コミュニケーションに関する記事

受賞作品漫画「最期のキッス」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「最期のキッス」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年6月25日
2024年6月25日

受賞作品漫画「最期のキッス<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、大矢根 尚子さん(社会医療法人 三宝会 南港病院訪問看護ステーション/大阪府)のホープ賞エピソード「最期のキッス」をもとにした漫画をお届けします。>>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 ※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。 最期のキッス<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「最期のキッス<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。エピソード投稿:大矢根 尚子(おおやね なおこ)社会医療法人 三宝会 南港病院訪問看護ステーション(大阪府) [no_toc]

在宅ハイフローセラピー Q&A
在宅ハイフローセラピー Q&A
特集 会員限定
2024年6月25日
2024年6月25日

在宅ハイフローセラピー Q&A/装着のコツ、トラブル対応、アドヒアランス支援

在宅において患者が「高流量鼻カニュラ酸素療法」(high flow nasal cannula oxygen therapy:HFNC)を継続していくためには、不快感やトラブルへの早期対応とアドヒアランスを維持するための支援が必要不可欠です。そこで、今回は、装着時のコツや不快・トラブル時の対応、アドヒアランスを支えるための精神的支援のポイントをご紹介します。 Q1 訪問看護で初めて在宅HFNCの患者さんを担当することに。使用方法や装着のコツや注意点は何ですか? A 基本的な機器操作の流れと適切な鼻カニュラの装着方法を押さえることが大切です 在宅HFNCを快適かつ安全に使用するためには、加温加湿器を事前に温めることや鼻カニュラを締めすぎないように装着することなど、使用上の注意点・コツがあります。すなわち、基本的な機器操作の流れと適切な鼻カニュラの装着方法を押さえることが装着のコツをつかむことにつながります。在宅HFNC装着の流れを表1に示します。 表1 在宅HFNC装着の流れ 図1 加湿チャンバーの取り外しと取り付け時のポイント 例:Fisher&Paykel Healthcare社製 myAIRVO™ 2フィンガーガードを押し下げながら加湿チャンバーの取り外しと取り付けを行う必要がある。また、取り付け時はカチッとはまるまで加湿チャンバーをしっかりと押し込む。 図2 鼻カニュラのサイズと適切なフィッティング 図3 取り外しツールの活用 例:Fisher&Paykel Healthcare社製 myAIRVO™ 2チャンバードームとベースプレートの間の溝に取り外しツールの先端を差し込んでひねると、比較的容易にチャンバーを分解できる。 Q2 患者さんがHFNC施行時に不快感を訴えます。どう対応すればよいですか? A 不快感の原因には加温・加湿によるもの、高流量に伴うもの、鼻カニュラによるものなどさざまあります。不快感は治療の継続に大きく影響するため、原因ごとに適切な対応が必要です 在宅HFNCが通常の在宅酸素療法と異なる点は、「加温・加湿」した「高い流量(風)」を「少し重めの専用鼻カニュラ」で投与する点です。そのため、通常の在宅酸素療法で感じることのない以下のような不快感が出現することがあります。 加温・加湿による熱さ・水滴の不快感高流量に伴う不快や圧迫感鼻カニュラの締め付けによる疼痛や皮膚トラブル鼻カニュラが容易にずれることへのわずらわしさや不安 など このような不快感は継続に大きく影響するため早期に対処する必要があります。それぞれの不快感に対する対応を以下に示します。 加温・加湿による熱さ・結露の不快感への対応 熱さや発汗に対する対応 室温や寝具、衣服の調整をする冷却材でクーリングする(頭、首、顔周囲など)設定温度を下げる(下限34℃)。ただし、温度を下げたい場合は医師へ相談する 結露に対する対応 HFNC機器の回路の作動保証は室温18~28℃。室温の設定が適切かを確認し、逸脱している場合は、室温設定を調整するように説明する。冬季で暖房を切って就寝し、室温が非常に低くなっていたり、夏季で冷房の送気が回路に直接あたっていたりすると回路に結露が発生する可能性がある回路に結露が溜まっていたら加湿チャンバーに結露を戻す(鼻腔へ水滴が入ると不快なため) 高流量に伴う不快や圧迫感への対応 強い風が呼吸を助けてくれること、また強い風による不快は慣れることを伝え、励ましながら、苦手意識を緩和する働きかけを行う不快が強く継続が困難な場合は流量を下げる(高流量に伴う苦痛が強いことを医師へ連絡する)乾燥の不快を訴える場合は鼻用保湿スプレーを使用する 鼻カニュラの締め付けによる疼痛や皮膚トラブルへの対応 ヘッドストラップを締めすぎないように適切なフィッティングを行う(図2) 顔の皮膚の状態を良好に保つ(保湿が重要)・洗顔を行い、皮脂や汚れを落とす・化粧水やクリームなど肌に合ったものを塗り、肌の乾燥を防ぐ皮膚トラブル時は皮膚保護剤を使用する。特に皮膚トラブルの好発部位に注意する(図4)訪問時に、鼻カニュラの締め付けによる疼痛や皮膚トラブルがないかを確認し、上記対策を早期にとる 図4 皮膚トラブルの好発部位 鼻カニュラが容易にずれることへのわずらわしさや不安への対応 適切に鼻カニュラを装着できているかを確認する(図2)チューブクリップが衣服やベッドカバーなどに適切に取り付けられているか、寝る環境、姿勢などに問題がないかを確認し、ずれない対策を患者とともに検討するチューブクリップが硬いために上手く装着できない場合は「洗濯ばさみ」を紐で回路に取り付ける方法が有効である(図5) 図5 チューブクリップが使用できない場合の工夫 洗濯ばさみを紐で回路に取り付ける Q3 HFNCにあまり積極的でない患者さんがいます。