認知症看護に関する記事

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ

訪問看護では、認知症の利用者さん・ご家族との関わりも多いですよね。NsPaceでは、これまで認知症に関連する多くの記事やセミナーをお届けしてきました。今回は、知りたい情報にアプローチしやすいように、記事をピックアップしてご紹介。気になる記事からチェックしていただき、日々の看護に役立てていただけたら嬉しいです。 「認知症」疾患の知識を深める! 認知症という病気がもたらす事象の原因や理由を理解することで、対応が変わり、できることが増えます。利用者さん・ご家族への貢献度が上がることはもちろんのこと、日々の看護の喜びも増えるはず。ケアする側のこころの状態が相手に大きく影響するので、好循環が生まれます。 【在宅医が解説】「認知症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 認知症の鑑別、認知症以外の可能性や治る認知症を見逃さない、悪化させないなどの視点で、わかりやすく解説いただいています。 また、鑑別に役立つ「せん妄アセスメントシート」を以下記事にてご紹介しています。ぜひご活用ください。>>せん妄への対応【精神症状の緩和ケア】 「高齢者のうつ病の特長」などについて解説されている以下の記事もおすすめです。>>【在宅医が解説】「うつ病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 【セミナーレポート】看護師が意識したい7つのポイント -在宅で行う認知症看護-   講師の福岡裕行さん(認知症看護認定看護師)の優しい言葉と関わりが心に染みる記事です。ポイントがわかりやすく紹介されていて、「すぐにやってみよう!」と楽しみになる内容です。後編では、「認知症患者を支えることは、その家族の心を癒すこと」という言葉が印象的。Q&Aセッションも学びが深まる内容です。あわせてお読みください。>>セミナーレポート後編【セミナーレポート】ご家族とのかかわり方 -在宅で行う認知症看護- 高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】 高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生にご登壇いただいたセミナーのレポート記事です。認知症の方に対しての具体的な食事支援や認知症予防につながる食事について学ぶことができます。 事例を通じてケアを磨く! 認知症のある方やそのご家族へのケアは多種多様。事例を通じて、引き出しを増やしていきましょう。 認知症のある患者さんに接するときの7か条(前編)   シリーズ「認知症患者とのコミュニケーション(全12回)」の第1弾の記事です。シリーズ第1回~2回では認知症患者さんと接するときのポイントを、第3回~12回では、「言葉による返事がない」「物盗られ妄想がある」など、ケースごとにケアのポイントを解説いただいています。実践に生かせる内容なので、興味のあるテーマから学んでみてください! >>認知症のある患者さんとのコミュニケーションシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/dementia-patient-communication/ 自己流の介護を続ける家族への関わり【家族看護 事例】 認知症のある利用者さんのご家族は、複雑な心情や多くのストレスにさらされているからこそ、訪問看護師との関係性が難しくなってしまうこともありますよね。本記事では、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を用いた事例解説を通じて、訪問看護ならではの家族看護について学ぶことができます。 認知症と義歯の関係 認知症があると口腔ケアに難色を示されることや意思の疎通が難しい状況で効果的なケアが行えないこともありますよね。咀嚼機能が回復した事例を通して、工夫のしかたを学べる記事です。 高齢者の頭の体操10選 脳トレに期待できる効果や方法について解説 脳トレや「脳トレ+運動」で、認知機能の向上、身体機能の向上が期待できます。具体的な方法と効果についてご紹介しています。利用者さんが楽しめるケアのヒントになれば幸いです。 「上手く伝えられない」に対応する! 認知症では、辛さや症状を上手く表現できないからこそ、看護師が異常を察知し、適切に評価できることが求められます。場合によっては表現通りの意味とは限らない訴えや拒否をいかに捉えられるかが重要です。利用者さんの価値観をおもんぱかるために、見識を拡げていきましょう! 悪性消化管閉塞への対応【がん身体症状の緩和ケア】 認知症の終末期は、症状マネジメントに苦慮しますよね。事例をとおして、悪性消化管閉塞について学びつつ、認知症の在宅看取りについてイメージを持てる記事です。 大学教授が解説!大量嘔吐でイレウスが疑われる場合のアセスメント 「イレウスの既往のあり、認知症が進み、自分からは訴えられない方が大量に嘔吐…。あなたはどう考えますか?」という事例とおして、フィジカルアセスメントについて学べる記事です。なお、このフィジカルアセスメントシリーズは全12回です。ほかにも『認知症のある患者さんが「転んだけど大丈夫」と話している場合』など、認知症の方の事例解説がありますので、あわせてご覧ください。 >>訪問看護のフィジカルアセスメントシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/physical-assessment/ もしかしてネグレクト? 訪問看護師は虐待疑いにどう対応すべきか 虐待が疑われる場合、どのように行動すればよいか。状況に合わせた慎重な対応が求められ、特に認知症が疑われる場合は、判断が難しくなることもあります。このようなセンシティブな状況では、多角的な視点で考え、細心の注意を払った言動が求められます。本記事は、弁護士の外岡潤先生に解説いただいた、法律・制度を踏まえた事例解説記事です。訪問看護に発生する義務は何か?という点も含めて確認しておきましょう。 * * * 認知症のある方は、今後もますます増加すると予測されています。地域を支える訪問看護師のサポートへの期待もさらに高まっていくでしょう。認知症のある方が幸せに生きられる社会になるヒントは、日々のケアの蓄積の中から見出されていくようにも感じます。NsPaceでは、今後も日々の学びの機会を通して、訪問看護に携わる皆さまの力になる企画を提供していきます。 執筆・編集: NsPace編集部 ■「みんなの訪問看護アワード」エピソード募集中!(~2025/1/24)今回で3回目となるNsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」では、2025年1月24日(金)17:00まで「つたえたい訪問看護の話」を募集中です! 訪問看護にかかわる方であれば、誰もが共有したいエピソードがひとつはあると思います。皆さまのエピソードをお待ちしています!

