セミナーレポートに関する記事

高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~
高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~
特集 会員限定
2023年11月28日
2023年11月28日

高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】

2023年8月25日、9月8日に開催したNsPace(ナースペース)オンラインセミナー「超高齢社会における栄養ケアマネジメント~通所施設や在宅における低栄養への挑戦~」。ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニーとの共催でお届けしました。ご登壇いただいたのは、高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生。利用者さんの食事、栄養摂取に関して、訪問看護師が知っておきたい知識を紹介くださいました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、利用者さんの食事支援のポイントや、トラブルが起きた際の対処方法をまとめます。 ※約45分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら高齢者の栄養ケアマネジメント~食支援・栄養指導~【セミナーレポート前編】 【講師】吉田 貞夫先生ちゅうざん病院 副院長/沖縄大学 客員教授、金城大学 客員教授高齢者医療、高齢者の栄養管理、認知症ケアなどを専門とする医師・医学博士。日本静脈経腸栄養学会 認定医、日本病態栄養学会 専門医、日本臨床栄養学会 指導医をはじめ、数多くの資格を取得。栄養経営実践協会の理事も務める。医師として患者の診療にあたるかたわら、全国で年間80件以上の講演も行っている。 在宅における嚥下機能確認のポイント 在宅における利用者さんの食事支援では、最初に嚥下機能をきちんと評価することを心がけてください。 評価の方法としては、すでに実践している方も多いと思いますが、「反復唾液嚥下テスト(RSST)」や「水飲みテスト」が挙げられます。ゼリーをはじめとした嚥下しやすい食品をどれくらい食べられるかをチェックしている方もいらっしゃいますね。また最近は、在宅であっても、耳鼻科医や歯科医と連携して嚥下機能を確認しているケースもあるようです。 ただ、嚥下機能を評価する際は、「飲み込みの機能」だけに注目すればよいわけではありません。口腔が清潔に保たれているか、噛み合わせが悪くなっていないか、噛む力が十分にあるかといった「口腔の機能」も確認する必要があります。ぜひ視野を広げて評価してください。また、血管障害の後遺症で嚥下障害がある利用者さんや、認知症と嚥下障害を併発している利用者さんの場合は、誤嚥しやすいためとくに注意深く確認しましょう。 嚥下機能に問題があると判断した場合には、「嚥下調整食」を活用してみてください。 窒息への対策と対処方法 高齢者の食事に潜むリスクとしては、やはり窒息があります。窒息というと「餅を食べると起こりやすい」とイメージされる方が多いと思いますが、実はお米やパン、肉、魚で窒息してしまう方も多くいます。それから、ぶどうやプチトマト、飴など、小さくて丸い形状のものは気管にすっぽり入ってしまうので要注意です。窒息の危険度が高いものは利用者さんの手に届かないようにする、飴は棒つきのものを選ぶなど、十分に配慮してください。 窒息が起きてしまった際の対処法 利用者さんが窒息してしまった際は、後ろから利用者さんを抱え込むようにして腹部を圧迫する「腹部突き上げ法(ハイムリック法)」や、背中を何度も叩く「背部叩打法」を試してみてください。詳しいやり方は、日本医師会の救急蘇生法のサイトに掲載されています。 >>日本医師会サイト「救急蘇生法」気道異物除去の手順 また、窒息への対処法として「吸引」を選択する方はよく見られますが、このやり方にはリスクもあります。痰の吸引に使うような細いチューブでは、詰まっている異物を吸えないどころか、さらに奥へ押し込んでしまうことも。なお、掃除機の利用は、圧が強すぎて臓器を損傷する可能性があるので推奨されていません。 ご紹介した方法を実践しても異物を取り除けず、利用者さんのバイタルサインが悪化してきたときは、迷わず救急車を呼んでください。必要に応じてAEDの準備も検討しましょう。 認知症の方への食事支援 認知症の方に対しては具体的にどのような支援をすればよいのかについてもお伝えします。ぜひ以下の4つのポイントを念頭においてサポートしてください。 ご家族に適切な食事介助の方法を伝える食事を配膳しても反応がない、食べ物で遊んでしまう、食器の使い方がわからない。こういった様子が見られる方は、認知機能がかなり低下しており、目の前に食事を出すだけでは食べてくれません。ご家族をはじめとした介助者の方に、食べ物を口元まで運ぶ必要があることを伝えてください。嚥下機能に問題があれば食事を見直す 食べ物を口の中に溜め込んでいる、飲み込んでも喉に残っている、むせている、痰が多い。これらは嚥下機能に問題があるサインです。食事内容の調整を検討しましょう。   食事を嫌がる場合は味つけや見た目を変える 認知症を発症すると、味覚障害になる方が多くいます。そのため、食事を嫌がる場合は味つけが原因であることも。濃い味つけにすると食べてくれるケースもありますよ。また、認知症独特の摂食障害で食が進まない可能性もあります。例えば、ふりかけが虫に見えてしまったり、粒状の食品が小石に見えたりするのです。食事の見た目にも着目してみてください。 食事の時間や形状を合わせる 認知症になると「1日=24時間」ではなくなってしまうことがあります。そのため、食事の時間にこだわりすぎず、起きている時間に食べられるようにするのもポイントです。ゼリーをはじめ、すぐに食べられるものを用意しておくとよいでしょう。また、じっとしていられない利用者さんも、手に持って食べられるスナックタイプの食品なら食べられることも。その方の状態に合わせた食事のあり方を模索してみてください。 認知症の予防につながる食事 認知症の「予防」についても確認しておきましょう。認知症は介護依存度が高い病気で、転倒による骨折リスクが高かったり、問題行動を起こしやすかったりといった特徴があります。また、発症するとずっと治療を続けていかなければならず、予防が大切です。 認知症を予防するには、多様性のある食事をとるとよいといわれています。具体的には、さまざまな種類のメニューを食べる、毎日違うものを食べるといったことですね。そして最大のポイントは、自分自身で食事を用意することです。 食事の用意と一口にいっても、メニューを考え、買い物に行き、料理し、後片づけをするといった数多くのステップがあります。その上で多様性のある食事を目指せば、考えるべきことの幅はさらに広がるでしょう。これが認知症予防につながると考えられます。利用者さんの食事のサポート、アドバイスを行うにあたり、ぜひ知っておいてもらえたらと思います。 * * * 毎日の食事は、生命維持に欠かせない行為であると同時に、多くの利用者さんにとって「楽しみな時間」でもあるでしょう。ぜひ今回ご紹介した知識を食事支援や栄養管理に活かして、利用者さんの体づくり、そして豊かな生活づくりをサポートしてください。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

高齢者の栄養ケアマネジメント~食支援・栄養指導~【セミナーレポート前編】
高齢者の栄養ケアマネジメント~食支援・栄養指導~【セミナーレポート前編】
特集 会員限定
2023年11月21日
2023年11月21日

