(もしくは加温チューブ)、マスクが標準装備です(図2)。 図2 CPAP療法に必要な装置 マスクの形にも種類があり、鼻全体を覆うタイプ(ネーザルタイプ)、鼻腔に当てるタイプ(ピロータイプ)、鼻と口全体を覆うタイプ(フルフェイスタイプ)があります(表1)。ネーザルタイプが一般的ですが、それぞれにメリット・デメリットがあるので、適切なマスクを選択することが必要です。 表1 CPAPマスクの種類と特徴 マスクの装着方法 マスクのタイプ、メーカーによって装着方法は少し異なりますが、よく使用されているネーザルタイプの標準的な装着方法を紹介します4)。(1)マスクはチューブから外し、単体で装着する(2)マスクの左右の方向を確認し、マスククッションを鼻に当てる(3)ストラップあるいはヘッドギアを装着する(4)マスクからリークがないよう、また痛みを感じることがないよう、バンドを調整しマスクをフィットさせる(5)最後にチューブをマスクに接続し、CPAP装置を起動させる 各メーカーがマスクの装着方法を動画で紹介しているので、一度確認しておくとよいでしょう。 ネーザルマスクを用いる際に、開口が問題となる場合には、顎が下がらないようにチンストラップや細いテープの使用を考慮します。 CPAP療法の実際 患者さんごとの最適な圧力調整が必要 CPAPの陽圧値は、固定圧あるいは自動圧調整(Auto CPAP)で設定します。固定圧は、それぞれの患者さんに適した一定陽圧を調整し決めなければならないので(タイトレーションといいます)、適切な管理ができるまで細やかな調整が必要となります。 それに対しAuto CPAPは、装置内のセンサーを用いて無呼吸や気流制限を解析し、睡眠中の圧力を自動的に増減させるしくみです。基本的に最低・最高圧を設定するだけでいいのでタイトレーションが簡便であり、近年頻用されるようになっています。しかし、圧力変動で違和感を覚える場合があること、睡眠状況の変化を察知してから圧力調整が行われるため予防的効果が低くなってしまうことがデメリットとして挙げられます。 陽圧そのものが不快に感じられることは多く、CPAP開始後にゆっくりと圧力を上昇させるramp機能や、呼気時に圧力を下げる機能が備わっているものもあります。 アドヒアランス低下の要因に適切に対応 CPAP療法は、患者さん自身が治療方針に賛同し、積極的に治療を継続する「アドヒアランス」が大切です。アドヒアランスが低下する原因として、鼻閉感、鼻の刺激、口の乾燥、腹部膨満感、リークの刺激、マスク痕や皮膚の炎症などが挙げられます。抗ヒスタミン薬の導入、加温加湿器の使用、マスクフィッティングの調整、圧設定の調整、皮膚保護など、患者さんの訴えに合わせた対応をすることで、アドヒアランスの向上が期待できます。 CPAP療法を継続できない患者さんには、顎矯正手術や植え込み型舌下神経刺激療法を行うことがあります。高度肥満患者さん(BMI 35以上)には腹腔鏡下スリープ状胃切除術の適応があり、減量することでAHIを低下させられる可能性が報告されています5)。 なお、マグネット付きストラップのマスクは装着が容易ですが、マグネットと相互作用する医療機器(ペースメーカー、植込み型除細動器など)を使用している患者さん、器具(脳動脈瘤クリップ、塞栓コイルなど)が体内に存在している患者さんには使用禁忌となっており、注意が必要です。 治療継続とAHI5以下が目標 CPAP装置の設定は医師が行います。患者さんは寝る直前にマスクを装着し、CPAP装置を起動させるだけでよいです。訪問看護師さんをはじめとした医療従事者は、CPAP装置に記録されたデータをもとに、CPAP療法が適切に行われているか評価します。装着日数を増やすこと、AHIが5以下になること、4時間以上の使用日数が70%以上になるように、アドヒアランス改善を目指します。リークが多いようであれば、マスクフィッティングの再確認が必要です。 CPAP装置は毎日のメンテナンスが必須 CPAP装置使用後は、チューブ差込口や空気取り入れ口にほこりが詰まっていないか毎日確認が必要です。清潔を維持するため、マスク本体はパーツごとに分解し、中性洗剤を用いてぬるま湯で毎日洗います。チューブは使用後吊り下げて保管し、週に1回はぬるま湯と中性洗剤で洗います。加湿器のチャンバーも、毎日使用後にぬるま湯と中性洗剤で洗います。これらの洗浄処置を怠ると、細菌・真菌などが繁殖し感染症の原因となります。なお、実際のメンテナンスは、使用している装置の取扱説明書や添付文書に従い行うようにしてください。 また、マスクやチューブに傷がないか毎日確認する必要があります。問題があればメーカーに問い合わせし交換してもらいます。 執筆:細野 裕貴地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸器内科 診療主任 監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長 編集:株式会社照林社 【参考文献】1)Matsumoto T,Murase K,Tabara Y,et al. 「Impact of sleep characteristics and obesity on diabetes and hypertension across genders and menopausal status: the Nagahama study」. Sleep 2018;41(7):1-10.2)松本健. 「本邦の睡眠呼吸障害―ながはまコホートの結果から」. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2021;30(1):33-38.3)厚生労働省:「医科診療報酬点数表に関する事項」. 20244)帝人ファーマ「操作動画「AirFit N20 マスク」」.https://medical.teijin-pharma.co.jp/product/zaitaku/airfit-n20/movie.html2024/03/29閲覧5)西島宜生.「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)におけるCPAP以外の治療」. 日本内科学会雑誌 2020;109:1082-1088.