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年6月5日
2024年6月5日

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、新田 光里さん(@(あっと)訪問看護ステーション/東京都)の審査員特別賞エピソード「100年ぶりに入浴したU子さん」をもとにした漫画の後編をお届けします。 「100年ぶりに入浴したU子さん」前回までのあらすじ認知症があり、人嫌いなところもある利用者のU子さん。長らくお風呂に入っていない様子で、清拭や更衣もできない状況…。悩んだ新田さんが所長に相談すると、「まずはあなたがU子さんを好きにならなくちゃ」と言われました。新田さんは、もっとU子さんの気持ちを受けとめようと考えて…。 >>前編はこちら受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 100年ぶりに入浴したU子さん<後編> 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)エピソード投稿:新田 光里(にった あかり)@(あっと)訪問看護ステーション(東京都)審査員特別賞をいただき、U子さんと関係者の皆様に心から感謝しております。訪問看護師になって14年経ちますが、受賞によりこれまで携わってきたことが報われたように感じています。利用者さんにじっくりと関われることも訪問看護の醍醐味だと思いますが、中には「これは看護なのだろうか?」と迷うこともあります。「100年ぶりに入浴したU子さん」はそうした訪問看護の「リアルで泥臭い」部分をエピソードに記しました。審査員の方に共感していただけて、とても嬉しく思います。自分の看護に不安を感じることもありますが、利用者さんやご家族にとってひとつでもプラスになれるような心構えで関わるようにしています。残念ながらU子さんは2021年に99歳で亡くなりました。「私のおかげで受賞したのよ!」と天国で笑ってくださっていると思います。U子さんは私に訪問看護の奥深さを教えてくださいました。今後も利用者さんお一人お一人との出会いを大切に、感謝し、学んだことを次に活かしながら訪問看護師を続けていきたいと思います。多くの方に訪問看護の魅力が伝わりますように! >>「第3回 みんなの訪問看護アワード」特設ページ [no_toc]

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん」【つたえたい訪問看護の話】
特集
2024年6月4日
2024年6月4日

受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、新田 光里さん(@(あっと)訪問看護ステーション/東京都)の審査員特別賞エピソード「100年ぶりに入浴したU子さん」をもとにした漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!大賞・審査員特別賞・ホープ賞・協賛企業賞つたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!入賞 100年ぶりに入浴したU子さん<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「100年ぶりに入浴したU子さん<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1)エピソード投稿:新田 光里(にった あかり)@(あっと)訪問看護ステーション(東京都) [no_toc]

第2回 みんなの訪問看護アワード 投稿のきっかけは?
第2回 みんなの訪問看護アワード 投稿のきっかけは?
インタビュー 会員限定
2024年5月7日
2024年5月7日