どのようにアプローチすればよいですか? A 患者さん自身が治療法を理解・納得した上で治療に参加できるよう、アドヒアランスの支援に取り組んでみましょう アドヒアランスとは「医療者が提案する治療方針等の決定に患者が積極的に参加し、その決定に従って治療を受けること」1)を意味します。つまり、アドヒアランスは医療者の指示にただ従うのではなく、患者さん自身が治療法を理解・納得した上で、積極的に治療に参加することです。また、在宅HFNCを患者さんが継続していくためにはこのアドヒアランスの維持・向上が不可欠です。アドヒアランスを支える支援として、ここでは3つポイントを解説します。 在宅HFNCに対する受け止め方を知り、支援する まず、患者さんが在宅HFNCをどのように受け止めているのか(理解や受け入れ状況、思いなど)を丁寧に尋ね、思いや感情に共感することが大切です。 医療者の説明不足や患者さんの理解不足などがあると、患者さんが在宅HFNCを継続する必要性を見いだせず、アドヒアランスが低下してしまうことがあります。このような場合には、患者さんの自覚症状や病態を踏まえながらどのような効果を期待して導入しているのかを補足説明します。 在宅HFNCは、呼吸困難や去痰困難、頭痛・頭重感などの症状緩和、PaCO2の低下、増悪回数の低下、運動耐用能・QOLの改善などの効果を期待して導入します。これらの効果を患者さんが納得・理解できる表現で説明を行い、在宅HFNCを「自分に必要なもの」と捉えることができるように支援していくことが大切です。 在宅HFNCの効果に対する自覚を高める 在宅HFNCを使用する患者さんにおいて、症状の緩和感とデバイスの使いやすさの両方が、治療アドヒアランスの強力な動機付けである2)といわれています。つまり、患者さんが在宅HFNCをスムーズに使えて、効果を実感していることがアドヒアランスを維持するためには重要であると言い換えることができます。 しかし、在宅HFNCはNPPVほどの換気補助効果は期待できず、患者さんが効果を実感していないケースも多くあります。よって、その場合は、看護師が患者さんの気づいていない効果を見つけ出し、それを言語化して伝え、効果が出ていることを実感してもらうように支援します。在宅HFNCの効果を図6に示します。わずかでも効果が認められたら「それが効果である」と強調して伝えていくことで患者のアドヒアランスを高めていきましょう。 図6 在宅HFNCの効果 ● 呼吸困難の軽減(「以前より息が楽になった」、「パニックになることが減った」)● 努力呼吸の軽減(頸部の呼吸補助筋の緊張が軽減)● SpO2の改善● 呼吸数の減少● 脈拍数の減少● 去痰困難の改善(「痰が柔らかくなった」)● 起床時の頭痛や頭重感の軽減● 増悪回数の減少● 睡眠の改善(「以前よりも眠れるようになった」)● 元気の回復(「以前より元気になった」「力が少し余っている」)● 日常生活の活動性の向上(「外出が増えた」、「食事量が増えた」、「会話が増えた」、「できなくなっていたことができるようになった」) など 直面している障害を共有し、ともに対策を立てる 日常生活の中で困っていることや不安なことはないか、どのような障害に直面しているのかなどを丁寧に尋ねることが大切です。そのかかわりの中で、患者さんが必要としている知識を提供しつつ、よい方法を患者さん自らが選択し、実施していけるように支援します。 Q4 在宅ならではのHFNC管理の注意点は何ですか? A HFNCは室内の温度や湿度の影響を受けやすい機器です。室内環境を整え、未然にトラブルを防ぎましょう 在宅HFNCで使用する機器は、室内の空気を取り込み加温・加湿するため、室内の温度や湿度の影響を受けやすくなっています。退院後、室内環境の影響で起こり得るトラブルとしては、冬季の室温が低下した際の結露トラブルや水切れのトラブルなどが挙げられます。それ以外にも、鼻カニュラのずれや皮膚トラブル・痛み、回路・鼻カニュラの破損やカビなどがあります。 このようなトラブルを避けるためには、機器を使用する自宅環境、加湿水の減り具合、アラーム内容、起こっているトラブルなどを詳細に確認し、安全・安楽に使用が継続できるように患者さんと調整することが大切です。図7に在宅における確認項目を示します。 図7 在宅における確認項目   執筆:鬼塚 真紀子地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 主任慢性呼吸器疾患看護認定看護師監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長編集:株式会社照林社 【引用文献】1)World Health Organization(WHO).Adherence to Long-Term Therapies: Evidence for Action. Ann Saudi Med 2004;24(3):221-222.2)Storgaard LH,Weinreich UM,Birgitte Schantz Laursen BS.COPD Patients’Experience of Long-Term Domestic Oxygen-Enriched Nasal HighFlow Treatment:A Qualitative Study.COPD 2020;17(2):177. 【参考文献】〇鬼塚真紀子.「在宅ハイフローセラピー導入時のケア」.みんなの呼吸器 Respica 2023;21(6):115-120.〇今戸美奈子,北 英夫,鳳山絢乃,他.「ハイフローセラピーの装着感及びスキントラブルの実態」.日呼吸ケアリハ会誌 2018;27(2):163- 167.〇今戸美奈子.「在宅ハイフローセラピーの患者支援・退院支援・観光整備のサポートと継続看護」.みんなの呼吸器 Respica 2023;21(6):121-128.〇門脇徹.「在宅ハイフローセラピーセッティングのポイント」.みんなの呼吸器Respica 2023;21(6):106-111.〇富井啓介,門脇 徹,北島尚昌,他.「在宅ハイフローセラピーの現状」.日呼吸ケアリハ会誌 2019;28(2):291-297.

