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咳喘息の症状チェックリスト 百日咳・気管支炎との鑑別や治療・対策
咳喘息の症状チェックリスト 百日咳・気管支炎との鑑別や治療・対策
特集
2024年10月22日
2024年10月22日

咳喘息の症状チェックリスト 百日咳・気管支炎との鑑別や治療・対策

咳が長引く症状に悩まされることはありませんか? もし、息苦しさや喘鳴がないのに咳だけがしつこく続く場合、咳喘息の可能性があり、早期の診断と適切な治療が重要です。 この記事では、咳喘息の特徴や症状、その他の疾患との鑑別方法、治療について解説します。自身の健康管理や訪問看護先の利用者さんのアセスメントなどに活かすために、咳喘息について確認しておきましょう。 咳喘息とは 咳喘息は、気道が過敏になり、長期間にわたって咳だけが続く状態を指します。喘鳴(ゼーゼー、ヒューヒューという呼吸音)や呼吸困難を伴わず、呼吸機能はほぼ正常なことが特徴です。咳喘息は「喘息の前段階」ともいわれ、適切な治療が行われないと約30%の患者が典型的な喘息に移行するリスクがあります。 季節の変わり目や梅雨時、台風シーズンに発症しやすく、冷気や空気の乾燥、ハウスダスト、花粉などが引き金となります。特に秋から冬にかけての寒冷な時期に悪化することが多いため、この時期に咳が長引く場合は咳喘息の可能性も。 咳喘息の症状・チェック リスト 下記の症状に当てはまる場合、咳喘息の可能性があります。 咳の持続期間が8週間以上である喘鳴や呼吸困難の症状がない夜間や早朝に咳が悪化する季節の変わり目や特定の季節に咳が出やすい気道過敏性の増強を感じる咳が長引くが、ほかの症状はみられない気管支拡張薬で咳が軽減する冷気にあたったとき、乾燥しているとき、運動しているときなどに咳が出やすい喀痰がほとんど出ない「コンコン」「ケンケン」等の乾いた咳(乾性咳嗽)である 喘息とその他疾患との鑑別 咳喘息は他の呼吸器疾患と症状が似ているため、鑑別が重要です。各疾患の特徴と鑑別のポイントは下記のとおりです。 疾患名主な特徴鑑別のポイント百日咳上気道感染症状出現後、吸気性笛声(ヒューという笛のような音)を伴う特有の短く乾いた連続性・痙攣性の咳発作(痙咳発作)がみられるのが特徴          鑑別には検査診断が必要。 病原体検査(菌培養、血清学的検査、遺伝子検査)にて確定診断胃食道逆流症(GERD)    胃酸が逆流することで気道やのどを刺激し、咳を引き起こす  胸やけ、呑酸など食道症状を伴う。会話・食事中・体動などのタイミング、また夕方~夜にかけて、横になると咳が悪化しやすく、夜間の咳は少ない。 プロトンポンプ阻害薬(PPI)や消化管機能改善薬で症状が改善副鼻腔気管支症候群副鼻腔炎と気管支炎が同時に発症し、痰を伴う湿った咳が特徴気管支拡張所見や膿性痰の有無が鑑別のポイント。マクロライド系抗菌薬や去痰薬による治療が有効慢性気管支炎喫煙が主な原因で、痰が絡む咳が特徴長期の喫煙歴、労作時の呼吸困難感があり。呼吸機能検査にて閉塞性障害の有無を確認し鑑別  アトピー性咳嗽季節性の症状で、のどの掻痒感やイガイガ感がある。喘鳴や呼吸困難感の伴わない乾いた咳が続く  気管支拡張薬が効かないことが鑑別のポイント。 アトピー素因あり(アレルギー疾患の既往、末梢血好酸球増加、特異的IgE抗体陽性など)。 ヒスタミンH1受容体拮抗薬やステロイド薬が有効 咳喘息の治療 咳が2~3週間以上続く場合は、早めに医療機関を受診することが推奨されます。8週間以上咳が続いている場合は、咳喘息の可能性が高く、専門医の診断が必要です。 治療は主に吸入ステロイド薬(ICS)と気管支拡張薬が用いられます。吸入ステロイド薬は気道の炎症を抑え、咳症状を軽減することで、咳喘息の進行や喘息への移行を予防しますが、難治性の場合、長期的な治療の継続が必要になります。吸入ステロイド薬を中心とした治療により症状が改善すれば薬剤の減量が可能ですが、治療を中止すると再燃するリスクが高くなるため、慎重な対応が求められます。 妊娠中の咳喘息 妊娠中は悪阻(つわり)の影響で胃酸の逆流が生じ、それが咳喘息を悪化させることがあります。この場合、胃薬が有効な場合もありますが、妊娠中は薬の使用に制限があるため、医師と相談の上、最適な治療法を選択することが重要です。 訪問看護中の対策 咳喘息の方が訪問看護を行う際は、訪問先のタバコの煙やハウスダスト、ペットの毛などが気道を刺激して症状を悪化させる可能性があります。 訪問時にはまず、部屋の換気を徹底することが大切です。特にタバコを吸う家庭や、ホコリが溜まりやすい環境では、新鮮な空気を取り入れることで症状緩和につながる可能性があります。換気は感染症予防にも効果的なため、訪問先の利用者さんからも理解を得やすいでしょう。 また、マスクを着用することで、ハウスダストやタバコの煙の吸引を防ぎ、気道の保護につながります。特に冬場や花粉の多い季節には、マスク着用を心がけましょう。 *** 咳喘息は長引く咳が特徴で、特に夜間や早朝に悪化しやすい疾患です。自然に治ることはなく、放置すると、典型的な喘息に移行するリスクがあるため、早期の診断と適切な治療が不可欠。主に吸入ステロイド薬(ICS)と気管支拡張薬を用いた長期間の継続的な治療を行うことになります。訪問先の環境によっては症状が悪化する可能性もあるため、必要な対策を取りましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:村田 朗医療法人財団日睡会 理事長御茶ノ水呼吸ケアクリニック 院長日本医科大学内科学講座(呼吸器・感染・腫瘍部門)非常勤講師。日本医科大学、 同大学院卒業。資格・学会:医学博士、日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本睡眠学会会員、肺音(呼吸音)研究会世話人、東京呼吸ケア研究会幹事、American Thoracic Society 会員、European Respiratory Society 会員、International Lung Sounds Association 会員、NPO法人日本呼吸器障害者情報センター顧問、東京都三宅村呼吸器専門診療委託医、日本医師会認定産業医、身体障害者福祉法指定医(呼吸器)、千代田区公害健康被害診療報酬審査委員。 【参考】〇新実 彰男.「第 113 回日本内科学会講演会 結実する内科学の挑戦~今,そしてこれから~」『慢性咳嗽の病態,鑑別診断と治療』日本内科学会雑誌.105巻9号.(2018年4月15日)https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/105/9/105_1565/_pdf2024/10/21閲覧〇斎藤 純平.「咳喘息」.日内会誌 109:2116~2123,2020https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/109/10/109_2116/_pdf2024/10/21閲覧

「透析療法」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
「透析療法」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
特集
2024年10月15日
2024年10月15日

