管理者に関する記事

インタビュー
2021年3月23日
2021年3月23日

管理者インタビューMy Care Style vol.1

管理者インタビュー『My Care Style 』第1回目は、訪問看護ステーションリカバリー看護師の柴山様にお話をうかがいます。 スタッフに対しても、利用者さんに対しても、相手の視点で考えることを大切にしています。 訪問看護ステーションリカバリー 看護師・柴山 宜也(しばやま よしなり) 消化器急性期病棟で3年、老健やデイサービスで1年働いた後に、訪問看護未経験で現在のステーションに入社し、7年目になります。身内の不幸をきっかけに看護師を目指し、初めは看護技術を習得するために、急性期を極めようと大学病院に勤務しました。しかし、「そもそも倒れないような関わりが必要なのでは?」と思うようになったことで高齢者医療や予防医療に興味を持ち、「倒れても対応できる看護師から、倒れないように対応できる看護師へ」と考え方が変わりました。 休日は、今は家族と過ごすことが多いですが、以前は勉強会に積極的に参加して他のステーションの管理者や責任者、その他医療介護業界の方と交流をしていて、それが今の新宿医介塾の運営につながっています。 Q ステーション運営で心がけていることは? 相手の立場に立って考えることが大事だと、過去の経験から痛感しています。 初めて管理者になったときはとても意気込んでいて、新人が少しでも早く一人前になれるように情熱を注いだ結果、逆効果になったことがありました。新人に対して1から10まで教えて、完璧を求めてしまったために、パンクしてしまったのです…とても反省しています。 今は、新人の気持ちや、本人が受け入られるキャパシティを見極めた上で、話し合いながら育成するようにしています。 新人教育は、基本的にはOJTがメインで、現場チューター制度をとり、担当をつけつつチームで教育を行っています。管理者は全体の教育を考える立場ですが、新人と年齢が離れていることで話しづらい時もあり、気軽に相談できるチューターが中心になって進めています。 新人には3ヵ月同行しますが、みなさん優秀で、3ヵ月経つと8割以上は一人前になります。あとは、その中で見ていない疾患に同行したり、契約を覚えてもらったりで、おおよそ一年で大体の業務は対応できるようになります。 管理者以外のスタッフにも契約を覚えてもらい、重要事項説明をしてもらうのは、お金の管理も含めて、「訪問看護の対価はどのくらいか=自分の価値を知る」を理解してもらいたいからです。 リハビリ職など他の職種とのコミュニケーションについても、相手がどう考えるかを常に気をつけています。 看護師には看護師なりの考えがあり、リハビリにはリハビリの考え方があり、利用者さんにとってはどちらも大切な専門職です。双方の異なる価値観を尊重することが、お互いの知識と経験を養い、成長につながり、結果的には利用者さんにより良いが提供できると思います。 しかし、看護職はリハビリ職を「大切なパートナー」と考える人もいれば、残念ながら「下級医療職」と見下してしまう人もいます。また、リハビリ職は「看護師は忙しそう、話しづらい」と考える人もいます。 そういった垣根を壊すような運営方針、取り組みを行っています。 またマネジメントについては、もちろん社内の人にも相談はしますが、個人的に参加していた勉強会で社外の管理者などと知り合うことができ、社外にも相談できるネットワークができたのは財産です。 Q 利用者さんに対して心がけていることは? 大きくは二つあります。 一つは、会社理念でもある「もう一人の家族」の視点で関わること。 「利用者さんが自分の両親、親族だったら何をしてあげたいか」「もし利用者さんの家族に医療者がいたら、どんな相談をしたいか」を親身になって考えるようにしています。 もう一つは、思い込まないこと。主訴の裏には大きな異変が隠れていることもあります。 家族から「朝、寝室から起きてきて、リビングでくつろいでいたけど、リビングで寝たまま起きないんです」と相談されたことがあります。糖尿病のある方だったので低血糖も疑って訪問してみると、脳梗塞を発症していて除脳硬直状態、すぐに救急搬送になりました。 病院と在宅では、いくつか違いがあります。 病院では患者さんが病院に治療を受けに来ますが、在宅では利用者さんの療養している家に私たちが入ります。看護師は、病院ではホームですが、在宅だとアウェイです。そのため、アウェイでは利用者さんとの信頼関係がものすごく重要で、知識・技術以上に人間性、コミュニケーション力が求められると思います。 また病院では、一人の患者さんにじっくり向き合うことが難しいのが現状ですが、在宅では利用者さんとの決まった時間が確保されています。その時間の中で、精一杯利用者さんに向き合うことで、信頼関係が構築できた時はとてもうれしいですね。 病院では「看護師さん」や「リハビリの先生」と呼ばれますが、訪問看護では名前で呼んでくれる利用者さんが多いです。それは人として向き合ったことで、看護師個人として評価・信頼してもらっている証だと思っています。 Q 未経験の方にメッセージをお願いします。 「訪問看護をやりたい!」と思っていても、学校の先生や、病院の先輩から「まだ早い」とか「色々な科を経験してからじゃないと」とか、いろいろ言われる業界ですので、ハードルが高く感じる方もたくさんいると思います でも一番大事なのは、訪問看護に対して興味があることではないでしょうか。目の前の患者さん、利用者さんとがむしゃらに関わることができる人であれば、臨床経験の長さはあまり問題にならないと思います。 ITが普及している昨今であれば、訪問時に困ってもすぐに先輩に相談できますし、教育体制がしっかり整っているステーションもあります。実際、私たちのステーションも未経験者ばかりですが、みなさん楽しそうに訪問しています。 「できるか、できないか」ではなく、「やってみたい」という前向きな気持ちが何よりも大切です。ぜひチャレンジしてみてください! ** 会社名:Recovery International株式会社 ステーション名:訪問看護ステーションリカバリー 併設サービス:訪問マッサージ 所在地:東京都新宿区西新宿6-16-12第一丸善ビル6階 最寄り駅:都営大江戸線西新宿5丁目駅 ■職場環境 スタッフ数:看護師10名、セラピスト10名 年齢層:23~40歳。平均年齢32歳 訪問エリア:主に新宿と渋谷方面 移動手段:基本は電動自転車。悪天候時は公共交通機関を使用 周辺環境:都庁や新宿中央公園があり、都会の中でも緑が多い。オフィス街と住宅街があり、周囲には飲食店も多く環境は良い。 オンコール対応:東京では希望性のため月1回から。希望した場合や指導する立場の看護師は月8回程度。実際には平均月10回程度で、半年以上オンコールに呼ばれない看護師も多くいる。電話は1日1~2回で、18~22時にかかってくる電話が7割以上、深夜は月に5回未満 ■利用者層 疾患の傾向:ご利用者さんを重症度などで選定していないため、要介護5から要支援1まで請け負っており、さまざまな疾患がある。ALSやパーキンソン病などの難病の方、癌末期の方、糖尿病や慢性腎不全や心不全を抱えている方など 保険別の割合:季節にもよるが、介護保険が7~8割、医療保険が2~3割程度

