初めての訪問看護に関する記事

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2025年1月14日
2025年1月14日

オンコール当番の日って…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

オンコール当番の日、なかなか寝付けなくなることも… 緊急電話の対応をする「オンコール当番」の日。「寝られるときには寝なきゃ」と思っても、なかなか寝られなくなることがあるにゃ オンコール当番の日は、何かと落ち着かないものですよね。実際に対応する頻度が低くても、「いつでも行けるようにしなきゃ」と思うと気が張ってしまうもの。訪問看護師さんからは、「実際に緊急出動するケースよりも、傾聴やアドバイスで終わることのほうが多いですが、やっぱり電話が鳴るとドキっとします」「電話のやりとりのみで終わっても、なかなか寝付けなくなることがあります」といった声も聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム ■「みんなの訪問看護アワード」エピソード募集中!(~2025/1/24)今回で3回目となるNsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」では、2025年1月24日(金)17:00まで「つたえたい訪問看護の話」を募集中です! 訪問看護にかかわる方であれば、誰もが共有したいエピソードがひとつはあると思います。皆さまのエピソードをお待ちしています!

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特集 会員限定
2024年12月24日
2024年12月24日

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A

2024年10月25日(金)に開催したNsPaceオンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」では、重症な足病変の予防やケアについて、倉敷市立市民病院 形成外科医長 小山晃子医師が解説。今回は、セミナー時に寄せられたご質問について、特別に小山先生に回答いただきました。 なお、本記事はQ&Aの抜粋版です。完全版はお役立ちツールにてダウンロード可能ですので、そちらもぜひご利用ください。 【セミナー講師/質問回答】 小山 晃子 氏倉敷市立市民病院 形成外科医長平成16年 高知大学卒 倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修終了平成18年 川崎医科大学付属病院 形成外科・美容外科にて 褥瘡、創傷治癒を学ぶ平成24年より現職入院・外来・在宅で医療を行いながら、医療者、介護者、市民を対象としたセミナーを行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動中です。 ■お役立ちツールも公開! お役立ちツール『「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧』では、より多数のご質問への回答を読むことができます。ぜひご活用ください。>>「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 足の洗浄について <Q1>・セミナーでは、「血流がない場合は足を洗ってはいけない」とおっしゃっていましたが、なぜでしょうか?感染が広がるためでしょうか。湿潤や摩擦、温度が影響するためでしょうか。 ・血行不良の状態で洗うと、どういう機序で悪化するのでしょうか。 「血流がない足=すべて洗ってはいけない」というメッセージを受け取られた方が多いようで、私の説明不足を反省しています。漫然と洗浄してはいけないのは、傷のある血流のない足です。 ミイラ化を目指している場合には、極力組織の水分を減らしたいため、当然洗浄は避けます。血流の乏しい足の傷に壊死した皮膚皮下組織、腱などの血流のない組織が露出しているケースを想定してみましょう。血流がない(免疫細胞が到達しない)組織は、血流がある(免疫細胞が到達できる)生きた組織・人体側と接しています。その二つの境界で、人体側はゆっくりと傷を治そうとしています。この状態で血流がない組織に水を含ませると、その組織は細菌にとってのよい培地(湿気と温度がある環境)になってしまいます。生きた傷の表面に、細菌培地で「湿布」することになるので、水分を避けることが望ましいと考えています。 壊死組織がなく、傷のある血流の乏しい足については、漫然と洗わないでいただきたいです。洗ってそのままにするのではなく、翌日以降 痛みの訴え浸出液傷の周囲の腫れ壊死組織 等の変化がないかを見て、洗浄したことの功罪を慎重に判断してください。 <Q2>・患部を避けた清拭や入浴、シャワー浴は可能ですか? ・血流がなく壊疽して感染している場合の洗わないケア方法を教えていただきたいです。 患部を避けた入浴、シャワー、清拭は可能です。 血流がなく感染しているときは、ケアではなく、キュア(治療)が必要です。抗菌薬全身投与、局所処置(浸出液の除去、消毒)、疼痛管理などの治療を行います。 <Q3>月に1、2回の訪問をしている独居の方で、足病変があった場合、医師に処置の指示を依頼し、洗浄をするために訪問頻度を増やしたほうがいいでしょうか。毎日が難しい場合は、最低限どれくらいの頻度で洗浄が必要ですか? 自分で足が洗えない方だと理解をしました。靴下を履き替えるだけでもいいのではないかと思っています。 足病変があった場合、血の巡りがあるのかないのか、傷の深さがどうか、感染を起こしているかどうか、といったような専門の判断を一度受けて、みんなで「治療の組み立て」をしてからどれぐらいの頻度で看護師さんに助けていただくのが良いか、考えたいです。 「最低限」ということであれば、靴下を毎日履き替えるっていうことを、頑張ってみたらいかがでしょうか。清潔が何よりです。 ミイラ化について <Q4>血流障害の方は洗浄をしてはいけないとのことですが、ターミナル期で治療をしない方は、何もせずミイラ化を見守るだけでよいのでしょうか?軟膏塗布などの処置だけなのか、看護師がやるべき処置があったら教えていただきたいです。 ミイラ化を目指す場合、放置はすすめません。ターミナル期でも、目と手をかけることを続けていただきたいです。まずは、十分な除痛を行うことが最優先です。ミイラ化をしていく過程で生体と壊死部分の境目から浸出液が出る場合は、その境目をポビドンヨード液で清拭します。浸出液が多いときは、オムツパッド等で患部をふんわり巻いて、寝具が汚染したり、においで利用者さんやご家族が不快な思いをしたりしないよう配慮します。におい対策にはストーマ用のスプレーも有効です。 処置は、基本的に「シンプル」にすることも重要です。ターミナル期の利用者さんの大切な時間を浪費しないよう配慮してください。軟膏を使用した場合、次回の処置で落とす必要があります。落とすのに苦労するような種類の軟膏(ワセリン基剤のものは堆積します)は避けるようにしましょう。 足に傷・潰瘍がある場合について <Q5>訪問で、最初に創を見つけたとき、何をしたらよいのでしょうか?もちろん受診をすすめますが、すぐに行けない場合はそれまでどう手当てしたらよいのでしょうか?微温湯での洗浄もいけないのでしょうか。 初回の訪問では、まず微温湯で洗浄して足をよく観察していただくのがよいと思っています。よく見た結果、傷を見つけたら、以下の対応でよいと思います。 血流のない足は1日単位で悪化する可能性があるので直ちに受診をすすめる(少なくとも写真を病院に届けて、相談)血流に問題のない足は通常の創処置をし、1週間ごとの評価をする 保清・軟膏について <Q6>黒色壊死の方は洗ってはだめでしょうか?精製白糖・ポビドンヨードを使う場合が多いですが、微温湯洗浄をして処置をしていました。 血流があり、黒色壊死部をどんどん浸軟させて除去(物理的デブリードマン)したいときには、しっかり洗うこともあります。洗浄と併せて精製白糖・ポビドンヨードを使用し、浸出液の吸収と、抗菌を図ります。いずれにしても、行った処置の結果、傷が治癒傾向なのか悪化傾向なのかをしっかりと「見る」こと、悪化傾向の場合に主治医に伝えることが肝要です。 <Q7>・血流の悪い足を洗わない場合、毎日処置する際は軟膏の除去などはどうしたらよいのでしょうか?当院では基本的にほとんどの傷をしっかり洗浄するように指示があり、血流が悪い足の場合で血行再建前でもしっかり洗浄していました。 ・血流が悪い方の下肢の創処置を行う際に 医師からは洗浄し軟膏処置(ヨウ素軟膏)の指示が出ます。洗浄できない血流の悪い足の場合、軟膏を落とすためにはどのような方法が適切でしょうか? 