感染症看護に関する記事

小児感染症 ヘルパンギーナ
小児感染症 ヘルパンギーナ
特集
2023年7月18日
2023年7月18日

ヘルパンギーナの症状・原因・治療法を解説 大人がかかるとどうなるの?

ヘルパンギーナは主に子どもが罹患する感染症ですが、大人も罹患する可能性があります。重症化しやすいとの報告もあるため、子どものみの病気と考えずに対応方法について確認しておくことが大切です。本記事では、ヘルパンギーナの特徴や症状、原因から治療法、大人が罹患した場合の症状などについて詳しく解説します。 ヘルパンギーナとは ヘルパンギーナは、エンテロウイルスに感染することで発熱とともに水疱性の発疹が口腔粘膜に生じる病気です。乳幼児を中心に夏季に流行する「夏かぜ」の一種とされています。 ヘルパンギーナの症状 ヘルパンギーナの潜伏期間は2~4日です。突然の発熱に続き咽頭痛が生じ、咽頭粘膜に強い赤みが現れます。その後、主に軟口蓋から口蓋弓にかけて、赤くなった皮膚に囲まれる形で小水疱が現れます。小水疱の大きさは通常1~2mm程度ですが、5mm程度の大きいものが現れる場合もあります。 発熱に熱性けいれんを伴うほか、咽頭痛による食欲不振や哺乳障害が問題となる場合があるため、対症療法で症状をなるべく和らげることが重要です。まれに無菌性髄膜炎や急性心筋炎などを合併することがあるため、38~40度の発熱や頭痛、吐き気、嘔吐、腹痛、下痢、胸の痛み、関節痛、筋肉痛などの症状に注意しましょう。 ヘルパンギーナが流行する時期 ヘルパンギーナは5月頃から増え始め、7月頃にピークを迎えます。8月頃から減り始め、9〜10月にはほぼ見られなくなります。このように季節性があるものの、ほかの時期にまったく見られなくなるわけではありません。 また、日本では西から東へと拡がっていく傾向があります。患者の90%以上は5歳以下で、最も多いのは1歳、そして2歳、3歳、4歳と続きます。 0歳と5歳の罹患数はほぼ同じです。ヘルパンギーナは5類感染症定点把握疾患であるものの、学校において予防すべき伝染病としては規定されていません。 そのため、一律で学校長の判断によって出席停止とするものではなく、対応については学校ごとに異なります。欠席者が多い、流行の規模が大きい、合併症を伴うケースが見られることで保護者の間で大きな不安が生じている場合、学校医との相談の上で出席停止の扱いとすることがあります。 ヘルパンギーナの原因 ヘルパンギーナは、エンテロウイルスによる感染症です。エンテロウイルスはピコルナウイルス科に属するRNAウイルスの総称で、以下のようなウイルスが該当します。 ・ポリオウイルス・コクサッキーウイルスA群(CA)・コクサッキーウイルスB群(CB)・エコーウイルス・エンテロウイルス(68~71型) ヘルパンギーナの主な原因となるウイルスはコクサッキーウイルスA群(CA)ですが、コクサッキーウイルスB群(CB)やエコーウイルスが引き起こす場合もあります。 急性期にはウイルスの排出量が多く、感染力も強いとされています。ただし、エンテロウイルスは症状が消失してからも2〜4週間は便からウイルスが排出される場合があるため、回復後もしばらくは油断できません。 ヘルパンギーナの検査方法・診断 ヘルパンギーナの確定診断には、口腔内の拭い液や水疱の内容物を含むもの、便などによるウイルス分離またはウイルス抗原の検出が必要です。 ただし、実際の医療の現場では臨床症状のみで診断することがほとんどです。 ヘルパンギーナの治療法 エンテロウイルスそのものに効果がある抗ウイルス薬は存在しないため、対症療法が主な治療法です。発熱や頭痛には解熱鎮痛作用がある内服薬を使用する場合があります。 脱水が生じている場合は必要に応じて輸液を行います。咽頭痛によって飲食を敬遠する場合があるため、脱水を防ぐために薄味で柔らかく口当たりがよいものを与えます。 ヘルパンギーナは大人がかかったらどうなる? ヘルパンギーナは、大人が罹患すると子どもと同じく光熱や口腔粘膜の小水疱などの症状が現れます。ただし、子どもと比べて症状が強く、高熱や非常に強い咽頭痛のほか、筋肉痛や頭痛、関節痛が現れる場合があります。 また、症状が現れている期間が長く、重症化しやすい点も特徴です。 ヘルパンギーナの予防法 ヘルパンギーナの予防法は、ほかの感染症と同じです。主な感染経路は、飛沫感染・接触感染・経口感染です。流行時には手洗いうがいをより入念に行いましょう。また、ヘルパンギーナの感染者との密接な接触をなるべく避けることも大切です。 ウイルスは長期間にわたり便から排出されるため、子どもがトイレで排泄できる場合は、手洗いや手指消毒を必ず行うように指導し、おむつを使用している場合は交換後に手洗いと手指消毒を徹底します。 流行時にはおもちゃの貸し借りも避けたほうがよいでしょう。エンテロウイルス対策として、ものを洗浄・消毒する場合は、念入りな洗浄と清拭でウイルスを物理的に除去した上で、0.02%に希釈した次亜塩素酸ナトリウムで消毒します。 * * * ヘルパンギーナは、突然の発熱・口腔粘膜の小水疱などを主症状とする感染症です。主に罹患するのは5歳以下の子どもですが、大人がかかる場合もあります。大人は子どもと比べて症状が強く、重症化しやすい傾向があるなど、より一層の注意が必要です。抵抗力が低い高齢者の訪問看護を行っている看護師は、今回解説したヘルパンギーナの症状や治療法、予防法などについて十分に確認しておきましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇NIID国立感染症研究所「ヘルパンギーナとは」(2014年07月23日改訂)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/515-herpangina.html2023/6/26閲覧〇一般社団法人日本循環器学会「2023 年改訂版心筋炎の診断・治療に関するガイドライン」p,21(2023年3月17日更新)https://www.j-circ.or.jp/cms/wp-content/uploads/2023/03/JCS2023_nagai.pdf2023/6/26閲覧〇NIID国立感染症研究所「無菌性髄膜炎とは」(2014年05月16日改訂)https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/520-viral-megingitis.html2023/6/26閲覧