「透析療法」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回は腎不全の治療として導入される透析療法をメインに取り上げ、訪問看護に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 透析療法の基礎知識 推定糸球体濾過量(eGFR)が30mL/分/1.73m2未満(CKDの重症度分類:G4)の患者は、腎代替療法(RRT:renal replacement therapy)である血液透析や腹膜透析、腎移植について教育を受ける必要があります。透析導入より3~6ヵ月以上前の腎臓専門医への紹介は、透析導入後の良好な予後が期待できます。多職種によるRRTの説明と教育を行うことが、腎障害進行速度の抑制、緊急透析の回避、RRTの選択に関連することが報告されています。 日本では慢性透析療法を受けている患者数が約35万人いて、台湾、韓国に次いで世界第3位の透析大国です。RRTは進行したCKD(慢性腎臓病)患者の生活の質(QOL)を改善させ維持することを目的としています。高齢または複数の合併症を有する患者は、RRTを望まない可能性があります。緩和ケアによる苦痛の軽減が重要です。 >>関連記事「慢性腎不全(CKD)」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】CKD(慢性腎臓病)について詳しく解説しています。 透析療法の種類 透析療法には血液透析と腹膜透析があります。また、ここでは先述したRRTの1つ、腎移植についても紹介します。 血液透析 血液透析は、半透膜で隔てられた血液と透析液を対流させ、濃度勾配に逆らう対流と拡散によって血液中の溶質を除去します。週3回、4時間程度の通院治療が必要です。透析室での拘束時間に加え、透析中または透析後の低血圧、透析後の過度の疲労が問題となることがあります。 腹膜透析 腹部に留置したカテーテルから腹腔に透析液を注入します。腹膜が半透膜の役割を果たし、腹膜を介して拡散と浸透の原理により水と物質の交換が可能になります。この方法を連続携行式腹膜透析(CAPD)といいます。透析液の交換は1日に約3~4回行われます。日中に交換を行うこともできますが、サイクラーと呼ばれる自動腹膜透析装置を用いれば眠っている間に透析液を交換することができます。この方法をAPD(自動腹膜透析)といいます。 腹膜透析の利点には、時間の制約が少ないため自律性を高められることや穿刺の苦痛がないといったことが挙げられます。腹膜透析の生命予後は血液透析とほぼ同じですが、近年では腹膜透析の方が予後はよいとの報告があります。 腹膜炎は死亡率の増加に関連する重大な合併症で、感染を繰り返すと腹膜障害により透析療法の効果が低下します。腹膜透析に関連した腹膜炎の発生頻度は低く、2~3年に1回程度です。通常はグラム陽性球菌(皮膚常在菌)が原因で、カテーテルを取り扱う際の適切な皮膚衛生と無菌的手技が重要となります。 腎移植 平均余命とQOLを改善し、透析と比較して医療コストの大幅な削減をもたらします。わが国では深刻な死体腎提供不足のため、生体腎移植に依存しています。その一方で、生体腎ドナーが腎臓を提供することで末期腎不全に至るリスクが増加するという問題があります。 また血液透析や腹膜透析を開始する前に施行される先行的腎移植が行われることもあり、有用性が示されています。 図1 RRTの種類 RRT導入は尿毒症の症状や検査所見(脳症、嘔吐、肺水腫、高カリウム血症、出血)およびeGFR<15mL/分/1.73m2で判断します。 合併症と治療 血液透析や腹膜透析では次の合併症が起こることがあります。 感染症 感染症は末期腎不全(ESKD: end stage kidney disease)における死亡原因の第1位です。透析患者では、B細胞の減少やT細胞による免疫反応の低下に加え、穿刺により皮膚から細菌が侵入する危険があります。発熱の原因は感染症が多く、悪寒戦慄(毛布をかけても体の震えが止まらない)がある時は菌血症の可能性が高くなります。 透析時に脱血や返血で使用するバスキュラーアクセスの感染が48~89%です1)。バスキュラーアクセス以外の感染症の存在を確認するため、発熱以外に咳や痰、腹痛や下痢、頻尿や残尿感がないかを問診する必要があります。抗菌薬投与前に血液培養や痰培養、尿培養を考慮します。菌血症が疑われる場合には、血液培養の結果を待つことなく抗菌薬治療が開始されます。 心血管疾患 心臓突然死は第二の死因です。透析中の血清電解質の急激な変化や慢性的な容量負荷が心肥大を起こします。また、カリウムやカルシウムなどの電解質、血圧、体液量、pHの変化が不整脈の原因となります。 弁膜症(特に大動脈弁狭窄症)も多く、透析中の急激な体液除去によって誘発される透析内低血圧は、臓器低灌流による心血管系および中枢神経系の障害を引き起こす可能性があります。また、透析患者は動脈硬化進行例が多いです。 むずむず脚症候群(RLS:restless legs syndrome) むずむず脚症候群とは、安静時や夜間に生じる、下肢がむずむずするような不快感や異常知覚のことです。周期的に脚がぴくつき、不眠となる場合があります。原因は脳のドパミン系の機能異常で、鉄剤による鉄の補充やドパミン作動性抗パーキンソン病治療薬(プラミペキソール、ロチゴチン)が有効です。 メンタルヘルス 透析患者の5~10人に一人はうつ病を有している可能性があります。不眠(または過眠)、食欲低下(または過食)、抑うつ気分、今までに楽しめていたことが楽しめないという症状があれば、担当医に連絡することが必要です。 かゆみ そう痒症の病因は明らかではありません。透析患者の約70%程度にみられます。夜間や透析中(または透析直後)に背部や顔、シャント肢を中心にかゆみを訴えることが多いのが特徴です。保湿剤、タクロリムス軟膏、ステロイド外用薬が治療に用いられます。訴えがなくても、かきむしったあとがあるかどうか、皮膚の観察を行いましょう。 透析患者で注意すべき薬剤 腎機能が低下している透析患者には注意すべき薬剤があります。表1に主なものをまとめました。また、薬剤投与量の一覧表は日本腎臓病薬物療法学会のホームページから無料で閲覧ができます。 ▼日本腎臓病薬物療法学会「腎機能低下時に最も注意が必要な薬剤投与量一覧」https://www.jsnp.org/ckd/yakuzaitoyoryo.php 表1 透析患者で注意すべき薬剤 慢性心不全治療薬                  予後改善薬とされるRAS(レニン・アンギオテンシン系)阻害薬、ARNI(アンジオテンシン受容体ネプライシン阻害薬)、β遮断薬、MRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)をすべて使用すると高カリウム血症や血圧低下を起こす可能性がある降圧薬● 腎排泄型のβ遮断薬は減量して使用する● 特殊な膜を用いた透析ではACE(アンジオテンシン変換酵素)阻害薬の使用が禁忌となる● MRAは高カリウム血症のリスクが上昇する抗凝固薬● 直接経口抗凝固薬(DOAC:direct oral anticoagulant)は禁忌● ワルファリンを使用することもあるが、出血性合併症に厳重な注意が必要脂質異常症治療薬● すべてのスタチンとペマフィブラート、エゼチミブは使用できる● ベザフィブラートとフェノフブラートは禁忌血糖降下薬● インスリン、GLP-1受容体作動薬、DPP-4阻害薬(腎排泄型では減量)が用いられる● SU(スルホニル尿素)薬やメトホルミン、ピオグリタゾン、SGLT2阻害薬は避けたほうがよい鎮痛薬● アセトアミノフェンは常用量で使用できる● トラマドールやプレガバリン、ミロガバリンは減量が必要● モルヒネやコデインは代謝物が蓄積するため避けたほうがよい 訪問時における病歴聴取/身体所見のポイント 発熱があれば、バスキュラーアクセス部位の発赤や腫脹、咳や痰、腹痛や下痢、頻尿や残尿感についてアセスメントします。 設定されたドライウェイト(身体に溜まった余分な水分を透析療法によって取り除いたときの体重)を基準とした体重増加、心不全を示唆する夜間発作性呼吸困難、SpO2低下、肺のcrackles(クラックル)、頸静脈怒張、下腿浮腫について確認し、心不全をできるだけ早期に発見します。 不眠(または過眠)、食欲低下(または過食)、抑うつ気分、今までに楽しめていたことが楽しめない気持ち、希死念慮について確認します。 最新トピックス透析の差し控えや継続中止の決断に至った場合、保存的腎臓療法(CKM:conservative kidney management)を行う必要があります。CKMには共同意思決定(SDM:shared decision making)と患者中心のケア、積極的な症状管理、アドバンス・ケア・プランニング(ACP:advance care planning)の重視、末期腎不全(ESKD:end stage kidney disease)の進行を遅らせるための介入が含まれています。CKMとRRTの比較に関するシステマティックレビューによれば、生存率はRRTのほうが有意に良好でしたが、QOLについては同等あるいはCKMのほうが良好な傾向にあったことが報告されています。 患者の意思の尊重 患者が自分らしく、よりよい最期を迎えることができるよう、人生の最終段階における医療とケアを進めていくことが大切です。医療従事者から適切な情報の提供と説明がなされたのちに、患者本人が意思を決定することが重要です。本人が自らの意思を伝えられない状態になった場合には、家族の希望を問うのではなく「ご本人がもし意思表示できるとしたらどのように仰ると思いますか」と家族と医療従事者で患者の意思を推定する必要があります。 ● eGFRが30mL/分/1.73m2未満(G4)の患者は、腎代替療法(血液透析、腹膜透析、腎移植)について教育を受ける必要があります。● 透析の合併症では感染と心臓突然死に注意します。● 透析患者では薬の減量が必要になることや使用禁忌の薬があります。   執筆:山中 克郎福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 特任教授、諏訪中央病院 総合診療科 非常勤医師、大同病院 内科顧問1985年 名古屋大学医学部卒業名古屋掖済会病院、名古屋大学病院 免疫内科、バージニア・メイソン研究所、名城病院、名古屋医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授/救命救急センター 副センター長、諏訪中央病院 総合診療科 院長補佐、福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 教授を経て現職。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)Vandecasteele SJ,et al.:Staphylococcus aureus infections in hemodialysis: what a nephrologist should know.Clin J Am Soc Nephrol 2009;4(8):1388-400. 【参考文献】○日本腎臓学会:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.東京医学社,東京,2023.○日本透析医学会:2022年慢性透析療法の現況.2022年末の慢性透析患者に関する集計,2022.https://docs.jsdt.or.jp/overview/file/2022/pdf/01.pdf2024/07/8閲覧○Chick D,et al.:Chronic kidney disease.MKSAP19 Nephrology,American College of Physicians,p75-91,2021.○坂井正弘他編集:透析療法のすべて.Hospitalist 2023;11(2).○透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言作成委員会:透析の開始と継続に関する意思決定プロセスについての提言.透析会誌 53(4):173~217,2020○Tsai HB, et al.:Conservative management and health-related quality of life in end-stage renal disease: a systematic review.Clin Invest Med 2017;40(3):E127-E134.○Ren Q, et al.:Quality of life, symptoms, and sleep quality of elderly with end-stage renal disease receiving conservative management: a systematic review.Health Qual Life Outcomes 2019;17(1):78.○厚生労働省:人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン.2018.https://www.mhlw.go.jp/file/04-Houdouhappyou-10802000-Iseikyoku-Shidouka/0000197701.pdf2024/7/8閲覧

CPAP療法とは?知っておきたい適応や禁忌、治療継続につながる対応
CPAP療法とは?知っておきたい適応や禁忌、治療継続につながる対応
特集 会員限定
2024年10月8日
2024年10月8日