病院で、「きれいな水がある」「しっかりと水分を拭き取ることができる」「十分な量の滅菌ガーゼがある」「毎日観察ができる」「すぐに医師に相談できる」環境があれば、創が悪化していかない限り、洗浄可能だと思います。一方、在宅においては衛生資材、観察環境、病院へのアクセスに制限のある環境を想定し、リスクヘッジのため無闇に洗わないことをおすすめしています。 また、洗浄の際に落としやすい軟膏を選択することも医師の責務だと考えています。ヨウ素軟膏を使っているということは、浸出液が多く、感染を制御したい傷があるということですね。浸出液が多いということは、血流はさほど悪くないと逆算できます。洗い流してよろしいのではないかと思います。 ウオノメ、タコのケア方法について <Q8>・市販のタコ、ウオノメ用シール(サリチル酸絆創膏)を使う際の注意点はありますか? ・毎日観察できるわけではないため心配な面もありますが、在宅でサリチル酸絆創膏を使用することについての先生のご意見をいただきたいです。 少しでもそのウオノメ・タコ自体を柔らかくして対処しやすくしてあげようという考えであれば、尿素配合クリームやサリチル酸を塗っていただくとよいと思います。ただし、皮膚を少しただれさせるような効果もありますので、周りの薄い皮膚には塗らないように、ウオノメ・タコのところだけピンポイントで塗るようにお願いします。 ウオノメシールを貼るときは、肥厚している角質よりも一回り小さく切って貼って下さい。3日ほど貼りっぱなしにすると浸軟した角質がとれやすくなります。シールを固定するためのテープでまわりの皮膚を損傷しないようにすることも注意しましょう。 ただし、シールは「その場しのぎ」で、前述のとおり外力の除去が根本的治療です。極論ですが、「寝たきり」になったら足の裏のウオノメ、タコは「完治」します。外力を減らせるような履物を使うことを強くおすすめします。 爪切り、爪のケアについて <Q9>・爪白癬、肥厚爪についてケアのしかたを教えてください。・かなり肥厚している爪を小さくするために在宅で簡単に用意できるものはありますか? ・ワルファリンカリウム錠を服薬中のため、ニッパーは避けてヤスリがけをしています。ほかによい方法はありますか? 爪が非常に分厚くなっていて、どこから手をつけたらいいか分からないというような爪の方も本当に多くいらっしゃると思います。在宅で、簡単に肥厚爪に取り組むことはなかなか難しいことかもしれません。 爪切りをする前に、まずは必ず「血流があるかないか」を見てください。血流がある方に対して爪切りをする前提でお話をします。私の場合は、爪切りにはニッパーを使います。十分に明るい環境で、切りやすい方向から、少しずつ爪切りをすることを心がけています。 その時に、爪の甲がどのように変形しているのかのイメージをしっかりと持ちましょう。爪白癬の場合、爪がバームクーヘンのように層になっているので、そのバームクーヘンの層を1枚ずつ剥がすようなイメージで、ニッパーを層と層の間に入れていただくとポロッと剥がれると思います。そのようにして使ってみてください。大まかなところをニッパーで減量して、爪床が近くなってきたなと思ったら、ヤスリで整える…という風に手当てをしていただければと思います。 <Q10>白癬により爪が剥がれた場合の対処方法を教えてください。 あまりに白癬がひどいと、爪の根まで白癬菌が食べてしまい、爪の甲がぽろっと自然と取れてしまうという現象が起こることがあります。この場合、剥がれた後に出血していなければ、そのままで結構です。剥がれた後に爪床や爪母の部分に傷があったら、消毒などをしてください。 実は、白癬の分厚い爪が指先から取れたということは、「白癬菌のお家がいなくなった」ということなので、爪の表面にいる白癬菌の量は確実に減っています。ここをチャンスとして爪の水虫の治療をすると、分厚い爪の甲に塗るよりも塗り薬の効き目が早くしっかりと出ます。傷が治った後に爪白癬、水虫の薬をしっかり塗って、水虫菌をしっかりとやっつけてあげてください。 <Q11>・反っている小さい爪のケアについて教えてください。・寝たきりの児童で、肥厚して足背側にどんどん反沿ってしまうので、とりあえずやすりをかけていますが、それがいいのか悪いのかも分かりません。 例えば、この患者さんの右足の第3趾と左足の2、3趾が反り爪で、4趾も少し反り爪っぽくなっています。このちゃんと踏めない指の爪が反ってくるということを時々経験します。この方も含めて、反り爪は爪の甲がブリッジしたようになっており、爪先が指の近位側、体の中心に近い側にあります。 そのため、そこの部分に注意しながら細い爪切りで切っていただくのが、最も手っ取り早くて、患者さんの指の痛みを除去できる方法じゃないかなと思っています。 なので、この爪の先を、できたら気を付けてニッパーややすりで切っていただくっていうことをやってみてください。爪先側に、指先側に爪先がないので、よく見てどこを切るかをよくよく考えながら対応していただけるとありがたいです。 <Q12>爪の同じところに亀裂が入ります。治す方法はありますか? 爪甲の縦方向の亀裂は(1)爪甲に白癬などの感染を起こしている(2)爪床の変形(3)爪母に腫瘍ができているということが理由として考えられます。 一方、爪甲に横方向の亀裂が生じる場合、その原因が爪甲に限られることはまれで(1)爪床の変形(2)爪母全幅の問題 a:抗癌剤などで爪母の爪甲製造能力が一時的に衰えていた b:爪甲を伸ばしすぎたことで爪甲の自由縁を圧迫され、爪母に圧が加わったことで 製造された爪甲に横皺を形成した等の状況がよくみられる状態です。 また、爪甲先端のひび割れ・剥がれの場合は過度の乾燥が考えられます。それぞれの原因に対処することで爪の亀裂が改善する可能性があります。 医師との連携について <Q13>・医師への報告のしかたについて教えてください。 ・看護師からの報告について困るケース、助かるケースを知りたいです。 私たち形成外科の領域は特に、傷の状態を見れば何が起こっているかが分かるという場合が本当に多いです。そのため、報告のしかたとしては、ぜひ写真に撮って見せていただきたいです。写真を撮る際のポイントとしては、足の全体像と病気があるピンポイントの部分の2種類を撮ることです。その2種類をいただくと、何かお役に立てることが多いです。また、写真からは伝わりませんがぜひ伝えていただきたい情報が、「血流」です。「この人の足は冷たいです。そしてこのような症状が出ています」と写真を添えて相談していただけると本当に助かります。写真を撮った日付もお願いします。 また、セミナーでも申し上げたとおり、体にできた傷は基本的には治ります。治らない傷には、治らない理由があります。その理由を見つけて取り除かない限りは、傷は「治りたくても治ることができない」んです。様子を見る期間は2週間です。皆さんが困って、あるいは主治医の先生が何か対応を始めて、それでも2週間経ってなかなか治らない傷には、理由が必ずあります。その治ることができない理由を、もしかしたら形成外科の医師は見つけることができるかもしれません。なので、2週間やってみて難しいケースは、傷を診る専門の先生にぜひ繋いでいただきたいんです。 NsPace読者の方は全国にいらっしゃるので「困ったら私に見せてください」といういつもの逃げ口上が言えないのですが、皆さんの地域にも形成外科はきっとあると思います。皮膚科の先生の中にも足の傷を診ることに長けた先生はいらっしゃるし、糖尿病専門の先生の中に足の傷まで診てくれる先生も全国に散らばっています。 フットケア・足病医学会のホームページを見ていただけると、どんな先生が頼りになるのかのヒントがありますので、ぜひ一度勇気を持って「困ったときには相談に乗ってもらえませんか?」という風に一度声を掛けていただいて、そして本当に困ったときには写真を持って、血の巡りの有無を添えて、相談していただければと思っています。 * * * 後日、オンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」の講義内容をダイジェストにしたレポート記事も公開いたします。ぜひそちらもご覧ください。 >>シリーズ一覧はこちら「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」セミナーレポート>>お役立ちツールはこちら「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 編集: NsPace編集部 ■「みんなの訪問看護アワード」エピソード募集中!(~2025/1/24)今回で3回目となるNsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」では、2025年1月24日(金)17:00まで「つたえたい訪問看護の話」を募集中です! 訪問看護にかかわる方であれば、誰もが共有したいエピソードがひとつはあると思います。皆さまのエピソードをお待ちしています!