第2回みんなの訪問看護アワード 投稿のきっかけは? 特別トークセッション 前編

2024年3月9日(金)に、銀座 伊東屋 HandShake Lounge(東京都中央区)にて開催した「第2回 みんなの訪問看護アワード」表彰式。エピソードを投稿された方をはじめとしたゲストの皆さまに全国からお越しいただき、表彰、特別トークセッション、懇親会などで盛り上がりました。ここでは、特別トークセッションの内容をピックアップしてお届けします。 ファシリテーターに東京医科歯科大学 国際健康推進医学 非常勤講師 長嶺由衣子さんを迎え、エピソードを投稿した背景や、訪問看護の領域で働くことを選んだ理由、この仕事の魅力などを、3人の受賞者の皆さまにお話しいただきました。前編では、エピソードを投稿したきっかけやその背景を深掘ります。 【ファシリテーター】長嶺 由衣子(ながみね ゆいこ)さん東京医科歯科大学国際健康推進医学 非常勤講師【登壇者】白﨑 翔平(しらさき しょうへい)さんいま訪問看護リハビリステーション(大阪府)「みんなの訪問看護アワード2024」入賞投稿エピソード「秋ひまわりプロジェクト:外出のきっかけづくり」新田 光里(にった あかり)さん@(あっと)訪問看護ステーション(東京都)「みんなの訪問看護アワード2024」入賞投稿エピソード「100年ぶりに入浴したU子さん」小野寺 志乃(おのでら しの)さん公益財団法人 宮城厚生協会 ケアステーション郡山「みんなの訪問看護アワード2024」入賞投稿エピソード「余命を伝えないということ。」 ※以下、本文中敬称略※本記事は、2024年3月時点の情報をもとに構成しています。 宮城・東京・大阪の受賞者が登壇 長嶺: はじめまして、長嶺と申します。本日は皆さまにお話を伺えることを楽しみにしていました。いろいろと深掘りしていきたいのですが、まずは、訪問看護歴と簡単に自己紹介をお願いします。 小野寺: 「ケアステーション郡山」で働いている小野寺志乃と申します。郡山というと福島を思い浮かべる方が多いと思いますが、宮城県仙台市の郡山から参りました。1年8ヵ月ほど病棟で勤務したのち、早くから経験を積みたいと思って、組織内で異動して3年前から訪問看護師として働いています。本日はよろしくお願いします。 新田: 東京都立川市の「@(あっと)訪問看護ステーション」で働く新田光里です。看護師歴は20年ほどで、訪問看護師歴は14年を超えました。救急救命士として働きたいという思いもあったのですが、色々あって今は訪問看護師として、毎日自転車で利用者さんのお宅をまわっています。投稿エピソードに書ききれないほどの濃い日々を過ごし、利用者さんから学ばせていただいています。本日はよろしくお願いします。 白﨑: 大阪府の「いま訪問看護リハビリステーション」で作業療法士をしている白﨑翔平です。看護師である母の勧めで作業療法士の資格を取得し、現在13年目です。社会人1年目は三次救急に興味があったので病院で働き、ICUや病棟の看護師さんに色々と教えていただきました。20代半ばで外出介助のボランティア団体を立ち上げていて、こうした経験が今回のエピソードにもつながっていると思います。よろしくお願いします。 雑木林をひまわり畑に!利用者さんが外出するきっかけづくり 長嶺: ではまず、皆さんのエピソードをそれぞれ深掘りしていきましょう。白﨑さんから、このエピソードを投稿しようと思ったきっかけを教えてください。 白﨑: はい。今回の「秋ひまわりプロジェクト」でも協力してもらった同僚の訪問看護師さんに、「みんなの訪問看護アワード」の存在を教えてもらいました。本当は通院以外で外出しない利用者さんの外出するきっかけになればと思って「ひまわり喫茶」を企画していたんですが、残暑の影響でひまわりの開花が早く、実現できず残念に思っていたので…。そういった気持ちを昇華するためにもすすめてくれたんです。 長嶺: 白﨑さんが残念がっていたのが、きっかけだったのですか(笑)? 白﨑: そうですね(笑)。「ひまわり喫茶」をどうしてもやりたくて、企画書を書いて社長に提出し、予算もつけてもらっていたんです。ひまわり畑を作って、利用者さんにはひまわり畑を眺めながら担当の療法士や看護師との会話を楽しんでほしいと考えていました。テントを用意し、利用者さんへの招待状も全部送り終えていたんです…。準備万端だったので、中止になってとても残念でした。 長嶺: 雑木林をひまわり畑にされたんですよね。きっかけや経緯をもう少し詳しく教えていただけますか。 白﨑: きっかけは、一人の利用者さんとの出会いです。外出できるぐらい体調が落ち着かれたのですが、出かける目的がないから外出されていないとのこと。お花が好きな方だったので、お花畑があれば「お花を育てる役割」ができ、水やりをしに行くという外出目的が生まれると思ったんです。事務所の側にある雑木林をお花畑にしたいと思い、少しずつ整備していきました。 長嶺: お花畑を作ることが利用者さんの社会参加につながると考えたんですね。行動に移されたことが素晴らしいと思うのですが、一人で実行されたのでしょうか。 白﨑: 最初は、休日に雑木林へ一人で行って伐採していました。でも、土日担当の看護師さんに、徐々にバレ始めまして(笑)。そこから、その看護師さんが草刈りを手伝ってくれるようになり、他のスタッフもイベント企画に協力してくれるようになりました。 長嶺: 訪問看護ステーションが地域の資源や拠点となるんだと改めて教えてもらえるエピソードですね。純粋に、「すごいことをする人たちがいるんだな」と感動しました。ありがとうございます。 1年かけて信頼関係を築き、数年ぶりの入浴を実現 長嶺:続きまして、新田さんにエピソードを投稿したきっかけを教えていただきましょう。 新田:所長から回覧された昨年の受賞エピソード集を見たときに、今回のエピソードに登場するU子さんの笑顔が浮かんだんです。92歳で認知症があって、いろいろと看護は大変だったのですが、エピソードを書くことで、当時の気持ちをほかの看護師さんにも共有できる機会になると思いました。U子さんとのエピソードは本当にたくさんあるので、400字にまとめるのは大変でしたが、訪問看護のリアルさが伝わればいいなと思いながら書きました。 長嶺: 特にエピソードの最後の部分は臨場感が溢れていて、看護されているリアルな光景が思い浮びました。新田さんは、当初入浴を受け入れてくれない認知症のU子さんに憤りを感じていたということでしたが、憤りというのは、こうあるべしというイメージを今までの経験からあてはめてしまう専門職だからこそ沸き起こる感情だと思います。所長さんの助言が思考の転換になったんですよね。 新田: はい。以前の私の職場は救急部門で、当時は「ミッションをクリア」していくことが求められていました。その名残もあって、「皮膚トラブルを解消するために、どうしたら入浴してくれるか」と必死だったんです。しかし、一生懸命になればなるほど、U子さんには受け入れてもらえませんでした。