アロマテラピー 基礎知識&医療現場での注意点【セミナーレポート前編】
2024年4月19日に開催されたNsPace(ナースペース)主催オンラインセミナー「アロマテラピーの基礎知識&活用術~毎日に癒しを~」。アロマアドバイザーの資格をもつ訪問看護師の有賀莉奈さんを講師にお招きし、アロマテラピー(アロマセラピー)に期待できる効能や訪問看護の現場での活用方法などを教えていただきました。 今回はそのセミナーの内容を、前後編に分けて記事化。前編では、アロマテラピーの基礎知識と、医療現場で実践する際の注意点をご紹介します。 ※約60分間のセミナーから、NsPace(ナースペース)が特に注目してほしいポイントをピックアップしてお伝えします。 【講師】有賀 莉奈さん訪問看護師/アロマアドバイザー(ナード・アロマテラピー協会)看護師として諏訪赤十字病院で8年間勤務した後、出産・育児に専念する期間を経て、yui訪問看護ステーションにて臨床現場に復帰。アロマテラピーを深く学ぼうと考えたきっかけは、自身の母親が闘病中に「アロマの力」に救われた場面を目の当たりにしたこと。現在は看護業務の傍らメディカルアロマセラピストとして、利用者さんの心身を支えるケアに取り組んでいる。 アロマテラピーとは アロマテラピーとは、植物の香り成分を抽出した精油(アロマオイル)を用いて、心と体の不調の改善を目指す健康管理法です。精油とは、植物から採取・生成した香りの油(揮発油)のこと。その香りはとても強く、植物の有効成分も高濃度に含んでおり、たった一滴でも十分に楽しめるものが多いです。 代表的なメリットは、心身のリラックス。精油の力で自律神経やホルモンバランスを整え、体の緊張をほぐし、気持ちを落ち着け、心身ともに心地よい状態をつくることを目指します。 なお、精油を活用する方法は、大きく以下の2種類に分かれます。 活用方法1:精油を嗅ぐ 嗅覚は、五感の中で唯一、脳へダイレクトに刺激を伝えられます。精油を嗅ぐと、香り成分が鼻の粘膜から脳に伝わり、自律神経系や内分泌系、免疫系などの神経系に影響を与えます。感情や本能を司る大脳辺縁系にも刺激が直接伝わるため、人は「そのときの自分の体が求めている香り」を嗅ぎ分けられるといわれています。 活用方法2:精油を塗る 精油を体に塗ると、その部位に作用します。中には、皮膚から吸収されて血管に入り、体をめぐって作用する精油もあります。 精油を安全に使用するための原則 精油を扱う際は安全への十分な配慮が必要です。以下の点を必ず守ってください。 ・パッチテストを行うアレルギー反応が出る可能性があるため、使用前はパッチテストを行いましょう。・原液のまま使用しない精油は、ホホバオイルやスイートアーモンドオイルなどの「キャリアオイル(精油を体へ運ぶためのオイル)」で薄めて使用します。精油は「油」なので水には溶けません。そのため、手浴や足浴で楽しむ場合には、乳化剤を使用します。精油が直接皮膚に付着すると皮膚トラブルを起こす可能性があるので、十分に注意してください。・異変を感じたら使用を中止するかゆい、ヒリヒリする、気分が優れないなどの異変を感じた場合は、すぐに使用を中止しましょう。体に精油を塗った場合は、塗布した部位を水で洗い流したり、濡れたタオルで拭きとったりしてください。・安全に配慮して保管する引火性があるため、火のそばに置かないでください。また、子どもやペットの手が届かない場所に保管することも重要です。 なお、使用期限は開封後半年から一年程度と考えてください。それ以上経つと、酸化が進んで香りが変わってしまいます。特に柑橘系の香りは酸化の影響を受けやすいので、半年を目安に使い切りましょう。 医療現場で実践する際の注意点 訪問看護にアロマテラピーをとり入れる場合は、精油の特徴や利用者さんに与える影響、起こりうるトラブルを整理して医師に説明した上で、必ず使用の許可を得てから実践してください。 精油ごとの禁忌事項と、利用者さんの既往歴を照らし合わせることも大切です。例えば、高血圧の方、婦人科系疾患がある方、アスピリンアレルギーの方などには使用できない精油もあります。また、精油を塗布する場合、傷や炎症を起こしている箇所には原則使用しません。 そのほか、以下の2点もチェックしてください。 利用者さんの反応 過去に同じ精油を使ったことがある場合や、パッチテストで問題がなかった場合でも、使用後の利用者さんの反応は必ず毎回確認しましょう。その日の体調によってアレルギー反応が出る場合もあります。また、体調が優れないときは使用を控えてください。 精油の濃度 精油を体の広い範囲に使うときは「3%以下」の低い濃度に調整しましょう。特定の部位に作用させたい場合には、30%以上の濃い濃度で使用することもありますが、皮膚が弱い高齢者の方も多くいらっしゃるので、低濃度にするのがおすすめです。 アロマテラピーの資格 2024年4月現在、日本にはアロマテラピーに関する国家資格はなく、すべて民間資格です。資格ごとに合格条件は異なりますが、教室やサロン、オンライン等で講義を受けて、試験に合格すれば資格を取得できるものがほとんどです。 アロマテラピーを深く学んで資格をとるメリットは、やはり精油の特徴や注意事項などを理解した上で、ケアに活用できる点にあるでしょう。例えば、アロマテラピーの本場であるフランスでは、精油を薬の代わりに使うケースもあります。近年は精油を認知機能低下の予防・改善、精神疾患の治療に活用する研究も進められており、医療現場でのアロマテラピーの注目度は、日本でもさらに高まっていくと予想しています。 >>後編はこちら アロマテラピー 代表的な精油&訪問看護での活用法【セミナーレポート後編】 執筆・編集:YOSCA医療・ヘルスケア