退院調整に関する記事

退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス
退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス
特集 会員限定
2024年10月22日
2024年10月22日

退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス【セミナーレポート後編】

2024年7月12日のNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナーのテーマは、在宅緩和ケアと病院との連携。講師には、訪問看護と病院の地域連携部門の両方を経験した廣田芳和さん(楓の風在宅療養支援株式会社)をお招きしました。 セミナーレポートの後編では、退院支援・退院調整の具体的なプロセスを中心にまとめます。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 >>前編はこちら在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本【セミナーレポート前編】 【講師】廣田 芳和さん楓の風在宅療養支援株式会社 スーパーバイザー/元 緩和ケア認定看護師(~2024年6月)神奈川県内の病院で約13年にわたって勤務した後、「在宅療養支援ステーション楓の風」に入職し、管理者も経験。その後は前職の病院に戻り、地域連携部門に約3年間勤め、再び訪問看護の現場に戻って現在に至る。 退院支援・退院調整のプロセス 退院支援・退院調整は3段階に分けられ、以下のような内容を実施します。 第1段階:外来入院が決定してから入院後3日以内入院前の生活状況を調査するとともに、入院理由・目的・治療計画などをふまえて退院時の状態像を把握。また、退院支援の必要性を医療者と患者さん、ご家族で共有。第2段階:入院3日目から退院までアセスメントを継続し、チームで情報の共有や支援策の検討を実施。また、患者さんとご家族が疾患について理解、受容するための支援や、退院後の生活イメージの構築も行う。第3段階:必要になった時点から退院まで退院を可能にする制度・社会資源の調整や、退院前カンファレンスを実施。 段階ごとの詳細やポイントも見ていきましょう。 第1段階の内容とポイント 入院前面談 多くの病院では、患者さんの情報を把握し、患者さんに情報を提供するための面談を入院前に行います。主な面談の内容は以下のとおりです。 ・身体・社会・精神的な情報の把握 ・現在利用している介護サービスの把握・褥瘡や栄養状態の評価・服薬中の薬の把握・退院困難な要因の有無の評価・入院中に行われる治療・検査や入院生活についての説明 退院困難要因の把握 早期にスクリーニングを実施し、入院理由や目的、治療計画などをふまえ、退院困難要因の有無を予測します。なお、ほとんどの患者さんが何らかの項目に当てはまるのが実状です。 退院支援の必要性の共有 患者さんとご家族の病状への理解度を確認。退院後の見通しの説明も行います。 第2段階の内容とポイント 継続的にアセスメントし、チームで支援 多くの場合、スクリーニングに基づいたカンファレンスを実施し、情報を整理しながら具体的な支援方法を決めていきます。 退院後の生活イメージを相談・構築 患者さんやご家族の不安を一つひとつ明確にし、在宅に戻る自信がもてるように支援します。不安を払拭するには以下3つの点を意識し、医療・看護を在宅モードに変換することが必要です。 (1)今後の変化を予測し、必要な処置や治療に関する準備・調整をしておく(2)自己管理がどの程度可能か、サポート体制はどのくらい整っているかを把握する(3)生活の場に合わせて可能な限りシンプルに管理できる方法を考える なお、ご家族の介護力をふまえて訪問看護の利用が決まっていれば、この段階で退院指導に訪問看護師も携われると、「在宅での現実的な方法」をより見つけやすくなるはずです。