緩和ケア スピリチュアルペイン1
緩和ケア スピリチュアルペイン1
特集
2024年6月18日
2024年6月18日

終末期にある患者さんのスピリチュアルペインを知る【スピリチュアルケア】

訪問看護の現場において、終末期にある患者さんから、「身体はちっともよくならない。こんな状態なら生きていても意味がない」「皆に迷惑かけるばかりでつらい。もう早く終わりにしたい」などの発言を聴くことは、決してまれなことではありません。患者さんがこのような言葉を発するとき、私たち看護師は、患者さんがそのような思いを打ち明けている大切なときであると捉え、患者さんの背景にある真の苦しみをしっかりと感じとり、その思いをあるがままに受けとめていく必要があります。患者さんが感じているスピリチュアルペインを認識し、看護師自身も自己に向き合いながら、最期まで患者さんと「ともにいる」ことの重要性について理解を深めていきましょう。 スピリチュアル/スピリチュアリティとは スピリチュアルペインについて説明する前に、まずは「スピリチュアル」や「スピリチュアリティ」とは何なのかを押さえておきましょう。 スピリチュアルやスピリチュアリティは明確に定められた概念ではなく、その意味する内容は多義に渡っています。 欧米のスピリチュアリティの定義は、人生の意味と目的、赦し、愛情と関係、希望、創造性、宗教的な信条など多様な要素が含まれます。河 正子氏1)は、スピリチュアリティについて「個人の生きる根源的エネルギーとなるものであり、存在の意味に関わる。スピリチュアリティは個人の身体的、心理的、社会的領域の基盤として各側面に影響を及ぼす」とし、個人の中のスピリチュアルな領域を、身体的領域、心理的領域、社会的領域、すべての領域の「核」として、その関係を示しています。 以下に、WHO2)の「スピリチュアル」の考え方を表記します。 ● スピリチュアルとは、人間として生きることに関連した経験的一側面であり、身体感覚的な現象を超越して得た体験を表す言葉である● 多くの人々にとって、「生きていること」が持つスピリチュアルな側面には宗教的な因子が含まれているが、スピリチュアルは「宗教的」と同じ意味ではない● スピリチュアルな因子は身体的、心理的、社会的因子を包含した人間の「生」の全体像を構成する一因子とみることができ、生きている意味や目的についての関心や懸念と関わっている場合が多い● 特に人生の終末に近づいた人にとっては、自らを許すこと、他の人々との和解、価値の確認などと関連していることが多い スピリチュアリティは、人の存在の土台や生きるよりどころに関わるものであるため、死が差し迫ったときや死を意識するとき、苦悩が生まれます。終末期にある患者さんは、身体症状の悪化や、身体機能の低下、日常生活の制約の増大、他者への依存の増大などを体験します。その結果として、自己の価値観の再吟味を迫られたり、生のあり方を深めることを求められたりするなど、精神的・心理的苦痛とは異なる次元における苦悩が生じます。このように、「どう生きるか」についての苦悩をスピリチュアルペインと呼んでいます。 スピリチュアルペイン トータルペイン(全人的苦痛)の概念を提唱したシシリー・ソンダース(Cicely Saunders)氏3)は、「人は身近に死を感じるようになると、最も大切なことをはじめなくてはという思いになるし、真実なもの、価値のあるものを求めるようになる。また、不可能なこと、無価値なことを見分ける感覚が出てくる。不条理な人生に深い怒りをもち、過ぎ去った多くのことに後悔し、深刻な虚無感にとらわれる。ここにスピリチュアルペインの本質がある」と述べ、スピリチュアルペインとそのケアの必要性について言及しています。 看護師は、常に、患者さんが全人的な存在であることを踏まえケアしていく必要があります。すなわち、身体的、精神的、社会的な側面と同様に、スピリチュアルな側面での安寧(spiritual well-being)が保たれているかに注目しケアにあたることが大切です。 村田 久行氏4)は、スピリチュアルペインとそのケアを論じる場合、その背後に存在し、患者さんの苦しみに大きな影響を与えるのが、「死」という主題であると述べています。そして、哲学の一領域である現象学を基盤としたスピリチュアルペインの考え方として、スピリチュアルペインを「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」と定義します。さらに、この苦しみを、人間の存在の三つの側面から捉えて、「時間存在」「関係存在」「自律存在」として分類しています(表1)。 表1 哲学的な視点によるスピリチュアルペイン スピリチュアルペインのアセスメント・ツール スピリチュアリティのアセスメント・ツールとして、FICA*1やDT Question Protocol*2などがありますが、日本でスピリチュアルペインの評価法として開発されたものが、Spiritual Pain Assessment Sheet(以下、SpiPas:スピパス)です(図1)。この研究では、終末期がん患者さんのスピリチュアルペインを、村田氏の「自己の存在と意味の消滅から生じる苦痛」と定義し、スピリチュアルペインは死の接近によって人間の存在構造の本質的な要素を喪失する(他者との関係性の喪失、自律性の喪失、将来の喪失)ことで引き起こされる、という概念枠組みを適用しています。 *1 FICA(Faith,Importance/Influence,Community,Address)Spiritual History Tool:アメリカの精神科医プチャルスキ(Puchalski)ら(2000)によって開発されたアセスメント・ツール。がん患者さんに対して、標準的な病歴にスピリチュアリティに関する自由回答式の質問を統合する方法として紹介された。FICAはFaith:信仰または信念・意味、Importance/Influence:重要性と影響、Community:グループと仲間、Address:取り組みの4つの次元においてスピリチュアリティを探究するための11個の質問で構成される。 *2 DT(Dignity Therapy)Question Protocol:カナダの精神科医チョチノフ(Chochinov)ら(2005)によって作成された心理療法的アプローチに基づく質問票。患者さんが捉える尊厳を調査し、その結果明らかとなった7つの尊厳のテーマから9つの項目を含む質問で構成される。これらの質問をもとに、終末期にある患者さんがこれまでの人生を振り返り、自分にとって大切なことを明らかにしたり、周囲に伝え残しておきたいメッセージを文書として残したりすることができるようになる。 SpiPasは、患者さんのスピリチュアルの状態についてアセスメント(スクリーニング)を行い、特定の次元(関係性・自律性・時間性)において現れるスピリチュアルペインをアセスメントし、個々の患者さんが抱えるスピリチュアルペインへのケアを導き出します。 図1 SpiPas 文献5)より許諾を得て転載 次回から、SpiPasを使用したアセスメントについて事例を用いて解説していきます。 >>次回の記事はこちら事例で検討 スピリチュアルペインのアセスメント【スピリチュアルケア】 執筆:前滝 栄子京都大学医学部附属病院 緩和ケアセンターがん看護専門看護師 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)河正子.わが国緩和ケア病棟入院中の終末期がん患者のスピリチュアルペイン.死生学研究.2005,5,p.48-82.2)世界保健機関編,武田文和訳.『がんの痛みからの解放とパリアティブ・ケア―がん患者の生命へのよき支援のために』金原出版,1993,p.48-49.3)Saunders C:Hospice Future,Morgan J (Eds),Personal Care in an Impersonal world:A multidimensional look at bereavement,New York,Baywood,1993,p.247-251.4)村田久行.末期がん患者のスピリチュアルペインとそのケア:アセスメントとケアのための概念的枠組みの構築.緩和医療学.2003,5,p.157-165.5)田村恵子,森田達也,河正子編.『看護に活かすスピリチュアルケアの手引き』第2版,青海社,2017,p.145-146.

