アセスメントに関する記事

新型コロナウイルスとインフルエンザ、症状・潜伏期間・対応を比較
新型コロナウイルスとインフルエンザ、症状・潜伏期間・対応を比較
特集
2024年10月1日
2024年10月1日

新型コロナウイルスとインフルエンザ、同時検査は可能? 症状・潜伏期間・対応を比較

2024年夏は、新型コロナウイルス感染症の第11波が到来し、感染者数が急増しました。冬に向けては、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行が懸念されています。 本記事では、新型コロナウイルスと季節性インフルエンザの同時検査のほか、症状や潜伏期間、対応策などについて解説します。訪問看護の利用者さんやご家族に質問された際に回答できるようにしておくためにも、確認しておきましょう。 コロナ・インフルエンザ・一般的な風邪の違い 新型コロナウイルス感染症とインフルエンザ、一般的な風邪には、症状や潜伏期間、検査の推奨期間、対応方法などに違いがあります。それぞれ見ていきましょう。 潜伏期間・感染力 潜伏期間(病原体に感染してから症状が現れるまでの期間)と感染力の違いは、以下のとおりです。 病名潜伏期間(一般/最大)感染力のある期間感染力が最も強い期間 新型コロナウイルス1~14日間(平均3日~5日程度)   発症後7~10日発症2日前~3日     インフルエンザ     1~3日間程度発症1日前~発症後5日   発症1日前~3日後風邪2~4日(原因によって異なる)   発症1日前~7日(原因によって異なる)発症直後~2日後 新型コロナウイルスは、潜伏期間が最長2週間程度と比較的長いのが特徴です。ウイルスを体内に保有しながら症状が現れない期間が長いため、感染者は知らないうちに多くの人にウイルスを広めてしまう危険性があります。一方、インフルエンザの潜伏期間は1~3日程度で、風邪と比べても早く症状が発現します。 症状 症状の違いも見ていきましょう。 病名主な症状新型コロナウイルス発熱、咳や痰、咽頭痛、鼻汁、呼吸困難感、倦怠感、味覚・嗅覚障害、頭痛、筋肉痛、消化器症状 などインフルエンザ     発熱(38℃以上の高熱)、頭痛、筋肉痛、関節痛、全身倦怠感、咳、咽頭痛 など風邪くしゃみ、鼻汁、咽頭痛、微熱、発熱、咳、倦怠感 など コロナウイルス感染症では、咽頭痛や鼻汁などの上気道症状に加え、インフルエンザと類似した症状(発熱・倦怠感・関節痛など)を生じることが多いとされています。また頻度は減少しているものの、味覚・嗅覚障害を伴うこともあります。インフルエンザは関節痛、筋肉痛などを伴う全身症状が強く現れるのが特徴的。風邪は軽い咳や鼻水、微熱が中心であり、比較的軽症です。 二峰性発熱に注意 二峰性発熱とは、高熱が一度下がった後に再び発熱する現象を指し、特にインフルエンザや風邪、デング熱、麻疹などの感染症で見られることが多いです。この現象は通常、ウイルス感染による体の反応として現れますが、原因は完全には解明されていません。二峰性発熱は時に重症の合併症を引き起こすことがあり、肺炎や脳症などのリスクもあります。子どもに異常な行動やけいれんが見られた場合、速やかに医師の診察を受けるか、必要に応じて救急車を呼ぶことが重要です。 検査の推奨期間 新型コロナウイルス感染症は、発症から2日目~9日以内に行うことが通常です。 インフルエンザの場合は、検査で陽性が出る期間は発症後1~5日頃です。24時間以内は陽性が出づらい傾向があります。ただし抗インフルエンザウイルス薬が処方された場合、発症から48時間以内の服用が推奨されています。そのため、症状が出始めてから24時間~48時間以内に医療機関を受診し、インフルエンザ検査を受けることが望ましいでしょう。 風邪は、通常は検査を行いませんが、溶連菌感染症やインフルエンザなど検査可能な疾患の疑いがある場合には検査の実施を検討します。 コロナとインフルエンザの同時検査の信憑性は? コロナウイルスとインフルエンザの同時検査は可能ですが、その精度についてはまだ完全に明らかになっていません。特にインフルエンザでは、発熱後すぐに検査すると、偽陰性になる可能性があるため、24時間以上経過してからの検査が推奨されます。検査には、「研究用」と書かれたものは使わず、国が承認した体外診断用医薬品や第1類医薬品を使用することが重要です。   対応と薬 対応方法と薬の違いについては以下のとおりです。 病名対応薬(一般名)新型コロナウイルス自宅療養、酸素吸入、重症者は入院レムデシビル、カシリビマブ/イムデビマブ(抗体カクテル療法)、バリシチニブインフルエンザ       安静、解熱剤の使用、水分補給、必要に応じて入院  抗インフルエンザウイルス薬(オセルタミビルリン酸塩・ザナミビル水和物・ペラミビル水和物注射薬・バロキサビル マルボキシル など)風邪安静、解熱剤の使用、十分な休養アセトアミノフェン、イブプロフェンなど、症状に応じた薬(細菌感染の可能性が高い場合には抗菌薬) なお、インフルエンザや新型コロナウイルス感染症にかかった子どもが出席停止期間を経過して登校する際、再受診や検査は通常必要ありませんし、治癒証明書や陰性証明書の提出も求められません。しかし、症状が続く場合や医師から再受診の指示があった場合は、指示に従うことが重要です。 治療開始から3~4日経過しても解熱しない場合や、風邪の場合で4~5日以上発熱が続く場合は、再受診を検討してください。なお、むやみに再受診すると感染拡大や体力消耗による悪化を招く恐れがあるため、再受診の目安を事前にかかりつけ医に確認しておくことが大切です。 大人の場合は、症状が改善すれば通常の生活に戻れますが、必要に応じて再受診を考慮してください。 2024~2025年冬の特徴 2024~2025年シーズンは、以下がワクチン製造株として選定されました。 新型コロナウイルスJN.1系統及びその下位系統に対応した株インフルエンザ A型株・A/ビクトリア/4897/2022(IVR-238)(H1N1)・A/カリフォルニア/122/2022(SAN-022)(H3N2) B型株 ・B/プーケット/3073/2013(山形系統)・B/オーストリア/1359417/2021(BVR-26)(ビクトリア系統) 一般的に、冬は気温の低下と空気の乾燥により、インフルエンザをはじめとした呼吸器系ウイルス感染症が流行しやすくなります。このため、マスクの着用や手洗い・手指消毒、室内の換気、ワクチン接種などの基本的な感染対策が重要です。インフルエンザと新型コロナウイルスの同時感染の可能性もゼロではありません。適切な予防策を講じましょう。 *** 冬季は、新型コロナウイルス感染症と季節性インフルエンザの同時流行が懸念されており、発熱患者の増加に伴い診療所や検査機関が逼迫する可能性があります。そのため、事前に各自で準備を整え、感染予防に努めることが大切です。今回、解説した内容をご自身の体調管理、利用者さんのアセスメントなどにぜひ役立ててください。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長 医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇厚生労働省「2024/25シーズンの季節性インフルエンザワクチン及び新型コロナワクチンの供給等について」(2024年9月20日)https://idsc.tmiph.metro.tokyo.lg.jp/diseases/flu/flu/vaccine2024/2024/9/20閲覧〇厚生労働省.「新型コロナウイルス・季節性インフルエンザの同時流行に備えた対応」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kansentaisaku_00003.html2024/9/20閲覧〇国⽴感染症研究所「COVID-19の抗原・抗体検査について」(2020年12月22日)https://www.niid.go.jp/niid/images/plan/kisyo/2_suzuki.pdf2024/9/20閲覧〇厚生労働省.「新型コロナウイルス最前線」『第12回新型コロナウイルス感染症の治療について』.広報誌『厚生労働』.2021年10月号 ,(株)日本医療企画,(2021年10月)https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou_kouhou/kouhou_shuppan/magazine/202110_00003.html2024/9/20閲覧〇厚生労働省「令和5年度インフルエンザQ&A」(令和5年10月13日版)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/infulenza/QA2023.html2024/9/20閲覧

スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア
スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア
特集
2024年9月24日
2024年9月24日

スピリチュアルペインを和らげる全般的なケア【スピリチュアルケア】

患者さんのスピリチュアルペインを時間存在、関係存在、自律存在の枠組みで理解したら、次はスピリチュアルケアを考えていきます。本記事では、スピリチュアルケアの方法として欠かすことのできない基盤となるケアについて解説します。 >>前回の記事はこちら事例で検討 スピリチュアルペインのアセスメント【スピリチュアルケア】 基盤となるケアと特定の苦痛に対するケア スピリチュアルケアに関する欧米論文の文献レビューを行った結果1),2)より、スピリチュアルケアは「全般的なケア」と「個別のケア」とに分けられると報告されています。 「全般的なケア」は、スピリチュアルペインに対するケアの「基盤となる」ものです。「個別のケア」は、高い頻度でみられ、スピリチュアルペインに関連したケアとして考えられるものです。SpiPas(スピパス)の3次元の項目の概念に基づき、関係性、自律性、時間性のそれぞれの概念での特定の苦痛に対する個別のケアになります。 今回は、まず「全般的なケア」である「基盤となるケア」について説明します。 基盤となるケアには以下のものがあります。 信頼関係を構築する生きる意味・心の穏やかさ・尊厳を強めるケアを行う現実を把握することを援助する情緒的サポートを行う置かれた状況や自己に対する認知の変容を促すソーシャルサポートを強化するくつろげる環境や方法を提供する積極的に症状を緩和するチームをコーディネートする ケアの具体的な方法は表1をご覧ください。 表1 全般的なケア スピリチュアルケアの実践に必要な心構え 信頼関係を構築する 深い苦悩を抱えているように見える患者さんがいるとき、その人に対して単に直接的に「スピリチュアルペインはありませんか」とたずねても、患者さんは何も答えようとはしないでしょう。 まずは、身体症状や精神症状としての苦痛が緩和され、患者さんのニーズに沿って生活しやすいように、日常生活援助を適切に丁寧に行うことが大切です。そうした援助から「自分は関心をもたれている、尊重されている」という意識が患者さんに生まれ、信頼関係が築かれていきます。 スピリチュアルな側面に関心を向ける 入院時の問診から前回ご紹介したSpiPas3)のような体系だったアセスメントをしていきます。同時に、日常のケアの場面で患者さんが語る言葉や行動を通して、患者さんの拠り所となっていることへの理解を深めます。患者さんのスピリチュアリティの状態を注意深くアセスメントしていくことが大切です。 患者さんは、「どのように今の時間を過ごしているのか」、「生活において、今どのようなことを大切にしたいのか/これまで何を大切にしてきたのか」をポイントにしていきます。 ケアのニーズをチームで検討する これまでに述べたようなアセスメントを通して、ケアの対象となっている患者さんに、スピリチュアルペインが存在するのか、存在するならばそれはどのような苦悩なのかを把握します。そして、スピリチュアルペインに対するケアのニーズはどのようなものなのかについて、チームによるケアカンファレンスで検討していきます。 スピリチュアルケアの目標 スピリチュアルペインの重要な点は、患者さんの問いかけが、相手(看護師)に答えを求めて発せられるのではないというところにあります。スピリチュアルペインは、他者が答えを与えることでも、解決することでもなく、その痛みや苦しみの意味をその人自身が見出すことで初めてその人にとって真実なものになるのです。 なぜなら、スピリチュアルペインは、まさに、その人自身の主観的領域の核である「価値観」に向き合う痛みだからです。周りの評価や世間の価値観とは異なり、死を前にしたその人自身の価値観が問われる苦しみであるということを、われわれは十分に心得てケアにあたる必要があります。 患者さんが穏やかな状態、納得のできる状態をケア提供者が一緒に見つけていくことが、スピリチュアルケアの1つの目標です。完全に穏やかな状態にはなれなくても、「苦悩をもちつつも生きていける」、すなわち、本人がその人なりに生きていけると思える状態に到達できればよいと考えられます。 スピリチュアルケアは個別性が高いものですので、心理面の対応(適切なコミュニケーション)がケアとなる場合もあれば、死の恐怖のように宗教的対応が必要となる場合もあります。スピリチュアルケアの到達点は、患者さん一人ひとりにとっての、穏やかな状態、苦悩との折り合い、生きる意味の自分なりの納得が目当てになるといえるでしょう。 次回は、「個別のケア」について解説していきます。>>次回の記事はこちらスピリチュアルペインを和らげる個別のケア【スピリチュアルケア】 執筆:前滝 栄子京都大学医学部附属病院 緩和ケアセンターがん看護専門看護師 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)森田達也,鄭陽,井上聡,他.終末期がん患者の霊的・実存的苦痛に対するケア:系統的レビューに基づく統合化.緩和医療学 3,2001,p.444-456.2)森田達也,赤澤輝和,難波美貴、他.がん患者が望む「スピリチュアルケア」―89名のインタビュー調査.精神医学 52,2010,p.1057⁻1072.3)田村恵子,森田達也,河正子編.看護に活かすスピリチュアルケアの手引き.第2版,青海社,2017,p.30.

水痘(水ぼうそう)の症状・対処・予防法 帯状疱疹との関係も解説
水痘(水ぼうそう)の症状・対処・予防法 帯状疱疹との関係も解説
特集
2024年9月17日
2024年9月17日

