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インタビュー
2021年3月2日
2021年3月2日

もしもに対応できる!災害時個別支援計画

テンハート訪問看護ステーションでは、愛知医科大学の下園先生と共同で、利用者さんごとに個別で災害時個別支援計画を作成し、「もしも」に備えています。具体的な支援計画の作成方法と共同開発することになった経緯を伺いました。 「ぱっと見て、さっと動ける」がコンセプト ーどのような経緯で、訪問看護ステーションと大学が共同で災害時個別支援計画を作ることになったのでしょうか? 佐渡本: 経緯としては、まず自分たちで一般的な訪問看護ステーションの災害対策マニュアルを作って、模擬訓練をやっていたんです。でも実際訓練をしてみると、利用者さんそれぞれの状況や環境がかなり異なっていて、制作したマニュアルが現実的ではないと気づきました。 ー現実的でないというのは? 佐渡本: 実際震災が起きたときに自分たちがどう動くかが見えない、概念的なマニュアルになっていたんです。 災害が起きた時に誰がどう動くか、何をするかが具体的に書いてあるマニュアルを作りたいと思いました。下園先生とは元々懇意にしていて、たまたまこの話をしたところ、興味を持っていただきました。 下園: 実は私の研究室の学生が、難病で在宅療養している方の災害対策に強い問題意識を持っていて、災害時個別支援計画の研究をしていたんですね。佐渡本さんと話した時に「実はこんなことを学生がやってて」と言ったら「うちもこんなことに困ってて」というお話があったので、そこでマッチしたのがきっかけです。 ー偶然にもお互いの課題が一致したんですね。 佐渡本: この偶然をきっかけに、下園先生に災害対策マニュアルの作成に協力していただくことになりました。 災害時の動き方を全部網羅できるわけではないけれど、1つのツールとして災害時個別支援計画を作成してはどうかという話になったんです。 ー具体的にどのようなことが記載されているのでしょうか? 佐渡本: 災害が起きた際に利用者さんご自身が「ぱっと見て、さっと動ける」ために必要なことを書いています。訪問看護師や行政が動くことが難しい中でも、ご利用者さんが1人でも生き延びるためのものです。避難所に避難される方であれば避難所に行くまでの動き方、自宅避難の方であれば自宅で生活できる環境の整え方を記載しています。 下園: 個別支援計画を作成することはステーションにとってもメリットがあります。1つは、災害が起きてもやることが決まっているため焦らず対処できること、もう1つは責任の範囲が明確化されることです。 ー責任の範囲の意味を教えて下さい。 下園: 例えば、訪問看護に向かう道中に震災が起きたとします。災害時の行動を決めておかないと、「待っていたのに看護師さんが来なかった」ということになるリスクがあります。 ーリスク回避のためにはどうしたらよいでしょうか? 下園: 個別支援計画で、災害時に利用者さんは何ができるか、何をする予定かが決まっていれば、あらかじめ利用者さんやご家族に説明しておけます。災害が起きた際は「看護師は自分の身の安全確保を最優先し、訪問へは行きません。訪問が終わって帰る道中でも同様です」ということも事前に説明しておけば トラブルを未然に防ぐことができます。 被害の想定まで行うことで具体的な行動レベルに ー実際の災害時個別支援計画を見せていただけますか? 佐渡本: はい、改良を続けているので今は少し違うものになっていますが、こちらが2019年に学会で発表したときのものになります。 下園: 各項目について簡単に説明しますね。 「調整担当者」は利用者さんの全体状況を見通してマネジメントできる方、「家族状況」は実際に連絡がつき動けるご家族を明記します。 この2つの項目は、被災時に訪問看護ステーションが動けなかったとしても、自分自身で行動するのに必要な情報です。「想定被害」は、利用者さんの家の場所と想定震度から被害を想定したものです。 この被害の想定には、名古屋市が出している液状化危険度マップや津波到達時間想定マップを利用していますが、この作業がとても大変なのが今の課題です。 ー想定は、大変でも必要不可欠な要素なんですね。 下園: きちんと想定ができていないと、どこに避難すべきか、何をすべきかを決めることができません。そのほか、裏にはかなり細かく具体的な行動を書けるようになっており、悩まず行動ができるように工夫しています。「想定被害」の記載があることが、私たちの災害時個別支援計画の大きな特徴だと思います。 合同会社Beplace代表 / テンハート訪問看護ステーション管理者 / 感染管理認定看護師・臨床検査技師 佐渡本琢也 臨床検査技師として勤務する中で、患者と接する仕事に魅力を感じ、看護師の道へ。病院では脳神経外科、消化器外科を経験し、感染管理認定看護師の資格を取得。母を癌でなくした経験から「在宅で看護師ができることが、まだあるのではないか」という思いを持ち、同僚からの誘いをきっかけに愛知県名古屋市にテンハート訪問看護ステーションを立ち上げた。 愛知医科大学 医学部衛生学講座 客員研究員 下園美保子 阪神淡路大震災、東日本大震災を経験。東日本大震災では保健師として岩手県山田町の災害救護班の一員として、各家の訪問や避難所運営の管理に従事。その後、学生に対する災害対策マニュアル作成、大学のBCP作成など、災害に関わるプロジェクトや研究にも携わる。 災害対応についてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