コラム
2021年3月23日
2021年3月23日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 採用編~

前回のコラムで、人事部門の大事なポイントを紹介しましたが、引き続き今回は採用面で影響を受けた内容をまとめてみました。ご参考にして頂ければと思います。 コラム執筆者:一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー/理事長  上原良夫 採用で重視するポイント 求職者の能力のなかで、特に重視するのがコミュニケーション能力です。 ①相手の言っていることが理解できる。 ②相手の感情が理解できる。 ③会話のテンポと展開によどみがない。 ④自分が話をしているときに、相手の考えを掴んでいる。 ⑤運の良い人生を語れる。 採用は即決の場合もありますが、基本的に1週間程度の余裕をもって返答をしています。雇用契約は採用前に必ず交わし、配置、報酬、休暇、研修、OJT計画など入社後のトラブルを回避し、メンタルヘルス問題に関する混乱も、可能な限り入社前に対処します。 売上・利益への影響が大きいのは、予期しない退職が出る場合の交替人事であり、特に紹介会社社を使う場合です。可能な限り2か月以上前に把握して、お客様や社内外に迷惑のかからないよう雇用契約の遵守を毅然と促します。 評価、契約更新は社長、上長者が行い意思の疎通を良好にすること、そして社内を見渡して問題を抱えるスタッフの把握にも腐心すると、無駄な出費を減らすことができます。 採用時の優先順位は専門性の高さと経験度数を重視しながらも、心根が良く、気配りができ、人間関係を大事にできる人柄を重視します。 年俸制社員と回数制社員(訪問回数により給与が変動する歩合制)は、50:50のバランスが一番生産性が高く質が担保できると思います。しかし年俸制社員比率が高くても質と労働生産性の保証にはならないため、経営方針書を説明して綿密なコントロールを大事にします。 人材を人財などと呼んで表面的に人事を見栄え良くする組織もありますが、社員の本質は、給料と休みが平均以上に高く、教育研修投資を怠らない会社でロイヤリティを発揮する。そして自信と誇りを持てる、明るい将来が描かれているか、が大事です。 以下は、採用時の判断基準をまとめたものです。 以上、医療・介護業界の現場を知り尽くしたソフィアメディ(株)創業経営者水谷氏による、人事部門の重要ポイントでした。実践実学より築き上げた哲学が散りばめられていると思います。ご参考になれば幸いです。 ** 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫 【略歴】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務 【 参考 】 水谷和美著「訪問看護の社長業」

インタビュー
2021年3月16日
2021年3月16日

被災地でのボランティア活動/第1回 訪問看護の1人開業・立ち上げ

  東日本大震災の被災地特例で訪問看護の一人開業が認められ、ボランティア活動の傍ら開業に踏み切った渡部あかねさん。その後、自費サービスを含めたぷりけあ訪問看護ステーションを設立し、地域の中で安心して暮らしていけるお手伝いをしています。第1回は、訪問看護の開業、立ち上げをするきっかけとなった被災地のボランティア活動についてお話を伺いました。 東日本大震災をきっかけに留学先から帰国 ―まず、渡部さんのご経歴からお聞きしたいと思います。 渡部: 私の母は、保育士として障がい者施設や病院などで働いていました。母の職場に遊びに行ったりもしていたので、子どものころから障がいのある方や病気を抱えている方は身近な存在でしたね。そのせいか、人の役に立つことをやりたいと漠然と思っていて、結局、福祉や医療の現場に幅広く携われる看護師の道を選びました。 大学は栃木県の自治医科大学です。地域医療に力を入れていて、看護学部でもへき地医療・地域医療についていろいろ学びました。夏休みにはへき地の診療所での現場研修もあり、いろいろな分野を幅広く勉強をしなければいけないと、学生ながらに感じていましたね。 卒業後は、東京都の虎の門病院で2年間、消化器内科と脳神経内科、整形外科などがある混合病棟で働きました。私の場合、震災がきっかけで訪問看護に興味を持ったので、当時は訪問看護をやろうとは思っていませんでした。 でも分刻みで進む業務の中、思うようにはいかないこともたくさんあって、フラストレーションが溜まった結果、半ば強引に病院を辞めて、オーストラリアに留学することにしました。 当時のオーストラリアには看護師留学というプログラムがあって、日本の看護師免許があると、語学などの研修を受けた後、看護助手として働くことができました。 医療通訳なども興味があったし、いろいろやりたいなと思っていました。たぶん東日本大震災がなければ、オーストラリアで全然違う人生を送っていたと思います。 ―東日本大震災は、どのようなタイミングで起きたのでしょうか。 渡部: オーストラリアに行って一年ほど経ったころですね。 日本全体が本当に大変な中、私はテレビでその光景を見ていることしかできない…。今の自分が身を置くべき場所、やれることは何かを考え直した結果、一度日本に帰る方がいいのではないかという結論に至って。地元の宮城に戻ったのは震災の年の5月のことでした。 ただ、災害現場で看護活動をするには専門的トレーニングが必要な場合が多く、最初は普通に泥かきボランティアなどをしていました。 看護師の資格を活かしキャンナスでのボランティア活動 そんな時、ネットで見つけたのが被災地支援も行っている訪問ボランティアナースの会「キャンナス」(※)の活動です。 ※キャンナス(CANNUS) 電話をかけたら、「とりあえず気仙沼に行けますか」と言われて、一週間くらいの単位で各避難所を回りました。初めてだったので、どこにニーズがあるかもわからないし、日々必要になるもの、困りごとも変わっていく状況で、最初は驚きました。情報を一つでも多く拾ってくる、自分の判断に委ねられることが多い活動だったと思います。 とりあえず避難生活をしている方に「体調はどうですか」と声をかけたり、血圧を測ったりしながら巡回していました。それ以外にも、生活環境を整えるために掃除をするなど、医療ニーズに限らず、生活全般のニーズを拾うことを大事にしていました。 今思うと当時の私は、看護師2年間の経験しかなかったので、全然スキルが足りないことも多かったです。そんな私でも「看護師です」と言うと、相手がすごく安心したような表情をしたり、胸の内を明かしてくれたりと、それがとても印象的な体験でしたね。 病院の外でもこんなに医療や看護が求められているんだと肌で感じました。 ―その後、気仙沼から石巻に移られたんですね。 渡部: 石巻で長期間活動できる人を探していて、私が行くことになりました。 避難所にいる方だけではなく、一階は津波の被害を受けているけれど二階で生活をしているような方も混在していました。避難所に比べると、在宅の方の情報が集まりにくいこともあり、保健師さんと手分けをして、被災の程度がどのくらいなのか、どのような方が暮らしているのか、医療や介護が必要ではないか、などのアセスメントもしていました。 こうした活動は、最初はすべてボランティアでしたが、中長期的な必要性と、行政がイニシアティブをとるというかたちで途中から石巻市の委託事業になりました。それで、一般社団法人キャンナス東北という法人となり、震災の年の10月くらいからはその活動にシフトしました。牡鹿半島というエリアの仮設住宅のアセスメントと、コミュニティーの再形成を支援するための健康相談会の企画運営を任されていました。 ボランティア活動では、医療の知識を伝えつつ、橋渡しをするというコーディネーター的な役割を求められることが多かったです。生活環境を整える、その人が心地よく生きられる環境を整える活動に、看護師として全般的に関われたことは、今の訪問看護の仕事でも役立っています。 ぷりけあ訪問看護ステーション 代表取締役/保健師・看護師 渡部 あかね(わたなべ あかね)旧姓:佐々木 東日本大震災のボランティア活動で、医療者が地域の中に出向いていかなければ気づけ対応できないニーズが非常に多いことを経験。看護師として、本当に困っている人のそばに身を置いて関わっていきたいという思いから、被災地特例で一人開業し、その後2014年にぷりけあ訪問看護ステーションを開業。