CPAP療法とは?知っておきたい適応や禁忌、治療継続につながる対応

睡眠時無呼吸症候群は、いびき・日中の眠気・倦怠感などの症状がみられる疾患で、在宅診療でも遭遇することがあります。上気道の狭窄が原因であることが多く、CPAP(持続陽圧呼吸)療法が行われています。今回はCPAP療法の適応・装置・メンテナンス法などを紹介します。 CPAP療法の適応疾患・基準 睡眠時無呼吸症候群の治療に用いられる 睡眠時無呼吸症候群(sleep apnea syndrome:SAS)は、夜間の断続的な低酸素血症・高二酸化炭素血症・睡眠の分断などが原因で、いびきのほかに日中の眠気・倦怠感などを感じるようになる疾患です。2003年の新幹線オーバーラン報道がきっかけで、SASは世間一般にもよく知られるようになりました。 日本人を対象とした研究では、男性で約24%、女性で約10%に睡眠呼吸障害が報告されており1),2)、SASは有病率の高いcommon diseaseであると考えられています。心血管イベントや認知機能低下などのリスクも高くなることから、適切な治療が必要です。 SASは、上気道が閉塞してしまう「閉塞性睡眠時無呼吸」と、気道閉塞を伴わない「中枢性睡眠時無呼吸」に大きく分類されます。CPAP(continuous positive airway pressure)療法は、持続的に気道へ圧力をかけることで上気道の閉塞を解除し無呼吸を改善する治療法で、閉塞性睡眠時無呼吸に対して有効となります(図1)。 ただしCPAP療法はあくまで対症療法であり、根本的な原因治療ではないことを知っておかなければいけません。肥満であれば減量を試みる価値がありますし、扁桃肥大・アデノイドなど耳鼻科疾患があれば、その切除を検討することが必要です。 図1 CPAP療法のしくみ AHI20以上で在宅CPAP療法が適応に 在宅CPAP療法の使用基準は診療報酬上、以下に該当することとされています3)。 (1)無呼吸低呼吸指数(apnea-hypopnea index:AHI、1時間あたりの無呼吸および低呼吸数)が20以上であること(2)日中の傾眠・起床時の頭痛などの自覚症状が強く、日常生活に支障を来していること(3)睡眠ポリグラフィー上、頻回の睡眠時無呼吸が原因で、睡眠の分断化、深睡眠が著しく減少または欠如し、CPAP療法により改善する症例であることC107-2 在宅持続陽圧呼吸療法指導管理料 ただし、睡眠ポリグラフ検査(polysomnography:PSG)は、睡眠時にさまざまなセンサーを取り付ける煩雑な対応が必要で、入院で実施する必要があります。そのため、自宅で実施可能な施設外睡眠検査をはじめに行うことも多く、AHI の代わりに呼吸イベント指数(respiratory event index:REI)40以上の結果が得られ、かつ上記の(2)の症状を認めれば、CPAP療法の導入を行うことができます。 CPAP療法が使用できないケース CPAP療法は、嚢胞性肺疾患(巨大なブラがある、肺リンパ脈管筋腫症、Birt-Hogg-Dube症候群など)、気胸、病的な低血圧症、脱水症、脳脊髄液の漏れ・頭部外傷歴・頭蓋内気腫がある患者さんには使用できません。 またSASの症状があっても、AHIが5〜20の場合はCPAP療法の適応とはなりません。ただし、歯科で作製してもらった口腔内装置(マウスピース)を用いた治療は行うことができます。 CPAP療法の標準装備 CPAP装置は、メーカーによりデザインの違いはあるものの、そのしくみはほとんど同じです。CPAP装置に加え、加湿器(CPAP装置と一体型になっているものも多い)、チューブ(もしくは加温チューブ)、マスクが標準装備です(図2)。 図2 CPAP療法に必要な装置 マスクの形にも種類があり、鼻全体を覆うタイプ(ネーザルタイプ)、鼻腔に当てるタイプ(ピロータイプ)、鼻と口全体を覆うタイプ(フルフェイスタイプ)があります(表1)。ネーザルタイプが一般的ですが、それぞれにメリット・デメリットがあるので、適切なマスクを選択することが必要です。 表1 CPAPマスクの種類と特徴 マスクの装着方法 マスクのタイプ、メーカーによって装着方法は少し異なりますが、よく使用されているネーザルタイプの標準的な装着方法を紹介します4)。(1)マスクはチューブから外し、単体で装着する(2)マスクの左右の方向を確認し、マスククッションを鼻に当てる(3)ストラップあるいはヘッドギアを装着する(4)マスクからリークがないよう、また痛みを感じることがないよう、バンドを調整しマスクをフィットさせる(5)最後にチューブをマスクに接続し、CPAP装置を起動させる 各メーカーがマスクの装着方法を動画で紹介しているので、一度確認しておくとよいでしょう。 ネーザルマスクを用いる際に、開口が問題となる場合には、顎が下がらないようにチンストラップや細いテープの使用を考慮します。 CPAP療法の実際 患者さんごとの最適な圧力調整が必要 CPAPの陽圧値は、固定圧あるいは自動圧調整(Auto CPAP)で設定します。固定圧は、それぞれの患者さんに適した一定陽圧を調整し決めなければならないので(タイトレーションといいます)、適切な管理ができるまで細やかな調整が必要となります。 それに対しAuto CPAPは、装置内のセンサーを用いて無呼吸や気流制限を解析し、睡眠中の圧力を自動的に増減させるしくみです。基本的に最低・最高圧を設定するだけでいいのでタイトレーションが簡便であり、近年頻用されるようになっています。しかし、圧力変動で違和感を覚える場合があること、睡眠状況の変化を察知してから圧力調整が行われるため予防的効果が低くなってしまうことがデメリットとして挙げられます。 陽圧そのものが不快に感じられることは多く、CPAP開始後にゆっくりと圧力を上昇させるramp機能や、呼気時に圧力を下げる機能が備わっているものもあります。 アドヒアランス低下の要因に適切に対応 CPAP療法は、患者さん自身が治療方針に賛同し、積極的に治療を継続する「アドヒアランス」が大切です。アドヒアランスが低下する原因として、鼻閉感、鼻の刺激、口の乾燥、腹部膨満感、リークの刺激、マスク痕や皮膚の炎症などが挙げられます。抗ヒスタミン薬の導入、加温加湿器の使用、マスクフィッティングの調整、圧設定の調整、皮膚保護など、患者さんの訴えに合わせた対応をすることで、アドヒアランスの向上が期待できます。 CPAP療法を継続できない患者さんには、顎矯正手術や植え込み型舌下神経刺激療法を行うことがあります。高度肥満患者さん(BMI 35以上)には腹腔鏡下スリープ状胃切除術の適応があり、減量することでAHIを低下させられる可能性が報告されています5)。 なお、マグネット付きストラップのマスクは装着が容易ですが、マグネットと相互作用する医療機器(ペースメーカー、植込み型除細動器など)を使用している患者さん、器具(脳動脈瘤クリップ、塞栓コイルなど)が体内に存在している患者さんには使用禁忌となっており、注意が必要です。 治療継続とAHI5以下が目標 CPAP装置の設定は医師が行います。患者さんは寝る直前にマスクを装着し、CPAP装置を起動させるだけでよいです。訪問看護師さんをはじめとした医療従事者は、CPAP装置に記録されたデータをもとに、CPAP療法が適切に行われているか評価します。装着日数を増やすこと、AHIが5以下になること、4時間以上の使用日数が70%以上になるように、アドヒアランス改善を目指します。リークが多いようであれば、マスクフィッティングの再確認が必要です。 CPAP装置は毎日のメンテナンスが必須 CPAP装置使用後は、チューブ差込口や空気取り入れ口にほこりが詰まっていないか毎日確認が必要です。清潔を維持するため、マスク本体はパーツごとに分解し、中性洗剤を用いてぬるま湯で毎日洗います。チューブは使用後吊り下げて保管し、週に1回はぬるま湯と中性洗剤で洗います。加湿器のチャンバーも、毎日使用後にぬるま湯と中性洗剤で洗います。これらの洗浄処置を怠ると、細菌・真菌などが繁殖し感染症の原因となります。なお、実際のメンテナンスは、使用している装置の取扱説明書や添付文書に従い行うようにしてください。 また、マスクやチューブに傷がないか毎日確認する必要があります。問題があればメーカーに問い合わせし交換してもらいます。 執筆:細野 裕貴地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸器内科 診療主任 監修:森下 裕地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター 呼吸ケアセンター センター長竹川 幸恵地方独立行政法人大阪府立病院機構 大阪はびきの医療センター呼吸ケアセンター 副センター長 編集:株式会社照林社 【参考文献】1)Matsumoto T,Murase K,Tabara Y,et al. 「Impact of sleep characteristics and obesity on diabetes and hypertension across genders and menopausal status: the Nagahama study」. Sleep 2018;41(7):1-10.2)松本健. 「本邦の睡眠呼吸障害―ながはまコホートの結果から」. 日本呼吸ケア・リハビリテーション学会誌 2021;30(1):33-38.3)厚生労働省:「医科診療報酬点数表に関する事項」. 20244)帝人ファーマ「操作動画「AirFit N20 マスク」」.https://medical.teijin-pharma.co.jp/product/zaitaku/airfit-n20/movie.html2024/03/29閲覧5)西島宜生.「閉塞性睡眠時無呼吸(OSA)におけるCPAP以外の治療」. 日本内科学会雑誌 2020;109:1082-1088.