水痘(水ぼうそう)の症状・対処・予防法 帯状疱疹との関係も解説

水痘(水ぼうそう)は子どもの病気とされていますが、大人もかかる可能性があります。大人がかかると重症化しやすいことに注意が必要です。また、過去に水痘にかかった人は、加齢とともに免疫力が低下すると、帯状疱疹を発症する恐れがあります。この記事では、多くの子どもがかかる水痘の症状や対処方法などを解説します。訪問看護の利用者さんはもちろん、ご自身やご家族の健康管理のためにも、水痘について確認しておきましょう。 水痘(水ぼうそう)について 水痘の症状や原因、感染経路、重症化リスクについてみていきましょう。 症状 水痘帯状疱疹ウイルスに感染後、2週間程度の潜伏期間を経て発疹が現れます。通常、子どもの場合は発疹が最初に現れる症状ですが、大人の場合は発疹が現れる前に発熱と全身倦怠感を伴うことがあります。 発疹は頭皮、体幹、四肢の順で現れ、かゆみを伴います。短時間で紅斑、丘疹、水疱、痂皮へと変化し、数日かけて発疹が現れるため、各段階の発疹が混在することが通常です。また、気道や鼻咽頭、膣などの粘膜にも発疹が現れる場合があります。倦怠感やかゆみ、発熱などが2〜3日続く軽症であることが一般的です。 原因 水痘は、水痘帯状疱疹ウイルスに感染することで引き起こされます。水痘帯状疱疹ウイルスはヘルペスウイルス科のα亜科に属するウイルスで、初めて感染する際は知覚神経節に潜伏感染します。水痘の症状が落ち着いた後も体からウイルスが完全に消失したわけではなく、疲労や加齢などで免疫が低下した際に再び増殖し、帯状疱疹として症状が現れます。 感染経路 水痘帯状疱疹ウイルスは世界中に分布しており、家庭内で起きたものについては90%以上が感染するとされています。感染者の水疱内容物や気道分泌物が主な感染源で、空気感染、飛沫感染、接触感染により広がります。発疹が現れる1〜2日前から出現後4〜5日、または痂皮化するまでは人にうつる可能性があります。そのため、水痘に気づいたときにはすでに周りの人にうつしている可能性があるので、その後の経過を慎重に見ることが重要です。 重症化リスク 水痘の重症化とは、子どもの場合は熱性けいれんや気管支炎、肺炎などの合併症が起きることを指します。大人の場合も合併症が見られることがありますが、水痘そのものが重症化するリスクが高いとされています。大人の水痘が子どもより重症化する理由として、細胞性免疫が強いため感染細胞の障害が著しいこと、成人の発熱性疾患の中では頻度が少ないため診断が遅れる場合があることなどが考えられます。合併症としては、肺炎や脳炎、心膜炎、細菌の二次感染による敗血症などが報告されており、特に免疫機能が低下している場合は、重症化しやすく生命の危険を伴うことも。十分な注意が必要です。 水痘のワクチン接種 水痘のワクチンは、1回の接種で重症化をほぼ100%予防でき、2回の接種によって発症そのものを高確率で予防できるといわれています。予防接種の時期は、1歳の誕生日の前日から3歳の誕生日の前日までです。1回目の接種は生後12ヵ月から生後15ヵ月まで、2回目の接種は3ヵ月以上の期間を空けて行います。 大人でもワクチン接種は可能で、過去に接種した回数を考慮して接種回数を決定します。なお、終生免疫と考えられてきた水痘も、再感染があることが知られるようになってきました。再感染は健常者でもまれに生じますが、特に免疫が低下した高齢者において報告が散見されているため注意が必要です。帯状疱疹患者の重要な感染源と考えられているため、50歳以上対象の水痘ワクチン投与が推奨されています。 水痘にかかった際の登園は? 水痘は第二種伝染病に該当し、飛沫感染する可能性が高い感染症です。保育園や幼稚園で感染が広がりやすいため、水痘にかかった児童はすべての発疹が痂皮化するまで出席停止となります。一部の保育園や幼稚園では、水痘にかかった児童の登園再開に際して、医師の許可証が必要な場合があります。 水痘と帯状疱疹との関連性 水痘と帯状疱疹は、どちらも水痘帯状疱疹ウイルスによって引き起こされます。子どものころに水痘帯状疱疹ウイルスに感染すると、水痘を発症するか無症状で経過します。その後、ウイルスは脊髄の近くの神経節に潜伏し、加齢や疲労などで免疫力が低下した際に再活性し、帯状疱疹を引き起こします。 帯状疱疹の予防には、水痘ワクチンの接種が有効です。前述の通り、過去に水痘を発症した人はすでに免疫を獲得しているものの、加齢とともに免疫力が弱まるためワクチン接種を受けたほうがよいとされています。 帯状疱疹の初期症状は、痛みや不快感などです。ピリピリ、ジンジン、ズキズキ、焼けるような痛みなどと形容されます。初期の痛みは通常、帯状の神経に沿って現れます。また、発熱やリンパ節の腫れといった一般的な風邪症状が現れることもあります。 帯状疱疹は上肢から胸背部にかけて現れることが多いものの、顔面や目の周りに発生することも少なくありません。帯状疱疹にかかった際に注意すべきは、帯状疱疹後神経痛(PHN)です。帯状疱疹が治癒した後も持続的な神経痛が残り、日常生活に支障をきたすことがあります。 * * * 水痘は、全身に発疹が現れて紅斑、丘疹、水疱、痂皮へと短期間で変化します。大人がかかると重症化しやすいため、少しでも感染を疑う症状が見られた場合は速やかに医療機関を受診しましょう。今回、解説した内容をご自身やご家族の体調管理、利用者さんのアセスメントにぜひ役立ててください。  編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。 【参考】〇厚生労働省「水痘」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/kenkou/kekkaku-kansenshou/varicella/2024/9/10閲覧〇NIID 国立感染症研究所「水痘とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/418-varicella-intro.html2024/9/10閲覧

「骨粗鬆症」の知識&注意点
「骨粗鬆症」の知識&注意点
特集
2024年9月10日
2024年9月10日

「骨粗鬆症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回は骨粗鬆症について、訪問看護に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 骨粗鬆症の基礎知識 破骨細胞による骨吸収が骨芽細胞による骨形成を上回ると骨量が減少し、さらに進行すると骨粗鬆症になります(図1)。 図1 正常な骨代謝と骨粗鬆症 正常な骨代謝は、破骨細胞による骨吸収と骨芽細胞による骨形成とのバランスが保たれ、骨量を維持している。骨粗鬆症では、そのバランスが崩れ、骨吸収が骨形成を上回った状態である 骨粗鬆症の最も重大な合併症は骨折です。大腿骨近位部骨折の1年以内の死亡率は10~35%で、急性心筋梗塞よりも予後は悪いことが知られています1)。大腿骨近位部骨折は骨折部位により骨頭骨折、頸部骨折、転子部骨折、転子下骨折と呼ばれます(図2)。 図2 大腿骨近位部骨折の分類 骨粗鬆症の診断 骨折リスク評価法FRAXを用いる FRAX(fracture risk assessment tool)を用いれば、10年以内の骨折発生リスクを計算することができます。訪問看護中に簡単に計算が可能です。ご自身の骨折リスクもぜひ計算してみてください。 ▼骨粗鬆症財団「骨折評価ツールFRAX」https://www.jpof.or.jp/osteoporosis/selfcheck/frax.html FRAXで推定した大腿骨近位部骨折の10年リスクが3%以上、または骨粗鬆症関連骨折の主要リスクが20%以上の患者さんは薬物療法の適応に。未治療なら主治医に連絡しましょう。 DEXAで骨密度を計測 骨密度検査ではDEXA法(dual energy X-ray absorptiometry、二重エネルギー X線吸収測定法)を用いて骨密度を正確に計測します。 YAM(young adult mean、若年成人平均)値を基準(100%)に、70~80%を骨減少症、<70%を骨粗鬆症とし、骨折の既往歴があれば、80%以下でも骨粗鬆症と診断されます(図3)。 図3 骨粗鬆症の診断基準 骨量のYAM値が80%未満の場合、注意が必要となる 病歴聴取と身体所見のポイント 骨粗鬆症の原因には次のものがあります。該当する生活習慣や疾患がないかを問診と身体診察で確認しましょう。 アルコール多飲喫煙低体重(BMI<18.5)膠原病[関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(SLE)](関節痛や皮疹が出現)クッシング症候群(副腎皮質ホルモンの過剰分泌のため、満月様顔貌や中心性肥満、高血圧が起こる)甲状腺機能亢進症(手の振戦、体重減少、発汗増加、甲状腺腫大を認める)多発性骨髄腫(高齢者で貧血や腰痛、体重減少の場合に想起)薬剤(長期使用):ステロイド、メトトレキサート、抗けいれん薬 椅子からの立ち上がりが困難な場合、近位筋(大腿)の筋力が低下している可能性があります。立ち上がった時にふらつくようなら、バランスが悪いかもしれません。どのような薬でも4種類以上の内服は転倒のリスクを増加させるので注意が必要です。(1)筋力低下、(2)バランスが悪い、(3)4種類以上の薬の使用の3つすべてがあると、1年後の転倒リスクは100%といえます。 主な治療 非薬物療法 食事で十分なカロリーとタンパク質、カルシウム、ビタミンDが摂取できるとよいでしょう。禁煙、適度な飲酒、運動(ウォーキング)、転倒予防(十分な照明、階段や浴室の手すり、バランス訓練)、薬の調整(ステロイドの減量、起立性低血圧やめまいを起こす薬の中止)も重要です。 薬物療法 【ビスフォスフォネート】破骨細胞の働きを抑える第一選択薬です。アレンドロネートとリセドロネートは、椎体骨折を50~70%、大腿骨近位部骨折を40%、非椎体骨折を20~30%減らします。 多くの経口薬は週に1回、起床時に180mLの水で服用します。食道に薬物が長く停滞すると、食道炎や食道潰瘍を起こすため、内服後30分間は座位を保持し、水以外の飲食をしないように指導します。 副作用は胸焼けです。まれに顎骨壊死や非定型大腿骨骨折が生じることも。顎骨壊死は治療中のどの時点でも起こります。非定型大腿骨骨折のリスクは治療期間とともに増加するため、5年間の経口投与後に薬物治療を中断します。 腎機能低下(GFR<30mL/min/1.73m2)では禁忌または慎重投与です。 【デノスマブ】破骨細胞の活性化を抑制するモノクローナル抗体です。6ヵ月毎の皮下注により、骨吸収を抑制し、骨密度を増加させて脊椎、股関節、非椎体骨折のリスクを低減します。 副作用は低カルシウム血症、感染症(蜂巣炎、気管支炎)の増加、顎骨壊死、非定型大腿骨骨折です。腎機能が悪くても使用可能です。 効果が治療中止後には持続しないため、デノスマブによる最後の治療から6ヵ月後に、ビスフォスフォネートを代表とする骨粗鬆症の治療を開始しなければならない点に注意が必要です。 【カルシウムとビタミンD】従来、1000~1200mg/日のカルシウム摂取と25-OHビタミンD濃度が20~30ng/mLになるようビタミンDサプリメント1000IU/日を取ることが推奨されていましたが、その効果は最近では疑問視されています。 ●骨粗鬆症の最も重大な合併症は骨折です。大腿骨近位部骨折の1年以内の死亡率は約10%で、急性心筋梗塞よりも予後は悪いことが知られています。●FRAXを用いれば、10年以内の骨折発生リスクを計算することができます。●骨粗鬆症の治療にはビスフォスフォネートとデノスマブが有効です。   執筆:山中 克郎福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 特任教授、諏訪中央病院 総合診療科 非常勤医師、大同病院 内科顧問1985年 名古屋大学医学部卒業名古屋掖済会病院、名古屋大学病院 免疫内科、バージニア・メイソン研究所、名城病院、名古屋医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授/救命救急センター 副センター長、諏訪中央病院 総合診療科 院長補佐、福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 教授を経て現職。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)日本整形外科学会/日本骨折治療学会監修,日本整形外科学会診療ガイドライン委員会/大腿骨頚部/転子部骨折診療ガイドライン策定委員会編集.『大腿骨頸部/転子部骨折診療ガイドライン2021 改訂第3版』,南江堂,東京,2021;80. 【参考文献】○American College of Physicians.「Endocrinology and Metabolism」,『MKSAP19』.AM.COLLEGE OF PHYSICIANS,2021;72-83.○Reid IR,Billington EO. Drug therapy for osteoporosis in older adults.Lancet 2022,399(10329):1080-1092.