高齢者の栄養ケアマネジメント~食支援・栄養指導~【セミナーレポート前編】

2023年8月25日、9月8日に開催したNsPace(ナースペース)オンラインセミナー「超高齢社会における栄養ケアマネジメント~通所施設や在宅における低栄養への挑戦~」。ネスレ日本株式会社 ネスレ ヘルスサイエンス カンパニーとの共催でお届けしました。登壇してくださったのは、高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生。訪問看護師が知っておきたい利用者さんの食事、栄養摂取に関する知識を紹介いただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、低栄養が高齢者に与える影響や栄養管理の考え方、ノウハウをまとめます。 ※約45分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】吉田 貞夫先生ちゅうざん病院 副院長/沖縄大学 客員教授、金城大学 客員教授高齢者医療、高齢者の栄養管理、認知症ケアなどを専門とする医師・医学博士。日本静脈経腸栄養学会 認定医、日本病態栄養学会 専門医、日本臨床栄養学会 指導医をはじめ、数多くの資格を取得。栄養経営実践協会の理事も務める。医師として患者の診療にあたるかたわら、全国で年間80件以上の講演も行っている。 サルコペニア、フレイルと低栄養の関係性 超高齢社会を迎えた今、低栄養と高齢者のサルコペニア、フレイルとの関係がますます注目されています。最初に、サルコペニアとフレイルについて簡単にご説明しましょう。 サルコペニア筋力が落ち、筋肉量も減少して、日常生活に必要なさまざまな身体機能が低下した状態のことをいいます。「筋力の低下」「骨格筋量の減少」「身体機能の低下」という3つの要素があると覚えてください。サルコペニアになると、転倒や骨折、ADL低下、肺炎のリスクが高まります。フレイル運動能力が低下した虚弱な状態。転倒や骨折、ひいては入院、死亡リスクも高まります。 低栄養は、こうしたサルコペニア、フレイルにつながる可能性があり、早期発見することが重要です。しかし、筋肉量を測らずに低栄養の判定をすると、検出率が半分ほどに減ってしまうことがわかっています。 近年、GLIM(低栄養診断国際基準)でも、サルコペニアの判定をする上で、骨格筋量の評価がより重要視されています。そこで、血液検査の値(血清クレアチニンとシスタチンC)を使って骨格筋量を計算し、サルコペニアや低栄養をもっと簡単に測定*できるよう研究開発しました。 ただ、専用の機械がない訪問看護の現場で筋肉量を測るのはなかなか難しいもの。そんなときは、人間の体の中で最も筋肉の割合が多い部位である「ふくらはぎ」の周囲長を測ってみてください。周囲長が減っている場合は、全身の筋肉量が減っていると判断できます。この方法は、サルコペニアの可能性の有無を判断する場面でも活用できます。 ふくらはぎ測定基準 男性        女性        ふくらはぎ周囲長(cm)<33 <32 ※BMIが25~30(kg/m2)の場合は測定値から3㎝を引く。BMIが30(kg/m2)以上の場合は測定値から7㎝を引く。*参照元:Assessment of sarcopenia and malnutrition using estimated GFR ratio (eGFRcys/eGFR) in hospitalised adult patients, Clinical Nutrition ESPENhttps://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35331529/ 事例で考える栄養管理の方法 ここで具体的な事例を挙げて、栄養管理のアプローチについて考えてみましょう。60代後半の男性、Aさんの事例です。 モデルケース:Aさん脳梗塞を発症した60代後半の男性。現在の体重は52kg。リハビリテーションに取り組み、自宅に帰りたいと考えている。 Aさんに必要なエネルギー量 Aさんの1日に必要なエネルギー量は、1日安静にしていたとしても1,300kcalに上ります。リハビリテーションに取り組んだ場合はプラス250kcal、点滴で栄養を摂取していた期間に減ってしまった体重を戻そうとする場合はさらにプラス500kcalをとらなければなりません。つまり、1日あたり合計2,050kcalを摂取する必要があります。 Aさんが抱える栄養摂取の課題 しかし、Aさんはおかゆをはじめとした嚥下調整食を食べています。嚥下調整食は水分が多いため、その分容積が大きくなり、頑張って食べても1日に1,200kcalをとるのが限界です。このような低栄養の状態が続くと、サルコペニアが進行し、ADLは低下。嚥下機能もさらに悪化し、誤飲性肺炎を起こしたり、食事をとれなくなったりといったリスクも高まってしまいます。 Aさんへの栄養管理のアプローチ そこで、まずは2,050kcalから体重を戻す分のエネルギー量を引いた1,550kcalを最低でもとることを目指します。そのための方法としては、訓練をして食形態を上げること。食事の水分量が減れば、食べられる量が増えます。それから、ゼリーやドリンクなどの補助食品を使うのも効果的です。 食べる目的に応じて内容を変えて 栄養管理の内容は、その利用者さんの「食べる目的」をふまえて検討します。体調の改善を目指す方、現状を維持したい方、看取りフェーズに入っている方。食べる目的が異なれば、食事内容やリハビリテーションの実施の有無が変わってきます。 改善を目指す方先ほど挙げた事例のAさんのように、今より元気になりたい方は「摂取量>必要量」のバランスになるようエネルギーをとる必要があります。食形態を変えるリハビリテーションを継続し、栄養補助食品、MCT(中鎖脂肪酸)や粉末たんぱく質を併用しましょう。現状を維持したい方現在の体の状態をキープしたい方は、「摂取量≒必要量」になるようにエネルギーをとれれば問題ありません。ただし、体重が減少していないかこまめに観察してください。栄養補助食品を使うこともありますが、長く継続できるかどうか考えて提案しなければなりません。看取りフェーズの方エネルギー摂取の目標は「摂取量≒必要量」ですが、最も優先すべきは利用者さん、ご家族のご希望です。ニーズを見極め、また継続可能な栄養管理の方法を模索して提案します。 なお、栄養管理にぜひ活用してほしいのが、「中鎖脂肪酸」や上記でも触れている「栄養補助食品」です。 食欲改善効果が期待できる中鎖脂肪酸 中鎖脂肪酸は、近年人気が高まっているココナッツオイルの主成分で、低栄養の方にぜひ摂取してほしい成分です。理由は、食欲を亢進させる消化管ホルモン「グレリン」は中鎖脂肪酸と結合することで活性型になるため。つまり、中鎖脂肪酸をとれば、食欲を改善させられるかもしれません。 栄養補助食品を使う場合、1ヵ月は継続を 低栄養の方の栄養管理によく使われる栄養補助食品は、摂取期間に注意してください。「認知症患者の栄養に関するESPENガイドライン」によると、栄養補助食品の使用を開始したら、栄養状態に改善傾向が見られても1ヵ月間は続けたほうがよいとされています。「栄養状態が悪くなる前」の状態にまでしっかりと戻してから使用をストップしましょう。 ICTを活用した栄養指導 栄養指導は、管理栄養士が行うのが理想的です。しかし、管理栄養士が在籍していない訪問看護ステーションはまだまだ多く、専門家による栄養指導を受けられないケースは珍しくありません。そこで活躍するのが、「ICTを活用した遠隔栄養指導」です。私も、遠隔診療が始まる以前の2013年頃、沖縄県栄養士会が共同で「遠隔栄養指導のモデル事業」を実施しました。今後、全国で遠隔栄養指導のしくみがどんどん構築されていくことを願っています。 >>後編はこちら高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇Sadao Yoshida , Yuki Nakayama , Juri Nakayama , Nobumasa Chijiiwa & Takahiro Ogawa .(2022). Assessment of sarcopenia and malnutrition using estimated GFR ratio (eGFRcys/eGFR) in hospitalised adult patients. Clin Nutr ESPEN , 48:456-463. DOI: 10.1016/j.clnesp.2021.12.027〇Dorothee Volkert , Michael Chourdakis , Gerd Faxen-Irving , Thomas Frühwald , Francesco Landi , Merja H Suominen 6,…&Stéphane M Schneider. (2015). ESPEN guidelines on nutrition in dementia. Practice Guideline, Clin Nutr. 2015 Dec;34(6):1052-73. DOI: 10.1016/j.clnu.2015.09.004