人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】
人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】
特集
2024年12月17日
2024年12月17日

人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること【トークセッションレポート】

2024年11月17日(日)の日本在宅看護学会 第14回学術集会では、NsPaceの運営元である帝人株式会社が共催し、ランチョンセミナー「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」を実施しました。座長に山本 則子氏、演者(ファシリテーション)に長嶺 由衣子氏をお迎えし、「第2回 みんなの訪問看護アワード」の受賞者のお二人とともにトークセッションで盛り上がりました。当日の内容をダイジェストでお届けします。 座長:山本 則子氏 東京白十字病院、虎の門病院に勤務した後、東大大学院医学系研究科修士課程修了。米カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)nurse practitioner programを修了。現在、東京大学大学院医学系研究科 教授。公益社団法人 日本看護協会 副会長。   演者:長嶺 由衣子氏沖縄県 粟国島で離島医療に取り組んだ後、東京や英国で地域医療、公衆衛生、社会疫学を学ぶ。東京科学大学(旧:東京医科歯科大学) 公衆衛生学 非常勤講師。厚生労働省 老健局老人保健課 課長補佐。訪問診療医。新田 光里氏第2回 みんなの訪問看護アワード 審査員特別賞受賞。@(あっと)訪問看護ステーション 訪問看護師。幼い頃体が弱かったことをきっかけに看護師を志す。救急救命士の資格を習得して病院の救急部門で働いた後、在宅看護の重要性を感じて訪問看護の道へ。日高 志州氏第2回 みんなの訪問看護アワード 入賞。ひだかK&F訪問看護ステーション 訪問看護師。病院の救命センターで働き、救急看護認定看護師資格取得。慢性疾患の急性増悪や終末期の患者さんを看護する中で在宅看護の重要性を感じ、訪問看護師へ。 ※プロフィール情報は、2024年11月時点。※本文中敬称略。 訪問看護の魅力・やりがいとは? 山本: 今回は、「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」をメインテーマに、訪問看護の現場で活躍されているお二人のお話を伺います。訪問看護は、利用者さんの生活や価値観に深く触れるケアが求められる分野です。具体的なエピソードも交えながら、その魅力や課題についてざっくばらんにお話ししていきたいと思います。では、長嶺先生お願いします。 長嶺: ありがとうございます。最初のテーマはこちらです。訪問看護師の新田さん、日高さんの考える訪問看護の魅力について教えてください。 新田: はい。訪問看護は毎日新しい経験の連続で飽きることがありませんし、多様な利用者さんと深く関わることができる点が魅力だと感じています。私は元々病院の救急部門で働いていたのですが、訪問看護は「利用者さんに関わりたい」と思ったら、どこまでも深く看護ができる仕事だと思っています。 日高: 私も以前は救急の仕事をしていたのですが、訪問看護は救急の経験を活かしやすい点も魅力だと思っています。ちょっとした変化を早期に察知し、医師に繋いで状態の悪化を防ぐことができると、やりがいを感じます。 また、多様な働き方ができる点も魅力です。副業や起業をしながら訪問看護をされている方もいますよね。 長嶺: ありがとうございます。 たまたまですが、救急経験のある人が集まりましたね。実は、私が沖縄で離島医療をしていた際、日高さんと一緒に働いていたことがあるんです!日高さんがフライトナースをされていて、ドクターヘリで飛んできてくださいました。まさか訪問看護師さんとしてお会いすると思いませんでしたね(笑)。 では、座長の山本先生も、訪問看護の魅力に関するお考えをお聞かせください。 山本: そうですね。審査員として「みんなの訪問看護アワード」のエピソードを読んでいても、改めて訪問看護には「究極の個別性」があると感じます。利用者さんがどんな生き方をしてきて、残された時間をどんな風に過ごしたいと思っているのか。ご本人が必ずしも意識していないようなところまで入り込み、希望される生き方や想いを実現するところまで入っていくのが訪問看護です。「訪問看護師はここまでできるのか」と驚くことがとても多く、そこが魅力だと思います。 長嶺: ありがとうございます。私が行っている訪問診療にも通じるものがありますね。 病院では「点」でしか患者さんと関われないように感じますが、訪問診療では地域の方々やご家族との関わりもあって「面」になり、だんだんと「立体」になっていくようなイメージを持っています。訪問看護・訪問診療ともに、そういった点は魅力ですよね。 エピソード1:「100年ぶりに入浴したU子さん」 長嶺: ここからは新田さん、日高さんが「第2回 みんなの訪問看護アワード」で受賞されたエピソードをもとに、お話を伺っていきたいと思います。まず、こちらが新田さんのエピソードです。事業所の所長さんの言葉をきっかけに心持ちの変化があったと思いますが、その点はいかがでしょうか。 「100年ぶりに入浴したU子さん」(投稿者:新田 光里) ・関連記事受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 新田: はい。それまでは「入浴・内服管理の依頼を達成しなければ」という問題解決思考で考えていたのですが、所長の言葉を機に、「ケアの達成度合いは一旦置いておこう」「まずはU子さんと信頼関係を築こう」と思ったんです。 そこからは、私が訪問看護師だと理解していただくために、仏壇の横に私の写真を飾る、なんてこともしました(笑)。 久しぶりに入浴され、「う~ん、気持ちいい!100年ぶり!」とおっしゃったU子さんの笑顔は、私にとって忘れられない瞬間です。 日高: このエピソード、とても感動しました。利用者さんの心を開くまでのプロセスが本当に丁寧で、新田さんの根気と工夫が伝わってきます。 長嶺: 日高さん、涙ぐんでいますもんね…!これは、医療従事者の成長過程の「あるある」ではないかと思います。医療者自身が「主語」になるのではなく、患者さん・利用者さん等の相手を主語にしたときに、「そうか、ご本人にとっては〇〇のほうがいいんだ」といった気付きがあると思うんです。 U子さんはすでにお亡くなりになっているそうですが、今回のテーマである「人が最期まで豊かに生きるために訪問看護で出来ること」という点については、いかがでしょうか。 新田: はい。実はU子さんはその後ずっとお風呂に入れたわけではなく、私が子どもの発熱で急遽担当が変わった日を境に、また入れなくなってしまい…。認知症の利用者さんをケアする難しさを感じました。 でも、訪問看護師が中心になって、状況にあわせてケアプランの変更を相談し、寝たきりになっても、歯がなくても最期まで好きな桃のゼリーを召し上がるなど、多職種で協力しながらケアを行いました。U子さんの「家で逝きたい」という願いを支えられたのではないかと思っています。 長嶺: ありがとうございます。 利用者さんと深く関われていると、自然と願いに沿ったケアができる、そんなお話を伺えたように思います。山本先生、いかがでしょうか。 山本: はい。エピソードについては、地道に関係性を築いていき、1年経ってからおもむろに発した一言がヒットしたという部分に「技」を感じましたし、とても感動しました。 また、担当が変わって入浴できなくなったとのことでしたが、これは認知症のある利用者さんだったから、ということだけが理由ではなく、おそらくU子さんがお風呂に入るにあたって新田さんが実践した上手なアプローチ方法、ノウハウがあったんだと思うんです。