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アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説
アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説
特集
2025年1月21日
2025年1月21日

アルコール依存症とは?原因・症状・対処法・訪問看護の注意点を解説

アルコール依存症は、長期間にわたる飲酒習慣によって精神的・身体的な機能が損なわれ、症状が進むと日常生活に支障をきたす精神疾患です。 本記事では、アルコール依存症の症状から原因、合併症、訪問看護が介入する際の注意点まで詳しく解説します。アルコール依存症の疑いがある利用者さんやそのご家族のアセスメントにぜひお役立てください。 アルコール依存症とは アルコール依存症は、長期的かつ多量の飲酒によって精神的・身体的にアルコールへの依存状態が形成される精神疾患です。アルコールが生活の中心となり、耐性がつくことで飲酒量が増加し、自分の意志で飲み方をコントロールすることが難しくなっていきます。世界保健機関(WHO)が制定した国際疾病分類第10版(ICD-10)でも「精神および行動の障害」として正式に認められている疾患です。 アルコール依存症は年齢や性別を問わず、誰でも発症する可能性があります。長期間にわたって飲酒を続けることで、「飲酒したい」という欲求を抑えることが難しくなるほか、アルコールが体から抜けた際に手の震えや発汗、悪寒などの離脱症状(禁断症状)が見られるようになります。 アルコール依存症の方は「特徴的な顔つきになる」との噂がありますが、そのような事実はありません。肝機能の低下によって黄疸が出ている場合、顔が黄色く見えることがありますが、黄疸だけでアルコール依存症は判断できません。ただし、妊娠中に母親がアルコールを摂取した場合に出現することがある胎児性アルコール症候群(FAS)や胎児性アルコール・スペクトラム障害(FASD)では、胎児期の顔面の形成不全により特徴的な顔つきとなります。 アルコール依存症の原因 アルコール依存症の原因はさまざまで、複数の要因が絡み合っていることも多くあります。 年齢と性別 若年齢から飲酒を始めるとアルコール依存症になりやすいといわれています。アルコール依存症は性別に関係なく発症しますが、飲酒機会の多い男性のほう有病率は高いです。ただし、アルコール分解酵素の量や女性ホルモンの関係で、女性のほうが依存症に陥るまでの期間が短いとされています。 家庭・職場の環境 アルコール依存症の親を持つ子どもはリスクが高いとされているほか、保護者の飲酒態度や虐待、家庭不和などが依存症を助長することもあります。家庭外の職場や友人関係でも、飲酒を助長する環境があればリスク要因になるでしょう。 他の精神疾患 うつ病や不安障害などの精神疾患との併存率が高く、若年の女性患者の場合は摂食障害との併存も多く見られます。他の精神疾患がもとで飲酒を繰り返して、依存症に陥ることがあります。 ※アルコール依存症をきっかけに他の精神疾患を併発するケースもあります。 アルコール依存症の進行度(段階)別の症状 アルコール依存症の精神依存症状としては、飲酒への強い欲求やそのコントロールの喪失、1日の大半の時間を飲酒に割く、飲酒以外の娯楽を無視する、精神的・身体的問題が悪化しているにもかかわらず節酒・断酒をしないなどの行動があります。 身体依存症状としては、飲酒の中止や減量によって離脱症状(禁断症状)が現れたり、「もっと酔いたい」という欲求によって飲酒量が増加したりします。離脱症状の具体例として、手指のふるえや発汗、悪心・嘔吐、不安、イライラ、不眠などがあり、重症化するとけいれんや幻覚が現れることもあります。 アルコール依存症は、以下のように進行します。 段階症状の特徴1段階 (機会飲酒)特定のイベントや会合で時々飲酒する程度で、日常的には依存はない2段階 (習慣飲酒)●日常的に飲酒するようになり、お酒に強くなる●飲酒が生活の一部となる※頻繁に記憶を失う(ブラックアウト)する場合は注意が必要となる        3段階 (軽度のアルコール依存症)      ●お酒がないと物足りなさを感じ、飲酒量が増える●軽い酔いでは満足できなくなる              4段階 (依存症初期)●健康診断で飲酒量を少なく報告するようになる●飲酒を控えるよう周囲から注意される●飲める時間になるまで待てず、落ち着かない状態が続く●飲まないと不眠に悩まされる●アルコール切れで発汗や悪寒など風邪に似た症状(離脱症状)が現れる  5段階 (依存症中期)●迎え酒(二日酔いの悪い気分を治すために飲むお酒)をする習慣が定着する●飲酒のために嘘をついたり隠れ飲みをしたりする●お酒が原因のトラブルが繰り返される●節酒を試みても失敗する6段階 (依存症後期)●アルコールが切れることなく連続的に飲酒するようになる●幻覚や重篤な離脱症状、肝障害などが進行し、仕事や日常生活が困難になる アルコール依存症の合併症 アルコール依存症は、広範な機能に影響を与え、さまざまな合併症を引き起こします。 肝臓への負担 長期間の飲酒は肝細胞の破壊を引き起こし、肝硬変や肝性脳症の原因となります。肝性脳症は、血液中のアンモニア濃度が上昇することで意識障害をもたらし、最悪の場合、昏睡状態に至ることもあります。 心血管系への負担 アルコールの過剰摂取は心血管系への負担も大きく、アルコール性心筋症の発症リスクが高まります。 栄養欠乏 アルコール依存症によってビタミンB群(B1、B12、葉酸)が欠乏しやすく、貧血や神経障害が悪化するほか、免疫力の低下により肺炎や敗血症などの感染症にかかりやすくなります。また、亜鉛やビタミンD不足による骨粗しょう症のリスクも増大します。 【監修・豊田先生のワンポイントチェック】 なぜアルコール依存症で栄養欠乏やビタミン不足に?アルコールには膵外分泌刺激作用があり、大量に飲酒すると、膵液が十二指腸に排出しきれず膵管内に溜まり、膵管内圧が上昇します。そして、膵管から漏れ出した消化酵素が膵臓を自己消化し、膵臓に炎症が起こります。この状態が続き、慢性膵炎になると、膵臓の機能低下が起こり、消化酵素の分泌が悪くなります。膵臓から分泌されている消化酵素は腸の栄養素の吸収に関与しているため、分泌が悪くなることで栄養不足やビタミン不足が起こります。加えて、アルコール依存症の方はお酒を多く摂取し、食事をあまり摂らない傾向にあるため、一層栄養不足に陥りやすくなります。また、ビタミンB1はアルコールを代謝する際に必要なため、アルコールを大量に飲むとたくさんのビタミンB1が消費されます。膵臓の機能低下によりビタミンの吸収率が悪くなっている状態下で、たくさんのビタミンが使われると、需要と供給のバランスが崩れ、ビタミン不足に陥ります。 アルコール依存症のチェック方法 アルコール依存症のチェック方法として、1990年代初頭に世界保健機関(WHO)が支援して開発したスクリーニングテスト「AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)」が広く用いられています。AUDITは10項目からなる自記式のテストで、各質問に対して0点から4点のスコアが与えられます。 テスト全体の合計点は0点から40点の間で評価され、得点に応じて飲酒問題の深刻度を判断します。日本では、アルコール依存症と診断する点数として15点を目安にしています。 各質問と回答については下記のとおりです。 問質問回答1あなたはアルコール含有飲料を、どのくらいの頻度で飲みますか?0:飲まない 1:月に1回以下2:月に2〜4回 3:週に2〜3回4:週に4回以上2飲酒をする時は、通常どのくらいの量を飲みますか?【基準】日本酒1合=2ドリンクビール大瓶1本=2.5ドリンクウィスキー水割りダブル1杯=2ドリンク焼酎お湯割り1杯=1ドリンクワイングラス1杯=1.5ドリンク梅酒小コップ1杯=1ドリンク0:1〜2ドリンク1:3〜4ドリンク 2:5〜6ドリンク 3:7〜9ドリンク 4:10ドリンク以上     3一度に「6ドリンク以上」飲むことが、どのくらいの頻度でありますか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日      4過去1年間で、飲み始めると止められなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日5過去1年間に、普通ならできるようなことが、飲酒していたためにできなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日6過去1年間に、深酒の後の体調を整えるため、朝に迎え酒をしたことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日7過去1年間に、飲酒後に罪悪感や負い目を感じたことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満 2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日8過去1年間に、飲酒のために前夜の出来事を思い出すことができなかったことが、どのくらいの頻度でありましたか?0:ない1:月に1回未満 2:月に1回3:週に1回4:毎日、ほとんど毎日9飲酒によって、あなた自身かほかの誰かが怪我をしたことがありますか?0:ない2:あるが、過去1年間にはなし4:過去1年間にあり10家族や親密な友人、医師、あるいはほかの健康管理にたずさわる人が、あなたの飲酒について心配したり、飲酒量を減らすようにすすめたりしたことがありますか?0:ない2:あるが、過去1年間にはなし4:過去1年間にあり出典:e-ヘルスネット(厚生労働省)「AUDIT」 アルコール依存症の対処法 アルコール依存症の治療は「解毒治療」「リハビリ治療」「アフターケア」の3段階に分かれており、個人の状態に応じて治療計画を立てます。治療の目的は、身体的・精神的な健康を回復させ、再飲酒のリスクを防ぎながら、社会復帰を目指すことです。 解毒治療 アルコールを体から排出する過程で生じる離脱症状の管理と、アルコールによって引き起こされた合併症への対応を行います。 リハビリ治療 個別カウンセリングやグループ療法によって自らの飲酒問題を直視し、断酒への意欲を高めることを目指します。アフターケアでは、医師のサポートと薬物療法による安定した精神状態の維持を目指し、自助グループでの仲間との交流も促します。 アルコール依存症の訪問看護の注意点 アルコール依存症の方の訪問看護を行う際は、次の注意点を押さえましょう。 病識の欠如に対する配慮 アルコール依存症は「否認の病」といわれることもあり、利用者さんは自分が病気であるという認識が乏しく、治療を拒否するケースもが多く見られるでしょう。無理に病識を押し付けようとすると、利用者さんの拒否感が強まり、治療への意欲が低下する可能性があります。利用者さんのペースに合わせた働きかけが必要です。 信頼関係の構築に時間をかける アルコール依存症の利用者さんは、孤独感を抱えやすく、他者への不信感が強いケースが多々見られます。信頼関係を構築するには時間と忍耐が必要で、急いで関係を築こうとすると逆効果になる場合も。焦らず時間をかけて接し、小さな変化を見逃さない、利用者さんの感情に寄り添い無理な介入を避ける、といったことを心がけましょう。 再飲酒・再発のリスク管理 アルコール依存症の方は、生活の中で再飲酒するリスクが常にあります。アルコール依存症の再発を防ぐためには、訪問看護師が環境を整備しつつ、利用者さんの変化を慎重に観察する必要があります。利用者さんの行動や表情の変化を細かく把握して早期介入し、飲酒の誘惑となる要素(人間関係や環境)を事前に特定して対策を考えていきましょう。 ご家族への病識の理解と協力の促し アルコール依存症からの回復にはご家族の協力が欠かせません。日常生活でのサポートや励ましはもちろん、再飲酒しそうになったときの対処も重要な役割です。 ご家族にとっては、利用者さんが断酒を続けられないことに対し、怒りや失望を感じることも少なくありません。しかし、アルコール依存症は個人の意志の弱さではなく、医療的な治療が必要な病であるという認識を持つことが必要です。アルコール依存症の治療は長期にわたるものであり、利用者さん本人だけでなくご家族にも大きな負担がかかります。そのため、訪問看護師は本人だけではなくご家族にも寄り添う姿勢を持つことが大切です。 * * * アルコール依存症は、一度発症すると長期間にわたる治療とサポートが必要な病気です。本人だけでなく、家族や支援者の理解と協力が治療成功の鍵となります。訪問看護においても、信頼関係の構築、病識の共有、再発リスクの管理といった要素を丁寧に進めることで、回復を促すことができるでしょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:豊田 早苗とよだクリニック院長鳥取大学卒業後、JA厚生連に勤務し、総合診療医として医療機関の少ない過疎地等にくらす住民の健康をサポート。2005年とよだクリニックを開業し院長に。患者さんに寄り添い、じっくりと話を聞きながら、患者さん一人ひとりに合わせた診療を行っている。 【参考】〇厚生労働省「アルコールと依存」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-05-001.html2024/1/17閲覧〇厚生労働省「アルコール依存症の危険因子」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/alcohol/a-05-003.html2024/12/13閲覧〇厚生労働省「AUDIT(おーでぃっと)」https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/alcohol/ya-021.html2024/12/13閲覧