インタビュー
2021年3月2日
2021年3月2日

異業種参入 第三の壁:お客様獲得

事業規模の拡大には、専門職の確保とともに継続的にお客様の確保が必要です。オープン当初のステーションにも真似できる、営業戦略の立て方と営業のコツを藤原さんに伺いました。 データを活用した、綿密な計画 ーセントケア・グループの営業戦略を教えていただけますか? 藤原: 訪問診療をやっている医師が強い、ケアマネさんが強いなど、地域によって特徴があります。お客様獲得には、こういったデータをもとに戦略を立てることが大切です。 セントケアでは、以下の手順で営業戦略を決めています。 1. お客様獲得が必要なエリアを選定 2. 該当エリアにある訪問先リストの作成 3. データをもとに各訪問先に対し、「誰が営業に行くか」「どういったことを話すか」を会議で決定 特に3については、その施設にいる方の性質まで考えた上で、誰が行くべきかを決めています。営業先の中で特に重要だと思っているのが、病院です。訪問看護の指示を出すのは医師なので、医師との信頼関係は、継続的なお客様獲得にとって重要なことだと思っています。 ー病院への営業というのは、具体的にどのようなことをされるのでしょうか? 藤原: 具体的な営業方法はシンプルで、看護師が定期的に病院に伺うようしています。 そうすると、どの病院でどんな患者さんが退院されるのかがわかるようになってきますし、退院調整室と顔見知りになれます。 そこで相談してもらい、退院前のカンファレンスに参加することができれば、主治医との信頼関係を作ることができます。医師との信頼関係があれば、退院後のやり取りもスムーズになるので、お客様の安心にもつながっていると感じます。こういった戦略は各子会社の事業部と本社の私達が一緒に考えています。 ー看護師さんの中には、「営業が苦手」という方も多いかと思いますが、どのようにサポートしていますか? 藤原: 本社から現場の悩みに対応したアドバイスをしています。例えば「ケアマネさんへの営業で、初回にセントケアの良いところをアピールし終わってしまうと、二回目以降の訪問に行きづらいです。どうしたら良いでしょうか?」というお悩みがありました。 これには「アピールだけでは、うまく行きません。今、ケアマネさんがどんなお客様を担当されているかを聞いた上で、困ったことがあれば相談してもらえる関係性を作るといいですよ」とアドバイスしました。 ーなるほど。ちょっとしたことかもしれませんが、すごく納得しました。 藤原: ほかにも「来週お答えを持ってきますね」と言えば、次につながりやすいなど、今まで上手くいった例をお伝えする役割を本社で担っています。 また営業の際に活用できる、お客様の病気や状態への対応方法の事例をまとめたチラシも現在では50種類くらい用意しています。 ー50種類も!チラシはどのように活用されているのでしょうか? 藤原: 活用方法としては例えば、胃ろうを作った直後のお客様の家族が、今後のこと心配している状態であれば、「訪問看護ではこういうケアをしていきますよ」とチラシを使って説明して、ケアを実際にイメージしてもらっています。こういったお客様に安心してもらう工夫の積み重ねが、セントケアの価値を高めていくと思います。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)    

インタビュー
2021年3月2日
2021年3月2日

地域の強みを活かし合う「見える事例検討会」とは

地域全体の底上げをするため、のばなでは「見える事例検討会」を実施しています。実際にどんな人が参加して、どのように行われているのでしょうか。引き続き、冨田さんにお話を伺いました。 見えることで伝わる思い ー見える事例検討会をはじめたきっかけを教えてください。 冨田: 病床数が減ってスムーズに入院できないこともある中で、在宅生活をどう支えていくかに強く課題を感じていました。そこで必要だと思ったのが、多職種で知恵を共有し連携を図ることです。 どんな方法がいいか試行錯誤した結果、「見える事例検討会」に辿り着きました。 ーどんな試行錯誤をされたんですか? 冨田: これまでは自分たちの活動や思いを可視化できる機会がありませんでした。それが劇場型というか、勉強会という形で「見える」ようにしたことで自分たちの思いが伝わるようになりました。 名刺交換をしたらネットワーク広がった気になることもありますが、名刺交換した人がどういう思いで利用者さんと関わっているかを知る機会はなかなかありません。それが、ひとつの事例を通していろんな意見を出していくと見えてくるんです。 ー名刺交換のお話、確かに!と思いました。参加されている方の反応はいかがですか? 冨田: お互いの考えが見える場所として、同じように実感してくれているようです。 見える事例検討会の目的は「援助技術の向上」「事例の課題解決」「ネットワークの構築」です。参加者は医師、看護師、そのほかの医療従事者、ボランティア、民生委員、お寺の住職、行政の方なんかも来ますが、一番多いのは、訪問看護ステーションさんですね。 ーお寺の住職さんまでとは幅広いですね。訪問看護ステーションにとってはどのようなメリットがあると感じますか? 冨田:参加者が自分たちの意見を出すことにより、福祉関係者や行政の人たちから「この訪問看護ステーションは、こういう考えでやっているのか」と認識してもらえます。まず知ってもらうことで、次の関係に進んでいくことができると思いますね。 多職種の強みと弱みを生かせる地域へ ー見える事例検討会は具体的にどのように実施されているのでしょうか? 冨田: 検討会は「見え検マップ」というマインドマップを中心に進行しています。まずAさんという方に関して病気、家族構成、生活状況、課題などの事例を提供されます。参加者が「ここはどうですか?」など質問をして、答えられた情報をマップに追記していく流れです。 ホワイトボードに書き足していくことで全体像が視覚的に見えるようになります。そして、事例に関わっている方が見落としていた部分や自分たちの強みにも気付くことができます。 ー具体的にどんな気づきがあるのか、聞かせてください。 冨田: 例えば、看護師さんが参加されていると質問内容は薬や持病など医療的なものがどうしても多くなりがちです。一方、ケアマネジャーさんなど他の職種からは地域住民との関わり、経済状況などについての質問が上がってきます。 専門と専門外のように「強みと弱み」を補っていけるような知恵の共有ができていきます。お互いに「ここは協力しなければ」という気持ちになりますね。 ー自分と違う職種の人がいるからこそ、気づけることがあるんですね。 冨田: はい。他にも、権利擁護の使い方が分からなかったケアマネジャーさんに士業の方がアドバイスできたこともありました。地域包括支援センターの方が地域の社会資源を知り、ないものは行政としてどう作っていくか、考える材料として持ち帰ることもあります。 ー見える事例検討会は今後の目標などはありますか? 冨田: 地域力の底上げのためにファシリテートしていければと思っています。 実は見える事例検討会の発祥は横浜なんです。医師と社会福祉士の方が立ち上げ、その方々から研修を受けました。現在は日本全国に見え検トレーナーの養成講座を受けた方がいて、地域ごとに行われています。 ー冨田さんは何年前から、見える事例検討会をやられているんですか? 冨田: 僕たちが見える事例検討会を始めたのは2014年です。開催回数も80回を超えました。在宅を軸に働かれている多職種の方や看護学生の間でもスタンダードになるまで続けていきたいと思っています。 野花ヘルスプロモート代表取締役 冨田昌秀 祖母が看護師だった影響を受けて自身も看護師に。病棟での看護に違和感があり、介護保険施行のタイミングで起業を決意。代表を務める野花ヘルスプロモートは認知症ケアに注力しており、大阪府岸和田市にてケアプランセンター、デイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームを運営。 地域で活躍する訪問看護ステーションについてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