まずは私の顔を認知してもらおうと、私の顔写真をお仏壇の隣に置いたり、低栄養で低ナトリウム血症があったので昼食を買っていってU子さんのお宅でランチしたり、いろいろとチャレンジしました。食事を一緒にすれば仲良くなれるかな、とも思ったんですよね。 こういった取り組みによってU子さんとの距離は近づいていきましたが、なかなかお風呂に入っていただくことはできませんでした。そんなとき所長から、「まず、あなたがU子さんを好きにならないとね」と助言をもらい、ハッとしたんです。入浴してくれないし、こだわりが強いし、私はU子さんを苦手になっているのかもしれない…と。それからは、U子さんの素敵なところに目を向け、U子さんの好きな「リンゴの唄」を一緒に歌ったり、戦時中の体験談を傾聴し労いの言葉をかけたり…といった関わり方を続けました。そして、1年ほど経ったころに、ようやく入浴につながったんです。所長は「利用者さんを大切に思いなさい」ということを、教えてくれたのだと思います。 長嶺: ありがとうございます。一緒に食事をして距離感が縮まるというのは、私も経験があります。入浴に成功した後、どうやって継続していくのかも大事であり、かつ難しい点だと思いますが、後日談はありますか? 新田: 「ピンクの服を着た新田が来ると、お風呂に入れる」という流れができて、しばらくは入ってくださっていたんです。ですが、長男が風邪をひいて私が仕事を休まないといけなくなって、別の看護師に行ってもらったら、それをきっかけに入浴されなくなって…。そのままご自宅で、お一人で旅立たれました。ルーティンが少しでもズレてしまうと、継続できなくなる認知症高齢者の難しさや厳しさについても、U子さんに教えていただきました。 長嶺: 同じ人じゃないと、継続できなかったということですね。受賞された時の周りの反応はいかがでしたか? 新田: 「よかったわね」と所長は喜んでくれましたし、受賞を報告した同僚の皆さんも「U子さんのお話を書いたなら賞をもらうよ。だって一生懸命頑張って関わっていたじゃん」と言って喜んでくれました。U子さんはうちのステーションの中でも名物おばあちゃんだったので、苦労も多かったですが皆に愛されていたのだなとも感じました。 3年前の3月11日に天国へ旅立ちましたが、U子さんはきっと、「私のおかげで受賞したのよ!」と言っていると思います(笑)。私も「U子さんのおかげでこんなに華々しいところに来れたよ!」と報告したいです。 長嶺: ありがとうございます。素敵なエピソードでした。 ご家族から「余命を伝えないでほしい」と頼まれたときのアプローチ 長嶺:続いて訪問看護歴3年目の小野寺さんです。エピソードを投稿しようと思ったきっかけを教えていただけますか。 小野寺: 施設内のスタッフへの連絡ボードを見て、投稿エピソードの募集の存在を知りました。「何か投稿しようかな」と思ったときに浮かんだのが、昨年の初夏に出会った60代で末期がんの男性利用者さんでした。「余命は伝えないでほしい」というご家族の要望がある中で、次第に具合が悪くなっていくご本人から「いつまで生きられるのか」と質問され、どう答えればいいのかわからず悩みました。訪問するたびに「帰りたい…」という気持ちになってしまって…。一番つらいのは利用者さんと支えるご家族なのに、私がこんな状態ではダメだと思いました。 そこで先輩の訪問看護師にどんなふうに声をかければいいのか相談したところ、「ただ話を聞いてあげるのも看護だよ」と助言をもらったんです。それ以降、模索しながら自分なりにコミュニケーションを取るようにしました。ご本人はつらかったと思いますが、そんな中でもご家族と温かい時間を過ごされていたのがとても印象的で、このエピソードを選んで投稿しました。 長嶺: 訪問看護歴に関わらずかもしれませんが、「余命を伝えない」という葛藤に皆さんも直面したことがあるのではないでしょうか。利用者さんが死期を悟り、「会いたい人がいる」と言われたことを知ったとき、何を思いましたか。 小野寺: 医師からあと2、3日が山になると言われた時から緊急コールが頻繁に鳴るようになり、「いよいよか」と心の準備をしていました。そして、利用者さんは家族・親戚に囲まれて息を引き取られました。翌日聞いた話では、亡くなる日の朝に「会いたい人に会わせてくれ」とおっしゃっていたそうです。余命は伝えなかったけれど、自分のことは自分が一番分かるんだろうなと思いました。自分で悟り、やりたいことをやりたいという気持ちになったんだろうなと。 長嶺: ありがとうございます。私は、ご本人の希望があれば余命を伝える派です。ただ、ご本人とご家族で伝えて欲しいかどうか意見が分かれることもあります。日本の場合、ご家族の意向を尊重する傾向があり、患者さんの意向なのに本人がなぜ知ることができないんだと思うこともあります。もちろん、ご家族から「余命を伝えないで欲しい」といわれれば尊重しますが、ただ、「ご本人が知りたいと言われたら、私は恐らく伝えると思います」とも言います。 絶対に伝えたいというわけではなく、本人の意思をどうすれば尊重できるのかという考えが根底にあるからです。私は、医師だから余命を伝えることができるケースがあるのですが、「余命を伝えないでほしい」とご家族から言われたとき、看護師の皆さんはどのようなアプローチをされているのでしょうか?手を挙げてくださった、受賞者の鳥居さんはいかがでしょう。 鳥居: 私も同じような経験があります。看護師は余命を言えません。その代わりに体の変化を伝えていくようにしています。「徐々に寝ている時間が増えてきますよ」「飲み物を飲めなくなってきますよ」といった体の変化を伝えていくと、ご自分で余命を悟られる方もいらっしゃいました。 長嶺: 言い方を変えながら、伝えていくということですか。 鳥居: そうですね。つい最近、お看取りした90代の方も同じような状況でした。ご本人は死期を悟っていたようで、「どうしてそのように(死期が近いと)思われるのですか?」と聞くと、「〇〇ができなくなってきたし、最近、俺、よく寝ているんだよな」と。「最期は苦しいのか?」「どんなふうになるんだ?」と私に質問されたので、「お休みになっているときはつらいですか」と聞き返したら、「いや。俺は寝ている時間に、そのまま逝くのかな」と話されていました。その後、吐血をするなど大変でしたが、ご家族にも死への準備教育をしていたので、「吐血をしたのですが、事前に聞いていたので慌てずに済みました」とおっしゃっていただき、最後までご自宅で介護され、看取ってくださいました。28年間訪問看護師をやっていると、余命を伝えないでとご家族から頼まれた経験はたくさんあります。でも、ほとんどの場合、ご本人はわかっていたように思います。 * * * 次回は、訪問看護の世界に身を置いた経緯や訪問看護の魅力を世の中に伝えるアイデアなどについて語り合います。>>後編はこちら第2回みんなの訪問看護アワード 訪問看護の魅力 特別トークセッション 後編 取材・執筆:高島 三幸編集:NsPace編集部