コラム
2021年3月16日
2021年3月16日

訪問看護師にビジネスマインドを持ってもらうには?

「看護師が一件一件の訪問に時間をかけ過ぎていて、トータルの訪問件数が増えず、売上が伸びない…」 「ステーション管理者が、労務管理やコンプライアンス遵守の感覚を持っていない…」 「人材採用やスタッフ教育を、もっと現場でしっかりやって欲しい…」 訪問看護事業を「ビジネス」として運営する事業者は、訪問看護師やステーション管理者などの専門職に対して、上記のような悩みや要望を持っている場合が多いようです。特に昨今は、訪問看護業界に民間事業者の参入が増えていることもあり、医療現場の経験がない「ビジネスマン」と、ビジネスの経験がない専門職が、お互いにカルチャーショックを受けるケースが増えています。事業者が日頃慣れ親しんでいるビジネス用語を使って現場業務の改善をリクエストしても、専門職がその意味や意図を十分に理解できず、一方的に指示を出す事業者に対して「現場のことをわかっていない!」と反発心を覚えるケースもあるでしょう。 本稿では、事業者を主な読者と想定して、訪問看護師にビジネスマインドを持ってもらうための、専門職とのコミュニケーションにおける工夫と心構えについて考察します。 コラム執筆者: 株式会社メディヴァ/コンサルタント 内野宗治   「奉仕の精神」と「ビジネス」は共存可能という現実を伝える 多くの事業者が「専門職はビジネスマインドに乏しい」と感じる背景には、専門職が経営やビジネスについて学ぶ機会を持つことが少ないという現実があります。 例えば看護学校や病院では、看護技術や「患者のための奉仕の精神」は学ぶものの、医療機関の経営やマネジメントについてはほとんど学びません。また、医療は公的な社会資本であり、多くの民間ビジネスのように純粋な市場原理で動いている世界ではないことも、看護師に限らず医療職が自身の仕事を「ビジネス」として捉えにくい一因でしょう。人によっては「奉仕の精神」と「ビジネス(≒お金儲け)」は相反するものだという認識を持っていて、事業者が利潤を追求することを快く思わないかもしれません。   こうした背景を踏まえると、専門職に対していきなり「ビジネスマインドを持て!」と言うのではなく、まずは「奉仕の精神」と「ビジネス」が共存可能であり、むしろビジネスとして成立してこそ継続的に「奉仕の精神」を発揮することができる、という現実を伝えていくことが重要でしょう。その上で、「ビジネスマインドを持つ」とは具体的にどういうことなのかを説明する必要があります。 課題の羅列ではなく、まずはポジティブなフィードバックを 事業者が「専門職はビジネスマインドに乏しい」と感じる事例として、例えば訪問看護師の中には「利用者さんのために」という気持ちが強い故に、一人の利用者への訪問に規定以上の時間を費やしてしまう人がいることが挙げられます。これは専門職としてのプロ意識、情熱の表れであるとも言える一方、訪問一件あたりにかける時間が増えると必然的にトータルの訪問件数が減ってしまうため、目先の売上は減少してしまいます。 もちろん、たとえ訪問件数が増えても、訪問時間が短くなったことによって一人一人の利用者に対するケアの質が下がってしまい、その結果として利用者が減少してしまうようでは本末転倒です。あくまでも「一人一人の利用者に質の良いケアを提供する」ことを前提に、時折「自分がしている仕事はどれくらいお金を生んでいて、どれくらいコストがかかっているのか」と考えて欲しい、というのが、多くの事業者にとっての望みではないでしょうか。効率化やコストカットばかり考えても、それが良いケアの提供に繋がる可能性は低いでしょう。 具体的なアプローチ方法として、まずは経営に関する情報やデータを必要に応じて専門職と共有し、職種の垣根を越えて対話する機会を設けてみるのはいかがでしょうか。その際、「訪問件数が少ない」「コストがかかり過ぎている」といった課題を羅列するのではなく、まずは「あなたがこれだけ売上を出してくれて、助かっている」といったポジティブなフィードバックを行い、その上で「もっと良くするにはどうすれば良いか」を話し合うことで、建設的な対話に発展する可能性が高まります。 専門職と非専門職の間で「翻訳」するスタッフがいることが理想 専門職と非専門職の間で、上記のような対話をスムーズに行うことができるに越したことはありませんが、実際にはなかなか難しく、上手くいかない場合もあるでしょう。そのような場合の解決策のひとつとして、両者の橋渡しを担う「翻訳者」とも言うべき人材を確保することが挙げられます。 経営的に成功している事業所には、現場の看護師と経営サイドの中間に立って、両者の意見や要望を「翻訳」して伝えるスタッフがいる場合があります。例えば「売上を伸ばす」「営業する」といったビジネスレベルの表現を「良いケアを実施して、地域で評価され、より多くの利用者に依頼される」「地域で顔の見える関係性を構築して、チームケアの質を向上させる」といった現場レベルの表現に言い換えることによって、専門職にとって受け入れやすい言葉になります。 小規模の事業所だと、そのような人材を探して採用することは現実的に難しいかもしれませんが、その場合は今いるスタッフの中から適任者を探して、実務を通じて「翻訳」技術を学んでもらうことが望ましいでしょう。また、たとえ「翻訳」できるスタッフがいるとしても、事業者自身が専門職の考えや現場の苦労を理解する努力をし、専門職とのコミュニケーションを図る必要があることは言うまでもありません。「訪問看護師にビジネスマインドを持ってもらう」には、まず事業者が「専門職マインドを持つ」ことが、実は一番の近道なのではないでしょうか。 株式会社メディヴァ コンサルタント 内野宗治 東京都出身。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。IT系コンサルティング会社勤務、ニュースサイト編集者、スポーツライター、通信社記者(マレーシア支局)等を経て現職。メディヴァでは、ヘルスケア関連企業の新規ビジネス開発や先進医療の普及・実用化に向けた戦略策定支援、自治体の地域医療拡充サポート、中央省庁の調査案件等に携わる。