コラム
2021年2月24日
2021年2月24日

コロナ禍でも7割の訪問看護ステーションが収支悪化せず?訪問看護業界の現況

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行は、世界各地の経済、ビジネスに大打撃を与えている。医療業界も、多くの病院やクリニックで外来患者が激減し、経営難に陥っている医療機関も少なくない。そんな中、「家」でサービスを提供する訪問看護業界は比較的、昨今のコロナ禍、「ステイホーム」の世の中でも好調と言えそうだ。 コラム執筆者: 株式会社メディヴァ/コンサルタント 内野宗治   7割以上はコロナで収支変化なしまたは増加 公益財団法人日本訪問看護財団が2020年10月19日に発表した「第3弾 新型コロナウイルス感染症に関するアンケート(※1)」によると、アンケートに回答した訪問看護ステーションの74.5%が2020年8月の収支状況について、前年同月(2019年8月)と比べて「変化はほとんどない」「1 割以上増加」と回答した。 アンケートに回答したステーションは計149施設と、限られたサンプル数ではあるものの、7割以上のステーションが「ウィズコロナ」の現在でも収支状況が悪化していないという事実は、訪問看護のニーズが根強いことを示唆している。 ちなみに日本全国が緊急事態宣言下にあった5月の収支状況についても、68.5%のステーションが前年同月と比べて「変化はほとんどない」「1 割以上増加」と回答。6月は74.5%、7月は75.2%と、いずれも75%前後の水準を維持している。病院の約8割がコロナ禍で経営悪化したとも報じられている(※2)のとは対照的だ。 訪問看護利用者は増え続けている 日本の訪問看護業界は、在宅療養の普及に伴い、ここ20年ほど右肩上がりの成長を続けている。厚生労働省の公開資料(※3)によると、2017年の日本における訪問看護の利用者数は、介護保険適用者が約46万人、医療保険適用者が約23万人となっている。 2001年の利用者数と比べると、介護保険適用者は2.5倍、医療保険適用者は4.7倍に増えた。ニーズの増加に伴う形で、訪問看護ステーションの数も増えている。全国訪問看護事業協会の調査(※4)によると、日本全国にある稼働中の訪問看護ステーション数は2010年時点で5,731件だったが、2020年4月時点で11,931件と、直近10年間で倍増以上となった。 課題は人手不足 業界全体が伸び盛りである一方、急成長中の業界だからこその問題もある。ひとつは「人手不足」だ。厚生労働省が2019年に推計(※5)したところによると、2025年に日本の看護職員は6〜27万人不足する見込みで、中でも訪問看護師の不足が懸念されている。 また、日本看護協会の発表(※6)によると、2018年における訪問看護ステーションの求人倍率は2.91倍で、病院や介護老人福祉施設(特養)を抑えて、最も求人倍率の高い(人手を必要としている)施設となっている。訪問看護師の絶対数こそ増えてはいるものの、「急増するニーズに追いついていない」というのが実態のようだ。 訪問看護が複雑化し、リハビリ中心に 在宅療養患者が小児から末期がん患者まで多様化する中で、単に看護師の数が足りないというだけでなく、訪問看護師に求められる知識や能力が複雑化していることも伺える。 訪問看護師が不足している状況もあり、実際には看護師ではなくリハビリ職員による訪問看護が主となっているステーションもある。前出の厚生労働省発表資料によると、訪問看護ステーション従事者に看護師が占める割合は、2001年には91%だったが2017年には71%まで低下。 代わりに理学療法士等(作業療法士、言語聴覚士を含む)の割合が5%から22%へと増加している。 診療報酬改定の見直し対象に 厚生労働省によると、リハビリ職員の割合が多いステーションは「24時間対応体制加算」の届出が少ないといった特徴がある。この問題は、2018年の介護報酬改定、及び2018年と2020年の診療報酬改定において見直しの対象となり、理学療法士等による訪問看護の単位数引き下げや、看護職員とリハビリ職員の連携を要件化するといった対応が取られた。2021年の介護報酬改定に向けた議論でも、リハビリ職員による訪問看護の扱いは主要な論点のひとつとなっている。 看護職員の割合に応じた報酬体系への変更 2020年10月22日に行われた厚生労働省の社会保障審議会(介護給付費分科会)(※7)では、次期介護報酬改定に向けて「看護職員の割合や看護職員による訪問割合に応じた報酬体系への変更」などを提案する声が上がった。また、8月3日の介護給付費分科会における事業者ヒアリングでも、日本訪問看護事業協会から「看護体制強化加算について、看護職の人員基準を設け、看護職が全体の60%以上とする要件の追加」という要望もあった。その他、2021年介護報酬改定における、訪問看護を巡る主な論点としては「退院当日の訪問看護費算定」や「在宅療養を支える訪問看護提供体制の強化(看護体制強化加算)」などがある。 さいごに これらの要望が実際の改定にどこまで反映されるかは未知だが、訪問看護について「看護職員による、手厚い訪問看護の実施を評価していこう」という大きな流れがあることは確かだろう。この流れを追い風に、業界全体が今後さらに発展していくことが期待される。 株式会社メディヴァ コンサルタント 内野宗治 東京都出身。国際基督教大学教養学部社会科学科卒業。IT系コンサルティング会社勤務、ニュースサイト編集者、スポーツライター、通信社記者(マレーシア支局)等を経て現職。メディヴァでは、ヘルスケア関連企業の新規ビジネス開発や先進医療の普及・実用化に向けた戦略策定支援、自治体の地域医療拡充サポート、中央省庁の調査案件等に携わる。 【参考】 ※1:第3弾 新型コロナウイルス感染症に関するアンケート~感染症発生状況と経営に及ぼす影響~ ※2:(NHK WEB)約8割の病院で経営悪化 新型コロナで外来や入院の患者数減少 ※3:訪問看護䛾利用状況等について ※4:訪問看護ステーション数調査 ※5:医療従事者の需給に関する検討会 看護職員需給分科会 中間とりまとめ(概要) ※6:2018年度 「ナースセンター登録データに基づく 看護職の求職・求人・就職に関する分析」 結果 ※7:訪問看護の報酬・基準について(検討の方向性)