「パーキンソン病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
「パーキンソン病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
特集
2025年1月14日
2025年1月14日

「パーキンソン病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回はパーキンソン病について、訪問看護に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 パーキンソン病の基礎知識 パーキンソン病は、中脳の黒質にあるドパミン産生細胞が徐々に減少する神経変性疾患です。1817年イギリスのジェームズ・パーキンソンにより初めて報告されました。加齢は主要な危険因子で、60歳を超えると罹患率が増加します。罹患率は人口10万人あたり約150人です1)。 パーキンソン病の4大症状 パーキンソン病には4つの代表的な運動症状があります。安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害です。 安静時振戦 安静時の振戦は左右非対称で、逆N字型(またはN字型)に進行します(図1)。例えば、右手→右足→左手→左足という順番で振戦が起これば、逆N字型進行です。 図1 逆N字型・N字型進行 固縮 体幹や手足がこわばります。上肢に歯車現象、下肢に鉛管様固縮を認めます。 無動 無表情となり、素早く動くことが困難になってしまう症状です。字を書くと次第に字が小さくなります(小字症)。歩行は前かがみで、最初の一歩を踏み出すことが難しく(すくみ足)、歩幅が小さくなったり(小刻み歩行)、歩行スピードは次第に速くなったり(加速歩行)、停止が困難になったりします(前方突進現象)。また、腕の振りが減少し、方向転換が難しくなるといった症状もみられます。 姿勢反射障害 体が傾いたときに姿勢を立て直すことができなくなり、転倒しやすくなります。 訪問時における病歴聴取/身体所見のポイント パーキンソン症状(パーキンソニズム)は非常によく遭遇します。身体所見の評価ポイントを復習しておきましょう。 顔の表情が乏しくなります(仮面様顔貌)。嚥下しないため、唾液がこぼれます。ベッドで斜めに寝る、斜めに体を傾けて座ります(斜め徴候)。眉間を繰り返し叩打したとき、瞬目が持続します(マイアーソン徴候)。歩行時に前傾姿勢、すくみ足、小刻み、すり足、前方突進現象、腕をふらないといった症状がみられます。方向転換ではまるで銅像が回転するようにぎこちなく回ります。狭い場所での方向転換が困難となるため、トイレの使用が非常に難しくなります。手を叩いてリズムをつけたり、床に一定の間隔で線を引いたりすると歩きやすくなります。上肢を肘関節で屈曲させると、歯車を回転させるときのようなカクカクとした抵抗を認めます(歯車現象)。下肢を膝関節で屈曲や伸展させると、鉛管のような硬さを感じます(鉛管様固縮)。 非運動症状にも注意 上記の運動症状が出現する数年前から非運動症状が出ることも知られるようになりました。早期診断の観点からも非運動症状も知っておくとよいでしょう。 嗅覚の低下(コーヒーや石けんの臭いが分からなければ疑う)便秘うつ症状起立性低血圧不眠や日中の過眠むずむず脚症候群(脚がむずむずしてじっとしていられなくなます)REM(rapid eye movement)睡眠行動障害(睡眠中に大声で叫んだり、隣に寝ている人を殴ったり、壁を蹴るなど) パーキンソン症候群とは パーキンソニズムは、パーキンソン症候群と呼ばれるパーキンソン病以外の疾患でも起こります。パーキンソン症候群には以下の疾患があります。 薬剤性パーキンソニズム向精神病薬(抗精神病薬、抗うつ薬)、消化性潰瘍薬(スルピリド)、制吐薬(メトクロプラミド、ドンペリドン)がよく問題になります。高齢者では常用量でも、しばらく飲んでいるとパーキンソニズムを起こしてくるため注意が必要です。脳血管障害性パーキンソニズム脳梗塞や脳出血が原因のパーキンソニズムで、下肢の固縮が強く、開脚で「逆ハの字」歩行(図2)となります。正常圧水頭症軽い認知症、歩行障害、尿失禁が特徴です。正常圧水頭症の歩行も開脚で「逆ハの字」となります。神経変性疾患レビー小体型認知症や進行性核上性麻痺、多系統萎縮症、大脳皮質基底核変性症があります。 図2 パーキンソン病と脳血管障害性パーキンソニズムおよび正常圧水頭症の歩行の違い 脳血管障害性パーキンソニズムと正常圧水頭症では、開脚歩行で「逆ハの字」となるのが特徴です。 安静時振戦なし、左右対称の振戦、進行が早い、早期から転倒を繰り返す、治療薬(L-ドパ製剤)に反応が乏しい場合は、パーキンソン病ではなくパーキンソン症候群の可能性が高いです。 診断 パーキンソン病の診断は厚生労働省の診断基準に基づいて行われます2)。 <診断基準> 以下の診断基準を満たすものを対象とする。(Probableは対象としない。)1.パーキンソニズムがある。※12.脳CT又はMRIに特異的異常がない。※23.パーキンソニズムを起こす薬物・毒物への曝露がない。4.抗パーキンソン病薬にてパーキンソニズムに改善がみられる。※3以上4項目を満たした場合、パーキンソン病と診断する(Definite)。なお、1、2、3は満たすが、薬物反応を未検討の症例は、パーキンソン病疑い症例(Probable)とする。※1.パーキンソニズムの定義は、次のいずれかに該当する場合とする。(1)典型的な左右差のある安静時振戦(静止時振戦:4~6Hz)がある。(2)歯車様強剛、動作緩慢(運動緩慢)、姿勢反射障害(姿勢保持障害)のうち2つ以上が存在する。※2.脳CT又はMRIにおける特異的異常とは、多発脳梗塞、被殻萎縮、脳幹萎縮、著明な脳室拡大、著明な大脳萎縮など他の原因によるパーキンソニズムであることを明らかに示す所見の存在をいう。※3.薬物に対する反応はできるだけドパミンアゴニストまたはL-dopa 製剤により判定することが望ましい。文献2)より引用 治療 パーキンソン病の進行を遅らせる薬はありません。ドパミンの前駆物質であるL-ドパ製剤を中心としたドパミン補充療法が行われます。L-ドパ製剤は脳の中でドパミンに変換されて効果を出しますが、病気が進行すると効果持続時間が短くなります。副作用として嘔気があります。 若い患者にはドパミン受容体刺激薬(ドパミンアゴニスト)が用いられます。副作用で突発性睡眠や眠気、欲望が抑えられない症状が発現することがあります。最終的にはすべての患者にL-ドパ製剤が処方されることが一般的です。 REM睡眠行動障害は、パーキンソン病、レビー小体型認知症、多系統萎縮症に合併することが多いです。クロナゼパムが著効します。 最新トピックスパーキンソン症状が進行した場合、脳深部刺激療法(deep brain stimulation:DBS)と呼ばれる手術療法が行われることがあります。DBSとは、脳内に留置した電極と前胸部に埋め込んだ刺激発生装置を接続し、脳内の標的部位に弱い電気刺激を行うことで症状を改善する治療法です3)。 ●パーキンソン病には4つの代表的な症状(安静時振戦、固縮、無動、姿勢反射障害)があります。●運動症状がでる数年前から非運動症状(嗅覚低下、便秘、うつ症状、起立性低血圧)が起こります。●安静時振戦なし、左右対称の振戦、進行が早い、早期から転倒を繰り返す、治療薬(L-ドパ製剤)に反応が乏しい場合は、パーキンソン病ではなくパーキンソン症候群を疑います。 執筆:山中 克郎福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 特任教授、諏訪中央病院 総合診療科 非常勤医師、大同病院 内科顧問 1985年 名古屋大学医学部卒業名古屋掖済会病院、名古屋大学病院 免疫内科、バージニア・メイソン研究所、名城病院、名古屋医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授/救命救急センター 副センター長、諏訪中央病院 総合診療科 院長補佐、福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 教授を経て現職。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)一般社団法人日本神経学会:パーキンソン病 疫学.https://www.neurology-jp.org/public/disease/parkinson_detail.html2024/12/13閲覧2)難病情報センター:パーキンソン病 診断基準.https://www.nanbyou.or.jp/wp-content/uploads/upload_files/File/006-202404-kijyun.pdf2024/12/13閲覧3)横浜市立大学附属市民総合医療センター:パーキンソン病治療〜世界で初!アダプティブDBS機能を使用した当院のDBS治療の取り組み〜 Part 2.2024/09/06.YouTube.https://youtu.be/2v5mI--3AIQ?si=-AuVhhB5IU9mMOQT(横浜市立大学附属市民総合医療センター:パーキンソン病治療〜世界で初!アダプティブDBS機能を使用した当院のDBS治療の取り組み〜.2024.https://www.yokohama-cu.ac.jp/urahp/medical/medicalnews/parkinson.html2024/12/13閲覧) 【参考文献】○上田剛士編著:パーキンソン症候群.高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス,シーニュ,東京,2014:101-115.○鈴木則宏:神経診察クローズアップ 正しい病巣診断のコツ 改訂第2版.メジカルビュー社,東京,2015.