コラム
2021年3月16日
2021年3月16日

訪問看護の社長業~創業経営者 水谷氏から学んだこと 経営編~

【第1回】ソフィアメディ(株)創業者水谷氏から学んだ「訪問看護の社長業」(※1)について語ります。  コラム執筆者:一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー/理事長  上原良夫 訪問看護業界の経営基本 現役の頃、私は教育・研修部長まで引き上げていただき、水谷氏から直接幾つもの教えを受けました。 訪問看護事業に限らず訪問診療や介護系事業では、人事部門、教育・研修部門、渉外・営業部門、会計部門の4部門に強いリーダーを配置することが肝心だ、とも教わりました。 訪問看護ステーションの経営サイクルとは 製造業では、モノを仕入れて、加工して製品にし、売れるように商品化して販売します。そしてお金を動かす会計機能が重要ですが、我々の業界では以下のように置き換えます。 モノを仕入れる=優れた人物採用活動の徹底。 加工して製品にする=教育・研修メニューと運営の徹底。 売れるように商品化して販売する=技術は当然、礼儀、礼節、マナー、エチケット、言葉使いなど躾て、地域関係者に宣伝、広報活動を徹底する。 会計機能=事務、請求、回収、分配を徹底。 サービス業の経営視点 今回は人事部門の要領について自分が教えをいただいた内容を披露したいと思います。根本には何処にも真似ができない経営方針書があり、社員には開示して、毎朝朝礼で朗読もしていました。 先ず人事部門の定義は、「人が中心、人で社質が決まります」とその思想が明確であり、初っ端なから腑に落ちる文言がありました。 次には以下のような具体的な方針と手段が明記されています。(ここで伝えたい内容に絞っているため、全てではありません。) ① 募集媒体・イベント・少人数勉強会・体験訪問・採用特典等沢山の智恵を駆使します。通用しない過去手法は捨て、直ぐに次案を創造すること。 ② 就業特典や手当、入社前後の優遇策、女性・子育てに関する時間や立場の優遇策、短時間でも生産性が上がり労使にメリットがある工夫、教育・研修の徹底した差別化対応などの施策をどんどん打っていきます。 ③ SNS、ICTの先行と、有能コンサルタントの活用、隠れた異業種の優良企業との交流も積極的に進めて、井の中の蛙状態にならない。さらなる独自性を強く意識した人事部構造を創ることが大事です。この点、先行投資を惜しみません。 ④ 大学、短大、専門学校、業界団体等に顔を売ること。ある程度の定期訪問と情報交換、ときには会食も交えて人間関係を深めることが大事です。学校の講座やセミナーも引き受けて、直接学生に訴えるような場面をつくることも重要です。 ⑤ NS・PT・OT・STは臨床経験5年以上の中途採用に拘らず、短期の経験でも人間性と専門性を修得してもらい、ロイヤリティの高い人物を採用していきます。 ⑥ 総合職は大学新卒採用を基本としながらも、キャリアが必要なケースは中途採用で年間計画人員を確保します。事務職・介護職は新卒配置と中途採用の両面で対応します。 ⑦ 募集要項・会社の取り組み紹介は、知性と感性の勝負である。正直な内容は当然であるが、文章力、色、見せ方を泥臭くスマートに演出するのが鉄則である。HPは毎週1回、フェイスブックはほぼ毎日の管理が原則です。 ⑧ 肝心要は面接対応力ですが、親身、親切、丁寧、優しい、素敵な笑顔、動画企画が良い、機転・気が利く、前後の連絡が良い、幹部の同席、判断が早いなど全て競合と比較されています。応募者の判断基準は、事前の評判や規模・実績・給料の評価が50%、担当者の人柄、感じの良さ、熱心さが50%です。 いかがでしたでしょうか。訪問看護事業者といえども、全てサービス業の視点で深く追求していたと思います。専門職の狭い了見はなく、英知が散りばめられていました。次回はこの続きと他の部門について、ソフィアメディ(株)創業者水谷氏から薫陶を受けたことを語ります。 一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長  上原良夫  【略歴】 2012年 ソフィアメディ(株)入社。訪問看護事業の営業開発課長・教育研修事業部長・介護事業統括部長・医療連携推進室長を経て、(株)CUCの支援医療法人の訪問診療事務長、在宅事業企画担当。 2020年7月より一般社団法人訪問看護エデュケーションパーラー理事長に就任。訪問看護事業の教育研修企画・ 各種 コンサルティング、業務委託においてアームエイブル(株)ゼネラルマネージャー兼務   【参考】 ※1:水谷和美著「訪問看護の社長業」