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2024年6月11日
2024年6月11日

漫画「あのときの…?」 ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

長く訪問看護をしていると… 長く同じ地域で訪問看護師をしているからこそ、得られる繋がりもあるにゃ。 今回の主人公は、ウチのステーションの管理者 タマ子さんだにゃ! ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

「ハイフローセラピー」のしくみや効果 在宅医療での設定や管理のコツ
「ハイフローセラピー」のしくみや効果 在宅医療での設定や管理のコツ
特集 会員限定
2024年6月11日
2024年6月11日

「ハイフローセラピー」のしくみや効果 在宅医療での設定や管理のコツ

2022年4月の診療報酬改定で「在宅ハイフローセラピー指導管理料」が新設され、これまで病院内のみで行われていた「高流量鼻カニュラ酸素療法」(high flow nasal cannula oxygen therapy:HFNC)が在宅で行えるようになりました。現在利用者が増えつつありますが、どのようなものか今ひとつ分からないとの声をよく耳にします。そこで、今回は在宅ハイフローセラピーとはどういったものなのか?を解説します。 「ハイフローセラピー」は診療報酬上の名称 最初にこの治療法の名称を確認しておきましょう。「ハイフローセラピー」(high flow therapy:HFT)は診療報酬算定要件の名称です。また、一般的に器具の名称として「高流量鼻カニュラ」(high flow nasal cannula:HFNC)、治療法として「高流量鼻カニュラ酸素療法」(High flow nasal cannula oxygen therapy:HFNC)という名称を用います。ここでは高流量鼻カニュラ酸素療法、HFNCを使用します。ちなみに、医療現場で普及している呼称「ネーザルハイフロー」はFisher & Paykel Healthcare社の製品名称です。 加温・加湿した酸素を高流量で投与 HFNCは、専用の鼻カニュラを介して、加温・加湿した高流量の空気と酸素の混合ガスを投与する治療法の1つです(図1)。 図1 HFNCのしくみ 通常の鼻カニュラは、鼻腔の刺激や乾燥につながるため、6L/分の酸素投与が限界でした。HFNCは乾燥した酸素ガスを性能のよい加温加湿器で加温・加湿することでこの問題を解決し、高流量(30~60L/分)のガスを経鼻から投与することを可能にしました。 低流量システムと高流量システムの違い 健常成人の一回換気量は約500mLで、吸気時間は約1秒なので、吸気流速は500mL/秒となります。これを1分間あたりに換算すると500mL×60秒=30,000mL/分、つまり30L/分となります。この「30L/分」は境界量として重要な数字であり、酸素ガスの供給量が30L/分以下のものを低流量システム、30L/分以上のものを高流量システムと呼びます(図2)。 低流量システムの鼻カニュラや酸素マスクは、患者さんの呼吸パターンが変化すると吸入酸素濃度(FiO2)も変化します。すなわち、一回換気量が増加すると室内気の吸い込み量が増えるためにFiO2は低下し、一回換気量が低下すると室内気の吸い込み量が減るためにFiO2は上昇します。 一方、高流量システムに分類されるHFNCは患者さんの吸気流速以上の混合ガス(酸素と空気)を供給します。そうすることで、室内空気を吸い込むことがほとんどなく、設定した酸素濃度を安定して供給することができます。 図2 低流量システムと高流量システムの違い I:inspiration、吸気相  E:expiration、呼気相 HFNCの特徴がもたらすさまざまな効果とは HFNCは「高流量」の「加温・加湿」したガスを「鼻カニュラ」で吹き入れるため、以下のような生理学的特徴からもたらされるさまざまな効果が期待できます(図3)。 1.解剖学的死腔の洗い出し 解剖学的死腔の呼気ガスを洗い出すことで、CO2の再吸入を防ぎ、ガス交換、換気効率を上げ、PaCO2を低下させる1)-3)ことができます。そのため、高二酸化炭素血症の症状である起床時の頭痛や頭重感の改善効果が期待されます。 2.軽度のPEEP効果と肺容量の増加 呼気終末に軽度の気道内陽圧を生じ、肺容量の増加をもたらす4),5)ため、酸素化が改善します。 ※1および2の効果は呼吸仕事量を減少させ、呼吸数の低下や呼吸困難の軽減にもつながります。 3.安定した吸入酸素濃度(FiO2)の供給 高流量を流すことで、患者さんの呼吸パターンによる影響を受けずに、安定したFiO2を供給できます。慢性Ⅱ型呼吸不全では通常の酸素カニュラなどの低流量システムによる酸素投与の場合、呼吸状態の変化による予想外の高いFiO2に起因するCO2ナルコーシスのリスクがあり、ハイフローセラピーは在宅におけるより安全な酸素投与法である6)といえます。 4.線毛機能の維持 最適な加温・加湿により線毛運動を維持するため、分泌物の排出を促進します。また、HFNCでの長期加湿療法は、慢性閉塞性肺疾患(chronic obstructive pulmonary disease:COPD)患者さんおよび気管支拡張症患者さんの増悪日数の短縮と最初の増悪までの期間の延長、肺機能およびQOLの改善が期待できます7)。 5.患者の快適性 最適な加湿により高流量の酸素を鼻腔への刺激を抑えて快適に投与できます。また、鼻カニュラであるために会話や飲食、排痰、口腔ケアなどを容易に行うことができ、QOLも維持できます。 図3 HFNCの特徴と効果 在宅におけるHFNCの実際 COPD患者さんへの効果 在宅HFNCが導入適応となるCOPD患者さんに対する効果としては、QOLの改善、高二酸化炭素血症の改善8)、増悪の減少9)が報告されています。また、患者さんの自覚症状としては、呼吸困難の軽減や起床時の頭痛・頭重感の改善、排痰の促進効果など期待されています。 適応をあらためて確認 現在、在宅HFNCの保険診療上の適応は、在宅酸素療法を実施しているCOPD患者さんで、表1の条件を満たす必要があります。 表1 在宅HFNCの対象患者 対象となる患者は、在宅ハイフローセラピー導入時に以下のいずれも満たす慢性閉塞性肺疾患(COPD)の患者であって、病状が安定し、在宅でのハイフローセラピーを行うことが適当と医師が認めた者とする。ア 呼吸困難、去痰困難、起床時頭痛・頭重感等の自覚症状を有すること。イ 在宅酸素療法を実施している患者であって、次のいずれかを満たすこと。(イ)在宅酸素療法導入時又は導入後に動脈血二酸化炭素分圧45mmHg以上55mmHg未満の高炭酸ガス血症を認めること。(ロ)在宅酸素療法導入時又は導入後に動脈血二酸化炭素分圧55mmHg以上の高炭酸ガス血症を認める患者であって、在宅人工呼吸療法が不適であること。(ハ)在宅酸素療法導入後に夜間の低換気による低酸素血症を認めること(終夜睡眠ポリグラフィー又は経皮的動脈血酸素飽和度測定を実施し、経皮的動脈血酸素飽和度が90%以下となる時間が5分間以上持続する場合又は全体の10%以上である場合に限る。)。 