これは、退院前カンファレンスの意義にも通じると思います。 また、入院に伴うADLの低下を最小限にするよう調整すること、家族が不安な思いを表出できるようにすること、食事や排泄、入浴などのアセスメントと支援を行っていくことが重要です。 患者さんとご家族の疾患理解・受容への支援 第2段階では、患者さんとご家族が疾患について理解し、受け入れるための支援も行います。例を挙げながら見ていきましょう。 入院時の患者さんの情報 肝臓がんを患い、外来で化学療法を続けていたが、緊急入院1ヵ月前から食事量が減り、体重も5kg減少体力が低下しており、トイレに行くのがやっとの状態腹部の痛みあり 検査の結果 がんは腹膜にも転移し、腹水が溜まっていた末期状態と診断医療用麻薬が使用され、痛みは改善傾向 検査結果をふまえ、医師から病状と新たな治療選択肢がないことが説明され、「残された時間の過ごし方(病院、ホスピス、家のどこで最期を迎えるか)を考えてほしい」と伝えられました。本人とご家族はもちろんショックを受けて動揺しますが、この先の選択にはあまり多くの時間はかけられません。 この場合、病棟や退院支援部門の看護師は以下のような関わりをします。 ・時間の許す限り不安な気持ちに寄り添う・返答できる質問には真摯な態度で丁寧に答える・利用者さんとご家族の希望を伺う・転帰先をイメージできるよう、ホスピスやそれに類似する施設、もしくは在宅での生活についてそれぞれわかりやすく説明する 特に、不安から「在宅療養は不可能」と判断してしまうご家族が非常に多いです。適切なサービスを利用すれば選択できることを、きちんと説明しなければなりません。 また、以前は病棟看護師が在宅療養は困難と判断してしまうケースもありましたが、最近では在宅緩和ケアの知識をもった退院支援部門の看護師やソーシャルワーカーに対応を任せる病院が増加しています。そのため、説明不足が原因で在宅を選べなくなる事例は減ってきています。 第3段階の内容とポイント 第3段階で行う退院前カンファレンスには、3つの目的があります。 (1)包括的なケアのための情報の共有(2)患者・家族が安心して退院できる環境づくり(3)安定した退院後の療養生活の確保 本来は、地域ケアが必要な全ケースで退院前カンファレンスを行うのが理想的でしょう。しかし、人員が潤沢ではない現状では難しいため、必要性が明確なケースに絞って行われています。 退院前カンファレンスでは、以下のような点を確認します。 ・住環境や家族との関係を含めた利用者さんの基本情報・病名や予後告知の状況、それに対する本人とご家族の理解度・本人とご家族の意向 ・転帰先(在宅or施設)・住環境の改修(手すりの設置や車イスの導入)の必要性・訪問看護指示書をはじめとした書類の内容・薬の処方(退院時処方の量や訪問診療との調整)・退院時の移送方法 そのほか、医療管理の状況や課題を地域ケアチームへ引き継いだり、訪問看護の頻度や内容、その費用を説明したりもします。必要に応じて、ヘルパーやデイサービス、訪問リハビリの活用検討も行います。 * * * 在宅緩和ケアに移行するにあたっての流れや課題を見てきましたが、やはり重要なのは訪問看護と病院の連携です。互いを「同じ地域の一員であり、同じ志をもつ者」と認識し、協力することが、よりよいサービスにつながるはず。ぜひ歩み寄る意識をもっていただけたら幸いです。 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】〇在宅ケア移行支援研究所 宇都宮宏子オフィス「在宅ケア移行の為のヒント」https://www.utsunomiyahiroko-office.com/zaitaku.html2024/08/26閲覧