コラム
2021年3月9日
2021年3月9日

コミュニケーションスキル(訪問看護指示書)とマネジメントスキル

第2回では、「医師・多職種とコミュニケーションを取るスキル」について解説しました。今回は他職種とコミュニケーションを取るスキルの訪問看護指示書についてとマネジメントスキルについてお話します。 訪問看護師に必要な8つのスキル・知識 ①本人の思い・家族の思いを吸い上げるスキル ②本人・家族の平時の生活を想像するスキル ③他職種とコミュニケーションを取るスキル ④マネジメントスキル ⑤医師のいない場で医療的判断を行うスキル ⑥在宅療養利用者に起こりやすい疾患・状態に対しての看護スキル(工夫力) ⑦医療制度・介護制度などに関しての知識 ⑧礼節・礼儀などを実践できる素養 医師とコミュニケーションを取るスキル【対医師・訪問看護指示書について】 前回の続きとして、コミュニケーションの中では、実地寄りの話になりますが、訪問看護指示書のやり取りについて、お話をしたいと思います。なお、ここでは、前回と同様に同一法人所属ではない医師とのやり取りを想定しています。 訪問看護指示書について、困った経験を持つ看護師さんは非常に多いと思います。私のところにも、訪問看護師さんから「円滑に指示書を記載してもらうには、どうすればよいでしょうか?」という相談があります。その相談の種類はおよそ2つに分けられます。 【代表的な訪問看護指示書に関しての相談】 ・訪問看護指示書を中々記載してくれない(期限) ・記載して欲しい内容が指示書内に書いていない(内容) これらの相談に対して、前回お話した「俯瞰的に物事をみること」に基づいてお答えします。なお、ここでは仮に医師側にその原因がある場合でも、訪問看護師さんが主体となって解決するための方法という視点で考えていきます。訪問看護指示書依頼のコツは4つあります。 【訪問看護指示書依頼のコツ】 1.依頼のタイミングを工夫する 2.依頼の方法を工夫する 3.依頼の必要性を明確にする 4.指示してほしい内容を明確にする それぞれについて、説明していきます。 1.依頼のタイミングを工夫する まず、ほとんどの訪問看護ステーションが実施していると思いますが、出来れば1か月程度前を目途に指示書の記載依頼を出しましょう。その際に、「俯瞰的に物事をみること」に則り、いわゆる一人在支診(医師一人で運営している在支診)のように、事務員がいない診療所に対しては、依頼を出す時間帯を工夫しましょう。 医師側は多忙なため、その依頼事項を失認してしまうことが多いです。少なくとも医師が繁忙な時間を避けて依頼することが良いでしょう。一般的には、お昼の時間帯や16時以降がおすすめです。逆に週初めや週終わりは往診発生率が高くなるため、なるべく依頼は避けるようにしましょう。 2.依頼の方法を工夫する 例えばFAXやメール、ICT等で依頼を出す場合、メールタイトルなどに明確に「訪問看護指示書依頼」といった文言を記載しましょう。さらに可能であれば、「なぜ指示書がすぐに必要なのか」の記載があると、医師側も後工程を意識するため、記載への意識が少し高まることがあります。例えば、メール内容に「次の訪問看護指示期間における訪問予定を立てる必要があるため、指示書が必要」と記載するなどです。 電話等での依頼では中々対応してくれず、直接医療機関に訪問して指示書の記載をお願いしている訪問看護ステーションもあると思いますが、これは業務負荷が高くなってしまいます。 患者側の病態背景的に問題がない場合であれば、最長指示期間(6か月間)で指示書を記載してもらうのもひとつの手でしょう。また、退院時に病院主治医から6か月間の指示期間で訪問看護指示書の記載を依頼することも、同様に有効だと思います。 3.依頼の必要性を明確にする 特別訪問看護指示書の依頼に苦労されている訪問看護ステーションが多い一方で、医師側からは、「○○訪問看護ステーションは、すぐに理由も言わずに特別訪看指示書を求めてくる」という声が上がることがあります。 私自身も何度も特別訪問看護指示書の記載依頼をいただいたことがありますが、やはり指示を出す側としてもその責任を負うため、指示書の必要性をきちんと説明してもらえた方が、対応がしやすいと感じます。これは特に信頼関係の構築が未達の医療機関相手の場合に当てはまります。 つまり、「○○さん(患者)は現在、こういった状況なので、こういった処置やこういった観察のために、訪問看護の頻度を上げたいと考えていますが、いかがでしょうか?」、「ご家族の負担が大きくなっているため、訪問看護の頻度を増やした方が良いと考えますが、いかがでしょうか?」といった形で指示を仰いでもらうと、医師側も特別訪問看護指示に対しての納得が得やすくなります。 ここでもこれまでのコラムでお話した俯瞰力やSBARがその力を発揮してくることになります。仮にこれでも特別訪問看護指示が出なかった場合は、ケアマネージャーに相談し、その必要性を説明しつつ、介護保険での訪問看護回数を増やせないかの相談する流れとなると思います。 4.指示してほしい内容を明確にする 最近は電子カルテ上で訪問看護指示書を作成することが多くなってきているため、どうしても前回指示のコピー&ペーストで作成することが多くなります。そのため、肯定できることではないですが、直近の患者さんの病態が反映されていなかったり、病態変化に伴った指示内容が漏れたりするケースが多くあります。 それらに対しては、訪問看護ステーション側で指示書の下書き、もしくは付箋をつけて、記載して欲しい内容を明確にすることで解決できることが増えると思います。もちろん、下書きを嫌がる医師も多いため、事前に見極めが必要となりますが、少なくとも訪問看護ステーション側が欲しい指示を明確にされることに対して、抵抗を感じる医師は少ないと思います。 マネジメントスキル ここで述べるマネジメントはケアマネジメントではなく、患者さんのために動く多職種で構成されたチームに対してのマネジメントの話が主となります。在宅医療介護現場においては、チームマネジメントが重要ですが、病院等の医療機関内と比較すると、各職種の所属組織が変わるため、やや難度は上がります。しかし、基本的な考え方は在宅医療介護現場も入院等の現場も同じです。 すでにみなさんが実践されていることも多いと思いますが、ここではマネジメントを少し構造化して述べたいと思います。 マネジメントとは何か? 様々な定義がありますが、ここでは「組織(チーム)として、ミッションを達成するための仕組み」として考えます。その上で、在宅医療介護の現場におけるミッションを「いかに患者利益を上げるか」、仕組みを「各職種の働き」と捉えることとします。「患者さんの利益を最大化するために各職種がどう働くか」がマネジメントであり、それを促進させるのがマネージャーです。 ただし、医療介護現場においては一般的な企業と違いマネージャーが明確でないことが多く、裏を返せば、チームメンバー全員が自身の業務範囲の中で、患者利益を追求するマネージャーになり得るし、ならないといけないと考えています。 そう考えると、訪問看護師に必要なマネジメントも見えてきます。つまり、患者利益を最大化するために、自身がアクションするとともに、医師やケアマネージャー、介護職等の他職種にどのようにアクションしてもらうかを考え、それを実行してもらう必要があるのです。 では、どのように具体的にどのようにマネジメントしていけばよいのでしょうか?一般的な流れをご説明します。 【在宅医療介護現場におけるマネジメントの流れ】 1.患者利益を最大化する目標の設定(大項目と小項目の設定) 2. チーム全体で目標大項目の共有、関連職種で目標小項目の共有 3. 目標に基づいた他職種へのアプローチ 1~3を、病態変化や環境変化に応じて再確認/再設定しながら、繰り返す 1.患者利益を最大化する目標の設定 マネジメントにおいて最初にすべきことは、目標設定です。目標設定とは「何が患者利益を最大化するか、明確にする」ことです。ここで必要になるのが第1回のコラムでお話した「本人の思いを吸い上げるスキル」です。本人の思いなくして、利益の最大化は絶対にありません。本人の思いを吸い上げることで、患者利益の最大化が見え、マネジメント目標となるのです。 また目標の具体性については、少しACPの考え方と近くなる部分もありますが、大項目と小項目の設定が必要です。大項目は患者さんがどういった形で日常を過ごしたいか、最期を迎えたいかといったすべての職種と共有すべき目標です。小項目は大項目をもとに作成する、主に自身の業務範囲を中心とした特定の職種と共有すべき目標です。例えば内服の種類が減らしたいという患者さんの思いを訪問看護師さんが吸い上げた場合、それを主に医師や訪問薬剤師とともに、可能な限り内服薬の整理を目指します。 ここで注意してほしいのが、マネジメント目標は患者さんの病態変化、ADL変化、家庭環境の変化等で変わるということです。状況が変わった際には、再度患者さんの思いを吸い上げ、その変化に気付いた場合は、目標を再設定するステップを繰り返しましょう。 2.チーム全体で目標大項目の共有、関連職種で目標小項目の共有 マネジメント目標が定まったら、その共有をしていきます。共有はすでにされている方が多いと思いますが、重要なのが大項目の共有です。患者さんの病態が変化した際に、チームのベクトルを合わせることが出来るか否かで、マネジメントの成否が決まるといっても過言ではありません。 共有の方法は、電話・メール・ICT等、様々なツールがありますが、訪問看護師さんの立場では、可能であれば少なくとも医師やケアマネージャーとは対面や電話等の口頭で伝えるやり方が、最もお互いにその目標を理解しあえると考えています。特に訪問看護師さんならではの目線で設定された目標は医師が気づいていないことがあるため、ぜひしっかり共有していただきたいと思います。 3.目標に基づいた他職種へのアプローチ 共有ができたら、次はマネージャー的な動きとして、いかに目標達成のために他職種に動いてもらうかを考えます。これには多くの方が苦労をされていると思います。絶対的な対策はありませんが、マネジメント目標がしっかり共有できていれば、他職種のアクションにつながることも増えるため、まずは目標の共有を意識しましょう。 しかし、それでも円滑にアクションに繋がらないことも多いと思います。その場合、ここでも「俯瞰的にものごとを見ること」が重要になります。相手がどういった考えを持っているか、どういった行動原理があるかを見極めることができれば、相手に合わせて自身がやり方を変えることができます。結果として、相手に行動を促すこともマネジメントのひとつの方法なのです。 相手の行動原理にある程度あわせて、自身を変えることになりますが、あなたの行動がチームとして患者さんの利益を最大化することにつながります。 例えば、ケアマネージャーが看護師資格保有しているなど医療のことも含めて、マネジメントシップを取れると判断できる場合には、そのケアマネージャーと密に連絡を取りましょう。反対に、もしケアマネージャーが医療については、進んでマネジメントシップを取りたがらないと判断できる場合は、訪問看護師さんが医療についてはハブ機能を担いましょう。 このように相手の考え方やスキルの応じたて判断や適応をすることで、円滑な他職種へアプローチを実践しましょう。訪問看護師さはチームの要となることが非常に多いため、マネジメントスキルを磨くことで、患者利益の最大化をぜひ、目指していただきたいと思います。 本コラム第3回目として、訪問看護指示書に関してのコミュニケーションのコツやマネジメントについて述べさせていただきました。次回は、医師のいない場での医療的判断などについてお話します。 医療法人プラタナス 松原アーバンクリニック 訪問診療医 / 社会医学系専門医・医療政策学修士・中小企業診断士 久富護 東京慈恵会医科大学医学部卒業、同附属病院勤務後、埼玉県市中病院にて従事。その後、2014年医療法人社団プラタナス松原アーバンクリニック入職(訪問診療)、2020年より医療法人寛正会水海道さくら病院 地域包括ケア部長兼務。現在に至る。