インタビュー
2021年2月24日
2021年2月24日

感染管理認定看護師に聞く、新型コロナの感染対策

テンハート訪問看護ステーション管理者の佐渡本さんは「感染管理認定看護師」の資格をお持ちです。訪問看護ステーションでも参考になる、新型コロナウイルス感染症をはじめとした感染症予防で気をつけるべきことについて伺いました。 在宅でも気をつけたい、個人防護服の管理 ー新型コロナの疑いの利用者さんがいる時はどうしていますか? 佐渡本: まずは、訪問に行くか行かないかは主治医と相談して決めています。以前、利用者さんで新型コロナ感染疑いの方がいたのですが、その時は主治医と相談してサービスを一旦停止しました。 熱がある患者さんを訪問する時は、しっかり個人防護具を着て、マスクやフェイスシールドをつけて対応しています。ここでひとつ見落としがちなのが、個人防護具を外す時の感染リスクです。 ー「個人防護具を外す時」ですか。 佐渡本:   例えば、手袋を外す時やマスクを外す時に、不潔な部分に触れて手などにウイルスが付着してしまうことがあります。ですので、個人防護具を「つけているから大丈夫」ではなく「外して、破棄して、手洗いする」ところまでやって、はじめてきちんした感染症対策になると思います。 ー個人防護具を扱う際の注意点など、詳しく聞かせてください。 佐渡本: 個人防護具を外すタイミングは、利用者さんと2メートル以上離れた、部屋の出口や玄関先でいいと思います。その際も、脱いだエプロンで手や周囲を汚染しないように注意してもらえればと思います。 もうひとつ可能であれば実践してもらいたいのが、新型コロナに感染した疑いの利用者さん自身にもマスクを着用していただくことです。言わないとマスクをしてくれない利用者さんも多いかと思いますが、お互いにマスクをしていれば感染のリスクは下がります。 訪問看護師の持ち物も清潔に ー新型コロナ感染症に限らず、普段の感染症対策で大切にしていることを教えてください。 佐渡本: スタンダードプリコーション(標準予防策)は徹底しています。手洗いとか咳エチケットですね。 あとは物品の取り扱いですね。体温計とか血圧計など、利用者さんごとに消毒して綺麗にリセットすることを徹底しています。 ーこれは見落としがち、というものはありますか? 佐渡本: 在宅ではあまり問題視されていないのですが、気を付けないといけないと思うのが、多剤耐性菌です。 多剤耐性菌は健康な私たちには悪さをしませんが、高齢の方にはリスクになる菌です。 処置後の手洗いはもちろんですが、菌を次の家に持ち運ばないように気をつけるよう、いつもスタッフに指導しています。 また、訪問バッグの中の物を清潔に管理するのも訪問看護師として大事なことだと思います。 訪問バッグ自体も、もし床面に置いた場合は拭くなどして綺麗にしておいた方がいいと思います。 ステーションが全滅しない感染対策を ー最後に、感染管理認定看護師として他のステーションへのアドバイスなどあればお願いします。 佐渡本: ステーション運営の上で重要だと思っているのは、仮にスタッフに新型コロナウイルス感染症の陽性者が出たとしても、ステーションが全滅しない対策を取ることです。 例えば陽性者が1人出た時、保健所から「スタッフ全員が濃厚接触者です」と言われてしまったら、2週間休業になってしまいます。もし陽性者が出ても、濃厚接触者には当たりません、と言ってもらえるような対策を常に取っておくことが大事だと思います。 あとは、プライベートでも気を抜かずにスタッフみんなが予防を意識することも必要です。 ー万が一感染してしまった場合はどうしたらいいでしょうか? 佐渡本: どれだけ細心の注意を払っていても、感染してしまうことはあると思います。 実際に自分やスタッフが感染しても慌てないように、あらかじめ起こりうることを想定して、対策を具体的に考えておきましょう。これは災害対策も一緒ですね。 例えば、利用者さんとスタッフの体温をチェック表に毎日書いて管理するなども有効だと思います。見える化されていることで、早期に異常を発見できることもあると思います。 合同会社Beplace代表 / テンハート訪問看護ステーション管理者 / 感染管理認定看護師・臨床検査技師 佐渡本琢也 臨床検査技師として勤務する中で、患者と接する仕事に魅力を感じ、看護師の道へ。病院では脳神経外科、消化器外科を経験し、感染管理認定看護師の資格を取得。母を癌でなくした経験から「在宅で看護師ができることが、まだあるのではないか」という思いを持ち、同僚からの誘いをきっかけに愛知県名古屋市にテンハート訪問看護ステーションを立ち上げた。   新型コロナ感染症対策についてもっと知りたい方は、こちらの特集記事をご覧ください。