在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本
在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本
特集 会員限定
2024年10月15日
2024年10月15日

在宅緩和ケアの課題と退院支援・退院調整の基本【セミナーレポート前編】

2024年7月12日に開催したNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「【事例で解説】在宅緩和ケアの課題&病院との連携」。在宅における緩和ケアの課題や退院支援・退院調整の具体的な工夫などを、訪問看護と病院の地域連携部門の両方を経験した廣田芳和さん(楓の風在宅療養支援株式会社)に教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、在宅緩和ケアの課題の概要と、その解消に向けて訪問看護師に求められることなどをまとめました。 ※約75分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】廣田 芳和さん楓の風在宅療養支援株式会社 スーパーバイザー/元 緩和ケア認定看護師(~2024年6月)神奈川県内の病院で約13年にわたって勤務した後、「在宅療養支援ステーション楓の風」に入職し、管理者も経験。その後は前職の病院に戻り、地域連携部門に約3年間勤め、再び訪問看護の現場に戻って現在に至る。 在宅緩和ケアの課題 在宅緩和ケアの難しさは、利用者さんによってアプローチの内容やタイミング、求められることが異なる点にあります。 例えば、がんの利用者さんは非がんの方に比べて「訪問看護開始から死亡までの期間」が短く1)、スピーディーな対応が求められます。一方で、非がんの慢性疾患を抱える利用者さんは予後予測が難しく、死にゆく過程は多様。治療の必要性も最後まで残されており、「終末期」の定義づけが難しいため、緩和ケアが必要になる時期はさまざまです。また、非がん疾患の高齢者の意思決定支援2)では、本人がどう生きたいかを明確にして、その実現を支えることが求められます。 このように、在宅緩和ケアに取り組むにあたっては、医療機関との情報共有が重要になります。そこで必要になるのが、退院支援・退院調整。特に慢性疾患の利用者さんのケースでは、退院支援・退院調整がケアの質を左右するといっても過言ではありません。 退院支援・退院調整とは 退院支援・退院調整とは、それぞれ以下の内容を指します(具体的な内容やポイントは後編でご紹介します)。 退院支援患者さんが自身の病気や障害について理解し、退院後も必要な医療・看護を受けながらどこでどのように生活を送るか、自己決定するための支援。退院調整退院支援で明らかになった想いや願いを実現するために、ご家族の意向をふまえて、「環境・人・物」を社会保障制度や社会資源につないでいく過程。 退院支援・退院調整は、患者さんの「こう生きていきたい」という想いに基づき、人生の再構築をサポートすることといえるでしょう。 少子高齢化が進み、医療費が増加している今、在院日数の削減は全病院の共通の課題。その解消のカギとなるのが、より効率的な退院支援・退院調整です。その重要性はますます認識されており、病院で専門の部門や担当者が設けられたり、関連する診療報酬が追加されたりする動きもあります。 病院との連携に関する今後の課題 在宅緩和ケアへの移行に伴う「訪問看護ステーションと病院との連携」においては、さまざまな課題があります。 多くの病院で看護師が不足する今、一人ひとりの退院後を見据えて退院支援部門につなげたり、訪問看護への依頼を考えたりする時間が十分にとれないことは珍しくありません。また、連携に関する教育が行き届いていないケースもあると思います。 そのために訪問看護師のみなさんにお願いしたいのが、病院関係者への積極的な働きかけです。連携の基本は、相手を知り、理解すること。患者さんが入院している間に退院前カンファレンスをはじめとした話し合いの機会をもち、在宅緩和ケアについて一緒に考えることができれば、連携体制はよい方向に変わるはずです。そんな双方の歩み寄りが、今後の在宅緩和ケアにおける連携で最も重要になると思います。 >>後編はこちら退院支援&調整のプロセスと退院前カンファレンス【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア 【参考】1)厚生労働省.「訪問看護について」(平成23年11月11日)P.30https://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000001uo3f-att/2r9852000001uo71.pdf2024/08/26閲覧2)藤田愛.『「最期の場所」を決める 最終的な意思決定支援とは』.訪問看護と介護,医学書院.2015,20(2)