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A
特集 会員限定
2024年12月24日
2024年12月24日

特別先行公開! 足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~ セミナーQ&A

2024年10月25日(金)に開催したNsPaceオンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」では、重症な足病変の予防やケアについて、倉敷市立市民病院 形成外科医長 小山晃子医師が解説。今回は、セミナー時に寄せられたご質問について、特別に小山先生に回答いただきました。 なお、本記事はQ&Aの抜粋版です。完全版はお役立ちツールにてダウンロード可能ですので、そちらもぜひご利用ください。 【セミナー講師/質問回答】 小山 晃子 氏倉敷市立市民病院 形成外科医長平成16年 高知大学卒 倉敷市立児島市民病院にて臨床初期研修終了平成18年 川崎医科大学付属病院 形成外科・美容外科にて 褥瘡、創傷治癒を学ぶ平成24年より現職入院・外来・在宅で医療を行いながら、医療者、介護者、市民を対象としたセミナーを行い、褥瘡・フットケアの「ミカタ」を増やすべく活動中です。 ■お役立ちツールも公開! お役立ちツール『「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧』では、より多数のご質問への回答を読むことができます。ぜひご活用ください。>>「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 足の洗浄について <Q1>・セミナーでは、「血流がない場合は足を洗ってはいけない」とおっしゃっていましたが、なぜでしょうか?感染が広がるためでしょうか。湿潤や摩擦、温度が影響するためでしょうか。 ・血行不良の状態で洗うと、どういう機序で悪化するのでしょうか。 「血流がない足=すべて洗ってはいけない」というメッセージを受け取られた方が多いようで、私の説明不足を反省しています。漫然と洗浄してはいけないのは、傷のある血流のない足です。 ミイラ化を目指している場合には、極力組織の水分を減らしたいため、当然洗浄は避けます。血流の乏しい足の傷に壊死した皮膚皮下組織、腱などの血流のない組織が露出しているケースを想定してみましょう。血流がない(免疫細胞が到達しない)組織は、血流がある(免疫細胞が到達できる)生きた組織・人体側と接しています。その二つの境界で、人体側はゆっくりと傷を治そうとしています。この状態で血流がない組織に水を含ませると、その組織は細菌にとってのよい培地(湿気と温度がある環境)になってしまいます。生きた傷の表面に、細菌培地で「湿布」することになるので、水分を避けることが望ましいと考えています。 壊死組織がなく、傷のある血流の乏しい足については、漫然と洗わないでいただきたいです。洗ってそのままにするのではなく、翌日以降 痛みの訴え浸出液傷の周囲の腫れ壊死組織 等の変化がないかを見て、洗浄したことの功罪を慎重に判断してください。 <Q2>・患部を避けた清拭や入浴、シャワー浴は可能ですか? ・血流がなく壊疽して感染している場合の洗わないケア方法を教えていただきたいです。 患部を避けた入浴、シャワー、清拭は可能です。 血流がなく感染しているときは、ケアではなく、キュア(治療)が必要です。抗菌薬全身投与、局所処置(浸出液の除去、消毒)、疼痛管理などの治療を行います。 <Q3>月に1、2回の訪問をしている独居の方で、足病変があった場合、医師に処置の指示を依頼し、洗浄をするために訪問頻度を増やしたほうがいいでしょうか。毎日が難しい場合は、最低限どれくらいの頻度で洗浄が必要ですか? 自分で足が洗えない方だと理解をしました。靴下を履き替えるだけでもいいのではないかと思っています。 足病変があった場合、血の巡りがあるのかないのか、傷の深さがどうか、感染を起こしているかどうか、といったような専門の判断を一度受けて、みんなで「治療の組み立て」をしてからどれぐらいの頻度で看護師さんに助けていただくのが良いか、考えたいです。 「最低限」ということであれば、靴下を毎日履き替えるっていうことを、頑張ってみたらいかがでしょうか。清潔が何よりです。 ミイラ化について <Q4>血流障害の方は洗浄をしてはいけないとのことですが、ターミナル期で治療をしない方は、何もせずミイラ化を見守るだけでよいのでしょうか?軟膏塗布などの処置だけなのか、看護師がやるべき処置があったら教えていただきたいです。 ミイラ化を目指す場合、放置はすすめません。ターミナル期でも、目と手をかけることを続けていただきたいです。まずは、十分な除痛を行うことが最優先です。ミイラ化をしていく過程で生体と壊死部分の境目から浸出液が出る場合は、その境目をポビドンヨード液で清拭します。浸出液が多いときは、オムツパッド等で患部をふんわり巻いて、寝具が汚染したり、においで利用者さんやご家族が不快な思いをしたりしないよう配慮します。におい対策にはストーマ用のスプレーも有効です。 処置は、基本的に「シンプル」にすることも重要です。ターミナル期の利用者さんの大切な時間を浪費しないよう配慮してください。軟膏を使用した場合、次回の処置で落とす必要があります。落とすのに苦労するような種類の軟膏(ワセリン基剤のものは堆積します)は避けるようにしましょう。 足に傷・潰瘍がある場合について <Q5>訪問で、最初に創を見つけたとき、何をしたらよいのでしょうか?もちろん受診をすすめますが、すぐに行けない場合はそれまでどう手当てしたらよいのでしょうか?微温湯での洗浄もいけないのでしょうか。 初回の訪問では、まず微温湯で洗浄して足をよく観察していただくのがよいと思っています。よく見た結果、傷を見つけたら、以下の対応でよいと思います。 血流のない足は1日単位で悪化する可能性があるので直ちに受診をすすめる(少なくとも写真を病院に届けて、相談)血流に問題のない足は通常の創処置をし、1週間ごとの評価をする 保清・軟膏について <Q6>黒色壊死の方は洗ってはだめでしょうか?精製白糖・ポビドンヨードを使う場合が多いですが、微温湯洗浄をして処置をしていました。 血流があり、黒色壊死部をどんどん浸軟させて除去(物理的デブリードマン)したいときには、しっかり洗うこともあります。洗浄と併せて精製白糖・ポビドンヨードを使用し、浸出液の吸収と、抗菌を図ります。いずれにしても、行った処置の結果、傷が治癒傾向なのか悪化傾向なのかをしっかりと「見る」こと、悪化傾向の場合に主治医に伝えることが肝要です。 <Q7>・血流の悪い足を洗わない場合、毎日処置する際は軟膏の除去などはどうしたらよいのでしょうか?当院では基本的にほとんどの傷をしっかり洗浄するように指示があり、血流が悪い足の場合で血行再建前でもしっかり洗浄していました。 ・血流が悪い方の下肢の創処置を行う際に 医師からは洗浄し軟膏処置(ヨウ素軟膏)の指示が出ます。洗浄できない血流の悪い足の場合、軟膏を落とすためにはどのような方法が適切でしょうか? 病院で、「きれいな水がある」「しっかりと水分を拭き取ることができる」「十分な量の滅菌ガーゼがある」「毎日観察ができる」「すぐに医師に相談できる」環境があれば、創が悪化していかない限り、洗浄可能だと思います。一方、在宅においては衛生資材、観察環境、病院へのアクセスに制限のある環境を想定し、リスクヘッジのため無闇に洗わないことをおすすめしています。 また、洗浄の際に落としやすい軟膏を選択することも医師の責務だと考えています。ヨウ素軟膏を使っているということは、浸出液が多く、感染を制御したい傷があるということですね。浸出液が多いということは、血流はさほど悪くないと逆算できます。洗い流してよろしいのではないかと思います。 ウオノメ、タコのケア方法について <Q8>・市販のタコ、ウオノメ用シール(サリチル酸絆創膏)を使う際の注意点はありますか? ・毎日観察できるわけではないため心配な面もありますが、在宅でサリチル酸絆創膏を使用することについての先生のご意見をいただきたいです。 少しでもそのウオノメ・タコ自体を柔らかくして対処しやすくしてあげようという考えであれば、尿素配合クリームやサリチル酸を塗っていただくとよいと思います。ただし、皮膚を少しただれさせるような効果もありますので、周りの薄い皮膚には塗らないように、ウオノメ・タコのところだけピンポイントで塗るようにお願いします。 ウオノメシールを貼るときは、肥厚している角質よりも一回り小さく切って貼って下さい。3日ほど貼りっぱなしにすると浸軟した角質がとれやすくなります。シールを固定するためのテープでまわりの皮膚を損傷しないようにすることも注意しましょう。 ただし、シールは「その場しのぎ」で、前述のとおり外力の除去が根本的治療です。極論ですが、「寝たきり」になったら足の裏のウオノメ、タコは「完治」します。外力を減らせるような履物を使うことを強くおすすめします。 爪切り、爪のケアについて <Q9>・爪白癬、肥厚爪についてケアのしかたを教えてください。・かなり肥厚している爪を小さくするために在宅で簡単に用意できるものはありますか? ・ワルファリンカリウム錠を服薬中のため、ニッパーは避けてヤスリがけをしています。ほかによい方法はありますか? 爪が非常に分厚くなっていて、どこから手をつけたらいいか分からないというような爪の方も本当に多くいらっしゃると思います。在宅で、簡単に肥厚爪に取り組むことはなかなか難しいことかもしれません。 爪切りをする前に、まずは必ず「血流があるかないか」を見てください。血流がある方に対して爪切りをする前提でお話をします。私の場合は、爪切りにはニッパーを使います。十分に明るい環境で、切りやすい方向から、少しずつ爪切りをすることを心がけています。 その時に、爪の甲がどのように変形しているのかのイメージをしっかりと持ちましょう。爪白癬の場合、爪がバームクーヘンのように層になっているので、そのバームクーヘンの層を1枚ずつ剥がすようなイメージで、ニッパーを層と層の間に入れていただくとポロッと剥がれると思います。そのようにして使ってみてください。大まかなところをニッパーで減量して、爪床が近くなってきたなと思ったら、ヤスリで整える…という風に手当てをしていただければと思います。 <Q10>白癬により爪が剥がれた場合の対処方法を教えてください。 あまりに白癬がひどいと、爪の根まで白癬菌が食べてしまい、爪の甲がぽろっと自然と取れてしまうという現象が起こることがあります。この場合、剥がれた後に出血していなければ、そのままで結構です。剥がれた後に爪床や爪母の部分に傷があったら、消毒などをしてください。 実は、白癬の分厚い爪が指先から取れたということは、「白癬菌のお家がいなくなった」ということなので、爪の表面にいる白癬菌の量は確実に減っています。ここをチャンスとして爪の水虫の治療をすると、分厚い爪の甲に塗るよりも塗り薬の効き目が早くしっかりと出ます。傷が治った後に爪白癬、水虫の薬をしっかり塗って、水虫菌をしっかりとやっつけてあげてください。 <Q11>・反っている小さい爪のケアについて教えてください。・寝たきりの児童で、肥厚して足背側にどんどん反沿ってしまうので、とりあえずやすりをかけていますが、それがいいのか悪いのかも分かりません。 例えば、この患者さんの右足の第3趾と左足の2、3趾が反り爪で、4趾も少し反り爪っぽくなっています。このちゃんと踏めない指の爪が反ってくるということを時々経験します。この方も含めて、反り爪は爪の甲がブリッジしたようになっており、爪先が指の近位側、体の中心に近い側にあります。 そのため、そこの部分に注意しながら細い爪切りで切っていただくのが、最も手っ取り早くて、患者さんの指の痛みを除去できる方法じゃないかなと思っています。 なので、この爪の先を、できたら気を付けてニッパーややすりで切っていただくっていうことをやってみてください。爪先側に、指先側に爪先がないので、よく見てどこを切るかをよくよく考えながら対応していただけるとありがたいです。 <Q12>爪の同じところに亀裂が入ります。治す方法はありますか? 爪甲の縦方向の亀裂は(1)爪甲に白癬などの感染を起こしている(2)爪床の変形(3)爪母に腫瘍ができているということが理由として考えられます。 一方、爪甲に横方向の亀裂が生じる場合、その原因が爪甲に限られることはまれで(1)爪床の変形(2)爪母全幅の問題 a:抗癌剤などで爪母の爪甲製造能力が一時的に衰えていた b:爪甲を伸ばしすぎたことで爪甲の自由縁を圧迫され、爪母に圧が加わったことで 製造された爪甲に横皺を形成した等の状況がよくみられる状態です。 また、爪甲先端のひび割れ・剥がれの場合は過度の乾燥が考えられます。それぞれの原因に対処することで爪の亀裂が改善する可能性があります。 医師との連携について <Q13>・医師への報告のしかたについて教えてください。 ・看護師からの報告について困るケース、助かるケースを知りたいです。 私たち形成外科の領域は特に、傷の状態を見れば何が起こっているかが分かるという場合が本当に多いです。そのため、報告のしかたとしては、ぜひ写真に撮って見せていただきたいです。写真を撮る際のポイントとしては、足の全体像と病気があるピンポイントの部分の2種類を撮ることです。その2種類をいただくと、何かお役に立てることが多いです。また、写真からは伝わりませんがぜひ伝えていただきたい情報が、「血流」です。「この人の足は冷たいです。そしてこのような症状が出ています」と写真を添えて相談していただけると本当に助かります。写真を撮った日付もお願いします。 また、セミナーでも申し上げたとおり、体にできた傷は基本的には治ります。治らない傷には、治らない理由があります。その理由を見つけて取り除かない限りは、傷は「治りたくても治ることができない」んです。様子を見る期間は2週間です。皆さんが困って、あるいは主治医の先生が何か対応を始めて、それでも2週間経ってなかなか治らない傷には、理由が必ずあります。その治ることができない理由を、もしかしたら形成外科の医師は見つけることができるかもしれません。なので、2週間やってみて難しいケースは、傷を診る専門の先生にぜひ繋いでいただきたいんです。 NsPace読者の方は全国にいらっしゃるので「困ったら私に見せてください」といういつもの逃げ口上が言えないのですが、皆さんの地域にも形成外科はきっとあると思います。皮膚科の先生の中にも足の傷を診ることに長けた先生はいらっしゃるし、糖尿病専門の先生の中に足の傷まで診てくれる先生も全国に散らばっています。 フットケア・足病医学会のホームページを見ていただけると、どんな先生が頼りになるのかのヒントがありますので、ぜひ一度勇気を持って「困ったときには相談に乗ってもらえませんか?」という風に一度声を掛けていただいて、そして本当に困ったときには写真を持って、血の巡りの有無を添えて、相談していただければと思っています。 * * * 後日、オンラインセミナー「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」の講義内容をダイジェストにしたレポート記事も公開いたします。ぜひそちらもご覧ください。 >>シリーズ一覧はこちら「足のミカタ~重症化を防ぐフットケア~」セミナーレポート>>お役立ちツールはこちら「足のミカタ ~重症化を防ぐフットケア~」Q&A 一覧 編集: NsPace編集部