訪問看護の夜間緊急対応/頭痛のケーススタディ
訪問看護の夜間緊急対応/頭痛のケーススタディ
特集 会員限定
2023年11月14日
2023年11月14日

訪問看護の夜間緊急対応/頭痛のケーススタディ【セミナーレポート後編】

2023年8月18日に開催したNsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「訪問看護の夜間緊急対応~頭が痛い!待てる?待てない?~」。訪問看護の現場で活躍する診療看護師の坂本未希さんを講師に迎え、頭痛を訴える利用者さんのトリアージに必要な知識を、ケーススタディを交えながら教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、緊急コールを受けた際に活用すべきツールの紹介と、ケーススタディの内容をまとめました。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら訪問看護の夜間緊急対応~頭痛の種類と特徴~【セミナーレポート前編】 【講師】坂本 未希さん看護師、保健師/ウィル訪問看護ステーション江戸川 所属宮城大学 看護学部看護学科を卒業後、長崎県の病院での勤務を経て、訪問看護に携わるべくウィル訪問看護ステーション江戸川に入職する。訪問看護師として勤務する傍ら、国際医療福祉大学大学院に進学し、2019年3月には修士課程を修了。診療看護師の資格を取得した。 緊急コールを受けた際に使える3つのツール 緊急コールを受けた際の対応には、3つの選択肢があります。緊急度の高い順に、・救急車を呼ぶ・看護師が訪問して状態確認やケアをする・利用者さんやそのご家族に電話で対応方法を説明するです。選択においては、以下のツールを使って検討してください。 緊急性を判断する「ABCDE」アプローチ 緊急性、重症度を判断するにあたり、最初に「気道」「呼吸」「循環」「意識」「体表」の5つから成る「ABCDE」を聞いていきましょう。 各項目を電話口で確認する際のコツは以下のとおりです。 A(airway):気道「会話や呼吸はできますか」「顔色はどうですか」「胸の動きはどうですか」など、わかりやすい言葉で質問しましょう。 B(breathing):呼吸「呼吸のリズムは早いですか、遅いですか」「肩を上げて苦しそうな呼吸をしていないですか」など、わかりやすい言葉で質問しましょう。 C(circulation):循環血圧や脈拍を測れない場合も、末梢が冷たくなっていないか、チアノーゼがないかなどを確認します。 D(dysfunction of CNS):意識声かけに対しての反応の有無だけでなく、普段と比べてどうかも判断のポイントになります。 E(exposure):体表冷や汗をかいているか、体熱感があるかなど、すぐに確認できる変化を聞いてみましょう。 現病歴を確認する「OPQRST2」 「ABCDE」で目立った問題がない場合は、より詳しく問診していきます。このときに意識してほしいのが、「時間軸」と「症状経過」です。時間の経過に伴って症状が悪化している場合は注意が必要になります。 この時間軸と症状経過に関する情報を漏れなく聞くためには、「痛みのOPQRST2」という現病歴をチェックするためのツールを使うのがおすすめです。 前編(「訪問看護の夜間緊急対応~頭痛の種類と特徴~」参照)で説明した「見逃せない頭痛=二次性頭痛」の判断材料として、頭痛の発症様式は極めて重要な情報になります。例えば、くも膜下出血はハンマーで叩かれたような頭痛が突然起こり、発症後すぐにピークを迎えて、以降ずっと痛みが続くのが一般的。このほかにも、突然発症の頭痛は緊急性が高いケースが多いので、見逃さないでください。 一方、一次性頭痛に分類される片頭痛や緊張性頭痛、群発性頭痛は、痛みに波があることが多いです。 既往歴を確認する「AMPLES(アンプルズ)」 現病歴と併せて、基礎情報も確認しておきましょう。その際に使えるツールが「AMPLES」です。 アレルギーや内服薬、既往歴、社会歴に加え、カルテには載っていない最終の食事や月経も大切な問診項目です。「AMPLES」は、通常の初回訪問時にしっかりと調べておくよう心がけてください。 「OPQRST2」と「AMPLES」を使って得た情報をふまえて、鑑別疾患や、今現れている症状がこれからどういう経過をたどるかを考えていきます。ただし、利用者さんやご家族がパニックに陥っている場合、電話の問診で必要な情報をすべて聞けない時があります。その際は、より丁寧なやりとりを心がけてください。判断に迷う場合は出動しましょう。 ケーススタディ ここからは、ご紹介した知識やツールを使ってケーススタディをしていきます。頭痛を訴える利用者さんのアセスメントと対応について考えてみましょう。 電話での問診、および訪問による状況の確認 利用者さんの妻から、上記のような緊急コールが入りました。まずはカルテの記載を見つつ、AMPLESを使って既往歴をチェックします。 糖尿病や脂質異常症があること、18時頃に最後の食事をとったことなどがわかりました。 続いて、OPQRST2で現病歴を聞いていきます。 夕食後に急に頭痛を訴えはじめたそうですが、「急に」がどれくらい急なのかがよくわかりませんでした。ただ、突然発症の頭痛は緊急性が高く、また辛い痛みで臥床しているとのことで、出動を決めます。 そして、看護師が現場で確認したABCDEは以下のとおりです。 いつもよりぼんやりしていて、意識レベルはJCSI-3に分類されます。また、汗をびっしょりかいており、熱感もありました。 さらに、訪問後に改めて現病歴を問診すると、数日前に感冒症状があったことが新たにわかります。電話での問診ではわからなかった痛みの場所は頭部全体で、随伴症状は39℃の発熱。脈拍は100で頻脈、血圧はやや低下。項部硬直が見られ、頭痛は徐々に強くなり、意識レベルは少しずつ下がる傾向にありました。 アセスメント 以上の情報をふまえ、私が最初に鑑別疾患に挙げるのは髄膜炎です。眼痛があったり、ペンライト法で陽性だったりすれば緑内障も挙げますが、今のところは認められないので除外します。 このように、アセスメントではまず二次性頭痛を除外できないかを考えましょう。そして、除外しきれなければ一次性頭痛については考えず、二次性頭痛として報告を上げます。 「SBAR(エスバー)」を用いた報告 報告する際は「SBAR」というツールを利用します。 このケースは頭痛が主訴なので、診療所や病院には「◯◯さんから緊急連絡があり、訪問しました。頭痛の利用者さんです」と最初に伝えます。続いて、背景=現病歴について。バイタルサインで特に気になる点があれば報告します。今回であれば、体温や血圧、項部硬直ですね。その上で、評価と提案は「髄膜炎の可能性があるので報告しました。緊急搬送を考えていますが、いかがでしょうか?」と伝えるとよいでしょう。 なお、確認した所見をすべて報告する必要はありません。重視すべき所見をピックアップして端的に伝えましょう。もし不足があれば医師から質問があるので、それに回答し、一緒にアセスメントしていけば大丈夫です。 * * * 夜間待機を担当する際、「うまく情報を拾えないかもしれない」「正しい判断ができなかったらどうしよう」といった不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。今回ご紹介したトリアージのノウハウが、みなさんの自信や安心につながることを願っています。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

訪問看護の夜間緊急対応~頭痛の種類と特徴~【セミナーレポート前編】
訪問看護の夜間緊急対応~頭痛の種類と特徴~【セミナーレポート前編】
特集 会員限定
2023年11月7日
2023年11月7日

訪問看護の夜間緊急対応~頭痛の種類と特徴~【セミナーレポート前編】

2023年8月18日に開催したNsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「訪問看護の夜間緊急対応~頭が痛い!待てる?待てない?~」。訪問看護の現場で活躍する診療看護師の坂本未希さんを講師に迎え、頭痛を訴える利用者さんのトリアージに必要な知識を、ケーススタディを交えながら教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、訪問看護におけるトリアージの考え方や、頭痛の種類とその見分け方などをまとめました。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】坂本 未希さん看護師、保健師/ウィル訪問看護ステーション江戸川 所属宮城大学 看護学部看護学科を卒業後、長崎県の病院での勤務を経て、訪問看護に携わるべくウィル訪問看護ステーション江戸川に入職する。訪問看護師として勤務する傍ら、国際医療福祉大学大学院に進学し、2019年3月には修士課程を修了。診療看護師の資格を取得した。 訪問看護におけるトリアージとは トリアージとは、疾患の重症度や緊急度に基づいて治療の優先度を決定し、選別を行うことです。もう少し噛み砕いて説明すると、「患者さんに必要な医療を提供できる臨床スタッフに繋ぐ」ことを指します。 救急の現場では重症度や緊急度に応じて優先順位をつけることが重視されますが、訪問看護現場におけるトリアージでは、「ご家族で対応可能か」「自分たち看護師で対応可能か」「診療所や病院に対応してもらうべきか」を見極めることが大切です。 今回は、頭痛を訴える利用者さんのトリアージについて考えていきましょう。 頭痛の種類 利用者さんから頭痛を訴える連絡が入ったときは、まず「一次性頭痛」か「二次性頭痛」かを判断します。 一次性頭痛頭痛の原因となる疾患がないもので、具体的には片頭痛や緊張性頭痛、群発頭痛の3つがあります。二次性頭痛に比べて緊急性は低いです。 二次性頭痛何らかの疾患があり、その結果として起こる頭痛です。原因となる疾患はさまざまで、代表例としてはくも膜下出血や髄膜炎、急性緑内障が挙げられます。 続いて、上記2種類の頭痛の特徴についてより詳しくご紹介します。 二次性頭痛の特徴と見分け方 まず、緊急性の高い二次性頭痛からお伝えします。危険な疾患の症状として現れる二次性頭痛は、特に見逃せません。先に代表例として挙げたくも膜下出血や髄膜炎は、診断・治療の遅れが命に関わるため、早期発見・治療が必須。緑内障は死には至らないものの、失明する可能性があり、機能的予後が重篤な疾患です。 これらの頭痛は、いずれも「圧」がキーになります。くも膜下出血と髄膜炎は急激な頭蓋内圧の亢進が、緑内障では眼圧の亢進が痛みを引き起こすのが特徴です。 くも膜下出血、髄膜炎の判断基準 くも膜下出血と髄膜炎では、多くの場合「髄膜刺激徴候」が見られます。代表的なのが項部硬直で、首を支えて頭部を持ち上げようとしても、硬直しているため頭部を前屈させられません。硬直が強い場合は、頭を持ち上げると肩まで一緒に浮いてしまいます。 また「ケルニッヒ(kernig)徴候」といって、下肢を股関節で90度に曲げた状態で膝を130度以上伸ばそうとすると、抵抗や痛みが生じます。これらの身体所見を確認できた場合は、くも膜下出血や髄膜炎を強く疑いましょう。 そのほか、くも膜下出血は発症後すぐに頭痛のピークに達すること、髄膜炎は発熱や吐き気があり、必ずしも髄膜刺激徴候があるわけではないことも覚えておきたいポイントです。 緑内障の判断基準 緑内障の判断にはペンライト法が有効です。眼球の横からペンライトの光を当てると、正常な場合は虹彩全体が照らされます。しかし、緑内障を発症している場合は光が抜けず、反対側に影ができます。これは、眼圧が上がることで「虹彩」がせり出してくるためです。 二次性頭痛の判断に役立つ「SNNOOP10(スヌープテン)」 二次性頭痛の代表例としてくも膜下出血、髄膜炎、緑内障を挙げましたが、頭痛を主訴とする疾患はほかにもたくさんあります。「頭痛」というひとつの所見だけで危険度は判断できないので、随伴症状や経過、環境など、さまざまな角度からレッドフラッグがないかを調べて判断することが大切です。 そうした二次性頭痛のレッドフラッグをまとめた「SNNOOP10」というリストがあるので、ぜひ一度チェックしてください。 【SNNOOP10】・発熱を含む全身症状 S:Systemic symptoms including fever・新生物の既往 N:Neoplasm in history・神経脱落症状または機能不全 N:Neurologic deficit or dysfunction (including decreased consciousness)・急または突然に発症する頭痛 O:Onset of headache is sudden or abrupt・高齢(50歳以上) O:Older age (after 50 years)・頭痛パターンの変化または最近発症した新しい頭痛 P:Pattern change or recent onset of headache・姿勢によって変化する頭痛 P:Positional headache・くしゃみ、咳、または運動により誘発される頭痛 P:Precipitated by sneezing, coughing, or exercise・乳頭浮腫 P:Papilledema・進行性の頭痛、非典型的な頭痛 P:Progressive headache and atypical presentations・妊娠中または産褥期 P:Pregnancy or puerperium・自律神経症状を伴う頭痛 P:Painful eye with autonomic features・外傷後に発症した頭痛 P:Posttraumatic onset of headache・HIVをはじめとした免疫系病態を有する患者 P:Pathology of the immune system such as HIV・鎮痛剤使用過多もしくは薬剤新規使用に伴う頭痛 P:Painkiller overuse or new drug at onset of headache 上記すべての項目を暗記する必要はなく、一読して大体を頭に入れておくだけでも、トリアージを行う際に役立つはずです。 また、上記の「SNNOOP10」には含まれていませんが、利用者さんだけでなく同居人の方にも頭痛があったり、ガス器具の炎の色がオレンジだったり、換気すると頭痛が改善するといった場合、一酸化炭素中毒の疑いがあります。特に古い住居ではその可能性が高まると考えてください。 一次性頭痛の特徴と治療方法 次に、頭痛を訴えるケースで多い一次性頭痛についてお伝えします。判別において知っておきたいそれぞれの特徴としては以下が挙げられます。 片頭痛頭痛が起こる前、光に過敏になる、目がチカチカするといった前兆が見られます。緊張性頭痛随伴症状はありませんが、長時間同じ姿勢をとることが誘発因子となるため、仕事や生活スタイルに影響を受けている可能性が高いです。群発頭痛上記の2つよりも強い痛みが生じることが特徴で、くも膜下出血との判別が難しいケースがあります。頭痛が生じている箇所と同側の目の充血、涙が止まらないなどの随伴症状が判断のポイントになります。また、女性よりも男性に起こることが多いです。 なお、群発頭痛の有病率は0.1〜0.4%と低く、あまり見かけません。そのため、先にご紹介した二次性頭痛の可能性を除外できた際に「では、これはどんな頭痛か」と考えるにあたって、片頭痛と緊張生頭痛の可能性を念頭に置くといいでしょう。 一次性頭痛の治療 軽症の片頭痛と緊張性頭痛は、アセトアミノフェン含有の鎮痛剤を服用すると大体はよくなります。そのほか、片頭痛にはNSAIDsも効果的です。緊張性頭痛であれば、首をマッサージしたり、温めたりすると痛みが緩和することもあるでしょう。なお、鎮痛剤が効かない場合は、医師にほかの治療薬を検討してもらう必要があります。 群発頭痛の治療には酸素投与が有効と考えられているので、痛みがひどい場合は医師に連絡し、搬送すべきか指示を仰いでください。 >>後編はこちら訪問看護の夜間緊急対応/頭痛のケーススタディ【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