インタビュー
2021年3月9日
2021年3月9日

備えがあれば、コミュニケーションでも困らない

前回は、災害時個別支援計画の概要や作成の経緯についてお伺いしました。今回は実際どのようにして支援計画を立てているか佐渡本さんと下園先生にお話伺います。 利用者さんの災害意識の高まりに繋がることも ー先ほどの個別支援計画には「調整担当者」や「家族状況」を記載する欄がありましたが、作成は誰がどのようにしているのですか? 佐渡本: 基本的には、その方に合わせた原案を私たちで作成して持っていきます。その上で「こういう時はどうしようか」と利用者さんと相談しながら決めています。 ご家族や多職種との連携についてはまだ研究途中ですが、実際問題として避難物品を準備してもらう、あるいは連絡方法を考えるときにはご家族の協力が必要です。 ーケアマネジャーさんともお話されているのですか? 佐渡本: 支援が足りない方にはケアマネジャーさんや民生委員さんに入っていただかないといけないこともあります。なので、基本的には利用者さんとご家族を中心として、ケアマネジャーさんにも調整役として協力していただいて作成しています。 ー実際に災害時個別支援計画を運用したケースはありますか? 佐渡本: いえ、まだないですね。災害が起きていないので、実際に使ったことはないです。 下園: でも、意識はちょっと高まってますよね。「災害が起こった時のために準備はしなきゃね」とか「やっぱり私もちゃんと考えた方がいいかしら」と言ってくれる方もいます。 佐渡本: そうですね。避難グッズを準備してくれたり、消火器を点検してくれたり、ガスの元栓を閉めるようにしたり、そういう意識の高まりがありますね。あとは、利用者さんが私たちに対して今まで以上に信頼や安心感を持ってくださっていると感じることもありました。 まだ一部の利用者さんのみで導入しているものですが、今後ステーションとして1つの強みになるのではないかと思っています。 ーステーションの強みというのは? 佐渡本: 例えば、難病の方を担当されているケアマネジャーさんは、災害を気にされていることが多いです。 災害時個別支援計画を作成できるステーションとして、私たちを選んでいただけるようになるといいなと思っています。 地域の連携ツールとしての個別支援計画 ー最後に、災害時個別支援計画の今後の展望についてお伺いできますか? 佐渡本: 様式の基本はできましたが、例えば、医療依存度が高いか、認知機能の低下があるか、介助者がいるかなどの違いによって、作り方は変わってきます。利用者さん、看護師、ケアマネジャーさんや主治医に見てもらいながら、さらにブラシュアップしていきたいと思っています。 ー今後の課題などはありますか? 佐渡本: はい。1つは、現在の個別支援計画は時間をかけて作成していますが、利用者さんにお金をいただいているわけではないので、継続していく難しさがあることです。もう1つは、名古屋は今まで災害が少なかった地域なので、災害への理解を得るのに苦労するケースがあることです。どう浸透させて、継続していくかを今後もっと考えて行きたいですね。 下園: 私は災害時個別支援計画書そのものが、情報共有の連携ツールになると思っています。実は災害時には、利用者さん1人に対して、何人もの人が様子を見に家に行くということが発生しています。限られた時間とマンパワーの中で、すごく無駄な動きをしているんです。 ーそうなんですね。知りませんでした・・・。 下園: この無駄をなくすためにも、誰がどこに行ったとか、どんな状況かという情報を共有できるしくみが必要です。こういった情報共有ができるITツールを、開発してもらいたいなと思います。 また、災害時の避難所の体調不良者への対応など、訪問看護師さんの力をより有効活用していくことができないかとも考えています。地域全体で協力して、色々なしくみを実現していきたいですね。 合同会社Beplace代表 / テンハート訪問看護ステーション管理者 / 感染管理認定看護師・臨床検査技師 佐渡本琢也 臨床検査技師として勤務する中で、患者と接する仕事に魅力を感じ、看護師の道へ。病院では脳神経外科、消化器外科を経験し、感染管理認定看護師の資格を取得。母を癌でなくした経験から「在宅で看護師ができることが、まだあるのではないか」という思いを持ち、同僚からの誘いをきっかけに愛知県名古屋市にテンハート訪問看護ステーションを立ち上げた。 愛知医科大学 医学部衛生学講座 客員研究員 下園美保子 阪神淡路大震災、東日本大震災を経験。東日本大震災では保健師として岩手県山田町の災害救護班の一員として、各家の訪問や避難所運営の管理に従事。その後、学生に対する災害対策マニュアル作成、大学のBCP作成など、災害に関わるプロジェクトや研究にも携わる。