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ
特集
2024年12月24日
2024年12月24日

訪問看護の認知症ケア 学べる情報まとめ コミュニケーション、栄養、口腔ケアetc.

訪問看護では、認知症の利用者さん・ご家族との関わりも多いですよね。NsPaceでは、これまで認知症に関連する多くの記事やセミナーをお届けしてきました。今回は、知りたい情報にアプローチしやすいように、記事をピックアップしてご紹介。気になる記事からチェックしていただき、日々の看護に役立てていただけたら嬉しいです。 「認知症」疾患の知識を深める! 認知症という病気がもたらす事象の原因や理由を理解することで、対応が変わり、できることが増えます。利用者さん・ご家族への貢献度が上がることはもちろんのこと、日々の看護の喜びも増えるはず。ケアする側のこころの状態が相手に大きく影響するので、好循環が生まれます。 【在宅医が解説】「認知症」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 認知症の鑑別、認知症以外の可能性や治る認知症を見逃さない、悪化させないなどの視点で、わかりやすく解説いただいています。 また、鑑別に役立つ「せん妄アセスメントシート」を以下記事にてご紹介しています。ぜひご活用ください。>>せん妄への対応【精神症状の緩和ケア】 「高齢者のうつ病の特長」などについて解説されている以下の記事もおすすめです。>>【在宅医が解説】「うつ病」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】 【セミナーレポート】看護師が意識したい7つのポイント -在宅で行う認知症看護-   講師の福岡裕行さん(認知症看護認定看護師)の優しい言葉と関わりが心に染みる記事です。ポイントがわかりやすく紹介されていて、「すぐにやってみよう!」と楽しみになる内容です。後編では、「認知症患者を支えることは、その家族の心を癒すこと」という言葉が印象的。Q&Aセッションも学びが深まる内容です。あわせてお読みください。>>セミナーレポート後編【セミナーレポート】ご家族とのかかわり方 -在宅で行う認知症看護- 高齢者の栄養ケアマネジメント~窒息・認知症対応~【セミナーレポート後編】 高齢者の栄養管理を専門とする医師の吉田 貞夫先生にご登壇いただいたセミナーのレポート記事です。認知症の方に対しての具体的な食事支援や認知症予防につながる食事について学ぶことができます。 事例を通じてケアを磨く! 認知症のある方やそのご家族へのケアは多種多様。事例を通じて、引き出しを増やしていきましょう。 認知症のある患者さんに接するときの7か条(前編)   シリーズ「認知症患者とのコミュニケーション(全12回)」の第1弾の記事です。シリーズ第1回~2回では認知症患者さんと接するときのポイントを、第3回~12回では、「言葉による返事がない」「物盗られ妄想がある」など、ケースごとにケアのポイントを解説いただいています。実践に生かせる内容なので、興味のあるテーマから学んでみてください! >>認知症のある患者さんとのコミュニケーションシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/dementia-patient-communication/ 自己流の介護を続ける家族への関わり【家族看護 事例】 認知症のある利用者さんのご家族は、複雑な心情や多くのストレスにさらされているからこそ、訪問看護師との関係性が難しくなってしまうこともありますよね。本記事では、「渡辺式家族アセスメント/支援モデル」を用いた事例解説を通じて、訪問看護ならではの家族看護について学ぶことができます。 認知症と義歯の関係 認知症があると口腔ケアに難色を示されることや意思の疎通が難しい状況で効果的なケアが行えないこともありますよね。咀嚼機能が回復した事例を通して、工夫のしかたを学べる記事です。 高齢者の頭の体操10選 脳トレに期待できる効果や方法について解説 脳トレや「脳トレ+運動」で、認知機能の向上、身体機能の向上が期待できます。具体的な方法と効果についてご紹介しています。利用者さんが楽しめるケアのヒントになれば幸いです。 「上手く伝えられない」に対応する! 認知症では、辛さや症状を上手く表現できないからこそ、看護師が異常を察知し、適切に評価できることが求められます。場合によっては表現通りの意味とは限らない訴えや拒否をいかに捉えられるかが重要です。利用者さんの価値観をおもんぱかるために、見識を拡げていきましょう! 悪性消化管閉塞への対応【がん身体症状の緩和ケア】 認知症の終末期は、症状マネジメントに苦慮しますよね。事例をとおして、悪性消化管閉塞について学びつつ、認知症の在宅看取りについてイメージを持てる記事です。 大学教授が解説!大量嘔吐でイレウスが疑われる場合のアセスメント 「イレウスの既往のあり、認知症が進み、自分からは訴えられない方が大量に嘔吐…。あなたはどう考えますか?」という事例とおして、フィジカルアセスメントについて学べる記事です。なお、このフィジカルアセスメントシリーズは全12回です。ほかにも『認知症のある患者さんが「転んだけど大丈夫」と話している場合』など、認知症の方の事例解説がありますので、あわせてご覧ください。 >>訪問看護のフィジカルアセスメントシリーズhttps://www.ns-pace.com/series/physical-assessment/ もしかしてネグレクト? 訪問看護師は虐待疑いにどう対応すべきか 虐待が疑われる場合、どのように行動すればよいか。状況に合わせた慎重な対応が求められ、特に認知症が疑われる場合は、判断が難しくなることもあります。このようなセンシティブな状況では、多角的な視点で考え、細心の注意を払った言動が求められます。本記事は、弁護士の外岡潤先生に解説いただいた、法律・制度を踏まえた事例解説記事です。訪問看護に発生する義務は何か?という点も含めて確認しておきましょう。 * * * 認知症のある方は、今後もますます増加すると予測されています。地域を支える訪問看護師のサポートへの期待もさらに高まっていくでしょう。認知症のある方が幸せに生きられる社会になるヒントは、日々のケアの蓄積の中から見出されていくようにも感じます。NsPaceでは、今後も日々の学びの機会を通して、訪問看護に携わる皆さまの力になる企画を提供していきます。 執筆・編集: NsPace編集部

寒冷蕁麻疹(寒暖差アレルギー)とは?症状・原因・治療法・予防法を解説
寒冷蕁麻疹(寒暖差アレルギー)とは?症状・原因・治療法・予防法を解説
特集
2024年12月17日
2024年12月17日