お金の基礎知識2
お金の基礎知識2
特集 会員限定
2023年9月19日
2023年9月19日

お金の基礎知識/分散投資の基本&新NISA解説【セミナーレポート後編】

2023年6月23日に実施した、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「お金の基礎知識~貯蓄・投資・NISAについて学ぼう~」。看護師のみなさんが気になるお金にまつわる知識を、ファイナンシャルプランナーの工藤清美さんに教えてもらいました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、投資で資産を増やしていくために必要な知識の続きと、新NISA制度についてご紹介します。 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちらお金の基礎知識/貯蓄方法&投資の種類とリスク【セミナーレポート前編】 【講師】工藤 清美さんファイナンシャルプランナー・CFP(R)認定者/株式会社エフピーブラッサム 代表取締役早稲田大学大学院ファイナンス研究科を修了し、1級FP技能士、CFP(R)試験に合格。個人顧客の資産形成をサポートする独立系FPとして、10年以上にわたって活躍している。2023年4月には、著書『解くだけでお金が増える! 世界一面白い! とっておき資産形成トレーニング』(PHP研究所)を出版。 資産を増やすための分散投資とは 定額積立投資による時間分散で利益を上げる 時間分散とは、今もっているお金を一括で投資するのではなく、投資するタイミングを分けることです。一定の金額を定期的に投資していく「積立投資」は、代表的な時間分散投資の方法です。 運用商品の価格は一定ではなく、上がったり下がったりするものです。そこで積立投資をすると、価格が高いときには少しだけ、安いときにはたくさんの量(株数、口数)を自動的に購入できます。投資で利益を上げるには、安いときにたくさん買うことが重要なので、放っておいてもそれができる時間分散には大きなメリットがあります。 資産分散で「資産全体のリスク」を低減できる 資産分散とは、資産をジャンルの異なる投資対象に分けてもつ方法です。例えば100万円をもっているときに、それを「国内債券」「国内株式」「外国株式」「外国債券」に分けてそれぞれ25万円ずつ投資するようなやり方です。 債券も株式も、価格は毎日変動します。しかし、それぞれがまったく同じ値動きをすることはなく、例えば「国内株式は上がったけれど、国内債券は下がった」「外国債券は上がったけれど、国内株式は下がった」というケースが頻繁に起こります。 そんなとき、投資対象を多様化していれば、ブレ幅が相殺されやすくなります。つまり、資産全体としてのブレが小さくなるのです。前編でお伝えしたとおり、ブレ幅とはすなわちリスクなので、資産分散で資産全体のリスクを小さくできるといえます。 資産分散には「資産価値を守る」効果も 資産分散には、インフレやデフレ、円高や円安といったさまざまな環境の変化が生じたときにも資産価値を守れるメリットもあります。 現在(2023年6月時点)の日本では、多くの方が円預金に資産を集中させています。しかしそれでは、インフレが起こってお金の価値が下がったとき、または今まさに起こっている円安になったときに、資産価値がどんどん下がってしまいます。世界経済の状況は変わっていくものなので、どんな状況においても資産価値を減らさないためには、資産分散をしておくことがおすすめです。 資産分散して長期的に投資するとマイナスにならない? 1995年から2021年のデータを見ると、国内外の株式や債券など4つの資産に分散投資をして10年間保有し続けた場合、いつ投資を始めてもプラスになることが証明されています。ただし、これはあくまで過去のデータから導き出された結果であり、この先を予測するものではありません。 しかし、私たちにできることは、過去のデータを分析し、より成功確率の高いやり方を採用していくことです。当たるか外れるかというスリリングな投資をするのではなく、資産分散で可能な限りブレを小さくしながら長い目で投資し、コツコツと着実に資産を増やしていく。この方法なら、投資による資産形成にも怖がらずにチャレンジできるのではないでしょうか。 2024年の制度拡充を理解してNISAを活用 NISA(少額投資非課税制度)は、その枠組みの中で得た利益がすべて非課税になる制度です。通常、資産運用で利益が出た場合は20.315%の税金が差し引かれますが、NISA口座内で得た利益に対しては非課税となります。 また、2024年に大幅な制度変更があり、「新NISA」が新たにスタートします。従来の制度と新制度、それぞれの特徴を見ていきましょう。 金融庁「NISAとは?」を参考に、編集部作成 金融庁「NISAとは?」を参考に、編集部作成 2023年末までの従来のNISAは、「つみたてNISA」と「一般NISA」のどちらかを選択して口座を開設します。一方、新NISAではその別はなくなり、ひとつの口座の中に「つみたて投資枠」と「成長投資枠」という2つの枠があり、両方を使えるようになります。さらに、保有期間の制限も撤廃され、年間の投資枠も大幅にアップしています。 そして、非課税投資枠の再利用ができるようになったことも新NISAの大きな特徴です。保有商品を売却すると、その金額分の枠が翌年に復活します。従来のNISAでは、一度商品を購入して枠を使うとその分は売却しても戻らなかったので、より使いやすくなっています。 なお、対象商品については従来のNISAと新NISAとで大きく変わることはありません。つみたてNISAとつみたて投資枠の商品は同じで、成長投資枠は一般NISAにあった商品の一部(毎月分配型、高レバレッジ商品など)を除くラインナップから選べます。 NISA口座を開設する金融機関選びは慎重に これからNISA口座の開設を考えている方は、慎重に金融機関を選んでください。今後、新NISA口座は資産形成のメイン口座になるケースが多くなるため、当然各金融機関は「ぜひうちで開設を」とアピールするでしょう。そこで目先のキャンペーンに踊らされず、自分がほしい商品を扱っているかを必ず確認してください。口座開設後の金融機関変更も可能ですが、手間がかかるため、最初の開設時に十分に検討しておくことをおすすめします。 * * * たくさんの仕事を抱え毎日が忙しい看護師のみなさんは、資産形成についてじっくり考える時間の余裕なんてない、と感じるかもしれません。しかし、お金について考えることは、これからの人生を描くことです。ぜひ今回ご紹介したノウハウを生かして、お金を貯め、増やすアクションを起こしてみてください。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