インタビュー
2021年2月24日
2021年2月24日

異業種参入 第二の壁:マネジメント

異業種から参入した経営者が開業後に課題を感じるのが、看護師とのコミュニケーションの難しさです。 セントケア・グループが業界トップクラスの97事業所までに拡大したのは、経営と現場の間に立つ藤原さんの存在が大きかったようです。看護師マネジメントのポイントと、今後の拡大計画について伺いました。 経営者の実現したいビジョンを心に届く形で ―異業種から参入するにあたり、最大の課題は何だと思われますか? 藤原: 看護師のマネジメントが一番の課題となると思います。 中には利益や数字の話に拒否反応を示す人も多くいるので、経営サイドからの売り上げや管理の話をどう現場に落としていくかは、頭を使う部分です。 例えば、売り上げを何割か上げるという場合でも、「そのためにはどのくらいお客様が必要か」「たくさんのお客様に求められる看護師であるために何ができるか」と自分の中で落とし込んでから現場に説明することで、衝突を避けることができると感じます。 ―藤原さんはご自身も看護師でいらっしゃいますが、どのような思いがありますか? 藤原: 私自身は、前職で勤め先のステーションが閉鎖した時にセントケアに助けていただいた恩があるので、どうやったら会社に貢献できるかという視点で常に考えるようにしています。 ―セントケア・グループは97か所という多くのステーションを運営していますよね。マネジメントがうまくいっている秘訣は何でしょうか? 藤原: セントケアは創業時から訪問入浴をやっていて、看護師をマネジメントした経験があったことで、訪問看護事業所をスムーズに開設できたと思います。最近また、当社のステーション数は右肩上がりになっておりますが、これは全国を一括で私たちの部門が支える体制を作れているからだと思います。 ―具体的にはどんなことに取り組まれていますか? 藤原: 具体的には、本社で事業のシミュレーションやマニュアル作りなどを、看護師や保健師、歯科衛生士などの専門職が行い、それを全国のステーションに共有しています。地域会社にもエリアの担当者を置いていて、私たちとのやりとりもスムーズに行える体制です。 また、訪問介護や施設などのセントケア・グループの名前が知られているエリアで、ケアマネさんがいて訪問看護がほしいというニーズがあるところで立ち上げているのも大きいと思います。 ―セントケア・グループとしては、今後どういった事業に注力していきますか? 藤原: 訪問看護や看護小規模多機能型居宅介護などの医療に近いところの事業を拡大、積極投資していこうとしています。特別に一定のエリアに集中的に注力するわけではなく、それぞれの地域のニーズや市場性に合わせて、例えば精神や小児の訪問看護、自費サービスなども展開して行きたいです。 セントケア・グループとしては入り口がどのサービスであっても「介護保険に関するサービスなら、セントケアに任せたい」と思ってもらえるような会社でありたいですね。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)  

