教育に関する記事

訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック
コラム
2024年1月16日
2024年1月16日

地域の出前講座で訪問看護を普及【訪問看護認定看護師 活動記/九州ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の皆さまの活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会の九州ブロック、安部 美保さんの活動記です。安部さんは、訪問看護ステーション管理者で、大分県訪問看護ステーション協議会 副会長でもあります。大分県内の訪問看護ネットワークについてや、地域市民の方々向けの出前講座への取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:安部 美保保健師・助産師学科を卒業後、地元の総合病院へ入職1997年 病院併設の訪問看護ステーション開設と同時に管理者となる。2012年 訪問看護認定看護師資格取得2020年~ 日本訪問看護認定看護師協議会九州ブロック長2022年~ 一般社団法人 大分県訪問看護ステーション協議会 副会長 月に1回の「おしゃべり会」開催 日本訪問看護認定看護師協議会九州ブロックの体制は、九州・沖縄の8県の会員で構成されています。会員数は、2023年11月現在で24名です。ブロック長1名と大分・福岡・佐賀・熊本・鹿児島からそれぞれ1名の委員が選出されており、研修会・交流会の企画運営などを中心に、ブロック活動を行っています。 2008年9月に西日本で初めて訪問看護認定看護師教育課程が大分県立看護科学大学看護研究交流センターに開設されました。そのため、九州やその近県に住む方は受講がしやすくなり、当時、九州内の訪問看護認定看護師も増加傾向にありました。しかし、2013年3月で大分の教育課程が閉講となったこと、経験豊かな訪問看護認定看護師が定年を迎え認定更新をしない方が増えてきたことなど、さまざまな要因が重なって、九州ブロックの会員数は、この5年間で10人程度減少しています。 年1回開催してきた研修会・交流会は、会員が開催地に集合し、顔を合わせて語り合うことのできる貴重な場となっていました。コロナ禍以降もリモート開催や対面・リモートのハイブリッド開催で継続してきましたが、会員数の減少と相まって、参加者が増えない状況がここ数年続いています。このように衰退していく状況を何とか打開したいという思いで、ブロック役員で話し合いを繰り返し行いました。 アイデアを出し合った結果、今年の7月から月1回、会員なら誰でも自由に参加できるリモートでの会議、通称「おしゃべり会」を定期的に開催することになりました。おしゃべり会を地道に開催していくうちに、これまで会員であっても交流のなかった方々が参加され、顔見知りが増え、それぞれの貴重な活動の報告が聞けて、新たな交流が生まれています。 「おしゃべり会」の会話の中で、「今年度の研修会に、ぜひ聖路加国際大学大学院看護学研究科教授の山田雅子先生に講演をお願いしたいね」という話が出ました。お忙しい先生に九州に来てもらうのは難しいのではと思ったのですが、山田先生から快く講師を受けていただくことができました。今から、先生の講演会をみんな楽しみにしています。 協議会の機能充実。大分の訪看ネットワーク 続いて、私が管理者を勤めている「訪問看護ステーションくにさき」も所属している、一般社団法人大分県訪問看護ステーション協議会(以下、協議会)の活動についてもご紹介します。 以前、協議会は大分県医師会が事務局を執り行う任意団体でしたが、6年前に法人化し、一般社団法人となりました。法人化後は、大分県看護研修会館内の一室をお借りして、事務員を一人雇用して活動を始めました。現在の協議会加入訪問看護ステーション(以下、ステーション)は135ヵ所で、大分県内の約70%のステーションが入会しています。会長の強いリーダーシップにも支えられ、この6年間で運営もスムーズになり、協議会機能も充実してきています。その成果の一つとして、今年度、法人化して初めて大分県から「訪問看護就職ガイダンス・インターンシップ事業」を受託できました。行政からも信頼される法人へと成長した証と喜んでいます。 加入ステーションはビジネスチャットでつながっており、事務局や会員からのタイムリーな情報提供があり、情報伝達・情報共有がスムーズです。また、県内を2次医療圏単位で分けて11の支部を作り、支部から理事を任命。支部長も兼ねてもらいます。支部ごとで定期的な支部会・研修会など活動を行っており、顔の見える関係ができています。 このネットワークのお陰で、訪問看護の実務でも協力しやすくなったという声があがっているほか、BCP策定にも役立っており、支部単位で協力してBCPを作り上げているところもあります。今後もさらに会員同士が交流でき、協力し合える協議会に発展していくことを願っています。 出前講座で訪問看護を普及 私は生まれ育った地元で訪問看護を30年以上おこなっています。30年前は医療職でさえ「訪問看護って何?」という人が大半なほど知名度が低かったことを覚えています。それが今では、訪問看護師の地道な努力の成果もあり、医療・介護・保健にかかわる方で訪問看護を知らない人はいない状況になってきています。 ただ、一般市民の方々の訪問看護の認知度はまだまだ低いと感じています。このような中で、長年地元で訪問看護をさせてもらい、訪問看護認定看護師の資格まで取得することができた私の役割は、地域住民に訪問看護を普及させることだと考えています。そうすれば、必要な方が必要な時に訪問看護を利用することができるという思いがあります。 出前講座の様子 それを実現するため、地域への出前講座を8年ほど前からはじめました。地域サロン活動から依頼を受けて、訪問看護の普及啓発に力を入れています。「そんないい制度があるとは知らなかった。必要になったらお願いしたい」といった声も聴かれています。地道な活動ですが、今後も続けていきたいと思っています。 * * * 訪問看護は、今後ますます在宅の場で必要とされ、発展していく分野です。人が本来生活する場所である自宅での暮らしを支え、自分らしく生き抜こうとする方たちを一緒にサポートしていきましょう。訪問看護はやりがいのある仕事ですよ。 ※本記事は、2023年11月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック
コラム
2023年12月26日
2023年12月26日