誤飲・誤食【訪問看護 緊急時の対応法】
誤飲・誤食【訪問看護 緊急時の対応法】
特集
2024年3月5日
2024年3月5日

利用者から誤飲・誤食の訴えがあったら【訪問看護 緊急時の対応法】

訪問先で思わぬ出来事に遭遇したとき、訪問看護師としてどう動けばよいのでしょうか。このシリーズではさまざまな緊急時に対し、具体的な臨床知をもとに何を確認・判断して、誰にどの手順で連絡・調整すればよいか分かりやすく解説します。今回のテーマは利用者さんから誤飲や誤食の訴えがあった場合の対応法です。 誤飲・誤食とは 訪問看護ではさまざまな緊急の訪問依頼があり、対応に走ることがあるかと思います。今回のテーマ「誤飲・誤食」も緊急性の高い項目の一つといえます。 「誤食」は、 食べ物以外のものを誤って口から摂取すること飲食物ではない異物を誤って飲み込んでしまうこと主に有害・危険な異物を飲み込んでしまうこと などと定義されています。ほかに食物アレルギーを持つ方がアナフィラキシーショックを起こす危険性のあるものを摂取した場合にも誤食が用いられます。 「誤飲」は誤食と同様な意味を持ちますが、飲み物に対して使用され、飲むか食べるかの違いとされます。ここでは誤飲・誤食を厳密に定義して述べるのではなく「食物以外の物を誤って口から摂取した場合」として記載します。 誤飲・誤食が起こったときの対応 誤飲・誤食が問題になるのは乳幼児の場合が多いでしょう。乳幼児が誤って口に含まないように、手の届く範囲に危険につながる小さな物を置かないように予防することが第一です。 高齢者にも誤飲・誤食はしばしば見受けられます。高齢者の誤飲・誤食事故による緊急訪問では、口にした物質を特定できれば対応もしやすくなります。まずは、本人が何を誤飲・誤食したのかを確認して、バイタルサインを測定し、アセスメントを実施します。 その時点においてはあまり状態変化を把握できなかったとしても、後から急変する可能性があります。例えば、誤飲・誤食した物の形状や性質などから、食道に傷をつけ出血してしまう、排泄に至るまでの間に消化管が閉塞・穿孔する、意識レベルが低下するなど、緊急性が高くなる事態も考えられます。状態を主治医に伝え、指示を受けてください。医療機関を受診し、状況によっては内視鏡検査を受けなければならないケースもあります。 誤飲・誤食した様子はあるが、何を飲み込んだのか判断できない場合、ベッド周囲や本人の周囲の状況を見て、飲んだと思われるものの残りや容器などから口にしたものを推定します。特定できれば、その物質と量、飲んだ時間なども確認し、主治医に伝えます。 主な誤飲・誤食の事例 PTP包装シート 消費者庁が2019年に公表した65歳以上の高齢者における誤飲・誤食の事故情報1)によると、医薬品の包装を誤飲した事例が116件と最も多かったそうです。そのうち83件がPTP(Press Through Package)包装シートを誤飲していました。包装の裏面には注意書きが添えられていますが、それでも事故は発生しています。PTP包装シートを誤飲すると消化管穿孔をはじめとした重大な合併症を引き起こす恐れがあります。事故を防ぐために、PTP包装シートは切り離さずシートのまま保管し、服用するときに1錠ずつ押し出して服用するよう、利用者さんやご家族への指導が必要です。 誤飲事例とは異なりますが、私が訪問していた高齢の利用者さんの事例を紹介します。その利用者さんはカプセル剤の薬袋に記載された「ケースから出して服用してください」という注意書きを読み、カプセル剤のゼラチンから散剤を取り出して服用すると思い込んでいました。医療職から見るとあり得ないような話ですが、実際に話をしてみて高齢者の思いを知ることができます。 義歯や詰め物 先ほどの消費者庁の調査によると、医薬品の包装の次に多かったのが義歯や歯の詰め物でした1)。多くは食事のときに食物と一緒に飲み込んでしまうため、日ごろから口腔ケアを通して、歯の状態をアセスメントしておくことが大切です。合わなくなった義歯やグラグラしている歯があれば、歯科を受診し治療しておきます。食後も必ず口腔ケアを行い、義歯や詰め物などがきちんとあるか確認をしておくとよいです。 食事関連でいうと、魚の骨を誤飲すると、食後に咽頭や喉頭部のあたりに痛みや違和感が生じます。骨の大きさや刺さった部位によっては自然に消失する場合もありますが、持続した痛みや違和感があれば、早めに受診につなげるとよいでしょう。 洗剤やシャンプー類、灯油 誤飲事例には、洗剤やシャンプー類、灯油もあります。どれをとっても飲み込まずに吐き出す方が多いと考えますが、どの程度の量を飲み込んだかは必ず確認します。飲み込んだ物によっては「牛乳や水を飲ませる」と説明するものもありますが、安易に飲ませず、何度かうがいをしながら、主治医に連絡して指示を得てください。 訪問看護ステーションに緊急連絡を受けた場合も対応は早めの方がよいので、電話で対処方法を助言します。 認知症の方の誤飲・誤食予防 認知症の方ではさらに注意や配慮が必要です。認知症の方は誤飲・誤食の自覚がないケースがあります。例えば、魚を食べたと認識できていなければ、骨が咽頭や喉頭に刺さっていたとしても、訴えが適切にできず症状が悪化してしまうでしょう。 自覚症状が不穏状態として現れるケースもあります。ただし、不穏状態の原因を特定するのは簡単ではありません。独居で過ごしている利用者さんは生活状況が見えづらく、「誤飲・誤食したかも」と感じさせる状況であっても、意識レベルや息に異臭があるなどの異状がなければ確定できません。 日ごろの食生活や状態を把握しておく 事故が起こった直後は、何を、どの程度の量、誤飲・誤食したのか特定が難しいことも少なくありません。そのため、日ごろから利用者さんの食生活をできる限り把握できるようにしておくとよいでしょう。私は必要に応じて利用者さんの冷蔵庫を見せていただきます。賞味期限が切れた物や、冷蔵庫に入れておくべきではない物が入っていないか、定期的にチェックし整理しておきます。こうした普段からの注意が誤飲・誤食を予防します。また、訪問看護だけでは対応できないため、訪問介護の方にも協力を得ながら一緒に対応することが重要です。 食物以外の物も口に含む習慣があれば、口に含めそうなものを周囲に置かないように配慮します。利用者さんの日ごろの状態を把握しておけば、異常時に「いつもと違う」といち早く気づけます。早い段階で医療機関につなげられるとともに、重度化予防にもなります。 * * * 訪問看護師は利用者さんの自宅に伺い、ケアを提供するだけの時間しかいられません。それ以外の時間は、ご家族が多くの時間を費やし介護をされています。緊急に対応しなければならない事態においても、病院や施設のようにはすぐに看護師が駆けつけられません。家族が安心して介護できる体制にするためには、誤飲・誤食したという情報があれば、できるだけ受診につなげて、異常がないか否かの診断を受けられるようにしましょう。それがご家族の安心につながります。 「食べること」は、生命維持や健康増進に不可欠な行為であると同時に、人生の楽しみであり、自己表現やコミュニケーションの一部でもあります。その楽しみがトラブルにつながらないように、予測される危険材料を事前に排除する取り組みができるとよいです。高齢になっても食を楽しむ観点から、訪問看護では「食べること」についての情報収集とケア方針をご家族も含めて共有しておくようにします。 執筆:阿部 智子訪問看護ステーションけせら統括所長 ●プロフィール約12年の臨床経験後、育児に専念する期間を経て、訪問看護の道に入る。自宅を訪問し、利用者との個別ケアを通して看護師としての力量の評価を得られ、利用者一人ひとりの生きざまを感じることができる訪問看護に魅力を感じる。2000年に「訪問看護ステーションけせら」を設立し、看護と介護を一体的に運営し、医療と生活の両面から在宅を支えられる実践を行ってきた。最期まで地域で暮らしたいという思いも支えられるようにホームホスピスの運営と、24時間対応できる定期巡回随時訪問介護看護事業にも携わる。 編集:株式会社照林社 【引用】1)消費者庁.「高齢者の誤飲・誤食事故に注意しましょう!」(2019年9月11日付)https://www.caa.go.jp/notice/assets/consumer_safety_cms204_190911_01.pdf2023/11/10閲覧