お金の基礎知識1
お金の基礎知識1
特集 会員限定
2023年9月12日
2023年9月12日

お金の基礎知識/貯蓄方法&投資の種類とリスク【セミナーレポート前編】

2023年6月23日に実施した、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「お金の基礎知識~貯蓄・投資・NISAについて学ぼう~」。看護師のみなさんが気になるお金にまつわる知識を、ファイナンシャルプランナーの工藤 清美さんに教えてもらいました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、お金への漠然とした不安を払拭する方法や、投資で資産を増やしていくために必要な知識についてご紹介します。 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】工藤 清美さんファイナンシャルプランナー・CFP(R)認定者/株式会社エフピーブラッサム 代表取締役早稲田大学大学院ファイナンス研究科を修了し、1級FP技能士、CFP(R)試験に合格。個人顧客の資産形成をサポートする独立系FPとして、10年以上にわたって活躍している。2023年4月には、著書『解くだけでお金が増える! 世界一面白い! とっておき資産形成トレーニング』(PHP研究所)を出版。 資産への認識を明瞭にして、計画的に貯蓄 まずは、みなさんが漠然と抱えている資産に関する不安をなくす方法をご説明します。お金への不安を解消するには、「資産の見える化」「ファイナンシャル・ゴールの設定」「貯まるしくみづくり」この3ステップをふむ必要があります。以下で、それぞれの具体的な方法を見ていきましょう。 資産の見える化、ファイナンシャル・ゴールの設定 「今の貯蓄ペースで問題ない?」「そもそも、いくら貯めれば安心なの?」……そんな資産に関する疑問は、以下に挙げる5つの観点で情報を整理するとだんだん明確になっていきます。 現在の保有資産の把握銀行の預貯金はもちろん、保有している株式や債券、保険商品などを含む総資産を洗い出しましょう。 毎月の収支の把握収入は給与明細で確認を。収支は前月の残高と今月の残高を比較すれば、家計簿をつけていなくても把握できます。最近は便利なアプリもあるので、うまく活用してみてください。 1年間の資産増減の把握年間の資産の動きがわかれば、今後どれくらいのペースで資産を積み上げていけるかを予測できるようになります。 将来かかる支出の把握住宅購入費や教育費、自己研鑽のための費用など、これから先10年の間に必要になる大きな支出を整理しましょう。 ファイナンシャル・ゴールの設定ファイナンシャル・ゴールとは、人生設計における経済面の目標のこと。30代までは10年後にほしい金額を、40代以降はリタイアする際にほしい金額を考えてみましょう。 なお、この先どんな支出があるかを把握するために、一度ライフプランを書いてみることをおすすめします。家族との関係や住まい、仕事、余暇の過ごし方などの観点から、「自分がいつ何をしたいか」を考え、1枚の紙にまとめましょう。また、やりたいことの中で優先順位をつけ、実現にはどのくらいのお金が必要になるかの試算もしてみてください。 貯まるしくみづくり お金が貯まるしくみとは、ずばり「先取り貯蓄」のこと。収入が入ってきたら、先に貯蓄分をよけてしまい、残ったお金を使っていくという行動パターンです。入ってきたお金をなんとなく使い、残ったらお金を貯める方法では、なかなか貯蓄は増えません。資産を築いていくため、ぜひ「収入ー貯蓄=支出」という先取り貯蓄を実践してください。 投資で資産を増やすことにチャレンジ ファイナンシャル・ゴールを達成するには、お金を貯めるだけでなく、増やすためのアクションも必要になるでしょう。そう、近年ますます注目を集めている投資です。ここからは、投資で資産を増やすために知っておいていただきたい基礎知識をご紹介します。 投資には2つの種類がある 私は、投資を「趣味の投資」と「資産形成のための投資」の2つに分けて考えています。このうち「資産形成のための投資」については、これからの時代、ほとんどの方がやるべきだと考えています。 これから成長していく銘柄を探し当てることを楽しんだり、相場感を見極めてタイミングよく売買して儲けたりするのは、「趣味の投資」です。一方、「資産形成のための投資」は、お金にも働いてもらうことを目指します。詳しくはこの後ご説明しますが、世界経済の成長が今後も続くと考えて、そこにお金を投じ、利益の一部をいただくという投資手法です。 まずは、投資と一口にいっても趣味の投資と資産形成のための投資があり、それぞれまったく考え方が異なることをぜひ、覚えておいてください。 世界のGDPは約40年間で9倍に 先ほど「世界経済が成長し続けると考えて、そこに投資をする」とお話ししましたが、世界のGDP(国内総生産=1年間に国内で生産された付加価値)の推移を見てみると、1980年から2020年までの40年間で、約9倍にも増えています。世界経済の成長がこの先も続くのであれば、早くお金を投じることによって、得られる利益は大きくなります。 「投資のリスク」とは「ブレ幅」のこと 投資のリスクを、「投資で損をする可能性」「元本割れしてしまう可能性」と認識している方が多く見られます。しかし実は、投資のリスクとは損することではなく「価格のブレ幅」を指すのです。 たくさんプラスが出ることもあれば、大きくマイナスになることもある投資先(リスクが高い投資先)は、基本的に平均リターンも高くなります。反対にブレ幅が小さい投資先は、マイナスになる可能性も小さいけれども、得られるリターンも小さくなります。大きなリターンを得たいのであれば、このブレ幅を受け入れなければならない、ということになります。 過去のデータをもとに分析すると、株式はブレが激しくて(リスクが高くて)リターンが大きく、債券はあまりブレがなく(リスクが低くて)リターンは小さい投資先となります。 ※編集部注:「株式」「債権」等の説明については、金融庁の「基礎から学べる金融ガイド」(2021)や金融機関のウェブサイトをご参照ください。 * * * 次回は、「資産形成のための投資」の具体的な方法について解説していきます。 >>後編はこちらお金の基礎知識/分散投資の基本&新NISA解説【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