食物アレルギーがおさまる時間、症状、対処法
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2024年10月8日
2024年10月8日

食物アレルギーがおさまる時間、症状、対処法は?子どもと大人の違いも解説

食物アレルギーの症状は、軽度から重度までさまざま。花粉症の人が発症しやすい食物アレルギーもあります。本記事では、食物アレルギーの症状や治療法、子どもと大人の違い、アレルギー発症時の対処法、おさまるまでの時間などついて解説します。訪問看護の利用者さんやそのご家族、あるいはご自身の健康管理に役立てるために、食物アレルギーの知識を身につけましょう。 食物アレルギーとは 食物アレルギーとは、免疫システムが特定の食物を誤って有害物質と認識し、それに対して過剰に反応することで発症する疾患です。その多くはIgE抗体が関与しており、食物を摂取した後に、皮膚のかゆみや蕁麻疹、呼吸困難などの症状が現れます。症状が現れるタイミングの多くは、アレルゲンを摂取してから数分~数時間以内ですが、半日ほど経過後に現れる場合もあります。 食物アレルギーにはいくつかの種類があります。最も一般的なのは、甲殻類やそば、ナッツ類などによる「通常の食物アレルギー」です。そのほか、果物や野菜などによって引き起こされる「口腔アレルギー症候群(OAS)」や、ラテックスアレルギーの方が果物を摂取することで起こる「ラテックス・フルーツ症候群」、特定の食物を摂取した後、運動すると起こる「食物依存性運動誘発性アナフィラキシー」があります。それぞれ見ていきましょう。 即時型食物アレルギー 即時型食物アレルギーは、甲殻類、そば、ナッツ類、卵、小麦などが原因となり、発症します。 症状:皮膚の発赤、蕁麻疹、皮疹、咳、喘鳴、腹痛、嘔吐など発症までの時間:食物を摂取してから2時間以内(多くは30分以内)おさまる時間:数日好発年齢:0~1歳(ただし全年齢発症の可能性あり) 複数の箇所に比較的強い症状が現れた状態である「アナフィラキシー」になると、アナフィラキシーショック(症状が進行して血圧が低下し、気道狭窄、呼吸困難、低酸素血症、意識障害を生じた状態)へと進行し、生命に危険が及ぶおそれがあります。 口腔アレルギー症候群(OAS) 口腔アレルギー症候群(OAS)は、特定の果物や野菜を食べた際に発症します。花粉症と密接に関連しており、特定の花粉にアレルギーを持つ人が、似た抗原構造を持つ果物や野菜を食べた際にアレルギー反応を起こします。たとえば、シラカバによる花粉症の人はリンゴやモモ、カモガヤによる花粉症の人はメロンやスイカに反応することがあります。これは、含まれる抗原が似ているために起こる「交差反応」と呼ばれる現象によるものです。 症状:口の中や喉のかゆみ・腫れ・違和感発症までの時間:食物を摂取してから数分以内おさまる時間:30分~1時間程度好発年齢:幼児~成人 ラテックス・フルーツ症候群 ラテックス・フルーツ症候群は、ラテックスアレルギー(※)を持つ人が、特定の果物に含まれる抗原に反応することで発症します。特にバナナ、アボカド、キウイ、栗などの果物は発症リスクが高く、重症化する可能性があります。これは、ラテックスとこれらの果物に含まれる抗原が似ているためと考えられており、摂取する際は注意が必要です。 ※ラテックスアレルギーとは、ゴム手袋や風船などのラテックス製品が皮膚に接触することで発症するアレルギー反応です。 症状:口腔内の違和感やしびれ、顔面浮腫、呼吸困難感、動悸、かゆみを伴う全身性の蕁麻疹など発症までの時間:食物を摂取してから15分程度おさまる時間:体調などにより個人差あり好発年齢:特になし 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA) 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)は、小麦や甲殻類、果物など特定の食物を摂取した後に運動することで症状が出現し、ショック状態にいたることもあります。 FDEIAは激しい運動だけでなく、散歩程度の軽い運動でも発症することがあります。さらに、疲労、寝不足、風邪、ストレス、月経前症状、気象条件、アスピリンや非ステロイド系消炎鎮痛剤(NSAIDs)の服用なども症状を誘発する要因となり得ます。通常の小麦アレルギーとは異なる成分が原因となっており、一般のアレルギー検査では検出できません。そのため、自分がFDEIAに該当するかどうかを確認するためには、専門的な検査が必要です。 症状:蕁麻疹、呼吸困難、気分不快、意識消失発症までの時間:摂取した後2時間以内に運動すると発症するケースが多いおさまる時間:重篤化しなければ1日程度好発年齢:10代~20代 大人と子どもの食物アレルギーの違い 食物アレルギーは子どもと大人で異なる特徴を持っています。その違いについても見ていきましょう。 治る可能性 大人の場合、一度食物アレルギーを発症すると寛解することは困難で、原因となる食品を完全に避ける以外の方法はほぼないとされています。 一方、子どもの食物アレルギーは、成長するにつれて消化管のバリア機能が発達し、アレルゲンに対する耐性がつくことで寛解するケースがほとんどです。たとえば、幼少期に卵アレルギーがあっても、成長するにつれて加熱した卵を食べられるようになり、最終的には生卵を食べてもアレルギー反応が現れなくなります。 自然に耐性を獲得するのが難しい場合、医師の指導のもとで少量のアレルゲンを徐々に摂取して体を慣らしていく「経口免疫療法(経口減感作療法)」という治療法があります。ただし、この治療は副反応が起こりやすく、まれにアナフィラキシーをはじめとした重篤な症状を引き起こす可能性があり、安全性に十分な配慮が求められます。一部の症例には治療効果はありますがエビデンスレベルは低いため、食物アレルギーの一般診療としては推奨されていません。 アレルギー出現時の対処方法 アレルギー反応が出た場合には、迅速かつ適切な対応が求められます。特に、アナフィラキシーショックが発生した場合は、アドレナリン自己注射薬をすぐに使用、救急車を要請し、医療機関での治療を受ける必要があります。 アレルギー反応が軽度の場合、症状は数時間以内におさまることが通常です。一方、アナフィラキシーショックのような重篤な反応では数日間にわたり症状が続き、入院治療が必要な場合もあります。 アレルギーの予防と対策 食物アレルギーを防ぐために、次のポイントを押さえましょう。 食品成分表を十分に確認する 食物アレルギーを予防するためには、食品成分表をしっかりと確認することが重要です。特に加工食品には、思わぬアレルゲンが含まれていることがあるため、注意が必要です。たとえば、チョコレートやクッキーには、小麦、卵、乳製品、ナッツが含まれている場合があります。また、ソースやドレッシングには、大豆や小麦が含まれていることが多いため、小麦や大豆にアレルギーがある方は注意しましょう。 体調の悪いときは避ける 体調が悪いときは、アレルゲンを含む食品を避けることが賢明です。加熱すればアレルギー反応が出ない方も、体調不良のときは避けましょう。たとえば、加熱した卵であれば問題ない程度の卵アレルギーでも、体調不良のときは加熱した卵でも症状が出る可能性があります。 果物アレルギーに関しては、症状が出るときと出ないときがあるため、ひとまず気にせずに食べて、症状が現れたら対処すればよいという考え方の人も少なくありません。そのような方が体調不良のときに果物を食べる場合は、アレルギー反応が現れる可能性を少しでも抑えるために、アレルギーを起こす可能性のあるタンパク質を加熱処理して食べるとよいでしょう。 また、花粉症自体の治療により、食物アレルギーの症状が改善することもあるため、医師に相談してみてください。 食物負荷テストを受ける 食物負荷テストは、アレルギーの有無を確認するための方法で、医療機関や家庭で行うことができます。医療機関で行う場合は、専門医の監督下で少量のアレルゲンを摂取し、反応を観察します。家庭で行う場合は、医師の指導を受けた上で、慎重に進めることが重要です。 災害時に備えておく 災害時には、食物アレルギーを持つ人が避難所で困ることが多いため、事前の準備が必要です。非常用袋や防災セットには、アレルギー対応食品やアドレナリン自己注射薬、抗ヒスタミン薬を備えておきましょう。また、学校や宿泊先などにも、アレルギーについて事前に伝えておくことが大切です。 注意したいのが、炊き出しに使用している食物を確認することです。しかし、炊き出しは大量調理のため、多少のアレルゲンの混入は避けられないものと考える必要があります。 *** 食物アレルギーは、子どもから大人まで誰にでも見られる疾患です。アレルギー反応が出た場合の対応や日常生活における予防策をしっかりと理解し、常に注意を払うことが大切です。今回解説した内容を自身や訪問看護の利用者さん、そのご家族などの健康管理に役立ててください。 編集・執筆:加藤 良大監修:村田 朗医療法人財団日睡会 理事長御茶ノ水呼吸ケアクリニック 院長日本医科大学内科学講座(呼吸器・感染・腫瘍部門)非常勤講師。日本医科大学、 同大学院卒業。資格・学会:医学博士、日本内科学会認定内科医、日本呼吸器学会専門医・指導医、日本睡眠学会会員、肺音(呼吸音)研究会世話人、東京呼吸ケア研究会幹事、American Thoracic Society 会員、European Respiratory Society 会員、International Lung Sounds Association 会員、NPO法人日本呼吸器障害者情報センター顧問、東京都三宅村呼吸器専門診療委託医、日本医師会認定産業医、身体障害者福祉法指定医(呼吸器)、千代田区公害健康被害診療報酬審査委員。 【参考】〇厚生労働省.「4食物アレルギー」https://www.mhlw.go.jp/new-info/kobetu/kenkou/ryumachi/dl/jouhou01-08.pdf2024/9/20閲覧〇日本小児アレルギー学会「食物アレルギーのこどもへの対応」(2017年11月)https://www.jspaci.jp/assets/documents/saigai_pamphlet_2021.pdf2024/9/20閲覧

「慢性腎不全(CKD)」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
「慢性腎不全(CKD)」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
特集
2024年10月1日
2024年10月1日