認知症の学び直し
認知症の学び直し
特集
2023年5月30日
2023年5月30日

【在宅医が解説】「認知症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回のテーマは認知症。訪問看護師に求められる知識や注意点を、在宅医療の視点から解説します。 はじめに 日本における65歳以上の認知症有病率は、2045年には25%以上になると予測されています1)。何と4人に1人が認知症。私たち医療従事者は、認知症と上手に付き合ってゆく術を身に着けることが必須です。 ここでは、 ・「認知症じゃないか」と相談されたらどうするか?・ 認知症の鑑別・ 認知症を疑ったときにすべきこと・ 認知症を悪化させないために について順に解説します。 「認知症じゃないかしら?」と相談されたら 認知症とは「いったん正常に発達した記憶・思考などの知的機能が低下し、6ヵ月以上にわたって日常生活に支障をきたしている状態」とされます。 ご高齢の患者さんやご家族から「物忘れがひどくなってきた。ボケてきちゃったのかしら?」といったご相談を受けることは、みなさん多いのではないでしょうか。 判断のポイントは「日常生活への支障があるか否か」です。たとえば、物の名前がなかなか出てこないようなことは、ある程度の年齢になれば高頻度で起こります。正常な老化の範疇かもしれないし、これから症状が進んでいくかもしれません(いわゆるMCI)。認知症の初期の段階では、今後どうなるか予測するのはきわめて困難なのです。 したがって、日常生活に支障が出ていないようなら、「もう少し様子をみましょう」でいいです。もちろん、ご本人・ご家族がご心配されるなら、認知症専門外来の受診をおすすめするのもありです。 一方、外出したら家に帰れない、食事をしたことをすぐ忘れる、これまでできていた家事ができなくなるなど、日常生活に明らかに支障を生じている場合は、すぐに専門医につなぎましょう。 認知症の鑑別 多い順から、下記の4つを考えればいいでしょう。 注意するのは、必ずしも典型的な症状が出るわけではないこと、認知症以外の疾患の可能性もあることです。もともとの知的水準や気質、性格、生活環境などによる個人差も大きいでしょう。安易に結論を出さず、一人ひとりの患者さんと向き合っていくことが大事です。 認知症を疑ったときにすべきこと (1)認知症以外の可能性を見逃さない 本当に認知症なのか、他の病気が隠れていないか、という意識を常に持ってください。それが患者さんを救うことにつながります。鑑別すべき代表的な疾患を挙げます。 ■せん妄状態高齢者の場合、特にADLが低下している方や軽度でも認知症を発症している方は、入院中に高頻度でせん妄状態となります。短期間(目安として2週間以内)の入院なら、退院していつもの生活に戻れば、すぐ(筆者の経験では1週間以内に)治ります。 問題は、鎮静薬を投与され、入院が長期間になってしまった場合です。鎮静による意識レベル低下や活動性低下、副作用による運動障害等が相まって、寝たきり、ADL全介助、廃用性運動機能低下、四肢拘縮著明、という状態までなってしまうと、退院後に元のADLに戻すのは非常に難しくなります。 ご高齢の方を入院させる場合、できるだけ短い入院期間でお願いしましょう。場合によっては入院治療をあきらめる選択もあると思います。 ■うつ病うつ病は、わかりやすく言うと「脳と心のエネルギーの電池が切れそうな状態」。意欲が低下し気分が沈み、はたからみると無表情でぼーっと無為に過ごしているように見えます。精神活動全般が低下しますから、判断力、記憶力などにも支障が出ます。 うつ病は薬でコントロールできる病気なので、見逃してはいけません。 思いあたる節があれば、受診する際にしっかり情報提供してください。 ■内科的疾患これは見逃してはなりません。代表的なものを順に挙げます。 甲状腺機能低下症血液検査で診断でき、ホルモン補充療法をすれば劇的に症状が改善します。身体的な症状は、脱毛、皮膚の乾燥、徐脈、心不全症状、粘液水腫(non-pitting edema)等です。 ビタミンB12欠乏症普通の食事をしていればビタミンB12が欠乏することはまずありませんが、菜食主義者、萎縮性胃炎や胃切除後で消化管吸収障害がある方は、調べたほうがいいです。認知症以外に、巨赤芽球性貧血や亜急性脊髄連合変性症が合併する場合があります。前者は採血でわかり、後者は知覚障害と運動障害(深部感覚障害により失調様の歩行となる)が出ます。これもビタミンB12補充により劇的に改善します。 心不全、腎不全、電解質異常、消耗性疾患、悪性腫瘍による悪液質など当たり前のことですが、こうした疾患・異常を抱えていると頭も普段どおりに働きません。「ボケたんじゃないか?」と相談を受けたら、これらの可能性も考慮して丁寧に聴取してください。看護師の皆さんのアドバイスや情報提供で、隠れていた内科的疾患に医師が気づくかもしれないのです。 (2)治る可能性のある認知症を見逃さない ■慢性硬膜下血腫比較的軽微な頭部外傷(転倒して頭部を打撲した、といった程度の)の2週間~3ヵ月ほどの時期に発症するとされます。ケガを気にとめていない、忘れていることも多々あります。 血腫の部位や脳圧迫の程度により症状はさまざまです。 頭部CT検査で診断でき、血腫除去術で治療が可能ですので、早めに診断することが大事です。 ■正常圧水頭症髄液が増加し、脳室が拡大して脳実質が圧迫されることにより、神経障害が出ます。 正常圧水頭症も頭部CT検査で診断でき、シャント造設で症状改善します。 ■脳主幹動脈狭窄症脳梗塞に至っていなくても、広範な脳虚血により認知機能に影響が出る可能性があります。脳の虚血部位によって、症状は多様です。 認知症を悪化させないために 難聴や視覚障害などがあると、外部からの刺激が乏しくなりコミュニケーションにも支障が出るので、認知症が悪化しやすいです。「社会的孤立」も認知症を悪化させます。 「社会的孤立」については、現場の努力だけではなく、認知症と共生できるコミュニティづくりが必要です。私たち現場の医療者が「認知症でも生きていきやすい環境づくり」を考え、提唱していかなければなりませんね。 執筆:佐藤 志津子医療法人社団緑の森 理事長さくらクリニック練馬 院長編集:株式会社メディカ出版 【引用・参考】1)Nakahori,N.et al.Future projections of the prevalence of dementia in Japan:results from the Toyama Dementia Survey.BMC.geriatrics.21(1),2021,602.doi: 10.1186/s12877-021-02540-z.

ニャースペースのつぶやき
ニャースペースのつぶやき
特集
2023年5月9日
2023年5月9日

利用者さんが一人暮らしで認知症の場合…ニャースペースのつぶやき【訪問看護あるある】

よかった、今日はセーフ! 認知症の利用者さんは、訪問したときに不在のことがあるにゃ…。無事に会えるとホッとするにゃ 訪問時に利用者さんが不在だったり、ご自宅に入れてもらえなかったりすると、焦ってしまいますよね。特に認知症の利用者さんが一人暮らしをしている場合に、よく聞かれるケースです。安否確認も必要なので、玄関前でしばらく待ったり、探しに出かけたり、ケアマネジャーさんに連絡をとったりすることも。訪問看護師さんからは、「お買い物に出かけているのかなかなかお戻りにならず、結局訪問がキャンセルになったことがある」「お出かけしようとしているタイミングで偶然出会えて、ホッとしたことがある」といった声も聞かれました。 ニャースペース病棟看護経験5年、訪問看護猫3年目。好きな言葉は「猫にまたたび」「わかる!」「こんな『あるある』も聞いて!」など、みなさんの感想やつぶやき、いつでも投稿受付中にゃ!>>投稿フォーム

