認定看護師に関する記事

インタビュー
2021年1月21日
2021年1月21日

【精神科訪問看護】「管理しない」精神科看護とは?

一般の訪問看護ステーションでも精神科の利用者さんを受け入れることもありますが、対応に難渋するケースもあるかと思います。 今回は訪問看護ステーションみのりの進さんと小瀬古さんに、そもそも精神科訪問看護とはどんなものか、何をゴールと考えるべきなのか、お伺いしました。 精神科看護の考え方 進: 生活を成り立たせるための管理をすることが、精神科の看護だと考えている方もいるかもしれませんが、それでは支援がないと生活が成り立たなくなってしまいます。 みのりでは、支援がなくても利用者さんが生活を組み立てられるようになり、最終的には訪問看護を卒業することを目指します。 精神疾患は症状が目に見えるものばかりではないので、利用者さんご自身が自分の変化に気づくのが難しいです。 人との関係性や環境の変化により、視野の偏りが出てしまったり、今まで通りにしようとしているのに、なんだかうまくいかない、コントロールできないということが出てきます。 幻聴などの症状はなくならないかもしれないけど、それを含めてどうやって自分自身をコントロールしていくか、一緒に考えて行動をサポートしていくのが精神科看護ですね。 ―訪問看護ステーションみのりとして、どんなことを大切にされていますか? 進: みのりでは、利用者さんもスタッフもすべての人が自分らしく、共に成長できる関係を大切にしています。そのために、どんな自分でいたいのか、あり続けたいのかというところをまず共有するようにしています。 例えば、利用者さんから「自分はやさしくありたい」と言われたとします。 私は、利用者さんの精神症状が悪くなり、客観的にやさしいと思える行動が少なくなったとしても「あなたがやさしい人だと知っていますよ、今は症状が悪化していて余裕がなくなってしまっているだけですよね。あなたなりの対処ですよね」というメッセージを送るようにしています。 どのような状態になったとしても、利用者さんがあり続けたい姿を見続ける。そうすると、他の人の前では大暴れする利用者さんも、「進さんの前ではちゃんとしよう」と思うようになるんです。 看護師は問題解決思考で、どうしても問題や悪いところをピックアップしてしまう傾向はあります。しかし、問題ばかりに着目してしまうと、その人のありたい姿が見えなくなり、看護師自身も利用者さんを「困った人」と認識することがあります。 その「困った人」という認識に偏ると、相手を変えて問題解決しようという思いが強くなり、説教くさくなったり、相手を変えるための管理行動が増えたりして、信頼関係が築けない状況が続くと考えます。 ―精神訪問看護では卒業を目指すということでしたが、導入からの流れはどのような形ですか? 進: 訪問看護導入の時期は、利用者さんが自分自身の症状や感情に振り回されてしまう傾向があります。 つまり利用者さん自身も、どのようなことが起こっているのか、それがなぜ生活に影響しているのか、なぜ行動がうまくいかないのかなど、わかっていないことが多いです。 中には、日々をなんとか乗り越え生きている人や、時間やお金に追われているような生活を送る方もいます。 ですので、初めの関わりとしては、そういった自分を知る、客観視するというアプローチが必要です。そこに病状や特性、捉え方の偏りがあったりすると、その思いに引っ張られて客観視しにくく明らかにできないので、どう取り扱うのかを一緒に試行錯誤していくイメージです。 このような訪問看護を展開すると、卒業間近には、「今月はこういう予定があるから、早めに準備しておこう」「ここまでは頑張れるけど、ほかのところで手を抜こう」などと生活を組み立てることができるようになります。 ―卒業が近づいてくると、訪問の頻度にも変化はありますか? 進: 訪問する頻度はそれぞれですが、週1~3回の方が多いです。セルフコントロールができるようになってきて訪問看護の卒業が近くなると、2週間に1回から月に1回くらいの頻度になります。 卒業するまでには2~5年くらいはかかりますけど、大阪のステーションは今年で9年目なので(2020年11月時点)、卒業される利用者さんも多くいます。 薬に頼らず回復する対処を考える、WRAPとは ―お二人はWRAP(元気回復行動プラン)のファシリテーターという資格をお持ちと伺いました。どのように活用されているのでしょうか? 小瀬古: WRAPは精神障害を持つ人たちによって作られた、自分で作る自分のための回復プランです。 「自分の取扱説明書」とも言われていますが、どんなときにどんなことを考えたらいいのか、いわゆる説明書というものには状態とそのときの対処が載っていますよね。それと同じようなことをやるんです。 例えば、「昨日は疲れてお風呂に入らなかったんだ」という話が利用者さんからあったとします。 ついつい「お風呂に入らないのは不潔になるので入りましょう」と促したくはなるのですが、あえて、「お風呂に入らないという対処なのかもしれない」「いつもの入浴をしないというのは早期のサインかもしれない」という視点が必要です。 具体的には、前者であれば疲れがピークなのでシャワーだけにしているのか、2日に一回の入浴にしているのかなど、意識的な行動なのかどうかということがポイントになります。後者であれば入浴する気力もなく、気づいたら入浴していないというサインとして捉えることが出来ます。 普段何気なくやっていることに注目して、利用者さんと共有することが対処にもつながるし、早期サインの共有にもなるということです。 トキノ株式会社 訪問看護ステーションみのり 統括管理責任者 / 看護師・WRAPファシリテーター 進あすか 精神科の急性期閉鎖病棟に勤務していた頃、退院した患者がすぐ病院に戻ってくる現状を見て地域に興味を持つ。30歳の頃に精神科特化型の訪問看護ステーションに転職。より良い働き方とケアの実現のため、2012年にみのり訪問看護ステーションの立ち上げる。2020年11月現在、大阪、東京、横浜、奈良に4事業所・8つのサテライトを運営している。 トキノ株式会社 訪問看護ステーションみのり 統括所長 / 精神科認定看護師・WRAPファシリテーター 小瀬古伸幸 看護補助者として精神科病院に就職、勤めながら正看護師を取得。その後、精神科救急病棟に約8年勤務。進さんに出会い、病院の中からではなく地域から精神科看護を変えていきたい思いから、訪問看護ステーションみのりに入職。