今後、そういったノウハウを言語化して共有できれば、担当が変わってもうまくいくかもしれません。 新田: ありがとうございます! エピソード2:「最期の友人」 長嶺:続いては、日高さんのエピソードです。この利用者さんは最終的に施設に入ることになったそうですが、当時の心境や経緯について教えてください。 「最期の友人」(投稿者:日高 志州) 日高: この利用者さんは、ご家族とは疎遠になっている一人暮らしの方でした。退院後もお酒を飲んだり、スナックに行ったり…という生活を続けていたのですが、次第に体が動かなくなり、楽しみが減っていってしまったんです。訪問看護やヘルパーの支援があっても、一人の時間をすべて埋めることはできず、ご本人が心細く感じるようになって、施設入所を選択されたという経緯です。私は、在宅看取りのみが最善の選択とは限らないと考えているので、この利用者さんにとって一番いい選択は何か、たくさん話し合って検討しました。 長嶺: ともすると、感情移入をして「在宅でずっと看たい」という気持ちになることもあると思いますが、「ご本人にとって何が一番いいのか」を最優先にして、ディスカッションしてこられたんだなということがよくわかりました。 利用者さんが笑顔で施設に行かれた描写が印象的でしたが、「最期までこの方が豊かに生きる」ということに対してのヒントを教えてください。 日高: この利用者さんは、深刻な場面もおちゃらけた様子で切り抜けるような性格の方で、真面目に問いかけても冗談で返されることが多かったんです。なので、こちらも冗談で応じながら親しくなり、徐々に価値観や想いを引き出せるよう努めました。深刻になりすぎず、「その方の世界」に寄り添うアプローチが、結果的によかったのではないかと感じています。 山本: この方は、ご家族とも疎遠ということなので、元々は「一人でよい」と考えていたのですよね。しかし、晩年に日高さんに対して「最期の友人」とおっしゃったことから、心のどこかで友人や仲間を求めていたのではないかと感じました。その想いを最期に実現させた日高さんの存在は非常に大きく、「最期まで豊かに生きる」ことを支えたことが感動的です。 長嶺: 本当ですね。私は医師なので「先生」と付けられると距離を感じることもありますが、看護師さんも一定の距離を取られがちなところを、「友人」と表現されたところはすごいと思います。 利用者さんやご家族の意思を尊重するために大切なこと 長嶺: ここからは、利用者さんやご家族の意思を尊重するために大切なことは何か?について、ディスカッションしたいと思います。新田さんいかがですか? 新田: 難しいテーマですが、「その方がどのように生きてこられたか」「どんな最期を迎えたいのか」を理解することを大切にしています。利用者さんがお話できる場合は極力丁寧に耳を傾け、生活歴やサマリーから背景を想像する…ということを訪問のたびに行っています。 日高: 私も同じです。時間が許すなら、できるだけ「どんな最期を迎えたいですか?」などと直球で質問することはせず、雑談から自然にご本人の価値観を引き出すよう心がけています。 長嶺: 確かに、直球で聞かれて明確な答えが返ってくることは少ないですよね。 私自身が当事者だったとしても、看取るご家族をはじめ「残される人たち」のことを考えると即答できませんし、一人では決められません。 山本: そうですね。多くの人はご自身の最期について明確な希望をもっていませんし、誰しも死ぬのは初めてなので、イメージもできません。だからこそ、看護師が選択肢を伝えることで、利用者さんのやりたいこと、できることが広がりますよね。例えば、「もうお風呂には入れない」「散歩ができない」と考えている方に、「できる」とお伝えできるケースもあります。これも大切なことではないでしょうか。 また、洗髪や足浴等をする際、目線は必ずしも合っていなくても、体をタッチしていますよね。そんなときに、何気なく利用者さんから出る言葉が重要なような気がしているんです。それを聞き出すことができるのは、看護の強みだと思いますね。 長嶺: 確かに、具体的な提案を通じて意思決定を支えることは重要ですね。また、「触れ合いながら引き出す」アプローチは、なかなか医師には難しく、看護師さんならではのアプローチだと感じます。日高さん、いかがですか。 日高: はい。訪問回数が多い分、看護師は怒り、悲しみ、苦しみなどを打ち明けられることが多いと思いますし、山本先生がおっしゃるように、リラクゼーションやタッチングをしながらお話を聞くと、最初はとてもいらだっていた方の感情がスーッとおさまったり、急に昔の話をしてくださったりする経験をしたことがあります。これは本当に看護師だからこそだと思いますし、私もそういうケアを大切にしたいと思っています。 山本: そうですよね。 また、私は「尊厳を保つ」ことがとても大事だと思っており、看護だからこそできることがたくさんあると思っているんです。清潔を保つこと、症状をマネジメントすることは、ケアや医療として大事であると同時に「尊厳を守る」ことでもあるんです。 「尊厳を保てないぐらいだったら、私を生かしてくれるな」というような発言を利用者さんから聞くことがあるくらい、人の尊厳は大事だと言えますし、人生の最終段階で本当に自分でできることがなくなったり、症状が強くなったりしたときに、看護の強みが発揮されると思っています。私たちはそういった仕事ができることを誇りに思ってよいと思うんです。 長嶺: ありがとうございます。 本当に在宅医療の現場は自分が持っているものをすべて総動員しないといけない場ですし、皆さんもそこにやりがいや魅力を感じていると感じました。 さて、早いもので終わりが近づいてまいりました。皆さん、素敵なセッションをありがとうございました。 こういった学術集会では学術的な発表はもちろん大切ですが、全国から同じ現場を共有できる方々が集まる場なので、今回のように感情面を共有することも非常に大切だと感じました。訪問看護の魅力を伝えるためには、皆さんが「なぜ訪問看護をしているのか」、その根底にある想いや教育課程では教わらなかった人と関わる上での工夫を共有できる場も大切だと思います。最後に、皆さんのご感想もお聞かせください。 日高: 山本先生、長嶺先生とディスカッションさせていただける大変貴重な場でした。ありがとうございます。 全国で働く訪問看護師の皆さんは、それぞれ素敵なエピソードを持っていると思うので、ぜひ皆さんのエピソードも伺いたいと思いました。 新田: ありがとうございました。こういった学術集会の場に来ると、訪問看護業界を牽引する方々がビジョンを描き、課題解決のために動いてくださっていることを実感します。また、ディスカッションを通じて、改めて自分にできることを日々一生懸命実践していきたいと思いました。 山本: 私も、改めて訪問看護の持つ力の強さを感じました。訪問看護の魅力が、一般の方々も含めて多くの人に伝わればよいなと思います。 * * * 本ランチョンセミナーは、立ち見が出るほど盛況で、参加者の皆さまは熱心に耳を傾けていました。会場にお越しくださった方々、ありがとうございました。 受賞者の皆さまをご招待する「みんなの訪問看護アワード」の表彰式では、このように訪問看護の未来について意見交換するトークセッションや懇親会の場も提供しています。 皆さまのご応募をお待ちしております!>>みんなの訪問看護アワード特設ページはこちらみんなの訪問看護アワード2025 執筆・編集: NsPace編集部 ■「みんなの訪問看護アワード」エピソード募集中!(~2025/1/24)今回で3回目となるNsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」では、2025年1月24日(金)17:00まで「つたえたい訪問看護の話」を募集中です! 訪問看護にかかわる方であれば、誰もが共有したいエピソードがひとつはあると思います。皆さまのエピソードをお待ちしています!