特集
2022年6月28日
2022年6月28日

【専門家執筆&監修】認知症患者が異食を行う原因は?対応方法・NG行動を解説

患者さんの言動の背景には何があるのか? 訪問看護師はどうかかわるとよいのか? 認知症を持つ人の行動・心理症状(BPSD)をふまえた対応法を解説します。最終回の第12回は、食べられないものを食べる患者さんの行動の理由を考えます。 事例背景 70歳代女性。食事はあっという間に食べてしまい、食べたことを覚えていない。家族が目を離すとティッシュペーパーをお茶に浸けて食べたり、消しゴムや煮ていない豆類を食べ、嘔吐や下痢をする。 なぜ患者さんは異物を食べるのか? 認知症が重度になると、食物とそうでないものとの区別がつかず、異食が起きることがあります。異食とは、食べられないものを口に入れることや、食べてしまうことです。 味覚がしっかりあれば、異食した場合にも吐き出すことができますが、味覚が障害されていると飲み込んでしまいます。 また、満腹中枢の鈍化も、異食や過食を招くことになります。心理的に、孤独感や満たされない欲求などの代償として、異食が起こることもあります。 患者さんをどう理解する? このような認知症患者さんへの対応としては、苦痛や不安な思いに寄り添い、患者さんの苦痛を取り除くと混乱がしずまるといわれています。 異食に遭遇したら 異食をしている場面に遭遇した場合は、患者さんを驚かせないように、落ち着いた対応が大切です。 まずは、異食の患者さんを見かけたら、大きな声を出さないようにしましょう。その声に驚いて患者さんが反射的に飲み込むことがあります。 異食をしたものをすぐに口外に出そうと、患者さんの口の中に無理やり手を入れようとすると、患者さんは驚いて口を開かなかったり、噛んだりすることがあります。 慌てずに、患者さんの名前をゆっくり呼び、体にそっと触れて注意を向けてから、患者さん自身に口を開けてもらうようにお願いし、吐き出せるように促していきます。 異食の例 異食するものには、実にさまざまなものがあります。 異食の例 ・新聞・ティッシュペーパー・花・草・土・洗剤・薬品・化粧品・電池・タバコ・ゴミ・自分の便・布類(タオル等)・紙オムツ・花瓶の花 命に危険が及ばないものの場合は、他の食品(たとえばお菓子など)を用意して交換する方法もあります。 薬品・電池など命に危険があるものを食べた場合には、各製品に添付されている応急処置(吐かせる・水を飲ませて薄めるなど)をすると同時に、医師による処置を受けます。 異食により命に危険がおよぶものは、見えないところや手の届かないところに片付けて、患者さんの生活する空間の環境整備を行います。ティッシュペーパーや布などのように窒息に結びつくものにも注意を払い、患者さんの安全を守ることが必要です。 こんな対応はDo not! × 異食を発見したときに、驚いて大きな声を出す× 異食した物を慌てて口から出そうとする こんな対応をしてみよう! 異食は食欲の異常ではなく、欲求不満に伴う反射的、衝動的な行為であることが多いので、まずは患者さんの周囲に危険なものを置かないようにしましょう。また、異食をしていないかどうか、患者さんが口を動かしているときなどに声を掛け、見守るようにするとよいでしょう。 栄養素として鉄やカルシウム不足などが異食の原因となることもありますので、認知症の症状と決めつけてしまわず、きちんと検査し原因を明らかにすることも必要です。 執筆茨城県立つくば看護専門学校佐藤圭子 監修堀内ふき(ほりうち・ふき)佐久大学 学長 記事編集:株式会社メディカ出版 【引用・参考】1)諏訪さゆりほか.「認知症高齢者の看護計画」『医療依存度の高い認知症高齢者の治療と看護計画』諏訪さゆりほか編.愛知,日総研出版,2006,179-85.2)油野規代ほか.『認知症を伴う大腿骨頚部骨折患者に関わる整形外科看護師の対応困難な場面における臨床判断』金沢大学つるま保健学会誌.34(1),2010,91-9. 3)長嶋紀一.「認知症の人の医学知識」『認知症介護の基本』長嶋紀一編.東京,中央法規出版,2008,39-40.

認知症のある患者さんとのコミュニケーション
認知症のある患者さんとのコミュニケーション
特集
2022年6月14日
2022年6月14日

ケアを拒否する場合の対応【認知症患者とのコミュニケーション】

患者さんの言動の背景には何があるのか? 訪問看護師はどうかかわるとよいのか? 認知症を持つ人の行動・心理症状(BPSD)をふまえた対応法を解説します。第11回は、清拭の前に布団を外すと殴ろうとする患者さんの行動の理由を考えます。 事例背景 80歳代、女性。以前からアルツハイマー病との診断を受け、行動障害がみられていたが暴力行為はなかった。何度も同じことを繰り返し話すが、こちらの質問には答えていた。ある日訪問して、説明後、全身清拭を始めようと布団を外すと「なんでそんなことするの、痛いでしょ!」と叫び、看護師を殴ろうとしてきた。 なぜ患者さんは殴りかかってきたのか? この患者さんは、ふだんから何度も同じことを繰り返し話しています。このことから、記憶障害が出ていることが推測できます。認知症による記憶障害のために、自分が話した内容を覚えておらず、同じ話を繰り返していると思われます。 また、「清拭のために」「布団を外す必要がある」という事柄の関連づけができていないことが推測されます。「ゼンシンセイシキ」(全身清拭)という言葉も耳慣れない表現だったのかもしれません。それらの理由から、「布団を外されて、何かされるのではないか」という恐怖心を抱いたのでしょう。 布団を外されると「痛い」と訴えていることから、痛みが恐怖につながっていると思われます。また、過去に「布団を外されると痛いことをされる」という、痛みの体験と結びつく記憶があるのかもしれません。 患者さんをどう理解する? 認知症の患者さんから拒否があった場合は、心配や苦痛などの理由があると推測し、相手の意思を尊重する姿勢を示しましょう1)。 この患者さんは、記憶を保持する時間がとても短いと思われますので、ケアをするときには、すべての行為動作における促しを、「これから○○しますね」など、あたかも実況中継をするかのように誘導するといった声掛けが必要でしょう。認知症の方は、これから何が起こるかを予測する力が低下していることがあり、こういった声掛けがより効果的です。 また、日常生活では「ゼンシンセイシキ」(全身清拭)という言葉は使わないので、意味を理解しないまま返事をしていたのかもしれません。 こんな対応はDo not! × 日常生活で使われない言葉を使用する× 認知症の患者さんの記憶障害や理解力に対する配慮不足× BPSDの出現を予測したかかわりへの配慮不足 こんな対応をしてみよう! ふだん使っている平易な言葉を使うよう心掛けることで、伝わりやすくなります。 また、認知症の特徴である記憶障害の程度に合わせた声掛けのタイミングも重要です。一つ一つの動作に合わせ、促しの言葉掛けが必要な場合もあります。 患者さんが暴力的になる背景には、過去に恐怖につながる経験があるのかもしれません。家族に聞くと、ケアのヒントが見つかるかもしれません。もし、暴力的になった場合は、感情を汲み取り「怖がらせてごめんなさい」などの声掛けをして、その場で清拭することにこだわらず、日を改めてもよいでしょう。 執筆関 千代子(せき・ちよこ)つくば国際大学医療保健学部 看護学科教授 監修堀内ふき(ほりうち・ふき)佐久大学 学長記事編集:株式会社メディカ出版 【引用・参考】1)中島紀恵子ほか編.『認知症高齢者の看護』東京,医歯薬出版,2007,170p.