コラム
2021年11月24日
2021年11月24日

COVID-19×訪問看護の最前線から~後編~

COVID-19が世界にとって未知の病気だった2000年初頭。社会全体が恐怖におびえ大きくうねり始めるなかで、いち早く訪問看護師という立場からCOVID-19と対峙し、現在もケアを続けている岩本大希さん。パンデミックのなかで岩本さんが行ったことや、第5波で看たCOVID-19感染者看護の実例、そして第6波に向けての心構えについて寄稿いただきました。後編では、COVID-19感染者看護の実例を中心にお届けします。 ≪ 前編はこちらからご覧いただけます COVID-19感染拡大の最中、命を守れないのではないかと感じることが増えていく 本文医療機関のひっ迫は一向に改善の様子がない。「入院待機者」という人々が在宅領域にもあふれ出し、2021年の8月にはピークを迎えた。1日10件全てコロナの入院待機者への訪問の日があるほどだった。 ・[感染case3]認知症の親御さんと暮らしている50代の方50代で認知症の親御さんと暮らしている方が動けなくなっていた。酸素、点滴を自宅で開始。なんとか酸素飽和度は上がる、でも呼吸回数は落ち着かず、苦しいだろうことが見てとれた。にもかかわらず、「母をなんとか助けてください。母をお願いします」自分より親御さんのことをとにかく心配されていた。ほぼ同時に親御さんも発熱し陽性となり、自宅にいることしかできない状況であった。誰がお世話するのか? 誰もいない。訪問看護師である自分ができることをやるしかない。親御さんは「私はいいから子どもを助けてくださいお願いします」と僕の手を握りしめる。お互いに想い合っていることがわかる。「はい、ちゃんと看ますので安心してください」と握り返す。親御さんも呼吸が悪くなり酸素を始めた。治療も大事だが、それよりも毎日の食べるものが用意できないので、併せて二人の食事を買い出す。重症化リスクも高いため毎日観察しに訪問し、食べやすいようおにぎりやアイス、うどんなどを買って行った。親御さんは顔もわからないような格好をした僕に驚かないどころか、手を合わせて「神様だわ」と言ってくれた。本当の神様だったらもっと色んな人を助けられるだろうが、僕はご飯を買って観察して励まして見守るだけしかできず、入院できるときを毎日待った。 ・[感染case4]家族と暮らす壮健そうな40代の方着いたときには酸素飽和度は80%代で、すぐに酸素開始するが7リットルでも酸素飽和度の上がりが悪い。オキシマイザーを使うとなんとか96%に。一度帰宅し、次の朝イチでまた訪問すると顔色の印象が悪い。呼吸数も多くマズイと冷や汗が出る。でも入院できないのだ。帰り際、小学校低学年くらいのお子さんが心配そうに犬を抱えて僕を見ていた。翌日以降のため、酸素濃縮器7リットル機をもう1台入れて2台連結し14リットルまで増やすため搬入予定とした。そうしているうちに入院が決まった。危機一髪で命を守れてよかったと安堵したことを覚えている。 ・[感染case5]全員がCOVID-19陽性の外国人家族の方40代の方。酸素飽和度が下がり、酸素が玄関先に届けられたと連絡をもらい導入のため向かう。しかし到着したら民間救急車がきていた。「入院が決まりました」とのこと。良かった。「パパどこいくのー??」窓から子ども3人が顔を覗かせていた。搬送される本人に付きそうパートナーを見ると明らかに顔色が悪かった。家族はみんな陽性と聞いていた。パートナーに「体調悪い?」と聞くと、「呼吸は平気だが吐いていて3日食べられていない」と言う。脱水症状だろう。すぐに依頼元から保健所に確認を頼んだが、パートナーは外国の方で日本語はあまり得意ではなさそうだ、聞き取りに工夫がいるため、きっと保健所の電話に的確に答えられておらず、見逃されたのかもしれなかった。この方も入院できるとよい。しかし両親ともに入院になれば、3人の子どもたちはどうするのだろう? どうすればよいかは保健所に任せるしかなく、次の現場に向かった。 ・[感染case6]犬と暮らす50代男性の方50代の男性でお一人暮らし。犬を飼っている。すでに酸素がなければ酸素飽和度は80%台と重症ラインにあった。点滴やステロイドを使って看護していると、保健所から入院の打診が入る。しかしこの男性は、飼い犬の世話があるため入院をお断りしていた。翌日改めて訪問すると、明らかに悪化している。保健所から僕は「どうにか犬の面倒を見られる人を確保してくれ」と言われた。ペットホテルを探したり、友人に頼んだりしたが、犬の面倒を見る人は見つからなかった。このままでは一晩持つかどうか、苦肉の策で「僕が面倒を見るから入院しませんか?」と提案し、無事入院の運びとなった。その日から一人ぼっちの濃厚接触犬へ、毎日トイレとエサ、水の交換のため訪問した。これでよかったのかわからなかったが、人懐こい犬は僕の来訪を毎日喜んでくれた。その様子を見るとやるべきことをやったかな、と思った。 第6波をいつでも迎えられるよう、連携と準備が必要だ 第5波のなかで、僕はこれら数十人と関わった。全員、ワクチンを打てていなかった人たちだった。予約をして待っていたり、1回目が終わっていたりする人たちばかりだった。日本のワクチン接種スピードの加速は諸外国に比べても脅異的で歴史に残るほどだと思う。しかし残念なことに、デルタ株の驚異的な速さに追いつかれてしまった。これから第6波がくることが予想されている。その日をいつでも迎えられるよう、多くの地域と連帯しながら準備を行い、沢山の人たちが予防行動を取れることを祈っている。 ** 岩本大希WyL株式会社 代表取締役 / ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長 / 看護師・保健師・在宅看護専門看護師ドラマ『ナースマン』に影響を受け、「最も患者さんに近い存在」として医療に関わりたいと思い、看護師になることを決意。2016年4月にWyL株式会社を創立し、直営で2店舗、関連会社でフランチャイズ4店舗を運営。(2020年12月現在)「全ての人に“家に帰る”選択肢を」を理念に掲げ、小児、精神、神経難病、困難な社会的な背景があるなど、在宅療養のなかでも受け皿の少ない利用者を中心に訪問看護事業を展開している。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