後進に繋ぐ在宅看護への想い【訪問看護認定看護師 活動記/中四国ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 中四国ブロック、杉本 由紀子さんのご登場です。杉本さんは現在、訪問看護ステーションでの後進育成を行うと同時に、看護大学で教鞭をとっています。 今回は、地域包括ケアシステムの中で訪問看護師が担う役割の重要性や、新卒訪問看護師輩出への想いなどを教えていただきます。 執筆:杉本 由起子訪問看護認定看護師/人間環境大学松山看護学部(地域・在宅看護学領域)・AOIケアリングステーション非常勤勤務大阪府出身。看護学校卒業後、大学病院等に勤務。結婚、出産後「目指したい看護」を模索し、「在宅終末期看護、在宅看取り」実践のため1995年より訪問看護ステーションに勤務。2012年 群市医師会に地域連携室を開設、「厚生労働省在宅医療連携拠点事業」や在宅緩和ケア推進モデル事業受託。2016年仲間と訪問看護ステーションを立ち上げ、2021年から現職。2001年 介護支援専門員資格取得2010年 訪問看護認定看護師教育課程修了2017年 大学院看護研究科看護学専攻臨床看護学分野高齢者看護学博士前期課程修了2021年 看護大学に勤務し、立ち上げた訪問看護ステーションでアドバイザー的役割に従事 海を超えたネットワーク! 私が所属する日本訪問看護認定看護師協議会の中四国ブロックは、美しい島嶼(とうしょ)部の浮かぶ瀬戸内海を超えたネットワークが自慢です。私が入会した当初は3人のメンバーでしたが、今では10倍近いメンバーになりました(2023年11月現在)。 ここ数年、ブロック長を中心に力を入れている活動は、「臨床推論」「在宅看取り」の講義です。臨床推論は主に新人訪問看護師を対象に開催し、ファシリテーターの役割を訪問看護認定看護師が担っています。 また、中四国エリアの特徴として、在宅・慢性期領域パッケージを含む認定看護師教育課程在宅ケア分野が徳島大学にあることも大きいでしょう。認定資格を取りやすい立地環境のため、メンバーの年齢層は幅広いです。訪問看護創設期を率いてきた世代はいわゆる「訪問看護第一世代」と呼ばれますが、その想いを引き継いだ第二世代、介護保険が始まって以降の第三世代のメンバーもおり、幅広い知識や情報の共有がしやすいことも誇りです。 中四国ブロックメンバーの訪問看護認定看護師も在宅ケア認定看護師も、みんなで協力し合って日本訪問看護認定協議会を盛り上げています。 訪問看護師は地域包括ケアのキーパーソン! 私の在宅看護実践における大きな経験・強みは、「在宅医療連携推進事業」のモデル事業に参加し、地域文化を重視したシステム作りに従事できたことです。 地域包括ケアシステム構築のためには、在宅医療の推進が必須。また、地域独自の方法を早急に確立することが求められています。難易度が高いながらもこれらの事業を無事に完遂できたのは、訪問看護認定看護師教育課程で培った、「実践・指導・相談」の学びがあったからこそです。 多職種との交流や、職種を超えたネットワーク・チーム作りのためには、情報共有のための共通言語化が欠かせません。多職種間を繋ぐことは訪問看護師の地域での大事な役割でもありますので、経験を生かして「顔の見える関係作り」に貢献できたと思っています。 訪問看護認定看護師として新たな働き方へ 2016年に訪問看護ステーションを立ち上げた際の経験についてもご紹介します。以下の3つのポリシーを掲げてスタートしました。 地域住民ファースト開かれたステーション地域課題の発見 例えば、休日・休日料金を設定しない。山間部エリアも活動エリアとする。いつでも地域住人や多職種からの相談を受け付ける。そして、地域の方々とのコミュニケーションを通じて地域課題を見つけることを心掛けてきました。 3人の仲間で開設した訪問看護ステーションも、現在ではケアマネジャーや多職種を含め30名あまりのスタッフ数に。機能強化型訪問看護ステーション1の算定もできるようになりました。現在私は、相談役として訪問看護ステーションに在籍し、臨床現場の後輩育成に関わっています。 また、訪問看護認定看護師としての活動を生かし、看護教員としても働いています。「看護を語る」ことや「在宅終末期看護の魅力」を看護基礎教育の場で学生に伝えていくことで、一人でも多くの学生に在宅看護に興味を持ってもらいたいと思っています。 新カリキュラムがスタートし、「地域・在宅看護」の教育を受けた看護学生たちがどんどん世に出ていきます。これからの地域包括ケアへの強い味方・担い手として、多くの新卒訪問看護師が誕生することを夢見ています。 * * * 「あきらめない看護実践」の場として、在宅看護はキラキラ輝いています。ご利用者さんやご家族とともに、希望を叶える。そんな現場が訪問看護にはあります。そして、どうか仲間とともに多くの「看護の語り」をしてください。その経験は、自己の成長に必ず役に立ちます。 ※本記事は、2023年11月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部 【参考】〇厚生労働省.「在宅医療の推進について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000061944.html2023/11/9閲覧〇一般社団法人全国訪問看護事業協会.「訪問看護ステーションにおける 新卒看護師採用及び教育のガイドブック策定事業  報告書」(2016年3月)https://www.zenhokan.or.jp/wp-content/uploads/H27-3.pdf2023/11/9閲覧

利用者さんの急変や在宅死に遭遇したら【訪問看護 緊急時の対応法】
利用者さんの急変や在宅死に遭遇したら【訪問看護 緊急時の対応法】
特集
2023年12月26日
2023年12月26日

利用者さんの急変や在宅死に遭遇したら【訪問看護 緊急時の対応法】

訪問先で思わぬ出来事に遭遇したとき、訪問看護師としてどう動けばよいのでしょうか。このシリーズではさまざまな緊急時に対し、具体的な臨床知をもとに何を確認・判断して、誰にどの手順で連絡・調整すればよいか分かりやすく解説します。今回のテーマは利用者さんの急変や在宅死を発見したときの対応法です。 訪問看護ではめずらしくない急変や在宅死 訪問看護の利用者さんには重症度の高い方や、ADL(日常生活動作)は自立していても重度な内部疾患を抱えている方が多くいらっしゃいます。そのことも影響して訪問看護の現場では病状の急変や在宅死は決してめずらしい出来事ではありません。 訪問したときに利用者さんが倒れていたら、あるいは亡くなっていたら、どう行動すればよいでしょうか。現場ではさまざまなシチュエーションが考えられます。それぞれの場面における対応方法を見ていきましょう。 急変や在宅死への対応法 ※NsPace編集部注:死亡診断にまつわる基本的な対応方法については、日本看護協会の資料もご参照ください。日本看護協会「在宅看取りの推進に向けた死亡診断の規制緩和について」 主治医に連絡し事前の取り決めに基づき対応 例えば予後不良な末期がんや末期心不全などの利用者さんでは、急変による死亡の可能性について予測がつきます。通常は訪問診療を受けていることが多いので、主治医との連携や連絡体制が整っていると思います。緊急時や呼吸停止していた場合、まずは主治医に連絡しましょう。基本的には事前に打ち合わせしている内容や、指示書に基づき対応します。 なお、主治医への電話連絡では利用者さんの受診状況によって工夫が必要です。地域のかかりつけ医に受診しているのであれば、比較的主治医と連絡をとりやすいですが、総合病院や大学病院などを受診している場合、連絡してもつながりにくいことがあります。そのようなときは、外来や退院連携室の担当者に連絡し、主治医に伝えてもらうとよいでしょう。 ここからは、医師に連絡することは大前提として、蘇生が望める場合と死亡していると思われる場合に分けて対応方法を解説します。 蘇生が望めると判断したら救急要請 呼吸および脈拍や意識レベルなどの身体状況から、救急車を要請するか否か判断を迫られる場面に遭遇することもあります。緊急時における事前の取り決めがなければ、わずかでも生活反応を確認できた時点で救急要請を行います。救急車を待っている間、医療職として利用者さんの蘇生に全力を尽くしましょう。 死亡と思われる場合は警察に連絡 一方、原因が分からず明らかに死亡していると思われる場合、警察に連絡します。私たちは訪問しているのでご本人がどういう病状であったかは分かっていますが、死亡原因がその病気によるものなのかは分かりません。検視が必要となります。警察の到着を待って、事情聴取に応じ、警察が必要とする情報を提供します。 ここで大切なのは、警察が到着するまでの間、できる限り利用者さんの身体や周囲の物に触れないということです。よほどの事件性がない限り、少々触れたとしても問題にはなりませんが、死亡の原因がご本人の病状によるものと判断できたとしても不用意に触らないことが望ましいです。 関係各所への連絡も忘れずに 急変時、死亡時ともに、利用者さんに関係する人たちへの連絡も重要な任務です。ご家族やケアマネジャーなど連絡先として情報を得ている方がいるはずです。身内がいない場合は、地域包括支援センターや行政窓口の高齢福祉課、生活保護課、保健衛生部など、日頃やりとりをしている担当者に連絡します。 また、ステーションに状況を報告します。この後に続く訪問調整の相談も忘れないでください。次の訪問予定時間に遅れが生じ、ほかの利用者さんに迷惑をかける事態を防ぐことも大切です。 急変や死亡が予測できなかった事例 訪問したらいつもどおりにケアを提供できることがほとんどですが、長く訪問看護師を続けていると、予想外の出来事に遭遇します。次に示す2事例は、筆者が経験した事例です。いずれも独居の男性であること、急変や死亡の予測ができなかったことは共通していますが、プロセスに若干の違いがあります。 環境の大きな変化を経験したAさん 高齢の母親と二人暮らしをしていたAさん。生活の多くの部分を依存していた母親が急死。突然独居となり、本人の生活が成立しなくなります。 以前から他人に自宅に入られたくないと訪問看護に消極的でしたが、主治医からのすすめもあり、週1回の訪問看護は受け入れていました。母親が高齢のため、保健師や地域包括支援センターの担当者はAさんがいずれは独居になる事態を予測し、本人が困らないように準備を整えていました。ところが母親の突然の死に訪問介護の準備が間に合わず、訪問看護を週2回に増やし、生活支援も含め対応することになりました。 ある日のこと、訪問予定時間に自宅にうかがい、呼び鈴を押しましたが応答がありません。玄関前で電話をかけますが、それにも応答なしです。玄関は施錠されており入室することもできないため、一旦ステーションに引きあげました。 数時間後に再度訪問するも状況は変わらず。普段の様子から長時間留守にされることはなく、何となく不安になりました。担当の保健師に報告し協議をしたところ、翌日Aさんの受診が予定されていることもあり、お互いに悩みながらもそのまま様子をみることにしました。 受診当日、本人が病院に行ける状態かどうかを確認するため、再度自宅に出向きましたがやはり応答がありません。平常時の本人の状態からすると異常事態としか考えられず、警察に連絡しました。現場に到着した警察に通報に至った経緯を説明します。警察であっても室内には勝手に入ることはできないようで、侵入可能か否かの判断はガイドラインに基づき対応しているようでした。 室内に入ると、リビングで倒れているAさんを発見。意識レベルが低下(JCS 300)していましたが、呼吸しており脈拍も何とか触れる状態です。警察が救急車を要請し、入院になりました。その後、訪問看護師から保健師はじめ関係者に一連の報告をしています。 うつ病を抱えたBさん Bさんはうつ病の診断を受けています。病気で就労できなくなり、復職の見通しが立たないつらさや、生活に対する不安の訴えもあり、訪問看護が開始されました。訪問看護は週1回の利用です。 訪問日にうかがい、呼び鈴を押しますが応答がありません。ドアノブを回してみると施錠されておらず、ドアを開けることができました。ドアを開放したまま、声かけしながら入室すると、押し入れに上半身を突っ伏した状態のBさんがいました。 状況からみて明らかに死亡していると確信したため、警察に連絡。警察はさらに救急隊に連絡し、到着した救急隊がBさんを確認し搬送する状態にないと判断しています。その後、監察医が訪問し検案を行い、警察がご遺体を搬送していきました。訪問看護師の役割は、警察から訊かれたことに対し情報提供することです。そして、地域でかかわっていた方に報告し、任務終了です。 Bさんのケースでは、病名から自殺という結果も考えられ得るわけですが、どういう状況であっても、看護師として死亡していると判断できたならば、本人の周囲には触れることなく、警察に通報します。 ただし、どうしても触れる必要がある場合、自分一人だけで触れることがないようにしてください。ほかの人がいるときに触れる目的を伝えてから実行します。もちろん現場保存の意図もありますが、後々、ご家族や身内の方から「物がなくなった」と疑われないようにするためでもあります。 もしものときのために普段から話しておく 訪問看護は常に今回紹介したようなアクシデントに遭遇する仕事だと思っています。急変や在宅死への対応のポイントをまとめます。 日ごろからご本人含め在宅医療にかかわるメンバーで急変時や死亡時の対応を事前に取り決めておく。急変時、事前の取り決めがなければ救急要請を行い、蘇生に全力を尽くす。原因が分からず死亡していると思われる場合、身体や周囲のものには触れず、警察に連絡する。警察にはきちんと情報提供を行う。 予後不良な利用者さんの場合、訪問時に緊急対応が発生する可能性が高いと予測されます。状態の把握に努め、いざというときにあわてず対応できるようにしておきましょう。また、予後不良の利用者さんに限らず、通常の訪問時からご本人のアドバンス・ケア・プラニング(ACP)の支援を通して、どのような医療やケア、対応を望んでいるのかを確認しておくことが大切です。独居の方であれば「いざというとき、家に入ってもよいですか」「カギはどうしましょう」など、想定されることはご本人やご家族と事前に取り決めます。そして、それらの情報を記録として残し、関係者と共有します。初めからあれこれ聞くことは難しいと思いますが、利用者さんの病状によっては初回訪問時に確認しなければならないこともあるでしょう。もしものときに備え、普段から意向を聞いておけるとよいですね。 * * * 利用者さんの急変や死亡事例は訪問看護師にとって深刻な事態ですが、起こったことだけでとらえるのではなく、そのことに至るまでのプロセスや関係性が重要です。ご本人が望む生き方や死の迎え方を私たちは日頃の訪問看護を通して知ること。その思いに寄り添うことが最期の時までに課せられた訪問看護師の役割と考えます。 執筆:阿部 智子訪問看護ステーションけせら統括所長 ●プロフィール約12年の臨床経験後、育児に専念する期間を経て、訪問看護の道に入る。自宅を訪問し、利用者との個別ケアを通して看護師としての力量の評価を得られ、利用者一人ひとりの生きざまを感じることができる訪問看護に魅力を感じる。2000年に「訪問看護ステーションけせら」を設立し、看護と介護を一体的に運営し、医療と生活の両面から在宅を支えられる実践を行ってきた。最期まで地域で暮らしたいという思いも支えられるようにホームホスピスの運営と、24時間対応できる定期巡回随時訪問介護看護事業にも携わる。 編集:株式会社照林社

訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック
コラム
2023年11月21日
2023年11月21日

介護職員養成&通学支援【訪問看護認定看護師 活動記/東海北陸ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 東海北陸ブロック、松下 容子さんの活動記です。介護職員向けの喀痰吸引等研修や、三重県で2023年度より導入されている医療的ケア児の通学支援の取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:松下 容子看護学校を卒業後、総合病院に勤務し、2000年から訪問看護に従事。2011年 訪問看護認定看護師資格取得2012年 四日市社会保険病院 訪問看護ステーション管理者(現:四日市羽津医療センター)2021年~現在 みんなのかかりつけ訪問看護ステーション四日市 管理者 全国で1番の会員数を誇る東海北陸ブロック 私は、日本訪問看護認定看護師協議会の理事に就任して4年目になります。担当業務は総務で、主に総会・同時開催研修会と交流集会の計画、開催等に関わっています。研修会の講師や内容については、会員の皆様からのアンケート調査に基づき、皆様のご希望を反映できるよう、心がけています。 例えば、2023年6月の総会後の同時開催研修会は以下のような内容で実施しました。 第1講「認定更新申請の情報提供」5年目の訪問看護の認定更新を済まされた会員からの情報提供第2講「法律制度を活用したコミュニケーション向上術」看護師であり、社労士事務所代表の方によるご講演 次に、私が所属している東海北陸ブロックの活動状況を紹介します。当ブロックは静岡、愛知、岐阜、三重、福井、富山、石川の7県から構成され、会員数は101名となりました(2023年10月時点)。協議会全体での会議とは別に、ブロック内で年に2回の研修会と交流会、年に数回の役員会を開催しています。役員は、ブロック長をはじめ各地区代表の10名で構成されており、研修会をはじめとした企画・運営を取り仕切っています。9月末には、今年度最初の研修会として、「在宅ケアにおける倫理」をテーマに開催しました。 喀痰吸引等研修講師として10年目 個別で行っている講師活動についてもご紹介します。私はこれまでの10年間、毎年喀痰吸引等研修の講師を務めています。喀痰吸引等研修とは、「たんの吸引(口腔内、鼻腔内、気管カニューレ内部)」と「経管栄養(胃ろう、経鼻経管栄養)」を行える介護職員等を養成するための研修です。また、この介護職員を現地で指導するための指導者研修(看護師)もあり、いずれも研修内容は講義と演習で構成されています。そのほか、これまでに介護職員数名の実地研修の指導者としても関わらせていただきました。 喀痰吸引等研修会演習風景 今後もこの活動を通して介護職員の喀痰吸引等に関する手技の維持・拡大と喀痰吸引等提供の質確保に努め、介護職員を含めた多職種による協働体制の構築に尽力していきたいと思います。 県初、医ケア児の通学支援開始 医療的ケア児への支援活動についてもご紹介します。四日市市には特別支援学校があり、多くの医療的ケア(人工呼吸器や喀痰吸引、胃ろう管理等)を必要とする児童が通学をしています。しかし、ほとんどの児童はスクールバスへの乗車が困難な状況です。スクールバスに乗れない児童は家族送迎を余儀なくされ、家族の負担は非常に大きいものとなっています。例えば、母親による往復の送迎に1時間程度かかる場合、母親の仕事の時間が削られているケースはもちろん、就業を諦めざるを得ないケースもたびたび見かけられます。 三重県では、そんな家族の負担を軽減すべく、2023年度に「三重県医療的ケア児通学支援事業」が試行され、現在、当ステーションでは週に2回、朝の通学支援に協力させていただいています。業務内容は、指定された福祉タクシーに同乗し、運転手さんと協力して安全に児童を特別支援学校まで送り届けることです。道中、車内での児童の状態観察と喀痰吸引の必要があれば実施し、学校到着後に担任教員に母親からの伝達事項や車内での状態を引き継ぐという流れになっています。 まだ開始したばかりの事業であり、実際、受け入れのできる訪問看護ステーションも、まだまだ少ないのが現状です。障害があっても健常な児童と変わらず、平等に学習機会が確保され、必要な支援のもと、児童の成長、発達と家族へのサポートがますます促進されるよう、今後も微力ながら関わっていきたいと考えています。そして、誰もが豊かに暮らせる地域に発展することを心から願っています。 * * * この記事をお読みいただいている訪問看護師の皆様にも、ぜひ安心・安全の提供と、自分らしい生活・ありたい姿の実現を見据えながら、療養者様やご家族に寄り添っていただけたら幸いです。 ※本記事は、2023年10月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