認定看護師活動記 近畿
認定看護師活動記 近畿
コラム
2023年8月22日
2023年8月22日

地域と病院をつなげる取り組み【訪問看護認定看護師 活動記/近畿ブロック】

全国で活躍する訪問看護認定看護師の活動内容をご紹介する本シリーズ。今回は、日本訪問看護認定看護師協議会 近畿ブロック、雨森 千恵美さんの活動記です。近畿ブロックの活動内容や、フィードバックカンファレンスの導入をはじめとした看看連携の取り組み、地域で訪問看護の存在感を高める取り組みなどをご紹介いただきます。 執筆:雨森 千恵美訪問看護ステーション ゆげ(滋賀県) 管理者。看護学校卒業後、医科大学付属病院に勤務、代謝・内分泌内科病棟での臨床経験を活かし、糖尿病療養指導士の資格を取得する。結婚出産後は、夜勤のない職場に復帰するため訪問看護ステーションに再就職。在宅看護の魅力にとりつかれ2012年に独立。訪問看護を深く学ぶため訪問看護認定看護師の資格を取得した。2018、2019年には協議会の近畿ブロック長に就任。「近畿ブロックの規約」の作成を行い、その後も「在宅看取りの育成研修事業」を企画。実行力や統率力を評価されている。 現在は、訪問看護のパイオニアとして後任の指導と、地域と病院がつながるしくみ作り(フィードバックカンファレンスの定着)や認定看護師の活躍の場作り、災害時支援チームの一員としての活躍の場をますます広げている。 会員相互の交流を図りネットワークを構築 まずは、私が所属している日本訪問看護認定看護師協議会の、近畿ブロックの活動についてご紹介します。 近畿ブロックでは、毎年訪問看護認定看護師としての日頃の実践報告を6府県の代表者が発表する日を設けています。認定看護師として自身の活動を振り返り、今後に活かす貴重な機会です。また、実践報告と同時に「経営について」や「災害といのち」などの関心の高いテーマの基調講演を行っており、学びつつ交流もできる、非常に充実した1日になるため、会員の満足度も高くなっています。これらの活動に参加していると、訪問看護認定看護師として同じ志を持った熱い仲間と交流することができるため、企画すること自体が非常に楽しいです。 フィードバックカンファレンスで看看連携 私が行っている、地域での活動についてもお伝えします。私が住んでいる滋賀県では、全世代型地域包括ケアシステムの充実のために、圏域別に地域看護ネット会議を開催しています。過去には、地域課題として「退院後の振り返りができていない」ことが取り上げられ、まずは「病院と在宅との看看連携強化が必要」との意見も出ました。 そこで私は、訪問看護認定看護師実践報告会で聴いた「フィードバックカンファレンス」の手法が、看護職同士がつながるしくみとして効果的ではないかと提案しました。フィードバックカンファレンスとは、フィードバックが必要だと感じたケースについて、病院側・地域側のどちらからでも依頼できる、というしくみです。例えば病院側が訪問看護ステーションにフィードバックカンファレンスを依頼することにより、退院時の支援や調整が適切であったか、振り返ることができます。 2019年から始め、今年で5年目。コロナ禍で一時はオンライン形式の開催に変更し、調整が難航する時期もありましたが、2023年7月時点までで16例の実績をつくることができました。 実際に開催してみると、フィードバックカンファレンスは、相互理解や信頼関係の構築に役立つのはもちろんのこと、認定看護師の指導を受ける機会になる、看護師以外の専門職とつながる機会になる、そして本人・家族の思いを共有できる場になる、といったメリットがあることがわかりました。今後は、よりフィードバックカンファレンスが全国に普及するよう願っています。 地域での訪問看護の存在価値を高める そのほかにも、地域の中で訪問看護の存在価値を高めるための活動を行っています。 病院看護では医療職同士のつながりのみとなってしまうケースも多くありますが、地域ではさまざまな専門職が協働しています。医療と介護と看護が一体となって、療養者の日常生活の支援から看取りまで実践していきます。多職種との連絡・調整・協働は、訪問看護の最も得意とする分野であり、必要不可欠。人的ネットワークを広げて信頼関係を構築しておくことは、困難なケースでの交渉・円滑な支援につながるでしょう。 最近は、高齢一人暮らしの利用者が増えています。癌ターミナルや認知症になっても、最期まで家で過ごすためにどうしたら良いか。地域の特性を活かして行政と一体となり、地域住民も巻き込んでいく必要があります。本人・家族はもちろん、支援者のすべてが穏やかでいられる方法を模索するのも、やりがいがあって楽しいものです。 また、医療的ケア児をとおして学校関係者とつながったり、育児相談事業を行って、地域の母親たちとつながったりする活動も行っています。新たなつながりを構築することにもやりがいを感じています。新型コロナウイルス感染症によって自宅療養者が急増したときは、保健所の負担を少しでも減らしたいと、電話による健康観察や自宅訪問事業も受託しました。多いときは1ヵ月で2,000件を超える対応を行いました。今後も、さまざまな場面で訪問看護の力を発揮し、地域での存在価値を高めていきたいと考えています。 * * * 訪問看護の魅力は何でしょうか?道中は四季を感じながら利用者宅に向かうと「待ってました」の笑顔に迎えられ、時には想像以上の力を発揮され隠されたパワーに驚かされます。日常生活を一緒に過ごし、喜びと悲しみを共有し、人として成長させていただきます。訪問看護をはじめて25年。在宅医療をこよなく愛し、日々やりがいを持って看護を行っています。訪問看護を目指す方が増え、一緒に訪問看護の素晴らしさを共有できる日を待ち望んでいます。 ※本記事は、2023年7月時点の情報をもとに構成しています。 編集: NsPace編集部

特集
2022年5月2日
2022年5月2日

退院前カンファレンスってどんなことするの?