コラム
2021年11月16日
2021年11月16日

COVID-19×訪問看護の最前線から~前編~

COVID-19が世界にとって未知の病気だった2000年初頭。社会全体が恐怖感におびえ大きくうねり始めるなかで、いち早く訪問看護師という立場からCOVID-19と対峙し、現在もケアを続けている岩本大希さん。パンデミックのなかで岩本さんが行ったことや、第5波で看たCOVID-19感染者看護の実例、そして第6波に向けての心構えについて寄稿いただきました。前編と後編に分けてお届けします。 COVID-19という未知の感染症拡大を前に、僕たちの毎日は変わろうとしていた 2020年初頭から国内で流行が始まったCOVID-19。2021年8月に第5波と呼ばれるパンデミックまで僕たちは経験した。僕自身のCOVID-19への対応の始まりは2020年の3月ごろだったと思う。今では当たり前になってしまったが、「緊急事態宣言」という言葉がなにを意味するのかも当時十分にはわからず、「緊急事態宣言ってなんだ? 外国のように都市封鎖がされるのか? 訪問はそもそもいけるのか?」とうろたえていたことを覚えている。でも在宅ケア領域ではまだ直接的になにかCOVID-19の対処することもなく、これから自分たちがどうなるのか、どうすればよいのか、対策をとる必要があるのかも不明な状況だった。そこで、自分にできることを探そうと思った。 緊急時、訪問看護の立場からできることはなにか?の模索が始まった まずは緊急事態宣言下で訪問看護活動はそもそも可能なのか?ということを中央行政に確認する必要があった。なぜなら、訪問看護ステーションにおける現場の対処の指針となるものや、運営に関するガイドラインとなり得る情報がどこにもなかったからだ。通常は学会や職能団体から発信されるものであるが、全国において未知の状況ばかりでまとめようがなかったためそれも当然であった。 そこで僕が始めたのは、正式なものが発信されるまでのつなぎとして、自ら信頼できる同業者たちを集め、有志で現場のためのガイドを作成し、FacebookやTwitterなどで発信していくことだった。僕と同じようにうろたえている人のためになにかできればと思った。 2020年8月、ホテル療養を行うCOVID-19感染者へのサポートをいち早く開始 その直後くらいからだろうか。急激に感染者数が増え始め、訪問看護の現場でもCOVID-19の濃厚接触者となったがん末期の方のお看取りの対応をしたり、沖縄県にあるウィル訪問看護ステーション豊見城では看護協会や保健所と協働して全国でも早い段階でホテル療養者へのサポートを開始したりした。 2021年に入り流行はさらに大きくなっていく。関西において極めて厳しい医療ひっ迫が起き、それに対処した北須磨訪問看護リハビリセンターの藤田愛さんをはじめとした訪問看護師や医師らとともに勉強会などを開きながら、その経験や知恵を取り込み、またWEBメディアや雑誌などで発信することを進めていった。 関西の第4波から少しだけ間をおいて、関東でも第5波が始まると、デルタ株の猛威は強く、医療機関のひっ迫まであっという間であった。入院できずに「入院待機者」という人々が在宅領域にもあふれ出し、保健所をはじめとした行政や医師会や看護協会などの職能団体もその急激な変化に追いつけず、皆が必死にどうにかしようとしていた。 2021年8月、COVID-19第5波はピークを迎え状況は様変わりしていく そのなかの一つに僕たちの訪問看護ステーションもあった。2021年の8月にはピークを迎え、1日10件全てコロナの入院待機者への訪問の日があるほどだった。20代、30代、40代、50代の中等症がほぼ全てを占め、明らかにそれまでの流行とは様相が異なっていた。いくつかケースを振り返る。 ・[感染case1]ご両親と同居している20代の方職場で感染し、毎日嘔吐してしまい数日脱水で苦しんでいた。呼吸も苦しく酸素投与も始めた。点滴で補正しなければ命の危険があるため連日でお伺いする。ご両親の不安もいかほどか、涙されながらの親御さんのお話を伺う。何もできないと思いつめなくても、そばで見守っているだけできっと本人は安心ですよ、と伝え続けた。 ・[感染case2]30代、妊娠初期の方僕と同い年くらいの方へ訪問すると、妊婦さんだった。それに気づいて必要以上に緊張を覚えた。呼吸はまだ平気そうであったが、つわりも重なり食べられず脱水になっていた。ここでも点滴を行う。フェイスシールドと手袋の向こう側で脱水の妊婦さんの血管を探すのは困難で、冷や汗をかきながら集中が必要だった。お母さんはお腹の赤ちゃんのことがとにかく不安であろう、しかし赤ちゃんにコロナがどういう影響を及ぼすのか、僕にはわからず、安心してもらえる言葉を探したいがうまく見つけられなかった。パートナーの方も動揺が強い。点滴して、療養についてできる限りのことを伝える。「来てくれるだけで安心しました…」。ほんとはすぐ入院できればいい、でもそれができない状況だったので、とにかくこれ以上悪化しないことを祈るだけ祈った。 後編では、「認知症の親御さんと暮らしている50代の方」のケースや、「全員がCOVID-19陽性の外国人家族の方」のケース、第6波に向けての準備についてお伝えします。 ** 岩本大希WyL株式会社 代表取締役 / ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長 / 看護師・保健師・在宅看護専門看護師ドラマ『ナースマン』に影響を受け、「最も患者さんに近い存在」として医療に関わりたいと思い、看護師になることを決意。2016年4月にWyL株式会社を創立し、直営で2店舗、関連会社でフランチャイズ4店舗を運営。(2020年12月現在)「全ての人に“家に帰る”選択肢を」を理念に掲げ、小児、精神、神経難病、困難な社会的な背景があるなど、在宅療養のなかでも受け皿の少ない利用者を中心に訪問看護事業を展開している。 記事編集:YOSCA医療・ヘルスケア