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2024年11月26日
2024年11月26日

初の電動自転車にドキドキ…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

訪問看護で初めて電動自転車に乗る人も多い 新任訪問看護師さんは「電動自転車が初めて!」ということも多いにゃ。 最初は戸惑うけど、慣れればとっても快適!がんばってにゃ! 訪問看護を始めてから電動自転車デビューをした!という人も多いのでは? 電動自転車は坂が多いエリアでも楽に移動できて便利ですが、慣れないうちは戸惑うもの。思いのほかスピードが出て驚いたり、うっかり充電を忘れてバッテリー残量が少なくてヒヤヒヤしたり…なんてことも。訪問看護師さんからは、「雨の日はスリップに要注意!マンホールの上で特に滑りやすいです。車道と歩道との境目の段差でも転倒した話を聞いたことがあります」といった声が聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

訪問看護漫画「家にいる幸せ」 退院した利用者さんは…【ニャースペース】
訪問看護漫画「家にいる幸せ」 退院した利用者さんは…【ニャースペース】
特集
2024年11月12日
2024年11月12日

訪問看護漫画「家にいる幸せ」 退院した利用者さんは…【ニャースペース】

自宅に戻って「自分らしさ」を取り戻す 「家に帰りたい」と熱望して在宅医療に切り替える利用者さんは多いにゃ。好きな人やものに囲まれて、生き生きとする様子をみるとうれしいにゃ! ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

ニャースペース
ニャースペース
特集
2024年10月29日
2024年10月29日

時計のズレもばっちり把握!ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

時間はそれとなく確認 訪問看護中は時計をつけず、利用者さんのお宅の時計をササっと確認してるにゃ。時計のズレも含めてバッチリ把握してるにゃ! 今回の「訪問看護あるある」を提供してくださったのは、かんわ訪問看護ステーションのC.M.さんです。ケア中は腕時計を外し、利用者さん宅の時計を確認している訪問看護師さんが多いでしょう。「私が時計を気にしていることを利用者さんに悟られないよう気を付けながら、それとなく時計を確認しています。その家のどこに時計があるのかは、重要な申し送り事項です」(C.Mさん)。 ほかの訪問看護師さんからも、「初回訪問時に検温などの数値をタブレットに入力する際、利用者さん宅の時計と実際の時間(タブレットの時計)とのズレを確認しています」「ケアに夢中になり、つい時計を見忘れて焦ることもありますが、だんだん体内時計の精度が上がってきて、ちらっと時計をみたときに想定どおりだと『よし!』という気持ちになります」といった声が聞かれました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】
特集
2024年9月3日
2024年9月3日

道の覚え方…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

利用者さんのお宅が目印! 訪問看護ステーションでは、場所の説明をするときによく「利用者さんのお宅」を目印にするにゃ。新人さんに説明するときも、つい利用者さんのお名前を出してしまうにゃ… 今回の「訪問看護あるある」は、松橋 久恵さん(訪問看護ステーション そら)が提供してくださいました。訪問看護ステーションでは、場所を説明するときに利用者さんのお宅が目印になりますよね。「交差点や建物の名前よりも、訪問宅を目印にしてスタッフとの会話が進みます。新しいスタッフはきっと分かりにくいだろうと思いつつも、交差点の名前を覚えていません…」(松橋さん)。ほかの訪問看護師さんからも、「待ち合わせ場所も『〇〇さんのお宅のそばでね!』といった会話になる」「新人のころは混乱したけれど、訪問が増えるにつれてだんだん頭の中の地図が繋がってくる」といった声が寄せられました。 ニャースペース病棟経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

紫外線&日焼け対策
紫外線&日焼け対策
特集
2024年7月16日
2024年7月16日

日焼けを防ぐオススメの紫外線対策グッズ 日焼け止めのSPF・PAとは?