特集
2022年5月31日
2022年5月31日

排泄の失敗がある場合の対応【認知症患者とのコミュニケーション】

患者さんの言動の背景には何があるのか? 訪問看護師はどうかかわるとよいのか? 認知症を持つ人の行動・心理症状(BPSD)をふまえた対応法を解説します。第10回は、オムツを外してシーツに失禁する患者さんの行動の理由を考えます。 事例背景 80歳代男性。10年前に脳梗塞を発症、2年前に脳血管性認知症の診断を受け、行動障害もみられている。会話は通じず、意味不明の言葉を発することもある。便意・尿意が不明なため、オムツを使用している。オムツを外してシーツに失禁することを繰り返し、シーツ交換してオムツをしようとすると抵抗する。看護師が「オムツはお嫌ですか?」と尋ねると、「そんなことない」と答えるが、いつもシーツが濡れている。 なぜ患者さんはオムツを外してしまうのか? 「オムツはお嫌ですか?」と看護師が尋ねていますが、患者さんはそもそも、問われている意味がわかっていないのかもしれません。脳血管性認知症で行動障害もみられており、認知症の特徴である失行・失認が背景にあると考えられます。 オムツを外す理由は二つ考えられます。 一つは、排泄するために下着を脱ぐように、排尿前にオムツを外している可能性です。そもそもオムツをしていると思っていない患者さんにとっては、下着(オムツ)を外すことは排尿時の当然の動作であり、「排尿もできてすっきり!」という気分と思われます。 もう一つは、オムツをしていること自体に不快感があるため、不快なものは除去したい本能から無意識に外している可能性です。説明してオムツをしても、患者さんには失認があり、オムツの目的を理解していません。自分が失禁してシーツを汚してしまったことを、まったく把握していないと考えられます。 患者さんをどう理解する? 認知症の患者さんとのやりとりで、質問に対して的確なあいづちや返事が返ってくることがあります。そんなとき、話が通じていると思いがちですが、実際はまったく通じていないことも少なくありません。 この患者さんは失禁を繰り返しているため、失禁が患者さんに及ぼす影響と、排泄への援助を考えていきましょう。 失禁が患者さんに及ぼす影響 ・皮膚の汚染は、皮膚の損傷に結びつく・失禁後の不快な状況から逃れようと次の行動をとることもあるため危険防止が必要・部屋に尿臭が漂い、周囲へ不快感を与えることにもなる・排尿の量が多いこともあるため、尿失禁への対応は早いほうがよい 尿失禁に至る疾患はさまざまありますが、この患者さんは、認知症によって、膀胱内に尿が貯留したという情報が脳に伝わっても正しく判断できず、その後の指令や行動がとれない状況だと思われます。 一般的な認知症患者さんにおける排泄問題への対応 認識の低下による場合 「トイレの場所がわからない」「膀胱内に尿がたまっていることがわからない」「尿意があっても脱衣の方法がわからない」「トイレや便器の認識ができない」などの状況で排泄がうまく行えず失禁してしまいます。トイレの位置がわからない場合は、目印になるものをつけ、夜間はなるべく明るさを確保できるように照明を工夫しましょう。 尿意がある場合 じっとしていられず、うろうろしたり、独り言をつぶやきながら動き回ったり、下着を下ろそうとしたり、下着に手を伸ばしたりといった動作をとる患者さんがいます。これらの行動は、排泄をしたいサインであることが多いです。その人特有のサインもあります。サインを見逃さず、トイレへ誘導しましょう。 尿意がない場合 患者さんの一日の水分・食事摂取量を観察し、一定の時間間隔をあけてトイレに誘導しましょう。 失禁後の対応 失禁後には、寝衣やシーツの交換など、介助者が慌ただしく動きます。患者さんは、その状況から、自分の存在が歓迎されていないと感じ取ります。失禁に対し迅速な対応は必要ですが、患者さんが存在を否定された気分にならないようなかかわりが必要です。言葉の意味はわからなくても、介助者の表情や口調から感じ取れるため、穏やかな口調で、目を合わせ、にこやかに接しましょう。 脳血管性認知症 脳血管性認知症は、脳梗塞や脳出血などの脳血管障害がもとになって発症する認知症です。急激に認知症が発症することもありますし、小さな脳血管障害を繰り返し少しずつ認知症が進むこともあります。出現する症状は、脳の障害部位によって異なります。 脳血管性認知症の特徴は、次の六つです。・脳血管が障害を受けた部位の働きは悪くなるが、障害を受けていない部位の機能は保持されていることが多い。・脳の障害によって、症状の変動や悪化がある。・注意力の低下よりも、意欲の低下(アパシー)が目立つ場合が多い。・感情のコントロールが困難で、急に泣いたり怒ったり、感情の起伏が激しくなる。・手足の麻痺、歩行障害、言語障害、排尿障害(頻尿、尿失禁など)など、日常生活に支障が起きる。・脳血管障害による高次脳機能障害がある(失行、失語、失認、注意障害など)。 こんな対応はDo not! × 患者さんを問い詰める× 寝衣交換をせかす× 患者さんの目の前で慌ただしくシーツ交換をする こんな対応をしてみよう! シーツや寝衣類の交換時には、必ず声を掛け、患者さんの意識が向けられるように行いましょう。「濡れていて気持ち悪いですね。大丈夫ですよ。すぐに交換しましょうね」と目を合わせ肩などに手を触れ、穏やかに話し掛けましょう。 オムツの使用が必要な場合には、患者さんの体型や体質、オムツの肌触りなどを考慮して、個々人に合わせて、できるだけ快適なものを選択することが大切です。また、夜間に心地良い睡眠がとれるような身体的準備や、環境を整えましょう。 執筆茨城県立つくば看護専門学校佐藤圭子 監修堀内ふき(ほりうち・ふき)佐久大学 学長 記事編集:株式会社メディカ出版 【引用・参考】1)厚生労働省.『認知症施策』https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/ninchi/index.html

あなたにオススメの記事

× 会員登録する(無料) ログインはこちら