寒冷蕁麻疹(寒暖差アレルギー)とは?症状・原因・治療法・予防法を解説

寒冷蕁麻疹(かんれいじんましん)は、冷たい風や空気、冷水などの寒冷刺激によって皮膚に発赤やかゆみを伴う膨疹(ぼうしん)が生じる症状です。「寒暖差アレルギー」とも呼ばれ、冬場に多いイメージがありますが、季節を問わず冷えによって発症することがあります。 本記事では、寒冷蕁麻疹の症状や原因、治療法、日常生活でできる予防法について解説します。寒冷蕁麻疹を発見した際のアセスメントにお役立てください。 寒冷蕁麻疹とは 寒冷蕁麻疹は、皮膚に冷たい刺激が加わることで発症するアレルギー反応の一種です。通常の蕁麻疹と同様に、皮膚内の肥満細胞からヒスタミンが放出されることで、かゆみや炎症、膨疹が引き起こされます。膨疹とは一過性の真皮の浮腫で、皮膚の一部が突然、境界明瞭に赤く盛り上がった状態を指します。子どもから高齢者まで年齢を問わずに発症し、好発年齢はありません。 寒冷蕁麻疹の症状 寒冷蕁麻疹の主な症状は、冷たい刺激が加わった直後から数十分以内に皮膚に現れるかゆみや発赤です。数時間で自然に軽減することが多いものの、症状の現れるタイミングや強さには個人差があります。 寒冷蕁麻疹は、次の2つに分類されます。 局所性寒冷蕁麻疹 局所性寒冷蕁麻疹は、冷たいものが触れたところに円形や地図状の膨疹が現れ、通常はかゆみと発赤を伴います。ただし、かゆみがなく発赤が目立つものや、反対に発赤がなくかゆみだけが生じるもの、痛みを伴うものもあります。 全身性寒冷蕁麻疹 全身性寒冷蕁麻疹は、全身が冷えることで小豆大ほどの発赤とかゆみを伴う膨疹が腕や脚、背中、腹部、首まわりなどを中心に全身に現れます。 膨疹の外見は、運動や入浴後に発症するコリン性蕁麻疹と似ているため、見分けがつきにくい場合もあります。 寒冷蕁麻疹の原因 局所性寒冷蕁麻疹は、冷水や冷風などが触れた部位にのみ現れます。一方、全身性寒冷蕁麻疹は、エアコンの効いた部屋に入る、冷たい外気に触れる、運動後や入浴後に体が冷えるなど、全身の急激な冷えがきっかけで発症します。暖かい場所から寒い場所へ移動するような急な温度変化によって症状が現れることがよくあります。 どちらのタイプも、寒冷刺激を受けると皮膚の肥満細胞からヒスタミンが大量に放出され、それがかゆみや膨疹を引き起こす点に違いはありません。ヒスタミンの分泌メカニズムについては未だ解明されていませんが、アレルギー反応や免疫系の異常が関与していると考えられています。なお、全身性寒冷蕁麻疹の中には、遺伝的な要因によるものも報告されています。 寒冷蕁麻疹の予防策 寒冷蕁麻疹は、次のように予防しましょう。 温める 寒冷蕁麻疹は、温めることで症状が緩和される場合が多いため、冷やさない工夫が重要です。症状が出やすい部分は重ね着をして、暖かい部屋で全身を温めましょう。冷たい空気や風に長時間さらされないよう、外出時も防寒対策を徹底することが大切です。 掻きむしりによる悪化を防ぐ 強いかゆみを感じると掻きむしってしまいがちですが、それによって症状が広がったり、蕁麻疹が悪化したりするため注意が必要です。抗ヒスタミン作用のある市販の塗り薬や内服薬を利用することで症状が和らぐことがあります。また、潤いを保つために保湿剤を使用することで肌のバリア機能が高まり、蕁麻疹が出にくくなります。そのため、皮膚を日常的にケアすることも大切です。 ただし、かゆみが強く再発を繰り返す、症状がなかなか治まらない場合は、自己判断せず早めに皮膚科を受診しましょう。 冷えを避けるための日常の工夫 寒冷蕁麻疹を予防するためには、日常生活での冷え対策が重要です。寒暖差が原因となるため、気温の低い場所に行く際はしっかりと防寒対策を行いましょう。冬場だけでなく夏場も注意が必要です。たとえば、プールや入浴のあとにエアコンが効いた部屋に行くと、体が急激に冷えて寒冷蕁麻疹の原因となることがあります。 また、冷たい飲み物や食べ物は体を冷やすため、少量ずつ摂取し、体が冷えすぎないようにしましょう。足もとの冷えも寒冷蕁麻疹を悪化させる要因です。足もとが冷えやすい方は、厚手の靴下やスリッパなどを履きましょう。 寒冷蕁麻疹の治療法 寒冷蕁麻疹の治療では、原因となる寒冷刺激を避けることが基本です。症状が軽い場合でも、再発を防ぐために冷えを避けた生活を心がけることが重要です。症状が出た場合には、抗ヒスタミン薬を内服することで、かゆみや発赤を緩和できます。 皮膚科では、発症時の状況を詳しく問診し、必要に応じて寒冷負荷試験や血液検査を行い、寒冷蕁麻疹かどうかを診断します。また、息苦しさやむくみといった重篤な症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診することが重要です。 抗ヒスタミン薬を継続的に内服し、症状をコントロールする場合もあります。寒冷蕁麻疹は内科的な病気が関与していることもあるため、長期化する場合や改善が見られない場合には医師に相談し、適切な診断・治療を受けることが大切です。 * * * 寒冷蕁麻疹は、訪問看護の現場でも利用者さんが症状を訴えることがあるかもしれません。家庭環境や症状が現れたタイミングなどを聞き取りして、適切な対策方法を伝えましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:吉岡 容子医療法人容紘会 高梨医院 院長東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。院長として勤務しています。

看取りの作法2024 終末期・看取りの基礎知識【セミナーレポート 前編】
看取りの作法2024 終末期・看取りの基礎知識【セミナーレポート 前編】
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2024年12月10日
2024年12月10日

看取りの作法2024 終末期・看取りの基礎知識【セミナーレポート 前編】

2024年9月20日に開催したNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「看取りの作法2024 〜習得のための理論と実践〜」。家庭医療専門医で訪問診療専門クリニック院長の田中公孝先生を講師にお迎えし、訪問看護師が看取り支援をより身近な業務として捉えられるように必要な基礎知識を教えていただきました。 セミナーレポート前編では、看取り支援にあたって知っておきたい理論や田中先生が現場で意識しているポイントなどをまとめました。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)がとくに注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】田中 公孝先生杉並PARK在宅クリニック 院長/日本プライマリ・ケア連合学会認定 家庭医療専門医滋賀医科大学卒業。2017年から東京都三鷹市で訪問クリニックの立ち上げに参画し、2021年4月には訪問診療に特化した杉並PARK在宅クリニックを開業。すべての患者さんに「最期までその人らしく過ごせる在宅医療」を提供することを目指す。 「病の軌跡(がん、非がん)」を理解する 看取り支援に必要な知識としてまず挙げられるのが、病の軌跡。「がん」「非がん」の2パターンの軌跡を理解しておくと、看取りの流れをイメージしやすくなります。 がんの軌跡 がんの軌跡の特徴は、身体機能が非がん疾患と比べて長い期間保たれ、その後亡くなる直前に急速に悪化する点が挙げられます。機能が急速に低下する期間は、平均して約2ヵ月ともいわれており、若い方の場合は急激に悪化するため、この期間が短くなるケースにもしばしば遭遇します。一方、ご高齢の方では、がん細胞の進行も老いてゆっくりなのか、悪化のペースが緩やかになることもあります。 また、がんの悪液質を緩和するステロイド治療を行った場合、食欲が回復したり体を動かせたりするようになり、亡くなるまでの期間が1、2ヵ月ほど延びることもあります。しかし、原則として最期の2ヵ月間は急速に機能が低下し、排泄介助が必要になる、疼痛が悪化するなど問題に直面する機会が増えていきます。 非がん疾患の軌跡 非がん疾患の軌跡の特徴は、予後予測が難しい点が挙げられます。例えば心・肺疾患では、急性増悪を繰り返しながら徐々に機能低下が起こり、最後は比較的急な経過を辿るケースも見られます。一方、認知症・老衰の場合は、誤嚥性肺炎で一度口から食事がとれなくなっても、状態が安定して再び食事ができるようになる方もいます。そのため、ご家族には亡くなる可能性についてお伝えする一方で、機能が一時的に持ち直す可能性もあることを事前に説明しておくとよいでしょう。 「全人的苦痛(トータルペイン)」を活用する 全人的苦痛とは、利用者さんの苦痛を総合的に捉えるための概念のこと。「身体的苦痛」「社会的苦痛」「スピリチュアルペイン」「精神的苦痛」の4つに分類され、密接に影響し合っているという考え方です。例えば、がんの症状に伴う疼痛や息苦しさ、倦怠感などの身体的苦痛がある場合も、精神的、社会的、スピリチュアルな要因を含めたすべての側面を考慮する必要があります。適切なケアを提供する上で役に立つ考え方なので、ぜひ活用してください。 >>関連記事全人的苦痛(トータルペイン)の詳しい解説については以下をご参照ください。トータルペインでとらえる 終末期の現場で医師が考えていること 看取り支援の現場で私が意識しているポイントもお伝えします。 がんの症状 「肺がんは呼吸器に症状が現れる」「膵臓がんは強い痛みを伴う」など、一口にがんといっても種類によって症状は異なります。そのため、がんの種類や治療経過(手術歴、放射線治療や化学療法の有無や程度)を必ず確認します。みなさんも、各がんの特徴やおもな症状は押さえておきましょう。 多職種連携 終末期には訪問看護、訪問薬局、ケアマネジャーなどさまざまな職種の方々と方針を共有し、一丸となってご家族をサポートします。このとき、連携先はできるだけ看取りの経験があるところを選んでいます。 在宅看取りが可能か 在宅での看取りでは、家族の介護力や覚悟が問われます。早い段階での要介護認定を受けることをはじめ、各種制度を最大限活用できるよう環境を整えることも必要です。これらの条件を総合的に考慮し、「在宅で看取りきれるか」を常に考えています。 なお、緩和ケア病棟へのエントリーは、基本的にすべてのケースで行います。レスパイト入院をはじめ、在宅看取りを希望していても状況に応じて利用を検討する可能性があるためです。 利用者さんとご家族の認識に向き合う 告知の判断 私は、認知機能に問題がある利用者さんを除いて、基本的に告知はすべきだと考えています。とくにご本人が自身の体調の異変を感じているにも関わらず、ご家族から「落ち込むから伝えないでほしい」と要望がある場合は、本当に告知なしでよいかを丁寧に確認します。ちなみに、ご本人が違和感を覚えているのに告知しなかったケースは私の在宅医療のキャリアではほとんどなく、告知がよい結果に結びついたケースは多いです。ご家族に踏み込んだ話をするには医療者としての覚悟や経験が求められますが、利用者さんやご家族にとっての最善を考えて行動してください。 なお、告知と「予後を伝えること」は別の話です。ご家族には予後について必ず説明しますが、利用者さんにはご本人から強い要望がない限り伝えておらず、伝えなくてもうまくいくケースが多いです。 家族の受容段階の確認 ご家族の認識にアプローチするには、「キューブラー・ロス-死の受容5段階モデル」に基づいて考えるのがおすすめです。 もうこれ以上治すための手段がなく、緩和ケアに意識を切り替えていく、もしくは余命が幾許もないという受容の段階に進んでもらうために、私は早い時期にがんの特徴と看取りまでの経過をお伝えします。亡くなるまであと1ヵ月ほどの段階で「病の軌跡」について話し、「看取りのパンフレット」もお渡しして、「看取りの1週間前になったらこういう説明をさせてもらいます」と概要を伝えるんです。そうすればご家族も、「もうすぐそのときがくるんだな」と心構えできますから。 >>関連記事看取りのパンフレットについては以下をご参照ください。看取りの作法 ~ 最期の1週間キューブラー・ロス-死の受容5段階モデルの詳しい解説については以下をご参照ください。患者・家族の認識とグリーフケア 次回は、看取りのパンフレットを使用した死前教育やご家族へのグリーフケア、看取り支援の実践に役立つ考え方について説明します。>>後編はこちら「看取りの作法2024 グリーフケアと支援の実践【セミナーレポート 後編】」 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア

「脳血管障害(脳卒中)」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
「脳血管障害(脳卒中)」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】
特集
2024年12月10日
2024年12月10日