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応
利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応
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2024年9月3日
2024年9月3日

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応【セミナーレポート後編】

NsPace(ナースペース)が2024年5月10日・24日に開催したオンラインセミナー、「【訪問看護】利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策(全2回)」。訪問看護師への暴力・ハラスメント対策に取り組む北須磨訪問看護・リハビリセンター所長 藤田愛さんを講師にお招きしました。 セミナーレポートの後編では、暴力・ハラスメントへの具体的な対策、対応方法をご紹介します。 >>前編はこちら利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識【セミナーレポート前編】 【講師】藤田 愛さん医療法人社団 慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター 所長/慢性疾患看護専門看護師/ヘルスケア・マネジメント修士(専門職)取得神戸市立中央市民病院、兵庫県立西宮保健所に勤務した後、1998年から訪問看護師として活動。2004年の北須磨訪問看護・リハビリセンター開設時から現職。訪問看護師が利用者やその家族から受ける暴力・ハラスメントの予防・改善に長年取り組む。2022年より「訪問看護師等の暴力・ハラスメント研修プログラム」の開発研究も行っている。 暴力・ハラスメント対策は法的な責務 令和3年度(2021年度)の介護報酬改定に伴い、ハラスメント対策は事業者の法的な責務として義務づけられました。利用者や家族から行われるものは、現在のところセクシュアルハラスメントのみが対象ですが、カスタマーハラスメントや暴力への対策も努力義務とされています。暴力・ハラスメントへの対策は、事業所が取り組むべき課題です。 暴力・ハラスメントへの具体的な対応 暴力やハラスメントへの具体的な対策としては、以下の5つが挙げられます。 対策1:管理者の意思決定、表明 まずは、管理者が暴力・ハラスメントを容認しない、職員を自らが守るという意思決定をし、それを表明する必要があります。事業所の基本方針として書面で共有するのもよいでしょう。ポイントは、繰り返し表明すること。そうでないと、「認知症の利用者さんだから仕方がない」「この程度なら我慢できる」などと、次第に元の状態に戻ってしまいます。 対策2:マニュアルの作成 厚生労働省をはじめ、さまざまな機関や組織でつくられたマニュアルを参考に、まずは1ページだけ作成しましょう。立派なマニュアルを用意しても活用できない場合が多いので、最初は簡単なものを目指すのがおすすめです。 対策3:重要事項説明書への記載 重要事項説明書に暴力・ハラスメントへの対応について明記し、利用者や家族に説明の上、合意をとることも大切です。 とはいえ、初回訪問時の契約の段階で暴力・ハラスメントについて言及すると、関係構築に影響するのではないかと心配される方も多いでしょう。これについては、重要事項説明書の前置きとして「質の高いサービスを提供するためにも、利用者・家族のみなさんに協力してほしい」といった内容を記載し、「お茶やお菓子、お礼の品物を受け取らない」といった事業所の方針のあとに、暴力・ハラスメント行為について触れるとよいでしょう。 信頼関係の構築に配慮しつつ、「職員への暴力・ハラスメント等により、サービスの中断や契約を解除することがある」と説明し、事業所としてのスタンスを明確に示すことが重要です。 対策4:発生時の報告・対応フローの取り決め 職員に「暴力やハラスメントがあれば報告してほしい」と働きかけても、実際はなかなか声が上がりません。虐待と同じで、「これは暴力(またはハラスメント)なのだろうか」といった「ためらい」が報告を遅らせます。 そこでフローに明記したいのは、「暴力・ハラスメントかもしれない」レベルで報告や相談すべきという点です。また、いきなり上司に相談するのは抵抗があるケースも多いでしょうから、被害者が話しやすい同僚からの報告も可能とするとよいでしょう。管理者の耳に話が入れば、当人からでなくても構いません。 対策5:全職員の意識、対応力の向上 職場全体で暴力・ハラスメント対策について繰り返し話し合い、意識を一致させましょう。また、訪問前にリスクを想定する、暴力やハラスメントの予兆に敏感になる、必要に応じて2人訪問を選択するといった対応力の向上にも努める必要があります。 暴力・ハラスメント被害者への歩み寄り 暴力・ハラスメントの被害者が出てしまった場合、非常に大きな精神的ダメージを受けているため、「被害に遭った人ファースト」を徹底しましょう。何よりも心情理解を優先し、寄り添うことが大切です。 二次被害の防止を 暴力・ハラスメント行為は一次被害。二次被害とは、上司や同僚など周囲の人々の言動で傷つけることを指します。被害に遭った医療従事者の多くは「自身の能力が原因で暴力やハラスメントを予測・抑制できなかった」と捉える傾向があり、周囲のスタッフも被害者に原因を探してしまうケースが少なからずありますので注意しましょう。利用者の疾患の有無や境遇に関わらず、暴力・ハラスメントを受けた被害者は悪くありません。 相談シートを活用して歩み寄りを よかれと思って見守るのみにとどめると、被害者が孤立する可能性があります。厚生労働省のハラスメント報告用「相談シート」を活用して歩み寄ることをおすすめします。このシートには現在の心の状態を数字で表現する項目があり、「今はここだけの話にしてほしい」「少人数であれば共有可」「全体に共有可」といったように、共有可否も確認できます。被害者の多くは、「大丈夫?」と聞かれれば「大丈夫」と答えがちです。このシートを使えば、本人の意向に沿った対応を目指せるでしょう。 なお、暴力・ハラスメントは記録する必要がありますが、多くの人の目に触れるカルテにはなかなか書きにくいはず。カルテとは別で記録を残す工夫をすることをおすすめします。 * * * 本セミナーの第2回で行われたグループディスカッションでは、参加者の暴力・ハラスメントへの価値基準の確認や、リスクを判断・回避するための「KYT(K:危険、Y:予知、T:訓練/トレーニング)」ワークを実施しました。各事業所でも定期的なトレーニングや情報共有の場を設けていただき、一人でも多くの訪問看護師が主体的に暴力・ハラスメント対策に取り組めるよう、体制を整えていただけたらと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇厚生労働省.「介護現場におけるハラスメント対策」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_05120.html2024/8/22閲覧〇厚生労働省. 社会保障審議会「令和3年度介護報酬改定における改定事項について」(2021年1月18日)https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000750362.pdf2024/8/22閲覧〇厚生労働省. 株式会社 三菱総合研究所.「介護現場におけるハラスメント対策マニュアル」令和4(2022)年3月改訂https://www.mhlw.go.jp/content/12305000/000947524.pdf2024/8/22閲覧

【秋の花粉症】ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ。時期と注意点は?
【秋の花粉症】ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ。時期と注意点は?
特集
2024年9月3日
2024年9月3日

【秋の花粉症】ブタクサ、ヨモギ、カナムグラ。時期と注意点は?

