認知症の約半数、健康問題対処で予防や発症遅延が可能-研究報告
Kimberley Mannion-
高コレステロールと視力喪失は9%の認知症患者と関連
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認知症は高齢者の死因で7位、2050年までに患者数は3倍近くに
認知症症例のほぼ半数は、視力・聴力の低下やうつ病などの健康問題に対処することによって、予防したり発症を遅らせたりすることができるとの研究報告が出された。
医学誌ランセットに掲載された報告書によると、競技者同士の身体的接触のあるコンタクトスポーツで頭部を保護することや、認知症との関連も指摘されている血中脂質のコレステロール値をコントロールすることは、認知症患者の増加を遅らせるため保健当局や医師が奨励すべき14の行動に含まれる。
世界で認知症は高齢者の死因で7位。2050年までに患者数は3倍近くに増加し、年間コストは1兆ドル(約150兆円)を超えると予想されている。
研究者によれば、認知症は一部の高所得国では減少しているが、中低所得国では急速に増加しており、根本的な治療法は見つかっていない。
ユニバーシティー・カレッジ・ロンドン(UCL)の認知症専門家で報告書を主に執筆したジル・リビングストン氏は発表資料で、「予防を最も必要とする人々への取り組みを倍加させることが不可欠だ。行政は健康的なライフスタイルを誰にでも可能な限り実現できるようにすることで、リスクの不平等を減らす必要がある」と指摘した。
エーザイの「レカネマブ(製品名レケンビ)」と米イーライリリーの「ドナネマブAZBT(同キスンラ)」といった最近承認された治療薬は、最も一般的な認知症の一つであるアルツハイマー病の進行を遅らせる効果があることが示されている。
米フィラデルフィアで7月30日に開催された学会で発表された研究では、ノボ・ノルディスクの糖尿病治療薬「ビクトーザ」にも同様の効果がある可能性が示唆された。
また、ネイチャーメディシン誌に掲載された別の研究では、英GSKの帯状疱疹(ほうしん)ワクチン「シングリックス」と認知症の遅めの発症が関連付けられた。
治療が不十分な視力喪失は認知症患者の2%と関連があり、高コレステロール値だけでも7%の患者と関係があった。
フィラデルフィアでの学会では、山火事による煙害も高齢者の認知症リスクを高めることが分かったとのカリフォルニア州で実施の別の研究結果も報告された。
ランセット・ヘルシー・ロンジェビティー誌に発表された研究では、脳損傷やアルコールの過剰摂取も含まれる危険因子に対処することで、イングランドだけでも年間40億ポンド(約7700億円)の医療費と関連費用を節約できることが明らかになった。
低所得国の潜在的利益はさらに大きく、公共の場での喫煙を禁止するなどの政策がまだ実施されていない場合は特にそうだと報告書執筆者は訴えている。
原題:Almost Half of Dementia Cases Can Be Fended Off, Study Says(抜粋)