ニャースペースのつぶやき 夏
ニャースペースのつぶやき 夏
特集
2024年10月8日
2024年10月8日

家ならペットとも一緒だね!ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

ずっと一緒にいられるね 在宅だからこそ、大切なペットと一緒に暮らすことができるんだにゃ 入院生活ではどうしても制限が多くなりますが、愛するペットとも会えなくなってしまうつらさもあります。訪問看護師さんからは、「ペットが何よりも大切な存在で、そのために在宅療養を希望された利用者さんもいらっしゃいます。ベッドの傍らにワンちゃんやネコちゃんがいて、嬉しそうになでている利用者さんの様子をみると、こちらも嬉しくなります」という声が寄せられました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

【学会レポート】第6回 日本在宅医療連合学会大会「在宅医療を紡ぐ」
【学会レポート】第6回 日本在宅医療連合学会大会「在宅医療を紡ぐ」
特集
2024年9月24日
2024年9月24日

【学会レポート】第6回 日本在宅医療連合学会大会「在宅医療を紡ぐ」

2024年7月20日・21日と2日間にわたり、幕張メッセ国際会議場(千葉県幕張市)にて「第6回 日本在宅医療連合学会大会」が開催されました。テーマは「在宅医療を紡ぐ」。大会長は、国際医療福祉大学医学部医学教育統括センター 市川病院神経難病センターの萩野 美恵子氏です。NsPace(ナースペース)編集部が大会の模様をレポートします。 多数の参加型の企画に込められた思い 「在宅医療を紡ぐ」というテーマが掲げられた本大会では、サブテーマとして以下の7つも掲げられました。 ・「幸」(Well being/生活の質・人生の質(QOL)の向上)・「働」(Collaborative decision making /協働意思決定)・「含」(Inclusion of diverse values/多様な価値観の包含)・「継」(sustainability/持続可能性)・「繋」(interdisciplinary team collaboration/多職種連携)・「楽」(enjoy your life/快) 多様性やジェンダーバランスに工夫されているほか、「聞く」講演だけではなく、ミュージカルや映像を「見て」、ワークショップや認知症カフェなどで「体験して」、参加者がさまざまな視点で楽しく参加しながら学べるプログラムを多数開催。 多職種がディスカッションする場面も多く見られ、在宅医療に携わる人たちが互いに知見を共有し、在宅医療の未来を見つめ交流する場となっていました。 参加型・体験型プログラム 多職種との交流を実現した参加型・体験型プログラムを一部紹介します。 ワークショップ「在宅における看取り時の立ち振る舞いについて考えませんか?」 座長:大屋 清文氏(ピースホームケアクリニック京都) 4~5名でグループを作り、医師、訪問看護師、利用者、家族などの役割を演じながら、看取りの場面における対応や立ち居振る舞いについてシミュレーションする企画。座長の大屋氏は、「看取り時の立ち居振る舞いについて、正解というものはない。答えではなく問いを持ち帰っていただきたい」と話されました。シミュレーション後のディスカッションでは、「この場面に『お疲れ様でした』という言葉はそぐわないのでは」「医師はご遺体にそのようには触れないのでは」といった臨場感のあるやり取りも。また、「普段とは異なる職種や家族役をやることで学びがあった」「医師・看護師ともにワークショップに参加しており、普段臨床の場では聞けない医師の本音も聞けた」といった感想が聞かれました。 虹色のcafé 「未来みらい」 カフェオーナー:川口 美喜子氏(札幌保健医療大学)カフェ共同オーナー:Lintos café(リントスカフェ)、まあいいかlaboきようと(平井 万紀子氏) 学会期間限定でオープンした虹色のcafé 「未来みらい」では、東京栄和会なぎさ和楽苑、社会福祉法人おあしす福祉会オアシス・プラスの方々など、障害のある方や認知症の方がスタッフとして活躍されていました。またこのカフェでは本格的なお菓子が楽しめるだけでなく、川口氏とLintos caféのバリスタ、とろみ剤の企業、歯科医師が約1年かけて共同で考案したとろみがついたおいしいコーヒーを味わうことができました。摂食嚥下障害がある方でも安全に楽しめるこのコーヒーは、飲みやすさとおいしさを両立。食べる歓びを実感できる機会となったこのカフェは、大変な賑わいを見せていました。また、認知症の方や障害を持っている方の「自分の街で当たり前の暮らしがしたい」「社会で活躍したい」という望みの実現のために必要なことについて考える貴重な機会となりました。 みんなで孤立をなくせ!!超高齢社会体験ゲームコミュニティコーピング体験会 一般財団法人コレカラ・サポートによって開発された、人と地域資源とを繋げることで社会的孤立を無くすための協力型ゲーム「コミュニティコーピング」の体験会が行われました。ゲームを通して、人と地域とを繋げる役割は、専門職だけでなく一般の人でも担えることがわかりました。 