花粉症は、くしゃみや鼻水だけではなく、倦怠感や微熱などの症状が出て生活に支障をきたすこともあります。アレルギー性疾患のため、原因となるアレルゲンを避けることで予防が可能です。花粉症といえばスギやヒノキなど春のイメージが強いですが、実は秋にもアレルギーの原因となる花粉は飛んでいます。 本記事では、秋の花粉の飛散時期や注意点について解説。風邪だと思っていたら花粉症だったケースや、ほかの疾患と混同してしまうケースもあるため、訪問看護のアセスメントに役立ててください。 秋に飛ぶ花粉の種類 秋に飛ぶ花粉の主な種類は、ブタクサとヨモギ(ともにキク科)、カナムグラ(アサ科)です。キク科やアサ科の草花は背丈が低いため、スギやヒノキのような樹木の花粉に比べて遠くまで飛ぶことはありません。数メートル程度の飛距離ですが、住宅街やオフィス街にも自生している身近な植物です。 飛散時期 ブタクサとヨモギ、カナムグラの花粉の飛散時期は、8~10月頃です。特に関東や東北で多く飛ぶほか、関東ではブタクサが12月頃まで飛散するとの報告もあります。そのため、花粉症の症状が強く現れる方は、秋が過ぎてもしばらくは花粉症対策をしておくことが大切です。 花粉症とハウスダストのダブルパンチに注意 ハウスダストやペットの毛などがアレルゲンとなり、季節と関係なく一年中続くアレルギー性鼻炎を「通年性アレルギー性鼻炎」といいます。 花粉症は、ハウスダストアレルギーと同じくアレルギー性鼻炎を引き起こす原因となります(季節性アレルギー性鼻炎)。どちらもアレルゲンが異なるだけで、発症のメカニズムは同じ。通年性アレルギー性鼻炎を持つ方が花粉症を発症すると強い症状が現れる可能性があるため、特に注意が必要です。 花粉症の対応方法 花粉症の原因となる植物が生えているところをあらかじめ調べておくことは難しいもの。以下のような対応を行いましょう。 マスクやメガネを着用する 外出時には、マスクやメガネを着用し、花粉が体内に侵入するのを防ぎましょう。また、花粉が付着した手で目をこすったり鼻の粘膜に触れたりしないよう注意が必要です。 屋内に入る前に服についた花粉を落とす 外出から帰宅した際には、外で付着した花粉を払い落として、室内に花粉を持ち込まないようにしましょう。家の中に入る前になるべく花粉を落とすことが大切です。 花粉が付着しにくい素材の服を着る 上の項目と関連しますが、花粉が付着しにくい素材の服を選ぶことで、家の中に持ち込む花粉の量を減らすことができます。ポリエステルやナイロンなど表面がツルツルした素材は、花粉が付着しにくく、払い落とすのも容易です。 洗顔とうがいをする 外出後や帰宅後には、手洗い・うがい、丁寧な洗顔をすることで、花粉を体内に取り込むリスクを軽減できます。 こまめに掃除する 室内の掃除を定期的に行い、家具や床などに付着した花粉を除去します。特に、布団やカーテンなどの花粉が溜まりやすい場所を重点的に掃除しましょう。 喫煙や飲酒を控える アルコールは毛細血管を拡張させ、鼻づまりや目の充血などの症状を起こしやすくします。また、喫煙は鼻粘膜に直接刺激を与えるため、花粉症の発症リスクや花粉症自体を悪化させる可能性が高まります。花粉が多く飛散する季節だけでも喫煙や飲酒をできるだけ控えましょう。 無理をせずに早めに治療を開始する 花粉症の症状が現れたら、無理をせず早めに医師の診断を受け、適切な治療を開始しましょう。抗アレルギー薬や舌下免疫療法など、さまざまな治療法があります。個々の症状や重症度に応じて、適切な治療を受けましょう。 >>関連記事花粉症の基礎知識や治療法についてはこちらの記事もご参照ください。訪問看護活動に生かす疾患の知識「花粉症」 * * * 花粉症は、微熱や頭痛など風邪と似た症状が現れることもあるため、安易な自己判断は禁物です。訪問看護の利用者さんが花粉症の症状を訴えた場合は、今回解説した内容を参考にして、アセスメントにぜひ役立ててください。 編集・執筆:加藤 良大監修:久手堅 司せたがや内科・神経内科クリニック院長  医学博士。「自律神経失調症外来」、「気象病・天気病外来」、「寒暖差疲労外来」等の特殊外来を行っている。これらの特殊外来は、メディアから注目されている。著書に「気象病ハンドブック」誠文堂新光社。監修本に「毎日がラクになる!自律神経が整う本」宝島社等がある。 【参考】〇政府広報オンライン「花粉症で悩む皆さま! 早めの治療や予防行動を!」https://www.gov-online.go.jp/useful/article/201102/2.html2024/8/30閲覧

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識
利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識
特集 会員限定
2024年8月27日
2024年8月27日