特集
2021年11月9日
2021年11月9日

Dr.高山が直伝 在宅のノロウイルス感染症対策(後編)

急性胃腸炎を引き起こす病原体の中でも、特に問題になるノロウイルス。この悩ましい感染症について、在宅ケアでの対策を考えてみましょう。後編では、具体策を解説します。 在宅患者が発症しているとき 接触予防策 訪問スタッフは、厳格な接触予防策をとってケアにあたります。すなわち、手袋と、袖まであるガウンを着用します。 ケアが終了したら、丁寧なガウンテクニック(汚染された外側を触れないこと)に従って手袋とガウンを脱ぎ、家庭の洗面台をお借りして、流水による手洗いを行ってください。 汚染時の処理方法 環境が嘔吐物や排泄物で汚染された場合には、乾燥して飛散する前に処理することが大切です。 家庭における嘔吐物や排泄物の処理方法  1.処理しようとする人は、使い捨ての手袋・マスクを着用する2.嘔吐物や排泄物をペーパータオルなどで静かに集めて、ビニール袋に入れる3.嘔吐物や排泄物で汚染された場所を塩素系消毒薬で浸すように拭き、その後、水で拭く4.使ったペーパータオル・手袋・マスクをビニール袋に入れ、全体が浸る量の塩素系消毒薬をかけてから、しっかり縛って廃棄する5.最後に、流水と石鹸でよく手を洗う 訪問スタッフだけでなく、できれば家族にも指導してください。 器材の取り扱い 血圧計のマンシェットや、聴診器といった、ノンクリティカル器材については、可能なら本人専用として、次の利用者と共用しないことが望ましいでしょう。 大切なことなので繰り返しますが、エタノールで清拭してもノロウイルスは不活性化できません。どうしても共用せざるを得ない場合には、次亜塩素酸ナトリウム溶液で消毒してください。 家庭で適切な濃度の溶液を作製する方法は、前編でお伝えしたとおりです。 いつまで必要か? こうした対策の実施期間については、いまだ考え方は定まっていません。 厳格な立場をとろうとすると、ウイルスが排出されている可能性のある2週間以上は続ける必要があることになってしまいます。しかし、排出されていることと、感染性があることは必ずしも一致しないと考えられます。米国CDCのガイドラインでは、ウイルス排出が「高水準」である期間は隔離を行なうことが望ましいとし、その期間について「通常は症状が軽快した後の24~72時間」という考えを示しています2)。 ちなみに、沖縄県立中部病院の在宅チームでは、少し長めにとって「症状が軽快してから5日間」を接触予防策の期間としています。3~5日間の範囲で、現実的かつ可能な対策を、事業所ごとに決めていただくのがよいと思います。 なお、症状を認める在宅患者のケアを担当した訪問スタッフは、急性胃腸炎の接触者とみなします。これはスタッフの家族に症状を認めているときも同様です。接触後3日間は事業所の責任者が症状を確認し(自己申告はあてになりません)、症状出現があれば、すぐに就業停止としてください。 同居する家族が発症しているとき 非常に悩むところです。正直なところ、ノロウイルスの家庭内における感染拡大を確実に防ぐことは困難だと思います。特に、(在宅患者さんが寝たきりではなく)トイレを家族と共用している場合には、感染してしまう可能性はさらに高まります。 とはいえ、腎不全など基礎疾患がある在宅高齢者にとって、急性胃腸炎は命にかかわりかねない感染症です。現実的な範囲での対策について、家族に提案していきたいところです。 食事の準備 まず、症状のある家族は、在宅患者に提供する食事の準備にかかわらないことが原則です。ほかの家族にがんばっていただくか、ヘルパーさんに集中的に入っていただくなどの対応を、訪問看護師から提案していただければと思います。 どうしても症状のある家族が食事の準備をしなければならないときは、すべての手順において手袋を着用し、サラダなどの生モノの提供は避けること。85℃以上かつ1分以上の加熱調理を原則とします。 食器を共用しないことも大切です。特に、症状のある家族が箸をつけた惣菜を、在宅患者が後から口にしないよう、あらかじめ取り分けておくよう指導しましょう。 手洗い もう一つ大切なことは、こまめに手を洗っていただくことです。特に、トイレの後とケアを開始する前には、石鹸を使って丁寧に洗うように伝えます。 また、風呂については症状がある家族が在宅患者よりも後に入り、リネン類は共用しないようにします。 症状のある家族がトイレや風呂を使用した後には、次亜塩素酸ナトリウム溶液で清拭するほうがよいかもしれません。 ただし、どこまでやれるかは家族次第です。現場で続けられず、破綻することが明らかな対策を、専門家として提案すべきではありません。ある意味、それは責任転嫁ともいえます。家族に挫折感や罪悪感を残すことがないよう、家族ごとに「可能な感染対策のレベル」と「対策疲れに陥らない期間」を見極めてください。 訪問スタッフが発症しているとき 嘔気や下痢、発熱などの症状を認める場合は、診断が確定しているか否かに関わらず、症状が消失するまで仕事を休んでください。 感染対策が励行できることを前提として、症状が消失すれば就業は可能です。すなわち、ケアの前に手を洗い、手袋を着用するなど接触予防策を行ってください。こうした対策は、少なくとも症状が消失してから5日間は徹底するようにします。 ** 執筆者高山義浩沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科 副部長 記事編集:株式会社メディカ出版 【参考】 1)Gerald,LM.et al.Mandell,Douglas,and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases.6th ed.London,Churchill Livingstone,2004.2)CDC.Immunization of health-care workers:Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)and the Hospital Infection Control Practices Advisory Committee(HICPAC).MMWR.46(RR-18),1997,1-42.3)CDC.Prevention and control of influenza.MMWR.53(RR-6),2004,1-40.4)CDC.Updated norovirus outbreak management and disease prevention guidelines.MMWR.60(RR-3),2011,1-15.