「慢性腎不全(CKD)」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回は慢性腎不全(CKD:chronic kidney disease)について、訪問看護に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 慢性腎不全(CKD)の基礎知識 腎臓の障害または腎機能低下が3ヵ月以上続く病態を慢性腎不全、CKD(chronic kidney disease)といいます。腎臓の障害は血清クレアチニンの上昇や、タンパク尿またはアルブミン尿の持続、画像診断による両側の腎臓萎縮から判断されます。腎機能低下とは糸球体濾過量(GFR)が60mL/分/1.73m2未満を指します。 日本では成人の8人に1人がCKDとされ、高齢になるほど発症率は高くなり、80歳代では2人に1人といわれています。人工透析にかかる医療費は、患者一人あたり年間500万円にも上ります。医療費抑制の点からもCKDの悪化予防が大切です。 CKD患者のほとんどは末期腎不全に進行しません。30歳以上の健康な成人では、推定糸球体濾過量(eGFR:血清クレアチニン、性別、年齢からGFRを推算した値)の平均低下速度は年間約1mL/分/1.73m2です。アルブミン尿やタンパク尿の増加および/または糖尿病性腎疾患などの危険因子を有する患者は、より急速に進行する可能性が高いです。 CKDの重症度は、GFRのレベルに基づいてG1からG5に分類されます(表1)。アルブミン尿は腎疾患および心血管疾患の罹患率および死亡率の上昇と関連しているため、GFRに基づく腎臓の病期はアルブミン尿の程度によってさらに細かく分かれています。表1で示す緑→黄→オレンジ→赤の順に死亡リスクが高くなります。 表1 CKDの重症度分類 重症度は原疾患・GFR区分・蛋白尿区分を合わせたステージにより評価する.CKDの重症度は死亡,末期腎不全,CVD死亡発症のリスクを緑■のステージを基準に,黄■,オレンジ■,赤■の順にステージが上昇するほどリスクは上昇する.(KDIGO CKD guideline 2012を日本人用に改変) 日本腎臓学会 編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.東京医学社,2023:4.より許諾を得て転載 診断 CKDの診断は先述したとおりですが、日常の臨床では血清クレアチニンから推定するeGFRを用いるのが一般的です。したがって、3ヵ月以上eGFR<60mL/分/1.73m2であることの確認、またはeGFRに関係なくタンパク尿またはアルブミン尿が持続していることの確認が必要です。 なお、eGFRは筋肉量が減少している患者では高めに算出されます。そのような場合はクレアチニンの代わりにシスタチンC値を用いてeGFRを計算します。 合併症と治療 CKDでは次の合併症が起こることがあります。 心血管疾患 心血管疾患はCKD患者の主要な死因です。死亡リスクはeGFRが低下し、アルブミン尿が増加するにつれて高くなります。 高血圧 高血圧を合併する頻度も高く、130/80mmHg未満にコントロールすることが推奨されています(米国心臓病学会(ACC)/米国心臓協会(AHA)『血圧ガイドライン』[2017]、日本腎臓学会・日本高血圧学会『CKD診療ガイド 高血圧編』[2008])。ACE阻害薬またはアンジオテンシン受容体拮抗薬の投与によりCKDの進行を遅らせる可能性があります。ループ利尿薬は心不全を合併している場合に使用されます。食塩摂取量は3~6g/日が推奨されています。 脂質異常症 ほとんどのケースでスタチンによる治療が勧められます。LDL<120mg/dL(可能なら<100mg/dL)を目標とします。 高カリウム血症 カリウム値が高くなると、典型的な心電図変化が見られます。テント状T波やQRS幅の延長、P波の消失、またQRS波とT波の区別が難しくなりサインカーブのように変化する心電図所見を認めます(図1)。腎機能の悪化した患者が徐脈性ショックを起こしたケースでは、高カリウム血症を必ず鑑別診断に挙げなければなりません。 図1 高カリウムの時の心電図 腎性貧血 腎機能が低下するとエリスロポエチン(EPO)の産生が低下し、正球性正色素性貧血となります。しかし、CKD患者には消化管出血もよく起こるので、鉄欠乏性貧血も確認する必要があります。息切れや動悸、倦怠感、黒色便、食欲低下、体重減少の有無を聞きましょう。 消化管出血に関連し、高齢者の消化性潰瘍(胃潰瘍、十二指腸潰瘍)では腹痛をまったく訴えないことがあります。50歳以上の患者では、常に悪性腫瘍の可能性を考えてください。数ヵ月以内で5%を超える体重減少があったか、上部消化管内視鏡検査や下部消化管内視鏡検査が最近施行されているかを確認することが重要です。  最新トピックス糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬は、糖尿病性腎臓病のみならず、糖尿病非合併のCKD患者においてタンパク尿を有する場合、腎機能低下の進展抑制、心血管疾患イベントおよび死亡の発生抑制ができることが分かりました1)。 訪問時における病歴聴取/身体所見のポイント CKDのリスクとなる高血圧や糖尿病、腎疾患、膠原病、高尿酸血症の治療歴を確認します。NSAIDs(非ステロイド系抗炎症薬)やプロトンポンプ阻害薬(PPI)の内服や喫煙についてもチェックが必要です。 [注]NSAIDsの内服は、腎機能や心不全の悪化、消化性潰瘍を起こします。PPIは間質性腎炎を起こすことが知られています。担当医に服薬状況を伝えましょう。 ほとんどのCKD患者に症状はありません。進行すると全身や下腿に浮腫がみられます。心不全はできるだけ早期に診断して治療を行うことが重要です。心不全を示唆する次の症状や身体所見に注意してください。 左心不全 左心不全になると、就寝後2~3時間して突然息が苦しくなって目覚めます(夜間発作性呼吸困難)。体動時の息苦しさやSpO2の低下も認められます。進行すると前屈みで座位になっていないと苦しくなります(起座呼吸、図2)。靴紐を結ぶ動作のように前屈みになると息苦しくなるか(ベンドニア、前屈呼吸苦)を確認してもよいでしょう(図3)。息苦しくなれば、左心不全です。両側の肺下部で吸気時にcrackles(クラックル)が聴取されます。膜型聴診器を聴診器の跡が残るくらい強く背中に押しつけ、大きく深呼吸をしてもらうのがポイントです。 図2 左心不全における起座呼吸 臥位で呼吸困難が増強し、起座位で軽減する状態を起座呼吸という。前屈みで座位になっていないと苦しくなる。 図3 ベンドニア(前屈呼吸苦) 靴紐を結ぶ動作のように前屈みになったときに息苦しくなる症状のことをベンドニアという。 右心不全 右心不全では頸静脈の怒張や肝腫大、両下腿の浮腫を認めます(図4)。座位で頸静脈が確認できれば中心静脈はかなり高いと推定できます。下腿を指で圧迫し痕をつけた後に手を離すと40秒経っても圧痕が残ります(slow edema)。 図4 右心不全の所見 右心不全では頸静脈の怒張や肝腫大、両下腿の浮腫を認める。 * * * 多くの患者では、左心不全と右心不全が同時に起こります(両心不全)。右心不全の最大の原因は左心不全です。急激な体重増加は心不全の悪化を意味するため注意が必要です。また、末期腎不全になると、尿毒症症状(意識障害、頭痛、不眠、疲労感、嘔気、食欲不振、息苦しさ)が現れることがあります。 意識レベルの低下、急激な体重増加、SpO2低下(<90%)、急速な下腿浮腫の悪化があれば担当医に連絡しましょう。 ●CKDの診断には、3ヵ月以上eGFR<60mL/分/1.73m2であることの確認、またはeGFRに関係なくタンパク尿またはアルブミン尿が持続していることが必要です。●CKDは予防が重要。降圧目標は収縮期130/80mmHg未満、食塩制限は3~6g/日とします。●CKDと心不全は合併しやすいです。心不全を示す症状や身体所見を早期にアセスメントしましょう。   執筆:山中 克郎福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 特任教授、諏訪中央病院 総合診療科 非常勤医師、大同病院 内科顧問1985年 名古屋大学医学部卒業名古屋掖済会病院、名古屋大学病院 免疫内科、バージニア・メイソン研究所、名城病院、名古屋医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授/救命救急センター 副センター長、諏訪中央病院 総合診療科 院長補佐、福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 教授を経て現職。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)⽇本腎臓学会:CKD 治療における SGLT2 阻害薬の適正使⽤に関するrecommendation.2022年11⽉29⽇策定.https://jsn.or.jp/medic/data/SGLT2_recommendation20221129.pdf2024/6/17閲覧 【参考文献】○日本腎臓学会編:エビデンスに基づくCKD診療ガイドライン2023.東京医学社,2023:4.○Chick D,et al.:Chronic kidney disease.MKSAP19 Nephrology,American College of Physicians,p75-91,2021.○Heerspink HJL,Stefánsson BV,Correa-Rotter R,et al.:Dapagliflozin in Patients with Chronic Kidney Disease.N Engl J Med 2020;383(15):1436-1446.

新型コロナウイルスとインフルエンザ、症状・潜伏期間・対応を比較
新型コロナウイルスとインフルエンザ、症状・潜伏期間・対応を比較
特集
2024年10月1日
2024年10月1日