利用者・家族からの暴力・ハラスメント 基礎知識【セミナーレポート前編】

NsPace(ナースペース)では、2024年5月10日・24日に、オンラインセミナー「【訪問看護】利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策(全2回)」を開催しました。講師として登壇してくださったのは、北須磨訪問看護・リハビリセンター所長で、利用者・家族からの暴力・ハラスメント対策に長らく尽力している藤田愛さんです。 本セミナーでは講義とグループディスカッションを行いましたが、今回は講義の内容を前後編に分けて記事化。前編では、暴力・ハラスメントの基礎知識として、その内容や実態、訪問看護の現場ならではのリスクなどをまとめます。 【講師】藤田 愛さん医療法人社団 慈恵会 北須磨訪問看護・リハビリセンター 所長/慢性疾患看護専門看護師/ヘルスケア・マネジメント修士(専門職)取得神戸市立中央市民病院、兵庫県立西宮保健所に勤務した後、1998年から訪問看護師として活動。2004年の北須磨訪問看護・リハビリセンター開設時から現職。訪問看護師が利用者やその家族から受ける暴力・ハラスメントの予防・改善に長年取り組む。2022年より「訪問看護師等の暴力・ハラスメント研修プログラム」の開発研究も行っている。 暴力・ハラスメントの種類と内容 訪問看護において発生しうる暴力・ハラスメントは、以下の4つが挙げられます。 身体的暴力 殴る、蹴る、ものを投げるといった物理的な攻撃を加える暴力。 精神的暴力 大声で怒鳴る、または怒鳴り続けるなど、苦情・クレームの範囲を超えた言葉や態度で攻撃する暴力。 セクシュアルハラスメント 性的嫌がらせ全般。例えば、訪問時にわざとアダルトビデオを流したり、入浴介助のために看護師が着替えているところを盗撮したりといった例がみられます。 カスタマーハラスメント 看護師の些細なミスをあげつらって執拗に攻撃する、土下座を要求するなどといった、過剰な要求や不当な言いがかり。近年特に増えており、相談や研修の依頼が多く寄せられています。 暴力・ハラスメント行為者は、看護師に対し、「利用者およびその家族の要求にはすべて応えるべき」と考えています。その要求の背景には、訪問看護サービスへの過剰な期待や、社会への不満、孤独感、挫折感の発散といった自己中心的な理由がある場合が多いのです。 暴力・ハラスメントの実態 一般社団法人全国訪問看護事業協会から2019年に発表された「訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究事業 報告書」1)によると、全業務期間の中で何らかの暴力・ハラスメントを受けた経験がある方は、全体の半数近くに上りました。具体的な内訳は、身体的暴力が45.1%、精神的暴力が52.7%、セクシュアルハラスメントが48.4%です。 訪問看護師は「よい看護を提供したい」という思いが強いがゆえに、利用者からの過剰な要求に応じることがあります。そして、利用者やその家族からの暴力・ハラスメントに直面しても「仕方がない」と諦め、受け入れてしまう状況が少なくありません。しかし、利用者や家族を大切にし、よりよい看護を提供することと、暴力やハラスメントを受け入れることは同義ではありません。これらをきちんと区別し、暴力やハラスメントを容認しない姿勢が必要です。 自宅訪問における暴力・ハラスメントのリスク 訪問看護における利用者・家族からの暴力・ハラスメントのリスク要因をみていきましょう。 利用者・家族側のリスク要因 利用者・家族側のリスク要因としては、以下のようなものがあります。 疾患に伴う幻覚やせん妄などの症状がある治療や介護について適切な支援を受けられていない違法行為や暴力行為をした過去がある、攻撃的な言動がみられる、人間関係にトラブルを抱えているといった生活歴や背景がある訪問看護サービスへの過度な期待や誤解がある 利用者の症状や生活背景の把握に努めるとともに、サービスの提供範囲や看護の内容を契約書や看護計画に反映し、正確に理解していただくよう働きかけることが大切です。 事業所側のリスク要因 事業所の管理者・経営者の暴力やハラスメントに対する意識が低いと、トラブルが起きた際に初動が遅れてしまい、同様のトラブルが繰り返されるリスクも高まるでしょう。暴力・ハラスメントの予防や撲滅には管理者・経営者の意識が重要です。 環境のリスク要因 訪問看護は、基本的に密室で1対1、家族がいれば1対多数の状況になるため、暴力やハラスメントが行われた際、判断や証明が難しい環境といえるでしょう。病院や施設のように近くにほかの職員がいないので、応援要請にもすぐには応えてもらえません。また、一般家庭にはさまざまな物品があるため、それらが暴力に使用される可能性も。これも大きなリスクと考えられます。 暴力・ハラスメント対策を行う目的と目標 利用者や家族から訪問看護師への暴力・ハラスメント対策の目的は、訪問看護師の基本的人権を尊重することと、質の高いケアを提供することにあります。訪問看護師の安全が脅かされ、心身に悪影響があれば、質の高いケアの継続的な提供は阻害されます。 ここで忘れてはいけないのが、「被害者の心への影響」です。暴力・ハラスメントが起こると、「適切なアセスメントがされなかったのでは」と被害者である訪問看護師個人の問題にされる傾向があります。これによって被害者が我慢したり、自身の未熟さを責めたりして、心の健康を損なうケースが生じるのです。 そして暴力・ハラスメント対策の目標は、暴力・ハラスメントの発生防止に努めること。また、被害が起きてしまったら最小限にとどめることです。 次回は暴力・ハラスメントへの具体的な対応や被害者への理解・二次被害の防止について解説します。>>後編はこちら利用者・家族からの暴力・ハラスメント 対策&対応【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】1)一般社団法人全国訪問看護事業協会「訪問看護師が利用者・家族から受ける暴力に関する調査研究事業 報告書」平成31(2019)年3月https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/h30-2.pdf2024/8/22閲覧

【現地開催】専門家に学ぶ!奥の深い爪のケア セミナーレポート
【現地開催】専門家に学ぶ!奥の深い爪のケア セミナーレポート
特集
2024年8月20日
2024年8月20日

【現地開催】専門家に学ぶ!奥の深い爪のケア セミナーレポート(6/2開催)