「脳血管障害(脳卒中)」の知識&注意点【訪問看護師の疾患学び直し】

このシリーズでは、訪問看護師が出会うことが多い疾患を取り上げ、おさらいしたい知識を提供します。今回は脳血管障害(脳卒中)について、訪問看護に求められる知識、どんな点に注意すべきなのかを、在宅医療の視点から解説します。 脳血管障害の基礎知識 脳血管障害とは脳血管の異常により発生する疾患で、脳卒中とも呼ばれています。頭痛、麻痺、感覚障害、構音障害の急速な発現は脳血管障害を疑う症状です。リスクファクターには高血圧、糖尿病、脂質異常症、喫煙、心房細動、脳血管障害の既往があります。脳血管障害には脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血が含まれ、頻度は脳梗塞が最多で約70%、続いて脳内出血が約20%、くも膜下出血が約5%です1)。 脳血管障害の種類 脳梗塞 脳梗塞は発症の原因によって3つのタイプに分けられます(図1)。 アテローム血栓性脳梗塞主幹脳動脈のアテローム硬化が原因で起こります。動脈硬化による狭窄が徐々に進行し血栓によって閉塞するか、不安定プラークが破裂して形成された血栓が塞栓子となり遠位部の動脈が閉塞する(artery to artery embolism)ことにより発症します。急速に発症し、階段状に進行することが多いです。 心原性脳塞栓症心臓内にできた血栓が脳動脈に塞栓症を起こします。原因の中で最も多いのが心房細動で、ほかに人工弁、左心房/心耳の血栓、最近発症の心筋梗塞、拡張型心筋症、感染性心内膜炎も原因となります。日中活動時の突然発症が多く、高度の意識障害や失語を伴う確率が高く予後が不良です。 ラクナ梗塞脳穿通枝動脈が脂肪硝子変性、血管壊死により閉塞して起こります。一過性脳虚血発作(transient ischemic attack:TIA)の既往を認めることがあります(memo参照)。夜間の睡眠中や起床時に発症することが多いです。穿通枝領域の径15mm以下の小さな梗塞が深部白質、基底核、視床、内包後脚に好発し、以下の症状を引き起こします。 純粋運動性片麻痺:最も多い症状で、顔面を含む不全片麻痺純粋感覚性発作:片側の顔面と上下肢を含む半身のしびれ運動失調不全片麻痺:軽度の構音障害、眼振、一側へのよろめき構音障害-手不器用症候群:構音障害、嚥下障害、一側の手の巧緻運動障害 図1 脳梗塞の種類   memo 一過性脳虚血発作(TIA)とは24時間(多くは1時間)以内に消失する一過性の局所神経症候を起こします。微小塞栓と血流不全による脳の虚血が原因です。典型的な症状は片側性麻痺や構音障害で、一過性黒内障(片方の視力が一時的に低下する症状)が起こることもあります。症状発現後48時間以内に脳梗塞を発症するリスクが高いため、速やかに評価を行う必要があります。 脳梗塞発症リスクを予測するツールとして「ABCD2スコア」が広く用いられています。 【ABCD2スコア】 A Age(年齢) ≧60歳 1点 B Blood pressure(⾎圧) 収縮期140mmHg 以上 and/or 拡張期90mmHg 以上 1点 C Clinical feature(臨床像) ⽚⿇痺 2点 ⿇痺のない⾔語障害 1点 D Duration of symptoms(持続時間) 10〜59 分 1点 ≧60 分 2点 D Diabetes(糖尿病) あり 1点   最高得点 7点 ● 5項目で7点満点● TIA 発症後2日以内の脳梗塞発症率は0~3点で1.0%、4~5点で4.1%、6~7点で8.1%● 3点以上は入院治療が望ましい(Johnston SC,Rothwell PM,Nguyen-Huynh MN,et al:Validation and refinement of scores to predict very early stroke risk after transient ischaemic attack.Lancet 2007;369(9558):283-92. をもとに作成)脳梗塞を起こしていないか確認するため、できるだけMRI検査を行います。原因検査のため、血液検査(CBC(complete blood count:末梢血液検査)、生化学、血液凝固、BNP(brain natriuretic peptide:脳性ナトリウム利尿ペプチド)、頸動脈エコー、心電図、心エコーを行います。 脳内出血 原因は高血圧によって微小動脈瘤ができ、破裂出血するためと考えられています。その他、動静脈奇形、血管炎、脳腫瘤や老人に起こるアミロイド血管症なども原因です。被殻や視床、脳幹、小脳、皮質下に出血を起こします。 くも膜下出血 動脈瘤の破裂または動静脈奇形、外傷、動脈解離により起こります。ひどい頭痛と意識障害、片麻痺、めまい、嘔吐の症状を認めます。最も多い原因は嚢状動脈瘤破裂です。 なお、脳内出血とくも膜下出血の違いを図2に示します。 図2 脳内出血とくも膜下出血 診断 意識レベルとバイタルサインの確認が必要です。脳血管障害では意識低下や血圧上昇を認めることが多くあり、家族や目撃者の証言から、いつまで元気だったかを確認するとよいでしょう。次に、診察で神経学的に異常な部位を確認することで、症状から虚血を生じさせている責任血管が推察できます(表1)。 表1 責任血管と症状 責任⾎管(脳の領域)症状眼動脈⼀過性黒内障前脈絡叢動脈(内包後脚、外側膝状体、⼤脳脚、視床)対側の⽚⿇痺+感覚障害+同名半盲(右側または左側半分が⾒えなくなる)前⼤脳動脈・ 下肢の運動障害・ 刺激に対する反応低下・ 尿/便失禁中⼤脳動脈・ 顔⾯と上肢>下肢の運動/感覚障害・ 優位半球の前頭葉または側頭葉→失語・ 劣位半球の頭頂葉→失⾏/半側空間無視・ 同名半盲※優位半球と劣位半球で症状が異なることに注意する※右利きの⼈のほとんどと左利きの⼈の2/3は優位半球が左である後⼤脳動脈・ 同名半盲/変形視       ・ 反対側の感覚障害を伴う視床症候群:          反対側の⿇痺、耐え難い痛み、不随意運動椎⾻動脈・ ワレンベルグ症候群:同側の顔⾯と対側の上下肢の感覚障害、複視、構⾳障害、嚥下障害⼩脳動脈・ めまい・ ⼩脳失調脳底動脈・ 瞳孔異常(散瞳または著しい縮瞳)・ 四肢⿇痺・ 知覚障害・ ⾼度な意識障害・ ⼩脳失調 ⾎液検査(⾎糖、Na、K、Cl、Cr、CBC、凝固、⼼筋マーカー)、⼼電図、頭部CT(またはMRI)検査を⾏います。既往歴(脳梗塞、てんかん)と内服薬(抗凝固薬、抗⾎⼩板薬、抗精神病薬)の確認が重要です。 訪問時における病歴聴取/身体所見のポイント 意識レベルとバイタルサインを確認し、血圧が高ければ脳卒中の可能性が高くなります。脳卒中の症状(構音障害や麻痺など)がいつから始まったのかを明らかにします。発症4.5時間以内ならば、血栓溶解療法(t-PA療法)が適応されます。 意識障害や急性に発症した脳卒中を疑う症状があれば、救急車で病院に搬送します。 治療 疾患ごとに解説します。 脳梗塞 脳梗塞の発症後4.5時間以内でt-PA製剤(アルテプラーゼ)の適応があれば、静脈内投与を行うことで血栓を溶解させ、脳血流の再開が可能です。3時間以内に投与した場合、3ヵ月後の障害の発症率を大幅に軽減させることが分かっています。ただし、合併症として頭蓋内出血を起こすこともあります。大血管の閉塞では脳卒中発症後8時間以内に脳血管内治療が行われます。 血栓溶解療法や脳血管内治療が適応とならない急性期虚血性脳血管障害患者にはアスピリンが投与されます。症状発現後24時間以内に開始し21日間継続する抗血小板薬2剤併用療法(アスピリンとクロピドグレル)は脳梗塞の再発抑制効果があります。 心房細動があれば、ヘパリンまたは抗凝固薬(直接作用型経口抗凝固薬:DOAC、ワルファリン)を投与します。 脳内出血 入院し呼吸管理と血圧コントロール(収縮期血圧140mmHg以下)を行います。血腫除去の外科的治療が選択されることがあります。 くも膜下出血 脳動脈瘤の根もとに専用のクリップをかける動脈瘤頸部クリッピング術が行われます。 最新トピックス●脳卒中でSpO2が93%以上の患者には、予後が悪化するため酸素療法を開始しないことがすすめられています。酸素療法を受けている患者ではSpO2を96%未満にします2)。●脳卒中専門病棟への入院は、多職種からなるケアチームが早期から尿路感染予防のための留置カテーテルの除去、嚥下障害への対処、誤嚥性肺炎の予防、口腔衛生を行うためとても有効です。 二次予防(脳卒中の再発予防) 生活習慣の改善(ダイエット、運動)、リスクファクターへの治療(高血圧、脂質異常症、糖尿病、禁煙)、血圧コントロール<130/80mmHg、LDL<70mg/dL、抗血小板薬または抗凝固薬の内服が重要です。 ●脳血管障害(脳卒中)には脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血があります。頻度は脳梗塞が70%、脳出血が20%、くも膜下出血が10%です。●意識障害や急性に発症した脳血管障害を疑う症状があれば、救急車で病院に搬送します。●家族や目撃者の証言から、いつまで元気だったかを確認します。 執筆:山中 克郎福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 特任教授、諏訪中央病院 総合診療科 非常勤医師、大同病院 内科顧問 1985年 名古屋大学医学部卒業名古屋掖済会病院、名古屋大学病院 免疫内科、バージニア・メイソン研究所、名城病院、名古屋医療センター、カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)、藤田保健衛生大学 救急総合内科 教授/救命救急センター 副センター長、諏訪中央病院 総合診療科 院長補佐、福島県立医科大学会津医療センター 総合内科学講座 教授を経て現職。編集:株式会社照林社 【引用文献】1)脳卒中データバンク運営委員会:「脳卒中レジストリを用いた我が国の脳卒中診療実態の把握」(日本脳卒中データバンク)報告書 2023年.https://strokedatabank.ncvc.go.jp/category/achievement/report/2024/11/15閲覧2)Chu DK,Kim LH,Young PJ,et al:Mortality and morbidity in acutely ill adults treated with liberal versus conservative oxygen therapy (IOTA): a systematic review and meta-analysis.Lancet 2018;391(10131). 【参考文献】○Chick D,et al:Stroke.MKSAP19 Neurology,American College of Physicians,2021:26-39.○Douglas V,Aminoff MJ:Nervous system disorders.Current Medical Diagnosis & Treatment 2024, 63rd ed.McGraw Hill,New York,2024;992-1003.○Hupperts LA:Neurologic emergencies. Huppert’s Notes,McGraw Hill,New York,2021:380-381.○Sabatine MS,et al:Stroke.Pocket Medicine,8th ed.Philadelphia,2022. ○井口正寛,石山貴章編:脳梗塞.Hospitalist 2022:10(2);207-306.