日焼けは、しみやしわ、たるみなどの美容的な問題だけではなく、皮膚がんのように健康面への影響が懸念されます。そのため、訪問看護師さんが利用者さんの元へ移動する際は、万全に紫外線対策をすることが大切です。 本記事では、日焼けを防ぐ方法をテーマに、移動中に使える紫外線対策グッズやアフターケアの方法などについて解説します。訪問看護において利用者さんのアセスメントに活かすことはもちろん、ご自身の紫外線対策のためにぜひご一読ください。 紫外線対策の方法 紫外線対策の基本は、日焼け止めを塗った上で帽子や衣類、サングラスなどで紫外線が肌に降り注ぐ量を抑えることです。紫外線対策の方法について見ていきましょう。 日焼け止めを塗る 日焼け止めには、リキッドや乳液、クリーム、スプレー、スティックなどさまざまなタイプがあります。紫外線を防ぐ成分には紫外線吸収剤と紫外線散乱剤があり、それぞれの違いは次のとおりです。 種類特徴代表的な成分紫外線吸収剤    ・紫外線を吸収することで肌へ届くことを防ぐ・まれにかぶれる人がいる・メトキシケイヒ酸オクチル・ジメチルPABA・オクチルt-ブチルメトキシジベンゾイルメタンなど紫外線散乱剤・紫外線を吸収、散乱することで肌へ届くことを防ぐ・皮膚に塗ったときに白く見えやすい・酸化亜鉛・酸化チタン また、日焼け止めにはSPF・PAという値が定められています。  <日焼け止めのSPF・PAとは> 日焼け止めのSPF(Sun Protection Factor)は、日焼けを引き起こし、シミやそばかすの原因となるUV-Bを防ぐ指標です。一方、PAは肌の奥深くまで届き細胞やDNAにダメージを与えるUV-Aを防ぐ指標です。 SPFは30や40といった数字、PAは+の数で効果が示されています。以下のように、シーンに合わせてSPFとPAが適切な日焼け止めを選びましょう。 日常生活や短時間の屋外活動(通勤や散歩、軽いレジャーなど)……SPF10~30、PA+~++長時間の屋外活動(ハイキングやマリンスポーツなど)……SPF30~50+、PA+++~++++ また、ガーデニングや洗車、沢遊び、屋外プールや海水浴など水に触れたり浸かったりする場合は、耐水性に優れたものを使いましょう。特に、水に浸かる場合は耐水性がなるべく高いものを選ぶことが大切です。 >>関連記事日焼け(日光皮膚炎)の基礎知識 肌への悪影響や紫外線アレルギーとの違い  <日焼け止めの使い方> 日焼け止めは、正しく使用しなければ効果を得ることができません。 一円玉程度の大きさに手に取り、額・鼻・両頬・顎に分けて置いてから薄く伸ばしていきます。それが終わったら、再度同じように塗りましょう。また、腕や脚は表側と裏側にそれぞれ直線を描くように塗ってから、らせんを描くように伸ばします。 日焼け止めは、どれだけ効果が高いものでも汗によって流れ落ちてしまうため、こまめに塗り直しましょう。また、汗をかいていなかったとしても、2~3時間ごとに塗り直すことが大切です。洗い流す必要はなく、重ね塗りで問題ありません。 帽子をかぶる つばが広い帽子をなるべく選び、紫外線が肌に降り注いで日焼けになるリスクを抑えましょう。UVカット加工が施されたタイプの帽子を使用すると、さらに効果的です。 サングラスをかける 紫外線の影響で角膜に炎症が起こり、強い目の痛みや充血などが起きる場合があります。環境省によると、紫外線防止効果のあるサングラスや眼鏡を適切に使用すると、眼に受ける紫外線量を最大で90%カットできます。移動中にサングラスをかけることに抵抗がある場合は、クリアタイプのサングラスを検討してみましょう。 日傘をさす 日傘は、衣類や帽子と同じく紫外線が肌に到達する量を抑えることができます。昨今は紫外線対策とデザイン性に優れた日傘が多くあります。なるべく全身を守ることができるサイズの日傘を使用しましょう。 日陰を歩く なるべく日陰を選んで歩くことも大切です。ただし、太陽からの直接の紫外線だけでなく、空気中に散乱した紫外線や地面・建物などから反射した紫外線の影響を受けるため、ほかの対策も欠かすことはできません。 衣服で肌を覆う なるべく目が詰まっている衣類で肌を覆うことも紫外線対策として有効です。ただし、通気性が悪い衣類は汗がこもりやすく、熱中症のリスクが高まる恐れがあります。気温や湿度などを踏まえて、快適性と紫外線対策を両立した服装を考えましょう。 また、アームカバーのように脱着可能なものを使用することもおすすめです。UVカット素材を使用したアームカバーを使うとよいでしょう。 日焼けしてしまった場合のアフターケア もし日焼けをしてしまった場合は、次のようにケアして肌のダメージを抑えましょう。 日焼けしたところを冷やす 日焼けした肌を冷やすと炎症や赤みが軽減し、痛みを和らげることができます。冷水をかける、濡れタオルをまく、タオルで包んだ氷や保冷パックを当てるなどしましょう。ただし、冷やしすぎると血行不良になる恐れがあるため、肌の火照りが鎮まったら冷やすのをやめてください。 日焼けしたところを保湿する 日焼けによるダメージを受けた肌は、水分が失われた状態です。乾燥肌や肌トラブルの原因になるため、保湿ケアで肌に水分を補給しましょう。 日焼け後の肌は刺激に敏感なため、香料やアルコールなどが含まれていないシンプルな成分の保湿剤をおすすめします。また、こまめに水分補給をして、身体の内側からも肌に水分を与えることが大切です。 美白化粧品を使用する 紫外線を浴びると、防御反応の一環としてメラニンが過剰に生成されます。過剰なメラニンは新陳代謝で十分に排出できず、肌に沈着することでしみやくすみを引き起こします。肌の火照りや乾燥が落ち着いたら、次のような美白成分が含まれた化粧品でケアしましょう。 成分名働きアルブチンチロシナーゼの働きを阻害し、メラニンの生成を抑えるビタミンC誘導体メラニンの還元を促し、色を薄くするカモミラETメラノサイトの活性化や増殖を抑え、メラニンの生成を抑えるハイドロキノンチロシナーゼの働きを抑え、メラニンの生成を抑えるトラネキサム酸メラノサイトの活性化を抑え、メラニンの生成を抑えるプラセンタエキスメラニンの生成を抑え、シミやそばかすを防ぐコウジ酸チロシナーゼの働きに必要な銅原子を奪い、働きを阻害するリノール酸Sチロシナーゼを分解し、メラニンの生成を抑えるニコチン酸アミドメラニンの移動を防ぎ、過剰なメラニンの肌表面への蓄積を防ぐ4MSKシミのある部位の角化を調整し、メラニンの排出を促進するマグノリグナンチロシナーゼの成熟を妨げ、メラニンの生成を抑えるエナジーシグナルAMPターンオーバーを促進し、メラニンの排出をサポートする * * * 日焼けは、皮膚がんの原因になるだけではなく、しみやしわ、たるみの原因にもなるため、できるだけ紫外線から肌を守ることが大切です。今回、解説した内容を自身の日焼け対策と利用者さんのアセスメントにぜひ役立ててください。 編集・執筆:加藤 良大監修:吉岡 容子医療法人容紘会 高梨医院 院長東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・美容皮膚科を開設。院長として勤務しています。 【参考】〇環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」(2020年3月)https://www.env.go.jp/content/900410650.pdf2024/7/10閲覧〇公益社団法人日本皮膚科学会「UVBとUVAはどう違いますか?」https://www.dermatol.or.jp/qa/qa2/q03.html2024/7/10閲覧

自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護
自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護
インタビュー
2024年5月21日
2024年5月21日