C107-3 在宅ハイフローセラピー指導管理料(「診療報酬の算定方法の一部を改正する告示」(令和6年厚生労働省告示第 57 号)より引用) 在宅HFNCに使う器具 在宅HFNCに用いる器具は、主に、加温加湿機能を搭載したフロージェネレーター(装置本体、加湿チャンバー)、回路、専用鼻カニュラで構成されています。使用時には必ず加湿チャンバーに入れる「水」の準備が必要です。酸素吸入と併用する場合には、酸素濃縮器と在宅HFNC装置本体をチューブで接続します(図4)。 使用時には、医師が装置の設定ボタンで流量(フロー)と温度を設定し、以降、患者さんは電源のON/OFFボタンのみを操作します。また、酸素濃縮器から流す酸素流量や装着時間は医師の指示に従い実施してもらいます。COPD患者さんの在宅導入では、主に夜間睡眠時の使用が広まりつつあります。 図4 在宅HFNCの主な構成 HFNC装置としてFisher&Paykel Healthcare株式会社製 myAIRVO™ 2を例に在宅での設置方法を提示 加湿について ●設定温度は基本37℃にHFNCは、加温加湿器を通して吸気ガスを加温・加湿して供給することで、線毛運動を最適化させ、排痰を促します。低い温度では、加温・加湿の効果が出ないばかりでなく、鼻腔粘膜の刺激や不快感の原因にもなり得るため、設定温度は基本37℃とします。しかし、暑さによる不快や夜間の発汗が著明な場合には34℃に下げることが許容されます。●装置の管理において注意すべきこと電源スイッチを入れた直後に鼻カニュラを装着しない電源を入れた直後は、まだ加温加湿器が温まっておらず、冷風が送気され、鼻腔粘膜の刺激や不快感につながります。使用前には、必ず電源を入れて暖機運転を行い、装置から供給される混合ガスが十分に加温・加湿された状態となってから(準備完了の表示が出てから)使用します。 加温加湿器の水が空にならないように注意する在宅HFNCは短時間で加温加湿器の水がなくなるために頻回の水の交換・補充が必要です。そのため、水切れに十分注意し、水の補充までの時間をある程度予測して流量・温度を設定し、使用する必要があります。病院では起床時まで水切れなく過ごせていても、在宅療養移行後の睡眠時間や室内の温度・湿度の影響を受けて水切れが起こることも考えられます。そのため、在宅療養移行後は水切れなく使用できているかを確認することが大切です。もし、起床時に加湿水がなくなってしまう状況が起こったら、在宅ハイフローセラピーの処方箋を出している病院へ連絡が必要です。 加温加湿器や回路にカビが生えないように適切に管理する加温加湿器や回路は高温多湿になりカビが生えやすい環境となります。そのため、使用後の回路と鼻カニュラ、加湿チャンバーの乾燥や週1回の手入れ(機器のふき取りや洗浄可能部品の洗浄)、定期的な交換が患者さんもしくは家族が行えているかを確認することが大切です。   執筆:鬼塚 真紀子地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 主任慢性呼吸器疾患看護認定看護師監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長編集:株式会社照林社 【引用文献】1)Bräunlich J,Beyer D, Mai D,et al.:Effects of nasal high flow on ventilation in volunteers, COPD and idiopathic pulmonary fibrosis patients.Respiration 2013;85(4):319-325.2)Fraser JF,Spooner AJ,Dunsteret KR,et al.:Nasal high flow oxygen therapy in patients with COPD reduces respiratory rate and tissue carbon dioxide while increasing tidal and end-expiratory lung volumes:a randomised crossover trial.Thorax 2016;71(8):759-761.3)Möller W,Fenget S,Domanski U,et al.Nasal high flow reduces dead space.J Appl Physiol 2017;122(1):191-197.4)Parke RL,McGuinness SP.Pressures delivered by nasal high flow oxygen during all phases of the respiratory cycle.RespirCare 2013;58(10):1621-1624.5)Mauri T,Turrini C,Eronia N,et al.:Physiologic effects of high-flow nasal cannula in acute hypoxemic respiratory failure.Am J Respir Crit Care Med 2017;195(9):1207-1215.6)富井啓介,門脇 徹,北島尚昌,ほか.「在宅ハイフローセラピーの現状」.日呼吸ケアリハ会誌 2019;28(2):291-297.7)Rea H,McAuley S, Jayarame L,et al.:The clinical utility of long-term humidification therapy in chronic airway disease.Respir Med 2010;104(4):525-533.8)Nagata K,Kikuchi T,Horie T,et al.:Domiciliary high-flow nasal cannula oxygen therapy for patients with stable hypercapnic chronic obstructive pulmonary disease.A multicenter randomized crossover trial. Ann Am Thorac Soc 2018;15(4):432-439.9)Storgaard LH,Hockey HU,Laursen BS,et al.:Long-term effects of oxygen-enriched high-flow nasal cannula treatment in COPD patients with chronic hypoxemic respiratory failure.Int J Chron Obstruct Pulmon Dis 2018;13:1195-1205. 【参考文献】〇桑平一郎,橋本修.「高流量鼻カニュラ High flow nasal cannula(HFNC)」,日本呼吸ケア・リハビリテーション学会 酸素療法マニュアル作成委員会,日本呼吸器学会 肺生理専門委員会編.『酸素療法マニュアル(改訂版)』,メディカルレビュー社,東京, 2017:60-64.〇山本桂.低流量システムの概要.呼吸器ケア 2016;冬季増刊:55.〇門脇徹.「在宅ハイフローセラピーセッティングのポイント」.みんなの呼吸器respica 2023;21(6):106-111.〇富井啓介監修:「ハイフローセラピー 高流量鼻カニュラHigh flow nasal cannula(HFNC)」帝人ファーマ株式会社,帝人ヘルスケア株式会社,2022:1-2.