退院前カンファレンスに参加されたことがありますか?参加したことがある人は気づいているかもしれませんが、退院前カンファレンスは、それぞれの医療機関や対象患者様、参加する構成メンバーによって内容が様々です。 そのため、スタンダードな退院前カンファレンスはどんなものなのか、感覚が掴みづらいという人も多いのではないでしょうか。 退院前カンファレンスを開催する目的や大まかな進行内容は基本的には同じです。ここでは退院前カンファレンスの基本的な概要にご説明します。 ポイントを掴んで、退院前カンファレンスで有益な情報を得ることができるようにしましょう。 退院前カンファレンスの目的とは? 退院前カンファレンスは、退院予定の患者様で、自宅での療養に在宅サービスを利用する必要のある場合に開催します。カンファレンスを開催する目的として、2つ挙げることができます。 一つ目は、入院医療機関が持っている患者様の情報を、直接在宅サービスの担当者へ情報提供することです。自宅にて訪問看護などの在宅サービスを利用する際に必要な情報について、直接顔を合わせて情報交換することができます。顔の見える連携が取れると、退院後にわからないことがあった場合でも、直接問い合わせがしやすくなります。 2つ目の目的としては、患者様、家族への安心感の提供です。事前に病院に来て、医療機関から訪問看護の担当者を紹介することで、患者様、家族が安心するということがあります。会ったことがない人に自宅で初めて会うというのは誰でも抵抗感があることです。 また、スタッフ同士が連携している様子を患者様、家族に見てもらうことにより、しっかりと情報交換ができて連携ができているのだと実感してもらえます。それが患者様、家族と在宅サービス担当者との信頼関係の構築と在宅療養への安心感に繋がります。 誰が参加するの?主催は? ほとんどの場合、退院前カンファレンスを主催するのは、入院している医療機関の医療ソーシャルワーカーです。医療ソーシャルワーカーが院内の関係職種や在宅サービスの担当者へ連絡し、カンファレンスの日程調整をします。 院内の関係職種については、対象となる患者様を担当している医師、病棟看護師、リハビリスタッフ、薬剤師、栄養士、地域連携関係部署の退院調整看護師、医療ソーシャルワーカーといったメンバーです。 在宅サービスからのメンバーとしては、在宅医、訪問看護師、ケアマネージャー、調剤薬局の薬剤師、歯科医師、歯科衛生士、訪問リハビリスタッフ、訪問ヘルパーなどです。必要に応じて、利用するデイケアやデイサービスの担当者や福祉用具業者、医療機器業者なども参加することもあります。 また、患者様、家族がカンファレンスに参加してもらい、希望や意見を聞いたり、医療機関側と在宅サービス関係者の連携の様子を見てもらったりします。 退院までの間に、これだけの人数を集めてカンファレンスをするには、日程調整が難しい場合もあり、すべてのメンバーが集められないこともあります。その時には、記録を作成し、患者様、家族に了解を取った上で、記録を各担当者へ送り情報共有を図ります。 退院前カンファレンスの内容は? 退院前カンファレンスの内容は、病気や治療、症状のコントロールに関すること、病棟での看護状況、リハビリの内容、処方内容や服薬の仕方、社会保障制度の活用状況、利用予定の在宅サービスの内容等について、情報共有とディスカッションをします。 入院中の管理を在宅でそのまま行うわけではありませんので、入院中に在宅に合わせた管理に移行するために打ち合わせをします。 また、患者様、家族の希望や意見、心配事などについても話をしてもらい、カンファレンスで検討します。 進行は、患者様、家族の話を聞きながら進めることもあれば、職種ごとに一通り基本情報のプレゼンを先に行うなど、患者様、家族のキャラクターやその場の雰囲気で司会進行する人が判断するでしょう。それぞれの担当者が情報をまとめた資料等を配布することもあります。 退院前カンファレンスでの収益計算 退院前カンファレンスに参加することは、担当する患者様が退院する前に多くの情報を得ることができますのでとても有益なことです。 しかし、参加するとなったら、医療機関まで赴く手間と時間とお金がかかりますよね。訪問の時間を削ってスタッフをカンファレンスに派遣するわけですから、在宅サービス事業者にとっては、退院前カンファレンスに参加して収益が出るのかは気になるところだと思います。 訪問看護ステーションの看護師が退院前カンファレンスに参加した場合には、退院時共同指導加算を算定することができます。 ただ、退院前カンファレンスに参加するメンバーや患者様の状態、複数の訪問看護ステーションの参加などの条件によっては算定できない場合もあります。算定要件には細かな規定があるため、算定する際は確認が必要です。 おわりに ここでは、退院前カンファレンスに関する基本的な概要についてご紹介しました。 在宅サービスを利用する退院予定の患者様の全てを対象に退院前カンファレンスを実施できれば良いのですが、急な退院決定により実施できなかったり、医療スタッフへの過剰な業務負担により開催が難しかったりし、全ての患者様に退院前カンファレンスを提供することができていないのが現状です。 しかし、退院前カンファレンスができないケースであっても、医療機関側と在宅サービス担当者が電話や文書による密な連携を図り、在宅療養を開始する患者様、家族の安心、安全のために努力する必要があります。退院前カンファレンスは情報共有の一つの方法です。上手に活用して、在宅療養サポートの充実につなげたいですね。 記事提供:株式会社3Sunny(スリーサニー)