参加者からは「社会的孤立とはどのような状態なのか理解できた」「話を聞くだけで解決できる課題もあれば、専門家の助言が必要な課題もあり、地域にはさまざまな課題を抱える人が溢れているのだなと実感した」「自分にできることからやっていこうと思った」といった声が聞かれました。 在宅ケア体験フェスタ 神経・筋疾患の利用者さんを想定した呼吸リハビリテーション体験会では、2名1組となり、アンビューバッグや呼吸リハビリ機器を用いた吸気介助を実施する側と、利用者側の両方を体験しました。参加者からは「呼吸療法認定士の資格を持っているが、神経・筋疾患の利用者さんのための吸気介助は行ったことがなかったため勉強になった。今後取り入れたいと思った」「自分のやり方に軌道修正が必要なことに気付いた」といった声が聞かれました。 排尿支援の体験会には、複数のメーカーの導尿キットや超音波機器、膀胱留置カテーテルが用意されていました。それらの物品や機器を実際に手に取り、具体的な使用方法について知ることができました。訪問診療に携わっている看護師さんは「さまざまな物品に触れ、実際に体験や比較をできたことでメーカーごとの特徴について理解でき、今後もし自己導尿が必要になった利用者さんに出会ったら適切なアドバイスができそう」と話されていました。 ミュージカルや映画、映像を「見て」学ぶ シンポジウムについても、映画やミュージカルが取り入れられるなど、多種多様な伝え方のプログラムが並びました。 ミュージカル「きみのいのち ぼくの時間」 座長:中村 明澄氏(向日葵クリニック/NPO法人キャトル・リーフ)   堤 円香氏(メディカルホームKuKuru/NPO法人キャトル・リーフ) ミュージカル「きみのいのち ぼくの時間」が上演されました。NPO法人キャトル・リーフは2001年に創立以降、約20年にわたって病院や特別支援学校、高齢者福祉施設等でミュージカル活動を実施している団体です。「きみのいのち ぼくの時間」は、ミツバチのハチ子と、ハチ子に恋をしたカエルが主人公のお話。ミツバチの命はカエルに比べてとても短いため、二人の恋は女王蜂に反対されてしまいます。なんとか障壁を乗り越えますが、突然の嵐がやってきて…というストーリー。命にまつわるメッセージが多く込められており、会場には涙している人も。終了後はミュージカルの中で印象的だったシーンや言葉についてのディスカッションも行われました。 映像・講演「進行肺がんの息子に伴走した2年半を振り返って」 座長:荻野 美恵子氏(国際医療福祉大学医学部医学教育統括センター国際医療者教育学/国際医療福祉大学医学部脳神経内科学)   田上 恵太氏(医療法人社団 悠翔会 くらしケアクリニック練馬)演者:関本 雅子氏(かえでホームケアクリニック) 関本 雅子氏は緩和ケア医であり、そして同じく緩和ケア医で息子の関本 剛氏をがんで亡くした母でもあります。会場では、剛氏の生前の講演やラストメッセージの動画が映し出されました。雅子氏の講演では、剛氏が残された時間をどのように過ごすことに決めたのか、メディアに出たことによる反応、剛氏の最期について、緩和ケア医と母のそれぞれの立場で後悔したことや学んだこと、救われたことなどが語られました。 訪問看護の魅力も次世代に紡ぐ 副大会長 高砂 裕子氏(一般社団法人南区医師会在宅事業部・南区医師会訪問看護ステーション 管理者)のコメントもご紹介します。 多くの方にご来場いただき、大変嬉しく思っております。本大会は、専門職だけでなく、また医師のみならず看護師や介護士をはじめとする多職種の方にも参加いただけたらという思いで企画しました。単に「ご参加ください」というだけではなく、例えば介護職の方々におすすめのプログラムには、プログラム表に「★」の印を記載するなど、実際に参加していただきやすいような創意工夫も行っています。体験型プログラムを組み込むことで、さまざまな職種の方と出会い、より楽しく過ごしていただける大会になったのではないでしょうか。私自身、30年間訪問看護師として利用者さんに寄り添い、身近なところで生活を意思決定支援する訪問看護は、とてもやりがいがある仕事だと思っています。それをぜひ次世代の人たちに紡ぎたいと思っています。2025年問題、2040年問題を前にした今、訪問看護ステーションの大規模化も推進しています。それぞれの訪問看護ステーションが、そして訪問看護師が、自身が目指す訪問看護を実現してもらえたら幸いです。 * * * 本大会では、在宅医療に携わるさまざまな職種の方々の「出会い」がありました。参加者同士が交流し、思いを伝え合い、いろいろな視点や立場から在宅医療の現状や展望について考える時間となりました。このような関わりこそが「在宅医療を紡ぐ」ことなのだと、気付きがたくさんあった大会でした。次回、来年6月に開催予定の第7回日本在宅医療連合学会大会「在宅医療の未来を語ろう。〜2025年問題に向き合い、2040年に備える〜長崎から全国へ」にも注目していきましょう。 取材・編集:NsPace編集部執筆:佐野 美和

スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア
スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア
特集
2024年9月24日
2024年9月24日

スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア【スピリチュアルケア】

患者さんのスピリチュアルペインを時間存在、関係存在、自律存在の枠組みで理解したら、次はスピリチュアルケアを考えていきます。本記事では、スピリチュアルケアの方法として欠かすことのできない基盤となるケアについて解説します。 >>前回の記事はこちら事例で検討 スピリチュアルペインのアセスメント【スピリチュアルケア】 基盤となるケアと特定の苦痛に対するケア スピリチュアルケアに関する欧米論文の文献レビューを行った結果1),2)より、スピリチュアルケアは「全般的なケア」と「個別のケア」とに分けられると報告されています。 「全般的なケア」は、スピリチュアルペインに対するケアの「基盤となる」ものです。「個別のケア」は、高い頻度でみられ、スピリチュアルペインに関連したケアとして考えられるものです。SpiPas(スピパス)の3次元の項目の概念に基づき、関係性、自律性、時間性のそれぞれの概念での特定の苦痛に対する個別のケアになります。 今回は、まず「全般的なケア」である「基盤となるケア」について説明します。 基盤となるケアには以下のものがあります。 信頼関係を構築する生きる意味・心の穏やかさ・尊厳を強めるケアを行う現実を把握することを援助する情緒的サポートを行う置かれた状況や自己に対する認知の変容を促すソーシャルサポートを強化するくつろげる環境や方法を提供する積極的に症状を緩和するチームをコーディネートする ケアの具体的な方法は表1をご覧ください。 表1 全般的なケア スピリチュアルケアの実践に必要な心構え 信頼関係を構築する 深い苦悩を抱えているように見える患者さんがいるとき、その人に対して単に直接的に「スピリチュアルペインはありませんか」とたずねても、患者さんは何も答えようとはしないでしょう。 まずは、身体症状や精神症状としての苦痛が緩和され、患者さんのニーズに沿って生活しやすいように、日常生活援助を適切に丁寧に行うことが大切です。そうした援助から「自分は関心をもたれている、尊重されている」という意識が患者さんに生まれ、信頼関係が築かれていきます。 スピリチュアルな側面に関心を向ける 入院時の問診から前回ご紹介したSpiPas3)のような体系だったアセスメントをしていきます。同時に、日常のケアの場面で患者さんが語る言葉や行動を通して、患者さんの拠り所となっていることへの理解を深めます。患者さんのスピリチュアリティの状態を注意深くアセスメントしていくことが大切です。 患者さんは、「どのように今の時間を過ごしているのか」、「生活において、今どのようなことを大切にしたいのか/これまで何を大切にしてきたのか」をポイントにしていきます。 ケアのニーズをチームで検討する これまでに述べたようなアセスメントを通して、ケアの対象となっている患者さんに、スピリチュアルペインが存在するのか、存在するならばそれはどのような苦悩なのかを把握します。そして、スピリチュアルペインに対するケアのニーズはどのようなものなのかについて、チームによるケアカンファレンスで検討していきます。 スピリチュアルケアの目標 スピリチュアルペインの重要な点は、患者さんの問いかけが、相手(看護師)に答えを求めて発せられるのではないというところにあります。スピリチュアルペインは、他者が答えを与えることでも、解決することでもなく、その痛みや苦しみの意味をその人自身が見出すことで初めてその人にとって真実なものになるのです。 なぜなら、スピリチュアルペインは、まさに、その人自身の主観的領域の核である「価値観」に向き合う痛みだからです。周りの評価や世間の価値観とは異なり、死を前にしたその人自身の価値観が問われる苦しみであるということを、われわれは十分に心得てケアにあたる必要があります。 患者さんが穏やかな状態、納得のできる状態をケア提供者が一緒に見つけていくことが、スピリチュアルケアの1つの目標です。完全に穏やかな状態にはなれなくても、「苦悩をもちつつも生きていける」、すなわち、本人がその人なりに生きていけると思える状態に到達できればよいと考えられます。 スピリチュアルケアは個別性が高いものですので、心理面の対応(適切なコミュニケーション)がケアとなる場合もあれば、死の恐怖のように宗教的対応が必要となる場合もあります。スピリチュアルケアの到達点は、患者さん一人ひとりにとっての、穏やかな状態、苦悩との折り合い、生きる意味の自分なりの納得が目当てになるといえるでしょう。 次回は、「個別のケア」について解説していきます。>>次回の記事はこちらスピリチュアルペインを和らげる個別のケア【スピリチュアルケア】 執筆:前滝 栄子京都大学医学部附属病院 緩和ケアセンターがん看護専門看護師 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)森田達也,鄭陽,井上聡,他.終末期がん患者の霊的・実存的苦痛に対するケア:系統的レビューに基づく統合化.緩和医療学 3,2001,p.444-456.2)森田達也,赤澤輝和,難波美貴、他.がん患者が望む「スピリチュアルケア」―89名のインタビュー調査.精神医学 52,2010,p.1057⁻1072.3)田村恵子,森田達也,河正子編.看護に活かすスピリチュアルケアの手引き.第2版,青海社,2017,p.30.