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年6月5日
2024年6月5日

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、新田 光里さん(@(あっと)訪問看護ステーション/東京都)の審査員特別賞エピソード「100年ぶりに入浴したU子さん」をもとにした漫画の後編をお届けします。 「100年ぶりに入浴したU子さん」前回までのあらすじ認知症があり、人嫌いなところもある利用者のU子さん。長らくお風呂に入っていない様子で、清拭や更衣もできない状況…。悩んだ新田さんが所長に相談すると、「まずはあなたがU子さんを好きにならなくちゃ」と言われました。新田さんは、もっとU子さんの気持ちを受けとめようと考えて…。 >>前編はこちら受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 100年ぶりに入浴したU子さん<後編> 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)エピソード投稿:新田 光里(にった あかり)@(あっと)訪問看護ステーション(東京都)審査員特別賞をいただき、U子さんと関係者の皆様に心から感謝しております。訪問看護師になって14年経ちますが、受賞によりこれまで携わってきたことが報われたように感じています。利用者さんにじっくりと関われることも訪問看護の醍醐味だと思いますが、中には「これは看護なのだろうか?」と迷うこともあります。「100年ぶりに入浴したU子さん」はそうした訪問看護の「リアルで泥臭い」部分をエピソードに記しました。審査員の方に共感していただけて、とても嬉しく思います。自分の看護に不安を感じることもありますが、利用者さんやご家族にとってひとつでもプラスになれるような心構えで関わるようにしています。残念ながらU子さんは2021年に99歳で亡くなりました。「私のおかげで受賞したのよ!」と天国で笑ってくださっていると思います。U子さんは私に訪問看護の奥深さを教えてくださいました。今後も利用者さんお一人お一人との出会いを大切に、感謝し、学んだことを次に活かしながら訪問看護師を続けていきたいと思います。多くの方に訪問看護の魅力が伝わりますように! >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年6月4日
2024年6月4日

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、新田 光里さん(@(あっと)訪問看護ステーション/東京都)の審査員特別賞エピソード「100年ぶりに入浴したU子さん」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 100年ぶりに入浴したU子さん<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)エピソード投稿:新田 光里(にった あかり)@(あっと)訪問看護ステーション(東京都) [no_toc]

HOT(在宅酸素療法)Q&A/メンテナンス、酸素ボンベ持ち時間、チューブ整理
HOT(在宅酸素療法)Q&A/メンテナンス、酸素ボンベ持ち時間、チューブ整理
特集 会員限定
2024年6月4日
2024年6月4日