ノーリフティングケア インタビュー
ノーリフティングケア インタビュー
インタビュー
2023年11月7日
2023年11月7日

知っておきたいノーリフティングケア 看護師の腰痛予防や利用者の拘縮緩和も

看護や介護の現場では、人力で寝たきりの要介護者を移動させるため、腰痛発生率が高まり、離職率の増加につながっています。それを防ぐのが、欧州では主流の「ノーリフティングケア」です。リフトを活用して要介護者を動かすことで看護師や介護士の腰痛予防になるほか、リフトの活用そのものがリハビリとなり、利用者の拘縮緩和も期待できます。そこで、「ノーリフティングケア」の普及活動に奔走する理学療法士の下元 佳子さんに、国内外の現状やリフトを活用するメリットについて伺いました。 ※本記事で使用している写真の掲載については本人・家族、関係者の了承を得ています。 〇プロフィール 下元 佳子(しももと よしこ)さん 理学療法士。17年間病院に勤務した後、合資会社オファーズを設立。訪問看護、訪問介護、子どもの通所介護の事業所を運営。「二次障害を引き起こさない福祉用具ケア」を普及させるため、一般社団法人ナチュラルハートフルケアネットワークを設立し、代表理事を務める。高知市内に拠点を置き、福祉用具の展示·相談、人材育成のための研修等を行っている。 ※文中敬称略 オーストラリアでは看護師がリフト活用を推進 ―リフトの存在は知っていても活用していなかったり、「ノーリフティングケア」のメリットをきちんと理解していなかったりする看護や介護の現場がほとんどだと思います。ノーリフティングケアの状況やメリット、そして、医療・介護業界に広める活動をされている理由を教えてください。 下元: 「ノーリフティング」という言葉は、看護・介護・福祉の現場から職業病としての腰痛を予防する取り組みを指します。海外に視線を向けると、欧州では1980年代からリフトを使って看護や介護することが日常になっています。 オーストラリアでは看護師の身体疲労による腰痛訴え率が上がったため、1998年に国が腰痛予防策の義務化をし、積極的に取り組んできたのです。歴史は浅いですが、人力のみの移乗を禁止して福祉用具を活用しようと、看護や介護、福祉現場での常識が変わってきています。 現地で率先して活用を広めているのが、看護師です。私は2008年にオーストラリアの看護や介護現場を見学しましたが、「なぜ看護師がリフトの活用を広めているの?」と看護師に質問すると、「患者さんをサポートする役目の私たちが、自分の体を痛めて治療費を払うなんて、話にならないわよね」と答えてくれました。質の高い仕事をするために、ムダなことはしたくないと話していたことにも、プロ意識を感じました。 ―日本とは大きく状況が異なるのですね。なぜ、日本ではノーリフティングケアの導入がなかなか進まないのでしょうか。 日本では1970年代に「重量物取り扱いルール」が制定されましたが、建設業・輸送業など「物」を対象とする業界で実践されてきました。そのため、人に対しては何の対策も取られず、介護や看護に携わる人たちの腰痛が増え続けてしまったのです。2013年に国が「職場における腰痛予防対策指針」を出しましたが、現場が実際に変わるほどの効果はなかったように思います。昨年、厚生労働省による労働災害の防止の取り組み「従業員の幸せのSAFEコンソーシアム」や、今年の「第14次労働災害防止計画」の中に、「介護はノーリフティングケアでやりなさい」という内容が、ようやく明記され始めたのが現状です。 国をあげての問題になった今、看護師や介護士、そして長時間一緒に過ごされるご家族の体を守るために、私はノーリフティングケアの普及活動に力を入れています。 看護や介護職の人たちは、「自分が要介護者の手足を動かしてケアすること」こそ、本人やご家族に喜ばれると考え、それが目標や自身への評価にしがちです。しかし、大事なのは、ご家族を含めた介護するチーム全員が自分の体をしっかり守りながら、ケアを継続すること。看護・介護のプロとしても、腰痛予防のための「ノーリフティングケア」を取り入れるべきだと思います。 日本の要介護者が屈曲状態で拘縮する理由 ―下元さんは30年以上前にカナダの医療や介護の現場へ「ノーリフティングケア」の視察に行かれ、どこに行っても拘縮(関節が固まってしまう状態)の要介護者がいない事実に驚かれたとのこと。日本ではなぜ拘縮の人が多いのでしょうか。 下元: 私が理学療法士を目指して勉強していたころは、「寝たきりなどで体を動かさないから拘縮が起こる」と習いました。でも、実際に臨床現場で働くと、寝たきりなら関節が伸展した状態で拘縮するはずなのに、なぜか上肢は肘で大きく曲がり胸にくっつき、指も握ったまま、下肢も大きく曲がり踵がお尻にくっつきそうな人が多く、不思議に思いました。 セラピーの時間に手足を動かして「少し筋肉が緩んだかな?」と思っても、看護師さんに患者さんを病棟のベッドに移してもらった途端、セラピー前の固さに戻っていることもありました。吸引して拘縮が強くなっていることもあり、もしかしたら、筋肉が緊張する状態が続くと拘縮になるのではないかと思いました。 強い刺激や速い刺激を与えると、筋肉の緊張度合は上がります。例えば、横向きに寝るように体を動かし、股関節を開くといったおむつ交換の作業でも、乱暴に動かすと筋肉は緊張します。時間が経って緊張が少し緩んでも、また次の介護ケアで筋肉が緊張してしまう。私たちのようにふーっと息を吐くなど、要介護者は筋肉の緊張を緩めるようなコントロールができません。つまり、介護ケアの連続が、筋肉の緊張状態を継続させていたのです。これは、人によって「つくられた拘縮」ともいえます。 28歳で地域の高齢者病院に転職したときに驚いたのが、拘縮で手足が屈曲し固まっている患者さんが病室にたくさんいたことです。医師からは山のように「拘縮改善」のオーダーがありました。でも1日数十分体を動かすだけでは、固くなった体を改善することはできません。カナダのバングーバーの施設を視察したのはそのころ。もう30年前の話ですが、拘縮している要介護者はいませんでした。その後に行ったデンマークやオーストラリアでも、生活習慣による円背はあっても、日本でたくさん見るような拘縮した人はいなかった。つまり「ノーリフティングケア」を実践している国では、拘縮している要介護者がほとんどいないのです。 ―リフトの活用が拘縮を防ぐということでしょうか。逆に、筋肉が緊張しそうなイメージもあります。 下元: 吊り上げるときは、大腿後部と背中全体をシートで支えます。広い範囲でしっかり体重を支えながらゆっくり動かせば緊張するどころか、逆に緊張を緩めてくれるのです。だから我々は、「要介護者を抱え上げられないからリフトを使おう」ではなく、「筋肉の緊張を緩めるためにリフトを使いましょう」と在宅介護や医療現場で提案します。拘縮を改善する道具として使えることを、ぜひ多くの看護・介護・福祉の現場で働く人々に知っていただきたいです。 嬉しそうにリフトを利用している利用者さんの様子 ベッドからの移動にリフトを活用(左)。利用者さんのお母様の負担が軽減した。また、体幹トレーニング(中央)や、リラクゼーション(右)にもリフトが活用されている 私が活動する高知県では、全国に先駆けて「ノーリフティングケア」に取り組み、2015年からモデル施設をつくっています。8年経ちますが、拘縮の方が本当に減りました。県外から視察されに来た方を施設にお連れすると、ホールに座っている高齢者を見て、「高知県は特養介護度が低いのですか?」と皆さん同じことをおっしゃいます。日本には拘縮している高齢者が多いので、「自分で自由に動けない介護度が高い人=拘縮している」というイメージなのでしょうが、「ここにいる皆さんは要介護度5ですよ」と伝えると必ず驚かれます。 リハビリもやらなければと思う看護師たち ―先生は、訪問看護師を養成する県のプログラムで講師もされていると伺っています。受講される看護師は「ノーリフティングケア」についてどのようなイメージを持っているのでしょうか。 下元: 年2回、「在宅リハビリテーション」というテーマで1日研修の講師を担当しています。最初に「在宅リハビリテーションに、どんなイメージありますか?」と質問すると、「ベッド上の要介護者の手足を動かす」と看護師さんたちは答えます。私は「リハビリテーションとは、そういうことではない」ということから講義を始めるんです。 理学療法士や作業療法士が不在の介護現場では、「自分がリハビリの仕事をしなければ」と考える看護師さんが多いようです。「リハビリのやり方を教えてください」と看護師さんからよくお願いされますが、「要介護者の手足を動かすことが理学療法士や作業療法士の仕事ではない。週に一度や二度それを実施しても拘縮は予防できません。ケアを変える提案をする方が大事であり、成果が出ます」と伝えます。そして、「リフトで吊り上げてゆらゆら動かすと体の緊張が緩んできます。ベッドの上で要介護者の手足を動かすよりも拘縮予防になります」と説明すると看護師さんたちは驚かれ、「リフトを活用したい!」とおっしゃるのです。 ―リフトを実際に使っている方やそのご家族の様子を教えてください。 下元: リフト利用者やそのご家族は、活動的になる傾向があります。 玄関リフトや電動車いすなどを活用してお出かけをする利用者さん。「人に相談する」「福祉用具を使ってゆとりを作る」ことで、お母様の負担を減らしながら活動量を増やし、暮らしが豊かになった リフトは自費でレンタルできるので、ホテルに設置してもらって1泊2日で国内旅行に行く方もいます。私の勤務先のリフト利用者も、海外旅行を楽しんでいました。リフトの活用が進んでいる海外のほうが手配しやすいとも思います。その方は70代の男性で、難病が進行し、昨年、人工呼吸器を装着されました。在宅介護は厳しいかもと思いましたが、家に戻って来られたんです。「帰ってきたんですね」と言うと、「いやいや息ができなくなっただけでしょ?」とおっしゃる。病気の進行に合わせて補助器具を導入する生活を送り、リフトさえあれば在宅介護ができるんじゃないかという前向きな考えに至ったのだと思います。奥様もリフトとヘルパーさんの力を借りることで、仕事を辞めることなく在宅介護ができると判断されたようです。 リフトを活用している筋ジストロフィーのお子さんは、体が動かないので床に置かれるだけで大泣きする状態でしたが、今は移乗に使うだけでなく、吊り具を使って立ち上がり、1時間ぐらい遊んでいます。干している洗濯物を落として喜ぶなど、ちゃんといたずらができることも発達の表れです。 体調を崩して入院すると、「帰る、帰る」と言うそうです。「帰って何をするの?」と聞くと、ブランコに乗るようなしぐさをして「家でリフトに乗りたい」と主張する。動ける自由に楽しさを感じているのでしょう。 リフトを使えば起きたいときに起きられるし、ラクに車いすに乗れて移動できるようになるので、要介護者とご家族のQOLは確実に上がります。利用者の奥様に、「リフトはどんな存在ですか?」と尋ねたら、「相棒」とおっしゃっていました。「子どもたちに夫の移動を頼むと嫌がられるけれど、リフトは1回も嫌って言ったことがないのよ」と話されていたことも印象的でした。 >>後編はこちら在宅に「ノーリフティングケア」の導入が難しい…は誤解? ※本記事は、2023年8月時点の情報をもとに構成しています。 執筆: 高島 三幸取材・編集: NsPace編集部