理想の看護&目標エピソード【つたえたい訪問看護の話】
理想の看護&目標エピソード【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年9月17日
2024年9月17日

理想の看護&目標エピソード【つたえたい訪問看護の話】

看護師としての目標は勤め先や関わる仕事内容によっても変わってきますが、皆さんはどのような目標を設けていますか?「みんなの訪問看護アワード2023」から、「どういう看護師で在りたいか」「どういう看護を届けたいのか」という目標を定め、それを体現しようとしているエピソードを5つご紹介します。 「60点からのBCPスタート!」 策定まで試行錯誤が必要なBCP(業務継続計画)。定めた目標を段階的に評価して達成していくことの重要性を感じられるエピソードです。  「当事者のようで当事者でない」兵庫県西宮市出身の私は、阪神淡路大震災の時は千葉におり、東日本大震災の時は西宮に戻っていたので、まだ大きな揺れを経験したことがありません。自分ごとにできない弱みから、災害対策マニュアルの作成にも本腰が入らず、台風や停電の時も「大丈夫だろう」と正常性バイアスにまんまとハマってしまう日々でした。そんな私がBCP策定に着手できたのは、この当事者意識の薄さを乗り越えたい自身への挑戦でもありました。訪問看護サミットの視聴も大きなきっかけとなり、BCP策定を通して「出逢うべくして繋がった」多くの方たちの後押しが原動力となりました。BCPはやればやるほどその壮大さに圧倒されます。最初に自機関のBCPができた時には、「計画だもの。満点を目指さなくて良いんだ。60点からのBCPスタート!」と言い聞かせました。コレは、訪問看護の利用者の意思決定支援における、ゼロかヒャクかで決められない人の人生の支え方に通じます。利用者を支えている訪問看護スタッフを支える管理者の仕事として、BCPを自分ごとに昇華していけるよう挑み続けたいと思います。 2023年1月投稿 「訪問看護の力」 利用者さんにとっては入院生活と自宅生活は精神的に大きな違いがあり、訪問看護師として在宅生活の支援に注力したいという目標に共感できるエピソードです。 これまで回復期リハビリテーション病棟や地域包括ケア病棟で勤務し、さまざまな理由で自宅退院を諦める方を見てきました。昨年8月に訪問看護師となり、これまでできないことばかりに注目し自宅に帰れない理由を探していたのではと思いました。病棟勤務の時に入院されていた方に訪問する機会があり、自宅で生き生きと暮らす姿に感動しました。認知症のため離床センサーをつけていた方にお会いした時は、目の輝きに驚きました。病棟では自由が制限され、固い表情だったのだと思います。その方が体調を崩し医師から入院を強くすすめられた時、絶対に入院しないと譲らず、点滴と体調管理のために連日訪問することになりました。入院せずに普段の生活に戻ることができた時、訪問看護の力を強く感じました。この経験を生かし、患者の「家にいたい」と願う気持ちに寄り添える看護師として成長していきたいです。 2023年1月投稿 「取り憑かれている私」 利用者さんの人生や生き様が、訪問看護師としての人生の目標や生き方を決めるきっかけになったエピソードです。 私には、勝手に「魂の言葉」と名づけ、取り憑かれているある利用者さんの言葉がある。私が30代前半で訪問看護ステーションに配属になり、1人立ちという単独訪問ができるようになったころ、神経難病の方のお宅へ訪問していた。その方は社会的地位も高く、知的で穏やかで若輩者の私にも丁寧に接してくれ、私の声がけのリハビリも一生懸命行ってくれた。進行の予防に取り組みながら、病気についても調べ、最新治療の情報を集めたりと積極的に向きあっていた。排泄が上手にできなくなり処置が必要になったころ、その方は「治療は諦めたけど、生きるのは諦めない」という言葉を言った。その方は、程なく入院し胃ろうを造設、気管切開をし、亡くなった。訃報を聞いたその時は、最後まで生きることに真剣に向き合った、「生きることを諦めなかった」結果だと思った。十数年たった今、「生きることを諦めない」とは、自分を知り、生きるということに向き合い、自分の意思で生き方を決めることだということがわかる。私は「魂の言葉が聞きたい」という思いで今も訪問看護に就いている。 2023年1月投稿 「生きた看護が生まれる場所」 看護師としてどういうスタンスで看護を行うか。目標や心がけは接遇や所作に表れます。そのことを明確に体現されているエピソードです。 在宅で療養する患者さん、介護をされている家族が安心して過ごせるように手助けをするのが訪問看護師の役割だと思う。そんな私が訪問時に心がけていることは特別なことをし過ぎないことである。医師からの指示や、複雑で家族ができないような処置をしているときは私の看護は始まっていない。家族に「私にもできそう」と思ってもらえるケアができたときが看護の始まりである。例えば、痰がうまく出せない患者さんには横向きになってもらい背中を擦る。呼吸が楽になるようにストレッチをして体の緊張ほぐす。この時にゆっくりと丁寧な所作で行う。なにをしていたか分からないような複雑な動きはしない。ケアを見ていた家族が「あれをしたら気持ちよさそう、楽になりそう」と思ってもらえたらケアは成功だ。ケアをやってみようと思ってくれる家族が増える。私がいない時間でも私の看護が生き続ける。そんなやさしい手が増えますようにと思い、日々訪問している。 2023年2月投稿 「看護師のゆらぎ」 目標を掲げることは、利用者さんに対してだけではなく、職場内のスタッフにも好影響を及ぼすことがわかるエピソードです。 一次病院から経験8年目にして在宅に飛び込んできた看護師。医師が側にいない、検査がすぐにできない環境で一人で訪問すること、検査ができない中でのアセスメント、すぐに苦痛の緩和ができない。アセスメント能力、コミュニケーション能力も今までよりも必要になると痛感し自信も崩れ看護師である自分に対して「今までの自分がクソだった」と泣きながら話すこともあった。個別面談や毎朝チームでのミーティングも行ったり泣きながら、笑いながら日々奮闘している。最近はチームに向けた勉強会を開催したいと自ら発信し実施した。ほかのスタッフ達も入職して一年は特に「目の前の人と向き合うことは自分自身と向き合う、自分自身を知る一年だった」と話していた。彼女自身のスキルアップと同時に彼女自身が自分と向き合えるようチームでこれからも伴走していきたい。そして在宅未経験な看護師達が地域に飛びこめる環境を整えていきたい。 2023年2月投稿 目標は成長につながる 「なぜ看護師という職業に就いたのか?」ということを振り返るきっかけになりそうなエピソードばかりでした。「仕事=賃金をもらうための対価」としてだけ捉えると、ルーティンワークになりがちですが、仕事はひとつの自己表現ともいわれています。時間をかけてやるからには「自分が成したいこと」を見つけ、目標として目指していきたいものですね。編集: 合同会社ヘルメースイラスト: 藤井 昌子