特集
2021年11月2日
2021年11月2日

Dr.高山が直伝 在宅のノロウイルス感染症対策(前編)

急性胃腸炎を引き起こす病原体のなかでも、特に問題になるノロウイルス。この悩ましい感染症について、在宅ケアでの対策を考えてみましょう。前後編でお届けします。 ノロウイルス感染症の特徴 ノロウイルスは、感染力が強いため、しばしば地域で集団発生を引き起こします。通常は2~3日程度で軽快しますが、感染後約2週間は、便からウイルスを排出しているといわれます。 一度かかると免疫ができますが、免疫効果も6か月で低下し、2年で完全に消失します。 健康な人であれば、水分を摂取しながら「寝ていれば治る病気」です。しかし高齢者では、脱水が進んで多臓器不全をきたすことや、吐瀉物を喉に詰まらせて窒息を起こすこともあります。また、高齢者では誤嚥性肺炎を続発することもあり、下痢が治まってからも見守りが必要となります。 ノロウイルスの感染経路 ノロウイルスに感染すると、腸内でウイルスが増殖し、感染者の嘔吐物や排泄物を介して、他者に感染伝播します。 具体的には、食中毒、接触感染、空気感染に大別されます。 食中毒 感染している人が調理した食物を、食べることによる伝播接触感染 感染している人の嘔吐物や排泄物を、直接触れてしまうことによる伝播空気感染感染している人の嘔吐物や排泄物が、乾燥して飛散することによる伝播 在宅で必要になる感染対策 在宅における感染対策としては、感染者の嘔吐物や排泄物を確実に処理することと、食べ物の安全を確保することが重要です。 ノロウイルスが空気感染するには、嘔吐物や排泄物が乾燥することが条件となります。 一般に、医療機関では湿式清掃なので、(きちんと清掃しているかぎり)医療機関で空気感染のリスクは高くありません。ですから、医療機関では、空気感染を前提とした感染対策は必要ありません。 一方、家庭での清掃は、乾式清掃が一般です。乾式清掃では嘔吐物や排泄物を洗い流すことができません。それらを拭い取ったとしても、最後は乾燥させてほうきで掃いたり、掃除機で吸引したりしていると思います。 つまり、在宅の現場では、空気感染を考慮する必要があるということです。 もちろん「だからN95マスクを使いましょう」ということではなく、以下に紹介するように「きちんと次亜塩素酸ナトリウムで不活性化しましょう」ということです。 残念ながら、エタノールではノロウイルスを消毒することはできないのです。ただし次亜塩素酸ナトリウム溶液が有効とはいえ、手指の消毒を含め人体には使えません。よって、ウイルスの除去は流水による手洗いが原則となります。 ノロウイルスに有効なのは次亜塩素酸ナトリウム溶液 ノロウイルス胃腸炎による嘔吐物や排泄物を処理するときは、次亜塩素酸ナトリウムを600ppmに薄めた溶液を、ペーパータオルなどに染み込ませて清拭するのが基本です。 ノロウイルスは、アルコールでは不活性化せず、乾燥させても死滅しません。ですから、このノロウイルス専用の消毒液があると便利です。ここでは、600ppm(=0.06%)の溶液を手軽に作る方法を紹介します。 家庭における600ppmの塩素系消毒薬の作りかた まず、500mLのペットボトルを準備します。ペットボトルのふた1杯(5mL)の次亜塩素酸ナトリウム6%溶液(ハイター®など)をペットボトルに入れて、残りを水道水で満たしたら600ppm溶液になります。 家庭でノロウイルス胃腸炎が出たら、この消毒液を1本作っておいて、吐物の処理や、汚染された衣類の消毒に使用すると簡便です。 人体には使わない! この溶液を扱うときは、必ず手袋を着けてください。間違っても人体の消毒に使ってはいけません。もし、溶液が手に直接付着してしまった場合は、流水でよく洗い流してください。 万が一にも誤飲したら大変です。対策を講じましょう。 イラストのように、ペットボトルに注意書きするなど、飲み物と間違えないような対策に加えて、絶対に、子どもの手の届くところには置かない! リスクがある家庭では、作り置きせず、使用する度に調整するよう指導するほうが良いかもしれません。ご家庭の状況をアセスメントして提案してください。 発症者がいるときの対策のポイント これら具体的な対策について、次回の記事で解説します。 **  執筆者高山義浩沖縄県立中部病院感染症内科・地域ケア科 副部長 記事編集:株式会社メディカ出版 【参考】 1)Gerald,LM.et al.Mandell,Douglas,and Bennett's Principles and Practice of Infectious Diseases.6th ed.London,Churchill Livingstone,2004.2)CDC.Immunization of health-care workers:Recommendations of the Advisory Committee on Immunization Practices(ACIP)and the Hospital Infection Control Practices Advisory Committee(HICPAC).MMWR.46(RR-18),1997,1-42.3)CDC.Prevention and control of influenza.MMWR.53(RR-6),2004,1-40.4)CDC.Updated norovirus outbreak management and disease prevention guidelines.MMWR.60(RR-3),2011,1-15.