漫画「新任訪問看護師からの学び」
漫画「新任訪問看護師からの学び」
特集
2023年8月30日
2023年8月30日

受賞作品漫画「新任訪問看護師からの学び<後編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、佐藤 理恵さん(一般財団法人同友会 藤沢訪問看護ステーション/神奈川県)の入賞エピソード「新任訪問看護師からの学び」をもとにした漫画の後編をお届けします。 「新任訪問看護師からの学び」前回までのあらすじ佐藤さんが働く訪問看護ステーションの看護師は、50代がメイン。そこに、貴重な30代の新任訪問看護師 三上さんが入職しました。糖尿病・フットケアが得意分野で、小さな子どもたちを抱えながらも意欲にあふれる三上さん。教育担当の佐藤さんは、自身の経験も踏まえながら、負担をかけすぎず、でもしっかりスキルを生かせるように…と検討していきました。 >>前編はこちら受賞作品漫画「新任訪問看護師からの学び<前編>」【つたえたい訪問看護の話】 新任訪問看護師からの学び<後編> 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師/訪問看護ステーション管理者。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1) エピソード投稿:佐藤 理恵(さとう りえ)一般財団法人同友会 藤沢訪問看護ステーション(神奈川県) 受賞のお知らせを聞いたときは「本当に?」と驚きましたが、漫画に登場する三上さんも、一緒に喜んでくれました。今回エピソードを投稿してみて、日々行っていることを言語化することは非常に大事なことだと思いましたし、言語化する過程で、「あのとき自分はどう考えたんだろう」と改めて振り返り、気づきを得る良い機会になりました。本当にありがとうございました。

漫画「新任訪問看護師からの学び」
漫画「新任訪問看護師からの学び」
特集
2023年8月29日
2023年8月29日

受賞作品漫画「新任訪問看護師からの学び<前編>」【つたえたい訪問看護の話】

NsPaceの特別イベント「みんなの訪問看護アワード」で募集した「つたえたい訪問看護の話」。今回は、佐藤 理恵さん(一般財団法人同友会 藤沢訪問看護ステーション/神奈川県)の入賞エピソード「新任訪問看護師からの学び」の漫画をお届けします。 >>全受賞エピソードはこちらつたえたい訪問看護の話 受賞エピソード発表!【みんなの訪問看護アワード】 新任訪問看護師からの学び<前編> >>後編はこちら受賞作品漫画「新任訪問看護師からの学び<後編>」【つたえたい訪問看護の話】 漫画:広田 奈都美(ひろた なつみ)漫画家/看護師/訪問看護ステーション管理者。静岡県出身。1990年にデビューし、『私は戦う女。そして詩人そして伝道師』(集英社)、『ナースのチカラ ~私たちにできること 訪問看護物語~』『おうちで死にたい~自然で穏やかな最後の日々~』(秋田書店)など作品多数。>>『ナースのチカラ』の試し読みはこちら【漫画試し読み】『ナースのチカラ』第1巻1話(その1) エピソード投稿:佐藤 理恵(さとう りえ)一般財団法人同友会 藤沢訪問看護ステーション(神奈川県)