在宅ケアに生かせる/ピラティスの実践
在宅ケアに生かせる/ピラティスの実践
特集 会員限定
2023年8月8日
2023年8月8日

在宅ケアに生かせる/ピラティスの実践【セミナーレポート後編】

2023年5月19日、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「ピラティスの基礎知識&実践【在宅ケアに生かせる】」を実施しました。講師を務めてくださったのは、理学療法士として訪問看護の現場でピラティスを実践した経験をもつ、ピラティスインストラクターのTatsuya.Sさんです。後編では、看護師のみなさんにぜひ実践いただきたいピラティスをご紹介します。 >>前編はこちら在宅ケアに生かせる/ピラティスの基礎知識&事例【セミナーレポート前編】 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】Tatsuya.Sさんピラティスインストラクター(zen place pilates武蔵小杉スタジオ 所属)/理学療法士・健康運動指導士・介護支援専門員大学で理学療法を学び、理学療法士として6年間にわたって総合病院に勤務。回復期リハビリテーション、訪問リハビリテーション、デイケアを経験する。その中で予防分野に興味をもつようになり、ピラティスと出会う。訪問看護の現場で理学療法士としてピラティスを実践した後、より学びを深めるため、現在はピラティスインストラクターとして活動している。 ピラティスを実践してみよう ピラティスを指導する上では、自身が実践者であることがとても重要なポイントになります。自分が実際に感じたことでないと、他者に伝えることは難しいからです。 ここからは、看護師のみなさんにぜひ実践いただきたいピラティスをご紹介しますので、ぜひこの記事を読みながらトライしてみてください。マットやバスタオルが手元にある方は床で、ない方は座位の動きではイスを、臥位の動きは壁を使って行ってください。 立位→四つ這いのエクササイズ 【STEP 1】足を軽く開いて立つ足を坐骨の幅(こぶしひとつが入るくらい)に合わせて開いて立ち、背骨が左右の足の中心にくるように意識します。さらにイメージできる方は、「母指球・小指球・かかとの3点×左右の足=6点」の中心に背骨がくるようにしましょう。 【STEP 2】どこまで体重をかけられるのか確認(前後)つま先とかかとそれぞれに、交互に体重をかけていきます。「これ以上傾くと倒れそう」というギリギリまで体重を移動しながら、足裏に意識を集中して、自分がどこまで体重をかけられるのかを確認します。このとき、背骨がどのような状態になっているかも意識できるとベターです。 【STEP 3】どこまで体重をかけられるのか確認(左右)STEP 1の状態に戻ったら、次は左右に揺れます。STEP 2と同じように足裏の感覚に意識を向け、今どこに体重がかかっていて、どこまで重心を移動できるか確認してください。 【STEP 4】ゆっくりと四つ這いの姿勢になる続いて、四つ這いの姿勢に移行します。まずは頭をゆっくりと前に傾け、次に太ももで体を支えながら膝を曲げていきます。頭は5kgもの重量がありますから、その重みにつられて背骨が上から順番に丸まっていきます。 【STEP 5】尾骨から頭まで一直線にキープ体が左右どちらかに傾いていないか注意しながら手を床まで下ろしたら、四つ這いになります。肩の下に手、股関節の下に膝がある体勢です。背中は、頭のほうがやや高い状態で、尾骨から頭まで一直線にキープします。 【STEP 6】「骨盤後傾」の動きまずは尾骨のみを丸め(尾骨は小さいので、外からは動いていないように見えます)、続いて仙骨、腰の背骨を曲げます。「骨盤後傾」という動きです。 【STEP 7】さらに体を丸める手と足で床を押しながら、胸の背骨、首、頭までを順番に丸めていきます。 【STEP 8】つま先を立て、背骨を一直線に次に、足首を返して床につま先を立てましょう。そのまま膝を空中に浮かせて、背骨を一直線にします。 【STEP 9】坐骨を天井に向かって上げるそのまま坐骨を天井に向かって上げます。手と手の間に頭があり、尾骨から頭まで斜め一直線になっている状態が理想的です。 アップストレッチ 【STEP 10】「アップストレッチ」を行う右膝を少し曲げ、左のかかとは下げてストレッチします。続いて左膝を同じように曲げて、右のかかともストレッチしましょう。呼吸を止めないように注意してください。 座位(あぐら)のエクササイズ 【STEP 1】座って背筋を伸ばすマットがある方は、あぐらの状態で床に座ります。イスを使う方は浅く腰かけてください。いずれも、坐骨に座ることを意識しましょう。また、尾骨から頭まで「長い背骨」をつくるイメージで、背筋を伸ばします。 【STEP 2】手を前に伸ばし上下に動かす両手を「前ならえ」の状態にしたら、息を吐きながら上に上げます。続いて、息を吐きながら前ならえの形に戻します。背骨の形はキープします。 【STEP 3】手を伸ばし左右に開閉する次に、前ならえの状態から、息を吸いながら横に手を広げましょう。そして、息を吐きながら手を閉じます。 【STEP 4】頭・首・胸を反らした後、背骨全体を丸める今度は、息を吸いながら手をオープンしたら、尾骨は動かさずに、頭と首、胸を反らせます。そして、息を吐きながら手を戻し、背骨全体を丸めてください。 【STEP 5】側屈の動きSTEP 1の姿勢に戻したら、手を頭の後ろに添え、側屈の動きをしていきます。息を吸いながら背骨を右に曲げ、吐きながら戻す。同じ要領で左にも曲げましょう。 【STEP 6】背骨をひねる動き続いて、背骨をひねる動きです。頭を背骨の上でくるくる回すイメージで、息を吐きながら左右にひねり、吸いながら戻します。イメージできる方は、胸椎7・8番からひねることを意識しましょう。 仰向けのエクササイズ 【STEP 1】基本姿勢をとるマットがある方は床に仰向けに寝て、足を軽く曲げ、お尻をもち上げやすい位置までかかとを引き寄せます。壁を使う方は、背中をつけた状態で膝を曲げ、かかとは壁から一足分離してください。全員、足幅は坐骨幅に開きます。 【STEP 2】「ペルビックカール」を行う尾骨の先端から丸めるように動かし、骨盤を後傾します。続いて、仙骨の上と腰の背骨を浮かせます。そして、尾骨に近いほうの背骨から順番に、胸の背骨の一番上まで床から剥がしてもち上げます。このエクササイズを「ペルビックカール」といいます。 ペルビックカール 【STEP 3】ゆっくりともとの姿勢へ戻すSTEP 2(ペルビックカール)の状態で息を吸い、吐きながら胸から順に戻していきます。 【STEP 4】「シングルレッグリフト」を行う(1)続いて、シングルレッグリフトを行います。右足を膝関節の角度が直角(90度)になるようにもち上げましょう。股関節も90度にし、足首は伸ばします。ピラティスの用語では、このポーズを「テーブルトップポジション」といいます。 テーブルトップポジション 【STEP 5】「シングルレッグリフト」を行う(2)息を吸いながら右足のつま先を床にタッチします。ももの角度は45度です。そして息を吐きながらテーブルトップポジションに戻しましょう。骨盤や背骨をキープすることを意識しながら、左足も同じように行います。これで、シングルレッグリフトは終了です。なお、壁を使う方は足踏みをするような状態になります。 【STEP 6】「チェストリフト」を行うここから、チェストリフトを行います。STEP 1の体勢(かかとは楽な位置で構いません)に戻ったら、頭の後ろで手を組み、肘が視野にギリギリ入るようにします。その状態で息を吸って、吐く息で頭から順に、首、胸、腰、尾骨まですべての背骨を丸めていきます。そして、息を吸いながら戻しましょう。 チェストリフト 【STEP 7】「チェストリフト ウィズ ローテーション」を行う次に、頭から尾骨まで丸めた状態でホールドし、息を吐きながら胸の背骨を左右にひねります。戻すときは息を吸いましょう。両ももの間でひねるようなイメージで行います。これでチェストリフトとチェストリフト ウィズ ローテーションが完了です。 チェストリフト ウィズ ローテーション うつぶせのエクササイズ 【STEP 1】「バックエクステンション」を行う(1)床にうつぶせに寝転がり、手を顔の横にもってきます。壁を使う方は、壁から少し離れている状態でOKです。 【STEP 2】「バックエクステンション」を行う(2)息を吸いながら、頭、首、胸を反らせましょう。息を吐きながら戻します。おへそが少し床から浮いているイメージをもって行ってください。 バックエクステンション 深呼吸のエクササイズ 【STEP 1】「キャットストレッチ」を行う四つ這いの姿勢をとります。肩の下に手、股関節の下に膝がくるようにし、両手両足で背骨を支えます。その状態で、息を吐きながら背骨全体を丸め、吸いながら反らせましょう。少しテンポを上げて繰り返します。 【STEP 2】膝を1cm浮かせたり戻したりする次に、四つ這いの体勢で足首を返して床につま先を立て、息を吸います。そして、息を吐きながら膝を1cm浮かせてください。再び吸いながら戻し、繰り返します。 【STEP 3】お尻をもち上げ、ゆっくりと起き上がる四つ這いからお尻を天井に向けてもち上げたら、両足のかかとを床につき、手を足のほうへ歩かせて体を起こしていきます。背骨全体が丸まって、腕はだらんと脱力した状態です。そのまま、背骨を下から順番に積み重ねる意識で起き上がります。 【STEP 4】「ロールダウン」を行う息を吸ったら、吐きながら上から順番に背骨を丸めます。再び背骨が丸まって、手がだらんと垂れ下がる姿勢になります。そこで息を吸い、再び吐きながら体を起こしてください。 ロールダウン 【STEP 5】腕を大きく動かしながら深呼吸最後に、体を起こしたら手を前からもち上げて「バンザイ」の姿勢をとります。下ろすときは体の横からです。続いて、息を吸いながら横から手をもち上げ、吐きながら、今度は前に下ろしましょう。 ピラティスで最も大事なことは、難しいポーズをとることではなく、体の隅々に意識を向け、その反応を観察しながら行うことです。利用者さんの体の状態を見ながら、ぜひ訪問看護の現場で実践していただき、一人でも多くの方の心身機能がより良い状態になったらうれしいです。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