インタビュー
2021年2月24日
2021年2月24日

感染管理認定看護師に聞く、新型コロナの感染対策

テンハート訪問看護ステーション管理者の佐渡本さんは「感染管理認定看護師」の資格をお持ちです。訪問看護ステーションでも参考になる、新型コロナウイルス感染症をはじめとした感染症予防で気をつけるべきことについて伺いました。 在宅でも気をつけたい、個人防護服の管理 ー新型コロナの疑いの利用者さんがいる時はどうしていますか? 佐渡本: まずは、訪問に行くか行かないかは主治医と相談して決めています。以前、利用者さんで新型コロナ感染疑いの方がいたのですが、その時は主治医と相談してサービスを一旦停止しました。 熱がある患者さんを訪問する時は、しっかり個人防護具を着て、マスクやフェイスシールドをつけて対応しています。ここでひとつ見落としがちなのが、個人防護具を外す時の感染リスクです。 ー「個人防護具を外す時」ですか。 佐渡本:   例えば、手袋を外す時やマスクを外す時に、不潔な部分に触れて手などにウイルスが付着してしまうことがあります。ですので、個人防護具を「つけているから大丈夫」ではなく「外して、破棄して、手洗いする」ところまでやって、はじめてきちんした感染症対策になると思います。 ー個人防護具を扱う際の注意点など、詳しく聞かせてください。 佐渡本: 個人防護具を外すタイミングは、利用者さんと2メートル以上離れた、部屋の出口や玄関先でいいと思います。その際も、脱いだエプロンで手や周囲を汚染しないように注意してもらえればと思います。 もうひとつ可能であれば実践してもらいたいのが、新型コロナに感染した疑いの利用者さん自身にもマスクを着用していただくことです。言わないとマスクをしてくれない利用者さんも多いかと思いますが、お互いにマスクをしていれば感染のリスクは下がります。 訪問看護師の持ち物も清潔に ー新型コロナ感染症に限らず、普段の感染症対策で大切にしていることを教えてください。 佐渡本: スタンダードプリコーション(標準予防策)は徹底しています。手洗いとか咳エチケットですね。 あとは物品の取り扱いですね。体温計とか血圧計など、利用者さんごとに消毒して綺麗にリセットすることを徹底しています。 ーこれは見落としがち、というものはありますか? 佐渡本: 在宅ではあまり問題視されていないのですが、気を付けないといけないと思うのが、多剤耐性菌です。 多剤耐性菌は健康な私たちには悪さをしませんが、高齢の方にはリスクになる菌です。 処置後の手洗いはもちろんですが、菌を次の家に持ち運ばないように気をつけるよう、いつもスタッフに指導しています。 また、訪問バッグの中の物を清潔に管理するのも訪問看護師として大事なことだと思います。 訪問バッグ自体も、もし床面に置いた場合は拭くなどして綺麗にしておいた方がいいと思います。 ステーションが全滅しない感染対策を ー最後に、感染管理認定看護師として他のステーションへのアドバイスなどあればお願いします。 佐渡本: ステーション運営の上で重要だと思っているのは、仮にスタッフに新型コロナウイルス感染症の陽性者が出たとしても、ステーションが全滅しない対策を取ることです。 例えば陽性者が1人出た時、保健所から「スタッフ全員が濃厚接触者です」と言われてしまったら、2週間休業になってしまいます。もし陽性者が出ても、濃厚接触者には当たりません、と言ってもらえるような対策を常に取っておくことが大事だと思います。 あとは、プライベートでも気を抜かずにスタッフみんなが予防を意識することも必要です。 ー万が一感染してしまった場合はどうしたらいいでしょうか? 佐渡本: どれだけ細心の注意を払っていても、感染してしまうことはあると思います。 実際に自分やスタッフが感染しても慌てないように、あらかじめ起こりうることを想定して、対策を具体的に考えておきましょう。これは災害対策も一緒ですね。 例えば、利用者さんとスタッフの体温をチェック表に毎日書いて管理するなども有効だと思います。見える化されていることで、早期に異常を発見できることもあると思います。 合同会社Beplace代表 / テンハート訪問看護ステーション管理者 / 感染管理認定看護師・臨床検査技師 佐渡本琢也 臨床検査技師として勤務する中で、患者と接する仕事に魅力を感じ、看護師の道へ。病院では脳神経外科、消化器外科を経験し、感染管理認定看護師の資格を取得。母を癌でなくした経験から「在宅で看護師ができることが、まだあるのではないか」という思いを持ち、同僚からの誘いをきっかけに愛知県名古屋市にテンハート訪問看護ステーションを立ち上げた。   新型コロナ感染症対策についてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