自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護

1年の病棟勤務を経て、「医療法人ハートフリーやすらぎ」の訪問看護ステーションやデイサービスで働く石川さん。デイサービスと訪問看護、両方に携わることができる職場に大きな魅力を感じているとのこと。前回の大藪さんに引き続き、子どもたちとの触れ合いの中で感じていることや、心がけていることなどを伺いました。 >>前回の記事はこちら言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護 石川 紗也佳(いしかわ さやか)さん看護師。1年消化器外科病棟で働いた後、2023年4月に医療法人ハートフリーやすらぎに入職。日々、個別性の高い重症心身障がいを持つ子どもたちとの関わり方を模索。週の半分程度をデイサービスで、もう半分を訪問看護で働いている。医療法人ハートフリーやすらぎ: https://www.heartfree.or.jp/ いつか海外で働くことも見据えて看護師に ─まずは、看護師になった理由や訪問看護の道を志した理由を教えてください。 はい。理由は色々あるのですが、私はもともと海外に住んでいたこともあり、「海外でも通用する職に就きたい」という思いがあります。また、私の母は看護師で、保育園に勤めていたほか、海外でも色々な場面で頼られる姿をみてきました。さまざまな場所で働ける看護師という仕事に憧れて、自然とこの道を志すようになったんです。 いつか海外で医療に携わりたいと考えたとき、場合によっては物資が不足している中で医療行為を行うケースもあると思います。あくまで個人的な考えですが、これは訪問看護に近いものがあるのではないかと。限られたリソースで工夫しながら、患者さんの想いに寄り添いながらケアをする。そういったお仕事をしたくて、訪問看護の道を志しました。 訪問看護利用者さんと石川さん ─ハートフリーやすらぎに入職した経緯も教えてください。 私は大学生のとき、発達障がいについて学んでいたということと、昔から子どもが好きこともあり、放課後等デイサービスでアルバイトをしました。時には「クソババァ」と言われたこともありましたが(笑)、子どもたちは本当にかわいくて、虜になりました。「いつか看護師として放課後等デイサービスで働きたい」という気持ちを持つようになったんです。 石川さん作成資料 最初は病棟で経験を積みたいという思いもあったので、大学卒業後は1年ほど病棟で働きました。その後、放課後等デイサービスと訪問看護、両方の仕事ができる「ハートフリーやすらぎ」の存在を知り、私にとっては夢のような職場だと思って応募したんです。 ─入職当時のハートフリーやすらぎの印象はいかがでしたか? まず、子どもの数に対して、スタッフの数がとても多いことに驚きました。一人ひとりの利用者さんに丁寧に接することができる環境が用意されていたんです。重症心身障がい児の看護は、吸引のしかた一つをとってもその子によってやり方が違うんですが、不慣れな私に「この子はこれ以上やると吐くから気を付けて」など、それぞれの特徴を掴めるように説明してもらいました。「手厚い」とはこういうことなんだ、と納得したのを覚えています。 言葉以外の意思表示を感じ取る ─訪問看護とデイサービスを両方やっているなかで、違いを感じることはありますか? はい、意識するポイントも含めてかなり違うと思います。訪問看護は利用者さんのご自宅で、限られた時間の中でのケアになるので、「訪問中に完結させなければならない」というプレッシャーが常にあります。ただ、利用者さん一人ひとりと丁寧に向き合えるというメリットは大きいです。 デイサービスの場合は、長時間利用者さんと一緒にいることができます。その一方で、訪問看護と比較すると一人ひとりの利用者さんに集中しづらい面もあります。だからこそ、手厚く対応しようという意識を働かせながらケアをしています。 ─病棟から大きく仕事内容が変わる中で、不安になることはありませんでしたか? そうですね。言葉での意思表示がない子どもたちのケアをするということ自体が、「どう関わればいいのだろう」と最初は不安でいっぱいでした。ただ、実際に触れ合うと「意思表示がない」なんてことは絶対にないということがわかるんです。みんな、手足の動き、首の動き、目の動き、表情筋などを使って、感情や思いを表現してくれます。子どもによって表現方法が違うだけで、「この子の場合はこの方法で教えてくれる」ということがわかってきました。それがわかってからは、子どもたちとの関わりがとても楽しくなっていったんです。 利用者さんの病状が急変することに対しても不安でしたが、HOTやバッグバルブマスクの使用方法、緊急時の流れなどについて先輩と話し合いながら確認・シミュレーションをし、いつ何が起きても対応できるよう準備しています。私は現状大きな急変に立ち会ったことがありませんが、てんかん発作や咳き込みなどの対応はしており、少しずつ経験を積んでいます。過剰に構えず、冷静に対応していきたいです。 また、ハートフリーやすらぎでは大橋さん(※)や先輩方がいつも質問に丁寧に答えてくれますし、困ったことがあれば一緒に考えてくれます。利用者さんやご家族との関わり方についても、具体的なアドバイスや「さっきの対応はよかった」といったフィードバックをもらえるんです。正すべきことは当然指摘を受けますが、優しくて愛があふれていて、全然つらい気持ちにならないんです。こちらの発言も否定せず受け止めてくれて、「やってみたら」と応援してくれます。思ったことを気後れせずに伝えられますし、安心して仕事ができています。 ※大橋奈美さん:医療法人ハートフリーやすらぎ常務理事、統括管理責任者 積極的に遊びを仕掛ける ─石川さんが担当されている利用者さんについて教えてください。 はい。こちらのNくんは現在8歳の男の子で、脳性麻痺、てんかん、慢性肺疾患、肺高血圧症があり、医療的ケアとしては胃ろうの処置が必要です。電車や自動車などの乗り物が大好きで、よく笑う姿がとても可愛らしいです。反応してもらえるのが嬉しくって、たくさん遊びを仕掛けています。 ─遊ぶ際に心掛けていることはありますか? 以前、風船で一緒に遊ぼうとしたときにはあまり興味がなさそうにしていました。そのことを作業療法士に相談すると、「この子たちは生まれたときから自分の意思に関係なく、いろいろな医療処置をされてきた。誰かに何かを『させられる』ことに対する抵抗が大きい」と教えてもらったんです。それ以降はNくんにとって「させられる」のではなく、自分から「したい」になるよう、心掛けています。まずは私自身が遊びを全力で楽しむようにして、それを見て興味をもって、「一緒に遊びたいな」と少しずつ遊びに参加してくれたらいいなといつも思っています。 ─どんな遊びをするか、発達段階に応じた目安などはあるのでしょうか。 重症心身障がい児は発達の遅延を伴っているケースも多いので、そのときどきで柔軟に対応し、その子独自の対応方法を探るのがいいのではないかと思っています。Nくんに関わらず、ここにいる子どもたちはすごく個別性が高いため、実践重視のほうが合っているように思います。考えてみれば、私自身も子ども時代に型にはまった遊び方はしていなかったなと思うので、ダメ元でもいろいろなアプローチをしたいと思っているんです。例えばこの前は、訪問看護の利用者さんで肌に筆が触れる感覚が好きな子がいたので、デイサービスの子とも筆で遊んでみました。 新しい遊びのアイデアを提案すると、まわりの皆さんからも「ええやん!やってみたら」って信頼して見守ってもらえるので、本当にやる気が出ます。 ─最後に、今後の目標を教えてください。 いまよりも子どもたちの想いを汲み取れるようになりたいと思っています。言葉はなくとも、足の動き、手の動き、ちょっとした表情の変化から私が気づいてキャッチできる情報はどんどんキャッチして、より深く理解していきたいです。 それから、大橋さんや先輩方のひとことで利用者さんやご家族が安心している様子を見ると、「自分もこういうふうになりたい」と思います。私もいつか言葉一つで大きな安心をもたらす存在になりたいです。 ─ありがとうございました! * * * 次回は「ハートフリーやすらぎ」常務理事の大橋奈美さんに、新卒採用をすることの意義や経営・運営面で気を付けていることなどについて、お話を伺います。>>次回記事はこちら新卒採用の意義&スタッフとのコミュニケーションで心がけていること ※本記事は、2024年2月時点の情報をもとに構成しています。 執筆:倉持 鎮子取材・編集:NsPace編集部

言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護
言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護
インタビュー
2024年5月14日
2024年5月14日