新型コロナウイルスとインフルエンザ、同時検査は可能? 症状・潜伏期間・対応を比較

2024年夏は、新型コロナウイルス感染症の第11波が到来し、感染者数が急増しました。冬に向けては、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行が懸念されています。 本記事では、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時検査のほか、症状や潜伏期間、対応策などについて解説します。訪問看護の利用者さんやご家族に質問された際に回答できるようにしておくためにも、確認しておきましょう。 コロナ・インフルエンザ・一般的な風邪の違い 新型コロナウイルス感染症とインフルエンザ、一般的な風邪には、症状や潜伏期間、検査の推奨期間、対応方法などに違いがあります。それぞれ見ていきましょう。 潜伏期間・感染力 潜伏期間(病原体に感染してから症状が現れるまでの期間)と感染力の違いは、以下のとおりです。 病名潜伏期間(一般/最大)感染力のある期間感染力が最も強い期間 新型コロナウイルス1~14日間(平均3日~5日程度)   発症後7~10日発症2日前~3日     インフルエンザ     1~3日間程度発症1日前~発症後5日   発症1日前~3日後風邪2~4日(原因によって異なる)   発症1日前~7日(原因によって異なる)発症直後~2日後 新型コロナウイルスは、潜伏期間が最長2週間程度と比較的長いのが特徴です。ウイルスを体内に保有しながら症状が現れない期間が長いため、感染者は知らないうちに多くの人にウイルスを広めてしまう危険性があります。一方、インフルエンザの潜伏期間は1~3日程度で、風邪と比べても早く症状が発現します。 症状 症状の違いも見ていきましょう。 病名主な症状新型コロナウイルス発熱、咳や痰、咽頭痛、鼻汁、呼吸困難感、倦怠感、味覚・嗅覚障害、頭痛、筋肉痛、消化器症状 などインフルエンザ     発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感、咳、咽頭痛 など風邪くしゃみ、鼻汁、咽頭痛、微熱、発熱、咳、倦怠感 など コロナウイルス感染症では、咽頭痛や鼻汁などの上気道症状に加え、インフルエンザと類似した症状(発熱・倦怠感・関節痛など)を生じることが多いとされています。また頻度は減少しているものの、味覚・嗅覚障害を伴うこともあります。インフルエンザは関節痛、筋肉痛などを伴う全身症状が強く現れるのが特徴的。風邪は軽い咳や鼻水、微熱が中心であり、比較的軽症です。 二峰性発熱に注意 二峰性発熱とは、高熱が一度下がった後に再び発熱する現象を指し、特にインフルエンザや風邪、デング熱、麻疹などの感染症で見られることが多いです。この現象は通常、ウイルス感染による体の反応として現れますが、原因は完全には解明されていません。二峰性発熱は時に重症の合併症を引き起こすことがあり、肺炎や脳症などのリスクもあります。子どもに異常な行動やけいれんが見られた場合、速やかに医師の診察を受けるか、必要に応じて救急車を呼ぶことが重要です。 検査の推奨期間 新型コロナウイルス感染症は、発症から2日目~9日以内に行うことが通常です。 インフルエンザの場合は、検査で陽性が出る期間は発症後1~5日頃です。24時間以内は陽性が出づらい傾向があります。ただし抗インフルエンザウイルス薬が処方された場合、発症から48時間以内の服用が推奨されています。そのため、症状が出始めてから24時間~48時間以内に医療機関を受診し、インフルエンザ検査を受けることが望ましいでしょう。 風邪は、通常は検査を行いませんが、溶連菌感染症やインフルエンザなど検査可能な疾患の疑いがある場合には検査の実施を検討します。 コロナとインフルエンザの同時検査の信憑性は? コロナウイルスとインフルエンザの同時検査は可能ですが、その精度についてはまだ完全に明らかになっていません。特にインフルエンザでは、発熱後すぐに検査すると、偽陰性になる可能性があるため、24時間以上経過してからの検査が推奨されます。検査には、「研究用」と書かれたものは使わず、国が承認した体外診断用医薬品や第1類医薬品を使用することが重要です。   対応と薬 対応方法と薬の違いについては以下のとおりです。 病名対応薬(一般名)新型コロナウイルス自宅療養、酸素吸入、重症者は入院レムデシビル、カシリビマブ/イムデビマブ(抗体カクテル療法)、バリシチニブインフルエンザ       安静、解熱剤の使用、水分補給、必要に応じて入院  抗インフルエンザウイルス薬(オセルタミビルリン酸塩・ザナミビル水和物・ペラミビル水和物注射薬・バロキサビル マルボキシル など)風邪安静、解熱剤の使用、十分な休養アセトアミノフェン、イブプロフェンなど、症状に応じた薬(細菌感染の可能性が高い場合には抗菌薬) なお、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症にかかった子どもが出席停止期間を経過して登校する際、再受診や検査は通常必要ありませんし、治癒証明書や陰性証明書の提出も求められません。しかし、症状が続く場合や医師から再受診の指示があった場合は、指示に従うことが重要です。 治療開始から3~4日経過しても解熱しない場合や、風邪の場合で4~5日以上発熱が続く場合は、再受診を検討してください。なお、むやみに再受診すると感染拡大や体力消耗による悪化を招く恐れがあるため、再受診の目安を事前にかかりつけ医に確認しておくことが大切です。 大人の場合は、症状が改善すれば通常の生活に戻れますが、必要に応じて再受診を考慮してください。 2024~2025年冬の特徴 2024~2025年シーズンは、以下がワクチン製造株として選定されました。 新型コロナウイルスJN.1系統及びその下位系統に対応した株インフルエンザ A型株・A/ビクトリア/4897/2022(IVR-238)(H1N1)・A/カリフォルニア/122/2022(SAN-022)(H3N2) B型株 ・B/プーケット/3073/2013(山形系統)・B/オーストリア/1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統) 一般的に、冬は気温の低下と空気の乾燥により、インフルエンザをはじめとした呼吸器系ウイルス感染症が流行しやすくなります。このため、マスクの着用や手洗い・手指消毒、室内の換気、ワクチン接種などの基本的な感染対策が重要です。インフルエンザと新型コロナウイルスの同時感染の可能性もゼロではありません。適切な予防策を講じましょう。 *** 冬季は、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行が懸念されており、発熱患者の増加に伴い診療所や検査機関が逼迫する可能性があります。そのため、事前に各自で準備を整え、感染予防に努めることが大切です。今回、解説した内容をご自身の体調管理、利用者さんのアセスメントなどにぜひ役立ててください。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇厚生労働省「2024/25シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について」(2024年9月20日)https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/flu/flu/vaccine2024/2024/9/20閲覧〇厚生労働省.「新型コロナウイルス・季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00003.html2024/9/20閲覧〇国⽴感染症研究所「COVID-19の抗原・抗体検査について」(2020年12月22日)https://www.niid.go.jp/niid/images/plan/kisyo/2_suzuki.pdf2024/9/20閲覧〇厚生労働省.「新型コロナウイルス最前線」『第12回新型コロナウイルス感染症の治療について』.広報誌『厚生労働』.2021年10月号 ,(株)日本医療企画,(2021年10月)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202110_00003.html2024/9/20閲覧〇厚生労働省「令和5年度インフルエンザQ&A」(令和5年10月13日版)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2023.html2024/9/20閲覧

スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア
スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア
特集
2024年9月24日
2024年9月24日

スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア【スピリチュアルケア】

患者さんのスピリチュアルペインを時間存在、関係存在、自律存在の枠組みで理解したら、次はスピリチュアルケアを考えていきます。本記事では、スピリチュアルケアの方法として欠かすことのできない基盤となるケアについて解説します。 >>前回の記事はこちら事例で検討 スピリチュアルペインのアセスメント【スピリチュアルケア】 基盤となるケアと特定の苦痛に対するケア スピリチュアルケアに関する欧米論文の文献レビューを行った結果1),2)より、スピリチュアルケアは「全般的なケア」と「個別のケア」とに分けられると報告されています。 「全般的なケア」は、スピリチュアルペインに対するケアの「基盤となる」ものです。「個別のケア」は、高い頻度でみられ、スピリチュアルペインに関連したケアとして考えられるものです。SpiPas(スピパス)の3次元の項目の概念に基づき、関係性、自律性、時間性のそれぞれの概念での特定の苦痛に対する個別のケアになります。 今回は、まず「全般的なケア」である「基盤となるケア」について説明します。 基盤となるケアには以下のものがあります。 信頼関係を構築する生きる意味・心の穏やかさ・尊厳を強めるケアを行う現実を把握することを援助する情緒的サポートを行う置かれた状況や自己に対する認知の変容を促すソーシャルサポートを強化するくつろげる環境や方法を提供する積極的に症状を緩和するチームをコーディネートする ケアの具体的な方法は表1をご覧ください。 表1 全般的なケア スピリチュアルケアの実践に必要な心構え 信頼関係を構築する 深い苦悩を抱えているように見える患者さんがいるとき、その人に対して単に直接的に「スピリチュアルペインはありませんか」とたずねても、患者さんは何も答えようとはしないでしょう。 まずは、身体症状や精神症状としての苦痛が緩和され、患者さんのニーズに沿って生活しやすいように、日常生活援助を適切に丁寧に行うことが大切です。そうした援助から「自分は関心をもたれている、尊重されている」という意識が患者さんに生まれ、信頼関係が築かれていきます。 スピリチュアルな側面に関心を向ける 入院時の問診から前回ご紹介したSpiPas3)のような体系だったアセスメントをしていきます。同時に、日常のケアの場面で患者さんが語る言葉や行動を通して、患者さんの拠り所となっていることへの理解を深めます。患者さんのスピリチュアリティの状態を注意深くアセスメントしていくことが大切です。 患者さんは、「どのように今の時間を過ごしているのか」、「生活において、今どのようなことを大切にしたいのか/これまで何を大切にしてきたのか」をポイントにしていきます。 ケアのニーズをチームで検討する これまでに述べたようなアセスメントを通して、ケアの対象となっている患者さんに、スピリチュアルペインが存在するのか、存在するならばそれはどのような苦悩なのかを把握します。そして、スピリチュアルペインに対するケアのニーズはどのようなものなのかについて、チームによるケアカンファレンスで検討していきます。 スピリチュアルケアの目標 スピリチュアルペインの重要な点は、患者さんの問いかけが、相手(看護師)に答えを求めて発せられるのではないというところにあります。スピリチュアルペインは、他者が答えを与えることでも、解決することでもなく、その痛みや苦しみの意味をその人自身が見出すことで初めてその人にとって真実なものになるのです。 なぜなら、スピリチュアルペインは、まさに、その人自身の主観的領域の核である「価値観」に向き合う痛みだからです。周りの評価や世間の価値観とは異なり、死を前にしたその人自身の価値観が問われる苦しみであるということを、われわれは十分に心得てケアにあたる必要があります。 患者さんが穏やかな状態、納得のできる状態をケア提供者が一緒に見つけていくことが、スピリチュアルケアの1つの目標です。完全に穏やかな状態にはなれなくても、「苦悩をもちつつも生きていける」、すなわち、本人がその人なりに生きていけると思える状態に到達できればよいと考えられます。 スピリチュアルケアは個別性が高いものですので、心理面の対応(適切なコミュニケーション)がケアとなる場合もあれば、死の恐怖のように宗教的対応が必要となる場合もあります。スピリチュアルケアの到達点は、患者さん一人ひとりにとっての、穏やかな状態、苦悩との折り合い、生きる意味の自分なりの納得が目当てになるといえるでしょう。 次回は、「個別のケア」について解説していきます。>>次回の記事はこちらスピリチュアルペインを和らげる個別のケア【スピリチュアルケア】 執筆:前滝 栄子京都大学医学部附属病院 緩和ケアセンターがん看護専門看護師 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)森田達也,鄭陽,井上聡,他.終末期がん患者の霊的・実存的苦痛に対するケア:系統的レビューに基づく統合化.緩和医療学 3,2001,p.444-456.2)森田達也,赤澤輝和,難波美貴、他.がん患者が望む「スピリチュアルケア」―89名のインタビュー調査.精神医学 52,2010,p.1057⁻1072.3)田村恵子,森田達也,河正子編.看護に活かすスピリチュアルケアの手引き.第2版,青海社,2017,p.30.