インタビュー
2021年1月21日
2021年1月21日

コロナ禍で、利用者さんが発熱したら訪問するべきか?

岩本さんは、有志のメンバーとともに新型コロナウイルス感染症対策の情報をまとめて、ウェブ上に公開しています。 利用者さんに感染の疑いがあるケースは?感染症対策の物品が不足したら?訪問看護ステーションでの感染対策に関して、日常的に直面する問題について伺いました。 訪問時に気をつけること 岩本: 利用者が新型コロナウイルス感染症になった、または感染の疑いがある場合、自分が濃厚接触者にならないことが重要です。 そのためには、保健所から「濃厚接触者には当たらない」と言ってもらえる対策を心がけてやっていくとこが必要です。 このコロナウイルスが非常に厄介なのは、本人に感染症状が出る前から他者に感染してしまうことです。そのため、利用者の方にコロナの症状が出て陽性が確定した、あるいは感染の疑いが非常に強いと判明した場合、その前日~数日前に訪問看護に入っていたら、その時はどうだったのかということの判断が難しくなってきます。 私たちの『COVID-19在宅医療・介護現場支援プロジェクト』ではこういった「訪問にあたるスタッフの基本的態度」「濃厚接触者、感染の疑いのある利用者、陽性確定の利用者へ訪問をする場合の対応」などについて詳しく説明しています。ここでは、プロジェクト内容の一部をご紹介します。 (プロジェクト情報は記事最後を参照ください。) 利用者さんが発熱した時の対応 岩本: 在宅ケアにおいては発熱というのは非常にポピュラーな症状です。高齢者は熱がこもりやすいことに加え、気候による環境の変化、脱水、誤嚥性肺炎など色々な理由での発熱が考えられます。 熱源が何なのかのアセスメントは当然重視してもらいつつ、熱が出たからといって訪問を取りやめることは尚早な判断かもしれないと考えられるといいと思います。 もちろん濃厚接触者として対応しなければいけない発熱者で、かつケアがなくても過ごせるようであれば、訪問を控えるのも大切なことだと思います。 ただし、訪問看護師が訪問しなくなることで生命に直結する、あるいは生活に破綻及ぼす可能性がある場合、私たちはインフラの一つとしてきちんと防御を取った上で訪問を継続する必要があると考えます。訪問では感染管理期間に最低限何をすべきか考え、ケアについても再検討し、実施していく必要があるかなと思います。 利用者さんの感染が確定した時の対応 岩本: おそらく多職種で入っているサービスはほとんど止まってしまうと思いますが、一部のヘルパーさんについては一緒に入ることもあるとは思います。 ヘルパーさんたちは教育体系がそもそも違いますので、基礎教育で感染防御について学んできているわけではありません。確実な感染防御の手順が守れるかを互いに確認しながら介入を継続していく、そのためには看護師の果たすべき役割は非常に多いと思います。 ヘルパーさんが感染防御の手順がよく分からないという場合であれば、看護師がきちんと防護服の着脱のやり方などを指導して、確実に皆で防御していく。看護師はこういったチームをサポートする役割も担っていると思います。 防護服などの物品が不足した場合の対応 岩本: 日本看護協会や訪問看護財団、全国訪問看護事業協会などさまざまな業界団体や寄付団体が現場に対しての物品の供給やサポートを実施してくれています。 こういった情報を収集し地域の連絡会で共有されていると思いますので、地域のステーション同士、さらに協力する体制を作っていけるといいと思います。 利用者自身が感染を起こさないように、起こしたとしても広がらないように。そして私たちも同じように広げないようにしていく。おそらくはコロナは長いと来年の春まで続くような事態になると考えながら、日常を運営していくべきだと考えています。 『COVID-19在宅医療・介護現場支援プロジェクト』 有志のメンバーが2020年3月の当初から手探りでとってきた対策について、現実性・実務性を踏まえてさらにディスカッションし、訪問看護事業所向けに内容をまとめたものをウェブ上に公開している。 WyL株式会社 代表取締役 / ウィル訪問看護ステーション江戸川 所長 / 看護師・保健師・在宅看護専門看護師 岩本大希 ドラマ『ナースマン』に影響を受け、「最も患者さんに近い存在」として医療に関わりたいと思い、看護師になることを決意。2016年4月にWyL株式会社を創立し、直営で2店舗、関連会社でフランチャイズ4店舗を運営。(2020年12月現在)「全ての人に“家に帰る”選択肢を」を理念に掲げ、小児、精神、神経難病、困難な社会的な背景があるなど、在宅療養の中でも受け皿の少ない利用者を中心に訪問看護事業を展開している。 インタビューをした人 シニアライフデザイン 堀内裕子 桜美林大学大学院老年学研究科博士前期課程修了。「ジェロントロジスト」のコンサルタント・マーケッターとして、シニア案件に数多く参画。日本応用老年学会常任理事、日本市民安全学会常任理事を務め、リサーチ・コンサルティングとして、大手不動産企業新規商業施設戦略/大手GMSのシニア向け売り場企画/大手百貨店の高齢者向けサービス・婦人服企画等を多数行う。活動にはNHK 総合 「首都圏情報ネタドリ!」出演、「新シニア市場攻略のカギはモラトリアムおじさんだ!」(ダイヤモンド社)編著他、企業・自治体での講演多数。 新型コロナ感染症対策についてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