リンゴ病(伝染性紅斑)の症状・感染経路は?大人の感染にも注意
リンゴ病(伝染性紅斑)の症状・感染経路は?大人の感染にも注意
特集
2024年12月10日
2024年12月10日

リンゴ病(伝染性紅斑)の症状・感染経路は?大人の感染にも注意

頬がリンゴのように赤くなるリンゴ病(伝染性紅斑)。主に子どもがかかる病気ですが、大人もかかる場合があります。また、妊娠中にかかると流産につながるおそれもあるため、より一層の注意が必要です。 本記事では、リンゴ病の症状や潜伏期間、感染経路から、大人の感染や出社・登園・登校への影響まで詳しく解説します。リンゴ病の症状について確認し、利用者さんやそのご家族のケアに役立てましょう。 リンゴ病とは リンゴ病とは、ヒトパルボウイルスB19の感染によって起きる病気で、正式名称を「伝染性紅斑」といいます。その名のとおり、両側の頬がリンゴのように赤くなるのが主な症状で、4~5歳の子どもを中心に4~5年周期で流行を繰り返しています。 リンゴ病の症状 リンゴ病は、10〜20日の潜伏期間を経て、頬に赤い発疹が現れます。赤いところとそうではないところの境目は明瞭です。また、顔だけではなく、手足にも「レース状」や「網目状」と表現される発疹が現れます。多くは顔と手足のみですが、中にはお腹や胸、背中に現れる人もいます。発疹の持続期間は1週間前後ですが、一度消えた発疹が短期間で再び現れる場合もあります。 リンゴ病の原因 リンゴ病の原因は、パルボウイルス科パルボウイルス亜科エリスロウイルス属のヒトパルボウイルスB19の感染です。正式名称はエリスロウイルスB19ですが、一般的にはヒトパルボウイルスB19と呼ばれています。リンゴ病は1年中かかる可能性がありますが、春から秋にかけて多くみられます。 リンゴ病は大人もかかる? リンゴ病は大人もかかる可能性がありますが、一度感染すると終生免疫を得られるため、子どものころにリンゴ病にかかったことがある大人は、通常は感染しません。 大人のリンゴ病では、頭痛や関節炎に伴う関節痛が生じ、1~2日ほど歩くことが難しくなる場合がありますが、多くの場合は合併症や後遺症もなく回復します。 大人のリンゴ病で注意すべきは、妊娠中の感染です。特に、妊娠前半期にヒトパルボウイルスB19に感染すると、胎児水腫や流産につながるおそれがあります。妊娠後半期にも感染する可能性があるため、妊娠中は時期を問わず感染予防を意識することが大切です。ただし、母親がリンゴ病を発症し、新生児に感染が確認された場合でも、妊娠・分娩の経過や出生後の発育が正常であることが多いとされています。妊娠中にリンゴ病に罹患した場合、医師の指示に従い、胎児の状態を注意深く確認していくことが大切です。 また、溶血性貧血の人がヒトパルボウイルスB19に感染すると、重症の貧血発作や関節炎、関節リウマチ、血球貪食症候群、血小板減少症などが起きる可能性があります。こちらにも注意しておきましょう。 リンゴ病の感染経路 リンゴ病の感染経路は、ウイルスを含むくしゃみや咳などによる飛沫感染です。頬の赤い発疹が現れたころには感染力はほとんどなく、ウイルスが多く排出されるのは、まだリンゴ病の症状が現れる前。感染を防ぐ有効な対策はありません。ほかの感染症と同じく、くしゃみや咳を人に向けてしないこと、手洗いやうがいを徹底するなど、基本的な感染対策を行いましょう。 リンゴ病の治療法 リンゴ病には、特効薬が存在しません。ウイルス感染症は一部のウイルスにのみ抗ウイルス薬が存在しており、ヒトパルボウイルスB19に対して有効な薬は登場していないのが現状です。 そのため、リンゴ病の発熱や関節痛に対しては解熱鎮痛剤、かゆみに対してはかゆみ止めといった対症療法を行います。また、感染が発覚した時点で何かをすれば発症を防げたり、早く改善したりといった方法もありません。 リンゴ病の出社・登園・通学への影響 リンゴ病にかかった人の出社や登園、通学に対する制限については、明確に設けられていません。学校保健法においては第3種の感染症の「その他の感染症」に該当します。これは、医師や学校医などが「感染のおそれがない」と認めるまでは出席停止とするものです。 リンゴ病は、頬に赤い発疹が現れた段階で診断を受けることが多く、その時点では感染力はほとんどありません。そのため、発熱や他の症状、合併症などがなければ登園や通学は認められると考えられます。 ただし、感染症への対応方針は学校や会社によって異なるため、リンゴ病に感染した旨を伝えて指示を仰ぐことが大切です。 * * * リンゴ病は主に子どもがかかる病気で、一度かかると終生免疫を得られます。大人がかかっても重症化することも通常はありません。ただし、妊娠中にかかると胎児への影響が懸念されるため、基本的な感染症対策を行い感染のリスクをなるべく抑えることが大切です。また、症状が現れたころには感染力は失われていることから、軽症であれば問題なく登校や出社ができます。 ぜひ今回の内容を利用者さんのアセスメントやご家族への情報提供などに役立ててください。   編集・執筆:加藤 良大監修:吉岡 容子医療法人容紘会高梨医院 院長東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。院長として勤務しています。 【参考】〇国立感染症研究所「伝染性紅斑とは」https://www.niid.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/443-5th-disease.html2024/12/3閲覧

湿疹皮膚炎とは? 種類や症状、改善方法が分かる【多数の症例写真で解説】
湿疹皮膚炎とは? 種類や症状、改善方法が分かる【多数の症例写真で解説】
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2024年12月3日
2024年12月3日

湿疹皮膚炎とは? 種類や症状、改善方法が分かる【多数の症例写真で解説】

在宅療養者によくみられる皮膚症状を、皮膚科専門医の袋 秀平先生(ふくろ皮膚科クリニック 院長)が写真を見比べながら分かりやすく解説。今回は湿疹皮膚炎を取り上げ、その種類や特徴、症状の原因や改善方法をご紹介します。 湿疹皮膚炎とは 湿疹という病名は一般の人たちにも馴染みがあると思います。湿疹は、皮膚炎とほぼ同義とされ、文字通り皮膚が炎症を起こすことをいいます。ある程度原因や病態がはっきりしているアトピー性皮膚炎、接触皮膚炎、脂漏性皮膚炎、うっ滞性皮膚炎、皮脂欠乏性湿疹などがあり、原因・病態が明らかでないものは単純に「湿疹」と呼ばれます。 以前、「真菌による湿疹」という記載を見たことがあります。確かに真菌による炎症ではありますが、真菌や細菌など病原体に起因するものは感染症であり、湿疹とは呼びませんのでご注意ください。 在宅でよくみられる湿疹皮膚炎群について述べていきます。 在宅でよくみられる湿疹皮膚炎群 皮脂欠乏性湿疹 加齢に伴って生じる皮脂欠乏により、皮膚のバリア機能が低下して外的刺激を受けやすくなり、かゆみに対する閾値も低下して湿疹化した状態です。冬に多く、一番多いのは下腿伸側ですが、大腿や上肢の伸側、体幹にも発生します(図1)。 訪問入浴の際に「頻繁に入浴できないから」と言って張り切ってスポンジで洗っているのを見たことがあります。気持ちは分かるのですが、やめるべきです。 予防・改善には保湿を中心としたスキンケアが重要になります。詳しくはNsPaceの「在宅の褥瘡・スキンケアシリーズ」をご参照ください。 >>予防的スキンケアに関する記事はこちら在宅の褥瘡・スキンケアシリーズスキンケアで褥瘡予防 洗浄・保湿・保護のポイント 図1 高齢者の下腿にみられた皮脂欠乏性湿疹 接触皮膚炎 いわゆる「かぶれ」です。接触したものによって生じる皮膚炎で、アレルギー性のものと、刺激性のものがあります。 アレルギーとは、「外部から侵入した特定のものに対する、その人特有の反応」と考えることができるので、「特定のもの」がはっきりしているならそれを除去すればよいことになります。接触皮膚炎の場合、原因特定のための検査としてよく使われるのはパッチテストです。怪しそうなもの(例えば外用薬や化粧品)があれば、そのものを貼付します。 在宅では外用薬の接触皮膚炎を経験することがあります。図2は「褥瘡が悪化した」と連絡があった例ですが、実は褥瘡の治療薬にかぶれていた例です。 図2 褥瘡の治療薬によるかぶれ(接触皮膚炎) 初診時(A)にデブリードマンを行い、ヨード製剤を外用。改善傾向にあったが(B)、2週間後「褥瘡が悪化した」と連絡があった(C)。往診し、外用薬による接触皮膚炎と診断。ステロイド外用に変更したところ皮膚炎が改善し、褥瘡も治癒した(D)。 脂漏性皮膚炎 頭皮、顔(眉毛部や鼻周囲など)、胸や背中の中央部など皮脂腺の多いところを脂漏部と呼びますが、それらの部位に生じるのが脂漏性皮膚炎です(図3)。皮脂腺に住む真菌の一種であるマラセチアが皮脂を分解し、その産物が皮膚に炎症を起こしているとされます。炎症を速やかに抑えるにはステロイド外用が有効ですが、真菌が関与するため抗真菌薬の外用や、抗真菌薬を含んだシャンプーや洗浄剤の使用も効果があります。 図3 頭部の脂漏性皮膚炎 生え際の紅斑と鱗屑が目立つ。 うっ滞性皮膚炎 下肢静脈瘤、深部静脈血栓症など静脈血流のうっ滞が原因となり、下腿に発症します。在宅の高齢者には多くみられる症状です。紅斑から始まり丘疹などが混じる湿疹局面となり、慢性化すると色素沈着や皮膚の硬化がみられ、硬化性脂肪織炎となります。硬化すると容易に潰瘍化して難治です。通常のステロイド外用による湿疹治療も必要ですが、弾性包帯や弾性ストッキングなどによる圧迫療法が重要です(図4、5)。ただし高齢者では動脈閉塞や心疾患を合併している場合もあり、そのような例では圧迫することはできません。 図4 下腿皮膚の硬化とうっ滞性皮膚炎 「逆シャンパンボトル」と形容される下腿皮膚の硬化とうっ滞性皮膚炎を認める。 図5 うっ滞性皮膚炎 弾性包帯による圧迫とステロイド外用でうっ滞性皮膚炎・潰瘍ともに3ヵ月で軽快した。 鑑別について 湿疹と鑑別する必要がある疾患には真菌症や腫瘍などがありますが、今後の連載でそれぞれについて述べていく予定です。>>シリーズ一覧はこちらhttps://www.ns-pace.com/series/skin-problems/ 治療の第一選択はステロイド外用薬 湿疹皮膚炎の治療の第一選択は、ステロイド外用薬です(図6)。実にたくさんの種類がありますが、抗炎症作用の強さによって一般的にstrongest(Ⅰ群)、very strong(Ⅱ群)、strong(Ⅲ群)、medium(Ⅳ群)、weak(Ⅴ群)の5段階に分類されています。また、軟膏、クリーム、ローション、テープなどの剤型があります。この強さと剤型を、病変の程度や部位によって使い分けています。 図6 ステロイド外用薬の例 この写真は筆者が少し前に撮影したもの。現在では発売終了になっているものも含まれるが、ステロイド外用薬には実にたくさんの種類がある。 ステロイド外用薬は使われるようになってからすでに70年以上が経過しています。つまり「よい点も、悪い点もすべて分かっている」薬です。アトピー性皮膚炎ではステロイド忌避、脱ステロイドなどが問題になりますが、うまく使えば極めて有効で安全な薬です。でも、分かっていない人が使うと大変なことが起こる可能性もあります。 通常顔にはweak、せいぜいmediumの外用薬を処方しますが、図7は顔の皮疹に対してstrongのステロイド外用薬が長期間処方されていた例です。鏡検してみると、カンジダと、ニキビダニと呼ばれる毛包虫がたくさんみられたため、治療を行ったところ速やかに改善しました。顔に強い外用を続けた場合、眼圧上昇といったリスクもあるので、十分注意が必要です。 また、高齢の方では老化による皮膚の菲薄化がみられますが、漫然とステロイドの外用を継続しているとさらに菲薄化、脆弱化が進行し(図8)、紫斑や、ひどくなるとスキン-テアを起こします。 図7 ステロイド外用薬の誤用例 ステロイド外用薬の誤用により、ニキビダニの増加とカンジダを発症した例。イオウ製剤と抗真菌薬の外用で改善した。 図8 ステロイド外用の継続例 50代男性の症例。アトピー性皮膚炎で長期間ステロイド外用を継続したことにより、肘窩付近の細く赤い血管が透けてみえるほか、内出血するなど皮膚の菲薄化・脆弱化がみられる。 そもそもなぜ湿疹ができるのか? 湿疹は、健康な皮膚に起きる場合もありますが、多くの場合はバリア機能が落ちるといった「準備状態」にある皮膚に発症します。準備状態にしないためには、スキンケアが重要となります。 「スキンケア」という言葉自体にも、明確で絶対的な定義は存在しませんが、日本褥瘡学会の用語集によれば、図9のように、洗浄、遮断・被覆(=保護)、保湿、水分除去の4つに集約できると思います。紙幅の都合でそれぞれについて述べることはしませんが、これらに留意して優しく洗う、保湿薬を使うなどのケアを行い、皮膚を健康な状態に保ちたいものです。 図9 スキンケアとは(日本褥瘡学会「用語集」より) 文献1)より引用(赤字および「保護」の追記は筆者による) 執筆:袋 秀平ふくろ皮膚科クリニック 院長東京医科歯科大学医学部卒業。同大学学部内講師を務め、横須賀市立市民病院皮膚科に勤務(皮膚科科長)。1999年4月に「ふくろ皮膚科クリニック」を開院。日本褥瘡学会在宅担当理事・神奈川県皮膚科医会副会長・日本専門医機構認定皮膚科専門医編集:株式会社照林社 【引用文献】1)日本褥瘡学会ホームページ:用語集「スキンケア」.https://www.jspu.org/medical/glossary/2024/8/5閲覧 【参考文献】○袋 秀平:70枚の写真で学ぶ 在宅で診る皮膚疾患の基礎知識.日本医事新報社ウェブ書籍,東京,2019.○袋 秀平:うっ滞性皮膚炎.内藤亜由美,安部正敏編,改訂第2版 スキントラブルケアパーフェクトガイド,学研メディカル秀潤社,東京,2019:135-138.