特集
2021年1月20日
2021年1月20日

精神科特化型ステーションに聞く、在宅で精神看護を実践するコツ

病院から在宅への移行が進むにつれて、地域で暮らす精神疾患の利用者さんが増えています。 精神疾患の方を訪問看護で看る場合、全国訪問看護事業協会等の実施する精神科訪問看護研修を受講すると、精神科訪問看護の加算が算定のできる資格が得られます。 しかしいざ精神疾患の方を訪問すると、コミュニケーションが難しい、どう介入すれば良いか分からないなど困ったことがあるのではないでしょうか。 今回は、精神科訪問看護に特化したステーションの管理者さんからお伺いした、在宅にて精神科看護を実践するコツについて、特集をお届けします。 肝はコミュニケーションにあり 「そもそも管理することはないと思ってもらったほうがいいかもしれませんね」と話すのは、訪問看護ステーションみのりの統括管理責任者・進さん。関東・関西圏にて精神科に特化した訪問看護ステーションをを展開しています。 精神科の訪問看護では、管理中心の病院とは異なり、症状とうまく付き合いながら、自分自身をコントロールして生活できることを目的としています。 「アセスメント技術を用いながら、症状なのか、本人のこだわりなのか、どんな生活歴があったのかなど、対話できちんとキャッチしていかないといけません。」統括部長で精神科認定看護師の小瀬古さんは、看護師側のコミュニケーション技術の重要性について述べています。 みのりでは、看護計画を利用者さんと一緒に立てていますが「言うは易し行うは難し」で技術が必要とのこと。 具体的にどんな思考のもとで精神科の訪問看護を実践し、人材教育をされているのでしょうか。実際のエピソードを交えてお話いただきました。 詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 精神看護の技術の磨き方(訪問看護ステーションみのり 進あすか、訪問看護ステーションみのり奈良 小瀬古信幸) 話題のオープンダイアローグ 都内にて精神科特化型のステーションを運営している、訪問看護ステーションKAZOCでは、オープンダイアローグという手法を取り入れた看護を実践しています。 オープンダイアローグとは、1980年代にフィンランドのケロプダス病院で始まった精神疾患に対する治療方法です。 「対話」を中心としたミーティングを重ねることで、精神疾患のもととなっているものに迫り、問題を解消することを目指します。 日本の精神科病院では99%の患者に投薬が行われていますが、ケロプダス病院ではなんとわずか25%。オープンダイアローグにて、薬での症状管理をも減らすことができるのです。 また、KAZOCでは「管理をしない、変容を求めない」をコンセプトの1つにしています。 「管理と変容の目に対して、本人が反発をして、溝がどんどん広がって問題が複雑化していきます。その行きつく先が精神科病院の長期入院なのではないかと仮説を立て、僕らは管理と変容を放棄しようと決めました」と代表の渡邊さんは話します。 管理や変容以外の手段をとして、上記のようなオープンダイアローグに加え、住まいを取り戻す支援活動のハウジングファーストといった取り組み等を行っています。 経験で積んできたものをいったん下ろし、地域の文化を知ることから始めることで、精神科を地域で看る視点を養っていく。地域資源を強化し、オンリーワンを目指す戦略で地域に必要な訪問看護ステーションとなっています。 オープンダイアローグやハウジングファーストを実際どのように展開されているのでしょうか。 詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 管理や変容を求めない精神看護「オープンダイアローグ」(訪問看護ステーションKAZOC 作業療法士・精神保健福祉士 渡邊 乾) 両ステーションともに「管理をしない」というキーワードが出てきました。管理をしない看護、というものは新鮮かもしれませんが、精神疾患の利用者さんを在宅で支援していくには重要なポイントになりそうです。

特集
2021年1月19日
2021年1月19日

新型コロナ、感染対策どうしてる?