ラダー&評価制度
ラダー&評価制度
インタビュー
2023年8月29日
2023年8月29日

訪問看護のラダー&評価制度 マネジメント層教育に残る課題への取り組み

訪問看護スタッフや管理者に対する評価制度としてラダーを採用しているソフィアメディ株式会社。今回は、特に「マネジメントラダー」における課題や、業界全体に求められる教育制度に関して、前回と同じくQM(クオリティマネジメント)推進グループの篠田 耕造さん、田中 麻奈美さん、福島 圭輔さんに、お話を伺いました。 >>前編はこちら訪問看護のラダー&評価制度 キャリアパスを「見える化」する意義 篠田 耕造さん/CQO(Chief Quality Officer)公立総合病院、専門病院、地域包括ケアを行う法人で、教育体制や業務プロセス・品質管理に携わりながら、MBA(経営管理学修士)・認定看護管理者を取得。日本看護協会教育委員・学会企画、岐阜県看護協会副会長等を歴任。JNAラダー・教育システム、管理者研修、医療経営セミナー講師などを行う。2022年よりソフィアメディ株式会社CQOに就任。田中 麻奈美さん作業療法士歴21年、ソフィアメディに在籍して13年目となる。訪問看護ステーションで従事していたが、産休・育休を機にキャリアチェンジし、バックオフィスの仕事も兼務。2020年よりQM推進グループに所属。スタッフ全般の育成プログラム作成、ラダー体制の整備などを行う。福島 圭輔さん理学療法士歴20年ほど。ソフィアメディには2013年に入社し、東京都大田区ステーション池上にてセラピストとして勤務。2016年分室であるステーション西馬込の主任セラピストとなる。2020年にバックオフィスへ異動。2020年から1年間採用担当、2021年からQM推進グループに所属し、管理者や主任など、マネジメント層に対しての育成、研修などを担当。※本文中敬称略 ※本記事は、2023年5月の取材時点の情報をもとに制作しています。 課題となるマネジメントラダーの作成 ─管理者に対する教育「マネジメントラダー」について教えてください。 福島: 現在QM推進グループでは、マネジメントラダーの作成も進めています。本来は全領域を網羅したラダーを一気に作成できるといいのですが、非常に難易度が高いため、段階的に作成しています。まずは、新任管理者を対象としたものから着手しました。先輩管理者から受けるOJTと、我々が作成するOff-JTが横軸で支援し、管理者を育成していきます。 また、弊社のビジョン、ミッションを達成するため、「管理者としてあるべき姿」の要件を挙げています。その要件を満たすための「6つの能力」を設定しています。「6つの能力」については、日本看護協会の病院看護管理者のマネジメントラダーを参考にし、そこから到達目標や具体的な基準と項目を加え、マネジメントラダーとして構築しました。 篠田:20代後半から30代前半の経験の浅い若手管理者がスタッフの育成や評価を行うのは、やはりハードルが高いものです。しかし、指定訪問看護事業所として、管理者が従業員の資質向上や研修の機会を確保する必要があり、新任管理者であっても育成・評価から事故・苦情対応まで幅広い役割が求められます。ですから、まずは新任管理者層を重視して育成し、プログラムについても現在作成している最中です。管理者育成の全体最適化はこれからですね。 QM推進グループ 打ち合わせの様子 縦軸と横軸でフォローを充実させていく ─Off-JTとOJTとも関わりがあるのですね。 篠田: はい、もちろん。QM推進グループではステーション支援の機能も持っており直接的なサポートも併せて行っています。マネジメントスキルの高い管理者が寄り添って行うOJT体制を推進しています。それらを「縦軸」とし、バックオフィスは、マニュアルを充実させる・研修を行う・システムを整えるといった「横軸」のフォローを行って、組織全体で新人管理者を支えるしくみを充実していきたいと考えています。いまが本格的に動き出した、というタイミングですね。 「QM推進グループで経験値の高い管理者を地域に派遣する」という支援方法もありますが、我々が目指しているのはそのようなかたちではありません。限られた人材でまわしていくのではなく、あくまでもステーションがあるそれぞれの地域に近い指導者が活躍してくれるのが理想ではないかと考えています。地域の特性や属性などを理解している人材を活かし、地域に根差すステーションをつくる、というところを目指したいんです。 全国的に訪問看護ステーションの量と質の拡大が求められる中で、一番の課題となるのは管理者不足と、その育成にあります。とはいえ、弊社は既に「管理者をやったことがないからできない」という言い訳ができる規模ではありません。全国にステーションを持つブランドとしてやるべきことは、そういった弱点といえる部分を放置せず、しっかりと支えて育成すること、リードタイムを短くしていくことではないかと考えています。もちろん、管理者以外のスタッフ育成やケアの質保証や向上に向けても整えていく予定です。 田中: たとえば、セラピストに関しても日本看護協会のラダーを参考にしながらラダーを作成しています。ただ、やはり全国を見てもセラピストにラダーを導入している実例がないので、なかなか苦戦しています……。運用して、現場の声を集めながら進めていきたいと考えています。「訪問看護にマッチするセラピストとは」といった面についてもこれから追求していく必要がありますね。 業界の大きな課題に立ち向かう先駆者 ─ここまでお話を伺って、業界全体の課題もあるように思いました。 篠田: はい。まさにこれからというところであり、いま粛々と、着実に進めているところです。課題感は大きいですね。ただ、高齢化社会の中で本当に生活を支えていく訪問看護はなくてはならないものであり、我々の課題は業界全体の課題でもあるといえます。弊社がある意味先駆的に物差しと価値を示していき、経営基盤を活かしてできることに取り組み責任を果たしていくことが必要、とも思うんです。 訪問看護は社会的インフラとしてニーズが高まっている一方、経営は難しい実態があります。人員確保はするものの、教育については「おいてけぼり」になっているのが今の状態です。実務に追われ、手が回らないんですね。このような事態を招かないためにも、弊社も、体系的な教育プログラムと併せて、大規模ステーションでの研修体制など、地域の教育ネットワークを構築することも、ソフィアメディだからこそできることではないかと。地域のステーションや施設へ、部分的にプログラムを提供することも視野に活動を推進していきたいですね。 ─訪問看護には独特の教育が必要ですね。 篠田: そうです。病院とは異なり、訪問看護は「人の生活の場」に入って行くので、そこで看護を行うにあたっての「意思決定支援」と、その意思決定を支えるための「協働する力」がより重要になります。お客様の状況や家庭に合わせて調整する力が高く求められます。また、訪問看護は継続的な日常の療養支援が必要であり、在宅療養者のニーズに応じて、医療や介護を包括的に提供できるよう調整することが求められます。当然、一律な介入はあり得ませんので、事例を通して経験し、確実に次に繋げていくチームでの経験学習が大切になりますね。 そこが、ある意味では訪問看護の「醍醐味」ともいえます。本当の意味での「お客様本位」を考え、それが達成できる喜びも感じられる。そのぶん負担もありますが、それを支えていけるだけの教育システムをつくっていきたいと考えています。 ─ありがとうございました! 執筆: 倉持 鎮子取材・編集: NsPace編集部