低温やけど(低温熱傷)とは?初期症状や対処法について解説
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特集
2024年12月3日
2024年12月3日

低温やけど(低温熱傷)とは?初期症状や対処法について解説

コンロの火やパネルヒーターのほかにも、さまざまな原因でやけど(熱傷)を負う可能性があります。冬に高齢者がよく使う湯たんぽをはじめ、ホットカーペットやカイロでも低温やけどを負うことがあります。低温やけどは通常のやけどと同じく命に関わることもあるため、基礎知識を確認しておくことが大切です。 本記事では、低温やけどの特徴や初期症状、対処法などについて詳しく解説します。利用者さんに質問されたときだけではなく、冬の低温やけどの注意喚起として訪問看護師からアドバイスする際にも役立ててください。 低温やけどとは 低温やけどは、40~50℃程度のものに長時間皮膚が触れることで生じるやけどです。心地よいと感じている温度でも発生してしまう可能性があるため注意が必要です。 また、50℃程度でも3分の圧迫によって低温やけどが生じる可能性があります。このように、単に温度と時間だけで低温やけどが起きるリスクを判断することは困難です。低温やけどの原因となりやすい湯たんぽやホットカーペットなどの使用に注意しましょう。 低温やけどの原因・メカニズム 皮膚が熱を受けてから、少しずつ深部へと熱が達して細胞の損傷が起こります。皮膚の損傷が深部になるにつれて痛みを感じにくくなるため、気づいたときには重症になるケースも少なくありません。湯たんぽやホットカーペットでやけどをする可能性があることを知らない人は、赤みや多少のひりひりとした痛みがあっても放置してしまいがちです。在宅療養されている方の中には自分で症状を訴えることができない方もいるため、全身の皮膚の状態を観察することが大切です。 特に以下に該当する場合は低温やけどのリスクが高いため注意が必要です。 皮膚が脆弱な高齢者や皮膚が薄い小児寝返りができない乳児知覚や運動機能に障害がある方糖尿病や動脈硬化によって手足の血行障害がある方意識レベルや認知機能が低下している方 低温やけどの初期症状や見た目 低温やけどの症状は、赤みやひりひりとした痛みです。1日程度放置すると、水疱(みずぶくれ)が生じることもあります。受傷当初にやけどの深さを見極めるのは困難なため、皮膚に赤みや違和感が生じた段階で、なるべく早く医療機関を受診し、適切な治療を受けることが大切です。 低温やけどに対する正しい対処法・注意点 低温やけどが起きた場合は、応急処置をした上で医療機関を受診しましょう。 低温やけどの可能性がある場合、すぐに患部を流水で20分程度冷やします。熱が皮膚の深部に与えるダメージをなるべく早く抑えることが重要です。冷やすことで痛みも緩和されます。なお、保冷剤は冷たすぎるため、凍傷や水疱が破れるリスクを踏まえ、使用しないことが大切です。 また、衣類が被っているところに低温やけどが起きた場合は、無理に衣類を脱がずにそのまま流水で冷やしましょう。無理に衣類を脱ぐと皮膚が引っ張られて剥がれる恐れがあります。水疱がある場合は、なるべく手指で触れないようにして、破かないよう注意が必要です。 手指のやけどの場合、後から腫れてくることを想定し、あらかじめ指輪は外しておく必要があります。腫れると指輪を外すときに患部に触れて、痛みや炎症が増すことが懸念されます。 低温やけどは皮膚の深部まで損傷がおよぶⅢ度熱傷*と分類されるケースが多いとされています。数週間後に皮膚の変色や知覚鈍麻、黒色壊死を引き起こすこともあるため、小範囲の場合でも早急に医療機関への受診が必要となります。水疱が生じるⅡ度熱傷では、市販薬によって改善することもありますが、細菌感染を伴うと色素沈着やケロイド状の傷が残る可能性があるため、こちらも医師の診察を受けることが大切です。 一方、赤みや痛みのみが生じるⅠ度熱傷では、必ずしも医療機関を受診すべきとはいえませんが、やけどの状態を正確に判断することは難しいため、なるべく受診した方がよいでしょう。特に、顔や手、関節などに起きたやけどは、範囲が小さかったとしても治療を受ける必要性が高いとされています。 *やけどの深度は、熱による損傷が皮膚のどの深さまで達しているかで分類されます。「Ⅰ度熱傷」とは表皮のみの熱傷、「Ⅱ度熱傷」とは真皮までの熱傷、「Ⅲ度熱傷」とは皮下組織まで損傷がおよんだ熱傷のことです。 低温やけどの原因となりやすい環境・機器 低温やけどの原因となりやすい環境と使用機器について理解しておくことで、トラブル防止につながります。それぞれ、低温やけどになりやすい理由とあわせて詳しく見ていきましょう。 湯たんぽ 国民生活センターに、湯たんぽによる低温やけどの相談が寄せられています。金属製の湯たんぽをタオルで三重に巻いて足の下に置き、そのまま就寝したところ、くるぶしに痛みが起きてやけどに気づいたそうです。 湯たんぽは種類を問わず、低温やけどになるリスクがあります。タオルで包んでいたとしても、心地よいと感じる程度の温度で低温やけどになるため、あくまでも布団の中を暖めるために使用し、就寝時はとりだすと安心です。使い方や注意事項については、各メーカーの取扱説明書も確認しましょう。 カイロ 国民生活センターに、腰にカイロを貼って電気毛布を使用して就寝したところ、翌朝にカイロを貼っていた箇所に皮膚の深いところにまでおよぶやけどが起きていたとの相談が寄せられています。貼るタイプのカイロと電気毛布を組み合わせると、貼ったところが熱くなりすぎるため注意が必要です。 ホットカーペット ホットカーペットの上で寝ると、皮膚が触れているところに低温やけどが起きる恐れがあります。 消費者庁によると、薄手の服を1枚着た子どもをホットカーペットの上で寝かせていたところ、3時間程度が経ったころに背中が赤くなったとの相談が寄せられたとのことです。これは子どものケースですが、大人、高齢者でも同じようにやけどをする可能性があります。 * * * 低温やけどは、一般的なやけどよりも軽症なイメージを持つ方もいますが、損傷が深く専門的治療が必要となる場合があります。違いは、やけどを負うまでにかかる時間です。そのため、コンロの火やパネルヒーターなどだけではなく、湯たんぽやホットカーペットなどの使用にも十分に注意しましょう。 編集・執筆:加藤 良大監修:吉岡 容子医療法人容紘会高梨医院 院長東京医科大学医学部医学科を卒業後、麻酔科学講座入局。麻酔科退局後、明治通りクリニック皮膚科・美容皮膚科勤務。院長を務め、平成24年より医療法人容紘会高梨医院皮膚科・ 美容皮膚科を開設。院長として勤務しています。 【参考】〇国民生活センター「重症になることも 湯たんぽによる低温やけどに注意」https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen328.html2024/11/19閲覧〇国民生活センター「低温やけどにご用心 見た目より重症の場合も」https://www.kokusen.go.jp/mimamori/mj_mailmag/mj-shinsen241.html2024/11/19閲覧〇消費者庁「Vol.476 電気カーペットや湯たんぽによる低温やけどに注意!」https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_safety/child/project_001/mail/20191107/2024/11/19閲覧〇日本形成外科学会「やけど(熱傷)」https://jsprs.or.jp/general/disease/kega_kizuato/yakedo/yakedo.html2024/11/19閲覧

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