コラム
2021年1月20日
2021年1月20日

サービス担当者会議に参加する上でおさえるべき3つのポイント

訪問看護ステーションで働き始めると“サ担”や“担会”という聞き慣れない言葉を耳にすることがあると思います。 私自身も転職した当初に「明日、サ担に同行付けたから見学してきて!」と言われて「サ担?!なにそれ?」となった覚えがあります。 今回は、そんなサービス担当者会議に参加する上でおさえるべき3つのポイントをお伝えします。 ①サ担が開かれる目的を把握する サ担が開かれるタイミングは大きく分けて下記の3パターンがあります。 1、ケアプランが立案されたとき 2、介護保険の認定期間切れや認定区分変更されたとき 3、著しい状態の変化や、環境の変化によりサービス調整が必要なとき この1〜3のどれに当てはまるのかを理解することで事前の準備が変わってきます。出席が難しい場合は照会という形で文書をFAXすることもあります。 ②訪問看護師としての役割を意識する サ担は介護保険における会議のためケアマネージャー、ヘルパー、訪問入浴、福祉用具、など非医療職のメンバーが集まります。 訪問看護師としての役割は、疾患による身体状況・症状の把握、今後の予測から利用者・家族にサービスの提案・調整をすることです。そのためフィジカルアセスメントだけでなく、地域を取りまく社会資源や制度を理解することも重要となります。 ③多職種で目標を共有する サ担の場では利用者・家族が今後どんな生活を送りたいのか、そのために必要なサービスは何か、何を目標に介入していくかを共有することが大切です。サ担でしっかり介入の方向性を擦り合せて、個別性の高いケアプランを作っていくことが重要となります。サ担に参加する前には事前に看護師間でも意見交換しておくと良いと思います。 藤井 達也 地元名古屋の大学を卒業後、聖路加国際病院の救命救急センターで看護師として働き始める。高齢者の最期の在り方について疑問を抱く中で、より深く意思決定の場面に関わっていきたいと考え、訪問看護の道へ。現在はウィル訪問看護ステーション江戸川にて訪問看護師として働きながら、教育、採用、管理業務の一端も担っている。

コラム
2021年1月20日
2021年1月20日

末期がん利用者の受け入れ時、3つのポイント 

  訪問看護の働く上で、いずれは受け持つことになる末期がんの利用者。病院から訪問看護に転職する理由に、「自宅での看取りに関わりたい」という方は多いのではないでしょうか?しかし、いざ受け持つとなると、どんな情報を収集して調整していけば良いか迷うことも多いと思います。今回は、末期がんの利用者の受け入れから退院するまでにやるべき3つのポイントをお伝えしたいと思います。   ①基本情報を収集する 新規依頼の電話相談を受ける際に事前に収集する項目をテンプレート化しておくと漏れなく確認することができます。診療情報提供書や看護サマリーを病院に依頼しても良いかと思います。具体的な確認項目としては、現病歴・既往歴、本人・家族へのIC状況、病識、ADL、使用薬剤、デバイス、KP/家族、介護保険の使用状況などが挙げられます。また、病院側には退院カンファレンスを依頼して退院前に利用者・家族と直接顔を合わすことも重要です。 ②利用者・家族が安心して家に帰れるように配慮する 末期がんの利用者やその家族は「本当に家に帰って大丈夫かな」「やっぱり最期は病院のほうが安心かな」など退院することに対して不安を抱えています。その点でも退院カンファレンスの開催を依頼し、退院するにあたって不安に感じていることを事前に把握して少しでも軽減できるようにアプローチすると良いかと思います。退院前に顔合わせして自宅でのサポート体制を知ってもらうことや緊急時対応も具体的に説明することで安心してもらえることが多いです。 ③多職種で目標の共有、サービスを調整する 基本情報を収集したら、退院後の生活をイメージします。現状で家に帰ったら何が困りそうか、その困りごとはどのようにサポートすれば解決もしくは軽減することができるだろうかを考えます。訪問看護としては、訪問頻度やケア内容、使える社会資源は何かを検討します。末期がんの方は亡くなる直前までADLが保たれている場合が多く、訪問診療の導入や介護保険の利用が後手に回るケースがあります。そのため起こりうる症状や状況を予測しながら早めに訪問診療やケアマネジャーを打診しておくことも必要です。その際に「どうして家に帰る選択をしたのか?」「今後どのように過ごしたいのか?」を多職種で共有することも重要です。 さいごに 私自身、がん末期の方と関わる中で本人・家族の葛藤と向き合いながら最期に向けて伴走できることが訪問看護の醍醐味だと思っています。退院支援は伴走のスタートラインなので、ここを丁寧に実践することが大切です。上記3つのポイントを意識して利用者・家族と信頼関係を築きながら介入してみてください。 藤井 達也地元名古屋の大学を卒業後、聖路加国際病院の救命救急センターで看護師として働き始める。高齢者の最期の在り方について疑問を抱く中で、より深く意思決定の場面に関わっていきたいと考え、訪問看護の道へ。現在はウィル訪問看護ステーション江戸川にて訪問看護師として働きながら、教育、採用、管理業務の一端も担っている。