インタビュー
2021年3月9日
2021年3月9日

異業種参入 第四の壁:専門職の教育

セントケア・グループが訪問看護部門の立ち上げたのは、今から約20年前です。拡大するにつれ、ケアの一定の質担保が困難になりますが、自社でアセスメントツールを開発することで、ケアの質を一定に担保する工夫をしています。教育やサポート体制について藤原さんにお伺いしました。 新人でも、ひとりで考える不安が減るツール ―たくさんの専門職がいる中で、どのようにケアの質を一定に保っているのでしょうか? 藤原: ベテランはアセスメントが得意なのは、全体像が見えているからです。 私たちは、新人や若手も必要な項目を入力していくことで、自分のケアを俯瞰的にとらえられるアセスメントツールとして『看護のアイちゃん』を開発しました。 ―具体的には、どんなメリットがあるのでしょうか? 藤原: 例えば、呼吸に異常を発見したが、医師に報告するべきことか迷うという事態は日常的に起こると思います。『看護のアイちゃん』で、報告するべき呼吸数を事前に設定しておけば、通常のケアの中で項目を入力後、フローチャートが出てきて、「報告が必要です」とシステムが教えてくれます。言い換えれば、別の看護師がなぜ医師に報告をしたのかを知りたい時にも、簡単に確認ができます。 ーなるほど。それは安心感がありますね。 藤原: また、毎回訪問看護でみる項目が決まっているので、新人さんでも目の前の何を見たらいいのかと、ひとりで考えなくてはいけない不安が軽減できると思います。 日々の記録はもちろん、計画書や報告書にもクラウド上で情報が反映されるようになっているので、管理者のチェック業務も、かなり楽になりました。 ―そのほかの看護師さんをサポートするしくみを教えていただけますか。 藤原: 採用時の研修は1.5日ほど座学と、1か月の同行研修があり、だいたい3か月でほぼひとり立ちの流れです。 ただ、技術的な部分のフォロー体制はまだ足りていないと感じています。今後は、手技をシナリオに沿って学習できるシミュレーションモデルのようなものも活用して行きたいです。 また、入職された後、中長期的な目標として、認定や専門看護師などのスペシャリスト、管理者のようなジェネラリストのキャリアステップを選べるようなしくみも作りたいと考えています。 ―管理者のチェック業務も楽になったとのことですが、レセプトの処理はどのようにされていますか? 藤原: 本社で集約しています。訪問看護事務という部門があり、そこで医療保険の請求書の間違いがないよう、加算のとり忘れがないように徹底してチェックしてから、レセプト請求しています。部門としては10人ほどいます。ただ、制度に関する相談は、私のいる訪問看護部門に連絡が来ることが多いです。それでもわからなければ、コンプライアンス課や厚労省に直接確認することもあります。 今後は、訪問のスケジュール立てから記録、請求までのすべてが、お客様の情報として管理できるような一気通貫のシステムにしていきたいですね。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)      

インタビュー
2021年3月9日
2021年3月9日

カフェも併設!地域と繋がるステーション

野花ヘルスプロモート(通称 のばな)では、地域住民との交流カフェ「NOBANA SIDE CAFE」や地域の高齢者見守り「みま〜も」を運営し、地域に貢献しています。引き続き、冨田さんにお話を伺いました。 まちの保健室のような本格派カフェ ―のばなさんでは、「NOBANA SIDE CAFE」というカフェも運営されていますよね。どのようなきっかけで始められたのですか? 冨田: 地域の居場所、まちの保健室のようなコンセプトで作りました。 どうしても私たちの職種って、目の前に患者さんやご家族が来られる時には、すでに病気であったり困っていたりする状態のことが多いです。そのため、支援を開始するタイミングが遅くなってしまいます。 そこで、私たちの日頃の仕事を地域の人に知ってもらい「何か困ったら、ここに相談すれば大丈夫や」「ここなら安心や」と思ってもらいたくて、岸和田の商店街のど真ん中にカフェを作りました。 ―カフェがすごくおしゃれで、驚きました。 冨田: 一番大切にしたのは、いわゆるカフェスタイルにすることです。巷では認知症カフェやデスカフェなどもありますけど、本格的にこだわったカフェが作りたかったので、店内のデザインや雑貨はアメリカの古いスタイルのものにしています。 ―カフェはどのような方が来られますか? 冨田: 客層が面白いんです。高齢者も多いですけど、このあたりは喫茶店でモーニングを食べる文化があるのでおしゃれな方もたくさん来ます。周辺でモーニングが食べられる喫茶店が少なくなってきた中で「NOBANA SIDE CAFE」ができたので、憩いの場という役割も担っているようです。 ―カフェではどんな活動をされているのでしょうか? 冨田: カルチャーセンターのような体験活動が定期的にできればよかったのですが、コロナ禍で今はできていないですね。こんな中で地域の方々はどうやって情報を集めるのだろう、と思っていた中で訪問看護だけはずっと直接お宅に伺うことができました。 集まることはできなくても、行って情報を伝えることはできる。これはまさに訪問看護だからできたことかなと思っています。そうはいっても、リアルに集まりたいですね。 本来繋がらないところと繋がれる ―高齢者見守りの「みま~も岸和田」はどのようにして始められたのですか? 冨田: 法人の代表である医師から「地域でできる活動はないか」という相談を受けたんです。みま~も代表の澤登久雄さん(全国に拡大中!地域を支える『みま~も』とは?)と知り合いの看護師がいたので、そのつてでのれん分けをしてもらいました。 みま~もは全国に何か所も活動拠点がありますが、それぞれコンセプトは少し違います。岸和田の場合は高齢者の見守りだけではなく、子どもも交えてスタートしました。 自分が助けてもらいたいときには助けてもらい、自分に余裕ができて助けられるときには助けるという場所を作っています。 ―実際はどのような活動をされているのでしょうか。 冨田: セミナーだけでなく、書道や着付けなど、地域の人が趣味を広げることができるような活動もしています。弊社のスタッフも運営委員として参加はしていますが、地域の人がメインとなってお互い教え合えるように進めています。 運営にはどうしても資金が必要なので、地域の企業に協賛していただいています。協賛企業の中には、この活動から地域のニーズを拾って形にしているところもあります。かゆいところに手が届くような企業は、地域にも愛されるんだなと実感しています。 ―実際に地域のニーズを拾えた例など教えていただけますか? 冨田: 例えば、葬儀屋さんって営業なんてできないですが、エンディングノートの書き方や人の死を悪いものと捉えない面白い話をしてくれたことで、地域の中でファンが増えました。本来だったら繋がらなかったところと繋がることができるんですよね。 ―最後に、訪問看護にかける想いをお願いします。 冨田: 日本全体で看護師の仕事を俯瞰してみたら、働ける場所って昔と比べて変化してきていると思うんです。今まで通りどこの病院でも働けるのは難しくなってくるだろうし、そういう時に訪問看護という選択肢が出てきてほしいです。 病院では「看護師さん」と呼ばれがちですが、訪問看護では「○○さん」と名前を呼んでもらえることで、楽しかったり、使命感だったり、やりがいだったりを感じることができます。自分がどうしたいかではなく、地域に何が必要とされているかを正しく捉えて返していくことですね。 野花ヘルスプロモート代表取締役 冨田昌秀 祖母が看護師だった影響を受けて自身も看護師に。病棟での看護に違和感があり、介護保険施行のタイミングで起業を決意。代表を務める野花ヘルスプロモートは認知症ケアに注力しており、大阪府岸和田市にてケアプランセンター、デイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームを運営。