言葉以外からも読み取れる感情 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護

大阪府住吉区の「医療法人ハートフリーやすらぎ」に新卒から入職した大藪 涯さんは、訪問看護、デイサービスで働く看護師です。新卒で訪問看護師になった理由や、重症心身障がいのある利用者さんやご家族と接する中で感じていることなどを伺いました。 大藪 涯(おおやぶ がい)さん  看護師。2022年4月に新卒で医療法人ハートフリーやすらぎに入職。大学の在宅分野の教授の教えに影響を受け、訪問看護師を目指す。現在は週2日ナーシングデイに勤め、その他の日は訪問看護を担当。1年目は診療所にも出向き、バイタルサインや採血などの経験を積む。 医療法人ハートフリーやすらぎ:https://www.heartfree.or.jp/ その人の生き方や生活を大事にしたい ─まずは、大藪さんが看護師を目指した理由や、訪問看護師に興味を持ったきっかけを教えてください。 医療に興味をもったきっかけのひとつは、幼いころに筋ジストロフィーという難病を患った弟さんがいる友人に出会ったことです。その友人は弟さんのことを明るく話していて、それが私には大きな衝撃でした。当時の自分は医療の知識もなく、難病は「とにかく大変なもの」というイメージがあったので、友人の受け止め方にいままでの印象を覆すものがあったというか。「病気との向き合い方」に興味を持ったことがきっかけで、看護師の仕事に興味を持つようになりました。 訪問看護師になろうと思ったのは、在宅分野の教授のお話がきっかけです。例えば、入院中は患者さんの喫煙や飲酒は原則避けることになりますが、訪問看護では利用者さんがしたいことと健康状態を照らし合わせ、どこまでOKなのか看護師の視点からアドバイスできる。一律でその行為を禁止するのではなく、その人に合わせて基準や看護のしかたを変えるのだ、という内容でした。 私は、健康を守ることはもちろんのことですが、その人の生き方や生活を大事にしながら関わりたいという想いがあったので、訪問看護に興味を持つようになったんです。 デイサービスで働く大藪さん ─就職活動をしていたときのことや、ハートフリーやすらぎに入職した経緯などを教えてください。 はい。そもそも訪問看護ステーションの新卒採用枠は少ないですし、大学の同学年の中でも訪問看護ステーションへの就職を目指していたのは私一人という状況でした。でも、さきほどお話しした教授が新卒で訪問看護師になることを応援してくれたんです。教授や学校の先輩にも相談している中で、ハートフリーやすらぎが新卒の採用に積極的だと知り、応募したという経緯です。 就職前に同行訪問をさせてもらったのですが、利用者さんが「訪問看護師さんたちにとてもよくしてもらっていて、自分の最期はこの方々にお任せしたいと思っている」とお話しされていたんです。それだけ信頼を得られる関係を築けていることに驚きました。また、職員同士の仲もよくて、和気あいあいとした雰囲気でした。プライベートなことも気軽に相談できるような関係性を見て、すごく安心したのを覚えています。 少しずつ確実にみえてきた利用者さんの表情 ─利用者さんとの関わりを通じて感じたことを教えてください。 はい、こちらの写真のSちゃんは15歳の女の子で、生後4ヵ月のころ、後天的に低酸素脳症を発症しました。その後、慢性呼吸器不全、てんかん、痙性四肢麻痺を発症し、現在は人工呼吸器を24時間装着しています。吸引や胃ろうからの注入が必要です。 私はまず、Sちゃんのデイサービスのケアから関わらせてもらいました。Sちゃんは比較的必要なケアが多い利用者さんで、吸引、入浴介助、浣腸、胃瘻からの注入、人工呼吸器の管理も行います。最初は個別のケアの方法を覚えるだけでも精一杯で、ほかの看護師が「Sちゃん、今日はご機嫌だね」とか、「しんどそうだね」と言っているのを聞いて、なぜ気持ちがわかるのか不思議だったんです。 ですが、Sちゃんにはきちんと表情がありますし、伝えようとしていることもありました。それを私が読み取れていないだけだったんです。言葉はなくとも、手を握ってくれたり、舌を動かしたり。口元や目元にも変化があります。長く一緒にいることで、私にもSちゃんの気持ちがわかるようになりました。 大切なのは、「どんなことを感じているんだろう」と、関心を持って探ること。そしてそれは、ケアの微妙な加減にも繋がると思います。デイサービスの場合、比較的長い時間お預かりできるので、毎日少しずつ、より確実に理解できることが増えていく感覚がありました。 ─半年ほど経ってから、Sちゃんの訪問看護もご担当されたと伺っています。どのようなことを感じましたか? デイサービスでさまざまな子どもたちと触れ合った経験が、訪問看護にも活かせると感じましたし、デイサービスにはデイサービスの、訪問看護には訪問看護の学びがあると思いました。 訪問看護でご自宅に伺って感じたのは、ご家族がSちゃんを良い意味で特別視していなくて、「日常」の中にSちゃんの存在があるということですね。妹さんや弟さんのお友達が遊びに来ているときも、「おかえり、看護師さんも一緒なんだね」というくらいの受け止め方なんです。Sちゃんも妹さんも弟さんも、それぞれ大切な存在で、障がいの有無で区別されていないというか。 Sちゃんはすごくお洒落に興味があるので、お洋服やアクセサリーをご家族が買ったり、自分で選んだりもするんですよ。アミューズメントパークにみんなで行ったときのこととか、ご家族からお出かけの話を伺うこともあります。先ほどの私の友人の話にも繋がりますが、疾患があっても、本人とご家族にとっての「したい生活」が叶うこと、安心して生活ができることがとても大事なのだと感じます。 ─自宅だからこそ見える部分があるのですね。一方で、重症心身障がいを持つ方へのサポートについて、課題に感じる部分はありますか? はい。医療的ケアが必要以上に「難しいもの」と捉えられてしまっているのではと感じることがあります。医療的ケアが身近でない方は、少し利用者さんの体調が変わっただけで、とても戸惑ってしまうんです。知らずして「関わるのが怖い」となってしまいがちなのは、難しいところだなと感じています。例えば、Sちゃんの場合は妹さんも吸引をはじめとした医療的なケアをしていますし、彼女のことを知っていれば「この変化は一時的なもの」と判断できるケースも多いです。 また、どうしても保護者に負担が偏っている現実があると思います。負担を軽減できる制度がもっとあればいいなと思うのですが、現状はまだまだ足りないのではないかと…。例えば、Sちゃんのご家庭の場合、体調不良でサービスの日程を変えるときなどは、相談員さんや介護タクシーなど、スケジュールの組み直しのための連絡と相談が必要になります。実にさまざまなところで報・連・相が必要とされる。それをお母さまがお一人でこなしているわけです。訪問看護も毎回同じ看護師というわけではないので、状況による判断などもSちゃんのお母さまに委ねるところが大きくなってしまう。家事やほかの子の育児もある上でのことですので、大変さが伝わってきます。18歳以上は放課後等デイサービスの対象でなくなり、生活介護に変わります。そのような将来のことについても考えなくてはなりません。 ー調整の負担が保護者にのしかかっている現実があるのですね。 「この人に任せたい」と思われる看護師に ─ハートフリーやすらぎに就職されてもうすぐ2年になりますが、改めて思うところはありますか? 就職したときよりも、さらに利用者さんとの関わりの深さを感じています。ハートフリーやすらぎに長く勤めている先輩看護師の中には、過去に看取りをさせていただいた方の息子さんや娘さんの訪問看護を依頼され、二世代に渡って訪問している人もいます。そういう人はそのご家庭の過去の歴史を含めて深く理解していることもあって利用者さんからの信頼も厚く、繋がりが強固です。私も、長きに渡る関係性を持てるように利用者さんと関わっていきたいなと思いますね。 それから、先輩たちに質問すると、とても丁寧に対応してもらえますし、一緒に答えを探してくれるんです。このステーションにはいわゆる「プリセプター」(後輩看護師を指導する先輩看護師)がいないので、教育担当者ひとりに責任を負わせることなく、新人を「全体で育てていこう」という精神が強いと思います。また、プレッシャーを与えない一方で「任せるよ!」という姿勢を見せてもらえるのがとても嬉しいです。自分の成長や存在、このステーションにおける自分の役割を実感することができています。 大藪さんと訪問看護利用者さん ─最後に今後の目標や、「なりたい看護師像」を教えてください。 利用者さんの病状のみならず、生活を深く知ることは、どんなケアをすべきか、看護師としてどう関わっていくべきか、ということに繋がると思います。ご家族の負担や希望なども伺いながら、ご家族と一緒にひとつのチームになってケアをしていきたいと思っています。第三者よりも、一歩ご家族に近い存在になりたいですね。 いずれは、利用者さんから「この人に看護を任せたい」と思ってもらえる存在、安心感を持って頼ってもらえる存在になりたいです。今後、さまざまな利用者さんと出会うと思います。成長・発達段階や、疾患・障がいなどによってもご相談いただく内容が変わってくるので、しっかり応じられる看護師になれるよう、これからいろいろと学んでいきたいと思います。 ─ありがとうございました! * * * 次回は「ハートフリーやすらぎ」で働く石川さんにデイサービスでの子どもたちとの触れ合い方や、職場の在り方などについて伺います。>>次回の記事はこちら(※近日公開)自分自身が全力で遊びを楽しむ 重症心身障がい児のデイサービス&訪問看護 ※本記事は、2024年2月時点の情報をもとに構成しています。 執筆:倉持 鎮子取材・編集:NsPace編集部

あなたにオススメの記事

× 会員登録する(無料) ログインはこちら