水痘(水ぼうそう)の症状・対処・予防法 帯状疱疹との関係も解説
水痘(水ぼうそう)の症状・対処・予防法 帯状疱疹との関係も解説
特集
2024年9月17日
2024年9月17日

水痘(水ぼうそう)の症状・対処・予防法 帯状疱疹との関係も解説

水痘(水ぼうそう)は子どもの病気とされていますが、大人もかかる可能性があります。大人がかかると重症化しやすいことに注意が必要です。また、過去に水痘にかかった人は、加齢とともに免疫力が低下すると、帯状疱疹を発症する恐れがあります。この記事では、多くの子どもがかかる水痘の症状や対処方法などを解説します。訪問看護の利用者さんはもちろん、ご自身やご家族の健康管理のためにも、水痘について確認しておきましょう。 水痘(水ぼうそう)について 水痘の症状や原因、感染経路、重症化リスクについてみていきましょう。 症状 水痘帯状疱疹ウイルスに感染後、2週間程度の潜伏期間を経て発疹が現れます。通常、子どもの場合は発疹が最初に現れる症状ですが、大人の場合は発疹が現れる前に発熱と全身倦怠感を伴うことがあります。 発疹は頭皮、体幹、四肢の順で現れ、かゆみを伴います。短時間で紅斑、丘疹、水疱、痂皮へと変化し、数日かけて発疹が現れるため、各段階の発疹が混在することが通常です。また、気道や鼻咽頭、膣などの粘膜にも発疹が現れる場合があります。倦怠感やかゆみ、発熱などが2〜3日続く軽症であることが一般的です。 原因 水痘は、水痘帯状疱疹ウイルスに感染することで引き起こされます。水痘帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルス科のα亜科に属するウイルスで、初めて感染する際は知覚神経節に潜伏感染します。水痘の症状が落ち着いた後も体からウイルスが完全に消失したわけではなく、疲労や加齢などで免疫が低下した際に再び増殖し、帯状疱疹として症状が現れます。 感染経路 水痘帯状疱疹ウイルスは世界中に分布しており、家庭内で起きたものについては90%以上が感染するとされています。感染者の水疱内容物や気道分泌物が主な感染源で、空気感染、飛沫感染、接触感染により広がります。発疹が現れる1〜2日前から出現後4〜5日、または痂皮化するまでは人にうつる可能性があります。そのため、水痘に気づいたときにはすでに周りの人にうつしている可能性があるので、その後の経過を慎重に見ることが重要です。 重症化リスク 水痘の重症化とは、子どもの場合は熱性けいれんや気管支炎、肺炎などの合併症が起きることを指します。大人の場合も合併症が見られることがありますが、水痘そのものが重症化するリスクが高いとされています。大人の水痘が子どもより重症化する理由として、細胞性免疫が強いため感染細胞の障害が著しいこと、成人の発熱性疾患の中では頻度が少ないため診断が遅れる場合があることなどが考えられます。合併症としては、肺炎や脳炎、心膜炎、細菌の二次感染による敗血症などが報告されており、特に免疫機能が低下している場合は、重症化しやすく生命の危険を伴うことも。十分な注意が必要です。 水痘のワクチン接種 水痘のワクチンは、1回の接種で重症化をほぼ100%予防でき、2回の接種によって発症そのものを高確率で予防できるといわれています。予防接種の時期は、1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日までです。1回目の接種は生後12ヵ月から生後15ヵ月まで、2回目の接種は3ヵ月以上の期間を空けて行います。 大人でもワクチン接種は可能で、過去に接種した回数を考慮して接種回数を決定します。なお、終生免疫と考えられてきた水痘も、再感染があることが知られるようになってきました。再感染は健常者でもまれに生じますが、特に免疫が低下した高齢者において報告が散見されているため注意が必要です。帯状疱疹患者の重要な感染源と考えられているため、50歳以上対象の水痘ワクチン投与が推奨されています。 水痘にかかった際の登園は? 水痘は第二種伝染病に該当し、飛沫感染する可能性が高い感染症です。保育園や幼稚園で感染が広がりやすいため、水痘にかかった児童はすべての発疹が痂皮化するまで出席停止となります。一部の保育園や幼稚園では、水痘にかかった児童の登園再開に際して、医師の許可証が必要な場合があります。 水痘と帯状疱疹との関連性 水痘と帯状疱疹は、どちらも水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。子どものころに水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると、水痘を発症するか無症状で経過します。その後、ウイルスは脊髄の近くの神経節に潜伏し、加齢や疲労などで免疫力が低下した際に再活性し、帯状疱疹を引き起こします。 帯状疱疹の予防には、水痘ワクチンの接種が有効です。前述の通り、過去に水痘を発症した人はすでに免疫を獲得しているものの、加齢とともに免疫力が弱まるためワクチン接種を受けたほうがよいとされています。 帯状疱疹の初期症状は、痛みや不快感などです。ピリピリ、ジンジン、ズキズキ、焼けるような痛みなどと形容されます。初期の痛みは通常、帯状の神経に沿って現れます。また、発熱やリンパ節の腫れといった一般的な風邪症状が現れることもあります。 帯状疱疹は上肢から胸背部にかけて現れることが多いものの、顔面や目の周りに発生することも少なくありません。帯状疱疹にかかった際に注意すべきは、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。帯状疱疹が治癒した後も持続的な神経痛が残り、日常生活に支障をきたすことがあります。 * * * 水痘は、全身に発疹が現れて紅斑、丘疹、水疱、痂皮へと短期間で変化します。大人がかかると重症化しやすいため、少しでも感染を疑う症状が見られた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。今回、解説した内容をご自身やご家族の体調管理、利用者さんのアセスメントにぜひ役立ててください。  編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。 【参考】〇厚生労働省「水痘」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/varicella/2024/9/10閲覧〇NIID 国立感染症研究所「水痘とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/418-varicella-intro.html2024/9/10閲覧