HOT(在宅酸素療法)Q&A/メンテナンス、酸素ボンベ持ち時間、チューブ整理

今回はHOTに関するよくある相談やアドバイスを集め、Q&A形式でお答えします。日ごろ感じている疑問や不安を解決します。 Q1 酸素濃縮器のメンテナンスはどのようにすればよいですか? A フィルターの掃除と加湿器の洗浄を行います 酸素濃縮器のメンテナンスとして、主にフィルター掃除と加湿器洗浄があります。 現在はフィルターが内蔵され、手入れが必要のないタイプもありますが、フィルターが外付けの場合は毎日布や掃除機などで埃を取り除くようにします。週1回は中性洗剤で洗浄後水洗いし、乾燥させておきます。 加湿器の洗浄は、水道水を使用している場合は毎日、蒸留水を使用している場合は週1回の洗浄が必要です。 半年に1回程度、酸素業者による機器内部の点検がありますが、内部異常のアラームが鳴った場合はすぐに業者に点検を依頼してください。 Q2 酸素ボンベの持ち時間はどのように把握すればよいですか? A ボンベサイズ、吸入量、呼吸同調装置の有無を確認の上、使用可能時間の早見表を参考に持ち時間を把握します 酸素ボンベの持ち時間に影響するのは、ボンベの内容量(L)、内圧(MPa)、呼吸同調装置の種類や使用の有無、患者さんの呼吸回数です1)。 呼吸同調装置を使用している場合と使用していない場合では、使用時間が4倍程度の違いがあるため、必ず同調か連続使用かを確認します。また、患者さんの呼吸回数が多い場合は、酸素機器メーカーが作成している酸素ボンベ使用可能時間の早見表より短くなる可能性があるため、注意します。外出時には必ずボンベサイズ、吸入量、呼吸同調装置の有無を確認の上、各メーカーが作成している早見表を参考に持ち時間を把握しておくことが重要です。 Q3 HOT使用中の患者さんに対して注意することは何ですか? A 処方された酸素流量を守れているか適宜確認することはもちろん、訪問時には酸素チューブのねじれや破損の有無、鼻カニュラによる皮膚障害の有無も確認します。また、日頃から停電時の備えについて話し合い、酸素ボンベの使用上の注意点も説明しておきます 処方酸素流量を守れているか自宅での酸素使用に慣れてくると、呼吸困難の状態やわずらわしさなどによって患者さんが処方酸素流量を守れないことがあります。Ⅱ型呼吸不全の場合、安静時に長時間高流量を吸入し続けると高二酸化炭素血症になる可能性があります。患者さんが処方された酸素流量が守れているか、適宜確認します。酸素チューブに問題はないか酸素チューブは、コネクタとチューブを接続し、最大20mまで延長します。そのため、自宅訪問時には、コネクタとチューブのつなぎ目が抜けていないか、チューブ自体が折れ曲がっていないか、ねじれていないか、破損がないかの確認を行います。鼻カニュラに問題はないか鼻カニュラは長期間使用すると、チューブが硬くなり、皮膚損傷の原因となります。チューブが汚染したり、硬くなっていたりする場合には交換をしましょう。停電時の対応は決めているか酸素濃縮器は電気を使用するため、停電すると酸素供給が停止します。そのため、停電時にパニックにならないよう、事前に停電時の対応について話し合っておくことが大切です。具体的には、濃縮器の側にボンベを置いておく、慌てずにボンベへ切り替える、高流量の酸素を使用している患者さんの場合は停電時用の大きめのボンベを設置しておいてもらうといったことです。火気・炎天下厳禁であることを把握しているか酸素ボンベは、火気厳禁はもちろんですが、高温炎天下の車内に放置しないようにしましょう。内部の酸素が膨張し、爆発事故につながる恐れがあります。外出を予定している患者さんには、事前に説明しておきます。 Q4 患者さんが快適に日常生活を送れるよう工夫できることは何ですか? A 酸素チューブの取り扱いに注意し、転倒予防や動作のしやすさに配慮した管理ができるとよいでしょう チューブ整理で転倒防止自宅では、生活範囲や動線に合わせてチューブを延長します。常にチューブが足元にあるため、歩くたびに足に絡まり、高齢者に限らず、転倒するリスクが高まります。廊下の壁に引っ掛ける、S字フックを使用する、洗濯かごを利用するなどしてチューブを整理し、転倒を予防することが大切です。図1、図2に、患者さんが実際に行っている工夫を紹介します。また 、酸素濃縮器や液体酸素の親機の設置場所を確認し、動線に合わせ、チューブが必要以上の長さにならないように配慮します。運転時は酸素ボンベを後ろに運転時には、運転席の後ろ側に酸素ボンベを起き、真後ろからチューブを出すようにします。そうすることでボンベの出し入れもスムーズに行え、チューブも引っ張られずに運転できます。障害物を置かない酸素濃縮器のリモコンが赤外線タイプの場合、間に障害物があると使用できないため、注意が必要です。 図1 手すりを利用したチューブが濡れない工夫 図2 洗濯かごを使用したチューブ整理 Q5 HOTを使用しながら旅行するときに、必要な手続きや注意することはありますか? A 移動手段を確認し、公共交通機関を利用する場合は持ち込める酸素ボンベの本数に注意します HOT導入後にも旅行を楽しむ患者さんは多くいます。旅行には、事前の準備が必要です。主治医の許可をとり、酸素吸入量に加え、移動時間や距離、移動手段を確認し、どのサイズのボンベが何本必要かをメーカー作成の換算表を参考に患者さんと相談しておきます。その後、各酸素業者指定の旅行届を事前に酸素業者に提出します。 移動手段が公共交通機関の場合、酸素ボンベを持ち込める本数などが決まっているほか、事前の届け出が必要な場合が多いです。詳細は使用する公共交通機関へ問い合わせし、事前に確認します。ただし、液体酸素は飛行機へ持ち込めませんので、飛行機利用の際には酸素ボンベに変更しなければなりません。 Q6 患者さんが酸素を指示通り使用してくれません。どうしたらよいですか? A HOT導入後も、さまざまな理由から処方通りに使用できない場合があります。だからといってアドヒアランス不良と安易にレッテルを貼らず、患者さんの話をよく聞き、アドヒアランスを阻害している要因をアセスメントした上でかかわることが大切です 信頼関係の構築とパートナーシップの形成 患者さんはHOTを導入することで、多くの場合、これまでの生活の再編を余儀なくされます。また、呼吸困難による活動範囲の制限やそれに伴い社会的役割を果たせなくなることでの自尊心の低下、自己コントロール感の喪失などを体験します。医療者は、HOT導入によってさまざまな病いの体験をする患者さんの心理を理解した上で、アドヒアランス支援を行っていく必要があります。支援をする上で、最も重要なことの1つは信頼関係を築くことです。 患者さんの病気に対する思い、HOT導入への思い、これまで大切にしてきたことなど、ナラティブ・アプローチで患者さんの語りを促します。語りの中から患者さんの価値観や希望を知り、理解していきましょう。その過程で患者さんは価値観を承認されたと感じ、相手を信頼できるようになります。 また、病気によって変化した生活の中でも、患者さんにとって「欠かせない」と思うことを一緒に探してくれる人がいることで、限られた選択肢の中で生活を再構築でき、成長につながります2)。そのため、信頼関係の構築とともにパートナーシップの形成も非常に重要です。 アドヒアランスに影響する要因3) アドヒアランスに影響する要因として、患者さんに関連する要因、治療に関連する要因、社会/環境に関する要因(表1)があるといわれています。各要因の具体例は次に示すとおりです。  患者さんに関する要因患者さんの健康に対する考え方、HOT管理をするにあたっての認知能力、心理的状態、病気やHOTに対する認識など治療に関連する要因HOTを実施する期間や酸素吸入に伴う身体的な不快感、鼻カニュラ装着による外見の変化に伴う周囲の反応、HOTに伴う費用、HOT導入に伴う呼吸困難の軽減の程度など社会/環境に関連する要因医療者との関係性、フォローアップ体制、医療機関へのアクセスの利便性、HOT患者さんを支えるサポート体制が整っているかなど HOTを処方通りに使用できない患者さんに対し、ただ単に使用を促すのではなく、アドヒアランスの低下の要因をアセスメントし、その要因に対してアプローチしていくことが重要です。 表1 アドヒアランスに影響する要因 文献3)を参考に作成 【参考文献】1)塚田さやか.「HOT患者の在宅療養がわかる(導入/外来/訪問)HOTで起こりやすいトラブル」,石原英樹,竹川幸恵編著,『病棟・外来・在宅医療チームのための在宅酸素療法まるごとガイド』,メディカ出版,東京,2021: 104-107.2)高橋綾.「『患者の価値観に寄り添う』と私がモヤモヤする理由」.緩和ケア 2018;28(2):84-89.3)Bourbeau J,Bartlett SJ.Patient adherence in COPD.Thorax 2008;63(9):831-838.   執筆:平田 聡子地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター慢性疾患看護専門看護師 監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長 編集:株式会社照林社