ラダー&評価制度
ラダー&評価制度
インタビュー
2023年8月22日
2023年8月22日

訪問看護のラダー&評価制度 キャリアパスを「見える化」する意義

ソフィアメディ株式会社は、訪問看護スタッフや管理者に対する評価制度としてラダーを採用しています。随時改定を行いながら、スタッフの育成に効果をもたらすために模索を続けています。ソフィアメディの訪問看護において、ラダーはどのような価値を持つものなのでしょうか。QM(クオリティマネジメント)推進グループの篠田 耕造さん、田中 麻奈美さん、福島 圭輔さんにお話を伺いました。 篠田 耕造さん/CQO(Chief Quality Officer)公立総合病院、専門病院、地域包括ケアを行う法人で、教育体制や業務プロセス・品質管理に携わりながら、MBA(経営管理学修士)・認定看護管理者を取得。日本看護協会教育委員・学会企画、岐阜県看護協会副会長等を歴任。JNAラダー・教育システム、管理者研修、医療経営セミナー講師などを行う。2022年よりソフィアメディ株式会社CQOに就任。田中 麻奈美さん作業療法士歴21年、ソフィアメディに在籍して13年目となる。訪問看護ステーションで従事していたが、産休・育休を機にキャリアチェンジし、バックオフィスの仕事も兼務。2020年よりQM推進グループに所属。スタッフ全般の育成プログラム作成、ラダー体制の整備などを行う。福島 圭輔さん理学療法士歴20年ほど。ソフィアメディには2013年に入社し、東京都大田区ステーション池上にてセラピストとして勤務。2016年分室であるステーション西馬込の主任セラピストとなる。2020年にバックオフィスへ異動。2020年から1年間採用担当、2021年からQM推進グループに所属し、管理者や主任など、マネジメント層に対しての育成、研修などを担当。※本文中敬称略 ※本記事は、2023年5月の取材時点の情報をもとに制作しています。 ラダーの浸透が難しい訪問看護業界 ─病棟を含め、「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」(JNAラダー)を見たことがある看護師は多いと思いますが、2023年6月にはクリニカルラダーに代わる新しい指標も示されました。違いについて教えてください。 篠田: もともと2016年に日本看護協会がラダーを開発した目的は、病院と高齢者施設・訪問看護が地域完結型のシームレスな看看連携を目指す上で、双方に共通する基準をつくるということにありました。クリニカルラダーは看護師共通の評価システムで、実践能力を5レベルに分け、それぞれ習得すべき「4つの力」(意思決定を支える力/ニーズをとらえる力/協働する力/ケアする力)に分けて目標を設定していました。 2023年の改定後の指標は「生涯学習」をテーマにしており、変化する社会やニーズに合わせて、看護職が継続的な学習を主体的に取り組み、その能力の開発・維持・向上を図り続けるための羅針盤として公開されました。看護職一人ひとりが看護職として活躍し続けるためには、各自のライフイベントや価値観に応じて、仕事と生活の調和を図りながら自律的に学ぶことが求められています。キャリア視点が加わったというイメージです。 ■看護師のラダーについて 2012年: 日本看護協会「助産実践能力習熟段階(クリニカルラダー)」を公表2016年: 日本看護協会「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」を公表2019年: 日本看護協会「病院看護管理者のマネジメントラダー(日本看護協会版)」を公表2023年: 日本看護協会「看護師のまなびサポートブック」(看護師に求められる「看護実践能力」と、それに基づく学習項目、看護実践能力習熟段階も掲載)を公表※「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」に代わる指標参考:日本看護協会出版会「50年のあゆみ」(https://www.jnapc.co.jp/50th/chronology.html) ―訪問看護において、ラダーはどの程度導入されているのでしょうか。 篠田: 訪問看護のラダー導入率は全国的に見ても低く、協会は看護師間・施設間・地域間の切れ目のないケア提供を目指すためも、JNAラダーの浸透を推進していました。全国展開を目指す弊社においても、業界全体の流れと同じくラダーの定着が急務となったんです。 弊社がまずベースとしたのは、JNAラダーと滋賀県看護協会で出している訪問看護師向けのステップアップシートです。そこにソフィアメディの方針に基づいた調整・更新を随時行いながら、運用してきました。 そして、今回の日本看護協会の『看護師に求められる「看護実践能力」と、それに基づく学習項目、看護実践能力習熟段階』の公表に合わせて、我々も社内の評価システムをアップデートしているところです。 ─ありがとうございます。皆さんは評価制度の検討を担当されていると伺っていますが、もう少し担当されている業務の内容について教えてください。 福島: 私たちはQM推進グループに所属しており、そのグループが受け持つ業務のうちのひとつが、従来のラダーを含む評価制度についての検討・改善です。 振り返り面談の時だけに確認するような表面的な評価制度ではなく、日々の仕事に実際に活用できるか、といった点にも配慮しながら検討しています。現在は、研修をはじめとしたOff-JTだけでなく、どのようにして実践(OJT)にラダーや新人教育プログラムを組み込んでいくか、より実践的なものに仕上げられるか、ということを重点的に議論しています。周知内容・研修内容・コミュニケーションの方法など、施策の進行度合いやスタッフの反応も確認しながら進めています。 グループ内では進める施策ごとにチーム分けを行っているのですが、週1回のミーティングで全体進捗・部分進捗も確認しています。チーム内ではミーティング以外に1on1も行っており、体調管理や日々の小さな疑問点などを解決していく時間としています。 グループ内のオンラインミーティングの様子 新人をフォローする役割も持つ評価制度 ─評価システムの内容について、具体的に教えてください。 田中: これまで弊社では、クリニカルラダーにキャリアパス的要素を加えてアレンジし、「4つの力」ごとに採点が行われるような運用を行ってきました。カテゴリごとの到達度をパーセンテージで算出し、レーダーチャートで実践能力が可視化されるようなしくみを導入していました。現在は、もっと日々の実践の中でラダーを活用できるように、このようなしくみ自体を見直ししている最中です。 今回は、新たに導入した新人教育プログラムの一部である「クリニカルラダーレベル1」についてお話しできればと思います。こちらが実際のラダーの一部です。 日々の実践を反映させ、ラダー評価ができるように工夫しています。例えば、この表においては、4つの力にそれぞれ①から④の番号を振り、「①-1」「①-2」…と細分化して、各項目の実践内容を具体的に書いています。ここに実践した日付を記載していくことで、日々の実践の中でラダーの項目を振り返りながら進めていくということができるんです。 篠田: それぞれの力に必要なOJTの内容が表示されており、それを実践したことを「振り返りシート」に記入するという、ラダーと実践が紐づけられたしくみも採用しています。これまではこの結びつきが非常に弱く、ラダーにおいて自分が目標達成に向け日々の実践で何をすべきかがわかりにくいものでした。また、評価が人事考課で行われ、半年に一度という頻度だったため、やはり日々の実践との結びつきという意味では非常に弱かったため、そういった点を改善しました。 初期は毎日、3ヵ月を過ぎたら1週間ごとなど、入社歴が浅いほど評価の頻度は高くなっています。「安全でかつ安心な訪問看護を提供する」というフェーズにいち早く届くよう、より細かく、より丁寧に評価するようにしているんです。「スモール・サクセス」とでも言いますか、細かく達成感を得られるようにしているんです。 ─「レベル1」は、いわゆる「新人さん」のプログラムとのことですが、なぜレベル1の教育プログラム整備を優先されたのでしょうか。 訪問看護の1年以内の離職率は15~18%と、病院の離職率の11%前後と比べても高めです。病院とは違い、一人で目の前のお客様に対応する力が求められる訪問看護では、総合的な技術を持ち、調整を完結できるレベルだと思える「自己効力感」がなければ継続できる領域ではありません。新人さんがより早く裏付けのある自己効力感を持つためにも、やはり共通の物差しとして、評価制度を整備する必要があると考えました。JNAラダーはすべての看護師に必要な実践能力です。地域で求められる訪問看護の役割をキャッチアップしつつ、体系的な教育システムとして質の高いケア提供の実践に繋げていく事が重要だと考えています。 なお、弊社は教育体制として「チーム支援型」を採用しており、そのチームの中で指導に立つメンバーに対しての研修も当然重要視しています。指導者を通してチームメンバーの評価や状況把握を行うなど、直接評価を伝えていたときとは異なる体制を整えつつあります。また、現状は「経験を通しての教育」を行っている状況ですが、順次整備していく予定です。 ―試行錯誤しながらの整備・運用だと思いますが、どのような部分に課題を感じていますか? 評価の段階は現在のところ3段階ですが、なにをもって「1」とするか「3」とするかの評価基準はあっても、評価者の経験や尺度によって変わってしまうことが課題ととらえています。病院では目の前で実践の評価がしやすい環境ですが、訪問看護は同行しないと実践の状況が確認できない環境です。評価者間での評価のバラツキが生じやすいことが課題と捉えており、整備していきたいと考えています。 ただ、考え方として押さえておきたいのは、ラダーはいわゆる「ラベル付け」のための評価ではないということです。評価すること自体が目的ではなく、あくまでも自身の成長のため、実践能力の評価・自己研鑽のツールであり、共通の物差しとして活用していくものです。厳しすぎる評価は成長を止めてしまう危険性もある。そうではなく、キャリア学習の支援、成長を促進につながるような評価制度にしたいというのが我々の願いです。 やはり病院よりも訪問看護は個別性が強くなりますので、「なにをもって」というのはお客様視点だと思います。病院であればキュアの視点で判断しやすいのですが、訪問看護は「生活」の視点をふまえた幅広いケアの視点が必要です。その人らしさを総合的に看るヘルスアセスメントが重要となり、すべての看護師に高い能力が求められます。訪問看護の特性を踏まえた上で、目の前のお客様のためにできることは何かを、さらに追い求めていく必要がありますね。 実績や頑張りが「見える化」されたという声 ─看護に直接携わるスタッフは、こういった評価制度をどのように捉えているでしょうか? 田中: 見えなかった部分が「見える化」されたというのは、スタッフにとって非常に大きいようです。訪問看護は病院と異なり、非常に主観的な評価に頼らざるを得ない側面がありましたが、ラダーを元に指導者とスタッフが面談を行うことで、「どう伝えたらいいのかわからない」「共通の物差しがなかった」という悩みがある程度解決できたという意味に受け止めています。それまで「報われなかった部分」ともいえる頑張りや努力が、評価に繋がっているということではないかと。現在、管理者に対するマネジメントラダーの作成も開始されていますし、さらに改善していけるといいなと考えています。 * * * 後編では、マネジメント層の評価制度についてお伺いします。 >>後編はこちら訪問看護のラダー&評価制度 マネジメント層に残る課題への取り組み 執筆: 倉持 鎮子取材・編集: NsPace編集部