2024年6月2日(日)に、東京の銀座駅すぐの会場にてNsPace主催の対面セミナー「専門家に学ぶ!奥の深い爪のケア」を開催しました。ご登壇いただいたのは、看護におけるフットケアの第一人者である西田壽代さん。アシスタント講師として医療フットケアスペシャリストの大慈めぐみさんにもお越しいただき、「見る・聞く・触れるでコツをつかんでやってみる!」をテーマに、爪ケアのイロハを講義いただきました。約4時間にわたるセミナーの様子をダイジェストでお届けします。  【講師】西田 壽代さんJTFA(日本トータルフットマネジメント協会)会長足のナースクリニック代表/足の専門校スクールオブぺディ専任講師皮膚・排泄ケア認定看護師/日本フットケア・足病医学会認定フットケア指導士聖路加国際病院、東京海上ベターライフサービス株式会社、駿河台日本大学病院を経て2010年より「足のナースクリニック」代表を務める。病院や高齢者施設、訪問看護ステーションなどと提携し、フットケアや皮膚・排泄ケア分野におけるスタッフ教育や患者ケア、多職種連携などに取り組む。著書に『実践!介護フットケア 元気に歩く「足」のために』(講談社)など。【アシスタント講師】大慈 めぐみさん訪問看護ステーション ナースであんしん湘南 管理者JTFA(日本トータルフットマネジメント協会)認定の医療フットケアスペシャリストとして活躍し、NsPaceの特別イベント「第2回 みんなの訪問看護アワード」にて入賞。「足の爪切りから始まる看護」と題して、心に響くエピソードを投稿してくださいました。 座学で爪ケアの基礎知識を学習 巻き爪や肥厚爪、白癬菌に感染した爪など、在宅療養者の爪は十人十色。座学では、動画を用いながら、爪ケアの重要性や医療行為の範囲、爪切り前のアセスメントのポイントなどが解説されました。爪の構造を理解し、器具を正しく使用することは、安全な爪ケアの第一歩となります。 中でも参加者が興味深く取り組んでいたのは、一人ひとりの爪の形に合わせた「爪切り設計図」。鉛筆等で爪に直接ガイド線を書き込み、その線に沿って爪切りを進めます。参加者は、真剣に爪各部の名称や構造を確認しながら設計図作成のポイントを学習していました。座学の終盤には「爪白癬で爪がポロポロと崩れてきてしまう方は、どこまで切れば良いのか?」「上を向いて生えている爪はどう対処すべきか?」などの質問も飛び交いました。 西田さんの分かりやすい講義に引き込まれる参加者の皆さん 専門家が爪ケアのプロセスを実演 座学の後は、アシスタント講師の大慈さんがモデルになり、爪切りのデモンストレーションが行われました。ニッパーや爪用ゾンデ、爪やすりなどの専用器具の紹介や使用方法をはじめ、足指の支え方から角質や爪垢除去のポイントも丁寧に解説。爪切り設計図を作成する際の視点や爪切りのコツ、爪やすりの使い方のコツなども実演されました。 実演中、スクリーンに映し出された先生の手元を参加者全員が食いいるように見つめ、講義に熱中していました。 専用器具の使い方も丁寧に実演 デモンストレーションの後は、各テーブルに配置された足型模型を使用し、参加者の皆さんも技術習得に向けて練習をスタート。2人1組になり、爪切り設計図の作成から爪切りの実践まで、正しく安全にケアするための実技演習を進めました。 誤った爪切りは、皮膚の損傷や出血などのトラブルにつながるだけでなく、巻き爪の原因にもなります。お互いにニッパーの持ち方や使い方などを丁寧に確認し合いながら、慎重に実技を進める様子が印象的でした。  先生のアドバイスをもとに足型模型で爪ケアを実践 バケツや洗面器不要の泡足浴を体験 模型での練習を終えた後は、いよいよ参加者同士で爪ケアの実践です。まずは医療的スキンケア(保清)のひとつである「泡足浴」から実践。ビニール袋と少量の水、ボディーソープを使用した画期的な洗浄方法に参加者からは驚きの声が上がりました。 「この方法ならバケツや大きい洗面器などの道具がそろわなくても、すぐに実践できる」「寝たきりの患者さんの保清にも活かせそう」といった声が聞かれたほか、「ビニールのくしゅくしゅとした感覚や泡が気持ち良い!患者さんのケアに役立てたい」といった声も挙がり、会場全体が一気に賑やかな雰囲気に包まれました。 泡足浴を実践し合い、会場は明るい雰囲気に 爪切りも実習し、現場での実践力を養う 保清の後は、参加者同士で爪周りの角質除去や爪切りを実践。講師の西田さんと大慈さんが各テーブルを回りながら、正しい爪切りに欠かせない「爪切り設計図」の作成のコツをはじめ、足の支え方、ニッパーの持ち方などの一連の流れを直接指導しました。 専門家から直接指導を受け、すぐに実践 参加者の皆さんは、日頃から患者さんの爪ケアに取り組んでいても、「爪」に特化した研修を受けた経験がある方は少なく、爪ケアのプロセスを改めて学び、不安や疑問が解消されるシーンも見受けられました。 道具の使い方も目の前で分かりやすく解説 特にフットケアの第一人者から直接指導を受ける機会はなかなかなく、参加者からは「変形して盛り上がった爪はどう切ればいいのか」「ニッパーの種類はどのようなものを選ぶといいか」「巻き爪で痛みのある方にはどのように対応すべきか」など、質問が多数。訪問看護師さんの日頃の悩みがひしひしと伝わってきました。 参加者の皆さんのお困り事にも丁寧に回答 実技演習の終盤には、参加者同士で爪ケアの流れをおさらいし、確認し合う様子も。終始、明るい雰囲気でセミナーを終えました。 不安や不明点が解消されたとの声も セミナー終了後は、懇親会も開催。参加者は担当患者さんのケア方法を西田さんや大慈さんに相談したり、業務の中で困ったシーンなどを共有したりと、お互いに学びを深め合っていました。 すっかり打ち解け合い、懇親会を楽しむ皆さん ■参加者の感想 「セミナーに参加するまでは、自己流で患者さんの爪を躊躇なく切ってしまっていました。でも、ニッパーの刃先の当て方や切り方、洗浄方法などを実際に練習して、正しいケア方法の基本が理解できました。今回の学びを活かし、患者さんの安全な暮らしに貢献していきたいです。」 「実技演習では、こんなに頻回にテーブルを回ってきてくれると思わず、手厚い指導に驚きました。講義自体の内容も分かりやすく、悩んでいた爪白癬に対しての対応も分かり、現場ですぐに取り組みやすいと感じました。ゆっくり丁寧に教えてもらえて、とても良かったです。」 そのほかにも、「今後の爪ケアへの不明点が解消された」「自分の『くせ』が分かった」「我流で爪をカットしていたことを反省しつつ、注意する点が分かった」といった声も。 講師を務めた西田さんも、大きな手ごたえを感じたご様子。 「訪問看護師さんの中にもさまざまな経験値の方がおられ、不安を感じながらも懸命にケアに当たっている方がいることを改めて実感しました。対面セミナーでは、参加者お一人おひとりのお悩みを聞きながら、直接ケア方法をレクチャーし、より実践的な講義ができたかと思います。私は全国各地でこうしたセミナーや講演を開催していますが、実はあと2県(岩手県と島根県)で全国制覇達成なんです!今後も自身の活動を通して、看護師の皆様のスキルアップに貢献できればと意気込んでいます。」 また、アシスタント講師の大慈さんも、「自分の普段の経験からアドバイスできるシーンもあり、少しでも参加者の皆さんのお役に立てたのであれば何よりです」と明るい笑顔を見せてくださいました。 * * * NsPaceでは今後も訪問看護師さんのためのセミナーを企画していく予定です。その道の専門家から直接指導を受けられるチャンスをぜひご活用ください。 取材・執筆・編集:高橋 佳代子

幸せホルモンを増やす方法 セロトニン・オキシトシン・ドーパミン
幸せホルモンを増やす方法 セロトニン・オキシトシン・ドーパミン
特集
2024年8月20日
2024年8月20日

幸せホルモンを増やす方法とは セロトニン・オキシトシン・ドーパミンなど

最近メディアやニュースでも取り上げられる「幸せホルモン」。幸せホルモンが正常に働くことにより、心と体のバランスを安定させ、幸せを感じやすくするといわれています。 本記事では、幸せホルモンの意味や種類、高齢者に不足しがちなセロトニンの分泌を活性化させる方法について解説します。幸せホルモンは誤解されやすい部分もあるため、利用者さんに正しい情報を提供できるようにしておきましょう。 幸せホルモンとは 一般的にいわれている幸せホルモンとは、セロトニンやオキシトシンといった神経伝達物質のことを指します。適切な量が分泌されることによって、心身の安定や幸福感などがもたらされるため、幸せホルモンと呼ばれています。 幸せホルモンの種類 幸せホルモンと呼ばれているのは、主に次の4つです。 セロトニン セロトニンは脳内の神経伝達物質の1つで、主に大脳基底核や延髄の縫線核、視床下部などに存在しています。セロトニンには、快感や喜びに関係するドーパミンや不安や恐怖に影響するノルアドレナリンといった神経伝達物質の分泌をコントロールし、脳内の興奮を鎮めて精神を安定させる働きがあります。セロトニンの分泌が低下すると、疲労感やイライラ、不安や恐怖などの慢性的ストレスを感じやすくなり、うつ症状や不眠、パニック症などが現れることがあります。セロトニンが十分に分泌されている状態を保つことで、これらの精神症状を抑えることが可能です。 オキシトシン オキシトシンは、脳の視床下部から分泌される神経伝達物質の1つです。妊娠・出産時に多く分泌されるホルモンとして知られていますが、信頼感や共感性を高めるだけでなく、不安や恐怖の緩和にも関与しています。人との抱擁・手をつなぐなどのスキンシップや親しい人との会話によって老若男女問わず、脳内で分泌されることが分かっています。 ドーパミン ドーパミンは、快楽を感じる脳内報酬系を活性化させる神経伝達物質です。アルコールや麻薬など依存性があるものの多くはドーパミンの分泌を活性化させることで快楽をもたらすといわれています。 エンドルフィン エンドルフィンは脳内麻薬とも呼ばれ、気分の高揚や幸福感、鎮痛作用などをもたらす神経伝達物質で、α(アルファ)とβ(ベータ)、γ(ガンマ)に分類されます。なかでもβ-エンドルフィンは、痛みを抑えるモルヒネの数倍から数十倍の鎮痛作用があるといわれています。 幸せホルモンは高齢者にも効果はある? 幸せホルモンといえば、身体活動が活発な若年層や中年層に注目されることが多いものですが、高齢者にも効果が期待できます。セロトニンやドーパミン、エンドルフィンなどは、どれも年齢を問わず分泌されており、精神の安定や幸福感などに関与しています。 高齢者は外出機会の減少により日光を浴びることが少なくなったり、閉経により女性ホルモンが減少したりすることで、セロトニンが不足しがちです。その結果、ストレスを感じやすくなり、イライラや恐怖など、さまざまなネガティブな感情がわき起こるようになります。 さらに、意欲や集中力が低下するため、外出しなくなったり趣味を楽しめなくなったりすることもあるでしょう。結果的にうつや認知症にもつながる可能性があるため、高齢者こそ幸せホルモンの分泌が活性化されるような行動を心がけることが大切です。 高齢者に不足しがちなセロトニン 幸せホルモンのなかでも高齢者に不足しがちなセロトニンは、生活習慣の工夫によって分泌を促すことができます。高齢者でもできるセロトニンの分泌を活性化させる方法を3つ紹介します。 外出 外出の際に日光を浴びることで、セロトニンの分泌量が増えます。また、友人や家族と外出する場合は、コミュニケーションによってオキシトシンの分泌も促されるため、なるべく複数人で外出すると良いでしょう。公園を散歩する、友人とランチに出かける、地域のイベントに参加するなど、さまざまな方法を取り入れましょう。 適度な運動 適度な運動もセロトニンの分泌を促します。ウォーキング、ストレッチなどの適度な運動は、体力や筋力の維持にもつながるため、高齢者こそ習慣づけたいところでしょう。 アミノ酸を十分にとる セロトニンの材料となる必須アミノ酸であるトリプトファンを多く含む食品を摂取することが大切です。たとえば、チーズやヨーグルトなどの乳製品、大豆製品、魚介類や肉、卵などがあります。高齢者はタンパク質の摂取不足な傾向があることから、より意識的にこれらの食品を取り入れることが大切です。ただし、タンパク質を多く摂りすぎると、結果的に塩分や脂質の過剰摂取につながりやすいため、野菜や果物などとのバランスも考慮して日々の献立を決めましょう。 * * * 年齢にかかわらず、外出や運動、栄養のバランスを考えた食事などを日常生活に取り入れることで、幸せホルモンの分泌を促しましょう。心身の健康を維持し、豊かな人生を送るためにも幸せホルモンについて知っておくことが大切です。訪問看護の際に幸せホルモンについて質問された際は、正しい知識をもってアドバイスしましょう。   編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。 【参考】〇H H Loh, L F Tseng, E Wei, and C H Li:beta-endorphin is a potent analgesic agent. 1976 Aug; 73(8): 2895–2898.〇厚生労働省.e-ヘルスネット「セロトニン(せろとにん)」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/heart/yk-074.html2024/8/8閲覧