コラム
2021年3月2日
2021年3月2日

漫画『ナースのチカラ 〜私たちにできること 訪問看護物語〜』に学ぶ、訪問看護という職業の魅力

『ナースのチカラ 〜私たちにできること 訪問看護物語〜』という漫画をご存知だろうか? 2020年4月に単行本第1巻が発売されたこの作品は、義母の介護をキッカケに50歳で新人訪問看護師となった主人公と、彼女を支える訪問看護ステーションの同僚たち、そして利用者や家族の奮闘を描いた物語だ。この漫画を通して、訪問看護という職業の魅力を紐解いていきたいと思う。 コラム執筆者: 株式会社メディヴァ/コンサルタント 内野宗治 事例集のような作品 この漫画は一話読み切りのエピソードで毎回、様々な病状や家庭環境、価値観を有する利用者や家族が登場し、訪問看護師たちが「どうサポートすべきか」と頭を悩ませる。 「自宅で最期を迎えたい」利用者や家族の希望を叶えるため、あの手この手でサポートする訪問看護師たちの姿には胸を打たれるが、美しい話ばかりではない。 80歳代の母親と50歳代の引きこもり息子が暮らす「ゴミ屋敷」をスリッパ持参で訪問したり、末期の乳がんを患う女性の夫が妻の介護に疲れてうっかり他の女性と浮気してしまったり、といった妙にリアリティあるエピソードも読み応えがある。 この漫画の作者、広田奈都美さんは、自身が病棟、訪問のいずれも経験している看護師であり、前作に当たる『おうちで死にたい 自然で穏やかな最後の日々』もやはり訪問看護を題材にした作品だ。 訪問看護に関する制度やお金についての専門的な話や、在宅療養において重要なACP(アドバンス・ケア・プランニング)の話などもあり、ストーリーを楽しみながらも訪問看護について多角的に学べる、よくできた事例集のような作品になっている。 「利用者や家族の「生活」や「人生」に寄り添うのが在宅」 これらの作品を通じて描かれているのは、訪問看護という仕事が単に患者の「病気」を見るのではなく、利用者や家族の「生活」や「人生」に寄り添い、支えるものであるということ。そして、利用者の数だけ異なるサポートの形があるということだ。 たとえば、末期癌を患った男性の妻が、夫の病状を心配する余裕もないほど、お金の不安で頭が一杯になってしまうというエピソードがある。 夫の治療費、子供たちの進学費用、微々たる貯金とパートタイムの仕事で得る給料・・・助成金や保険金をもらえるならもらいたいが、何がどうなっているのかよくわからない。そんな彼女を見かねた訪問看護師が、家にある「お金に関する書類」を全て集めるよう提言し、役所や保険会社にひとつひとつ問い合わせていく。その結果、「これだけ稼げば、何とかやっていける」という目処が立ち、ひと安心したところで女性は初めて涙を流す。 現実には、訪問看護師がここまで介入するケースは多くないかもしれないが、在宅療養者にとって比較的身近な存在である訪問看護師は、利用者や家族にとっての「相談窓口」的存在になることも多いだろう。いわゆる「看護」業務の枠を超えて、利用者や家族を多面的にサポートする仕事が多くなりやすいことは、訪問看護という仕事の大変さであり、同時に醍醐味であることが伺える。 「家族固有の問題」ではなく「社会全体の課題」 「在宅の基本は家族です。あくまで家族がお世話するのをお手伝いするのが在宅なんですよ」 このセリフは、作中に登場する訪問看護師が発するものだ。 もちろん、家族がいない独居者や、訳あって家族の支援を受けられない人もいるので、必ずしも「家族がお世話するのをお手伝いする」ことが訪問看護師に求められるわけではない。だが、病院の入院患者と比べ、在宅患者は家族と過ごす時間が長く、家族のサポートが必要となるケースが多いこともまた事実だ。 現状は、家族が主体でケアをしていることが多いので、その本人と家族のケアのやり方を尊重するのが大切だと、このセリフは教えてくれる。 介護保険制度が創設されるまで、介護を主に担ってきたのは家庭・家族だった。その後、「家庭・家族が担ってきた介護を社会共通の課題として認識し、実際の介護(ケア)を担う社会資源を、税と保険料を中心に拠出された財源によって社会全体が担っていくもの」という考えに基づく介護保険サービスが導入されたことによって、在宅医療を「家族固有の問題」ではなく「社会全体の課題」として捉え、社会全体で支える「介護の社会化」が進んだ。 このような背景から、在宅の主役は「在宅療養者・家族」であり、主役を支えサポートすることが訪問看護師や在宅療養に関わる専門職の役割なのだと言える。 『アンサング・シンデレラ』の次は訪問看護師? 訪問看護師の不足は、日本の訪問看護業界における主要な課題のひとつだ。 厚生労働省が2019年に推計(※1)したところによると、2025年に日本全国の看護職員は6〜27万人不足する見込みで、特に訪問看護師の不足が懸念されている。また、日本看護協会の発表(※2)によると、2018年における訪問看護ステーションの求人倍率は2.91倍で、病院や介護老人福祉施設(特養)を抑えて、最も求人倍率の高い(求人数に対して求職者が少ない)施設となっている。 訪問看護師の数を増やすには、適切な制度や教育、キャリアパスの設計に加えて、訪問看護師という職業の魅力が世の中で広く認知され、「訪問看護師になりたい」という人が増えていくことが重要だろう。もしかすると、『ナースのチカラ』や『おうちで死にたい』を読んで訪問看護師を目指す人も、今後出てくるかもしれない。 病院薬剤師が主人公の漫画『アンサング・シンデレラ』は今年、石原さとみの主演でテレビドラマ化されたが、訪問看護師が主役のドラマは生まれるだろうか? 株式会社メディヴァ コンサルタント 内野宗治東京都出身。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。IT系コンサルティング会社勤務、ニュースサイト編集者、スポーツライター、通信社記者(マレーシア支局)等を経て現職。メディヴァでは、ヘルスケア関連企業の新規ビジネス開発や先進医療の普及・実用化に向けた戦略策定支援、自治体の地域医療拡充サポート、中央省庁の調査案件等に携わる。 【参考】 ※1:医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(概要) ※2:2018年度 「ナースセンター登録データに基づく 看護職の求職・求人・就職に関する分析」 結果

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