インタビュー
2021年2月24日
2021年2月24日

当事者の思いを大事にする認知症ケア

のばなでは、認知症の方々が安心して生活できる社会を目指し、認知症に特化した取り組みを進めています。どのような思いや体制のもとで認知症ケアを実践されているのでしょうか。引き続き、冨田さんにお話を伺いました。 本人の思い、確認してますか? ―のばなさんは認知症ケアのイメージが強いのですが、どのような経緯で認知症に力を入れるようになったんですか? 冨田: 認知症にフォーカスを当てたのは、認知症が進んでいくと、どうしても家族の意見が強くなってしまい、当事者の思いが置き去りにされてしまいがちという課題を感じたからです。 多職種連携の中で生活を支えるとなると、ご家族のニーズが優先されて、それで問題ないように感じてしまっていました。 そこでふと「当事者の思いがきちんと確認できているか」という視点が漏れていたことに気づいたんですね。それに気が付いてからは、常々「本人の思いって確認できてる?」と振り返るような形でケアをするようになりました。 ―具体的にどのようにご本人の思いを確認されているのでしょうか? 冨田: 当事者のこれまでの生い立ち、どういった生活をされてきたか、当事者や家族の思いを伺っています。 今まさに困っていることだけを聞くのではなく、認知症になる前はどんな性格だったのか、どんなことを大切にされていたのか。これらを言葉にして、できないことばかりを集めるアセスメントではなく、「これはできるかも」という部分を一緒に探していきます。 定期的に行う社内研修や事例検討会でも、こういったやり方を共有しています。 看護師だからこそ受け入れてもらえることもある ―冨田さんはきらめき認知症トレーナーという資格をお持ちと伺いました。具体的にどのような実践をされているのですか? 冨田: 資格勉強で学んだことは、本人の思いはもちろん「本人の居心地を大事にすること」です。それを表情などからチェックするスケールで評価します。 言葉で意思疎通がうまくできない状態でも、泣いたり、怒ったり、表情に関わり方の結果が必ず出てきます。これは医療従事者が活用するだけではなく、家族へも伝えて、家での環境や関わり調整にも役立ててもらっています。 ―表情を注意深く観察するんですね。やっていてうまくいかないケースもありますか? 冨田: ひとつ難しいことがあります。それは、私たちとの関係の中ではうまくいったことでも、家族とはまた別の関係性があるので、同じことを家族でやってもうまくいかないことです。 例えば、利用者さんの仕事上の呼ばれ方で声を掛けると、話がすごくスムーズになったことがありました。でも、家族が利用者さんを仕事上の呼び方で呼べるかというと、そうはいきませんよね。 第三者だからこそ気づいて実践ができる、看護師だから受け入れてもらえることもあるんだと思いました。 利用者さんの安心をつくる ―居心地を大切にするアプローチをすることで、気持ちが落ち着いて、症状も改善されていくのですね。 冨田: 認知症ケアのキーワードは「安心を与えること」だと思っています。反対に、不安や焦りは認知症の症状を悪化させてしまいます。自分たちであっても、できないことを強要されると焦ったり不安になったりしますよね。 ―確かにそうですね。具体的に「安心」とはどういうことなんでしょうか? 冨田: 「安心」とは、できることを見つけることです。利用者さんの過去の行動から、何ができるかを見つけ、それをしてもらうことで、利用者さんは安心できます。そして安心した環境をつくった中にスタッフがいると「この人たちは安心だ」と感じてくれます。 認知症ケアに正解はないと思いますが、今は手探りながらも、これが一番いい形かなと思っています。 ―のばなの訪問看護では、やはり認知症の利用者さんが多いのでしょうか? 冨田: 最初は認知症に特化していましたが、最近は医療依存度の高い方で、かつ認知症がある方の紹介がすごく多くなっています。 急性期や慢性期、精神科も看取りもできて、認知症も看られることがのばなの強みです。 今後は在宅がメインとなり、「ほとんど在宅ときどき入院」という時代がくると言われている中で、他の疾患と認知症を併発する利用者の数は増えてくると思います。 多職種の方にも、認知症に備えることは避けて通れない、という話は必ずしています。認知症が看られなかったら、ケアもできないのではないかと思っています。 野花ヘルスプロモート代表取締役 冨田昌秀 祖母が看護師だった影響を受けて自身も看護師に。病棟での看護に違和感があり、介護保険施行のタイミングで起業を決意。代表を務める野花ヘルスプロモートは認知症ケアに注力しており、大阪府岸和田市にてケアプランセンター、デイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームを運営している。  