特集
2021年1月19日
2021年1月19日

新型コロナ、感染対策どうしてる?

2020年は新型コロナウイルス一色の年になりました。訪問看護の現場でも感染に注意を払い、気を張った対応を迫られていたのではないでしょうか。 2021年を迎えてもなお全国的に感染拡大し、中核都市だけでなく、地方にも感染の魔の手が迫っています。 そんな中、積極的に対策に乗り出している訪問看護ステーションがあります。今回は、感染対策マニュアルの作成やテレワークの導入など、さまざまな対応をしているステーションを特集でお届けします。 「濃厚接触者にならない」感染対策とは 東京都江戸川区を中心に全国に展開するWyL(ウィル)訪問看護ステーション。 代表の岩本さんは、有志のメンバーと共に「訪問看護事業者向け対応ガイド」を作成しました。 みなさんの訪問看護ステーションでも、発熱した利用者さんが新型コロナウイルス感染症の可能性があった場合、どのように対応すべきか悩んだというケースがあったかもしれません。 岩本さんは、こうした在宅でよく遭遇するケースに関してどう考え、どう対処したら良いかの情報を発信しています。詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 コロナ禍で、利用者さんが発熱したら訪問するべきか?(WyL訪問看護ステーション 岩本大希) コロナ禍でも利用者数アップの秘訣 全国に展開するリカバリー訪問看護ステーション。 コロナ禍に1人で悩む利用者さんを救うため「こういった時期だからこそ、訪問看護に行こう」と伝えていると代表の大河原さんは言います。 新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの訪問看護ステーションで収益が下がっている中、リカバリーでは20%ほど利用者が増えたそうです。 直接会いにいくのではなく電話での営業に切り替えるなど、営業方法を工夫することで、順調に収益も伸ばすことに成功されています。具体的なコロナ禍での営業方法やステーションの方針決定等について、詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 牛丼チェーンを見習って、訪問看護をメジャーに!(リカバリーインターナショナル株式会社 大河原峻) ICTを活用したテレワークの導入 東京都で展開するケアプロ訪問看護ステーション。 緊急事態宣言の時は、情報がまだ少なく何をどうすべきか対応が難しかったと、在宅医療事業部長の金坂さんは話します。 一方、状況が整理できてくると、電子カルテの利用やGoogleカレンダーでのスケジュール管理など、元々ICTを活用していたことで、対応がスムーズに進んだそうです。 現在でもテレワークの導入や可能なスタッフには直行直帰をしてもらうことで、スタッフ同士の接触を最小限にするような工夫をされています。 テレワーク導入等の具体的な新型コロナウイルス対応について、詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 災害時対応を変えるためのチャレンジ(ケアプロ株式会社 金坂宇将) 感染管理認定看護師ならではの視点で対策 愛知県名古屋市にあるテンハート訪問看護ステーション。管理者の佐渡本さんは、感染管理認定看護師の資格を持っています。 一番重要なのは「全滅しない対策をすること」と佐渡本さんは言います。仮にスタッフ全員が濃厚接触者になってしまった場合、2週間は訪問看護業務が停止になってしまうからです。 そのためには、適切な対策が必要になります。発熱者の訪問に個人防護具を身に付けて対応することもあると思いますが、つい見落としがちになるのは「個人防護具を外す時」だそうです。 在宅の現場では清潔管理の限界があるかもしれませんが、個人防護具を身につけていても、対応に不備があるとウイルスが付着してしまう可能性があります。 感染管理認定看護師ならではの新型コロナウイルス感染症への具体的な感染管理アドバイスについて、詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 感染管理認定看護師に聞く、新型コロナの感染対策(テンハート訪問看護ステーション 佐渡本琢也) どの訪問看護ステーションも、苦しい状況の中で訪問し続けてくださっていると思います。この特集が、新型コロナウイルスの猛威を乗り切っていくためのヒントとなれば幸いです。 またツールには感染症のマニュアルも準備しておりますので、こちらも合わせてご活用下さい。

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