ピラティスの基礎知識
ピラティスの基礎知識
特集 会員限定
2023年8月1日
2023年8月1日

在宅ケアに生かせる/ピラティスの基礎知識&事例【セミナーレポート前編】

2023年5月19日、NsPace(ナースペース)主催のオンラインセミナー「ピラティスの基礎知識&実践【在宅ケアに生かせる】」を実施しました。講師を務めてくださったのは、理学療法士として訪問看護の現場でピラティスの実践経験をもつ、ピラティスインストラクターのTatsuya.Sさんです。 セミナーでは、ピラティスの定義や目的、訪問看護における活用事例の紹介のほか、受講者のみなさんでピラティスを実践する時間も設けました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、ピラティスの基礎知識と、実際にピラティスを導入した訪問看護の症例をご紹介します。 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】Tatsuya.Sさんピラティスインストラクター(zen place pilates武蔵小杉スタジオ 所属)/理学療法士・健康運動指導士・介護支援専門員大学で理学療法を学び、理学療法士として6年間にわたって総合病院に勤務。回復期リハビリテーション、訪問リハビリテーション、デイケアを経験する。その中で予防分野に興味をもつようになり、ピラティスと出会う。訪問看護の現場で理学療法士としてピラティスを実践した後、より学びを深めるため、現在はピラティスインストラクターとして活動している。 ピラティスとは ピラティスとは、自分の身体に意識を向けながら、繊細に、正確に動かすことで、心身の機能を調整していく方法論のことです。 筋肉や関節の柔軟性を高め、また体の軸を伸ばすことで、バランス力やコントロール力に優れた「安定した強い体」を目指します。また同時に、体の内部に意識を向けて集中することで「瞑想」をしている状態になり、心を落ち着け、頭をクリアにする効果も期待できるでしょう。 心と身体へのアプローチ 筋肉は「表層筋=アウターマッスル(歩行やものを運ぶときなどに使う筋肉)」と「深層筋=インナーマッスル(骨と骨をつなぎ、骨とアウターマッスルを同時に使う際に補助する筋肉)」とに分けられますが、ピラティスでは体の中心にある背骨からアプローチし、後者のインナーマッスルを細かく動かしていきます。 すると、体の軸だけで姿勢を維持できるようになり、ほかの部分の力を緩めることが可能に。具体的には、背骨がすっと上に伸び、肩が落ちて首が長くなり、胸が広がっている姿勢になります。また、心も緊張から解き放たれ、エネルギーに満ちあふれた状態になります。 ピラティスの歴史 ピラティスは、ドイツ人のジョセフ・ヒューベルト・ピラティス氏によって提唱されました。ピラティス氏は、喘息やリウマチ、くる病を患っており、自身の病気を治すために水泳をはじめとしたさまざまなスポーツや治療法を勉強していました。その中で生まれたのが、ピラティスというボディワークメソッドです。古くは、戦争負傷兵のリハビリテーションとしても使われていました。 また、ピラティスというと多くの方がマットを使うことをイメージしますが、実は始まりはマットではなくマシンを使った動きでした。ピラティス氏が病院にあったベッドを改造してバネをつくり、それを活用して始められたといわれています。 ピラティスの目的 ピラティスを行う目的は、「Well Being(ウェルビーイング)な状態」になることです。これは、私が所属するZEN PLACEの企業理念でもあります。 私たちが考えるウェルビーイングとは、簡単にいうと「その人が自身の存在のすべてを認め、前に進んでいると感じている状態」のことです。自分の嫌なところにも目を向けて受け入れる。誰かと比較せずに自分のことをきちんと把握し、好きになる。ピラティスを実践することで、そんなウェルビーイングな状態を目指します。 医療現場におけるピラティスの位置づけ 日本では、ピラティスは「ダイエットやボディメイクなどを目的としたエクササイズの一種」と認識されており、現段階では医療への活用はあまり進んでいません。インストラクターの資格も、国家資格ではなく民間資格となっています。 しかし、海外ではピラティスと医療の融合が進んでおり、理学療法士の多くがピラティスの資格を取得。スタンダードな選択肢として医療現場で実践しています。 訪問看護現場でのピラティスの実践 続いて、私が理学療法士として訪問看護の現場でどのようにピラティスを実践していたかを、実際の症例を挙げてご紹介します。 利用者さんの情報 対象となった利用者さんは、100歳の女性です。大腿骨頸部骨折にて手術を受けてからは、自分ひとりで起き上がれなくなり、座っているときも見守りが必要な状態でした。介助があれば立ち上がれましたが、トイレに行くことが難しく、オムツを着用。また食事もベッド上でとっていたため、基本的に移動することはありませんでした。 実践した動作1(手の上げ下げ) この利用者さんの場合は立ち上がって動くことが難しいので、以下のような座位での動作を実践しました。 【STEP 1】イスに座る坐骨に体重をかけることを意識しながらイスに座ります。 【STEP 2】背筋を伸ばす頭まで貫く「長い背骨」をつくるイメージで、尾骨から頭までまっすぐな線になるように背筋を伸ばします。このとき、骨盤と肋骨の隙間を広げることを意識します。 【STEP 3】両足を開く坐骨と同じくらいの幅になるように両足を開き、足の裏はしっかりと床につけます。 【STEP 4】息を吸いながら手を上げるここまででつくった姿勢を維持した状態で、息を吸いながら両手を上にゆっくりと上げましょう。骨盤と肋骨の距離がだんだんと離れていくイメージです。くれぐれも無理はしないように気をつけながら、横から見たときに手ができるだけまっすぐになるように上げます。 【STEP 5】息を吐きながらゆっくり手を下ろす骨盤と肋骨の距離をキープしたまま、息を吐きながら手を下ろします。手を下ろす動作は早くなりがちですが、ゆっくりと下ろしましょう。 【STEP 6】繰り返す手の上げ下げを繰り返します。※手を動かす中で背中が丸まってきたら、声をかけるようにします。 実践した動作2(手の開閉) 【STEP 1】息を吸いながら、胸の高さで手を左右に開く実践した動作1のSTEP 1~3までを行ったら、手を胸の高さまで上げ、息を吸いながら開きます。※このとき背骨が反ってしまう方が多いので、背骨の形をキープしたままで開ける限界の位置を伝えてください。 【STEP 2】息を吐きながら閉じる息を吐きながら手を閉じます。 【STEP 3】繰り返す手の開閉を繰り返します。 ピラティスを実践した結果 この利用者さんの場合は、リハビリにピラティスを取り入れることで、最終的にピックアップ型の歩行器を使って数メートル移動できるようになりました。これにより、食事をベッドではなくテーブルに移動してとる機会も生まれています。 >>後編はこちら在宅ケアに生かせる/ピラティスの実践【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

ご遺体への最新詰め物事情
ご遺体への最新詰め物事情
特集 会員限定
2023年7月18日
2023年7月18日

納棺師解説/ご遺体への最新詰め物事情【セミナーレポート後編】

2023年4月14日に開催されたNsPace(ナースペース)のオンラインセミナー「【納棺師解説】死後24時間以降のご遺体変化&最新詰め物事情」。納棺師の大垣麻里さんを講師に迎え、在宅でのエンゼルケアについて、知っておきたい基礎知識やCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行を受けての変化を教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。後編では、COVID-19流行以降のエンゼルケア・葬儀の情勢や、ご遺体への詰め物の対応についてご紹介します。 >>前編はこちら納棺師解説/死後24時間以降のご遺体変化と対処法【セミナーレポート前編】 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】大垣 麻里さん湯灌師・納棺師・介護福祉士/株式会社沙羅代表介護の仕事に従事する中で、多くの高齢者が自らの死への不安を抱いていることに気がつき、その旅立ちを支援する湯灌師、納棺師に転身する。その後、湯灌・納棺・メイクサービスを提供する株式会社沙羅を設立。これまで20年以上にわたり、亡くなった方やそのご家族と向き合い、「温かいお別れの場」を提供してきた。 COVID-19がお別れに与えた影響 COVID-19が発生してから3年以上が経ちましたが、その間、エンゼルケアや葬儀のあり方は大きく変わってきました。 まず発生当時、亡くなった方は直火葬となり、ご家族は収骨もできない状況でした。しかし2022年頃からは、ご遺体を透明の納体袋に入れて棺の蓋をしたままであれば、フィルム越しではあるものの、対面してのお別れが可能に。とはいっても、故人に直接触れることはできませんでした。 そして、2023年1月6日。厚生労働省から「ご遺体を清拭し、鼻や肛門に詰め物をし、紙オムツを使用していれば、納体袋には入れずにこれまでどおりの形式で葬儀をしてもよい」という事務通達が出たのです。現在では、まったく従来のとおりに、故人の顔や体に触れながらのお別れができています。葬儀の形式についても、何の制限もなく行われています。 詰め物をするメリットとデメリット エンゼルケアにあたり、対応を悩まれる方が多いのが詰め物でしょう。詰め物をするメリットとしては、やはり体液漏れが起こるリスクを低減できることです。しかし、亡くなったという事実を受け止めがたく感じているご家族の方からは「詰め物をされると、息ができないように見えて痛々しい」という声がよく聞かれます。 これをふまえて、私は見た目が悪くならないように詰め物をするのがベストではないかと考えています。 部位別の詰め物対応のポイント 詰め物をする際に気をつけたいポイントついて、部位別に詳しくご紹介していきます。 耳、鼻、口 まず、耳には基本的に詰め物を入れなくても構いません。交通事故に遭われ頭蓋骨骨折があり、出血が予想されるといったケースでは耳にも詰め物をしていますが、亡くなられたときに耳から出血や体液漏れなどが起きていなければ不要です。 続いて鼻は、小鼻ではなく、上の図に矢印で示したように鼻の奥へしっかりと詰め物をしてください。 同じく口も、図の矢印が示す部分、咽頭奥深くに舌を巻き込まないよう注意しながら詰め物を入れます。口腔内ではなく、その奥に詰めることで、気管や食道からの体液漏れをしっかりと防ぐことができます。 尿 尿漏れへの対処法は男性と女性とで異なります。 まず女性の場合は、男性よりも尿道が短いので、膀胱に溜まっている尿が出てくる可能性があります。そのため、できるだけ尿パッドをつけるといいでしょう。在宅の利用者さんは、多くの場合尿パッドや紙オムツをつけられていると思いますので、その対応で十分です。 また、膣への詰め物については、子宮疾患があって出血が見られるといった特別な事情がなければ不要です。 一方男性の場合は尿道が長いので、ご遺体を動かすたびに尿が漏れることは女性と比較すると少ないですが、念のため紙オムツを装着したり、男性用の尿パッドを巻いたりされると安心かと思います。 なお、尿道カテーテルをされていた方は、カテーテル抜去によって尿道から出血することがあるので、尿パッドをきちんと巻いてください。 便 便については、性状よって対応が異なります。硬い便の場合は、直腸に溜まっているものを可能な範囲で摘便したら、その後さらに出てくることはありません。ただし、タール便や液状便が出ている方の場合は、対処が必要です。とはいっても綿を肛門に詰める必要はなく、周囲をきれいにしてから綿で肛門を塞ぐようにして、その上から紙オムツを当てれば大丈夫です。紙オムツと肛門の間に隙間がなければ、ダラダラと漏れ出てくることはありません。 詰め物の必要性をどう判断するか 前提として、葬儀において「●●しないといけない」という決まりは2つだけしかありません。ひとつは、亡くなった後24時間は火葬できないこと。もうひとつは、棺に収めること。それだけなんです。着物を左前に着せなければならない、帯を縦結びにしなければならないといったことは、決まりではなく風習です。詰め物についても、原則としてご家族のご意向を受け止めて対応されるとよいと思います。仮に、「体液が流出したとしても詰め物をしたくない」といったご意向があれば、それに沿って対応します。 ただし、とくに在宅でお看取りをされたケースでは、COVID-19の影響も考慮されてか、ご家族は詰め物をしないことに不安を感じられることが多い印象です。また、多くのご家族は、ただでさえ急なことにショックを受け、今後のこともなかなか想像できていらっしゃらない状況です。その状況下で、体液が流出するリスクをふまえて詰め物をすべきかどうかのご判断をすることは、かなり難しいでしょう。 こうしたご家族の状況や心情をふまえると、先ほども少し触れたとおり、亡くなられた方のお顔の印象を損なわないよう、ご家族の目に触れない奥の部分に詰め物をしていくのが、私はよいと思っています。見栄えに十分に配慮して詰め物をすることが、ご家族のお気持ちに寄り添いつつ、お見送りまでの時間をトラブルなく安心して過ごしていただける方法ではないでしょうか。 可能な限り、最後の身支度はご家族と一緒に これはエンゼルケア全般に通じる話ですが、故人の身支度は、できるだけご家族と一緒に行っていただきたいです。在宅看護を選択されてきたご家族の多くは、「家族を自宅で送りたい」という想いが強いので、身支度に参加できるよう調整すると喜ばれるかと思います。 正直なところ、ご家族と一緒に支度をするとスムーズにいかないこともあるかと思います。しかし、それよりもご家族の方が「私たちも最後の身支度をしてあげた」と思えることのほうが大事ではないかと私は考えています。その経験はきっと、ご家族のその後の支えになっていくのではないでしょうか。 * * * ご家族ができるだけ心を痛めずに故人とお別れできるようにするには、ご遺体をきれいに保つための対処が必要不可欠です。そして、その対処の多くは可能な限り早く行うことが求められます。 訪問看護師のみなさんには、今回ご紹介した在宅でのエンゼルケアの方法をぜひ現場で実践していただき、「ご家族が前を向けるお別れ」の実現をサポートしてもらえたらと思います。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