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応
利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応
特集 会員限定
2024年9月3日
2024年9月3日

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応【セミナーレポート後編】

NsPace(ナースペース)が2024年5月10日・24日に開催したオンラインセミナー、「【訪問看護】利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策(全2回)」。訪問看護師への暴力・ハラスメント対策に取り組む北須磨訪問看護・リハビリセンター所長 藤田愛さんを講師にお招きしました。 セミナーレポートの後編では、暴力・ハラスメントへの具体的な対策、対応方法をご紹介します。 >>前編はこちら利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識【セミナーレポート前編】 【講師】藤田 愛さん医療法人社団 慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター 所長/慢性疾患看護専門看護師/ヘルスケア・マネジメント修士(専門職)取得神戸市立中央市民病院、兵庫県立西宮保健所に勤務した後、1998年から訪問看護師として活動。2004年の北須磨訪問看護・リハビリセンター開設時から現職。訪問看護師が利用者やその家族から受ける暴力・ハラスメントの予防・改善に長年取り組む。2022年より「訪問看護師等の暴力・ハラスメント研修プログラム」の開発研究も行っている。 暴力・ハラスメント対策は法的な責務 令和3年度(2021年度)の介護報酬改定に伴い、ハラスメント対策は事業者の法的な責務として義務づけられました。利用者や家族から行われるものは、現在のところセクシュアルハラスメントのみが対象ですが、カスタマーハラスメントや暴力への対策も努力義務とされています。暴力・ハラスメントへの対策は、事業所が取り組むべき課題です。 暴力・ハラスメントへの具体的な対応 暴力やハラスメントへの具体的な対策としては、以下の5つが挙げられます。 対策1:管理者の意思決定、表明 まずは、管理者が暴力・ハラスメントを容認しない、職員を自らが守るという意思決定をし、それを表明する必要があります。事業所の基本方針として書面で共有するのもよいでしょう。ポイントは、繰り返し表明すること。そうでないと、「認知症の利用者さんだから仕方がない」「この程度なら我慢できる」などと、次第に元の状態に戻ってしまいます。 対策2:マニュアルの作成 厚生労働省をはじめ、さまざまな機関や組織でつくられたマニュアルを参考に、まずは1ページだけ作成しましょう。立派なマニュアルを用意しても活用できない場合が多いので、最初は簡単なものを目指すのがおすすめです。 対策3:重要事項説明書への記載 重要事項説明書に暴力・ハラスメントへの対応について明記し、利用者や家族に説明の上、合意をとることも大切です。 とはいえ、初回訪問時の契約の段階で暴力・ハラスメントについて言及すると、関係構築に影響するのではないかと心配される方も多いでしょう。これについては、重要事項説明書の前置きとして「質の高いサービスを提供するためにも、利用者・家族のみなさんに協力してほしい」といった内容を記載し、「お茶やお菓子、お礼の品物を受け取らない」といった事業所の方針のあとに、暴力・ハラスメント行為について触れるとよいでしょう。 信頼関係の構築に配慮しつつ、「職員への暴力・ハラスメント等により、サービスの中断や契約を解除することがある」と説明し、事業所としてのスタンスを明確に示すことが重要です。 対策4:発生時の報告・対応フローの取り決め 職員に「暴力やハラスメントがあれば報告してほしい」と働きかけても、実際はなかなか声が上がりません。虐待と同じで、「これは暴力(またはハラスメント)なのだろうか」といった「ためらい」が報告を遅らせます。 そこでフローに明記したいのは、「暴力・ハラスメントかもしれない」レベルで報告や相談すべきという点です。また、いきなり上司に相談するのは抵抗があるケースも多いでしょうから、被害者が話しやすい同僚からの報告も可能とするとよいでしょう。管理者の耳に話が入れば、当人からでなくても構いません。 対策5:全職員の意識、対応力の向上 職場全体で暴力・ハラスメント対策について繰り返し話し合い、意識を一致させましょう。また、訪問前にリスクを想定する、暴力やハラスメントの予兆に敏感になる、必要に応じて2人訪問を選択するといった対応力の向上にも努める必要があります。 暴力・ハラスメント被害者への歩み寄り 暴力・ハラスメントの被害者が出てしまった場合、非常に大きな精神的ダメージを受けているため、「被害に遭った人ファースト」を徹底しましょう。何よりも心情理解を優先し、寄り添うことが大切です。 二次被害の防止を 暴力・ハラスメント行為は一次被害。二次被害とは、上司や同僚など周囲の人々の言動で傷つけることを指します。被害に遭った医療従事者の多くは「自身の能力が原因で暴力やハラスメントを予測・抑制できなかった」と捉える傾向があり、周囲のスタッフも被害者に原因を探してしまうケースが少なからずありますので注意しましょう。利用者の疾患の有無や境遇に関わらず、暴力・ハラスメントを受けた被害者は悪くありません。 相談シートを活用して歩み寄りを よかれと思って見守るのみにとどめると、被害者が孤立する可能性があります。厚生労働省のハラスメント報告用「相談シート」を活用して歩み寄ることをおすすめします。このシートには現在の心の状態を数字で表現する項目があり、「今はここだけの話にしてほしい」「少人数であれば共有可」「全体に共有可」といったように、共有可否も確認できます。被害者の多くは、「大丈夫?」と聞かれれば「大丈夫」と答えがちです。このシートを使えば、本人の意向に沿った対応を目指せるでしょう。 なお、暴力・ハラスメントは記録する必要がありますが、多くの人の目に触れるカルテにはなかなか書きにくいはず。カルテとは別で記録を残す工夫をすることをおすすめします。 * * * 本セミナーの第2回で行われたグループディスカッションでは、参加者の暴力・ハラスメントへの価値基準の確認や、リスクを判断・回避するための「KYT(K:危険、Y:予知、T:訓練/トレーニング)」ワークを実施しました。各事業所でも定期的なトレーニングや情報共有の場を設けていただき、一人でも多くの訪問看護師が主体的に暴力・ハラスメント対策に取り組めるよう、体制を整えていただけたらと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇厚生労働省.「介護現場におけるハラスメント対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html2024/8/22閲覧〇厚生労働省. 社会保障審議会「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(2021年1月18日)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000750362.pdf2024/8/22閲覧〇厚生労働省. 株式会社 三菱総合研究所.「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」令和4(2022)年3月改訂https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf2024/8/22閲覧

ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
特集
2024年9月3日
2024年9月3日

道の覚え方…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

利用者さんのお宅が目印! 訪問看護ステーションでは、場所の説明をするときによく「利用者さんのお宅」を目印にするにゃ。新人さんに説明するときも、つい利用者さんのお名前を出してしまうにゃ… 今回の「訪問看護あるある」は、松橋 久恵さん(訪問看護ステーション そら)が提供してくださいました。訪問看護ステーションでは、場所を説明するときに利用者さんのお宅が目印になりますよね。「交差点や建物の名前よりも、訪問宅を目印にしてスタッフとの会話が進みます。新しいスタッフはきっと分かりにくいだろうと思いつつも、交差点の名前を覚えていません…」(松橋さん)。ほかの訪問看護師さんからも、「待ち合わせ場所も『〇〇さんのお宅のそばでね!』といった会話になる」「新人のころは混乱したけれど、訪問が増えるにつれてだんだん頭の中の地図が繋がってくる」といった声が寄せられました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識
利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識
特集 会員限定
2024年8月27日
2024年8月27日

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識【セミナーレポート前編】

NsPace(ナースペース)では、2024年5月10日・24日に、オンラインセミナー「【訪問看護】利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策(全2回)」を開催しました。講師として登壇してくださったのは、北須磨訪問看護・リハビリセンター所長で、利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策に長らく尽力している藤田愛さんです。 本セミナーでは講義とグループディスカッションを行いましたが、今回は講義の内容を前後編に分けて記事化。前編では、暴力・ハラスメントの基礎知識として、その内容や実態、訪問看護の現場ならではのリスクなどをまとめます。 【講師】藤田 愛さん医療法人社団 慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター 所長/慢性疾患看護専門看護師/ヘルスケア・マネジメント修士(専門職)取得神戸市立中央市民病院、兵庫県立西宮保健所に勤務した後、1998年から訪問看護師として活動。2004年の北須磨訪問看護・リハビリセンター開設時から現職。訪問看護師が利用者やその家族から受ける暴力・ハラスメントの予防・改善に長年取り組む。2022年より「訪問看護師等の暴力・ハラスメント研修プログラム」の開発研究も行っている。 暴力・ハラスメントの種類と内容 訪問看護において発生しうる暴力・ハラスメントは、以下の4つが挙げられます。 身体的暴力 殴る、蹴る、ものを投げるといった物理的な攻撃を加える暴力。 精神的暴力 大声で怒鳴る、または怒鳴り続けるなど、苦情・クレームの範囲を超えた言葉や態度で攻撃する暴力。 セクシュアルハラスメント 性的嫌がらせ全般。例えば、訪問時にわざとアダルトビデオを流したり、入浴介助のために看護師が着替えているところを盗撮したりといった例がみられます。 カスタマーハラスメント 看護師の些細なミスをあげつらって執拗に攻撃する、土下座を要求するなどといった、過剰な要求や不当な言いがかり。近年特に増えており、相談や研修の依頼が多く寄せられています。 暴力・ハラスメント行為者は、看護師に対し、「利用者およびその家族の要求にはすべて応えるべき」と考えています。その要求の背景には、訪問看護サービスへの過剰な期待や、社会への不満、孤独感、挫折感の発散といった自己中心的な理由がある場合が多いのです。 暴力・ハラスメントの実態 一般社団法人全国訪問看護事業協会から2019年に発表された「訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究事業 報告書」1)によると、全業務期間の中で何らかの暴力・ハラスメントを受けた経験がある方は、全体の半数近くに上りました。具体的な内訳は、身体的暴力が45.1%、精神的暴力が52.7%、セクシュアルハラスメントが48.4%です。 訪問看護師は「よい看護を提供したい」という思いが強いがゆえに、利用者からの過剰な要求に応じることがあります。