2020年は新型コロナウイルス一色の年になりました。訪問看護の現場でも感染に注意を払い、気を張った対応を迫られていたのではないでしょうか。 2021年を迎えてもなお全国的に感染拡大し、中核都市だけでなく、地方にも感染の魔の手が迫っています。 そんな中、積極的に対策に乗り出している訪問看護ステーションがあります。今回は、感染対策マニュアルの作成やテレワークの導入など、さまざまな対応をしているステーションを特集でお届けします。 「濃厚接触者にならない」感染対策とは 東京都江戸川区を中心に全国に展開するWyL(ウィル)訪問看護ステーション。 代表の岩本さんは、有志のメンバーと共に「訪問看護事業者向け対応ガイド」を作成しました。 みなさんの訪問看護ステーションでも、発熱した利用者さんが新型コロナウイルス感染症の可能性があった場合、どのように対応すべきか悩んだというケースがあったかもしれません。 岩本さんは、こうした在宅でよく遭遇するケースに関してどう考え、どう対処したら良いかの情報を発信しています。詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 コロナ禍で、利用者さんが発熱したら訪問するべきか?(WyL訪問看護ステーション 岩本大希) コロナ禍でも利用者数アップの秘訣 全国に展開するリカバリー訪問看護ステーション。 コロナ禍に1人で悩む利用者さんを救うため「こういった時期だからこそ、訪問看護に行こう」と伝えていると代表の大河原さんは言います。 新型コロナウイルス感染症の影響で、多くの訪問看護ステーションで収益が下がっている中、リカバリーでは20%ほど利用者が増えたそうです。 直接会いにいくのではなく電話での営業に切り替えるなど、営業方法を工夫することで、順調に収益も伸ばすことに成功されています。具体的なコロナ禍での営業方法やステーションの方針決定等について、詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 牛丼チェーンを見習って、訪問看護をメジャーに!(リカバリーインターナショナル株式会社 大河原峻) ICTを活用したテレワークの導入 東京都で展開するケアプロ訪問看護ステーション。 緊急事態宣言の時は、情報がまだ少なく何をどうすべきか対応が難しかったと、在宅医療事業部長の金坂さんは話します。 一方、状況が整理できてくると、電子カルテの利用やGoogleカレンダーでのスケジュール管理など、元々ICTを活用していたことで、対応がスムーズに進んだそうです。 現在でもテレワークの導入や可能なスタッフには直行直帰をしてもらうことで、スタッフ同士の接触を最小限にするような工夫をされています。 テレワーク導入等の具体的な新型コロナウイルス対応について、詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 災害時対応を変えるためのチャレンジ(ケアプロ株式会社 金坂宇将) 感染管理認定看護師ならではの視点で対策 愛知県名古屋市にあるテンハート訪問看護ステーション。管理者の佐渡本さんは、感染管理認定看護師の資格を持っています。 一番重要なのは「全滅しない対策をすること」と佐渡本さんは言います。仮にスタッフ全員が濃厚接触者になってしまった場合、2週間は訪問看護業務が停止になってしまうからです。 そのためには、適切な対策が必要になります。発熱者の訪問に個人防護具を身に付けて対応することもあると思いますが、つい見落としがちになるのは「個人防護具を外す時」だそうです。 在宅の現場では清潔管理の限界があるかもしれませんが、個人防護具を身につけていても、対応に不備があるとウイルスが付着してしまう可能性があります。 感染管理認定看護師ならではの新型コロナウイルス感染症への具体的な感染管理アドバイスについて、詳しくはこちらの取材記事をご覧ください。 感染管理認定看護師に聞く、新型コロナの感染対策(テンハート訪問看護ステーション 佐渡本琢也) どの訪問看護ステーションも、苦しい状況の中で訪問し続けてくださっていると思います。この特集が、新型コロナウイルスの猛威を乗り切っていくためのヒントとなれば幸いです。 またツールには感染症のマニュアルも準備しておりますので、こちらも合わせてご活用下さい。

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