受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年5月29日
2024年5月29日

受賞作品漫画「幸せとは<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、川上 加奈子さん(よつば訪問看護リハビリステーション/神奈川県)の審査員特別賞エピソード「幸せとは」をもとにした漫画の後編をお届けします。 「幸せとは」前回までのあらすじ嚥下機能の低下に伴い、肺炎を繰り返していた利用者のともみさん。長男の圭介さんと次男の裕介さんは、医師から胃ろうの造設と施設の検討を提案されましたが、ともみさんの「うちに帰りたい」という言葉を受けて悩んでいました。長男の圭介さんから電話で相談を受けた川上さんは…。 >>前編はこちら受賞作品漫画「幸せとは<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 幸せとは<後編> 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:川上 加奈子(かわかみ かなこ) よつば訪問看護リハビリステーション(神奈川県)ともみさんの「だってずっと幸せだから」の言葉を聞いた瞬間に、「やられた!胸が突き抜かれた!」と思いながら、「みんなの訪問看護アワード」が頭をよぎり、この感動をエピソードにして、また銀座に行かなければ!と思っていました(笑)。願いが叶って審査員特別賞に選んでいただいたとわかった時には、一番にともみさんと息子さんたちに報告しました。圭介さんは「本当にあのエピソードが受賞したんですか!すごいなぁ。ねえ!あなた(ともみさん)の話が選ばれたんだってさ」とおっしゃり、皆さん喜んでくださいました。最近はケーキもつぶして食べられるようになってきていたため、表彰式の翌日にはケーキを3種類持っていき、「喧嘩しないで食べてね」とご報告に行きました。その後訪問に行った際には、「全部のケーキを少しずつ食べさせてもらったの。チョコレートは苦かった。チーズケーキは久しぶりに食べておいしかったけど、やっぱりショートケーキが好き。でも一番あんこが好き」と素敵な笑顔を見せてくださいました。 >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「幸せとは」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年5月28日
2024年5月28日

受賞作品漫画「幸せとは<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、川上 加奈子さん(よつば訪問看護リハビリステーション/神奈川県)の審査員特別賞エピソード「幸せとは」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 ※エピソードに登場する人物名等は一部仮名です。 幸せとは<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「幸せとは<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:さじろう山形県在住のイラストレーター/グラフィックデザイナー/漫画家。都内デザイン会社を経て現在フリーランスで活動中。『ダ・ヴィンチ』『東京カレンダー』『Men’s NONNO』『SUUMO』など多数の雑誌のほか、釣り具メーカー『DAIWA』『LIFE LABEL』などのWebやYouTube、CMでもイラスト・漫画制作を手掛ける。 エピソード投稿:川上 加奈子(かわかみ かなこ) よつば訪問看護リハビリステーション(神奈川県) [no_toc]

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