コラム
2021年1月20日
2021年1月20日

人工呼吸器を使用する利用者受け入れ時、3つのポイント

現在、病院から在宅に帰ってくる利用者の重症度は上がっており、今後も医療依存度の高い方を受け持つケースも増えていくと思われます。その中でも侵襲的人工呼吸器を装着しているケースは看護師にとっても心理的負担が大きく、抵抗感もあるのではないでしょうか?また、家族も退院するにあたって不安が大きい場合が多いです。今回は少しでも不安なく介入できるように3つのポイントをお伝えしたいと思います。   ①どんな設定になっているのかを理解し、機械操作にも慣れる 侵襲的人工呼吸器といってもモードによって設定項目、観察項目が違います。入院等で設定変更された場合や初回介入時には、まずどんな設定になっているのかを把握しましょう。ただ、機械自体を触ることにも抵抗感がある場合もあると思うので介入前にレンタル会社に勉強会の依頼をして、事業所スタッフみんなで事前に機械に触れてみること、観察ポイントに関してレクチャーを受けておくと心理的負担は軽減できるかと思います。   ②経過を追えるようにチェックシートを作る 観察項目(換気量、吸気圧、気道内圧、呼吸回数、SpO2など)を記録に残せるようにチェックシートを作成すると日々の訪問の経時記録として残せます。通常時の記録を取っておくことで異常に気づきやすく、早期の対処につながります。また、回路交換や主電源の確認など定期的に確認が必要な項目もシート内に入れておくと漏れなく観察できるかと思います。   ③緊急時対応に関して事前に家族に指導する カニューレの事故抜去や停電などは看護師不在のときに起こりうるリスクがあります。その際に医師や看護師が自宅に到着するまでには時間がかかるため、カニューレ再挿入の手技、バックアップ電源へのつなぎ変え、蘇生バックの使用などは事前に家族に指導することやシミュレーションを実施すると良いでしょう。病院で指導を受けていても自宅環境で再度実施することが大切です。また、シミュレーションを実施することで看護師自身も訪問時にトラブルが起きたときに焦らず対応ができると思います。   さいごに 人工呼吸器もさまざまな機種や機能があって複雑化しています。しかし、基本的な知識と異常時の対応は共通しています。私自身もはじめは人工呼吸器に心理的抵抗感がありましたが、今では呼吸アセスメントする上での味方だと思っています。まずは触れてみること、数値からアセスメントしてみることから少しずつ慣れていってもらえればと思います。最後に私自身が人工呼吸器に関して参考にしている本を1冊紹介します。人工呼吸に活かす! 呼吸生理がわかる、好きになる~臨床現場でのモヤモヤも解決!(著:田中竜馬)呼吸のメカニズムから人工呼吸器の基本的な知識まで網羅しながら分かりやすく解説が載っているので、基礎的な知識を身に付けるにはオススメです。   藤井 達也地元名古屋の大学を卒業後、聖路加国際病院の救命救急センターで看護師として働き始める。高齢者の最期の在り方について疑問を抱く中で、より深く意思決定の場面に関わっていきたいと考え、訪問看護の道へ。現在はウィル訪問看護ステーション江戸川にて訪問看護師として働きながら、教育、採用、管理業務の一端も担っている。

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