そして、利用者やその家族からの暴力・ハラスメントに直面しても「仕方がない」と諦め、受け入れてしまう状況が少なくありません。しかし、利用者や家族を大切にし、よりよい看護を提供することと、暴力やハラスメントを受け入れることは同義ではありません。これらをきちんと区別し、暴力やハラスメントを容認しない姿勢が必要です。 自宅訪問における暴力・ハラスメントのリスク 訪問看護における利用者・家族からの暴力・ハラスメントのリスク要因をみていきましょう。 利用者・家族側のリスク要因 利用者・家族側のリスク要因としては、以下のようなものがあります。 疾患に伴う幻覚やせん妄などの症状がある治療や介護について適切な支援を受けられていない違法行為や暴力行為をした過去がある、攻撃的な言動がみられる、人間関係にトラブルを抱えているといった生活歴や背景がある訪問看護サービスへの過度な期待や誤解がある 利用者の症状や生活背景の把握に努めるとともに、サービスの提供範囲や看護の内容を契約書や看護計画に反映し、正確に理解していただくよう働きかけることが大切です。 事業所側のリスク要因 事業所の管理者・経営者の暴力やハラスメントに対する意識が低いと、トラブルが起きた際に初動が遅れてしまい、同様のトラブルが繰り返されるリスクも高まるでしょう。暴力・ハラスメントの予防や撲滅には管理者・経営者の意識が重要です。 環境のリスク要因 訪問看護は、基本的に密室で1対1、家族がいれば1対多数の状況になるため、暴力やハラスメントが行われた際、判断や証明が難しい環境といえるでしょう。病院や施設のように近くにほかの職員がいないので、応援要請にもすぐには応えてもらえません。また、一般家庭にはさまざまな物品があるため、それらが暴力に使用される可能性も。これも大きなリスクと考えられます。 暴力・ハラスメント対策を行う目的と目標 利用者や家族から訪問看護師への暴力・ハラスメント対策の目的は、訪問看護師の基本的人権を尊重することと、質の高いケアを提供することにあります。訪問看護師の安全が脅かされ、心身に悪影響があれば、質の高いケアの継続的な提供は阻害されます。 ここで忘れてはいけないのが、「被害者の心への影響」です。暴力・ハラスメントが起こると、「適切なアセスメントがされなかったのでは」と被害者である訪問看護師個人の問題にされる傾向があります。これによって被害者が我慢したり、自身の未熟さを責めたりして、心の健康を損なうケースが生じるのです。 そして暴力・ハラスメント対策の目標は、暴力・ハラスメントの発生防止に努めること。また、被害が起きてしまったら最小限にとどめることです。 次回は暴力・ハラスメントへの具体的な対応や被害者への理解・二次被害の防止について解説します。>>後編はこちら利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】1)一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究事業 報告書」平成31(2019)年3月https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/h30-2.pdf2024/8/22閲覧

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2024年8月27日
2024年8月27日

訪問を楽しみに…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

利用者さんのお気持ちが嬉しい ご家族から「訪問を楽しみにしてて…」と伺ったり、ご本人がカレンダーに訪問の日に印をつけてくださったりしているのをみると、嬉しい気持ちになるにゃ 今回の「訪問看護あるある」は、鳥谷 恵莉香さん(なの花訪問看護ステーション千歳台)にご投稿いただきました。「『あと〇日で看護師さんが来てくれる…』と訪問を待ちわびてくださる利用者さんがいらっしゃいます。訪問看護開始以前に感じていたつらさが軽減したというお言葉をいただくこともあり、嬉しくなります」(鳥谷さん)。利用者さんが訪問を喜んでくださることがわかると、モチベーションが上がりますよね。ほかの訪問看護師さんからも、「共通の趣味である登山のお話で盛り上がっていたら、私が来る日に山のマークをかいてくださるようになりました」といった声や、「『あなたの笑い声が大好きだから、来てくれるのが待ち遠しい』というお言葉をいただきました」といった声が聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

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