事例で検討 スピリチュアルペインのアセスメント【スピリチュアルケア】
事例で検討 スピリチュアルペインのアセスメント【スピリチュアルケア】
特集
2024年8月6日
2024年8月6日

事例で検討 スピリチュアルペインのアセスメント【スピリチュアルケア】

本記事では、事例をもとにがんの終末期にある患者さんが訴える内容から、スピリチュアルペインのアセスメントを行います。身体的・心理的・社会的な訴えとともに表出されるスピリチュアルペインに対して、適切なケアにつなげるためのアセスメントの理論的枠組みを紹介します。 スピリチュアルペインのアセスメント 前回、スピリチュアルペインを「時間存在」「関係存在」「自律存在」の3つの次元で分類する村田理論1)を紹介しました(<<終末期にある患者さんのスピリチュアルペインを知る【スピリチュアルケア】を参照)。それぞれの内容を再度確認しておきましょう。 人間にとっての「死」を主題としてとらえると、時間存在のスピリチュアルペインとは、将来を失うことにより現在の無意味を生む苦悩です。関係存在のスピリチュアルペインとは、他者との関係を失うことにより孤独・空虚の無意味を生む苦悩です。自律存在のスピリチュアルペインとは、自立と生産性を失うことにより無価値・無意味・負担・迷惑という苦しみを生む苦悩です。 それぞれの観点から苦痛を分析すると、スピリチュアルペインには表1に示す14項目が挙げられます。14項目それぞれのスピリチュアルペインの定義については、表3に示しています。 表1 スピリチュアルペインの14項目 がん終末期にある患者さんの事例 ここで病状進行のため自分のことができなくなってきたがん終末期にあるAさんの事例を示します。患者さんの訴えにどういったスピリチュアルペインが含まれているのか、一緒に考えていきましょう。 Aさんは、60代男性、膀胱がん終末期で在宅療養中。肺・骨転移により、徐々にADLが低下しており、身の回りのことを自分1人で行うことは困難になりつつある。肺転移による症状は特になく、骨転移による痛みは鎮痛薬の調整で現在落ち着いている。家族は妻と高校生の長女との3人で、妻は訪問看護のサポートを受けながらパート勤務を継続。予後は1ヵ月程度の見通しであり、本人・家族ともに説明を受けている。Aさんは、最近は特に何をすることもなく、黙ってベッドに臥床していることが多くなっていた。ある日、訪問看護師が排便調整のための処置を行い、Aさんの身の回りを整えていると、Aさんが「自分1人では何もできなくなってしまって…。家族にも、看護師さんたちにも迷惑かけるばかりで。こうやって横になって過ごすことしかできなくて、情けない。生きていても意味がない…。もう早く終わりにしたい」とうなだれながら語った。 訴えに内包されたスピリチュアルペイン Aさんは、看護師に手を借りながら生活することを余儀なくされ、病状の進行に伴い日ごとに動けなくなっていく自身の状況を目の当たりにする中、非常につらい思いをされていることが分かります。そして、ご家族や看護師に迷惑をかけるだけでしかない自分には存在価値がなく、生きている意味が見出せない状況にあると推察されます。 すなわち、Aさんの苦悩は、自分で自分のことが思うようにできなくなっていく自己を無価値な存在として認識していることです。同時に、家族や看護師に迷惑をかけるだけの自分の生には意味がないと感じることによって現れる、自律性のスピリチュアルペインが生じていると考えられます。 また、Aさんは、負担でしかない自分の存在を日々支えてくれる妻や長女の愛情を感じていると思われる一方で、自分の現状を知り病状の悪化を自覚されています。そうした状況から、死をより間近に意識し、家族との別れが迫ってきていることも実感していると推測されます。Aさんの「情けない」との言葉からも、夫として、父親としての役割が果たせない虚無感や、申し訳なさ、孤独感によって現れる、関係性のスピリチュアルペインが生じていると考えられます。 そして、トイレにさえ1人で歩いていくことのできない自分の現実を目の当たりにする中で、死が迫っていることや、家族との別れが近づいていることを実感し、生きることへの無意味、無目的として感じています。Aさんの「生きていても意味がない…」との言葉は、それらのことによって現れる、時間性のスピリチュアルペインとして捉えることができます。 回復する見込みがなく、先の見えない状況に置かれているAさんは、このように究極の孤独の中にあることがわかります。今、生きていることの意味が見出せず、家族へ負担をかけないためにも、「いっそのこと早く終わりにしたい、早く死んでしまいたい」との苦悩としての叫びであると考えます。 体系化されたアセスメントで苦悩を捉える スピリチュアルペインを把握し、ケアにつなげていくアセスメントの方法として、村田 久行氏による三次元の苦悩の内容を軸に、田村 恵子氏らが作成したスピリチュアルペインアセスメントシート(spiritual pain assessment sheet:SpiPas/スピパス)1)の質問があります(表2)。 事例に示されるような患者さんからの明らかな表出がなくとも、終末期にある患者さんと関わり始める初期の段階から、SpiPasのような体系立てたアセスメントを行います。それにより患者さんのニーズをタイムリーに把握し、ニーズを踏まえたケアを早期から提供することが可能となります。ただし、SpiPasは個々の患者さんの反応に合わせて展開していくものですので、用い方については十分に学んでから活用する必要があります。 表3にSpiPasによる特定の次元におけるスピリチュアルペインのアセスメントのための質問例と表現例を示します。 表2 SpiPasによるスクリーニングのための質問 文献2)より許諾を得て転載 表3 特定の次元のスピリチュアルペインをアセスメントするための医療者の質問例と患者さんの表現例 文献2)より許諾を得て転載 執筆:前滝 栄子京都大学医学部附属病院 緩和ケアセンターがん看護専門看護師 編集:株式会社照林社 【引用文献】1)村田久行.末期がん患者のスピリチュアルペインとそのケア:アセスメントとケアのための概念的枠組みの構築.緩和医療学.2003,5,p.157-165.2)田村恵子,森田達也,河正子編.『看護に活かすスピリチュアルケアの手引き』第2版,青海社,2017,p.145-146.

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