【納棺師解説】死後24時間以降のご遺体変化&最新詰め物事情
【納棺師解説】死後24時間以降のご遺体変化&最新詰め物事情
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2023年7月11日
2023年7月11日

納棺師解説/死後24時間以降のご遺体変化と対処法【セミナーレポート前編】

2023年4月14日に開催したNsPace(ナースペース)のオンラインセミナー「【納棺師解説】死後24時間以降のご遺体変化&最新詰め物事情」。納棺師の大垣麻里さんを講師に迎え、在宅でのエンゼルケアについて、知っておきたい基礎知識やCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)の流行を受けての変化を教えていただきました。 そのセミナーの内容を、前後編に分けてご紹介。前編では、死後のご遺体に起こるさまざまな変化と、その対処法についてまとめます。 ※約90分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】大垣 麻里さん湯灌師・納棺師・介護福祉士/株式会社沙羅代表介護の仕事に従事する中で、多くの高齢者が自らの死への不安を抱いていることに気がつき、その旅立ちを支援する湯灌師、納棺師に転身する。その後、湯灌・納棺・メイクサービスを提供する株式会社沙羅を設立。これまで20年以上にわたり、亡くなった方やそのご家族と向き合い、「温かいお別れの場」を提供してきた。 死後24時間以内に起こる変化「死斑」 死斑(亡くなった方の皮膚に見られる赤紫や青紫色の斑点)は、故人が息を引き取ってから徐々に発生し、死後15時間程度で最高潮となります。発生を避けることはできませんが、きちんと対策すれば、顔に死斑が出ないようにすることはできます。 ご遺体が仰向けに寝ている場合、耳や首、背面部に死斑が出現し、顔は蒼白化していきます。これは体液や血液が重力に従って下がっていくためで、自然な死斑の現れ方です。逆に、亡くなられたときにうつ伏せの状態だった場合は、顔をはじめ体の前面に死斑が出現します。 しかし、中には仰向けになっているにも関わらず、顔が腫れてきたり、どんどん紫色に変化したりするケースがあります。これは大変よくない状況で、体内の血液が顔に流れてしまっています。ご家族の目に触れる顔をきれいな状態に保つためには、すぐに対策しなければなりません。 顔に死斑が出ないようにする方法 仰向けに寝ていても顔に向かって血液が流れてしまう場合は、できるだけ早く上体を起こすようにします。枕を少し高くしたり、座布団を挟んだりしても構いません。 このような現象が発生する方は、体格がよくて胸板が厚く、横から見たときに心臓の位置が顔より高いことがほとんどです。顔が心臓よりも下にならないようにすれば、顔への血液の流れを防ぐことができます。 また、横向きに寝ているのが安楽だった利用者さんが亡くなった場合、「故人が安楽に感じる姿勢のままにしてあげたい」と、ご遺体を横向きのままにすることを望むご家族は少なくありません。お気持ちはとてもよくわかりますが、少なくとも顔だけは、亡くなった後すぐに上に向けるようにしてください。 もしそのままにしておくと顔の片側にだけ死斑が出てしまい、それをカバーするために通常よりも濃いお化粧をしないといけなくなります。普段お化粧をしていなかった利用者さんもその方らしいお支度で送れるよう、顔に死斑が出ないように予防することがとても大事です。 死後24時間以内に起こる変化「死後硬直」 みなさんご存知のとおり、人は亡くなると体がこわばって自由に動かなくなりますが(死後硬直)、この硬直は自然に解けていきます。死後15〜20時間でだんだん硬直が強くなり、夏なら約2日、冬なら約3日で、どなたでも必ず緩解していきます。 とはいっても、例えば「着替えをさせたいので、自然に緩解する前に硬直を解きたい」といったこともあるでしょう。そのときは、腕を自然に曲げ伸ばしするだけで、柔らかく動くようになります。骨が折れるほどの力をかけたり、関節を特殊なやり方で動かしたりといった必要はありません。下肢の場合も同様で、筋肉をマッサージして伸ばすだけで硬直は解けます。 なお、死後15〜20時間以内に筋肉を動かして硬直を解いた場合、再度体がこわばることもありますが、その際はもう一度曲げ伸ばしすれば問題ありません。 ここでのポイントは、「死後硬直はいつでも解ける」ということです。これを知っていると、「亡くなったら着せてあげたい服があるので、急いで取りにいきます」とご家族がおっしゃる場合でも、「着替えはいつでもできるので、焦らずゆっくり用意していただいて大丈夫ですよ」とお声がけできます。 拘縮が見られる方への対応 ただし、生前に拘縮が見られる方は、亡くなっても固まった関節が緩解することはありません。死後に無理やり体を伸ばそうとすると、骨折や筋の損傷を起こす原因になるので、十分に気をつけてください。 死後24時間以内に起こる変化「乾燥」 死後は、皮膚の乾燥がどんどん進み、茶色くくすんだり硬くなったりします。顔の乾燥を防ぐために、できるだけ早く保湿をしてください。ご家庭にあるような一般的な保湿クリーム、もしくはハンドクリームやスキンケア用オイルなどを使ってもよいです。 ご遺体の顔に白いハンカチがかかっている様子をご覧になったことがあると思いますが、あれには乾燥を防ぐ意味合いもあります。 死後24時間以内に起こる変化「腐敗」 「腐敗」とは、体内のたんぱく質が細菌に分解されて、水・気体・臭気が発生している状態をいいます。空気中の細菌がご遺体に作用して起こるのではなく、亡くなった方ご自身の体内にいる菌によって起こるため、これを防ぐためにできることは、温度コントロールしかありません。ご遺体の温度を下げて菌が繁殖しにくい状態を保ち、腐敗をできるだけ進行させないようにします。 具体的には、まずは大腸菌や腸球菌の温床となっている腹部を、次いで血液が溜まっている胸部を冷やしてください。このように内臓を冷やすことが、腐敗を進行させないために重要です。 腐敗が進行すると、体内でガスが発生して体腔内圧が高まり、口や鼻から体液や血液が漏れ出てきます。 在宅で意識したい腐敗対策 在宅では、気温が低い冬でもご遺体の腐敗が進んでしまうケースがよくあります。その原因となるのが、ホットカーペットや電気敷布・毛布、ご遺体に向いたエアコンやストーブです。エンゼルケアを行う際は、まずご家族と一緒にこれらの状態を確認し、腐敗が進行しないようにうまく声をかけながら調整してください。 カテーテル抜去部や点滴痕からの出血に注意 死後に注意すべき点として、カテーテル抜去部や点滴痕からの出血や体液の漏れも挙げられます。こうした医療処置による創傷があると、体内で発生したガスに押された血液や体液が、そこから漏れ出す可能性が高いです。しかも、ガーゼやドレッシング材でカバーしても、ちょっとしたシワから体液や血液が滲み出してしまうケースがほとんどです。 正しい圧迫固定の方法 これを防ぐには、正しい方法で創部を圧迫固定する必要があります。 上の図のように、小さく固めた綿花やガーゼなどでカテーテル抜去部や点滴痕をしっかりと圧迫します。また、テープで腕一周を巻くように留めて、さらに圧迫を強めましょう。こうすることでテープが剥がれにくくなります。大きく平たく創部を覆うのではなく、局所的に圧迫してください。 鼠径部も同じ方法で圧迫固定します。搬送の際にテープが剥がれるケースが多いので、伸縮性のあるテープを使用し、腸骨から内股にかけてぐるっと一周巻いて圧迫をします。 >>後編はこちら納棺師解説/ご遺体への最新詰め物事情【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

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