膀胱エコーの活用
膀胱エコーの活用
特集
2023年7月11日
2023年7月11日

膀胱エコー 残尿を確認して排尿ケアに活かす 技術習得と活用法

排尿管理は訪問看護現場で直面する課題となっています。とくに膀胱エコーは訪問看護の現場で実施する必要性が高いと言われ、個々に応じた排尿管理やケアを行うことが可能です。 今回は、排尿ケアにポータブルエコーを導入し、実践を重ねているLIC訪問看護リハビリステーションの黒沢勝彦氏に、看護師のポータブルエコー技術習得の流れと実際の膀胱エコー活用事例についてお話を伺いました。 ポータブルエコー技術習得は基本的にOJT ポータブルエコーは現場に持ち出す前に、まずはスタッフ同士で練習を行い、正常な組織や臓器を知ることが一番の近道です。利用者さんの体型から膀胱の大きさを推測し、尿はどの程度貯留しているのかを確認します。膀胱は男性、女性で映り方が異なるので、膀胱や膀胱周辺の解剖について学んでおくことが大切です。 ポータブルエコー未経験のスタッフには、膀胱の見え方を伝えるより、身近にあるものを使用するとイメージしやすいでしょう。例えば、市販の果物ゼリーにポータブルエコーを当てて見ると、どのように描写されるのかを体験してもらうとスムーズかもしれません。まずは画像に描出される明るい部分と暗い部分を確認しながら、画像を見る練習を。その後、実際の膀胱を描出し、改めて画像の見え方について確認します。プローブや端末の扱い方は、後で振り返りを行いながら進めていきましょう。こうした流れを数回行った後にOJT(On the Job Training)に移行することが大切です。まずは同行訪問を行い、実際に利用者さんの膀胱をポータブルエコーで描出する様子を見せます。次に見守りのもとでポータブルエコーを用いて実施し、一人でできるようになるまでサポートし続けましょう。 カテーテル閉塞や点滴の効果が判明 ポータブルエコー画像の膀胱は、尿が貯留している時に黒く描出され、膀胱が大きくなっていることが分かります。一方、尿の貯留がない時は膀胱自体も小さくなっています。ですので、膀胱留置カテーテルが挿入されているにも関わらず、膀胱が大きく映し出された状態は、「カテーテルが閉塞を起こし、膀胱内に尿が溜ったまま」で異常だという判断ができます。そのためにも正常・異常の画像を理解しておくことが重要です。 カテーテル閉塞以外では、排尿状況が不明な利用者さんにポータブルエコーを使用して確認を行うことがありました。例えば、脱水のため点滴治療を行ったとき、その効果を確認するためにポータブルエコーを使います。まず、点滴治療前後の膀胱の大きさを比較し、尿の貯留が認められれば点滴治療の効果があると考えられます。他のバイタルサインと合わせてアセスメントすることで、在宅での治療継続が可能であるのか判断することができます。 従来は、試しに導尿してみたり、膀胱留置カテーテルをしている場合は交換してみたり、いずれも利用者さんの苦痛を伴い、コストや資源もかかっていました。これらの悩みに対して、ポータブルエコーは解決に導くツールのひとつとして、活用できるのではないでしょうか。見えない部分を可視化することで、正確なアセスメントが可能となり、医師と共有することで、適切な補液につなげたり、適切なタイミングで医療機関に受診することができたり、ひいては看護業務の改善につながると考えています。 がんターミナル期の尿閉をエコーですぐ確認 続いて、がんターミナル期にある利用者さんの事例を紹介します。自宅退院を希望され、訪問看護開始3日目で心窩部から下腹部の膨隆が顕著にみられました。その時は膨隆している原因が尿の貯留によるものだと分かりませんでした。 通常のアセスメントに加え、ポータブルエコーで画像を映し出して見ると、液体の貯留を確認しました。すぐに腹水か尿か判別できませんでしたが、「1日で貯留し、お腹の張り方がおかしい」と、そのままビジネスチャットツールに画像を上げました。スタッフと医師に共有し報告をしたところ、尿閉による腹部の膨隆であることが分かりました。そのため、すぐに医師に導尿、膀胱留置カテーテルの処置を依頼しました(図1)。 図1 「ポータブルエコー使用の一例」(提供:黒沢勝彦氏) 利用者さんのご家族にも、「尿はちゃんと作られていますが、出ない状態で苦しいと思います。出さないといけないですね」と、画像を一緒に見ながら具体的にお伝えすることができました。その後、医師に臨時訪問で処置していただき、尿の排出を促しました。 病院搬送の可能性もありましたが、お腹の張りを確認してから約2時間以内にケアにつなげることができました。訪問看護でできることを行えば、重症化を防げる可能性があります。 通常のアセスメントと画像を加えることで、アセスメントの妥当性が向上し、自信を持って医師に情報を共有し適切な治療、ケアにつなげることができると思います。 ポータブルエコーで残尿を減らせる姿勢に 最後は、残尿感の訴えや膀胱炎を数回繰り返すALS(筋萎縮性側索硬化症)の利用者さんの事例です。ご本人は排尿の自覚はありますが、腹圧をかけられないためご家族が腹圧を補助して排泄介助を行っていました。差し込み便器を用いて床上排泄を続けていましたが、以前より残尿感の訴えがありました。膀胱炎を疑い、訪問診療にて採血、尿検査を実施しましたが、膀胱炎の所見はありませんでした。 再び医師と解決策について検討することになり、排尿前後についてポータブルエコーで膀胱内を観察して見ると、残尿量はそれほど変化が見られませんでした。そのため、尿が排出できず膀胱内にたまっている状態であることが確認できました(図2)。 図2  「排尿前後を比較した画像」(提供:黒沢勝彦氏) また、膀胱の形は不均一・非対称であり、括約筋が確認できませんでした。このことから、膀胱壁の拡張収縮が弱いため残尿が起こりやすい状態であるとアセスメントしました。訪問診療の医師と画像を共有し、カテーテル留置を第一選択とせず、この根拠を元に姿勢で排尿量が変わるかどうかの調整を行いました。 まず排尿前後で残尿測定を行い、排尿時の姿勢を調整しながら再度ポータブルエコーで撮影を繰り返していきます。そのように進めながら、最も残尿が少ない体位を理学療法士と一緒に模索をしながら調整していきました。 その結果、一時的に残尿量を減らすことができました。排尿ケアは決まった時間で行うわけではありません。ケア提供者はご家族やホームヘルパーなど複数名が関わります。姿勢や介助方法の再現性には課題がありましたが、エコーの画像を用いて丁寧に説明することで再現性を高めることができました。 この事例ではポータブルエコーによって、残尿量や膀胱の形状、変化などをご家族と確認できたことで、説得力が増し、安心されたことを実感しました。そして、ご家族やヘルパーもケアの根拠を確認しながらともに考えることができました。 一方で、ご家族は「残尿はないはず」と信じていたので、排泄のたびに腹圧を補いながら介護を続けてきました。そのため、ポータブルエコーが残尿の事実を突きつけることで、自らの介護を「否定された」と受け止められてしまう可能性も考えられるでしょう。24時間、1日何度も排泄介助を続けていくご家族の大変さと複雑な思いにも配慮しながら、ポータブルエコーを採り入れていくことが必要です。 取材協力・監修黒沢勝彦氏(LIC訪問看護リハビリステーション 所長)編集:メディバンクス株式会社

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