「骨粗鬆症」の知識&注意点
「骨粗鬆症」の知識&注意点
特集
2024年9月10日
2024年9月10日

「骨粗鬆症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回は骨粗鬆症について、訪問看護に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 骨粗鬆症の基礎知識 破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を上回ると骨量が減少し、さらに進行すると骨粗鬆症になります(図1)。 図1 正常な骨代謝と骨粗鬆症 正常な骨代謝は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成とのバランスが保たれ、骨量を維持している。骨粗鬆症では、そのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回った状態である 骨粗鬆症の最も重大な合併症は骨折です。大腿骨近位部骨折の1年以内の死亡率は10~35%で、急性心筋梗塞よりも予後は悪いことが知られています1)。大腿骨近位部骨折は骨折部位により骨頭骨折、頸部骨折、転子部骨折、転子下骨折と呼ばれます(図2)。 図2 大腿骨近位部骨折の分類 骨粗鬆症の診断 骨折リスク評価法FRAXを用いる FRAX(fracture risk assessment tool)を用いれば、10年以内の骨折発生リスクを計算することができます。訪問看護中に簡単に計算が可能です。ご自身の骨折リスクもぜひ計算してみてください。 ▼骨粗鬆症財団「骨折評価ツールFRAX」https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/selfcheck/frax.html FRAXで推定した大腿骨近位部骨折の10年リスクが3%以上、または骨粗鬆症関連骨折の主要リスクが20%以上の患者さんは薬物療法の適応に。未治療なら主治医に連絡しましょう。 DEXAで骨密度を計測 骨密度検査ではDEXA法(dual energy X-ray absorptiometry、二重エネルギー X線吸収測定法)を用いて骨密度を正確に計測します。 YAM(young adult mean、若年成人平均)値を基準(100%)に、70~80%を骨減少症、<70%を骨粗鬆症とし、骨折の既往歴があれば、80%以下でも骨粗鬆症と診断されます(図3)。 図3 骨粗鬆症の診断基準 骨量のYAM値が80%未満の場合、注意が必要となる 病歴聴取と身体所見のポイント 骨粗鬆症の原因には次のものがあります。該当する生活習慣や疾患がないかを問診と身体診察で確認しましょう。 アルコール多飲喫煙低体重(BMI<18.5)膠原病[関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)](関節痛や皮疹が出現)クッシング症候群(副腎皮質ホルモンの過剰分泌のため、満月様顔貌や中心性肥満、高血圧が起こる)甲状腺機能亢進症(手の振戦、体重減少、発汗増加、甲状腺腫大を認める)多発性骨髄腫(高齢者で貧血や腰痛、体重減少の場合に想起)薬剤(長期使用):ステロイド、メトトレキサート、抗けいれん薬 椅子からの立ち上がりが困難な場合、近位筋(大腿)の筋力が低下している可能性があります。立ち上がった時にふらつくようなら、バランスが悪いかもしれません。どのような薬でも4種類以上の内服は転倒のリスクを増加させるので注意が必要です。(1)筋力低下、(2)バランスが悪い、(3)4種類以上の薬の使用の3つすべてがあると、1年後の転倒リスクは100%といえます。 主な治療 非薬物療法 食事で十分なカロリーとタンパク質、カルシウム、ビタミンDが摂取できるとよいでしょう。禁煙、適度な飲酒、運動(ウォーキング)、転倒予防(十分な照明、階段や浴室の手すり、バランス訓練)、薬の調整(ステロイドの減量、起立性低血圧やめまいを起こす薬の中止)も重要です。 薬物療法 【ビスフォスフォネート】破骨細胞の働きを抑える第一選択薬です。アレンドロネートとリセドロネートは、椎体骨折を50~70%、大腿骨近位部骨折を40%、非椎体骨折を20~30%減らします。 多くの経口薬は週に1回、起床時に180mLの水で服用します。食道に薬物が長く停滞すると、食道炎や食道潰瘍を起こすため、内服後30分間は座位を保持し、水以外の飲食をしないように指導します。 副作用は胸焼けです。まれに顎骨壊死や非定型大腿骨骨折が生じることも。顎骨壊死は治療中のどの時点でも起こります。非定型大腿骨骨折のリスクは治療期間とともに増加するため、5年間の経口投与後に薬物治療を中断します。 腎機能低下(GFR<30mL/min/1.73m2)では禁忌または慎重投与です。 【デノスマブ】破骨細胞の活性化を抑制するモノクローナル抗体です。6ヵ月毎の皮下注により、骨吸収を抑制し、骨密度を増加させて脊椎、股関節、非椎体骨折のリスクを低減します。 副作用は低カルシウム血症、感染症(蜂巣炎、気管支炎)の増加、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折です。腎機能が悪くても使用可能です。 効果が治療中止後には持続しないため、デノスマブによる最後の治療から6ヵ月後に、ビスフォスフォネートを代表とする骨粗鬆症の治療を開始しなければならない点に注意が必要です。 【カルシウムとビタミンD】従来、1000~1200mg/日のカルシウム摂取と25-OHビタミンD濃度が20~30ng/mLになるようビタミンDサプリメント1000IU/日を取ることが推奨されていましたが、その効果は最近では疑問視されています。 ●骨粗鬆症の最も重大な合併症は骨折です。大腿骨近位部骨折の1年以内の死亡率は約10%で、急性心筋梗塞よりも予後は悪いことが知られています。●FRAXを用いれば、10年以内の骨折発生リスクを計算することができます。●骨粗鬆症の治療にはビスフォスフォネートとデノスマブが有効です。   執筆:山中 克郎福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 特任教授、諏訪中央病院 総合診療科 非常勤医師、大同病院 内科顧問1985年 名古屋大学医学部卒業名古屋掖済会病院、名古屋大学病院 免疫内科、バージニア・メイソン研究所、名城病院、名古屋医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授/救命救急センター 副センター長、諏訪中央病院 総合診療科 院長補佐、福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 教授を経て現職。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)日本整形外科学会/日本骨折治療学会監修,日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン策定委員会編集.『大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021 改訂第3版』,南江堂,東京,2021;80. 【参考文献】○American College of Physicians.「Endocrinology and Metabolism」,『MKSAP19』.AM.COLLEGE OF PHYSICIANS,2021;72-83.○Reid IR,Billington EO. Drug therapy for osteoporosis in older adults.Lancet 2022,399(10329):1080-1092.

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応
利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応
特集 会員限定
2024年9月3日
2024年9月3日

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応【セミナーレポート後編】

NsPace(ナースペース)が2024年5月10日・24日に開催したオンラインセミナー、「【訪問看護】利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策(全2回)」。訪問看護師への暴力・ハラスメント対策に取り組む北須磨訪問看護・リハビリセンター所長 藤田愛さんを講師にお招きしました。 セミナーレポートの後編では、暴力・ハラスメントへの具体的な対策、対応方法をご紹介します。 >>前編はこちら利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識【セミナーレポート前編】 【講師】藤田 愛さん医療法人社団 慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター 所長/慢性疾患看護専門看護師/ヘルスケア・マネジメント修士(専門職)取得神戸市立中央市民病院、兵庫県立西宮保健所に勤務した後、1998年から訪問看護師として活動。2004年の北須磨訪問看護・リハビリセンター開設時から現職。訪問看護師が利用者やその家族から受ける暴力・ハラスメントの予防・改善に長年取り組む。2022年より「訪問看護師等の暴力・ハラスメント研修プログラム」の開発研究も行っている。 暴力・ハラスメント対策は法的な責務 令和3年度(2021年度)の介護報酬改定に伴い、ハラスメント対策は事業者の法的な責務として義務づけられました。利用者や家族から行われるものは、現在のところセクシュアルハラスメントのみが対象ですが、カスタマーハラスメントや暴力への対策も努力義務とされています。暴力・ハラスメントへの対策は、事業所が取り組むべき課題です。 暴力・ハラスメントへの具体的な対応 暴力やハラスメントへの具体的な対策としては、以下の5つが挙げられます。 対策1:管理者の意思決定、表明 まずは、管理者が暴力・ハラスメントを容認しない、職員を自らが守るという意思決定をし、それを表明する必要があります。事業所の基本方針として書面で共有するのもよいでしょう。ポイントは、繰り返し表明すること。そうでないと、「認知症の利用者さんだから仕方がない」「この程度なら我慢できる」などと、次第に元の状態に戻ってしまいます。 対策2:マニュアルの作成 厚生労働省をはじめ、さまざまな機関や組織でつくられたマニュアルを参考に、まずは1ページだけ作成しましょう。立派なマニュアルを用意しても活用できない場合が多いので、最初は簡単なものを目指すのがおすすめです。 対策3:重要事項説明書への記載 重要事項説明書に暴力・ハラスメントへの対応について明記し、利用者や家族に説明の上、合意をとることも大切です。 とはいえ、初回訪問時の契約の段階で暴力・ハラスメントについて言及すると、関係構築に影響するのではないかと心配される方も多いでしょう。これについては、重要事項説明書の前置きとして「質の高いサービスを提供するためにも、利用者・家族のみなさんに協力してほしい」といった内容を記載し、「お茶やお菓子、お礼の品物を受け取らない」といった事業所の方針のあとに、暴力・ハラスメント行為について触れるとよいでしょう。 信頼関係の構築に配慮しつつ、「職員への暴力・ハラスメント等により、サービスの中断や契約を解除することがある」と説明し、事業所としてのスタンスを明確に示すことが重要です。 対策4:発生時の報告・対応フローの取り決め 職員に「暴力やハラスメントがあれば報告してほしい」と働きかけても、実際はなかなか声が上がりません。虐待と同じで、「これは暴力(またはハラスメント)なのだろうか」といった「ためらい」が報告を遅らせます。 そこでフローに明記したいのは、「暴力・ハラスメントかもしれない」レベルで報告や相談すべきという点です。また、いきなり上司に相談するのは抵抗があるケースも多いでしょうから、被害者が話しやすい同僚からの報告も可能とするとよいでしょう。管理者の耳に話が入れば、当人からでなくても構いません。 対策5:全職員の意識、対応力の向上 職場全体で暴力・ハラスメント対策について繰り返し話し合い、意識を一致させましょう。また、訪問前にリスクを想定する、暴力やハラスメントの予兆に敏感になる、必要に応じて2人訪問を選択するといった対応力の向上にも努める必要があります。 暴力・ハラスメント被害者への歩み寄り 暴力・ハラスメントの被害者が出てしまった場合、非常に大きな精神的ダメージを受けているため、「被害に遭った人ファースト」を徹底しましょう。何よりも心情理解を優先し、寄り添うことが大切です。 二次被害の防止を 暴力・ハラスメント行為は一次被害。二次被害とは、上司や同僚など周囲の人々の言動で傷つけることを指します。被害に遭った医療従事者の多くは「自身の能力が原因で暴力やハラスメントを予測・抑制できなかった」と捉える傾向があり、周囲のスタッフも被害者に原因を探してしまうケースが少なからずありますので注意しましょう。利用者の疾患の有無や境遇に関わらず、暴力・ハラスメントを受けた被害者は悪くありません。 相談シートを活用して歩み寄りを よかれと思って見守るのみにとどめると、被害者が孤立する可能性があります。厚生労働省のハラスメント報告用「相談シート」を活用して歩み寄ることをおすすめします。このシートには現在の心の状態を数字で表現する項目があり、「今はここだけの話にしてほしい」「少人数であれば共有可」「全体に共有可」といったように、共有可否も確認できます。被害者の多くは、「大丈夫?」と聞かれれば「大丈夫」と答えがちです。このシートを使えば、本人の意向に沿った対応を目指せるでしょう。 なお、暴力・ハラスメントは記録する必要がありますが、多くの人の目に触れるカルテにはなかなか書きにくいはず。カルテとは別で記録を残す工夫をすることをおすすめします。 * * * 本セミナーの第2回で行われたグループディスカッションでは、参加者の暴力・ハラスメントへの価値基準の確認や、リスクを判断・回避するための「KYT(K:危険、Y:予知、T:訓練/トレーニング)」ワークを実施しました。各事業所でも定期的なトレーニングや情報共有の場を設けていただき、一人でも多くの訪問看護師が主体的に暴力・ハラスメント対策に取り組めるよう、体制を整えていただけたらと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇厚生労働省.「介護現場におけるハラスメント対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html2024/8/22閲覧〇厚生労働省. 社会保障審議会「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(2021年1月18日)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000750362.pdf2024/8/22閲覧〇厚生労働省. 株式会社 三菱総合研究所.「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」令和4(2022)年3月改訂https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf2024/8/22閲覧

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