インタビュー
2021年2月16日
2021年2月16日

皆にとって「よりよい場所」を

テンハート訪問看護ステーションは、新型コロナ流行以前から感染症対策や災害対策など「もしもへの準備」に力を入れています。 ステーション管理者であり、合同会社Beplace代表でもある佐渡本琢也さんは実はもともと臨床検査技師として働かれていたそうです。今回は、佐渡本さんがどんな思いでステーションを設立し、運営しているか伺いました。 自分の想いを追求した先にあったもの ー臨床検査技師から訪問看護師へ、それもステーションを経営するという選択をされていますよね。背景には、どんな思いがあったんですか? 佐渡本: 看護師へ転職したのは、患者さんとコミュニケーションする仕事の方が、検体相手の仕事より向いていると思ったからです。その上で、訪問看護ステーションの経営をしようと思ったのは、「自分の考える看護を追及したかったから」です。 看護師の中には、患者さんに対して敬語を使わなかったりきつい態度取ったりする人もいます。でも、それは違うと思いました。私は、利用者さんやご家族の思いを大事にする看護をしたかったんです。 医療面だけではなく「人生をみる」と言ったらおこがましいですが、人生に関われるような看護をしていきたいと思っています。 訪問する時も常に、「他にもっとできることはないかな?」と考えています。 ーステーション名の「テンハート」には、どんな意味が込められているのでしょうか? 佐渡本: 「テンハート」はもともと「Tender Heart(やさしい心)」という言葉から取った造語なんです。 スタッフにはいつでもやさしい気持ちでいることを意識してもらっています。 また、会社名の「BePlace」も、「Better Place」を短縮した、私たちが作った造語です。 経営理念にもしているように、利用者さんにとっても、ご家族にとっても、働くスタッフにとっても、「すべての人にとってよりよい場所を」という気持ちを込めて名付けました。 利用者さんやご家族から「いてくれてよかった」と思ってもらえるような看護をモットーに、気持ちの部分だけでなく、医療面や身体面でも、信頼してもらえるステーションを目指しています。 「テンハートなら大丈夫」と言ってもらえる地域密着ステーションへ ーステーションを運営する上で、心掛けていることはありますか? 佐渡本: なんでも話しやすい雰囲気を作るようにしています。 なぜなら、雰囲気が悪いと、報告・連絡・相談がスムーズにできなくなってしまうからです。 スタッフ間の年齢差は大きいですが、明るいムードでスタッフ同士が仲良く働けていると思います。 ーテンハートの特徴は、どんなところでしょうか? 佐渡本: 特徴と言えるかわかりませんが、ケアマネジャーさんから「ちょっと難しい方だけど、テンハートさんなら大丈夫だと思って」と電話をいただくことがあります。そういう風に言ってもらえると嬉しいですね。 利用者さんの割合としては、高齢者の方が多いですが、怒りっぽい性格の方や気難しい方など、対応が難しいケースの依頼も多いですね。 ーステーションとして今後、チャレンジしたいことはありますか? 佐渡本: 地域に根付いて、自分たちの理念に共有してくれる仲間と運営していきたいと思っています。 たくさん展開したいという訳ではありませんが、もう1ステーションは名古屋市内で早めに作りたいですね。 あとは、訪問看護ステーション以外にも「すべての人にとってよりよい場所を」提供できるような別事業も展開していきたいと思っています。 合同会社Beplace代表 / テンハート訪問看護ステーション管理者 / 感染管理認定看護師・臨床検査技師 佐渡本琢也 臨床検査技師として勤務する中で、患者と接する仕事に魅力を感じ、看護師の道へ。病院では脳神経外科、消化器外科を経験し、感染管理認定看護師の資格を取得。母を癌でなくした経験から「在宅で看護師ができることが、まだあるのではないか」という思いを持ち、同僚からの誘いをきっかけに愛知県名古屋市にテンハート訪問看護ステーションを立ち上げた。

インタビュー
2021年2月16日
2021年2月16日

異業種参入 第一の壁:採用

近年、異業種から訪問看護に参入する企業が増えています。 そんな中、参入した経営者が口をそろえて言うのが、「採用の難しさ」です。 看護師を中心に800人以上の専門職が在籍しているセントケア・グループの訪問看護事業では、どのように人材を確保しているのでしょうか。訪問看護部門統括次長の藤原祐子さんにお話を伺いました。 人材紹介会社に頼らない大規模採用 ―採用の方法について、教えていただけますか? 藤原: 基本的には、ホームページ、YouTube、Twitter、Instagramの活用と、社員紹介制度を利用した採用を行っています。今までは使っていた人材紹介会社も、今年からは積極的には頼らない方針にしました。 採用は「誰に伝えるか」「何を伝えるか」を考えながら行っています。 例えば、病院などで働いている若い方向けにはSNSやアニメーションなどを活用する、中堅ベテラン層向けにはハローワークで企業としての安定性や研修制度を売りにしてもらうなどです。 またハローワークや紹介会社には情報を出すだけではなく、窓口や担当の方がセントケアを紹介したくなるような関係づくりも意識しています。 SNS関連の採用事例の成果については検証中ではありますが、ホームページをみて入社する人は増えてきている実感はあります。全体的に見ると40代の方が多いですね。 これまでは自社アピールを全面に出し過ぎるのは良くないかなと思っていたのですが、ダイレクトに伝えないとわからない部分もあることがわかってきました。 今はオンラインセミナーなどで、「セントケア・グループでは看護師を積極的に募集しています」「セミナーや勉強会も開催しています」と言うようにしています。 社員紹介制度に関しては、紹介してくれた方と入社してくださった方に、入社お祝い金として3~5万円(キャンペーンなどによって変動あり)のお支払いをしています。地域会社によっては、社内紹介がすごく盛んなところもありますね。 将来的にはオンラインサロンのような、コミュニティ運営もやっていきたいです。 ステーション安定が私のミッション ―セントケア・グループとしての、採用基準はありますか? 藤原: 採用基準はステーションの状況に合わせてもらっているので、こちらから条件は特に出していません。 ただ、新規開設の場合には、正社員3人以上で始めること、24時間365日対応のためにオンコール対応ができることなどは決めています。 ―藤原さんご自身は、どのようにしてセントケア・グループに入職されたんですか? 藤原: 私の入職には、ちょっと変わった経緯があります。 私が訪問看護師になったのが32歳の時だったのですが、当時に勤めていたステーションが人員割れで閉鎖することになりました。 行き場のないお客様やスタッフを受け入れてくれてもらうため、同じエリア内のいくつかのステーションに連絡をしたところ、すぐに連絡をくれて、その日に会いに来てくれたのが、セントケアでした。 当時のセントケアはそのエリアでは訪問介護事業所しか運営していなかったのですが、訪問看護ステーションも立ち上げるということで、私が所長として入職することになりました。 その後、係長職や課長職を経て、現在は本社の訪問看護部門で統括次長をやっています。 ―本社の統括次長としてのミッションを教えてください。 藤原: 事業全体の中長期計画を立て基盤をつくるのが、本社の管理・企画部門の主な役割ですが、私自身は自社の訪問看護ステーションが安定できるようにサポートすることがミッションだと思っています。 特に魅力的な看護師にセントケアに来てもらって、長く働き続けていただくためにできることをやっていきたいですね。 ちなみに本社はとりまとめる役割なので、実際に事業を運営するのは各都道府県の子会社です。 本社の出した全体計画を各社が地域に合わせた形に落とし込んで、実行しています。介護や医療は地域ごとに状況が異なるので、それに沿って運営できた方がいいですからね。 セントケア・ホールディング株式会社 訪問看護部門 統括次長 藤原祐子 病院勤務で、在宅に受け皿がないために、帰りたくても家に帰れない高齢者が多くいる現実を見て、世の中の制度に疑問を感じるようになる。その後、結婚・出産を経て、2000年に介護保険制度がスタートするタイミングで、介護保険や訪問看護について勉強し、訪問看護師へ転身。管理者としてセントケア・グループに入職し、現在はセントケア・ホールディングの訪問看護部門統括次長として、訪問看護ステーションの安定運営をサポートする基盤づくりに注力している。 セントケア・グループ 1999年、株式会社として初となる訪問看護ステーションを開設。現在では97か所の訪問看護ステーションを全国に展開し、訪問入浴や訪問介護、デイサービス、有料老人ホームなどの幅広い事業にも取り組んでいる。(2020年11月時点)

インタビュー
2021年2月16日
2021年2月16日

のばな、成長の軌跡

大阪府岸和田市で認知症に特化した取り組みをしており、現在はケアプランセンター、デイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームを運営する「野花ヘルスプロモート(通称のばな)」。 今回は野花ヘルスプロモート代表取締役の冨田昌秀さんに、会社の経歴と事業内容をお伺いました。 はじまりは訪問入浴 ーさまざまな事業をされていますが、最初は何から始められたんですか? 冨田: 最初は、ケアプランセンター、訪問介護、訪問入浴の3つから始めました。 当時の岸和田市の訪問入浴事業所は、社会福祉法人だと1ヶ所しかなかったんです。在宅ケアが注目される中で、もっと必要になるはずだと思い、二番手として立ち上げました。 ー訪問入浴をやってみていかがでしたか? 冨田: 訪問入浴は、作業的、マニュアル的ことが多いですけれど、一番「ありがとう」が聞ける仕事でした。 立ち上げ時は看護師3人で運営していたので、訪問入浴中に医療的な面で気付けることもあり、ケアマネジャーさんにフィードバックしやすかったのもメリットだったと思います。 地域の評判は上々で徐々に利用者さんも増えました。 ただ、自分の給料も払えるくらいになったのは半年くらいしてからですね。 男性看護師で20代と若かったこともあって、会う方には「お前は何者や!」と警戒されるか、「面白い奴や!」と可愛がってもらえるか、反応はふたつに分かれましたね。 ーその後はどのように事業展開をされていったのでしょうか? 冨田: 次にトライしたのはデイサービスで、その後住宅型有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅を立ち上げています。 障害福祉の方面ではNPO法人を立ち上げ、復職支援・社会復帰支援のリワーク事業のシンクタンクとなっています。     ー地域の中で求められるサービスを増やしていったんですね。 冨田: そうですね。何が流行りかもありますが、経営者目線で安心安定の職場環境を作ることも模索しながら、地域で必要とされるものかをジャッジしながら作っていきました。 支える人を支えることが、持続可能な事業の柱となっています。     働きやすい環境のマニュアル化を目指して ー今後はどのようなことに取り組むご予定が教えてください。 冨田: 精神医療を提供しているクリニックや施設とのリワークのマッチング、コンサルティング事業が動いているところです。 訪問看護の多店舗展開はあまり考えていませんが、看護師が働きやすい環境についてマニュアル化していき、若い子たちがのれん分けのような形で展開していくときにサポートができたらと思います。     ー「働きやすい環境をマニュアル化」について、具体的にお伺いしてもいいですか。 冨田: のばなで働いている方のほとんどは女性で、子育てされている方も多いです。 ワークライフバランスを重視する方、バリバリ働きたい方、様々な課題や働き方に関する要望があります。 こういった課題や要望に対して、ICT技術などを活用しながら、それぞれのスタッフにあった働き方をマニュアル化して広げていけたらと思います。 そのために、クラウド化した電子カルテを利用したり、デバイスを配布したりするなど、看護師がリモートワーク出来る仕組みを整えています。 これから訪問看護が当たり前になっていく中で、他職種と良質なコミュニケーションを取ることが必要になります。そのための仕組みだったりツールだったりを、どんなものを使うと良いか経営側が考えていけたら、もっと面白く、うまくいくかと思います。 正解はないと思いますが、「より働きやすく」を意識しながら今後もやっていきたいです。 野花ヘルスプロモート代表取締役 冨田昌秀 祖母が看護師だった影響を受けて自身も看護師に。病棟での看護に違和感があり、介護保険施行のタイミングで起業を決意。代表を務める野花ヘルスプロモートは認知症ケアに注力しており、大阪府岸和田市にてケアプランセンター、デイサービス、訪問介護、訪問看護、サービス付き高齢者向け住宅、有料老人ホームを運営している。

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